明けましておめでとうございます
今回は短いですが、4話どうぞ
Gears of Destiny Mission04 戦場に舞う翼
「これで…終わったの…?」
アリシアが警戒しつつガンブレードデバイスを構えたまま氷付けになったブラックフェンリルに近寄る。
他のメンバーも同じく警戒を解いてはいない。
俺自身もこれで終わったとは思えない。あの父さんが危険視するような魔物だ。この程度で終わる筈がない。
そんな俺の考えを読んだかのように氷の中のブラックフェンリルの目が紅く輝く。
「来るぞ!」
『グオォォォォォォォオオオオオ……!!!!!』
俺が叫ぶと同時に氷の棺が砕け、中から出てきたブラックフェンリルが咆哮する。
空気がビリビリと振動し、動きを封じられる。
「く…動け…ない…!」
最も奴の近くにいたアリシアは声を振り絞るが動けない。
だが、ブラックフェンリルは彼女に狙いを定め、襲いかかる。
「動け…動けぇええええええ!」
彼女を守りたい。ただ、そう思った俺の体はブラックフェンリル目掛けて走っていた。
そしてそのままファントムペインを振りかざし
「───剛破衝!!」
地面を斬りつけた。
その斬りつけた断面から粒子が衝撃波として吹き出し、ブラックフェンリルを襲う。
(今だ…!)
続けてここに来る前に貰った放電手榴弾(スタングレネード)のピンを抜いて投げる。
それがブラックフェンリルの足元に転がると炸裂して電撃を放つ。
簡単な説明は聞いていたが、これは閃光手榴弾(フラッシュグレネード)や音響手榴弾(ロアーグレネード)などとは違い、電撃を放つ事で敵にダメージを与えた上で一時的に痺れさせて敵の動きを封じるという代物のようだ。
『ガァァァァァァァァァァアアア!!!!!!』
ブラックフェンリルが怯んだ隙にアリシアを抱えてグラビティギアを起動する。すると紫色の光が俺とアリシアを包み込んで消える。
このまま戦っても勝ち目はないだろう。
そう判断した俺は
「体制を立て直す!逃げるぞ!」
仲間達の所まで戻り、そのままブラックフェンリルから距離を取る。
奴が動けない今なら、ある程度逃げる事は可能だ。だが、さっきの攻撃でダメージを与えられたとは思わない。雫のあの攻撃でさえほとんど効果がなかった。
それとも一部の属性に対して耐性があるのか?
いや、考えるのは後だ。今は安全な場所まで逃げて対抗策を考えないと。
「どういう事だ…雫の攻撃が効かなかったなんて…」
近くの建物に逃げ込むとライトは外を睨みながら呟く。
俺はアリシアを座らせ、ライトに並んで外を見る。少し先にブラックフェンリルが俺達を見失ったのか周囲を見ていた。
もうスタングレネードの効果は切れたようだが、完全には回復していないらしく少しは時間を稼げそうだ。
「う…ありがと…」
ふとアリシアは俺を見上げて礼を言ってくる。
「パートナーだろ。当たり前だ」
そう返すと俺はデータデバイスを取り出してブラックフェンリルのデータを開く。
思った通りデータは更新されていて詳細データが表示されていた。
「これを見てくれ」
「これは…ブラックフェンリルのデータ?」
窓から入ってきた真奈が画面を見て聞く。その手には大型のライフル、ヘカートⅡが握られていた。
それに頷いて俺は続ける。
「そうだ。そこで皆分かったと思うけど、奴に雫の攻撃は一切効いていない。雫の能力(スキル)レベルは5。しかもさっきの攻撃は普通なら1撃でほとんどの敵を倒せる程の威力だった。なのに奴は平然としていた。それはどうしてか」
「…属性耐性」
「そう。奴は水や氷なんかの属性に対して圧倒的な耐性を持っている」
冷静に呟く雫に肯定してブラックフェンリルの詳細データを開いて皆に見せた。
そこには火、水、風、地、氷、雷、光、闇と大きく8種類に分けられた属性表があり、その中でも2種類だけ圧倒的に高いデータが記されていた。
これは魔物にその属性に対する耐性が高いということを示している。
「それじゃあ、このデータを見る限りでは水と氷以外の属性なら効くって事?」
「そうなるな。でも、ここにいるメンバーでは能力によるダメージを与える事は出来ないだろう」
俺は今いるメンバーを見て言う。
攻撃タイプの能力を持つのは俺と雫だけ。でも俺はレベル1だから能力なんかあってないようなものだ。
「そういえば、アリシアって能力は…」
ふと俺がアリシアに能力があるのか知らない事を思い出して聞くが、アリシアは首を振り、
「ダメ。能力はあるけど、あたしの能力は防御系だから攻撃に転用は出来ないわ」
そう否定する。
そうなると、あとは
「ギルドの死神…お前はどうなんだ」
ライトが聞くが、死神は肩をすくめてみせる。
それはダメという意味だろうか。
「どっちにしろ今はやるしかないんだよね。協力すれば何とかなるよ」
そう言いながら由香はフェルニゲシュを粒子に分解して立ち上がると、代わりに紫色の剣を出現させる。
これは由香の能力である粒子分解融合(クロス・コンタミネーション)。この能力はあらゆるものを粒子に分解して自身に融合させるというものだ。彼女はこれを利用して複数の武器をこうして持ち歩いている。
「そうそう。支援攻撃は私に任せて。皆は派手にやっちゃってくださいなー」
そう言い残して真奈は階段を駆け上がっていく。
残された俺達は
「んじゃ、お言葉に甘えて派手に行きますか」
ライトの言葉に頷き、再びブラックフェンリルに向かって走り出す。
「地龍双衝牙!」
「爪牙一閃!」
地面を斬るように剣を振り上げ、そのまま剣を振り下ろす。剣の軌跡をなぞるそうに粒子が2連の衝撃波となって地を駆け抜ける。
それに続けて建物の陰から接近していたアリシアが粒子を纏わせた剣で奴を頭上から斬りつける。
俺の攻撃に気をとられ、反応が遅れたせいでアリシアの攻撃を受け、ブラックフェンリルはバランスを崩す。
そこに
「由香!」
「アイアイサー!派手にぶっ放すよー!シューティング・アロー!!」
さっきの紫色の剣を弓に変形させた由香が複数の粒子の矢をブラックフェンリルに放つ。
あの剣は粒子弓への変形機構を備えたアローブレード、サジタリウスだ。
『ガァァァァァァ…!』
「やったか!?」
「いや、まだだ!」
俺の言葉にライトは否定し、2挺のファフニールを構える。
すると連続で攻撃を受けたブラックフェンリルは咆哮し、その足元に黒い魔法陣を出現させる。
「くるぞ!」
ライトの叫びと同時に奴の周囲に黒い光の球のようなものが出現し、そこから黒いビームのようなものを放つ。
だが
「やらせないわよ!」
咄嗟に俺達の前に飛び込んだアリシアが光の壁のようなものを展開し、それを防ぐ。
あれは対粒子障壁、Cフィールドと呼ばれるものだ。
それを展開したアリシアの右目は蒼く発光し、その瞳にはΛ(ラムダ)の文字のような紋様が浮かんでいた。
「アリシア…それは」
「驚いた?これがあたしの能力の能力妨害無効化(スキルジャマー/キャンセラー)よ。ちなみにレベルは4。よろしくね」
そう言うとアリシアはブラックフェンリル目掛けて走る。
その後ろにギルドの死神も続く。
「はああああああっ!」
「………」
アリシアと死神が斬りかかるが、その攻撃も弾かれ、更にブラックフェンリルは前脚を振り上げ、死神へと襲いかかる。
「っ…!!」
間一髪のところでそれを避ける死神だが、その顔を隠すフードの一部が引き裂かれていた。
その隙間から金色の髪が見える。
「…あーあ、せっかくのフードが台無しじゃん。どうしてくれんの」
「喋っ…た…?」
今まで全く言葉を発さなかった死神が喋った事に驚き、アリシアはキョトンとしている。
そして俺もまた、その声に聞き覚えがあることに驚きを感じていた。
「…隠し通そうと思ってたのに、バレちゃったか。ま、仕方ないか」
そう呟くと死神はそのフードを外し、素顔を露わにする。
やはり、間違いない。
その人は、
「シャル、か……?」
「久しぶり、那月」
そう、その人は幼い頃の魔物襲撃で生き別れになった幼なじみであるシャーロット・ヴァーミリオンだ。
「え…?女の子!?ええ!?」
アリシアはシャルを見て驚いているが、今はそんな余裕はない。
「さて、積もる話もあるけど、今はこいつが最優先!いくよ!」
シャルはそう言って再びエナジー・デスサイズを握って駆け出す。
「ほら、アリシア。いくぞ!」
「え、ええ…」
「あいつのことは俺も驚いてる。でも今は戦いに集中しろ」
「わ、わかってるわよ!」
アリシアを諭し、シャルに続く。
まさかシャルがギルドの死神だったとはな。
まぁ、あいつの能力なら死神といっても過言ではないか。
「シャル!俺達があいつの注意を引く!その隙にやれ!」
「わかった!任せて!」
「アリシア、由香、雫、ライト!奴の動きを封じる!いくぞ!」
『了解!』
俺の号令に4人は頷き、俺とアリシア、由香、雫はブラックフェンリルを囲うような陣形になり、ライトは建物の中へと駆け込む。
「氷爪牙・剛破」
呟くような掛け声と共に雫はアブソリュートを地面に叩きつける。
剣から放たれた氷が地面を伝い、衝撃波のようにブラックフェンリルへと襲いかかり、その脚を氷が飲み込む。
「今…!」
静かに雫は合図するとアリシアと由香がそれぞれの剣を構えてブラックフェンリルの脚を斬りつける。
『グオオオオオ…!』
無論、脚を封じられて動けないブラックフェンリルは攻撃を受け、咆哮する。だが、それでも攻撃は止めない。
俺は攻撃のタイミングを見計らい、剣に能力で作り出した電流を纏わせる。
父さん程強い攻撃は出来ないが、これでも攻撃にはなるはずだ。
「那月!」
「迅雷爪衝牙!!」
アリシアの合図で剣を振るい、圧縮した電撃をブラックフェンリルに放つ。
『ガァァァァァァァァァァアアア!!!!!』
効いた…のか?
咆哮するブラックフェンリルを見て俺は片膝を着く。
やっぱり慣れない事はするもんじゃないな。
1回能力を発動させただけでこれだ。
「これでも喰らいな!」
頭上から降ってきた声に顔を上げると建物の上から飛び降りたのだろうライトがエナジーウィップの光刃(フォトンブレード)を発動させ、ブラックフェンリルの背中を斬りつける。
鮮血が噴出し、ブラックフェンリルは反撃しようとするが、動きを封じられ、なにも出来ない。
そこに何もない場所から現れたシャルがエナジー・デスサイズを更に巨大化させ、蒼い巨大な粒子の刃にする。
あれこそシャルの能力である死神の力(リーパー)だ。
シャルはあの能力で姿を消すことができる。
「これで、終わりだぁぁぁぁぁぁぁ!」
シャルはその巨大な刃を振り下ろし、ブラックフェンリルを斬りつける。
『ガァァァァァァァ!!!!!』
背中を大きく引き裂かれ、鮮血を撒き散らしてその場に崩れ落ちる。
「終わった…」
ブラックフェンリルを倒して気が抜けたのか、アリシアのその場に座り込んでしまう。
何がともあれ、今回の任務は何とか終了できたようだ。
正確には終了報告をした時点で終了なのだが。
「那月、ちょっときてくれ」
「どうしんだ?」
ライトに呼ばれ、行ってみると青い水晶のような物を手渡される。
「これって…」
「ああ、コア・クリスタルだ。まさかとは思ったけど、本当に持ってたみたいだな」
ライトの言うコア・クリスタルとは、C粒子が凝縮して結晶化したもので、対粒子障壁を起動させるデバイスや飛空挺のドライヴユニットに使われるものだ。
自然に存在するコア・クリスタルは珍しく、巨大なものばかりでそれは飛空挺のドライヴユニット…エンジンのようなものに使われている。
小さなものはこのような強力な魔物を倒すと落とす事があり、こうして手に入れる。そのままでは使えず、売れば高値で買い取ってもらえるが、これを加工する事ができる人間に渡せば色々なデバイスを作って貰う事も可能だ。
もちろん、コア・クリスタルを持つ魔物は強力なものばかりなので危険は伴うが。
「とりあえずこれは持ち帰ろう。まずは父さんに任務終了の報告だけしておく」
「任せたぜ」
ライトに肩を叩かれ、俺は頷いて父さんに通信機で連絡をとる。
操作するとすぐに繋がった。
「ブラックフェンリル討伐完了だ」
それだけ言うと父さんは驚いたような声を返してくる。
『もう倒したのか。苦戦してると思って来てみたが、その必要もなさそうだな』
「確かに苦戦したけど、なんとかな」
『そうか。回収してやるから壁の前まで────』
『グオオオオオオオオオオォォォォォォォォ──────!!!!!』
そこまで父さんが、言い掛けると、不意に魔物の咆哮が辺りに轟く。
周囲を確認するが、何も見えない。
だが、その魔物はすぐに発見出来た。
「那月…あれ…」
アリシアが指差す方角を見ると、そこには巨大な翼を持った魔物がエリア04の空を飛んでいた。
間違いない、あれは…ドラゴン種だ。
魔物の頂点に君臨すると言われる魔物、その存在は予想されていたが、確認はされていなかった。
それが、本当にいるとは…
『那月!今のはなんだ、那月!』
父さんからの通信に我に返って慌てて報告する。
「ドラゴン…ドラゴンだ。エリア04の空にドラゴンがいる…!」
『なっ…ドラゴンだと!?そんなバカな…!』
父さんは信じられない、とでも言いたげだが、続けて入ってきたA.R.M.S.本部からの通信でその存在は確固たるものとなる。
『アンダーグラウンド・エリア04にて巨大な魔物反応を確認!これは…ドラゴン種です!』
『嘘だろ…那月!今すぐそこから離れろ!危険だ!すぐに俺も行く!』
「でも、どこに…」
『どこでもいい!早く隠れろ!お前達では勝ち目はない!』
父さんは必死にそう言うが、ドラゴンはこっちを見て、向かってくる。
「悪い、父さん。見つかった。これから戦闘態勢に入る」
『待て、那月!』
無理矢理通信を切断し、剣を構える。
逃げろとは言っても、こんな奴から逃げられる訳ない。
なら、戦うしかないじゃないか。
「おいおい、那月。マジかよ。勝てっこねえぜ」
ライトが隣に来て愚痴をこぼすが、俺は首を振る。
「勝とうとは思ってない。でも、こいつから逃げられる訳もない。なら、父さんがここに来るまで戦って時間を稼ぐしかない」
「まぁ、その方がいいかも。下手に背を向けてやられるのは嫌だしね」
シャルは俺に同調して隣に来る。元の姿に戻ったエナジー・デスサイズを肩に掛けてこっちに向かってくるドラゴンを見つめる。
「今はそれが最善の選択かもね。あたしもここで死ぬなんてごめんだわ」
「…私もここで死ぬ訳にはいかないから」
「ま、なんとかなるっしょ。時間稼ぎくらいならね」
アリシア、雫、由香も武器を構える。
『サポートくらいならするよ』
真奈も通信を介してそう言ってくれる。
そして、俺達の頭上をドラゴンの巨大な体躯が通り過ぎ、突風に身体が吹き飛ばされそうになるのを耐え、次に前を見た時にはそこにドラゴンが降り立とうとしていた。
巨大な漆黒の体躯に4本脚、まさに魔物の王とも見て取れる姿だ。
その巨大な体躯が地面に降り立つと、辺りが大きく揺れ、立っているのもやっとだ。
『グオオオオオオオオオオオ…!!!!!』
咆哮で空気が振動し、建物のガラスが割れる。
ブラックフェンリルもだったが、こいつは桁違いの恐怖を感じる。
身体が強ばり、震える。これが死を目の当たりにするということなのか、分からない。
でも俺達は死ぬ訳にはいかない。
「なんとしても父さんが来るまで耐えるぞ」
ただ俺はそう呟くと、ドラゴンはすぐに攻撃を開始する。
その巨大な口から火炎球を放つ。
「避けろ!」
叫び、真横の建物の隙間に飛び込む。真後ろを火炎球が駆け、爆発する。
…いや、これ勝てないどころか目の前に立ったら確実に死ぬよね、これ。
「それで、どうするんだ」
「とりあえずここから離れるぞ」
ライトにそう答えると、その場からすぐに離れる。
直後、さっきまで俺達がいた場所の建物がドラゴンの攻撃によって吹き飛ばされる。
「とにかく、どこかに隠れて作戦を練ろう」
「賛成。無闇に突っ込んでも死ぬだけだわ」
アリシアの賛成を受け、とりあえず近くの建物に入る。
データデバイスを見ると、どうやらまださっきの場所で俺達を探してるみたいだ。
「それで、何か案は?」
「相手が相手だからな。どうしようもないな…」
シャルにそう返して考える。
何か、手はないのか。
それ以前に攻撃が通るとは思えない。
「強力な武器があれば…」
由香の呟きに俺は思いつく。
あるじゃないか、強力な武器。
「1つだけ、奴にダメージを与える事が出来る可能性ならある」
「!!なに!?」
アリシアは俺の肩を掴んでくるが、それを離して言う。
「このファントムペインには1種類だけ強力なカートリッジがある。でも、試した事はないし、どれだけ効果があるかもわからない。一か八かの賭けになる」
そう、このファントムペインには1種類、ファントムバレットと呼ばれる通常のカートリッジの何倍もの威力を持つカートリッジがある。でもそれを俺は試した事がなく、どれだけの威力があるかも分からない。
「それでも、試す価値はあると思う」
不意に真奈が声を掛けてきた。
また窓から入ってきたのだろう。ヘカートⅡを脚の間に挟むようにして座る。
「今の私達はあいつにダメージを与えられる程強力な武器は持ってない。だから、少しでも可能性があるなら試してみないと。生きて帰る為なら、何でもする。今は那月だけが唯一の希望なんだから」
「…わかった。やってみよう。逃げてるだけじゃ、いつかは捕まる。なら、こうするしかない」
「それじゃ、反撃開始といきますか!」
真奈に頷き、それぞれの武器を握る。
逃げるのは終わりだ。俺達は生きて帰るんだから。
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────────────
「こっちだ!」
建物の陰から飛び出し、粒子弾を撃ち込む。
だが弾かれ、攻撃が通らない。
やっぱり通常のEカートリッジでは無理があるか。
なら…
「これならどうだっ!」
ファントムペインの2つのトリガーを同時に引く。
すると、
「ぐっ…!?」
凄まじい衝撃と共に銃口から黒い粒子弾が撃ち出される。
だがそれも反動で狙いが外れ、ドラゴンの後ろの建物に当たって壁を貫く。
威力としては申し分ないようだ。
これならもしかしたらいけるかもしれない。
「那月、避けて!」
真奈の声に振り向くと、ドラゴンが火炎弾を放とうとしていた。
これは避けるのは無理そうだ。
(なら、こうするまでだ…!)
再びファントムペインを構え、銃口をドラゴンの頭に向ける。
「当たれええっ!」
トリガーを引くと同時にドラゴンも火炎弾を放つ。
「那月!」
遠くでライトが叫ぶのが聞こえた。
だが、火炎弾は俺には当たらず、ファントムバレットとぶつかり合い、爆発する。
爆風で吹き飛ばされはしたが、なんとか無傷だ。
この威力なら、ダメージを与えられる。
そう確信した俺はすぐさまファントムペインをドラゴンへと向け、トリガーを引く。
再び放たれたファントムバレットはドラゴンの左脚に当たり、ドラゴンを怯ませる。
「やった…!」
目立つ傷こそないが、確実にダメージは与えられた。
それだけで今は十分だ。
「那月、早くそこから離れて!」
真奈がヘカートⅡでドラゴンを撃ちながら叫ぶ。
それに頷いて距離をとる。
これならなんとか耐えられるだろう。
だが、その考えは甘かったとすぐに思い知らされる。
「那月、危ない!」
「え…?」
自信にダメージを与えられ危険だと察知したのか、ドラゴンは再び俺に狙いを定め、火炎弾を放とうとする。
至近距離だ。
これは避けられない。
ここで俺は死ぬのか。こんなところで。
『那月!』
仲間たちが俺の名前を叫ぶのが聞こえる。
視界がスローになり、死を覚悟した。
だが、その火炎弾は俺とドラゴンの間に撃ち込まれた巨大な粒子弾の爆発により、放たれなかった。
「な、なんだ…?」
「なんとか間に合ったか」
頭上から降ってきた声に顔を上げると、そこには父さんがいた。
その手には巨大なライフルデバイスであるバスターライフルが握られている。
「全員生きてるな?」
父さんはそう確認するとバスターライフルを2つのライフルデバイスに分解し、後ろから何基ものライフルデバイスと匣型のデバイスを出現させる。それはライフルビットとホルスタービットと呼ばれるもので、ライフルビットは普段ホルスタービットの中に格納されていて攻撃時に射出され、遠隔操作で攻撃する宙を浮くデバイスだ。
そしてライフルビットを射出したホルスタービットはシールド代わりにもなり、組み合わせれば上に乗って移動も可能となる。
「さあ、覚悟しろ」
12基のライフルビットがドラゴンを囲い、集中放火を浴びせる。
さらにそこへ父さんの持つライフルビットの攻撃も加わる。
「す、凄い…」
「これが神崎司令の戦い…」
あの巨大なドラゴンに一方的に攻撃を加える姿を見て真奈、由香は呟く。
だが、これが本気でないことを俺は知っている。
『グオオオオオッ!!!!!』
攻撃を受け、ドラゴンは咆哮しライフルビットを振り払う。
そして父さんのいる建物を破壊するが、父さんはそれも避けて地面に降りる
「さすがにあいつは厄介だな。空を飛ぶとなると更に。とにかくここを離れるぞ」
その指示に従い、俺達はその場を離れる。
「これ、どうするんだ。司令」
「ライト、俺もこいつを倒そうとは思ってない。まずこのメンバーだけで勝つのは不可能だ」
「神崎司令でも勝てないって、あいつそんなに強いの?」
「ああ。だが、強いってよりは粒子系の攻撃が効きにくい事が厄介なんだ」
「粒子系の攻撃が効かない?」
アリシアへの答えに疑問を抱いた真奈が聞く。
「そうだ。奴の持つコア・クリスタルが対粒子障壁に似た効果を奴の表面に張っていて並のデバイスでは歯が立たないようだ」
「どこでそんな情報を…」
「これを見ろ」
そう言って父さんは走りながら俺にデータデバイスを渡してくる。
そこにはあのドラゴンのデータが表示されていて、その身体の表面に対粒子障壁と同じ反応があることを示していた。
「どうやら巨大なコア・クリスタルを持っていて、それを利用しているんだろう」
「でも、さっきファントムバレットは効いてたみたいだぞ」
「あれは粒子を超圧縮したものだからな。だが、目立つ傷は与えられなかっただろう」
「確かに…」
「あいつを倒すにはあの障壁をどうにかしないと勝てない。今は撃退がいいとこだろうな」
「さて、来るぞ!」
父さんに言われ、振り向くと、後ろからドラゴンが迫っていた。
もうすぐ追いつかれる。
「ここで奴を撃退するぞ!いいな!」
『了解!』
その合図と共に散開する。
そしてそこからありったけの攻撃を加える。
だが、効いてる様子はない。
「もしかしたら…これで…!」
アリシアはそう言うと、能力を発動させる。
右目が蒼く輝き、Λの文字が瞳に浮かび上がる。
その途端、急に攻撃が通るようになった。
「急に…どうして…」
驚いていると、アリシアが答える。
「あたしの能力は粒子系の攻撃、対粒子障壁を含むあらゆるものを無効化することが出来るの。だから、コア・クリスタルで対粒子障壁を作り出してるのなら、それを無効化出来ると思ったわけ。どうやら当たりのようね。無効化まではいかないけど、攻撃が通るまでには弱体化できたみたい」
そう言うとアリシアはガンブレードデバイスをドラゴンに向け、撃ってみせる。
やはり、並の武器でも多少は攻撃が通るようにはなったようだ。
「さて、行くわよ。那月」
「ああ…!」
「ふっ…やはり、あの2人に組ませて正解だったようだな」
俺とアリシアは更に攻撃を加える。
だが、それでも倒すまでには至らず、その尻尾で周囲を薙払う。
「くっ…」
なんとか伏せて攻撃は躱したが、あんな攻撃受けたら確実に死ぬな。
「みんな、大丈夫か」
「なんとか…」
父さんは全員の無事を確認すると、真っ直ぐドラゴンを見つめ、呟く。
「どうやら、本気を出さなければならないようだな」
その背中に粒子が集まり、光を放つ。
「っ…」
眩しくて目を覆ったが、次に目を開くと自分の目を疑った。
その背には4枚2対の粒子で構成された翼があったのだから───────
神崎司令の4枚の翼、これは後々分かるようになります。
まさに戦場に舞う翼、という感じです。
そのうち別の小説も書いていくので、そっちも読んでみてくださいね。
では、また次に