ハイスクールD×U   作:謎の食通

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悩む光の力

《次は、新宿に現れた怪獣、そして再び地球に出現したウルトラマンについてです。解説として防衛軍科学部門の星野博士をお呼びしております。今日はよろしくお願いします。》

《はい、よろしくおねがいします》

 

晩飯時の食卓机で早田は、懐かしい名を聞いて箸を止めた。テレビに出てきたのは、古い知人だったからだ。

 

「星野君か・・・立派になったものだ」

 

早田の妻は、感慨深そうに呟く夫に問いかける。

 

「あら?知り合いですか?」

「ああ、彼は科特隊時代の特別少年隊員でな。勇敢で頭の良い優しい少年だった。実際に私も助けられた事が何度もあった」

「へえ・・・少年隊員・・・」

 

早田の息子、進次郎も父と母の会話に顔を上げる。進次郎の進路志望は、防衛軍なので興味がわいたようだ。

 

「あら、興味あるの、進次郎?」

「まあね」

 

ただ、母は息子の反応が何時もより鈍い事に気付いた。もっとも、この間の事件のせいでナーバスになっているんだろうと推測した。

家族の会話の横でテレビの放送は続く。

 

《では、今回現れたウルトラマンは、前に現れたウルトラマンとは別人だと?》

《はい。今回のウルトラマンの体長は35m、以前現れたウルトラマンに比べると一回り小さいです。それに体の模様が同じだという点もウルトラマンを迎えにきた光の国の使者も似たような模様をしていたそうです》

 

昔、現れたウルトラマンの映像と新宿に現れたウルトラマンの画像を比較しながら説明していた。体の模様は、昔のモノとほぼ同一、だがゼットン戦後にウルトラマンを迎えにきた者もウルトラマンと大差ない模様だったので、あくまで同種族、別人だと星野元少年元博士は述べた。

 

《なるほど、ところでザラブ星人の様な偽物という事はありませんか?》

《いえ、その可能性は低いですね。偽ウルトラマンは、光線技を使いませんでしたが、今回現れた巨人は使用しているのが良い証拠ですね。それと知り合いに頼んで解析してもらった、このデータをご覧ください》

 

星野博士の示した図には、波打つグラフのようなものが二つあった。

 

《ふむ・・・私にはどちらも同じようなモノに見えるのですが?》

《上の方が数十年前に現れたウルトラマンのスぺシウム光線の波長、下の方が今回のモノになります》

《ああ・・・まったく同じものですね》

 

早田は、箸を置き、遠くを見つめた。

 

「ウルトラマンか、懐かしいな・・・」

「懐かしい?アナタ・・・」

 

夫の言葉に妻も手を止める。その発言に違和感を感じたからだ。それは、夫がずっと言っていた言葉とは異なるからだ。

 

「ああ。この前ようやく思い出したんだ。私は確かに彼と一緒に戦っていた」

「そうですか」

 

ウルトラマンの事を覚えていないと悩んで居た早田が、思い出した事を妻はわがことのように喜んだ。両親の和やかな様子に気分が沈んでいた進次郎も笑みを溢す。顔が硬かった息子の表情が解れたのを、見計らって、早田は進次郎に向き直る。それにキョトンとするが、進次郎も向き直る

 

「そうだ、進次郎。あの時、現場に居たそうだが怪我は無かったか?」

「えっ!?いや、無いよ。うん、別に何ともないよ・・・」

 

父の言葉に再び進次郎は硬くする。あの事件が、あの時起きた事こそが、進次郎を悩ましている一番の問題なのだ。

 

「そうか・・・」

 

息子の顔が再び硬くなったのに、気付いたが早田は話を続ける。必要だからだ。

 

「進次朗」

「何、父さん?」

 

父の優しい声に少し返事に力が籠る。進次郎は思った。いつも自分の父は、自分を勇気づけてくれる。

 

「大変な目にあっただろう、だけど私は何よりもお前が無事に帰ってきた事が嬉しい」

「父さん・・・」

 

肩が軽くなった。確かにひどい目にあったし、とんでもないものを手に入れた。だけど、なによりも。

 

「だから、必ず帰って来なさい」

「・・・はいっ!」

 

進次郎はこの人たちの元に帰ってこれた事が何よりも嬉しかった。

 

 

***

 

 

自宅の屋根の上で寝そべりながら、空を見上げていた。進次郎は、星空をじっと見つめている。

 

「星が綺麗だな・・・」

 

右手を掲げ、星空を掴むように手を握る。

 

「あの星空のどこかに光の国があるのか」

 

進次郎は悩みがある時は何時も星を見ていた。昔、宇宙から来るのは侵略宇宙人ばかりだった。だが、ウルトラマンが現れ、彼が地球を離れてからは、少しずつだが友好的な宇宙人が来ているらしい。

希望も絶望も内包する無限の宇宙、進次郎が防衛軍を志望する理由は、父に憧れているのもあるが宇宙が好きだという理由もあるのだ。

 

(それにしてもさっきの父さん、まるでぼくがウルトラマンだって知ってたみたいに感じてたけど・・・)

 

ふと、さきほどの父の言葉が気になった進次郎だが、頭を振り、空に掲げていた右手を下げて、体を思いっきり伸ばす。

 

(気のせいだよな!)

 

そろそろ部屋に戻ろうとした時、声が聞こえた。

 

「気のせいではない」

「ッ!?」

 

思わず、跳躍する。数回、回転しながら後ろに下がる。普通の学生では、あり得ない身体能力だ。いや、訓練された大人でも難しいだろう。

そうして、声の元から距離を取った進次郎は、相手を見た瞬間、目を丸くする。

 

「えっ・・・若いころの・・・父さん・・・?」

 

それは、写真で見た若い頃の早田進だった。しかし、その声は、自分の父とは似ても似つかない声だった。ただ、共通点と言えるのは、どこか優しさを感じさせるところだ。逆に父と異なるのは妖しい雰囲気を持っているという点だ。

 

「初めまして、早田の息子、進次郎。そして、私にとっても息子と呼べる少年よ」

「あんたは、一体・・・」

 

その時、進次郎の脳裏にあるビジョンが映った。赤い光球と青い光球、白銀の巨人の漆黒の恐竜。そして、そこに居る自分の父の姿。

 

「―――ウルトラマン?」

「ふむ、気付いたか。いや、少し勘が良ければ気付くか」

「父さんは・・・僕と同じだったのか?」

 

脳裏に浮かんだビジョンを振り払いながら、進次郎は、今までの事を思い出す。父から預かったベータカプセル、それにより光の巨人になった事、そして、目の前の父に似た人物が自分の事を息子と呼んだ事。このことから父は自分と同じウルトラマンだったのでは、と推測するに至った。

 

「正確には違う。早田は、私と融合する事によりウルトラマンとなったが、君は君自身の力でウルトラマンとなったのだ」

「ボク自身の力で?」

「ああ。私と早田が融合した名残が君の遺伝子情報に紛れ込んでしまったのだ。それとベータカプセルに内包された光エネルギーを君の遺伝子が取り込んだ事により、君は自らの肉体を変質させたのだ」

「変質・・・」

 

進次郎は、自分の手を、いや肉体を見つめる。今まで十数年付き合ってきた肉体が途端に得体のしれない物の様に感じたからだ。

 

「その証拠に君は、今まで持ちえなかった身体能力を得た」

「これが・・・この力が・・・ウルトラマンの影響・・・」

 

ウルトラマンによって目覚めさせられた因子は、進次郎に強力な力を与えた。ウルトラマン時ほどの力は、なくても並みの改造人間ですらおよばない身体能力を得たのだ。

 

「本来ならその力は眠らせておくべきだった」

「だった?貴方が呼び起こしたんじゃないのか?」

 

思わず顔を顰めて問いかける。いくら憧れの英雄相手とは言え、自分の人外な力を目覚めさせた相手だ。多少は言葉に棘が付くのも仕方がなかった。

 

「確かに、私が原因だ。だが、遠からず君は力を覚醒させることになっただろう」

「っ!?どういう、ことなんだ?」

「今、この地球は危険な種族が棲む宇宙への経路が形成されつつあるのだ」

「危険な経路・・・」

 

ゴクリと息を呑みこむ。

 

「正確には太陽系の近くにだが、彼らは確実に地球にやってくる。そして、彼らにより遠からず君は目覚める事になるだろう。多くのモノが失われた時に」

「そんな・・・あなたは助けてくれないのですか?」

「私も見捨てる気は無い。だが、異次元に通じる経路は、複数あり、私一人ではそれらをカバーしきれない。だからこそだ。」

 

早田の姿が変わる。その姿は2mにも満たない。だが、間違いなく地球に現れたウルトラマン、その人だった。その銀色の手を差し伸べながら、ウルトラマンは進次郎に語りかける。

 

「君にウルトラマンになって貰いたい」

「ウルトラマンになって欲しいって・・・いきなり、そんな・・・」

 

その申し入れに進次郎は、左右に視線を彷徨わせ、しまいには俯く。そんな、進次郎に落ち着かせるようにウルトラマンは話を続けた。

 

「無理にとは言わない。・・・そうだな、君に我々の秘密を教えよう」

「秘密?」

 

顔を上げた。そのスプーンに似た光る眼をまじまじ見つめる。

 

「ほんの26万年前、我々は地球人とほぼ同じ姿をしていたのだ。そして、極めて短期間のうちに我々はウルトラマンとなった」

「なんで、そんな急に?」

「かつて、我々の住む星系の恒星が爆発した。その厄災をとか我々は、生き残れたが太陽が無ければ生きていく事が出来ない。そこで我々は人工太陽を作ることにした。だが、人工太陽から発せられたディファレーター光線により我々は超人へと変異してい待ったのだ」

「それが、ウルトラマン・・・」

 

再びビジョンが脳裏に映る。それは、人間が光の巨人へと変異している映像だった。度重なる謎のビジョンに進次郎は、眩暈を感じた。

 

「そうだ。我々はウルトラマンになろうとしたのでは無い。君と同じくウルトラマンになってしまったのだ。だが、我々はその運命を受け入れた。そして、私たちはウルトラマンとしての生き方を選んだ」

 

顔に手を当てている進次郎を見て、あまりの情報量に疲れているのか、ウルトラマンは思ったが話を続ける。あまり、時間は残されていないからだ。

 

「進次郎、肉体や能力、出自によってウルトラマンになるのでは無い。未来を生きようとする力、他者を慈くつしむ心、それらを生み出す光を守る意思を持つモノがウルトラマンになるのだ」

「ウルトラマンとしての、生き方」

 

進次郎の言葉に、光の戦士は無言で頷く。

 

「進次郎、君は光の巨人になっても、まだウルトラマンでは無い。ただの子供だ。だが、忘れないでくれ。君が変身した時の気持ちを、他人を助けようとした思いを」

 

そう言うとウルトラマンの姿が薄れていった。タイムリミットだ。進次郎は引き止めるよう手を伸ばすが・・・。

 

「待ってくれっ!!」

 

その手は空を掴む。しばらく、手を伸ばしたまま、進次郎は佇むが、徐々に腕を下し、俯く。そして、彼は呟いた。先の見えない未来を思って。

 

「・・・いきなり、そんなこと言われても、どうすれば良いんだよ」

 

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