= The Chaos Wolfs =   作:No.20_Blaz

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約半年…かな?

という感じで幕間の物語のようなものを投稿です。

一応本編への準備も兼ねた話ですので、まぁよろしくです(汗


それでは。EXtraをお楽しみください。


Extra : 「Zips」

 

= 旅団・本拠地 大型機体ハンガー =

 

旅団は、傭兵組織としては例外的に機動兵器を保有する。

元々設立当時は機動兵器の類は一機も保有していなかったのだが、加入するメンバーの中で三名が持ち込み、更には武器装備の拡充として協力関係を持っている企業から試作機を預かり、現在は計四機が機動兵器としての総戦力となっている。

 

宇宙世紀を始め、多くの世界で使用されている「モビルスーツ」

 

新西暦と呼ばれる世界で使用されている「パーソナルトルーパー」

 

それぞれ二機ずつが置かれており、いずれにもパイロットに合わせたチューンが施された実質的専用機となっている。

というのも、試験機や再生機の改良型というのが開発された大きな理由で、前者の場合は試験するシステムがそのままであれば機体そのものを改修することは問題なく、後者も機体を再生させただけで試験的な意味は持ち合わせていない。

故に、目的のものさえ残っていれば、後は改造しても問題はないというのが理由となっている。

 

 

 

 

今回は、そのメンバーたちが使用する機体について語る―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

装甲版から内部が露出し、更にその中から籠っていた熱が排出される。

蒸気機関車のように吹き出る煙に、軽くむせるスタッフも居たが、既に慣れ切った事らしく直ぐに作業を始める。

機体の動力でなくても熱が籠るところは多く、最悪な場合は一部が溶け出していることもある。なので、機体のメンテナンスは念入りに行われ、応急修理時もそこが中心となる。

 

 

「炎の装甲は問題なし。問題は矢張りエネルギーラインですね」

 

「取り換えることは出来ないのか」

 

「難しいですね…ここだと、一旦バラしてってなると一か月はかかりますし…なによりこのエネルギーに対応する物が、無いと思いますから」

 

「………。」

 

整備班の率直な返答に頭を抱える真紅は、手に持っている端末から目の前で整備されている、ベールの機体であるデスティニー炎を見て唸り声を出していた。

別段、彼が乗るわけでもないのだが、基本無口であるベールに変わり、共に整備に立ち会うことも多いので、偶に見られるこの光景は日常の一部のように当たり前になっていた。

 

「この機体、元々あの変なシステムを乗せることを前提にしたようではなかったようで、中身も相当ギュウギュウ詰めだったんです。多分、何か特別事情があって取っつけたんだと思いますけど…」

 

「…真実は本人のみが知る…か」

 

当人は現在、コクピットブロックの中で機体OSの調整を行っている。なんでもOSの調整は自分でないと出来ないらしく、誰にも触ってほしくないのかと思われていたが、彼女の話からするに「してほしくない」ではなく「誰も出来ない」からだという。

何故誰にもできないのかは分からない真紅だが、立ち会ったスタッフからは絶対に出来ないという諦めの言葉が開口一番に出たため、並みの人間には出来ないことだけは理解していた。

 

 

 

 

 

 

 

デスティニーガンダム炎

 

C.Eの世界で使用される機動兵器、モビルスーツの一種で、その中でも新しく開発された機体であり、ワンオフ機として作られたのがこの機体のベースとなったデスティニーガンダムだと言う。

デスティニーには更にその元が存在し、そもそもはインパルスガンダムという機体からコンセプトを受け継いだ機体となっている。

単機で複数の状況に対応できる機体。それがインパルスの特徴で、そのためにこの機体には「シルエットシステム」というのが使用されていた。

三つのシルエットと呼ばれるバックパックを状況に合わせて装備し、応戦するというもの。火力、機動性、接近戦。それぞれに違った特徴が存在し、戦況、敵などに合わせそれを臨機応変に使用。また、戦闘中でも即換装が出来ることもこの機体の強みだった。

 

そこからその三つの強みを全て合わせたもの。それがデスティニーだ。

 

そして。そこに新システムである「炎システム」を搭載。一部武装などの強化改修を行ったのがデスティニー炎だ。

結果として、扱える人間はごく限られた者となり、現状機体を動かせるのは同じ世界の出身者であり実質的持ち主であるベールただ一人。

それ故に、彼女でなくては分からないところや出来ない所など、未だ他の面々には明かされていない所が多く存在するのだ。

 

 

 

「…ベール?」

 

「っ………!」

 

コンソール画面に夢中になり、ボードの向こう側に立っている真紅に気付けなかった彼女は、何時の間に居たのかと驚いた顔で見上げ、口を半開きにした。

 

「ああ、ごめん。驚かせた?」

 

「………ううん。平気」

 

「そっか。そっちはどうかなって思って見に来たんだけど…」

 

「…殆ど終わってる。最近、出番ないから」

 

 

小さく、彼にしか聞こえないような声で話すベールは、残りも早く終わらせてしまおうとキーの上を走らせる指の速度を上げていく。今まででも十分早かったことが、彼女が少しペースを上げただけで高速ともいえるほどの速度で完了していき、OS設定が終えられていく。急かしたワケではないのだが、自分でも口を開いて唖然とするほどの速度で終わらせていく彼女の姿に、真紅はただ固まるしかなかった。

 

「………。」

 

「………終わった」

 

「…え」

 

「…終わったよ?」

 

その間、数秒足らず。僅かな間に普通ならあと数十分はかかるだろう設定をベールは目にも止まらない速さでこなし、完了させた。

まだ少しかかるかと思っていた真紅は、直ぐに終わってしまったことに呆気にとられるしかなく、その一瞬のお陰で頭が真っ白になりかけてしまう。

 

「…終わったの?」

 

「…うん」

 

「………そっかぁ…本当に早いんだな、ベールって…」

 

素で驚く真紅に、ベールは少し恥ずかしそうにシートに深く座り込む。今までそこを褒められたことのなかった彼女は、改めてそこを評価されたことに嬉しさを感じ、それを裏表なく言ってくれた彼から、目を逸らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――若いですねぇ」

 

「お前、自分がいくつか分かってんのかよ」

 

和やかな雰囲気を見せているベールと真紅の姿を遠くから眺めているのは、PT専用のハンガーで機体の整備と調整を行っているシンヤとリヤン。まるで自分が壮年の人物であるかのような事を口にするシンヤに、リヤンは自分の年齢を忘れているのではないかとツッコミを入れていた。旅団の中でも、彼ことシンヤは最年少である。

 

「失敬な。こう見えて経験だけは豊富なんですよ」

 

「十六のションベン小僧が言うセリフかよ。そんな経験者気取りするんなら、さっさと仕事を終わらせろ」

 

はいはい、とリヤンからの言葉を軽く受け流したシンヤは、隣に格納されている自分の機体の調整を行おうと離れて行く。少し苦笑気味に話すのが、シンヤの普段の性格なのだが、別の意味で個性豊かな面々であるからか、最近は縁の下になってしまうことが多い。

特に前線では、ガルシアがハチの巣に。リヤンがなます切りに。ジョンが必殺仕事人したりと半無双状態なので、その後始末だったらを自然と押し付けられることが多いのだ。

なので、彼の本来の性格というのは基本、前線で出ることは先ずない…

 

 

「機体脚部のスラスター交換、こっちでも手伝います!」

 

「りょうかーい」

 

 

 

 

 

ゲシュペンストMk-Ⅱは、新西暦の中で最初に開発された人型機動兵器、ゲシュペンストの後継機だ。当時、亡霊の様な姿とカラーリングだったことから、そう名付けられたこの機体は、文字通り亡霊のように複雑な世界を彷徨うこととなる。

主力機としては最悪の約三十機ほどしか量産はされず、その主力は当時敵対していたDCが使用していたリオンが座に就くこととなった。

しかも、その後に新西暦の連邦軍が量産化させたのはゲシュペンストと同じく開発されていたヒュッケバインシリーズの機体で、結局現在のところその機体が主な連邦軍の主力兵器となっている。

 

しかし。その所為で時代から姿を消すのかと言われればそうではなく、ゲシュペンストはその短い歴史の中で細々の息をして、再起を窺っていた。

新規開発のみではいずれ連邦の資金などを圧迫し、息切れを起こす。ならば、過去にその名を刻んだ機体をもう一度。

 

ゲシュペンストの近代化改修計画「ハロウィン・プラン」によってゲシュペンストたちは再び日の目を見る事になった。

少数のみ生産された機体をエース専用機として再利用、再設計した機体。それが「量産型ゲシュペンストMk-Ⅱ改」である。

 

「…連邦の新型エース機…ね。話としちゃ分からなくもないが…随分と淹れ込んだ機体だよなぁ」

 

この機体をこよなく愛する人物が居るからこその機体ではあるが、そんな機体によくそこまで入れ込めるなと呆れていたリヤンは、装甲を剥がし中を分解し整備してもう一度組み直している作業風景を視ながら、他人事のようにつぶやいていた。

他人が何を好きになろうと彼も知った事ではないのだが、妙にそれが関係のないことではないと思えていたので、自分の作業を途中にシートに深く座り込んだ。

 

「汎用性のある機体をより汎用性を伸ばした…その為の換装装備を用意…即時の換装を可能とする…か」

 

設計思想としてはデスティニーの前身であるインパルスと似ているが、それでもどの局面に対応するかなどの差がある。また、コスト面では量産機であるゲシュペンストに分があるだろう。

 

「ま。量産機の基本前提は汎用性だもんな。その点でいや、ある意味両方とも正解…か」

 

しかし、両陣営の開発した量産機や主力として使われている兵器から見ると、若干C.Eの方に分があるのではと思えてしまう。

元々双方の軍の起源と思想、運用目的などが違うこともあるのだろうが、C.Eの世界でデスティニーを開発した軍は、量産機にも装備換装式を採用している。新西暦でもそれは同じことだが、機体の特性、伸びるステータスなども考えると一歩先をいっている。

 

 

 

「…ん?」

 

そういってゲシュペンストについてを考えていたリヤンは、ふとハンガー内で感じた違和感に気付き、その方角を見つめる。

それはシンヤのゲシュペンストとジョンのエクシアが格納されているハンガーの向こう側。機体はフルで四機なのでそれ以上のハンガーは基本存在しないのだが、今日改めて彼は、自分の目でその奥が作られていることに気付いた。

 

「…増設された…つっても…」

 

暗黙の了解として、旅団が持てる機体は一人一機。原則として四人はそれを守っているので誰が違反したという事にはならない。

ならば、新たに誰かが使用するのか。というのが一番考えられることだ。

 

 

「客人用…ってわきゃねぇか」

 

取引、和解、契約。その為に訪れる者たちの護衛する機動兵器のハンガーかと思ったが、それにしては数が少なすぎる。場合によっては小隊規模で来ることもままあることで、増設されたのはたった左右合わせて二つなので、割りに合わない。

 

「…シンヤ」

 

『ん…なんですか?』

 

「ここのハンガー、なんか増えてるようだけどよ。何か聞いてないか?」

 

『…ああ。そういえば…』

 

反応からするに、シンヤも知らなかったのだろう。あまりに日常のように溶け込んでいたのか気付けなかった彼も、通信越しにコクピットの外へと顔を覗かせていた。

 

『客人…なわけないですよね』

 

「ああ。にしちゃ数が少ない。それに、そういうのなら()の方に置くハズだ」

 

『キャパで言えば…あっちが妥当ですもんね』

 

他にも機体を置ける、格納できる場所があるので一か所に固めることはあまり得策ではないのは、経験から知っていた。誘爆やジャックされた時などに一斉に破壊される可能性もあるからだ。

加えて、自陣営以外の者なら、見せられるものとそうでない物もあるだろう。

 

「…予備機…なわけないか。そんなことすりゃ、ババアの怒りが頂点だからな」

 

『頂点かどうかは分かりませんが…予備の可能性は低いでしょうね』

 

「なら、一体ってなるが…」

 

 

 

「…やっぱ、リヤンさんらも知らないんだ」

 

「うん…?」

 

コクピットの外から聞こえて来た少女の声に、顔を除かせたリヤンは何か別件の用事があったのだろうと、新たに聞こえて来た声の主に話を投げかける。

外の足場の上には、橙色の髪をポニーテールにした少女が、端末を片手に立っている。愛用のゴーグルと作業着姿をしているのは、メカニックスタッフの一人である天祢(あまね)柚子(ゆず)だ。

 

「…何時から居た」

 

「今さっき。ちょっと用事で」

 

「用事?」

 

何か見せたい項目があったのか、端末を操作する柚子は小声で見つけたように呟くと、その項目を表示させたまま彼に端末を差し出した。

 

「機体のパーツと、新しく届けられた装備と武器一式。武器は先に荷解きは終わってるので」

 

「…また、あのサマ師からの依頼品かよ」

 

嫌な記憶があるリヤンは、ため息をついて表示されている項目に目を通していく。

項目には見たことのないものや、中にはゲテモノと呼べそうな名前のものが数多く並べられており、その中から必要な物を選べと言われれば、真っ先に難易度が低く、安全そうなものを選ぶだろう。

だがリヤンの場合は、そこに書かれた物を全て使用してデータを収集しなければならないという事で、どの道、逃げ道というのが存在しなかった。

それが、リヤンと彼のいう「サマ師」との契約(・・)なのだ。

 

「今回のは、あんまりロクな品がないって感じですね」

 

「いつもの事だろ…試作ブースターに、反応装甲。新型の炸薬を詰めたマシンガンとマガジン一式。それに…変な近接武装」

 

「変な…?」

 

「名前はそれぞれ、「ベニザクラ」と「ムラサメ」っつーブレード。それと…こりゃ鎌か?」

 

「どんどんとマニアックな物になってきますね…もう趣味の領域じゃないですか」

 

趣味というより、当人たちの欲の塊のようなもので、見るだけで実用性が皆無な物が軒並み連なっている。まだマシだったものは、新型の爆薬をこれでもかという程に詰めたバズーカで、威力は都市一つがほぼ消え失せたと言う。

しかし今回はそんなマシなものが一つもなく、いわば彼らの遊びに付き合わされているようなラインナップだった。

 

「その趣味に付き合わされる俺の身にもなれってんだよ…」

 

「ご愁傷様です。ま。仕方ないの事ですよ。それが商人なんでしょうし」

 

「商人が自分の私情と私欲と趣味をビジネスに挟むかよ。寧ろ科学者…だったな、アイツら」

 

「特にリタさんは科学者寄りでしたもんね。のわりに、私情出してましたけど」

 

「人間それぞれなんだろ。気にすんなよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二体の亡霊。

それは、双方に違った設計思想を持っているが、結果だけを見れば全く同じ結論にたどり着いた機体と言える。

量産機ゲシュペンストをベースとした試作機。

シンヤの場合はエース専用の機体としてチューンされ、汎用性の高いものに仕上がった。遠距離砲撃戦を重視したタイプC、格闘戦のタイプG、汎用のタイプNの計三つ。どれをデフォルトにするのかはパイロットによって様々だ。

対してリヤンの場合は、試作された装備を試験するための機体の開発。つまり、試作武器を扱うための試作機だ。

故に、彼の機体には正式採用される機体以上に不安要素が多く詰め込まれていた。

 

ゲシュテルベン改は量産型ゲシュペンストMk-Ⅱ改とは違い、極秘裏に開発された機体でオリジナルであるゲシュテルベンも「ピーキー」の一言に尽きるもの。

スタンドアローンでの活動を前提とし、特徴であった装甲の削減とハードポイントの増設。そして機体出力の向上。

そこに試作武装を装備させ、試験を行わせるというのがゲシュテルベンの存在理由だ。

 

 

 

 

「…ハウリングのパーツ、来たんだよな?」

 

「予備一式は届きましたよ。リタさんからの苦情と一緒に」

 

「…またか」

 

「いい加減、そろそろ毎度毎度壊すのは止めて欲しいって」

 

左腕の固定装備であるプラズマステークを改造した「ハウリングステーク」を両腕に装備。これはプラズマではなく、空気圧縮した衝撃波を瞬時に敵機内部で爆発させるもので、それによって内部から破壊する武装。なので、強引に装甲内に埋め込んだりすることもあって修理することが多い装備だ。

 

「仕方ねぇだろ。PS装甲なんて面倒なモン開発したC.Eが悪い」

 

「それ単にその世界だけが嫌なだけなんじゃ…」

 

一応、長所としては特殊装甲などでも貫通できるものであれば容易にダメージが通ることで、フェイズシフトなどの特殊装甲にも有効なものだと言う。

逆に欠点は単純な重装甲で、特に新西暦に該当する機体が多いことから天敵も多いらしい。

 

 

「いやいや。他の世界だって、あの世界を目の敵にしている所も多いよ? 僕らがそうであるようにね」

 

「…アンタ、整備はいいのかよ」

 

現れた最後の一機、エクシアの持ち主であるジョンに訊ねたリヤンは相変わらず掴めない性格に口をへの字に曲げていた。別に嫌いではないのだが、どうにも好きになれない苦手意識を持っていたのだ。

 

「うん。まぁ、私の場合は特に問題というのもないからね」

 

「嫌味ですか…」

 

「事実さ。現に、君たちスタッフは楽でしょ?」

 

ジョンの言葉にぐうの音も出ない柚子は、目を逸らして反論の言葉を考える。彼の言う通り、整備班は何かと問題があったりするデスティニーやゲシュテルベンと違い、量産機としての信頼性などがあるゲシュペンストと、OSを除けば問題点も少ないエクシアは助かる存在だった。

 

「それはそうですけど…だからって整備の立ち合いしてくれないと困りま―――」

 

「整備は終わったよ。武装とOSの調整以外は特にやることなかったし」

 

刹那、彼の言葉に思わず目を丸くしてエクシアのハンガー辺りを見てみると、確かに整備班は解散し、それぞれどこか別の整備を手伝ったりと散り散りになっている。

中にはもう直ぐ昼の時刻ということで、昼食に行こうとしている者も居る。

 

「早っ…」

 

「いつの間に終わってんだよ…」

 

「いつの間にかさ。ところで…」

 

どうやらジョンも気にはなっていたようで、密かに話題になっていたハンガー増設について訊ねるが

 

「何時から増設されてたんだい? 私たちが見ていた時には変わってなかったけど」

 

「私もさっぱり。いつの間にか、増設されてたみたいなんです」

 

「俺とシンヤにも聞くなよ。同意見だからな」

 

と素っ気なく返されたので、つれなさに肩をすくめていたが、同時にその返答で何かを察したようで直ぐに顎に手を置き、考える仕草を作った。

 

「なるほどね…」

 

「………?」

 

 

そこへ、面々が集まっていることに気付いたのか、真紅とベールの二人も加わり何の話をしているのかと訊ねて来るが、知らない間に増設されたハンガーについて、どうやらその場にいるメンバー全員が知らないようで、二人も問われた時には首を横に振るった。

最後に加わった二人も、今まで気づかなかったと景色への溶け込み具合に純粋に驚いていた。

 

「俺たちも気付かなかった…本当にいつの間にかだな…」

 

「………。」

 

「これで原因があのトンチキ野郎(ガルシア)だったら、笑えねぇな」

 

「全くだよ…」

 

冗談であってほしいと願うシンヤは本当にそう願った顔で、あってほしくない可能性がないことを願う。

実際、そんな話があるわけがないのだが、変にそんな可能性を考えてしまったシンヤに感化されて、全員冗談ではないという顔になってしまった。

 

「虐殺なんてクソくらえみたいなヤツが機体に乗ってみろ………平気でVXとかサリンとか機体に乗っけるぞ」

 

「むしろそれが生易しいって思えるのがアタシだけな筈…ないよね?」

 

 

…当然だ。

全員満場一致で、そんな事が生易しいの部類に入ると知っていた。というか分かっていた。

なにせ、彼が本気を出せば小国の首都は軽く落とせるというのだ。あくまで噂の域をでないのだが、当人の性格と能力からやりかねないと内心では信じているのはスタッフの中にもゴロゴロいる。

 

なにせ、面々の中では一番、住んでいる世界、経験した戦場のレベルが違うのだ。

判断、選択肢、行動も恐らくベクトルとしては上にいっているだろう。

 

 

「願わくば、そんな事があって欲しくはないってなぁ…」

 

「ないない…無い…よな」

 

「いや、言い出しっぺはシンヤだからシンヤが否定してくれないと!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で。話とは?」

 

所変わり、本拠地の中にあるマザーの部屋では、それを第一声に話が始められようとしていた。

誰も居ない、電気も付けずに外の明るさだけを頼りに光が差し込み、話は進められる。別に電気を付けなくてもいいのかと訊ねるほど、相手も親切でなければ初めての会話でもない。

 

『まぁ特にという訳ではないんですが…少しお耳に入れておきたいことを…とだけ』

 

「………。」

 

陽気に嬉しそうに話す相手に目を細めるマザーは、また何か隠し事かといつでもその隠し事を突けるように神経を研ぎ澄ませておく。

 

『今度入ってくる()ですが、どうやら持ってくる機体は特別製なようなんです』

 

「今回も…だろうに」

 

『………。』

 

 

いつもの事だが、それを少し過大にすることは相手である()がよく使う常用手段という奴だ。それだけに、それを知っていたマザーはだからどうしたと冷たい言い方で返すことがある意味決まりになってしまっている。

それは今回も使われ、マザーは細く鋭い目を針のように研ぎ澄ませて、彼の喉元へと突き刺すように言葉を返した。

 

 

「いつもそうだ。お前は何かを勿体つける。隠し事をする。それを見せるか見せないかで煽る。

 

 ―――そうして、自分たちに優位な状態を作る」

 

『………。』

 

「今更アイツが何をしようと、何を抱えていようと私の考えは変わらん。

 アイツは()が引き取る。アレはもう私の物だ」

 

だからこそ。マザーは凍りのように。氷河のように硬く、冷たいままを通す。

絶対に曲げないという意思表示を彼へと差し向けるのだ。何が来ようと、誰が何を言おうと。それは彼女が絶対として決めたことなのだ。

故に。誰も曲げることは出来ない(・・・・)

 

 

『…相変わらず…食えない人だ』

 

「………。」

 

 

なら。もう隠す必要も、焦らす必要もない。相手はそれを知っているから、分かっているからこそ、そう返したのだ。

ならばこちらも包み隠さずがセオリーというものだろう。

コレ以上隠すのであれば、それは相手を侮辱しているのと同じことだ。

小さく息を吐き、間を置いて話を続ける。

 

『ま。そうはいっても本当に大したことではないんですがね』

 

「本題はあの娘か」

 

『ええ。彼も話の一つですが、本題はと聞かれればね』

 

画面の向こう側から、何かが注がれる音が聞こえてくる。大方、最近凝っているという紅茶なのだろう。向こう側はのんびりとティータイムをしているが、今の彼女には湧かない欲求だ。

その凝った紅茶をティーカップに注いだ話し相手のミストラルは、変わらずの笑みのまま話を続けていく。

 

 

『先ず、彼女の件ですがこちらで検査時のデータと調査結果の報告書などを含めてお渡しします』

 

「…前は殆ど情報が無かったというのに…どういう風の吹き回しだ?」

 

『調査が難航していた……ではいけませんか』

 

嘘を言っているようには思えないが、それでもそれが全ての理由であるとは考えにくい。言動や素振りでそれを隠しているように見え、人によっては分からないほど巧妙に隠されている。

勘の部分もあるが、マザーはどうにもそれだけで済む理由ではなさそうだと予感していた。

 

「…一企業としての限界だな」

 

『…返す言葉もありません』

 

「まぁいいさ。それで?」

 

『結論から言えば…先に申し上げて、彼女に機動兵器への適性能力は皆無です』

 

「意図的にか。それとも…」

 

『前者でしょう。彼らの計画はあくまで兵士の生産(・・)。パイロットを育成することとは違うんですから』

 

要はその気があるか無いか。それが意図して作られたのかということだ。それが彼女を調べて分かったことであり、難癖をつけられる前にと先に報告したことだろう。

嫌味のように言っていることに変化はないが、彼も一応は事実のみを伝えている。

 

『…といっても。恐らく計画そのものは廃棄されて、生き残っている者もゼロに近いでしょう。なにせ…』

 

「完成形…か」

 

『計画は第一段階が済んだだけ。今は第二にシフトして、予想ではあと一つの工程が残っている筈。でなければ、完成は…』

 

「………。」

 

 

しかし、次の瞬間。何を思ったのか、ミストラルはそれ以上の話への踏み込みを止めてしまう。そして、わざとらしく話を逸らして別の話題を持ち出した。

 

 

『…それと。彼の方ですが機体の特徴からしてPTというより特機に近いようですので、そこはご了承を』

 

「ッ…オイ。なぜ話を逸らす」

 

『………。』

 

なにか聞かれたくないことがあるのか。それとも他の理由があるのか。

いずれにしても不自然に話題をすり替えたことに、マザーは怒りの色を示して理由説明やらを追及するが、ミストラルはその口を閉ざし続けている。なぜやどうしてやと、態度ややり方を多少変更して問いただすものの、本人は頑なにその理由を話そうとはしなかった。最後には脅し承知で物理的にと考えたが、当然そんなことは言語道断ということでマザーの内心で押し留められた。

 

「……貴様、何を知っている」

 

『……なにを…というより、ナニカ(・・・)なんですがね』

 

「………。」

 

『現状、それについてお話することはできません。それについては…お分かりを頂けると幸いです』

 

 

彼の言うこと、つまり話す事ができないのではない。

話せない(・・・・)というのが、彼の言い分の意味だろう。

言えない理由はそれで察し付いたがだからといって、理由が話されなければ納得もできない。せめてと思ったマザーは仕掛けを放った。

 

 

「なるほど…好き勝手動いていたお前でも、限界はあるということか」

 

『そりゃそうですよ。私も、こんな役職でなかったらもう少し派手に動けるのですがね…』

 

「どうかな。どの道、貴様という人間なんだ。派手に動けようがそうでなかろうが、結果は同じだろう」

 

『それはどうでしょうかね。派手に動いているのはフェイクだったりするのかもしれませんよ?』

 

「………。」

 

 

 

 

『全く…こうなっては、本当にもう一人の自分が欲しいですよ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと。んじゃ作戦の説明をするわよ。

 今回の目的は、例の場所に潜入する二人のサポート。その為に、貴方には進入路と退路の確保をしてもらうわ。それと、彼らが入りやすいように注意を引き付けることもね」

 

タブレット端末を片手に淡々と作戦について説明するリタは、特徴であるこげ茶色のポニーテールを揺らしつつ右へ左へと歩きつつも端末のデータを元に様々な情報を言う。

時間、経路、警備システムの状態。誰が居て誰が警備しているのか。何処にいるのか。交代時間は、etc…

斯くにも、そういったことをサラサラと口から出していき、反撃(質問)の隙を与えないほどに続けるのだが

 

 

「…質問」

 

「…なに?」

 

ゆるりと挙げられた手に、話を止められたリタは少々不機嫌めに挙手した質問者に問いを許す。

 

「もし。仮に俺たちの侵入がバレて、やばいことになったら…どうするんだ?」

 

「ヤバいって…どうヤバいのよ」

 

「例えば………実験された超再生能力持ちのモンスターとか」

 

「………。」

 

どこの二流ホラー映画かと、呆れてため息をつくリタは仕方がないと思ったのか一応は真面目にそれについて返答する。

調べはついてたことで、そんな事がある筈はないと知っていた彼女は、そんなこと今は知らない彼に対して、そういえばと面倒そうに口を開いた。

 

「…各自、各個の判断。アンタそれくらい分かってるでしょうが。それでも元軍人?」

 

「へいへい…俺が悪かったよ…」

 

ただ質問しただけだというのに怒り気味に返すリタに、なんで自分が非難されるのだと顔を横に向けて気持ちの籠っていない謝罪をする。どの道、質問した方が悪いというわけではないのだが、場の空気から何故か自分が悪者になっているということで、とてもではないが反論はできなかった。

 

「それと、機体の整備は終わってるから。使いたい時に使いなさい」

 

「あいよ。ありがとうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――さて。どんなところなのだろうか

 

 

そんな小さな期待を胸にしまい込み、アッシュブロンドの髪を雑に掻くと、青年は今まで座っていた椅子から立ち上がる。

元軍人。しかも、同じ出身者が居るということで彼の期待は表面に出ている様子以上。今すぐにでも会いたいという気持ちに、彼の心は突き動かされる。

そして、その為の試験がいよいよ始まろうとしているのだ。

 

 

 

「―――それじゃ。あとは任せたわよ、アスマ」

 

 

「―――ういっス…!」

 

 

 

 

 

 

アスマ=タキガヤ。

新たに旅団へと入団するメンバーの一人。

彼の出身は―――

 

 

 




オマケ。
今回出たキャラの一部設定紹介。


ミストラル (イメージCV 松岡禎丞)

旅団と関係を持つ企業に所属する青年。
外出時はトレンチコートとシルクハットを被り、商談などをすることから「奇術師」「詐欺師」などのあだ名で呼ばれている(社内も同様)
ちなみに社内や室内だと黒いベストとネクタイを着用。
本人曰く「口勝負なら負けないが、力勝負は絶対に無理」など物理戦闘は好まないらしい。また、よくつるんでいる(誤字などではなく)リタ曰く、腕相撲も弱く、成人女性でも軽く持ちあげられるほど非力。
その分、口勝負などには強く、商談・取引などは殆ど自分有利で纏められる。

趣味は紅茶集め。当然飲むことも範囲内。



リタ (イメージCV 植田佳奈)
ミストラルと行動を共にすることが多い女性。
かなり露出の多い服装をしているが、こう見えて理系派。そして科学者。
ただし、頭だけでは生きていけないということで、一時期、元SATからの訓練を受けたことがある。なので戦闘スキルは中々な物で格闘戦も得意。
しかし根は優しい性格で、人当たりもいいことから社内の女性陣に頼られることも多い。…主にセクハラ案件で。

趣味は自作カードゲーム。最近では個人業でアプリ化させて配信しているとか。



アスマ=タキガヤ (イメージCV 岡本信彦)
新たに旅団に入る予定の新人。
歳は例によって若く、性格なども相応のもの。
ただし戦闘スキルはそこそこあり、特殊合金製の棍棒を使った戦闘を行う。
服装に統一感がないなど、私生活にはかなりズボラ。そして面倒くさがりでもある。ただ、やり始めたらキッチリとしている。

とある世界の出身ということで機動兵器を保持。
その出身世界は…
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