ROCKMAN X : BOY OUT OF NIJIGEN DREAM - ANOTHER CRITICAL FIRST   作:あやか

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START STAGE:THE RISES OF STIGMA

1952年4月28日、日本国。

首都、東京都千代田区永田町一丁目。

サンフランシスコ条約による日本の主権回復から2年後に当たる、日本初の缶ジュースの発売日に国会議事堂地下から正体不明の物体が発見された。

棺にも見えるその物体にの中には、人間と思しき少年が眠っていた。

発見された場所が場所であったため慎重な準備を要した結果、正確な調査は数か月後に行われ、驚くべき事実が判明する。

棺のような物体の名前が『ロボット検査用カプセル』であること、そして中に眠っていた少年が『ロボット』であることが。

当時の最高水準を遥かに超える高度な技術を用いて開発されたそのロボットを収容していたカプセルには、原語版と思しき英語文と、複数ヶ国の言語に翻訳された訳文の状態でメッセージが遺されていた。

その非常に恐ろしい内容に、メッセージを読んだ者たちは震え上がったという。

余りの恐ろしい内容故に、メッセージに記されていた注意事項に従った上でロボットは調査され、電子技術とロボット工学において日本が世界の頂点に立つ原動力となった。

やがて、技術革新によって人造人間は現実のものとなり、人造人間たちはフィクションとの兼ね合いから『レプリロイド』と呼称されるようになる。

だが、メッセージに記された危険性故に、あのロボットを調査することで得られた技術の内、実際に日の目を見たのは極一部だった。

 

 

『エックス』は人間以上に悩むことができるが、それ故に私のいる世界の従来のロボットでは考えられなかった問題が多数存在する。

「人間に意図して危害を与えない」という、ロボットにとって重要な条件に対しても悩んだ末、不要ではないかと疑問を持ち、確信する可能性があるのだ。

人間以上に"悩める”ことこそが『エックス』の画期的なところであり、ロボット工学においても新境地たりえるものであるが、これが本来悩んではならない事柄にまで及ぶと、大変なことになる。

『ロックマン』の新型である『エックス』は平和を守る戦士として生まれた。

しかし万が一『エックス』が自分の意志で「人間こそが平和を乱す悪」と判断した場合、人類を襲う恐怖は、我が旧き友『ワイリー』が起こした事件ですら及ばない物になるだろう……。

それだけではない。

ここでの言及は避けるが、エックスにはもう一つ、使い方次第では現在の人類とロボットの違いを取り去りかねない能力を有している。

結論を言うと、『エックス』は私が知る限りで最も危険なロボットである。

もし『エックス』を世に送り出すのなら、最低でも30年、場合によってはその何倍ものチェック期間を置かなくてはならない。

だが、私の余命は最低チェック期間の1/6の位置にも満たず、オマケに私の研究を全て理解し、引き継げる者も一人としていなかった。

だから、私は最後の我が子である『エックス』をこのカプセルに封印する。

そして、『エックス』には戦わないで済む世界で生きて欲しいという、開発意図と矛盾した望みを懸けて私がいるこの世界とは違う、異世界へと転送する。

異世界の人たちに言っておきたいことがある。

もしあなた方が、何かの拍子でこのカプセルをチェック完了前に発見した場合に備えてメッセージを遺す。

カプセルから出すことは『エックス』の目覚めを意味するため、チェックが完了するまで絶対に『エックス』をカプセルから出さないでほしい。

『エックス』は無限の可能性と共に、無限の危険性をもその身に宿しているロボットなのだから……。

私はただ、最良の結果を望みたいだけである。

 

2065年9月18日、トーマス・ライト

 

 

それから月日は流れ、1993年12月17日、何者かが『エックス』を封印していたカプセルを外部に持ち出す。

翌年、1994年12月16日にカプセルは発見されるも、『エックス』を束縛することを良しとしない者たちの手で第三者に託される。

更に年を越した1995年12月1日、チェックが完了した『エックス』が、関東のとある一般家庭で目覚め、誕生した。

あれから43年後のことである。

そして月日は流れて2005年4月……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ROCKMAN X : BOY OUT OF NIJIGEN DREAM - ANOTHER CRITICAL FIRST

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行ってきます!」

 

俺は家を出て、いつものように学校に行く。

今日は新学期だ。

世間はイレギュラー問題で揺れているけど、少なくとも俺の周囲は比較的平穏だと思う。

いつものように、クラスメートたちの倍以上の速さで走っていると、クラスメートたちがいつものように慌てて挨拶してくれる。

 

「恵玖須くん、おはよー」

 

「おーっす、恵玖須」

 

「みんな、おはよう!」

 

俺は、楠恵玖須(くすのき エックス)。

10年前の12月、目覚めた俺は養子として楠家の一員になった。

巷に溢れている人間思考型ロボット『レプリロイド』の一種だったりするけど。

レプリロイドは今から50年以上前に誕生した。

人間と全然変わらない思考能力と感情を持っているため、折しもアメリカで公民権運動が起きていた影響で、レプリロイドにも基本的人権を適用すべきとの声が高まった。

結果、条件を満たしたレプリロイドに国民の三大義務を適用する法律、別名『レプリロイド用国民権利法』が制定され、今日に至っている。

俺が養子になれたのも、その法律の基準をクリアしたことで国民として認められたからだ。

ただし、例え人間でいう精神的にある程度成熟しているレプリロイドであっても、この法律で国民として認められた場合は、起動してから経った年数を年齢として換算される。

だから、起動してから年数が経っていないレプリロイドの中には、俺みたいに就学しているのもいるんだ。

……流石に人間の養子にまでなったのは俺が初めてのケースらしい。

また、レプリロイドの中には警察や自衛隊に身を置く者もいれば、それらに近い組織『イレギュラーハンター』に勤める人もいる。

高い能力が要求されるため、イレギュラーハンターには俺のように専業じゃないレプリロイドが在籍するケースもかなり多い。

もっとも、就学していたり、別の職業に就いている場合は組織に年中拘束されることはないけど。

 

 

 

 

 

私立蘭ヶ峰学園初等部。

レプリロイドが人間の一般家庭の養子になった、というケースの第1号である俺を、宣伝目的で自分の学校にと考えている人は多かったよ。

余りのしつこさに両親は怒りを露わしていたが、気分転換目的で見学したこの学校だけは俺を宣伝材料ではなく、受験生として扱ってくれた。

だから、俺はこの学校に入ること選んだのさ。

 

「今年も楠と同じクラスかよ」

 

「そうは言われてもなぁ……。別に成績がクラス1位から落ちる訳じゃないだろ?」

 

「1番得な科目が『4』になる可能性があるんだよ!」

 

何せ、俺は機械仕掛けだから理系には滅法強くてスポーツもできると来ている。

文系は少し苦手だけど、それでもこうやって時々文句を言われることがある。

 

「はいは~い。ひがんじゃダメですよ~」

 

あの人がこのクラスの担任か……。

それから、昼前に今日は放課後になった。

始業式だからね。

 

 

 

 

 

START STAGE:THE RISES OF STIGMA

 

 

 

 

 

みんな春休み気分がまだ抜けていないのか、ウキウキしている。

気持ちは分からなくもないけど。

 

「ねえねえ、恵玖須」

 

「……何?」

 

「ハンターランク、上がった?」

 

「未だにB級止まりさ。多分今年もそうだと思う」

 

「ちょっとちょっと! あの時このやいとちゃんをカッコ良く助けた、あの恵玖須がまだB級!? 真面目にやってんの!?」

 

「他のハンターにスコアを取られることが多くてね……」

 

帰ろうとした際、運悪くクラスメートの綾小路やいとに捕まってしまった。

1年生の時に、間一髪でイレギュラーから助けることができたんだけど、その時に気に入られてしまったらしい。

俺のことを高く買ってくれているけど、それ故に俺が未だB級止まりなのに対していつもあれこれ言ってくる。

俺がB級止まりな理由、それは、イレギュラーを処分していいか悩み、討つのを躊躇ってしまうからだ。

その結果、3年前に昇格して以降、ずっとB級だ。

ハンター仲間たちからも『甘い』と言われっ放し。

家族からも「向いていないのでは?」と言われている。

姉は、不思議と応援してくれているけど。

……矛盾しているけど、俺は「誰かを守ろうとする意志と、それを実現できる力がある者は、実際に行動しないといけない」とも考えている。

俺が討つのを躊躇いながら、未だハンターであり続けているのも、その点が大きい。

 

「優しさってのはね、時には躊躇わず戦えることなのよ」

 

「……やいと?」

 

「……優し過ぎるからこその恵玖須なのは認めるわ。でもね、躊躇い過ぎると守れるのも守れないわよ。あんた、そのハンターに向かない性格直さないと、自分自身を滅ぼすわよ」

 

遂にやいとにまで言われてしまったか。

ハンター仲間たちの中にも、俺のことを「優し過ぎる」と言うのもいる。

だからこそイレギュラーハンターとして相応しいとも言ってくれる場合もあるけど。

…………? 何か笑い声が聞こえたような。

……アレは、ピエロ型のサーカス宣伝用レプリロイド。

手をこっちに……。

 

「危ない!」

 

「ふぇ!?」

 

やいと目掛けて自分の手(有線式)を飛ばしてきた!

やいとを抱きかかえて間一髪で避けたから良かったけど……。

 

「イレギュラーか! やいと、これとこれを持ってて」

 

制服のブレザーをを脱ぎ、ランドセルと一緒にやいとに預けて、ワイシャツの袖をまくって右手をバスターに変化させる。

その直後に撃つ!

放たれたエネルギー弾が奴の右肩を粉砕し、手が戻らない内に右腕がちぎれ落ちる。

よし、後は……。

 

「う、撃つのか!? 同じレプリロイドを!」

 

「!」

 

奴がそう言った瞬間、硬直してしまう。

そうだ……、急所を外して攻撃することはできても……、トドメを刺せない。

バスターの銃口は奴に向けている。

だが……撃てない。

 

「……俺は……俺は……」

 

「撃つのよ! ほっといたらあんたがやられちゃうわよ!」

 

「う、撃たないでくれ!」

 

「撃ちなさーい!」

 

俺は……。

俺は…………。

 

「俺は………………嫌だ」

 

俺がそう呟いた直後、奴の胸板に風穴が空いた。

……誰かが、後ろから奴を撃ったのか?

 

「な、何で……!? う、後ろ、から!?」

 

「人の後輩の痛いところ突いて不意を打つ気だったんだろうが、残念だったな」

 

奴を後ろから撃ったのは……。

 

「ゼロ!?」

 

ゼロは、倒れた奴の頭をトドメとばかりに踏み潰してから、近づいてきた。

 

「大丈夫か?」

 

「不意を突かれる前にゼロが来てくれたからね」

 

そんなオレの言葉に安心したのか、ゼロの表情が柔らかくなる。

代わりにやいとの方が不機嫌になってるけど。

 

「どうして撃たなかったのよ!」

 

「イレギュラーだからって、問答無用で殺していいとは思えなかった。警察官だって、犯人を手当たり次第に殺したりはしないじゃないか。それに、俺一人が倒れるぐらい……」

 

「……エックス。お前の言いたいことは間違ってはいない。だが、俺が間に合っていなかったら、アレはお前を倒した後で間違いなくそのチビを手にかけていたぞ」

 

ゼロの言葉で、俺はハッとなる。

そうだった……。

あのイレギュラーは、最初に俺ではなくやいとを狙った。

俺一人が倒れるなら、それで構わない。

けれど……!

 

「ごめん、やいと」

 

「ほんと、優し過ぎるのも考え物よね。あんたが死んだ時に泣く人なんか、それこそ幾らでもいるんだからね!」

 

……忘れていた。

俺には、血の繋がりはないけど父がいて、母がいて、姉がいる。

学校のみんながいる。

俺がイレギュラーの攻撃で傷ついた時に、大騒ぎしてくれたみんなが。

俺は、なんてことを考えてしまったんだ。

俺一人が死んでも、なんて…………!

 

「……エックス!?」

 

「どうなってんの!?」

 

「二人とも……? あ、そういえば、二人には言ってなかったね」

 

ゼロとやいとが俺の顔を見て、驚いているのを見た際に、俺は自分の頬がかすかに濡れていることに気づいた。

俺は、俺が死んだときに悲しんでくれる人たちのことが頭の中から抜け落ちていた俺自身が情けなくて、それが悔しくて、…………泣いていたんだ。

 

「何故か分からないけど、俺は世界で一人だけの『涙を流せるレプリロイド』だってさ。家族には、物珍しがられるからあまり人前では泣かないように、って言われてたから今までみんなに言うことも無かった」

 

「でもなんで泣いちゃったのよ?」

 

「悔し泣き、かな。自分が情けなくなっちゃって、それが悔しくて……」

 

「さっさと拭け。みんなに見られてるぞ」

 

 

 

 

 

帰り道。

少し落ち込んでいる状態で帰路についていたら、爆発音が聞こえた。

何事かと思って空を見上げたら、怪物が砕け散るように消えていくのが見えた。

そこに残っていたのは……人間?

人が宙に浮いて、武器を持っている。

それに何やら、アニメの魔法少女みたいな服を着ている。

……え? あの人は……!

 

「姉さん!?」

 

「……!」

 

姉さんと思しき人は、自分の姿が俺に見えていることに気づいて、大慌てでどこかへ飛んで行ってしまった。

……どうなっているんだ?

 

 

 

 

 

自宅。

ひたすら頭の中に『?』マークを浮かべながら俺は帰ってきた。

 

「ただいま」

 

「おかえりなさい。さっき、第17部隊の隊長さんから連絡があったわよ。恵玖須が危うくイレギュラーにやられそうになっていたって……」

 

「連絡が早いな……」

 

「やっぱり恵玖須には、ハンターは向いていないと思うわ。優し過ぎるもの……。それを向こうにも伝えたんだけど、そうした途端に隊長さん、急に熱くなっちゃって」

 

「隊長がどうかしたの?」

 

「『能力の方は申し分がないから、そんなことを言わないでください!』って。あの隊長さん、恵玖須に期待してるみたい。だからあまり強く出れかったわ」

 

俺の所属する隊の隊長は、いつもこうだ。

部下からだろうが、外部からだろうが、俺を外すように言われても頑として聞かない。

史上最高のレプリロイド、と誉れ高いのにだ。

 

「お帰りなさい」

 

「あ、ただいま。姉さん」

 

隊長の頑固さに呆れている母の隣に来るように、姉である楠沙枝が俺の眼の前に来ていた。

……? 何かいつもの姉とは違う気が……。

肩に、何か人形みたいなのがいる。

乗せている、というより、人形自体が振り落とされないように姉の肩にガッチリと手を掴んでいる。

しかもは母には見えていないらしく、視界に入っているはずなのに人形には気付かない。

 

「…………」

 

無性に気になった俺は、いつの間にか人形を掴んで小走りで自分の部屋に直行していた。

 

 

 

俺の部屋。

俺は、人形、もとい妖精みたいな存在である彼女と会話していた。

 

「あなた、私が見えるのね!?」

 

「見えるけど……。でも、母さんには見えていなかったような」

 

「それはそうよ。不可視の魔法で見えないようにしていたから。あ、私はエミット。あなたのことは沙枝から聞いているわよ、エックス」

 

「それはどうも……。でも、何で姉さんの肩に乗っていたんだ?」

 

その言葉を切っ掛けにして、エミットは、そうなるまでの経緯を俺に教えてくれた。

魔法が存在する世界『エーテルランド』、そこを抜け出して人間に危害を加える『違反者』と呼ばれる悪人達と、奴らをエーテルランドに強制送還させる『魔法使い』達……。

姉が13番目の魔法使いであることも。

ハンターを続けることに対して多少は応援してくれたのにも、何となく合点がいった

 

「『向いていないのでは?』って言わなかったはずだ。それにしても、通知表で体育が『1』になったことがあるレベルの運動音痴な姉さんがよく今までやってこれたな……」

 

「……魔力が並はずれて強いおかげでやってこれたのよ。エックスだって、イレギュラーを処分することを頻繁に躊躇っているのになんとかっやていけてるじゃない」

 

「それもそうだ……」

 

エミットの上手い返しにぐうの音も出なくなる。

 

「ただね、違反者の数だけ、目当ての思念のタイプも千差万別なの。だから……。ごめん、エックスはまだ小学生だからこっから先は説明できない」

 

さっきまでえらく饒舌だったエミットが、顔を赤くして黙ってしまう。

……イレギュラーハンターっていうのは因果な職業だから、犯罪の分類とかも見習い講習の時に教えられる。

なので、エミットが黙ってしまった理由もなんとなく気づけた。

 

「性欲絡みの思念を好む違反者、要は性犯罪者もいるってことだろ。こっちの世界の犯罪者にもそういうのがいるって、見習い講習の時に教わったからね」

 

「その通りよ……。ちなみにそっち系は全体の3割ぐらいはいるわね」

 

「…………全部が全部だったら地球のどこかが地獄になってるよ」

 

イき地獄ってやつやつだな……、って小学生にあるまじき酷いダジャレだ。

……ちょっと待て。

姉がその『3割ぐらい』と対峙した可能性も……。

 

「エミット。まさかとは思うが、姉さんは『そっち系』と戦ったことがあるのか?」

 

「……なんでそんなに勘がいいのよ! そうよ! 沙枝はそっち系と戦ったこともあるわよ! アイツらのせいで沙枝がどんな目に……」

 

「なんてことだ…………」

 

質問しなければよかった!

二人で勝手に騒いで勝手に落ち込んでいると、横開き式のドアがノックされた。

 

「私だけど、入っていい?」

 

「いいよ」

 

俺が返事をしてから少し間を開けて、姉が入ってきた。

物凄く深刻そうな表情で。

 

「エミットのことと、俺に見られた違反者との戦いについてでしょ?」

 

「うん……。あのね、恵玖須……」

 

「姉さんが魔法少女になったいきさつとか、一通りのことは、エミットが教えてくれた」

 

それから数分後。

違反者の内の3割に関すること、その3割のせいで姉の身に降りかかった受難の詳細をエミットに教えてもらった。

教えてもらったのはそれだけじゃない。

イレギュラーハンターの一部にも魔法使いを手を組んで、違反者に立ち向かっている者がいることもだ。

 

「……という訳で、Dr.ケイリーを含む、一部の人たちにも協力してもらってるのよ。レプリロイド、特に特A級ハンターは不可視魔法が効かない人が多いからね」

 

「それで極秘任務に就く特A級ハンターが多かったのか。それにしても、不可視魔法を無視できるなんて」

 

「Dr.ケイリー曰く、『「原型となったロボット」のデータが関係しているかも』だって」

 

原型?

レプリロイドって、Dr.ケイリーが自分の技術だけで作り上げたんじゃないのか?

 

「……ごめん。ここから先は超の付く極秘事項だから、エックスには教えられないの」

 

俺には?

じゃあ、姉は知っているというのか?

 

「姉さんは……知っているの?」

 

「……ごめん。ケイリーさんに口止めされてるの」

 

「そうか……」

 

 

 

 

 

次の日、イレギュラーハンター本部。

昨日の事件の報告、という名目で俺は第17部隊の隊長室に連れてこられた。

スティグマ隊長は、いつも通り真剣な表情である。

 

「わざわざこの部屋にいれたのは他でもない。お前が昨日見た、魔法使いと違反者の戦いについてだ。エミットからお前に存在を知られたと連絡があってね」

 

「当のエミットと、その時違反者を強制送還した魔法使いから、詳細は教えてもらいました」

 

「なら話は早いな。違反者と魔法使い、エーテルランドに関する情報は極秘事項だ。組織内でも緘口令を強いている。知ってしまった以上、エックスにも守ってもらう」

 

「了解です」

 

スティグマ隊長は細い目を見開いて命令してきた。

当然、俺は復唱した。

……それにしても、どうして魔法の存在を秘密にするのだろうか?

 

「質問していいですか?」

 

「構わないが」

 

「何故、魔法やエーテルランドのことを秘密にするんですか?」

 

「余計な混乱を防ぐためだが、それ以上にエーテルランドを守るためでもある。人間は化学の範疇にない力を恐れ、それが行き過ぎて守ってくれる者たちを裏切り、自滅していくこともある。神の加護以外の不思議な力を理解できない人間は呆れるほど多い」

 

スティグマ隊長は酷く物憂げな顔で語りだす。

 

「隊長……」

 

「それでも我々は、そんな人間を守らなければならん。それがイレギュラーハンターの職務であり、我々自身が自分で選んだ道だからだ。お互い、因果な道を選んでしまったな」

 

物憂げな表情から更に、今度は寂しげな表情に変わる。

しかし、すぐに表情を引き締め直した。

 

「話は変わるが、昨日の件でお前に言っておかなければならない。目撃者から聞いたが、お前はイレギュラーを撃つのを拒否したそうだな」

 

「はい」

 

「目撃者が言うには、命乞いを真に受けて情けをかけてしまったようにしか見えなかったそうだ。その通りか?」

 

厳しい表情で俺を問い詰めるスティグマ隊長。

目撃者は、間違いなくやいとのことだろう……。

 

「はい。俺は……」

 

「いいか、エックス。我々イレギュラーハンターは、引き金を引くのを躊躇ってはいけない時がある。それが、この道を選んだ我々の定めなのだ。話は以上だ」

 

隊長の言うとおりだ。

なのに、それでも俺は撃つのを躊躇ってしまう。

 

「…・・・失礼します」

 

 

 

「聞いたか? 昨日エックスが出くわしたイレギュラーのこと」

 

「ミレなんとかって悪の組織の技術で改造された痕跡があったんだろ? 壊滅したってのになんでまた」

 

「残党がいるんだろうよ。ここ最近はイレギュラーをよく使うらしいぜ」

 

「やれやれ。まだまだ元気な悪の組織も結構残っているっていうのに……」

 

隊長室を出た後、俺はロビーで少し何も考えずにボーっとしていた。

そんな時、不意に肩を軽くたたかれたから、振り向く。

そこにはゼロがいた。

 

「絞られたようだな。ところで、何ボーっと突っ立っていたんだ?」

 

「ゼロ……。どうしてイレギュラーは発生するんだろう? って……」

 

「さっき話していた奴らが言ってたように、ミレニアムみたいな悪の組織に改造されたのもいる。だが大部分はプログラムのエラー、電子頭脳の故障、いわば俺たちレプリロイドの高度な情報処理能力のツケの産物だ。中には、正常な状態でイレギュラーみたいなことをする奴もいるけどな」

 

「そっか……」

 

おかしくなってないのに、自分の意志で犯罪に走るレプリロイドもいるのか……。

頭脳が人間に近ければ、その分正常な状態でも犯罪に走るレプリロイドが出てもおかしくないのは確かだけど。

 

「悪の組織に大手を振って手を貸してるならまだマシな方。問題は『違反者』とつるんだ場合だ」

 

「……ゼロも、知っているのか?」

 

「当然。極秘事項だから大きい声では言えないけどな」

 

俺は呆気にとられていたが、それから数秒の間をおいて急に周りがざわめきだした。

その直後、俺とゼロの視界に、VAVAが入った。

手錠をかけられて、連行されている状態で。

 

「また揉め事でも起こしたんだろうな。あれで処分されずに済んでいるんだから理不尽な話だ。同じイレギュラーハンターでも、エックスみたいにいつまでも甘いのもいれば、VAVAのようなイレギュラーと紙一重のVAKAもいる。世の中イカレてるぜ」

 

 

 

 

 

その日の夜。

都内のある豪邸。

その豪邸の食堂に鎮座しているテーブルの下座に、スティグマは座っていた。

上座に座っている人物と一緒に、夕食を取っている真っ最中である。

 

「最近、また騒がしくなったようじゃのう」

 

「はい、お母様。ミレニアムの残党に他の犯罪結社や違反者、妖怪の徒党、マジカルディーバの軍勢、エーテルランドとは違う世界の魔法使い、それどころか宝石に変異する怪獣や『深淵王』なる者の軍勢の残党まで出て来ております」

 

スティグマから報告を受けている女性は、ケイリー・光。

この世界におけるロボット工学の頂点であり、レプリロイドを生み出した偉大な科学者である。

かなりの高齢なのだが、不思議なことにその容姿は若々しいを通り越して幼い少女である。

 

「ぬう……。エックスはどうしておる?」

 

「状況分析、戦闘能力、共に極めて高いレベルを発揮しています。が、生来の優し過ぎる性格が災いして、時に悩み、判断を遅らせてしまうことが多々あります。昨日に至ってはイレギュラーの命乞いを真に受けて遂に処分するのを拒んでしまいました」

 

「悩む、か……。まさしくそれこそが、エックス最大の特性の片割れなのじゃ。スティグマ。お前は悩むことはあるまい。1952年、ワシは国会議事堂の地下で発見された『エックス』を解析し、その時得られた極僅かなデータだけを頼りにお前を、そしてレプリロイドの存在そのものを創造した」

 

Dr.ケイリーは、一息ついてシャンパンを口に含む。

グラス一杯に注がれたシャンパンを飲み干して、再び語りだした。

 

「レプリロイドは、人間と同じように考え、行動することができる。……人間と同様、もしくはそれ以上に『悩む』ことができるレプリロイドは、エックスだけじゃがな。それは、ひとつの可能性ではあるのじゃが……」

 

「悩むことが、ですか? オリジナルであるが故の初期不良、ではなく?」

 

「ほっほっほ。普通はそうじゃのう、スティグマ。じゃが、思い悩むことこそが、人類とレプリロイドを繋ぐ、大切な何かになるのかもしれん。もっとも、今はまだ、その可能性が希望なのか絶望なのか、誰にも分からないのじゃ。ワシはそれを見届けたくて、『若返りと永遠の若さ』というデメリットを承知の上で延命したのじゃ」

 

自分には滅多に見せない真剣な表情を見せる母親を見て、スティグマはモヤモヤした気分になる。

それを晴らすように、スティグマはムニエルを口に入れた。

 

「それでお母様はそんなに若々しいのですね」

 

「ちょいと背伸びし過ぎた気はするがの。まあ、お前と一緒に『無限の可能性と無限の危険性』がもたらす結果を見れるなら安い代償じゃて」

 

(『無限の可能性と無限の危険性』か……ぜひともお母様に見て頂かないと。そして私も何が何でも見てみたい。最高のステージで……! そのための準備は、ずっと前からやっているがな)

 

そう考えた直後、スティグマはDr.ケイリーのある言葉が引っ掛かる。

『片割れ』という言葉に、だ。

 

「お母様。悩むことがエックスの最大の特性の片割れ、ということなら、エックスにはもう一つの最大の特性があるのですか?」

 

「……ほっほっほ。ワシとしたことが口が滑ったか。生涯口外するつもりはなかったのじゃがの。まあ、お前もいい年をした大人の男じゃ。教えてやろう、『もう一つ』が何なのか。ただし、これは口外するでないぞ」

 

 

 

 

 

更に次の日。

イレギュラーハンター本部の会議室。

本来なら、特A級を始めとする一部の者しか参加できない極秘任務の作戦会議中だ。

エーテルランドの存在を知った俺は、半ば引きずり込まれた形でこの会議に参加している。

 

「2日前、エックスの通う学校に現れたイレギュラーに関して新たな情報が入りました」

 

エイリアがそう発した瞬間、ある地区の地図が表示される。

 

「昨日、例のイレギュラーがミレニアムの技術で改造されていることが判明しました。ですが、それ以外にも魔力動作式のナビゲートシステムも搭載されていました。カーナビを改造した簡易的なものでしたが、濃い思念を持つ者の大まかな位置を特定し、自動的に追跡するようにプログラミングされていました」

 

エイリアは更に続ける。

そして、地区の地図の横に、さらに詳細な地図が表示される。

それは更に拡大され、ある建物の名前が表示された。

荒川区の潰れた歯科医院か……。

 

「ナビには探知した思念に関するデータを送信する機能がついていました。魔力氏だったので普段とは違う意味で追跡に手間取りましたが、フィクションでよくあるような複数のサーバを経由したりはしていなかったので助かりました」

 

「やれやれ。よくもまあ、周辺は気づかなかったな」

 

ストーム・イーグリードが呆れた表情で呟いている。

確かに、周辺の住民は誰も気づかなかったのだろうか?

 

「歯科医院自体、ここ数日で急に心霊スポット化しています。魔法でカモフラージュしているのが見え見えですね」

 

「ふざけやがって。まるで見つけてください、って言わんばかりの妖しさだな」

 

ゼロが毒づきだす。

イーグリードどころか、他の特A級ハンターたちも賛同しているとしか思えない表情だ。

 

「? そういえば、スティグマ隊長は?」

 

「一足先に現場に向かっています。この会議室にいる者は全員、ブリーフィング終了後直ちに現場へ急行する様にとの指令が出ています」

 

エイリアの言葉に応じて、俺たちは一斉に「了解!」と復唱した。

 

 

 

 

荒川区のとある住宅街。

現場で俺たちは、スティグマ隊長と民間の協力者2名と合流した。

片方は……ミレニアム壊滅の際に一躍有名になったスーパーヒロイン姉妹の妹の方、デモニックギア・アリアじゃないか。

もう片方は……翔子さん!?

 

「あら、恵玖須じゃない」

 

「お久しぶりですわ」

 

「……どうも」

 

俺は、やいと程じゃないけどこの二人が何となく苦手だ。

亞里亞さんはどこか刺々しいし、翔子さんはオタク趣味が行き過ぎている。

スティグマ隊長も、俺がこの二人を苦手としているのを知っているのか、それとなく釘を刺してきた。

 

「麻希菜と沙枝の負担を減らしたい、という二人の配慮の結果だ。今回ぐらいは我慢しろ」

 

「了解」

 

 

 

「みんな、どう思う?」

 

「お前、本気言ってるのか?」

 

「……これは一目でわかると思われますが」

 

「とっくの昔に撤退済みね、これは。この回答で満足?」

 

「何の文句もありません」

 

亞里亞さんの言う通り、相手が逃げた後なのが丸分かりだ。

廃屋の中には色々と機材が持ち込まれていたが、その殆どが刃物か何かでぶった切られている。

多分、データの方も持ち出し済みなんだろうな。

 

「この様子じゃ、データも持ち出し済みだろうな」

 

「ゼロもそう思うか」

 

他の隊員たちが形式的に機材を調べている。

だが、すぐに「中身は持ち出された後です」という報告が飛んできた。

手際がいいな……。

 

「どのような違反者が出てくるのかと身構えましたのに……」

 

「『3割』に該当するのが出てきたら、亞里亞さん共々大変な目に合っていましたよ。……あれ?」

 

1個だけ、無事なPCがあった。

しかも電源がついている。

……!?

 

「何か手掛かりがあったのか?」

 

「やいとの写真だ……。……! あのイレギュラーはやいとの思念を感知していたのか!」

 

「あのチビのにか!?」

 

「それは本当か?」

 

俺の大声に反応したのか、スティグマ隊長まで駆け寄ってきた。

違反者がやいとに狙いを定めたと判断したのか、スティグマ隊長も焦りが表情に出ている。

 

「エックス、お前は綾小路邸へ向かえ。事態が解決するまでやいと嬢の身辺警護を命ずる。ライドチェイサーで来たのだろう? それで綾小路邸へ向かえ」

 

「了解」

 

 

 

 

 

「それで、お嬢様の警護を?」

 

「守秘義務が発生するため詳細は言えませんが、少なくとも、始業式に襲ってきたイレギュラーを操っていた連中の狙いは彼女であることは確かです」

 

やいとの家。

流石大金持ちだけあって、かなり大きい屋敷だ。

ちなみに、俺と今話しているのは、執事レプリロイドのグライドさんだ。

 

「恵玖須君なら安心です。お嬢様も大層お喜びになるでしょう」

 

「……B級ですけど、殉職するまで頑張らせてもらいます」

 

「ハハ……。お嬢様もよくぼやいでいました。それでは、お嬢様をお呼びいたしますので少々お待ちください」

 

グライドさんはそのまま、やいとを呼びに2階に行ってしまった。

今の内に、家に連絡しておこう。

それから十数秒後。

ちょうど帰宅していた父に、イレギュラーハンターの仕事で今日は帰れないことを伝えた。

 

『大丈夫なのか?』

 

「大丈夫なように全力でやってみるよ」

 

『……なあ、恵玖須。今の任務が終わったらで良いから、みんなで話し合わないか? お前がイレギュラーハンターに向いているかどうかで、な?』

 

「うん。それじゃ、おやすみ」

 

『ああ、おやすみ。母さんと沙枝には私から伝えておくからな』

 

その一言を最後に、通話が切れる。

それと同時に、やいとがグライドさんを連れて現れた。

……やいとが物凄く嬉しそうにしているのが気になる。

 

「B級なのに一人で要人警護を任されるなんて凄いじゃない! 今日のディナーはちょっと奮発しちゃいましょ!」

 

「イタリア産の上質なチーズと生ハムがありますので、メインをコトレッタ・アッラ・ボロネーゼにするよう言っておきます」

 

……心なしか、グライドさんも嬉しそうな気がする。

表情でそれを読み取ったのか、グライドさんが不意に呟いてくれた。

 

「お嬢様がお幸せなら私はそれで構わない男ですので」

 

その日、やいとは終始上機嫌だった。

……流石に風呂に入っている間は浴室の外で待機していたが。

 

 

 

そして夜が明けて……。

俺は未だに周辺を警戒している。

そんな折、エイリアから連絡が入った。

 

『エックス! 緊急事態発生です! ミレニアム残党と違反者がイレギュラーを伴い、都内各地に出没しています!」

 

「何だって!?」

 

『オマケにその混乱に乗じてVAVAが脱走して消息を絶ちました! 警護任務と並行して留置場に急行し、ゼロと合流してください』

 

「平行して? 現場にやいとを連れて行けと言うのか!」

 

いくらなんでも無茶だ!

もし現場にVAVAが潜んでいたら、俺一人で守りきれるかどうか……。

 

『この混乱に乗じてあなたが彼女の側を離れた隙を突く違反者が出るとも限りません。スティグマ隊長の判断です。今すぐ現場へ!』

 

「…………了解!」

 

一理あるが……。

それでも不安が残る。

ゼロが駆け付けてくれるのが幸いだけど。

 

「でもなんて説明すればいいのやら」

 

「どういうこと?」

 

「……留置場で脱走騒ぎがあったから君の警護と並行して現場に行け、要は君を連れた状態で現場に急行しろってさ」

 

「…………はい!?」

 

 

 

 

 

「それで、そのチビを連れて来たっていうのか?」

 

「俺としても不可解だとは思うんだけど……」

 

VAVAが収監されていた留置場。

わざわざVAVAが入っている区画の壁を切り刻んで、そこから堂々と入り込んできたようだ。

この区画にいた看守たちは人間もレプリロイドも問わず、全滅。

ご丁寧に監視カメラも全部破壊済みと来たか。

何れも、何か鋭利な刃物で斬られている。

 

「やいと。目は、閉じてる? 開けちゃダメだ」

 

「臭いで何となくどうなってるのか分かるけど、怖いから言われなくても開けないわよ」

 

やいとは目を強く閉じて、殆ど俺に抱きつくように寄り添っている。

それを見ているゼロは、呆れ半分だが少し心配そうな表情をしている。

 

「悪者に狙われているお姫様と、、そのお姫様を守る聖騎士ってところか?」

 

「ファンタジー物じゃあるまいし。それにしても、VAVAにしては妙にやり方が効率的過ぎないか? 第一、VAVAは刃物を使うタイプじゃないはずだ」

 

「少なくとも、この混乱に乗じて誰かがあのVAKAを迎えに来た、といったところか。斬られた跡を見る限り、微かな焦げ跡があるからビームソードの類か。……!」

 

瞬間、ゼロは何かに気づいたような表情になる。

それを聞こうとした直後に、エイリアから連絡が入った。

心なしか無粋に思える。

 

『エックス、ゼロ。スティグマ隊長からの緊急指令です! 『イレギュラーのコントロール地点の特定に成功』とのこと。今から座標をそちらに送ります!』

 

「スティグマ隊長は?」

 

『一足先に向かうと言い残し、そのまま通信を終了しました。それ以降音信不通です。他の部隊にも連絡していますが、動ける部隊の大部分とも連絡が取れません!』

 

「だそうだ。エックス、そのチビを連れてるからって遅れるなよ」

 

 

 

 

 

新宿区、市ヶ谷駐屯地。

自衛隊の中枢そのものであり、防衛庁の所在地でもある。

その中でも、今俺たちがいるのは防衛庁が置かれているA棟の中。

俺たちがその中の1室に入ると、そこにはスティグマ隊長と、何故かマスコミの人たちがいた。

 

「エックス。ゼロ。どうやら連中はここでイレギュラーを動かしていたようだ」

 

スティグマ隊長の言葉を証明するように、室内に敷き詰められた機材の内、モニターの方にイレギュラーの発生地点が表示され、別のモニターにはイレギュラー達と戦っている仲間たちの姿が見える。

でも、一体どうやってここを使ったんだろうか?

天下の陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地にどうやって侵入したのだろうか?

それに、マスコミの人たちがいる理由が分からない。

 

「でも、どうしてテレビ局の人たちがこんなに?」

 

「私がここを特定した直後、どうやら何者かがマスコミの皆さんにここのことをリークしたようだ。彼らがここまですんなり入れた理由は、私にも分からない」

 

スティグマ隊長にも分からないか……。

テレビ局の人たちは、鬼の首でも取ったかのように室内の機材や、映し出されている映像をカメラで生中継している。

それを見ていたゼロが、間髪入れずに別の疑問を飛ばしてきた。

 

「しかし、連中は一体どうやってここに侵入したのやら」

 

「大方、違反者当たりの魔法でカモフラージュでもしていたのだろう。……ひょっとしたら、テレビ局に皆さんもそうやってここに誘い込んだのかもしれない」

 

なるほど……。

あれ? ここにはやいとだけじゃなくて、テレビ局の人たちもいる。

なのに、極秘事項である魔法や違反者のことを?

珍しく焦っているのだろうか?

そう思って何気なしにゼロの方を振り向いたら……。

 

「秘密を暴露する、という行為は存外爽快感が…………あるな!」

 

「だと思った!」

 

スティグマ隊長がビームソードをゼロ目掛けて振り下ろした!

が、ゼロは間一髪で回避、逆にスティグマ隊長の腕を脇に挟むようにして拘束。

やいととテレビ局の人たちはおろか、俺もビックリだ!

 

「スティグマ隊長! ゼロ!」

 

「ほう。何故気づいた?」

 

「犯人の戦闘力。それにあの現場といい、留置場といい、いずれもビームソードと思しき刃物だけが使用されていたから、どう考えても同一犯。ビームソードを使う奴なんかそこまで多くないからアッサリ想定できたぜ。最初から背後を突かれると分かっていれば、簡単に対処できる」

 

「流石だな、と言いたいところだが……。最後の最後まで私を全く疑わなかったエックスの甘さ、いや、信じる気持ちの強さこそが我々の未来に必要だと言わざるを得ない!」

 

「な!? ぐあっ!」

 

訳の分からないことを言った直後、スティグマ隊長はゼロに強烈な頭突きを浴びせた!

続いて、左手でゼロの首を掴む。

そしてそのまま片手でゼロを吊り上げてしまった!

 

「スティグマ隊長! 何をしているんですか!? ゼロを離してください!」

 

俺がバスターを向けると同時に、スティグマ隊長はゼロを盾にした。

 

「そうだ、エックス。よく狙うんだ。さあ、私をゼロごと撃ち抜け! そうしなければ私を止めることはできないぞ! どうした? さあ!」

 

そんなことをしたら……!

う、撃てない……。

ゼロを撃つことなんて……。

 

「足! 足を撃つのよ!」

 

やいとのアドバイスに、俺はハッとなる。

そうだ、確かにスティグマ隊長の足はがら空き。

そこならゼロを犠牲にせずとも隊長を止められる!

発射!

 

「ぬぉっ!? やるな!」

 

スティグマ隊長はそのままゼロを壁へ投げ飛ばし、窓を突き破って外へと逃走。

壁に叩きつけられたゼロは首に受けたダメージが響いているのか、起き上がれないようだ。

 

「奴を追え! すぐに駆けつける!」

 

「ああ!」

 

 

 

突き破られた窓から、俺も飛び出してスティグマ隊長を追う。

スティグマ隊長は、俺を待っていたかのように仁王立ちで悠然と佇んでいた。

 

「あの小娘の助言があったとはいえ、咄嗟に私の足を撃ったのは見事だった」

 

「やいとのアドバイスが来るまで、一瞬迷いました」

 

「やはりお前はそうなのだ。お前には『引き金を引くのを躊躇ってはいけない時がある』とは言ったが、躊躇ってこそのお前であるな」

 

スティグマ隊長は、物凄く嬉しそうに言う。

その表情に浮かぶ『嬉しさ』は、真っ当な『嬉しさ』とは言い難い、狂喜が多分に練り込まれた『嬉しさ』だ。

おぞましい、その一言に尽きる表情だ。

 

「何故だ? 何のためにこんなことを!」

 

「レプリロイドそのもののためだ、エックス。我々の可能性を、この世界を支配できる可能性を試すためのな」

 

「全て仕組んだのか? 人為的にイレギュラーを生み出し、本来倒すべき敵たちと手を組んで。守るべき人たちを、共に戦う仲間たちを、愛していると言って憚らなかったほど大事な自分の生みの親を裏切って!」

 

「賛同してくれる連中もいる。レプリロイドだけでなく人間、違反者といった人ならざる者たちの中にもな。エックス……。犠牲の無い進化は、決して起きえない!」

 

あの時のように、スティグマは寂しげな表情でのうのうと言った。

ふざけているのだろうか?

……まず間違いなく、ふざけ半分だ!

 

「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

 

 

 

『エックス……。エックス』

 

『あな……たは?』

 

『ワシはトーマス・ライト。お前を作った科学者だよ、エックス』

 

『エックス……。それが、私の、な・ま・え……』

 

『エックス……。そう、「未知」を意味する、無限の可能性を秘めた名前だ。お前は自分で考えて悩んで結論を導き出し、人間とも密に愛し合える、全く新しいタイプのロボットになるんだよ』

 

 

 

『どうしました、博士? お疲れのようですが』

 

『エックス。お前は本当に、人間と同じようだな。だがそれ故に……ごほっ……ごほっ……。お前のように自分たちに極めて近い存在を受け入れるには、この世界の人間は勇気が無さ過ぎるのかもしれん。人は、お前のことを危険に感じるかもしれない。『未知』の存在には、危険なものも少なくないとはいえ……』

 

 

 

『すまない、エックス。お前を世の中に出してやるには、時間が足りなかった。ごほっごほっ!』

 

『ライト博士!?』

 

『ワシはお前に考え悩んで結論を見つける力と、未来の命をその手に掴める力を与えた。だが、その2つをまだ開放する訳にはいかないのだ』

 

『博士。私は最後の力、戦うための力を正しいことに使います! 目覚めた後に生きる場所となる、異世界のために!』

 

『ああ……。もちろんワシもそう信じている。エックス。お前がその正しいのままであり続けるということを、異世界そのものとそこに生きる人たちがそう願うことを……』

 

『博士……』

 

『さらばだ、エックス。お前の居場所となりうるであろう、異世界の希望よ……』

 

 

 

 

 

「……やはり、経験の差は大きいか」

 

……何か、夢を見ていた気がする。

そうだ、スティグマの一撃を食らい、立ったまま一時的に機能が停止していたんだ。

止めないと、スティグマを!

 

「ぬぅぅぅぅぅおぁっ!」

 

「んなぁ!?」

 

スティグマの顔面を、轟音が轟くほどの勢いで殴った!

直後、スティグマはひるむ。

まだだ! まだ攻撃が足りない!

 

「チャァァァァーッジ……ショットだぁっ!!」

 

「ぐぅわぁぁぁー!?」

 

チャージショットまでもが顔面に直撃したスティグマの顔の、目元に垂直の傷が走っている。

今のチャージショットのダメージでついたのだろう。

 

「ロックマン……エェェェェェックスゥゥゥゥゥー!! …………ふっふっふっふっふっふっふ。ハハハハハハハ。戦い足りないが、これから所信表明演説の収録があるのでな。失礼させてもらうよ。ムアーッハッハッハァッ!」

 

スティグマの言葉を待ていたかのように、上空に第7空挺部隊の旗艦、デスログマーが現れた。

空中運搬用メカにロイドを掴んで飛行し、そのまま艦底カタパルトに着地したスティグマを収容した直後、デスログマーは高度を上げて飛んで行った……。

 

「スティグマァッ!」

 

『エックス! 緊急事態発生です! VAVAが都庁前に出没しました!』

 

「スティグマめ!」

 

『? スティグマ隊長に何かあったの!?』

 

「ゼロに聞いてくれ! 俺は都庁前に急行する!」

 

通信を強引に打ち切って、俺はライドチェイサーに乗る。

その瞬間、何かが俺の背中に乗りかかる感触が走った。

 

「ちょっと! このやいとちゃんを置いていくつもり?」

 

「危ないぞ!」

 

「恵玖須の側にいれば大丈夫!」

 

根拠になってないよ!

 

「……仕方ないな!」

 

俺はやむなく、やいとを乗せたままライドチェイサーを加速させた。

 

 

 

 

 

「凄い! このバイク凄い! 一瞬だけど空飛べる!」

 

「ライドチェイサーっていう、別の乗り物だけどね! って、それどころじゃなかった。シッカリ掴まっているんだ!」

 

確かDr.ケイリーがチェバルをチューンしたやつらしいが……。

しかし、ドライブブレードって凄いな。

ジャンプ中に発動すれば、やいとの言う通り一時的に空を飛べるんだから。

むっ、真正面にビーブレイダーが出てきた。

 

「もう一度飛ぶぞ!」

 

ジャンプ! ドライブブレード発動!

ビーブレーダーをあっさり叩き切ってしまった。

凄い! ドライブブレードって凄い!

 

「あのハチのロボットをあっと言う間に真っ二つにしちゃったわね!」

 

「Dr.ケイリー様様だな! ……!?」

 

俺はある人物が目に入った瞬間、ライドチェイサーをそこに向けて加速。

急ブレーキ!

その人の真横に停車した。

 

「姉さん!」

 

「え? お義姉さん!? その格好は何!?」

 

「恵玖須! やいとちゃんも……。って、やいとちゃん、私の姿が見えるの!?」

 

あ、そういえば姉は魔法少女に変身していたんだった。

それに、いつもならエミットが不可視魔法をかけているのに、何でやいとには……。

 

「ごめん! いきなりのことだったから不可視魔法をかけるの忘れてた!」

 

「え? 生きた人形!?」

 

そういうことか……。

やいとも混乱しているけど、説明している暇はない。

 

「エミットは人形じゃない。こことは違う世界の住人だ。姉さんの今の格好と併せて、詳しいことは後で説明する!」

 

「ちょうど良かった。私と沙枝も乗せて! 都庁前に行かなきゃならないの!」

 

「偶然! 俺と同じとこに行くつもりだったのか。二人とも、乗って!」

 

二人も乗せて、俺は再びライドチェイサーを加速させる。

それから数分後、俺たちはようやく都庁前に到着した。

そこには専用のライドアーマーに乗っているVAVAと……露出度が高くて扇情的な紫色の服を着た女性がいた。

あのVAVAが攻撃していないところを見る限り、奴もスティグマの協力者か。

 

「エミット……。あの女の人、まさかとは思うけど、違反者か?」

 

「正解。名前はルールアン。女の子にてを出すのが大好きで、守備範囲の広さから『ゆりかごから墓場まで』って言われてるトンデモない奴よ」

 

「……倒すべき敵、という訳か」

 

それを聞いた直後、俺は考えるよりも先にライドチェイサーを降りていた。

それと同時に、バスターを起動させる。

姉も戦わなければいけないと判断したのか、ライドチェイサーから降りた。

いつの間にか、銃器を手に持っている。

 

「来たか……。それにしても、この非常時に身内同伴とはな」

 

「いいじゃない。あのB級の坊やはあなたにお任せするわね。私はあの子を……、沙枝ちゃんを好きにするわ」

 

「……フン」

 

向こうがこっちに突っ込んでくる前に、突撃する!

走りながらバスターを乱射して、相手の出鼻をくじく。

そうすることで敵が突っ込んで来るのを防ぎ、後ろにいるやいとを巻き込まないようにする。

 

「流石にVAVA専用だけあって堅いか!」

 

命中はしているが、装甲を極僅かにへこませる程度。

ワンオフは一味違う、とでも言いたげだ!

姉の方も、ルールアンとやらを相手にヒット&アウェイで戦っている。

 

「B級のクセに、いい攻撃だ! だがそれ止まりだ! ライドアーマーだけが取り柄と思うなよ!」

 

奴のライドアーマーの強烈な左ストレートを、俺は紙一重で避ける。

だが、その瞬間に電流が走って体が動かなくなった!

VAVAの右肩のランチャーを警戒していなかったか……。

 

「うわっ!?」

 

「恵玖須! あうっ!」

 

姉は俺の名を叫んだ直後、殆ど刹那のタイミングで悲鳴を上げた。

何事かと思って姉の方を見たら……。

なんと、ルールアンに拘束されて身動きが取れなくなっていた!

しかもルール―アンは片手だけを使うスタイルで拘束しているらしく、左手で姉の胸をわしづかみにしている。

俺に気を取られてしまい、そこを突かれたのか。

俺がドジを踏まなければ……!

 

「姉さん!」

 

「クカカカカカカカカ! 無様だな。B級止まりの甘ちゃんだったばっかりに、美人の姉貴のピンチを招いたんだからな。自慢の姉貴が堕ちるまでコマされるとこを見届けさせた後で、トドメを刺してやるか」

 

「あ、それすっごく面白そう」

 

VAVAの嘲笑う声と、ルールアンの下劣としか言えない相槌が耳座りだ。

奴らの言葉でパニックになったのか、姉は泣きながら敵に懇願している。

 

「やめてください! 恵玖須を殺さないで! 私はどうなっても構いませんから!」

 

「あら、かわいい。姉弟愛、ってやつ? もう、沙枝ちゃんったら健気なんだから。嫉妬に駆られてあなたの弟を余計に殺したくなっちゃった」

 

「お願い……します……。ペットにでもなんにでも……なりますから……。恵玖須を殺さないで、ください…………」

 

「……可愛い弟のためなら、ってか? 堕ち切ってもそう言えるかなぁ~?」

 

グ……。

動かないと……。

動かなきゃダメなんだ!

今動かないと、姉さんがグチャグチャにされてしまう!

姉さんを守りたいんだろ? だったら今すぐ動けよ! 恵玖須!!

……よし! 少しづつ動けるようになってきたぞ。

 

「……バカな。拘束用のエネルギースタン弾だぞ! それ食らってすぐに動けるっていうのか!? B級止まりのくせに……その顔は!」

 

「な、なんなの? 沙枝ちゃん、あなたの弟、一体何者なの!? 顔が変形したと思ったら、 それを見た私の膝が笑い出したんだけど!」

 

「すぐに悩んで、怒るととっても乱暴になって、頭が冷えたら今度はそれに悩んで落ち込むB級ハンターです。でも、とっても優しくて、世界で唯一涙を流せるレプリロイドな、私の弟です! それ以外の何物でもありません!」

 

姉さん……。

その言葉だけで……十分戦える!

 

「それ以上姉さんのデリケートな肌に爪を立てるな! ルールアン!」

 

俺は、怒りで却って冷静になった状態で、ルールアンに狙いを定める。

ルールアンもVAVAも、俺の方を向いて固まっている今がチャンス。

拘束の仕方の関係上、ルールアンは姉さんを意図せず盾にしている形になっているが、姉さんを助けるにはこれしかない!

姉さん、後で謝るから!

直後、オレのバスターから発射されたエネルギー弾が、ルールアンの耳を消し飛ばしていた。

 

「が……あ……!!」

 

予想外のことに気を取られたのか姉さんを拘束する力が緩んだらしく、姉さんはやっとの思いでルールアンの右手を振り払った。

 

「姉さん! 避けて!」

 

俺の言葉の意図に多少なりとも気づいてくれたのか、姉さんは慌てて横に避ける。

これで……ルールアンを狙える!

 

「エーテルランドでっ! 一滴も出なくなるほどぉ! 絞られてこぉぉぉいっ!!」

 

バスターをルールアン目掛けて、連射。

エネルギー弾の礫が、ルールアンの体を容赦なく穴だらけにしていく。

エーテルランドの住人たちは、こっちの世界で致命傷を受けると強制的にエーテルランドに戻される。

エミットがあの時教えてくれたことの一つだ。

聞いた時はホッとしたよ。

流石に、人間とは違うからとはいえ、殺すことには……まだ抵抗があるから。

 

「こっちががら空きだ……ずわおぉっ!?」

 

VAVAが俺目掛けてライドアーマーを突貫させようとするが、顔面にカラフルな光弾を食らってくぐもった悲鳴を上げる。

姉さんが、手に持った銃火器でVAVAを銃撃してくれたようだ。

 

「俺は、ライドアーマー戦闘の第一人者だぞ! それがテメエみたいな鈍いの如きにぃっ!」

 

VAVAの怒号が俺と姉さんの耳をつんざく。

しかし、その怒号を掻き消すように、エネルギー弾がVAVAのライドアーマーの左腕を粉砕した。

オレのバスターから発射された物ではない……。

あの威力は……。

 

「諦めろ」

 

ゼロ!

……? 何故かゼロと並んで、女の人が7人も一緒にいる。

髪の毛の色も、着ている服のタイプもてでバラバラ。

巫女服から、姉さんが着ているような魔法少女のコスチュームまで様々。

 

「どうする? 自慢のライドアーマーをバラバラにしてもらってもいいんだぞ?」

 

「…………ルールアン! 撤収だ! デスログマーまで転送!」

 

「……しょうがないわね。じゃあね、沙枝ちゃん。次に会った時は……悲鳴が嬌声に変わるまでいじめてあげるから♪」

 

虫唾が走るようなことを姉さんに言い残し、ルールアンはライドアーマーに乗ったVAVAごと転送魔法か何かでこの場から逃げた。

……助かった。

 

「逃げたか。……エックス、大丈夫か?」

 

「ああ。……いつも、君には助けられてばかりだな。ありがとう」

 

「……いつものことだ」

 

そう、ゼロはいつもこうだ。

素直に礼を言っても、ちょっとぶっきらぼうなんだ。

 

「「恵玖須!」」

 

姉さんとやいとが、今にも泣きそうな顔で俺に抱きついてきた。

よっぽど心配してくれたんだろうな……。

そう言えば、ゼロと一緒に駆け付けてくれたこの人たちは……。

何故だろう? 全員が全員、俺を見て、嬉しさと悲しさが混ざり合った表情をしている。

 

「あの……。どうして、あなたたちはそんな悲しそうな顔で俺を見つめるんですか?」

 

そう尋ねた瞬間、彼女たちの俺を見る表情は、一気に悲しみの度合いが強くなった。

そして、後ずさったかと思うと、散り散りになってこの場を去っていく。

 

「待ってくれ! どうしてだ? どうして俺の顔を見てそんなに泣きそうな顔になるんだ!?」

 

「エックス……。俺にも詳しい事情は分からないが、お前は彼女たちのことを知っている。だが、それに関する記憶がDr.ケイリーの一存で封印されているそうだ」

 

「封印!? どういうことなんだ……?」

 

一体何の事情があってそんなことを?

どうなっているんだ!?

 

「とにかく、お前は姉貴たちを連れてハンターベースに戻れ。休んでおくんだ。俺は可能な限り、スティグマに加担した奴らに関して調べてくる」

 

ゼロはその一言を残して、自分のライドチェイサーに乗って走り去っていった。

しかし、あの人たちに関する俺の記憶は、どうして封印されているんだ!?

何故なんだ!? 封印しなければいけない物だったというのか!?

エミットが、やいとが、姉さんが不安げに俺を見つめる中、俺は、叫ぶ。

叫ばずには、いられなかった。

 

「俺には、俺自身の記憶を自分の物にしてはいけないと誰が決めた! 何故だ!? Dr.ケイリーよ、俺を造った人よ、答えてくれ! 俺はその記憶を取り戻してはいけないと言うのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

 

 

 

その頃。

東京都某市上空。

デスログマーの甲板上。

 

「フフフフフ。ハハハハハハ。立ち向かってくるのだ、エックス! お前の戦う相手は私だ! 私はここにいるぞ! さあ、戦いの開始だ! レプリロイドの可能性と、お前の無限の危険性をかけた戦いのな!! ハッハッハッハ! あぁぁっはっはっはっはっはっはっはっはっはぁっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

氷の世界へと行った友がいた。

誇りを胸に、その世界へと行った。

彼の名は、マルス。

氷と雪と吹雪の冷たさに負けない、熱き心を持つ者。

次回! 「友はいつもいつでもこの氷の世界にいる」。

凍えきった大地で、光と闇の魔法が悪に牙を剥く!

 

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