= The Chaos Wolfs =   作:No.20_Blaz

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私は常に境界線に立っている。

そんな所から私は見下ろしている。


…ま。だからって言って目的が世界平和なワケは絶対にないのですが。
彼女とバトるならマッハでボコりますよ。ええ。

ってなわけで第二話。ここでプロローグⅡと繋がります。
そして次回からは別行動組であるベールと真紅の二人。そして…オッサンです。



…あと。言うの忘れてたのですが別サイトで一人加入者が出ました。
一人だけです…ええ一人だけ…(汗


002 : Borderland

 

 

 

 

―――エクシアの乱入から時間は少し巻き戻される

 

 

 

 

 

 

ノイエDC残党の潜水艦「スピアフィッシュ」が米大陸からの援軍を撃破し、ほかの輸送部隊を奇襲した隊を回収、集結させていた。

 

 

「艦長。部隊の集結状況は」

 

「今のところ順調です。チームアルファからデルタまでは集結を確認。各機損傷状況の確認後に順次収容。機体の修復作業を行います」

 

潜水艦迎撃を任されたコールは艦長の居るブリッジに上がり、作戦を終えたパイロットたちの状況を艦長に訊ねる。どうやら人的損害はゼロらしく、モニターにはパイロットたちが手を振って自分たちの居場所を教えたり機体の損傷状態からは早目に入れてくれと頼んでいたりしている。

また甲板には先に収容されたパイロットたちが作業を手伝ったり休息を取ったり、他の部隊の様子を窺ったりとそれぞれの事を行っていた。

 

「うん。焦るなよ。今頃、敵の本隊は我らの本隊とかち合っている筈だ。奴ら、防衛力に慢心して今頃はほぼ全滅しているだろうに」

 

彼らの姿を見て安堵したのかコールは冗談交じりに自分たちの勝ちを決めつけ、クルーたちの笑いを誘わせた。

相手は政府軍だとしても練度が高くはないので、誰も問題視していなかったのだ。

ノイエDCのパイロットたちは高いスキルを持っており、同じAMを持つ新西暦の連邦軍と比べても差は明らかだったから。

それは言い換えるなら「宇宙世紀」と呼ばれる世界にかつてあった「ジオン公国」と連邦の初期のMSの練度の差ととも言い表せる事だ。

つまり、連邦が対等ないし僅かに劣るとするなら、彼らはそれ以下。最悪は論外とまで評価されていた。

 

「…にしても、損耗した機体が居ますね…弾幕の所為でしょうか」

 

「対空に関してはリオンは弱いからな。機銃程度ならまだしも対空迎撃のガトリングなら致し方あるまい」

 

「パイロットたちが無事なら…ですね」

 

「ああ。損耗が高い機体から順次修理。その間は緊急のシフトと部隊編成だ」

 

「そちらについては既に。四小隊の内、臨時編成として二小隊。残りは艦で修復を」

 

時間はあるんだ、確実にな。

戦況は見ずとも勝利は確実。合流には遅れるが、残る小隊の回収のために待つしかない。

順調に進んだ作戦で勝ちを決めつけたコールは、それを前提に次の行動を考えていた。

恐らく本隊の攻撃で敵の本体は壊滅。残敵の掃討か、降伏した敵兵士の捕虜としての処理が自分たちに待っているだろう。

少なくとも、その瞬間の彼はそう思い束の間の平和を味わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――んじゃ。確実に潰すかね」

 

 

 

刹那。静寂は破られ、天からの鉄槌が下された。

 

数本のミサイルが空中で分裂し、中から更に小型のミサイルが現れ一気に燃料を点火させる。分裂した大量の小型ミサイルは幅広く広がっていきキラーホエールだけでなくその周辺に待機していたリオンたちまでも巻き込んだ。

 

「ッ…!?」

 

「がっ…!な…なんだ!!?」

 

「上空からミサイル!!途中分裂してわが部隊全域に着弾しましたッ!!!」

 

広範囲にわたり攻撃を行える兵器にコールは覚えがあった。クラスター弾は発射後に内部に詰めた子機を分裂させ、広範囲にわたって殲滅を行えるもので今さっきの自軍のように広くひろがってた状態なら効果は十分にある。

今回はそのミサイル版。大量の小型ミサイルが雨となって襲い掛かったのだ。

 

「くそっ…被害報告ッ!!」

 

「リオン三機が撃破!内一機のパイロットの生存反応は確認していますッ!!」

 

「残りのリオンは!?」

 

「二機中破、残りは被害最小とのことッ!!」

 

「大尉!艦の方にもダメージがッ!!」

 

突然の奇襲にクルーたちだけでなく周りのパイロットたちも慌てふためく。

クラスター弾の攻撃に彼らの平穏が突如として破壊され、更には今まで無傷だった人員の数割が先ほどの攻撃でやられてしまったのだ。

その被害は艦にもおよび、艦内の至るところから被害報告が相次いだ。

 

『こちら格納庫ッ!!ミサイルの攻撃の余波で数人やけどを負った!被害は微少ッ!!』

 

『こちら機関室、各部エンジンにレベルBのダメージ!!火災も発生している!!』

 

「ッ…タンクおよびバラストはどうか!」

 

「メインタンク1.4.5に被弾ッ内メインタンク一番は使用不能!」

 

「一番付近の隔壁閉鎖!付近の人員は退避急げッ!!」

 

「くそっ何が起こってる!?」

 

 

 

火の手を上げる母艦に生き残ったリオンのパイロットたちは機体を動かし、周辺に敵が居ないかを索敵する。

テスラ・ドライブで浮上した機体は悠々と空を駆り四方に散らばっていく。

 

「母艦の攻撃を行えるってことはそれだけ近いって事だ。あの大きさのクラスター弾ならそう射程距離はないはず…」

 

『だがこちらは索敵は怠ってなかったんだぞ。一体どうやって…』

 

「何等かの方法でやったはずだ。各機、目を凝らせよ!!」

 

リオンのパイロットがそう言い通信を切ろうとした時。海面に何か黒い物体のようなものが薄っすらとだが見えて、それが間違いではないかと機体を傾けて同じ場所を旋回する。

一瞬の事だったので確かとは言えない。よく確かめねばと周囲を回りながら近づいていた、その瞬間

 

 

 

『目ぇ凝らしてくれてありがとう』

 

 

「………は?」

 

 

海面から、いや海から黒い何かが飛び出してリオンのマシンキャノンと頭部を掴み逃げ場を失わせた。

黒い物体に体重を乗せられたパイロットは大きく機体を揺さぶられ、目をつむってしまうが直ぐに目を開き一体何がいるのだと眼前を確かめる。

 

「―――――――ば」

 

『そして。テメェら全員馬鹿でサンキュー。ご褒美に…』

 

 

赤いカメラアイと特徴的な二本の角。リオンのメインカメラに映るのはそれらが集約された頭部だけだが、パイロットはその特徴的な姿に見覚えがあった。

なぜコレがここに居る。

それがパイロットの最期の思考だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「全員地獄行きだ」

 

 

 

 

亡霊(ゲシュペンスト)の名を冠したその機体は、直後金色に光る口を見せリオンを握りつぶした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼い閃光が宙を舞い、防戦を行うガーリオンたちに斬撃を加えていく。

機械にはない滑らかな軌道を描き戦場をかき乱すエクシアは自身の視界内に入ったリオン、ガーリオンに容赦なく攻撃を加えていく。

複合式のGNソードでガーリオンのアサルトブレードを牽制。その後、後ろへと滑り落ちるとビームサーベルでがら空きの背を切り裂く。

 

『ラニ隊長ぉ!!!』

 

「くそっ!一体なんなんだ、あのMSは!!」

 

「あんな機動性を持つ奴なんて…!?」

 

 

背後を取り、武装のレールガンでメインの動力であるGNドライヴへと攻撃しようとしたが、運悪く気付かれてしまいGNダガーの投擲でコクピットを貫かれる。

火の手を上げたリオンは爆散し、それを見たジョンはコクピット内で撃破した数をつぶやく。

 

「これで七機…」

 

 

「このままではじり貧だ!」

 

『飽和攻撃と母艦からの援護射撃で動きを封じよう。幸い、邪魔者は居ないんだ』

 

 

 

残された護衛艦『ラシャ』には三機のウィンダムが居るが、そのどれもが損傷し戦えるような状態ではなかった。

頭部の欠落。片腕の破損。飛行ユニットの損傷。そのほか多数のダメージ状態からまともに戦えるような機体は居ない。元より技量の差が明らかな彼らを論外としていたノイエDCのパイロットたちは彼らを眼中になく、またウィンダムのパイロットたちもそんな余力は残されていなかった。

 

 

「…友軍…なんでしょうか」

 

「わからん…だがこれはチャンスだ。今のうちに生存者の回収と立て直しを行うんだ」

 

「了解ですッ」

 

 

 

手当たり次第に攻撃するエクシアに防戦一方のノイエDC部隊。

しかし、そこに磁性砲弾が降り注ぎジョンの注意をひかせる。

僅かにしびれる砲弾をシールドで防がせ、リオン部隊から逸らしたのはストーク級の母艦の周囲に展開するバレリオン部隊。特徴的な大型砲が一斉に放たれ、反撃に転じたのだ。

砲弾の攻撃が無力であっても。

 

「ッ…此方の最大火力でも無傷か…!」

 

『ですがノーダメージという訳ではないはずです!連続で攻撃を続ければ…!』

 

「それまで敵さんがその場に突っ立ってくれていたらな」

 

 

「そりゃ勿論ッ…!」

 

エクシアの矛先はバレリオンと旗艦であるハマリエルに向き、GNソードの刀身を折りたたんでライフルモードにすると狙いも定めずに手当たり次第に射撃を行う。

元々牽制目的のための武装なため、正確に狙いを定めても多少の誤差は当然ながら生じてしまう。ならば、元より狙う事をしなければいいのだ。

 

「食いついた…!」

 

『奴を引き離せ!そうすれば勝ち目は―――』

 

 

次の瞬間、バレリオンの一機が頭部を打ち抜かれコクピットをねじり回されたパイロットは絶命、機体は制御を失い沈黙した。

自由落下を始めたバレリオンにパイロットたちは突然の攻撃に対して警戒を強め、接近するエクシアに対し散開する。

呆気に取られても無意識に動かしたペダルとレバーは正直で、彼らの行動を素直に反映させる。しかしそれとは違い彼らの顔は周囲を見回してもう一体の敵を探していた。

 

「今度は狙撃だと!?」

 

『索敵範囲に奴以外…いや待てッ…』

 

 

「後方から空母だと!?」

 

「解析できるか」

 

「待ってくださ…あ、出ました!」

 

ブリッジのメインモニターに映し出された空母艦は、彼らの知る中では旧式にあたるタイプでそれを見たケインは目を疑い、一体どこの部隊だと内心嘲笑っていた。

 

「旧式の大型母艦…件の傭兵部隊か?」

 

「スペックと比べて差がありますので改修していると思われます」

 

「それは分かるが、連中どうやって…」

 

未だ自分たちの眼前で続く交戦を見ながらカトウはモニターに映る彼らの空母艦のデータを見て考えていた。

突如として現れたエクシアとその後方に後から来た空母艦。来るにしても都合やタイミングが良すぎる事。なぜ味方部隊を壊滅状態になるまで放っておいたのか。

あれだけの腕があるパイロットなら壊滅手前で現れても別に不思議ではない。

そして狙撃。腕は確かだがどこから、どうやって狙い撃ったのか。

薄っすらとだが脳裏を過っていた不安要素。それが確実に、ゆっくりと彼の中で浮かび上がった。

 

「―――――連中の保有している戦力について情報あるか?」

 

「…いえ。なにせ情報力は地域ので手一杯でしたから―――」

 

「―――なら、答えはひとつか」

 

「…は?」

 

 

 

『随分と早いご到着で』

 

「ええ。備えあればなんとやら、マザーに頼まれて待機していましたからね」

 

『悪いけどコッチは今、手が離せない。狙撃は任せるけど当てないでくれよシンヤ君?』

 

 

 

 

 

 

 

「―――任せてください。狙撃には自信はありますから」

 

 

 

エースパイロット用に改修されたPT(パーソナルトルーパー)

新西暦の世界では人類初の人型兵器として名が刻まれており、その出来事はまだ新しい。

その機体の持ち味から高い汎用性を伸ばしたもの。三種類のタイプに即時換装が可能で、シンヤはその中で砲撃重視型を得意とする。

 

量産型ゲシュペンストMk-Ⅱ改『狙撃戦特化仕様』

それがシンヤの駆る亡霊の正体だ。

 

 

 

 

 

 

「げ…ゲシュペンスト!?」

 

「エースパイロット仕様…!」

 

 

片足を甲板に付かせ、長身のスナイパーライフルを構えるゲシュペンストは確かにその銃口を向けていた。膝部には狙撃などで地面に固定するためのクローがせり下がり僅かだが甲板に食い込んでヒビを入れている。

そんな事に構わず狙撃姿勢を崩さないゲシュペンストはボルトアクションで排莢すると次弾を装填。次の敵に狙いを定める。

 

 

「ジョン、バレリオンは任せます。流石にこのオクスタンでもアレの装甲は辛いです」

 

『了解した。背中は任せるけど当てないでくれよ?』

 

「言ったでしょ。狙撃には自信があるって」

 

アレンジされたOSによって表示されたサイトから次の相手を選び狙うシンヤ。

近くに居たリオンに照準を定め、トリガーを引いたのは僅かな瞬間、それでも確実に引かれた引き金によって鉄の弾丸はリオンの側面を貫いた。

 

「これでリオンが五機…隊長機は…任せるとしますかね」

 

 

 

 

「空母艦の甲板からの狙撃…!中佐ッ!!」

 

「差し向けたミサイルはアレが落としたか…!」

 

少しずつだが戦力が削られ、押されていく戦況にカトウは撤退を試案する。

本来の自分たちの目的は敵艦隊の旗艦撃破。それによる勢力図の牽制で防衛が目的ではない。

 

「…頃合いを見て撤退するぞ。このままでは犠牲を増やすばかりだ」

 

「は…しかし…」

 

「我らの目的は撃破ではない。牽制だ。一人でも多くの同胞を救い、大佐の理念を引き継ぐために、我々はここで潰えてはならんのだ…!」

 

ノイエDCの指導者バン・バ・チュン大佐はその前身となったDCの指導者であるビアン・ゾルダークの目的、異星人などの脅威からの人類を守るという意志を引き継ぎ組織を再編した。当然、元々は様々な思惑を持つ者たちによって結成された組織であったが再編された事によってビアンの意志を引き継ぐ者たちが中心として成り立ち、その殆どがバンの、ひいてはビアンの理想を引き継ぐこととしていた。

カトウもその一人であり、異星人ではなく異世界からの勢力などから人類を守り、時には人類の悪とも戦うという覚悟の下、再起を図り戦力を整えていた。

これが彼らカトウ中佐の率いるノイエDCの理念だ。

 

 

「…はい。全隊に指示、広範囲に散開し敵を攪乱。その後母艦の戦域離脱後に第二集結地点まで撤退せよ」

 

『レイン機、了解残存するリオンは一度俺の指揮下に入れ。スモークでガンダムを牽制する』

 

『バレリオン隊了解。時間稼ぎは任せてくれ』

 

ケインの命令に同意したパイロットたちは牽制と時間稼ぎに動き出し、密集から大きく広がり攪乱へと移行する。海面すれすれを飛んだりミサイルや砲弾を態と当てさせたりと撃破目的から錯乱に移ったのにはジョンとシンヤも勘付いていたが、一斉にしかも唐突に変わった動きに焦りを見せていた。

 

「ッ…足が速いから狙いが定まらないか…!」

 

 

「錯乱にしたか…お陰で前から後ろからと…」

 

ライフルを撃つも既にリオンが過ぎ去った後。ガーリオンが接近戦を仕掛けてきても、それは一瞬のことでしかない。軽く受け流し、機体が斬られないようにと被害を最小限に抑えるという動きに手馴れたものを感じるジョンは深入りをせずに防御に徹する。

無理に押し込むというのもあるが、それではかえって相手の思うつぼになる。なので彼は一瞬の隙やボロを見せるまでは素直に錯乱に掛かっておこうと考えていた。

 

 

「シンヤくーん、狙わないでねー」

 

『サイトに入らなくてそれどころではないですって!』

 

チョロチョロと逃げ回るリオンたちに舌打ちをするシンヤは手近な機体をロックしては引き金を引こうとするが、直ぐにサイトから外れては入れ替わるという動きを繰り返しているため中々狙いが定まらず集中を欠いてしまう。

 

「くそっ…撃とうにもアイツらの足が速すぎて…!」

 

『こちらからの支援ミサイルで…!』

 

「それはいいですけど、その場合、彼が棒立ち状態で危険だ!」

 

分裂ミサイルを放っても確かに効果はあるだろうが、それではかえってジョンを危険に晒してしまうことになる。彼にとってはそれはとても納得できることではないので、どうしてもそれに戸惑いを感じ、無理に中断するように言ってしまう。

効果的なのは彼もわかっているが、それでも人道的な彼にとっては仲間の事も同義だった。

分裂式のミサイルを落とせば、いくら強固な装甲を持つエクシアでも敵母艦からの砲撃にタダで済むはずがない。

 

「敵母艦が百八十度回頭!撤退を始めていますッ!!」

 

『ですが、残党軍がまだ残っていますッ!』

 

「………。」

 

撤退を始めた残党軍を見て安堵するものも居る。だが、それで残党軍の機動部隊が退くかと言えば逃げるはずがない。足の遅い味方部隊の殿を務めるため、命を懸けてでもその場に残り、時間を稼ぐはずだ。

正に目の前の状況がそれ。バレリオンが砲撃で距離を取り、迫りくるエクシアをガーリオンとリオンが妨害している。互いに互いの短所を埋め合い、見事な連携で維持していた。

 

 

(ッ…ジオンもそうだけど…連携がこうも上手いと突破が難しい…!)

 

肉を切って骨を断つというやり方もあるにはある。ダメージ覚悟で接近し、バレリオンだったりガーリオンを崩せば陣形にも穴やほころびが生まれるはず。

しかしその場合、後ろの事が散漫になって残った敵からの攻撃でGNドライヴに直接的なダメージを受ける可能性が極めて高い。そうなれば彼は負けたも同然、死んだも同義になる。

 

「…撤退するまで付き合う、か?」

 

 

自分の命綱をみすみす捨てるのもどうかと考えるが、この際だからという甘えとそれでどうなるのかという興味が実のところ彼の中にはあった。

変化するだろう戦況に興味を持つ彼は、そこに新たな刺激があるのではという可能性と賭けに本気になりつつあり、正気であろうともそれを実行する決心を持っていたのだ。

もし自分が後先を顧みずに向かったらどうなるだろう。その時の彼らの反応は、行動は。

考えるだけで興味の湧く未来に手を伸ばした

 

 

 

 

 

「ッ…!」

 

が、彼の機体のレーダーに後方から数発のミサイルが接近する警報が鳴り響き、それは相手側であるノイエDCのほうにも確かに届いていた。

 

「み、味方を考えずにミサイルを…!?」

 

「正気なのか!?当たれば奴は…!」

 

そんな彼らとは違い、今更止まるはずもないミサイルは空中で分散し数発の小型ミサイルが中からあふれ出る。

みっちりと敷き詰められたミサイルは傘のように広がり、敵機や母艦などを無誘導で襲い掛かる。味方の犠牲を顧みずに行ったミサイルに思わず動きを止めてしまう者もいたが、半ばあきらめのように死を覚悟していた彼らは別にいいだろうという最期の甘えに乗ってしまった。

そのミサイルで自分たちが死なないと小型ミサイルが爆発した時になって。

 

「あ…え!?」

 

「す、スモーク!」

 

爆発したミサイルから吹き出したスモークの煙にパイロットたちは諦めていた意識を取り戻し周囲を首を振って見回す。辺り一面白い煙の世界に変わってしまったことに驚くのもさることながら、それによってレーダーなども一切使用不可能になってしまったことに焦り自分たちの居場所を見失う。

錯乱を目的としていた所為で自分たちの居場所を最後まで覚えられず、自分が今どの方向を向いているのかでさえも分からなくなっている者も中に入る。

 

そして、それを機にエクシアは反撃に転じた。

 

 

『れ、レイン3ロストッ!!』

 

『バレリオン、マクス2もロストしました!?』

 

「馬鹿な…この煙幕の中で…!?」

 

たった一機で数機を相手にしていた。しかも至る所飛び回り最後にどこに居たのかでさえもわからない。

なのにエクシアは正確に、正しい位置と方向を割り出し残敵を切り裂いていた。

これは一体どういうことだとレインはどこから来るかもわからない相手に気を尖らせる。

前、後ろ、右、左、それとも上か下か。

 

『少尉!ここは撤退を…!』

 

「撤退と言って…どこに逃げればいい…!?」

 

煙で辺りが見えず、敵がどこにいるかもわからない。ましてや自分の位置もあるし、狙撃だって警戒せねばならない。

様々な不安要素が彼を駆り立て冷静さを失わせる。

 

 

「中佐、敵のスモークが…!」

 

「進路そのまま!対空防御、目を凝らせ!!」

 

母艦の艦内も同じく戸惑いの声が上がっていたがカトウだけは冷静なまま指揮を執る。

レーダーが一切使えなくなっても、向いていた進路は変わらなく、やる事に変わりはなかったので彼はなにも言葉を付け足さずに命令だけを送る。

その絶対的な自信の号令にざわめていたクルーたちは途端静かになり、彼の命令が信じられるという理由のない根拠に従い動き出す。

 

 

「ッ!!中佐っ…!」

 

しかし、それがあともう少し早ければ。

そんな後悔が後になって彼の脳裏を過り、自分の無力さに責めるしかなかった。

 

「………。」

 

『残念だけど。ここまでよ』

 

煙が晴れた時。そこに居たのはGNソードをブリッジに突きつけるエクシアで、その剣の切っ先はカトウの喉元を突きつけているのと同義だった。

隣を飛んでいた僚艦はブリッジに張り付いているエクシアに攻撃して剥がそうかと考えるが、機体とブリッジの距離から巻き添えは考えられ更には狙撃でつぶされる可能性もあるという恐怖から踏み切れなかった。

 

「そんな…いつの間に…」

 

「………ッ」

 

『スモークで私たちが残敵を掃討するって考えはあるにはあったさ。けど、それだと其方には追いつけないし最悪は逃がしてしまう。なんで、狙うは大将首というわけさ』

 

「スモークの中を見えていたとでもいうのか…」

 

『ま。そんなところ。無駄話はここまでにして、本題と行こう。

これで其方は「詰め」だ。間もなく中米からの援軍要請を受けた部隊がここに来る。いくら腕立ちって言っても、頭数足りなくちゃ難儀でしょ』

 

「―――。」

 

強く口元をかみしめるケインはこの場の打開策を考えるが、喉元に剣をつきつけられている以上、絶対にありえない逆転劇でもない限り覆すことはできない。

足止めに出ていたリオンたちも現在はブリッジの状態を見て棒立ちだ。

 

『こちらは傭兵部隊だが、雇い主は正規軍。大人しく白旗上げてくれたら、処遇は悪くはないと思うけど?』

 

「ッ…誰がそんな―――」

 

「ケイン」

 

決して屈しない。そう言いそうだったケインをカトウはただ一言、彼の名を呼んで制する。

指揮官として椅子に深々と座り込んでいた彼は、俯いた目で地を見つめ沈黙していたが、やがて重くなった口を開いた。

 

 

「…残った者たちの安全を保障してくれ」

 

「中佐…」

 

『…私が判断することじゃないけど…まぁ取り計らってくれるはずだろう』

 

 

全周囲での通信を聞いたリオンのパイロットたちは込めていた力を手から抜き、または逆に力を込めて悔やんでいた。

深いため息を吐く者。歯を強く締めて悔やむ者。操縦桿に力を込め沈黙する者。

十色の反応は全て敗北という事実によって残った者たちに広がっていった。

長きにわたった地下での戦い。それが終わり、虚しさと謎の爽快と不安さが彼らの中を透き通っていく。

その瞬間になにを思ったのか。それは本当に人それぞれだった。

 

 

『…という訳で。取り計らってくれるかな、オーナー?』

 

「…いつもの通りにアイツに連絡しろ。話はこちらで付ける」

 

「はい」

 

ジョンの機体を通じて話を聞いていたマザーは深く椅子に腰かけると通信担当に命令し、この後の事についての指示を下す。

 

「それと、向かってきている政府軍の部隊に残党軍が降伏したと通達しろ。あと、一隻だけ残っている護衛艦の援護も忘れるな。ヘリなどで救護部隊と整備員を向かわせ、航行可能なまで応急修理をさせろ」

 

「了解しました。ブリッジよりアライブチーム―――」

 

「シンヤ。作戦終了だ、残った護衛艦の警護に当たって追撃等を警戒しろ」

 

『了解。ライフルは甲板に置いていきますね』

 

接触通信で答えたシンヤはライフルを置いて機体をゆっくりと浮き上がらせる。

背部の推進機関であるテスラ・ドライブによって機体が飛べるようになっているのだ。特にシンヤの機体の場合は彼に合わせたチューンが施され、静穏性も高いものになっているという。

 

「―――リヤン。どこにいる」

 

『潜水艦のトコ。親玉の通信聞いてだんまりになったから、こっちにも手ぇ回してくれや』

 

「わかった。お前はそこで待機しろ。あとで回収する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――へーへー…」

 

気だるそうな声で返事をしたリヤンは母艦と繋がっていた通信を切り、コクピット内で足を組んで寝転がる。リクライニングなどり贅沢な機能はないが足を組めるぐらいは可能で彼はそのまま降伏した部隊の確保のために向かってくる艦隊を眺めている。

数隻のフリゲート艦と輸送機の部隊がウィンダムやPTであるRPT-014の「エルアインス」と呼ばれた機体が編隊を組んで向かってきているが、到着までにはまだ少し時間がかかりそうな様子に彼は呆れた顔でぼやいていた。

 

 

「…ったく。面倒な仕事だったなぁ」

 

早く終わらないだろうかと任務終了を待ち望んでいた彼は、自分の機体であるワインレッドと黒の「ゲシュテルベン」の廃熱状況をモニターで確認しつつ、脳裏ではそれとは関係のない新しい武装などを考えていた。

 

「…ユズの奴に頼んでみっか」

 

 

しかしこの後の帰還後、彼の要望が却下されたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

援軍の艦隊が到着し、残存艦であるラシャの修復作業とクルーの救護が始まって十数分。

作業や捕虜の移送などを順次正規軍に引き継がせ、首謀者であるカトウたちはクルー他パイロットなどとは別に移送。シンヤはゲシュペンストに乗ったまま陸のドッグまでラシャの護衛を行い、ジョンは残敵やはぐれがないかと周囲の哨戒を行うため艦から離れていた。

リヤンも投降した残党についてを軍に任せ、ジョンと同じく近辺の哨戒任務に出て行き、搭載機がゼロになった旅団の空母艦はその後ティルトローターの燃料補給などを行い、北米からの補給物資受け取りなどのための発進の用意を行っていた

 

 

 

「シークレットより通信。間もなく到着とのことです」

 

「甲板にヘリ一機を着陸できる場所を確保しておけ。私も出る」

 

「了解。ブリッジよりシークレット―――」

 

 

しかし物資受け取りはあくまで建前であり、ある事のための偽装。

その間、マザーがある存在(もの)を受け取るために行った大掛かりな行為がコレだったのだ。

 

「さて。行くとするかな…」

 

歳よりにはいい運動か、と長年愛用している杖を使いブリッジを後にするマザーの行先は着陸許可を出した一機のヘリのいるだろう甲板。

実は、今回の輸送作戦が本当はこの為の偽装だと言われればそれはそれで誰もが驚き、そして怒りを見せるだろう。一体何のために仲間たちか死んでいったのだと真剣に戦ったパイロットやクルーたちがこぞって責めてくるはず。

輸送作戦そのものが嘘と言われればそれこそ嘘になる。事実、中米方面軍は先ほどのDC残党他多数の反政府組織との抗争で戦力的、精神的に疲弊していたのだ。そこに援軍と補給物資を運ぶとなれば当然の事だ。

その作戦の裏で行われたもう一つの輸送任務。それがマザーの本命だ。

 

 

「人を物資として…物としてか」

 

表向きは輸送物資としてカウントされた人間。それが彼女が受け取る荷物の正体。

なんでも知られれば面倒になるということで資料上輸送物資ということで誤魔化したらしい。それでも人を運ぶということでそれを行うのは自社(・・)の役割だと良い、その面だけは自己負担だと言い張った男の顔を脳裏に思い返す。

 

「…若造が、随分と大胆な事をするものだ」

 

降り立った一機のヘリの中から出てくる要人。いや、輸送物というべきか。

今はまだ本当に人であるかさえもわからないのだ。

だがそれでも彼女の姿勢は変わらない。人でなくても人に似せたものであっても彼女には対等な存在としてか見えることはないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこに降り立ったのは確かに人間だ。そして性別も一目でわかる。

彼女が何故こんな場に、こんな世界に居るのか。

それはいずれ分かることだろう。

 

 

 

「お前が………”クラウディア”だな?」

 

 

「――――!」

 

 

 

目の前に立つ一人の少女にマザーは変わらぬ顔で問いかける。

銀色の髪とルビーのような澄んだ瞳。

まだ幼さを残す目だが、その奥には薄暗い黒さが見えた。

 

クラウディア。

そう呼ばれた少女は口元を強く締めた。

 

 

 

「ようこそ、私の部隊。いかなる存在にも属さぬ、孤高の群れに」

 

 




オマケと言う名の簡単な機体紹介。


ガンダムエクシア(ジョン専用型)

搭乗者 : ジョン

西暦の世界で作られたガンダムタイプ。
特殊な動力機関であるGNドライヴを持ち、それによって高い性能を発揮する。
本機はオリジナルのデータ等を用いて作られた改良機でオリジナルよりも性能は高い。
またジョンのスタイルから多種多様な装備を使用。


量産型ゲシュペンストMK-Ⅱ改

搭乗者 : シンヤ

通称『狙撃戦特化仕様』。新西暦の世界で作られた量産機で本機はエースパイロット仕様を更にシンヤ専用にチューンしたもの。
タイプCを基本に運用し狙撃戦などの遠距離戦闘を得意としている。
短時間で他のタイプにも換装可能だが、シンヤは基本タイプNをデフォルトにしている。


ゲシュテルベン改・零型

搭乗者 : リヤン

シンヤのゲシュペンストとは同型だが別の計画で改修された機体。
機体の装備換装ではなく多くのハードポイントを持っているのが特徴でペイロードも若干多め。また、試作機としての意味合いもありカメラアイの下部等に廃熱機構を持つ。
ちなみに零型と書いて「タイプゼロ」と読む。命名したのはリヤン。
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