東京にいくつかあるアンダーグラウンドへ続く高速エレベーター。その1つの前に今、俺とアリシアは来ている。
時間は10時を回ったところだ。そして、このエレベーターはエリア04の隣であるエリア03に通じている。
今日の予定はエリア04の魔物討伐。敵の総数は不明、さらに強力な個体も確認されている上にエリア04自体が魔物の巣窟。ここまで面倒な任務はない。
「さて、ここを降りたらエリア03だ」
「アンダーグラウンド…神崎司令はギルドとレジスタンスによろしくって言ってたけど…」
「ああ…エリア03にはギルドとレジスタンスの本部があるし、そこのリーダーと知り合いだからな」
俺達はエレベーターに乗り込んで2つの組織の名を出す。
ギルド、レジスタンス。この2つは主にアンダーグラウンドで活動している組織だ。ギルドに関してはA.R.M.S.で受けきれない依頼を主に請け負い、レジスタンスは魔物討伐を主に行っている組織だ。
どちらの組織のリーダーも父さんと知り合いということもあり、A.R.M.S.とは交流が深く、この3組織はユニオンと呼ばれる連合を組んでいて魔物の大量討伐の際は共同戦線を張るなど連携も取っている。
「どうするの?先に挨拶にでも行く?」
「そうだな…」
アリシアにそう聞かれた俺は少し考える。
もう少しでギルドとレジスタンスのリーダーが会うとは父さんから聞いていた。だから先に挨拶に行ってもいいが、先に任務を終わらせていた方がゆっくり話せるというのもある。
さて、どうするか…
「先に挨拶に行かない?もしかしたらエリア04の情報も手に入るかもしれないし」
悩んでいると、そうアリシアは提案してきた。
確かに、先に行けばエリア04の情報が聞けるかもしれない。今の俺達はエリア04に関しては全くの無知だ。
そんな中行くのは危険過ぎる。
そうなると答えは決まったも同然。
「よし、そうしよう。情報を仕入れておくのは基本中の基本だ」
「なら、決まりね」
答えるとアリシアは微笑み、エレベーターの画面を見る。俺もつられて見るが、既に下の方にまで降りていた。
さすがは数百メートルを数十秒で繋ぐ高速エレベーターだ。
「…着くわよ」
アリシアに言われ、視線を戻すと同時に扉が開く。目の前には巨大な街が広がっている。地下だが、暗い訳じゃない。粒子で作られた巨大な光源がアンダーグラウンド中を照らしている。
ちなみに粒子というのは能力核素粒子(Capacity Core Particle)と呼ばれるもので略称はC粒子。魔物の発生の根源であり、文字通り俺達の能力(スキル)発動の核でもある。そして、能力核とつくものの、この粒子は植物を含む全ての生物、物質に含まれ、これらの細胞や分子の結合を担っている。
今まで何故この粒子が発見されなかったというと、全ての最小単位である原子よりも遙かに小さいため、発見されなかったらしい。
そして人体に含まれる粒子量は微量であり、その粒子量が他よりも多い人間は俺達のように能力を発現させる。さらには同時に扱える粒子量によって能力レベルも変化し、多ければ多い程能力レベルも上がっていく。
この粒子の最大の特徴は『粒子同士の結合』も可能で結合レベルが上がれば上がる程、強度も増す事だ。そして『粒子のみ』で構成された物質はダイヤモンドさえも上回る硬度を持つと言われている。
その粒子のみで構成された物質というのは自然界に存在しないが、作る事はでき、俺の持つファントムペインや父さんが持つレヴァンシュベルツ・アクセリオン、エターナル・ヴァリアントがそれに当たる。
「久し振りに来たけど凄いな」
「ここじゃない?」
周りを見回しながら歩いているとアリシアに声を掛けられる。
目の前には巨大な建物。その壁には狼の紋章。
レジスタンスの本部だ。父さんによれば今日はここにギルドのリーダーが来ているらしい。
「ウチに何か用かい?」
横から掛けられた声に振り向くとレジスタンスの制服を着た男がにこやかに立っていた。
どうやら、俺達を任務の依頼に来た人間と思っているようだ。
「いや、俺達はA.R.M.S.のアカデミー生で俺は神崎那月。こっちは…」
「結城・S・アリシアよ」
「ああ、神崎って事は澪鵺さんの息子か。オレは米澤龍斗(よねざわ りゅうと)だ。リュウでいい。んで、2人はどうしてここに?」
「まぁ、ここには任務で来たんですけど、父さんにギルドとレジスタンスの様子を見てきてくれって言われて」
「ああ、なるほどな。分かった。リーダーに話通すから中でちょっと待っててくれ」
リュウはそう言うと俺達を本部の中に入れて奥の扉へ消えていく。
どうやらリュウに用件を伝えて正解だったようだ。
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「待たせたな。入ってくれ」
数分待つとリュウがさっきの扉から出て来て俺達を招き入れる。
部屋に入ると2人の男女がいた。
俺は2人共知っている。
「お久しぶりです。咲椰さん、仁さん」
「久し振りだね、那月くん」
「しばらくぶりだな。元気だったか?」
「おかげさまで」
「那月くん、パートナー出来たのね」
「今日から組む事になったんですけどね」
俺は2人に挨拶して隣でキョロキョロしているアリシアを見る。まぁ、この調子なら俺が紹介した方が早そうだな。
「こっちはパートナーの結城・S・アリシア。アリシア、こっちはギルドリーダーの間宮咲椰(まみや さくや)さん。こっちはレジスタンスリーダーの如月仁(きさらぎ じん)さんだ」
「ゆ、結城・S・アリシアです。よろしくお願いします」
「間宮咲椰よ。よろしくね」
「如月仁だ。よろしくな」
アリシアは少し緊張気味だったが、3人は挨拶を交わす。そりゃA.R.M.S.と並ぶような組織のリーダーが2人も目の前にいるんだ。緊張して当然っちゃ当然か。
そして、そのリーダーの2人は俺達を見ると真面目な顔付きになり、口を開いた。
「那月くんにアリシアちゃん、任務で来たんですって?」
やっぱりか。2人は仕事の話になると急に人が変わったように冷静になる。
それもそのはず。アンダーグラウンドでの仕事は基本的にエリア04に関係してくるもの。
その仕事は危険なものばかりだ。
その質問に俺は答える。
「はい。エリア04の魔物討伐で。こいつらです」
そう言って俺はデータデバイスを取り出し、目標の魔物データを表示する。狼のような魔物が表示され、次にそれよりもふた回りほど大きな狼型の魔物が表示される。
「ブラッドファングとブラックフェンリルか。ということは、お前達が俺達の依頼を請け負ってくれるのか」
「というと?」
「実は俺達レジスタンスも咲椰達ギルドも人手が足りなくてな。エリア04には一切手出しが出来ない状態なんだ」
「人手が足りないって何かあったんですか?」
「それは私から説明するわ。ここ数ヶ月でエリア04以外にも頻繁に魔物が出現するようになったの。しかも、そっちはエリア04みたいに封鎖されていないエリア。もちろん民間人ばかりだからそっちの方に人手が回っちゃってエリア04は全く手に負えない状態なのよ。それが原因でこいつらが一気に増えだしたの」
『な……っ!?』
咲椰さんの説明に俺達は驚愕する。
確かにアンダーグラウンドで魔物が出現することは前からあったことだ。だが、エリア04以外では2つの組織が人手不足になるまで出現する事はなかった筈なのだ。
しかもどっちの組織も戦力はあったはずなんだ。
それなのに…
「というわけで、澪鵺に頼んだって訳だ。あいつの事だからすぐ腕のある奴を手配すると思っていたが、まさか自分の息子とそのパートナーを寄越すとはな。まぁ、那月の実力は分かってるんだけどな。それに、アリシアちゃんもお前のパートナーってことは相当腕が立つと見た」
仁さんが苦笑いしながら俺達に言うが、心配しているって訳ではなさそうだ。
前から多少訓練で戦った事はあるから俺の実力を知っているってのは本当の事でもある。
「とりあえず、エリア04の事は2人に任せた。ブラッドファングとブラックフェンリルに関しては少し説明しておこう」
「ブラッドファングは群れを成して行動するけど、連携はほとんど取ることはないわ。ただ、気をつけるべき点は同レベルの魔物に比べて個体ごとの強さは上。動きも素早いから確実に1体1体仕留めないとマズい事になるわ」
「ブラックフェンリルに関しても同様。ただし、こいつは本来、群れは成さず行動する魔物だ。さらに奴は魔術に似た攻撃を仕掛けてくる。動きが止まった時は気をつけろ。だが、それは同時にチャンスでもある。一気に近付いて仕掛けろ」
2人はそこまで言うと顔を見合わせて取っ手のついた黒い缶のような物を取り出す。
「あとはこいつを持って行け」
「これは?」
「それは俺達が開発したスタングレネードだ。投げたら電撃を放って一時的に敵を動けなくする。危なくなったら使え」
「ありがとうございます」
アリシアが礼を言うと仁さんは頷いて
「気をつけてな」
そう言う。
それに俺達は頷いて部屋を出た。
「さて、情報収集もできたことだし行きましょ」
「そうだな」
部屋から出て気が楽になったのかアリシアは背中を伸ばす。その動きに合わせて後腰から長さの違う2本のベルトでぶら下げられた鞘が揺れる。
「今回の任務はなかなか厳しそうだなー…」
「まぁ、2人だしね。仕方ないわよ」
「それはそうだけどさ…」
「ここでブツブツ言ってても何もならないわ。行きましょ」
そう言うとアリシアは歩き出す。
長い廊下を並んで歩いているとふとアリシアが振り返る。
「どうした?」
聞きながら俺も振り返ると視線の先には黒い衣装に身を包んだ人が人混みに消えていった。
「あれは…」
「…ギルドの死神。ふと現れては圧倒的戦闘能力で戦場を制圧して消えていく」
聞いた事がある。黒い衣装に身を包み、武器はエナジー・デスサイズと呼ばれる巨大な鎌。そして、戦場に現れては1人で多数の敵を相手にして殲滅する。だが、フードで顔は隠していて本人も喋らず、性別、年齢を含む何もかもが不明。分かっているのはその戦闘能力とギルドに所属しているという事だけ。
「あれが…ギルドの死神…」
異様な雰囲気を感じると共にどこか懐かしい感じもする。何だ…この感じは……。
「ここね…」
アリシアは巨大な壁を前に呟く。
俺達は今、アンダーグラウンド・エリア04に繋がる入口の前にいる。
エリア04は他のエリアと違い、魔物の攻撃を受けても破壊されない対魔障壁と呼ばれる巨大な壁で区切られていて、中に入るにはこの扉を通らないと入れない。
そして、ゲートと呼ばれるこの扉は二重になっていて出入りする際に中から魔物が出てくる事を防いでいる。
「…行くぞ」
俺の言葉に頷き、アリシアは後ろからついてくる。扉の前まで行くと見張り役の男が2人。
この入口は外側からの侵入者と内側から魔物が脱走する事を防ぐため、常に両方に2人ずつ見張りがいるらしい。
そのうちの1人が俺達を確認すると声をかけてくる。
「通行許可証を」
そう言われ、俺とアリシアはA.R.M.S.のライセンスデバイスを見えた後、任務情報を表示したデータデバイスを見せる。
「アカデミーの方でしたか…。ですが、アカデミー生はエリア04には立ち入り禁止だった筈では…」
「父さ…神崎司令からの特別任務だ」
「神崎司令の息子さんでしたか!これは失礼致しました!」
「中の様子は?」
「それが…普段より魔物の数が増えて手に負えなくなってきています…」
「そうか…」
「那月。急ぎましょ」
「そうだな。行こう」
アリシアに頷いて俺達は開いた扉を通る。
奥にはもう1枚の扉。あれを通ればエリア04だ。後ろで閉じようとする扉の前で2人は敬礼してこちらを見ていた。
「お気をつけて」
2人がそう言うと同時に扉が完全に閉じる。
「さて、任務開始だ」
俺の言葉を合図にアリシアは後腰に吊した剣の柄に手をかける。
目の前で扉が開くと、そこは荒廃した街の姿だった。ずっと放置されていた建物はいくつかが傾き、他の建物も崩れかかっているものばかりだ。
「ここがエリア04…」
「いかにもって場所だな」
「那月。目標の位置は?」
「ここから西に500m進んだ所だ」
「意外と近いのね」
「そうだな。でも油断はするな。敵がどこから来るか分からないからな」
話しながら進んでいると、すぐに目的地には着いた。巨大なビルだ。
「入るぞ」
そう言って中に入る。
中は明かりがなく、薄暗い。光が差し込んでいる辺りは辛うじて見えるが、奥に進めば真っ暗で何も見えない。
だが…気配はする。魔物だ。
「…気をつけろ」
「これは…多いわね」
『グルルルルルルルル…』
奥から魔物の唸り声が聞こえる。
10体…いや、それ以上か…。情報通りかなりの数がいるようだ。確かにこれを放っておいたらとんでもないことになりかねないな。
だが…こっちは2人。囲まれたら終わりだ。
「アリシア。退路を意識しておけ。囲まれたら厄介だ」
「わかってるわよ。でも、どうするの?このまま構えてても埒があかないし、かといって下手に突っ込んでも死ぬだけよ」
「そこは考えがある」
「どんな作戦よ?」
「敵を分断して数を減らしていく」
「具体的にはどうするのよ」
「…左側の階段、魔物の反応がないんだ。2階にもいない」
俺はそう言いつつデータデバイスを見せる。そこには目の前に複数の魔物の反応はあるが1階以外には一切反応がなかった。
「つまり、今ここにはこいつらしかいない。恐らく他は狩りにでも行ったか何かだろう。とりあえず左側の階段から2階に上がるぞ」
「そこからはどうするのよ」
「俺に任せろ」
それだけ言うと俺は指輪にC粒子を流し込む。
だが、起動はしない。こちらに何か動きがあれば奴らは動き出す。
「今だ!走れ!」
俺とアリシアは同時に階段に向かって走る。それに合わせて奴らもこちらに向かって走り出す。
(掛かったな…!)
階段を登り切り、俺は即座に柱の陰に身を隠す。
(よし…今だ!)
魔物が半分くらい入ったところでファントムペインを起動して飛び出し、天井をF(ファイア)-M(マジック)カートリッジで撃つ。
銃口に魔法陣が展開し、炎の弾丸が天井を吹き飛ばす。
『ガァァァァァッ!!』
降ってきた瓦礫は真下にいた数体の魔物を下敷きにして階段を塞ぐ。
なんて威力だ…。これがエネルギーを全消費して放つMカートリッジの威力なのか。
(って、そうじゃない!)
早くアリシアの所に行かないとマズいな。
「はぁぁぁぁぁっ!!」
途中にいたブラッドファングを斬り捨てながら俺は走る。
するとすぐにアリシアには追いついた。
「アリシア!」
「奴らは!?」
「作戦成功だ!数体は瓦礫の下敷き、残りは1階。今ここにいるのはこいつらだけだ」
俺とアリシアは魔物を挟んで剣を向ける。
案外あっさりいけたりするのか?
いや、早計すぎるか。
「いくぞ!」
「ええ!」
フォトンブレードを抜き放ち、粒子の刃を形成する。それと同時にファントムペインの光剣(フォトンブレード)も発動させる。
まずは目の前の2体めがけて剣を振るい、2本の光の剣が蒼い軌跡を描いて魔物を斬り裂く。
「あたしだってやれるわよ!」
同じくアリシアも自身のガンブレードの光剣を発動して魔物を次々とぶった斬る。
「ほんと強いよな。お前」
「何言ってんのよ。でないと、あの神崎司令から極秘任務なんて来るわけないじゃない」
「ははっ。そりゃそう、だ!」
噛みついてきた魔物を剣で受け止め、床に叩きつけてフォトンブレードで斬る。
「それにしても、あんたこそ強いわよね。能力を一切使わなくてそれなんだか、ら!」
「そりゃ、訓練してるからな!って、おおっ!?」
魔物を斬ってアリシアの方を向くと彼女はスカートを翻して魔物を蹴っ飛ばしていた。
なにやってんだよ…
…見えたかもしれないじゃないか。
(って何考えてんだ俺は!)
飛んできた魔物を両手の剣で斬る。
というか、アリシアの戦い方豪快すぎるだろ…。
スカート翻しながら魔物を蹴り飛ばすとか。
「さて、こいつで最後よ!那月!」
「ああ!いくぞ!」
俺達は同時に剣を構えて駆ける。
そのまますれ違いざまに最後の魔物を斬りつけ、振り返る。
2階の魔物は全て倒れ、辺りは血まみれになっていた。
「さて、ここの奴はこれで最後か。次は下の奴らだな」
「そうね。残りは何体くらいなの?」
「そうだな…確認した限りだと残りは18体くらいだ。奴らが増援でも呼んでない限りな」
「大丈夫でしょ。ほら、行くわよ」
そう言いつつアリシアはガラスのない窓から飛び降りる。ホントに度胸あるやつだよ。まぁ、2階だから大丈夫だけどさ。
そう思いつつ俺も飛び降りる。
だが…嫌な予感ってのは当たるもんだよな。
こういう時に限って………。
「おいおい…冗談だろ」
「あは、あははははは…」
飛び降りた場所から入ってきた入り口の方に戻ると…
「多すぎだろ…」
さっきとは比べものにならない数のブラッドファングと…ふた回りほど大きな魔物。ブラックフェンリルが待ち構えていた。
さすがのアリシアもこの数は気が引けたのか顔は引きつって乾いた笑い声をあげている。
「ねえ…これどうすんの…っていうか、ブラックフェンリルって群れ成さないんじゃなかったっけ…」
「どうするって…倒すしかないだろ…」
俺達は魔物の群れを見て引きつりながら話す。
いやまぁ、これどう考えても…
「無理でしょ!こんな数相手にするなんて!」
デスヨネー!!
だが、そんな事もお構いなく魔物の数体が俺達に向かって全速力で向かってくる。
マズい。これはやられる。
そう思った矢先─────
──ダァァァァァァァン───────!!
辺りに響き渡った爆音と共に目の前の1体がまるで巨大な剣に斬りつけられたかのように真っ二つになって血を撒き散らしながら吹っ飛ぶ。
そして1テンポ遅れて目の前に無数の粒子弾が駆け抜け、こっちに向かってきたブラッドファングを貫く。
「な、なんだ…」
状況に追いつけず、固まっていると遠くから声が聞こえてきた。
「よお、2人共生きてるか?」
どこかで聞いた事のある声だ。
まさか…!
「助けに来てやったぜ」
『ライト!』
俺とアリシアは同時に叫ぶ。
そこに立っていたのは俺達の1つ上の学年である峰崎来斗という人物だった。
みんなにはライトの愛称で呼ばれている。
「どうしてここに…!っていうか、さっきの銃撃は…」
「あーあー。一気に喋るな。お前の親父に助っ人として送られた。んで、1発目は真奈の狙撃。2回目はオレ達だ」
「俺達って……。由香、雫…!」
『やほー。待たせたね』
装着した通信機からどこかにいるであろう真奈の声が聞こえる。
そしてライトの後ろには俺の見知った顔が揃っていた。
その中にはなんと…
「ギルドの死神…!」
アリシアの言葉通り、そこには黒い衣装にロングコートのフードで顔を隠したギルドの死神と恐れられる人物まで来ていた。
「お前…どうして…」
「なんか途中で合流してな。よく分からんが一緒に来た」
「よく分からんって…」
「グダグダ話すのは後だ!来るぞ!」
「…!」
『グルルルル…』
ライトに言われ、魔物に向き直ると今にも飛びかかって来そうな勢いで唸っていた。
「アリシア」
「ええ…いくわよ!」
それを合図に俺達と魔物は同時に走りだす。
後ろでギルドの死神が懐から取り出した金属のスティックを振るい、それを伸ばすと粒子で構成された巨大な刃が形成される。その姿はまるで死神の鎌───デスサイズ。そしてそれを握る姿もまさに死神そのものだ。
「………」
死神は無言で駆ける。
そしてその巨大な鎌、エナジー・デスサイズで次々と斬り裂いていく。
「オレも負けてられねえなぁ!」
そうライトは叫びながら腰のホルスターから2挺のうち1挺のロングレンジリボルバーデバイス、ファフニールを取り出す。そのデバイスは特徴的な形状をしており、マガジンであるシリンダーが通常よりも長いものになっている。それはファフニールがライフル用の弾薬であるライフルカートリッジを使用するためだ。その為、ファフニールには驚異的な射程距離と威力が与えられた。まさに『悪竜』だ。
「喰らってみな!」
右手に持ったファフニールのトリガーを引いたまま左手でハンマーを叩く。あれはライトが得意なガンプレイの1つ、ファニングショットだ。一瞬のうちに8発装填された弾薬を全弾撃ち尽くすとそれを回転させ、ガンスピンでホルスターに納める。
そしてそのまま敵のど真ん中に突っ込むと…
「うおらぁぁぁぁッ!!」
もう1つの武器であるエナジーウィップを取り、回転するように敵を弾き飛ばす。
エナジーウィップとはその中の通り粒子の刃を構成できる機能を持った鞭だ。ライトのそれは細かな刃が内蔵されていて柄のボタンで展開する事が出来る。
「流石だな。ライト」
俺は魔物の斬り倒しながらライトに近寄って声を掛ける。
「それで?真奈はどこにいるんだ?」
「あの建物の上だ。あそこから狙撃している」
ライトの視線の先には周りより少し低めの建物が。どうやら真奈はあそこから狙撃してるようだ。
「真奈ー。武器は相変わらずみたいだな」
『当然!ヘカートでしょ!』
「俺達に当てるなよ」
『ちょっとー。誰に言ってるのかなー?私の能力ナメないでよね』
「頼りにしてるぜ」
『まっかせなさい!』
真奈は笑いながら返事すると俺の真横にいたブラッドファングを吹き飛ばす。頭が吹き飛ばされ、そのまま動かなくなる。
真奈の武器は対物(アンチ・マテリアル)ライフルであるウルティマラティオ・ヘカートⅡだ。その脅威的な威力は魔物を1撃で沈黙させる。
そして彼女の能力もまた狙撃に向いたもので能力はレベル4の鷹の目(イーグル・アイ)。発動中は視力が良くなるばかりじゃなく、どちらの目も利き目(マスターアイ)にする事ができ、スコープを覗きながら周囲の状況把握が出来る。
「ガンガンいくよー!」
続いて元気な声を上げながらマシンガンデバイスという物騒な物を構えたのは相澤由香(あいざわ ゆか)だ。フェルニゲシュと名付けられたそれを魔物めがけてぶっ放す。
残ったブラッドファングが全て彼女の銃撃によって沈黙する。
「ふー!やっぱりフェルニゲシュ最高!」
笑顔でカートリッジを撃ち尽くしたマガジンを外して新しい物と交換する。ホントにこいつだけは色んな意味で恐ろしいよ…。
「さて、残ったのはこいつだけね」
剣に付いた血を払ってアリシアはブラックフェンリルを睨みつける。
すると
「…私に任せて」
後ろから静かに小柄の女の子、霜月 雫(しもつき しずく)がブレードデバイス、アブソリュートを引き抜きながら歩いてくる。鞘から抜かれた刀身が展開され、日本刀と呼ぶには太めの片刃の剣となる。白い刀身に水色の刃。その姿は美しく、また恐ろしさを感じさせる。
「来たれ、無慈悲なる白銀の棺…」
淡々と呟くように唱えられた詠唱により周囲に氷の粒が出現する。吹き荒れる吹雪で彼女の長い水色の髪と白いマフラーが靡(なび)く。
彼女の能力はレベル5の嘆きの吹雪(コキュートス・ブリザード)。氷の能力だ。
「アイスコフィン」
呟くような彼女の言葉を合図に周囲の無数の氷の粒がブラックフェンリルめがけて駆け抜ける。
『ガァァァァァァァッ!!』
「す、凄い…」
アリシアがそう呟くのも無理はない。
なんと無数の氷の粒は巨大な氷の棺となり、ブラックフェンリルを氷付けにしていたのだから──────
To be continued!!!!!
さて、長らくお待たせしました!
Gears of Destiny第3話です!
新キャラが何人か登場して戦闘シーンも今回から長くなっていきます。
しばらくは戦闘シーンが続きますが暫くお付き合いください。
では、次は第4話でお会いしましょう!
See you next time