世界移動(宮永咲編)   作:無の空間の存在維持

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第13話

 

 

ある日の夜、咲は深雪に呼ばれ、リビングに向かっていた。到着すると、達也が待っていた。

 

深雪「連れてきました。」

 

達也「分かった。座ってくれ。」

 

咲「うん。」

 

深雪は達也の隣に座り、咲は反対側のソファに座った。

 

咲「何の話なんですか?」

 

妙な緊張が漂っていたため、つい敬語になってしまった。

 

達也「そこまで丁寧でなくてもいいよ。少し話をするだけだ。今回はどうしても避けられないトラブルがあるということだ。」

 

深雪「トラブルですか?」

 

達也「ああ。魔法科高校に反魔法組織に所属している者を見かけた。」

 

咲「反魔法組織?」

 

初めて聞くため、まったく理解ができなかった。

 

達也「ああ。ここは魔法がすべてになっている。だが、一方でそれを撤廃しようとするものが現われる。それが反魔法組織だ。組織は多種多様にある。スローガンは『魔法の撤廃』が共通だが、真相は違う。国同士あるいは組織同士の紛争のために『理由』として利用している場合が多い。」

 

深雪「まさか・・・。反魔法組織に所属している魔法科高校の生徒たちは・・・。」

 

達也「そうだ、深雪。今回のトラブルは魔法の撤廃がメインではない。そのデータを世界の公表材料として、相手の弱みを握ることだ。その手段を出されたら、魔法科高校の人たちは手も足も出せない。今回の反魔法組織の目的はそれだ。」

 

リモコンを持ち、テレビに向けた。すると、画面には反魔法組織のデータが表示された。所属の証として付けている三色のバンドや行為などが画像も含めて記されている。

 

達也「奴らの名は『ブランシュ』。この組織が魔法科高校で暗躍している。」

 

このデータに咲は少し目を逸らした。あまりにも刺激過ぎるデータではある。だが、これも事実ではある。

 

咲は『反魔法組織』について知らなかったわけではなかった。子華に咲の経緯を話して以来、この世界について多くのことを学んだ。『反魔法組織』もその1つだ。

 

普通の人でも見るのに抵抗があるが、咲にとってはそれ以上に刺激が強すぎている。それほどまで『心が純粋』という証拠でもある。

 

画像やデータが見れなくても、できる限り達也の話だけでも聞いていた。

 

達也「奴らのスローガンに『差別の撤廃』がある。『差別』という言葉は悪い表現をするときに使用することが多い。良い表現にひっくり返す言葉が『区別』だ。つまり、奴らは『格差を縮める』と言っているのと同じだ。『人間は人間までの力しか持つべきではない』と主張している『人間主義』でもある。これらをまとめると、『人間の力量の差を縮める』。それがブランシュの目的である。ブランシュにはいくつものの下部組織があり、今回 魔法科高校で暗躍している組織はブランシュの下部組織、『エガルテ』だ。」

 

咲「・・・差別。」

 

達也「そう、『差別』だ。『差別を縮める』ということは、『平等にする』と言っている。しかし、『平等』である世界を作ることはできない。必ず何かしらの差はあるからだ。肉体的、精神的、環境的、性格的、思考的、言動的、経過、結果など・・・。それは先天的もあれば、後天的による慢性的でもある。つまり、実現することは不可能に等しい。だから、『差別』や『平等』は自己解釈に過ぎない。自分自身による言い訳でもある。」

 

深雪「彼らは『努力』をしていることを知らないんでしょうか?」

 

達也「いや、知っている。『魔法という才能』という言葉で『努力』から目を背けている。もちろん、俺に優れているところがなければ、騙されていたかもしれない。」

 

直後、深雪は立ち上がり、否定した。

 

深雪「お兄様は絶対に騙されません!!お兄様は才能がないことは分かり、懸命に努力をしました。他人より一層努力を積み重ねました!!その結果、誰にもまねできない技能を得られたではありませんか!!決して、お兄様は弱くありません!!」

 

達也「ああ。努力を積み重ねた。俺にしかできないことを身に付けられたのも事実だ。」

 

深雪はすぐに落ち着き、座った。達也はリモコンを持ち、テレビの画面を消した。咲はやっと普通にしていられるようになった。

 

咲「・・・ここまでのことは分からない。でも、騙し合っていることは分かった。・・・自分自身に騙し、他人にも騙している、それはいけないこと・・・。」

 

達也「そうだ。だが、生きていくうえでそれは必要不可欠な時代になっているのも事実だ。厳しい時代だが、今更変えられるわけではない。それは奴らも分かっていることだ。しかし、強硬手段として、テロを行なっているのが大半だ。」

 

両手を膝に置き、咲の方に向き直した。

 

達也「それと、すまない。」

 

咲「どうしてですか?」

 

達也「情報を共有しなくてはならないとはいえ、咲の心を傷つけた。心は信念の1つでもある。例え、どんな理由があろうともその心を傷つけてしまったことだ。すまなかった。」

 

そのまま頭を下げた。

 

咲「だ、大丈夫ですよ・・・。驚いたし、未だに理解できてないところもあるから・・・。」

 

咲の心の純粋さは達也と深雪と一緒に暮らしていくうえで、綺麗なほど裏の情景を知らなかった。記憶喪失ならば、仕方ないかもしれなかったが(未だに達也と深雪は記憶喪失と思われている。)、咲の行動は優しすぎているところがあった。記憶喪失でも体が覚えているところを踏まえれば、元々の性格と達也と深雪は判断した。

 

そのため、深雪は達也が頭を下げるわけを理解していた。

 

達也「そうか・・・。許してくれならば、良かった。」

 

咲「うん。それで聞きたいことがあるけどいい?」

 

深雪「何でしょう?」

 

咲「うん。達也は何が心配なの?何かを警戒しているように思えたから。」

 

達也「それか・・。確かに、咲の言う通りに警戒しているさ。奴らが暗躍していることとなれば、十師族が黙ってないことだ。第一高校は七草、十文字、四葉。この三種がそろっていることだ。特に、四葉家は黙っていない。」

 

咲「四葉家・・・。確か、秘密主義と聞いたことがある。四葉家と悟られないようにいくつものの分家に名前を変えていると・・・。」

 

達也「ああ。俺たちがいる四葉家の情報は極秘だ。ほとんどが表に出ていない。今回、四葉家を警戒する理由は、真夜の誘拐事件が関わっているからだ。あの誘拐事件以来、重要人物にはガーディアンを付けている。それがガーディアンの俺と保護対象である深雪だ。しかし、ガーディアンのみで危険性があると判断された場合、四葉家自らが出向く可能性が高い。そうなれば、俺たちと四葉家の関係が公になる。

俺たちは四葉家の仕事を蹴って、自らの意志でこの高校に入学した。普通の高校生活を楽しむために・・・。」

 

咲「理由は分かった・・・。私もできるだけ手助けができるようにする。」

 

達也「ああ。それと、理由はもう1つある。」

 

咲は少し考えたが、分からなかった。

 

達也「咲自身の危険性だ。」

 

咲はまったく理解ができなかった。すると、深雪が止めた。

 

深雪「お兄様・・。」

 

達也「深雪、後でバレることは良くない。俺も戸惑ったさ、話すまいかを。しかし、伝えるより、伝わる方が本人のショックは大きいんだ。だから、俺は話す。」

 

深雪「分かりました・・・。」

 

達也「すまない・・。話を戻そう。」

 

何かを決したかのような眼差しをする。

 

咲「私自身の危険性って?」

 

何故咲に危険が及ぶのかが分からない。達也は先に確認を取る。

 

達也「ああ。咲は俺たちが保護していることになっていることは聞いたはずだ。」

 

咲「うん。」

 

その確認に咲は頷く。深雪からそう聞いているからだ。

 

達也「四葉家にも咲のことは伝えてある。だが、少しだけ違うことを伝えた。事実上は深雪から頼まれ、俺と深雪が保護している。しかし、四葉家には深雪が見つけたとしても、俺1人で深雪と咲を守護していることになっている。」

 

咲「つまり、達也が1人で私と深雪を守っていることになっているの?」

 

達也「そうだ。もし今回のトラブルがエスカレートし、ガーディアン1人では不可能と判断された場合、俺はガーディアンから降り、四葉家に戻るだけではなく、咲を俺たちから引き離そうとする可能性がある。・・・守護の対象外となってしまう。しかし、秘密主義である四葉家は咲に何をしでかすかは俺にも予知できない。だが、深雪の頼みとなれば、それなりに軽減されるが、実際の所は俺にもわからない。」

 

咲は自分自身のことも安全に考えていることに驚きを隠せなかった。むしろ、ここまで良くしてくれていることに心の中で懸命に謝った。今にも行動で謝ろうとしたくなっている。

 

咲「ごめん・・・。私のせいで・・・。」

 

達也「俺たち独断で判断したことだ。」

 

深雪「そうよ。だから、大丈夫よ。それに、そこは謝るのではなく、感謝するところよ。」

 

咲「・・・ありがとう・・・ございます。」

 

そのまま涙を溜め、泣いてしまった。深雪はすぐに咲の傍に行き、落ち着くまで慰め続けた。

 

 

 





思った以上に文字数が多くなりました。


驚きです…。

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