ROCKMAN X : BOY OUT OF NIJIGEN DREAM - ANOTHER CRITICAL FIRST   作:あやか

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WARNING!

今回はゼロ死亡回です。


STAGE 9:閃光、命を懸けた果てに

『恵玖須……』

 

これは、夢か。

でも過去の記憶じゃない、俺が望んでいる光景の一つ。

俺は、体を許してくれた姉さんの胸に顔を埋める……。

 

 

「え……恵玖須! ストップ! ストーップ!」

 

「……あれ?」

 

どうやら、寝ている内に夢と同じ動作をしてしまったようだ。

それを証明するように、ベッドの中でパジャマの胸元がはたけた姉さんが顔を真っ赤にしている。

よーく見たらブラもずれて胸元がはだけている。

そういえば、今日は五月最初の授業がある日だ。

 

 

 

「でも大丈夫なの? 12股なんて……」

 

「沙枝だけじゃなくてやいとちゃんたちも納得しているんだ。今は多少割り切った方がいい」

 

「それを言われると……」

 

朝食時。

家族4人でのいつもの光景。

違うとすれば、俺と姉さんが恋人同士で、更に俺には後11人恋人がいること、かな?

あの後、マスコミがハンター本部に押し寄せたけど、日本ローカル放送局ギルド以外は全部突っぱねてもらった。

それにしても、淑女協定を結んだとは……。

ちょっと心中複雑だし、父さんと母さんには申し訳ないとは思うけど、姉さんたちには感謝しないと

 

 

 

 

 

STAGE 9:閃光、命を懸けた果てに

 

ステージボス:『VAVA』 『アラクノフォビア・メーカー ボスパイダー 』

 

 

 

 

 

「やっぱり台湾の一件で持ちきりだね」

 

「そらそうですよ。12股宣言ですもの。第一、あなたは当事者なのになんで第三者を気取っているんですか」

 

「……そんなつもりはなかったんだけどね」

 

マルフレートにツッコまれてしまった。

教室は台湾での一件で盛り上がっている。

俺は親衛分遣隊に新しく入ったファントムがクラスメートたちをガードしてくれてるからマシだけど……。

その代りとばかりにみんなやいとに詰め寄っている。

見かねて近づこうとするけど、ファントムに遮られた。

 

「余計騒ぎが大きくなります。授業が始まれば人だかりは勝手になくなります」

 

この状態だと、杜論とルナにマーティ、アクエアルも同じ状況だろうな。

 

 

 

 

 

『やっぱり似たようなことになってたのね。こっちでも私だけじゃなくて桜樺も大変だったし』

 

「きっと栗実とパリスでも同じことが起きてたと思う」

 

昼休み。

俺は屋上で姉さんに電話していた。

説明しておくと、桜樺は実は姉さんと同じ学校に通っている。

麻希奈さんは亜理亜さんと一緒にカリンさんのいるパリス学園に転入。

シルキスさんは留学生として理瀬さんが通っている栗実女学園に今日転入したって聞いた。

シャーロッテさんだけ聞きそびれたけど、少なくとも学年は姉さんと一緒なのは確か。

 

『とりあえず、翔子が何とかしてくれたけど……』

 

「人の噂も四十九日っていうけど、どうしたものやら」

 

『もっとかかるかも。あ、先生に呼ばれたから切るね』

 

通話が終わった。

本当にどうしたものやら。

そう思っていたら、台湾で嗅いだことのある香りが鼻の奥に広がる。

この香りは……。

 

「シャーロッテさん!?」

 

「御名答ですわ」

 

「……シャーロッテさんもこの世界に留学したのは効いていたけど、蘭ヶ峰(こっち)とは」

 

「別に問題はないはずですわ」

 

でもどうやってここまで来たのだろうか?

屋上に行くための階段はファントムが立ち塞がって通さないようにしていたのに。

まさか……。

 

「壁伝いにここまで来たの?」

 

「まさか。階段を通せんぼしていたあの失礼な方を出し抜いてここまで来ましたわ」

 

「まさかファントムのガードをすり抜けるなんて……」

 

ちょっと信じられなかったけど、ファントムがシャーロッテさんを追って声を荒げながらこっちに来たので、どうやら本当みたいだ。

目が血走っているように見えるのは考え過ぎだろうか?

 

「貴殿! 隊長は姉君殿と電話中と申したぞ!」

 

「既に終わっていましたわよ」

 

「それは結果論だ!」

 

シャーロッテさんは涼しい顔だけど、ファントムは相変わらず険しい顔だ。

ああ見えてファントムは意外と気性が激しいので、ここで止めておこう。

 

「落ち着いて。シャーロッテさんにも問題があるけど、熱くなり過ぎだよ」

 

俺がとめたらファントムはあっさり落ち着いてくれた。

 

 

 

 

 

それからそれから。

ここはハンター本部の総監室

召集令が来たので来たのだが、シグナスは急用でまだ戻れないらしく、俺は待つことになった。

 

 

『……はい。この辺をうろついていた、蒼いレプリロイドの反撃で既に殺られてました。はい。了解』

 

俺は、ゼロと初めて会った時のことを思い出していた。

まだ小学校に入る結構前のことだ。

母さんや姉さんと一緒に、文京区の家から新宿中央公園に来ていた。

仕事が思っていた以上にはかどって予定より早く帰宅できることになった父さんとの待ち合わせのためだ。

場所的に、俺の情操教育の意味合いも強かったと思う。

でも、父さんを待ちつつ周囲を眺めていたら、イレギュラーが出てきた。

瞬間、俺は気が付いたら目覚めた時に身にまとっていた蒼いアーマーを再び装着して、右手のバスターでイレギュラーを射殺。

直後、赤いアーマーのイレギュラーハンターが駆けつけてきた。

恐らく、俺が射殺したイレギュラーを追ってきたのだろう。

彼は通信機能で誰かに状況を報告していた。

 

『ハンター本部まで来てもらうぞ。事情聴取とか色々やらなきゃいけないからな』

 

『…………うん』

 

これが彼、……ゼロとのファーストコンタクトだった。

 

 

「エックス。どうした? エックス!?」

 

「!? ……シグナス。ゼロと初めて会った時のことを思い出してたんだ」

 

「そうか。それよりも、すまないな。召集令を出しておいて待たせてしまうとは」

 

シグナスはこの1ヶ月、判断のせいで顰蹙を買ったり反発されたり(俺も反発した1人だけど)で色々と大変だった。

それがストレスになっているはずなんだけど、そんな様子を見せないシグナスは凄いと思う。

 

「早速本題に入ろう。……ワールドスリーの最高幹部はお前の奮闘で全員倒れた。だが、パキスタンにアイスランド、アラブ諸国の一部、中南米とアフリカの一部は依然ワールドスリーの支配下だ。

 

 そして厄介なことに、占拠された国では善政を行っている。何故だか分かるか?」

 

「ワールドスリーに従えば生活が楽になる、住みやすくなる、そう思わせるため?」

 

「そうだ。南アフリカとブラジルでは治安が劇的に回復していて、完全にワールドスリーを信頼しきっている。いったん占拠した後は善政で統治して懐柔し、信頼を得る。上手い手口だ」

 

シグナスの表情は相変わらず険しいままだ。

確かに、無理に抑圧するよりは楽で効果的な方法だ。

それ以外の手段や手を組む相手に大いに問題があるから誉められないけど。

 

「しかしだ。幸い、最高幹部が全滅したので浮足立ったところを突いて、世界各国の軍とスーパーヒロインたちが大規模な反撃で成果を上げているが、その攻勢もいつまでもつか分からない。

 

 さらに運のいいことにゼロから吉報が来た。ワールドスリーの本拠地を見つけたとな。移動要塞だったので座標の特定こそ不可能だったが、日本の領海内を行き来している」

 

まさか日本だったとは……。

しかし、なぜシグナスは俺だけにこのことを?

 

「シグナス。どうして俺だけに……?」

 

「総員に言う場合、エックスに任せた方が効果的だからだ。お前にはスティグマ以上の実力に、この1ヶ月でのめまぐるしい実績と信頼がある。前線に出ない私よりも適任だと思ってな。

 

 面倒な役を押し付けることになるが、堪えてくれ。そして、説明会の際に決意表明も頼む。士気は最後まで最高潮のままで維持したい。必要な資料は既に揃えてある。後は、お前の意思次第だ」

 

……ワールドスリーとの、スティグマとの決戦に向けての決意表明か。

それが勝利につながるというのなら……。

 

「了解。今すぐ準備を。マスコミも呼んで。可能な限り国外からも。説明と決意表明は衛星中継で国外にも放送されるよう手配を」

 

「任せろ、御大将」

 

 

 

 

 

その日、エックスから日本中に、可能な限り世界各国に、メッセージが流された。

 

『本日未明、ワールドスリーに関して調査を行っていた特A級ハンターからの報告でワールドスリーの本拠地が明るみになりました。それは移動要塞であり、日本の領海内を秘密裏に動き回っています。

 

 現在、自衛隊と協力して行方を追っており、発見次第攻勢に出ます。……この1ヶ月でワールドスリーの最高幹部は全滅し、それに乗る形で世界各国におけるスーパーヒロインたちの戦いは優勢に傾いてきました。

 

 ですが、ワールドスリーに占領された地域に住む人たちは連中の統治を受け入れています。この写真を見てください。南アフリカのヨハネスブルグで隠し撮りされた物ですが、人種に関係なく子供たちが塾帰りで夜の街を歩いています。

 

 ワールドスリーが南アフリカを占領し、統治した結果です。「犯罪首都」とまで言われたヨハネスブルグがワールドスリーの統治で安全な街になったからです。厳罰で犯罪者を駆逐し、教育と就職斡旋を行って更生させる。

 

 飴と鞭の要領で連中は南アフリカの治安を劇的に改善しました。何故そうしたのか? ワールドスリーが占領前より安全で生活に困らないように統治しているからです。奴らには圧政をする気は無いのでしょう。

 

 それでも、俺はワールドスリーを認める気はありません。手段と勢力の内容に余りにも問題があるからです。個人的にもスティグマのことは許せません。

 

 俺は、生みの親を、仲間たちを、守るべき人たちを裏切ったスティグマが許せません。スティグマは目的が正しくとも、「止むを得ない」と割り切ることができないほどの間違った手段を行使しているからです!

 

 奴のやり方ではおびただしい犠牲が出るのは目に見えています。正しい結果を得たとしても……その後で綻びが生じ、大きな災厄が起きます。だから、俺は最後まで戦います。応援してくれとは言いません。

 

 どうか皆さんはワールドスリーを受け入れないでください。世界中で戦っているスーパーヒロインたちも各国の軍隊の皆さんも、俺の言葉を胸にしまって戦い続けてください。俺は……、俺の正義のままにワールドスリーを潰し、スティグマを倒します!!』

 

エックスの言葉は、多くの人たちに届いた。

イレギュラーハンターの士気を、世界各国の軍隊の士気を、スーパーヒロインたちの士気を大いに上げたのである。

そして、戦いの火は更に激しく燃え上がることとなる。

 

 

 

 

 

その日の夜。

晩御飯の時間。

 

「本当に大丈夫なの? あんな煽るようなことを言って」

 

「言わないよりは、正しいことだと思う」

 

案の定、母さんに問い質されてしまった。

反論はしたけど心配そうな表情のまま。

父さんもちょっと渋い表情だ。

 

「恵玖須も覚悟を決めたからあんな言い方をしたのだろうが……。やはり、ちょっとな」

 

「でしょう? 沙枝ちゃんと恵玖須ちゃんが戦うのは今は反対できないけど……やっぱりどうしても心配だわ」

 

やっぱり心配させているか。

無理もないか。

姉さんも複雑な表情だ。

だけど、俺は止まるわけにはいかない。

結局、食後も部屋に戻る気にはなれず、リビングで呆然としていたらお風呂が湧いたのか呼び出しを受けた。

 

「俺、最後でいいよ。たまには父さんと一緒に入ったら?」

 

母さんの顔が真っ赤になった。

まあ、何を意味するのかは分かってるんだろうね。

 

「親をからかうんじゃない」

 

父さんはそう言っているけど、意外と満更でもなさそう。

 

「まあ、久しぶりに一緒に入るか」

 

そう言って父さんは母さんを連れて風呂場に行っちゃった。

母さんの方も何だかうれしそうだったから、良かったのかな?

そんな風に思っていたら、姉さんが隣に座ってちょっと困った表情を見せた。

 

「ママをからかっちゃめでしょ」

 

「夫婦円満の後押しだよ」

 

 

 

 

 

次の日。

ハンター本部のブリーフィングルーム。

俺の他にはエイリアとシグナスがいるだけ。

姉さんたちはまだこっちに向かっているようだ。

 

「現在、ワールドスリーの本拠地は第0隠密部隊が追っている。今回、エックスに向かってほしいのは青森県は津軽半島の陸奥湾に面しているこのポイントだ」

 

エイリアの操作で、ディスプレイに表示された地図に赤いマークが付けられる。

青森か……。

 

「混乱回避のためお前にも伏せていたが、現在日本ではワールドスリーの工作員による扇動でゲリラ化した各地域の一部地元住民を相手に第1汎用部隊が交戦中だ。

 

 統率も連携もない素人テロリストども相手だからこちらの被害は皆無、相手側は万単位の死者を叩きだしている。連中のほとんどは農村部の者ばかりだな」

 

「……それがどうしてワールドスリーの口車なんかに」

 

「ネットスラングだが『膿家脳』というやつだ。この場合、『月』と農業の『農』を組み合わせた方の『膿』だ。ネットで調べればどんなものか大体分かる。努力して成功した者を妬み嫉み、新しい血を受け入れない、狭量で農業発展を阻害する害悪だ。

 

 滅びるべきゴミだ。……つまり、連中は都会の人たちへの妬みだけで工作員の口車に乗り、平和を乱す悪しき存在へと成り果てたわけだ。エックス。お前はワールドスリーの本戦力の相手に集中しろ、汚れ役は第1汎用部隊やゼロがこなしてくれる。

 

 そろそろ本題に入ろう。オーストラリアで開発されていたが突如として研究所を抜け出して行方知れずになった新型メカニロイド『ボスパイダー』が件の地点でルールアンとVAVAの2人と一緒にいたところを目撃されたからだ。

 

 目撃した地元警察署勤務の警官は気づかれる前に逃げてこちらにSOSを送ってくれたが、急がないと警察署ごと消されかねない。目撃者の推測通り、ワールドスリーに参加していた場合は確実に抹殺しろ。

 

 ゼロは既に現地に到着している。お前も向うように」

 

「了解。敵の戦力が未知数なため、念のためウォーダス・テードで向かう」

 

 

 

 

 

ウォーダス・テードの艦橋内。

俺は、少し嫌な予感に襲われていた。

もしかしたら……。

考えるのはやめよう。

現実のものになりかねない。

 

「ゼロ……」

 

「たまにはボクの名前を呟いてよ」

 

「どうすればいいんだろう? ……乗ってたの?」

 

「乗ってたよ。みんなと一緒に」

 

気が付いたら華鈴さんが隣にいた。

彼女の言葉に合わせるように、シャーロッテさんと麻希奈さん、桜樺も姿を現した。

 

「そういえば、姉さんたちは?」

 

「出発が急でしたので急ぎ過ぎて休憩中ですわ。特にお義姉様は肩で息をしていましたし」

 

シャーロッテさんはこう言っているけど、俺はそんなに急いでいたのかな?

不安に苛まれているのかな?

そんな風に悩んでいたら、麻希奈さんがあの時のように髪を触ってきた。

 

「大丈夫よ。私達がついてるから」

 

「うん」

 

桜樺も俺の肩に手を置いてきた。

 

「是魯のことが心配でも、焦っては駄目だ」

 

「……桜樺」

 

 

 

 

 

それからそれから。

津軽半島。

この辺は下手をすると戒厳令一歩手前のようだ。

……それにしても、クモの巣が多いな。

道中、俺たちは第1汎用部隊が物々しい雰囲気で周囲を見回っている光景を目にする。

 

「お疲れ様です」

 

「セレナードは?」

 

「隊長なら、エックスさんが来ると聞いて飲み物の調達に行きました」

 

そういえば、彼女は昔から俺のことを変に気に入っている節があったな。

単純に子ども扱いしているだけかもしれないけど。

そう思っていたら、セレナードがリンゴジュースの瓶を抱えて姿を現した。

 

「久しぶりね」

 

「……まあね。そういえば、ゼロは?」

 

「ここから北へ数㎞の地点よ。心配なのはわかるけど、ジュースでも飲んで落ち着きなさい」

 

そう言いながらセレナードはリンゴジュースの瓶を押し付けてきた。

受け取ったのは理瀬さんだけど。

いつの間にか紙コップの袋を持った杜論から、紙コップ受け取ったら中身が既に入っていた。

 

「ゼロ……」

 

「心配してるだけじゃ事態は進まないよ」

 

「そうそう。それにあの根性悪オールバックは不死身みたいなものですわ」

 

理瀬さんと杜論はこう言ってくれてるけど……。

それでも、やはり心配なことに変わりはない。

ゼロ……。

 

「不安がっちゃダメですわ」

 

「そうそう。不安が的中するって漫画とかじゃよくあるんだから」

 

シルキスさんとルナも……。

これを飲んだらすぐに後を追おう。

 

 

 

 

 

十数分後。

みんなでリンゴジュースを飲んだ後、セレナードが教えてくれた地点へと向かった。

ここから先は正に修羅場。

血の河に屍の山、か……。

それに合わせたかのように周囲の建物にかかっているクモの巣の数が凄いことになっている。

 

「これ、全部……ゼロがやったのかな?」

 

「死の静寂以外の何物でもないな。レプリロイドか人間か関わらず、死体ばかりだ」

 

「見慣れたくないね……」

 

アクエアルとマーティにここまで言わせるとは……。

ゼロは昔から超武闘派だったけど、ここまで激しい戦い方は見たことがない。

 

「あいつ、本当に凄まじいわね」

 

「この調子なら、是魯君も大丈夫じゃないの?」

 

「やいと……。姉さん……」

 

胸騒ぎが更に激しくなった直後、爆発音と悲鳴が向こうから聞こえた!

まさか……!?

 

「ゼロ!?」

 

思わずゼロの名を叫んだ直後、ゼロが本当に目の前に来てくれた!

 

「エックス? 何でこっちに来た!?」

 

「……シグナスからの指令で来たんだ」

 

数分後。

事情を説明したら、ゼロは渋い顔になった。

 

「詰めが甘いな……。ま、今回は俺1人で何とかなるかもな」

 

「ゼロは昔から凄く強いからね」

 

「まあな」

 

 

 

 

 

それからそれから。

ゼロは再び単独行動。

俺たちは新型メカニロイドを目撃した人が勤務している警察署にいた。

その内の一室に13人が揃って入って来たので鮨詰めに近い状態かもしれない。

……不意に窓に視線をやると、クモの巣が目立つ。

大量発生中なのだろうか?

気にしても仕方ない。

 

「この地点で目撃しました」

 

ルールアンとVAVA、そしてボスパイダーを目撃した地点を、件の警官が地図で指差してくれた。

ここからそう遠くは無いな……。

 

「それにしても、よく無事でしたね」

 

「気づかれな内にすぐにその場を離れましたんで……」

 

「最悪の場合、こちらで身柄を保護せざるを得ない状況も考えられます」

 

「警察官なのに、情けない話です」

 

けど、いくら何でも相手が悪すぎる。

こういう言い方はよくないけど、普通の警察官じゃVAVAに挑んでも確実に殺されてしまう。

 

「流石に相手が悪過ぎます。あそこまで危険なのはイレギュラーハンターに任せてください」

 

 

 

数分後。

警察署に入り口で俺は別の警察官(交通課の打海警部補と名乗っていた)と立ち話をしていた。

しかし、クモの巣が多い。

打海警部補も首を傾げている。

途中からゲリラ報道のためにこの近辺に紛れ込んでいた砂山さんたちと遭遇したので、彼らも立ち話に加わってくれた。

 

「しかし、その人も運が悪かったよねぇ」

 

「俺も、そう思います。でも、件のメカニロイドとVAVAを倒せば一応の身の安全は確保できるはずです」

 

砂山さんが気の毒そうな顔で語り、俺も思わず同意してしまった。

でも、出月さんと横山さんは「そう上手く行くのかな?」って表情をしている。

打海さんの方は同意はしてるものの、やっぱり曇った表情をしていた。

 

「そりゃそうですが……。でもあんたも小学生なのにイレギュラーハンターでしょ? テレビで活躍見てましたけど、あそこまで頑張ってるとこ見るともう応援するしかないんですよ。でもね、それの次に心配なんですよ」

 

「12股宣言のこととか?」

 

打海警部補の目が点になった気がする。

ビンゴだったのかな?

 

「そうそう。その歳で死に急いでどうするんですか。……って、違いますって。子供が毎度毎度あんな激しいドンパチしてるとこ見てるから、本官も近所の人たちもみんなおっかなびっくりなんですよ! 怪我したらどうしようとか言って」

 

「……そっちでしたか」

 

砂山さんはやれやれと言った表情を見せた。

横山さんからは睨まれた気がする。

 

「無茶なことをしたって自覚はあるんだね」

 

「……うん」

 

出月さんも苦笑いの表情。

それにつられたのか、打海さんも苦笑いの表情になった。

 

「せっかく12人も可愛い彼女出来たんだから、ちょっとは気を付けた方がいいですよ。……あの、話は変わりますけど、VAVAって紫色してましたよね。んでもって肩に大砲乗っけてて」

 

「はい」

 

「何気なーしに正門の方を向いたら、……その……VAVAらしき奴が視界に入りまして……」

 

え?

それを聞いて思わず正門の方を向いたら……本当にいた!

俺が気づいた瞬間、VAVAは肩の大砲からエネルギー光弾を発射して俺たちの側にあったパトカーを吹き飛ばした!

 

「視聴者の皆様! カチコミ……じゃなかった! 襲撃です! 漫画のお約束の如く話題に出た直後に襲撃に来ました!」

 

咄嗟にカメラを自分に向けた出月さんに呼応するように、横山さんも咄嗟にリポートを開始。

しかし、自分から来るとは!

 

「直接殴り込んできたか! 打海さんは離れて!」

 

「ほ、本官は自分自身が情けないです! 御武運を祈らせてもらいます!」

 

打海さんはその場を慌てて離れた。

それを確認した後、戦闘モードに移行!

 

「システム・オールメガミックス!」

 

「フハハハハハ! そうだ! 来い! 勝負の場に相応しいところに案内してやるぞ!」

 

VAVAは高笑いを挙げながら、後ろに置いていたライドアーマーに乗り込んだ。

それを狙ったかのようにライドチェイサーに乗ったゼロがいきなり現れた!

 

「ゼロ!?」

 

「何とかして見せるさ、俺1人で」

 

「でも……」

 

俺が続きを言うよりも早く、ゼロは掌を見せて俺の言葉を遮った

 

「あんな異常者の相手をさせるわけにはいかないからな!」

 

「先にゼロか……。別にそれでもいいがな!」

 

VAVAの方も先にゼロと戦う気になってしまった。

……どうすれば!?

そうこうしている内にVAVAのライドアーマーはローラーダッシュで走り去り、ゼロもライドチェイサーで追いかけて行ってしまった。

困り果てていたら、「日本ローカル放送居ギルド」と車体に堂々と描かれているバンが目の前に止まり、出月さんが顔を出した。

 

「乗って! 沙枝ちゃんたちには言っておいたから!」

 

 

 

 

 

「視聴者の皆様、空気がすごく重いです。恵玖須君が滅茶苦茶ソワソワしています。……今睨まれました。怖いです!」

 

「是魯君が心配なのはわかるけどテンパり過ぎだよ!」

 

今の俺はよっぽどひどい顔をしているのだろう。

横山さんと出月さんがちょっと引いている。

 

「恵玖須。ゼロの場所は分かるか?」

 

「ライドチェイサーに搭載しているGPSで場所は掴んでいます」

 

「……そうか」

 

運転席の砂山さんは前方に視線を固定したまま訪ね、俺の答えに納得したかのように黙々と運転を続けている。

バンは今、俺たちを乗せてゼロのライドチェイサーを追っている。

俺の手には、第17精鋭部隊管轄下にある乗り物のGPSを確認するための電子手帳がある。

まだVAVAを追っているようだ。

あれから何分たったのかも分からない。

ゼロ……。

 

「……! ライドチェイサーが停まった!? しばらく道なりに走ってください! 」

 

「任せとけ!」

 

 

 

 

 

それからそれから。

俺たちはバンを降りていた。

目の前にはゼロのライドチェイサーと、ゼロに殺された敵の死体の山。

その先には……。

 

「ゼロ? ゼロ!」

 

アーマーがボロボロになり、満身創痍なのが目に見えているゼロが倒れていた!

砂山さんたちの制止を耳に入れず、倒れているゼロへと俺は無我夢中で走り出す。

そして、ゼロまであと少しというところで、ライドアーマーに乗ったVAVAが姿を現した!

 

「……お前を狩る前の露払いと思って手持ちの部下を総動員してゼロにけしかけたんだがな。まさか全滅させられるとは思っても見なかったぜ。まあ、おかげでこいつの前の片手の落し前はつけさせることはできたがな。

 

 次はお前だ! 俺のライドアーマーはこの間より頑丈になってるぞぉっ!」

 

VAVAのライドアーマーが俺に殴りかかる。

俺はすんでで回避し、ライドアーマーの関節にエネルギー弾を当てる。

だがVAVAが頑丈さを自己申告しただけあって、へこむ様子すら見られない。

 

「堅い!」

 

「速さだけが強さじゃない。堅さも強さだ! 裏拳!」

 

ライドアーマーが繰り出した裏拳をジャンプで回避。VAVAを直接狙おうとしたが、あの時のエネルギースタン弾を肩のキャノンから発射したので体を捻って紙一重で回避。

流石に狙いには気づいていたか。

 

「もっと先を見ないとダメだぜ!」

 

「だったら目をくらませばいい。スパイラルバスター!!」

 

今度はスパイラルバスターを発射!

しかしVAVAにライドアーマーの左手で咄嗟にガードされてしまった。

 

「フハハハハハ! 速さも確かなのがこの俺だぁl!」

 

堅さだけじゃなくて速さも上がっているか……!

速く、奴を倒さないと……。

ゼロ、もう少し待っててくれ!

 

 

 

数十分後。

一進一退のまま、戦いは膠着。

持ってくれ、俺の集中力……。

 

「思っていた以上にしぶといな……。だが、無駄に長引くのは気に食わない!」

 

VAVAは痺れを切らしたように肩のキャノンからエネルギースタン弾を乱射。

俺はそれを全弾回避し、VAVAに照準を合わせる。

その直後、俺がエネルギー弾を発射するよりも速く、VAVAは左手を外してミサイルを発射した!

 

「ポップコーンデーモン!」

 

ばら撒かれるかのように大量のミサイルが俺目がけて飛んできた!

咄嗟にガードしたが、その隙と爆炎を利用したかの如く飛んできたエネルギースタン弾を食らってしまう。

 

「うわっ!」

 

そこから追い打ちとばかりに伸びてきたライドアーマーの左手に掴まれてしまう。

 

「ぐあっ!?」

 

「エネルギースタン弾を食らった上にその状態だ。あの時みたいにはいかないぞ……。ロックマンエックス! その命を貰うぞぉっ!」

 

俺を掴む手の力が一気に強くなる。

まだだ!

ここで負けるわけには……!

 

「貴様の好きにはさせないぜ!」

 

「何がそうさせる! この死にぞこないが……!」

 

「俺が『ロックマンゼロ』だから、俺をこうさせたのさ!」

 

ゼロがライドアーマーの左腕にしがみついていた!

よく見たら、右手のバスターがチャージ済みになっている。

 

「このざまじゃまともに弾が出るかどうかも分からん。だから、もう一度左腕を貰うぞ、VAVA! エックス……。俺は、ここまでみたいだ」

 

刹那、ゼロはわざとクラッシュバスターを暴発させてライドアーマーの左腕を粉砕すると同時に、ライドアーマーごとVAVAを吹き飛ばした。

でも、それと同時に激しい爆発が起きて……。

 

「ゼロ!! ゼロ――――――!!!」

 

俺はVAVAとは違う方向に吹き飛ばされるも空中で体勢を立て直して着地。

あの爆発の直後に動けるようになったから、どうやらエネルギースタン弾は爆発の衝撃で吹き飛んだらしい。

それよりも、ゼロは!?

爆炎が晴れた後、ようやくゼロの姿がおぼろげながら見えてきた。

 

「ゼ、ゼロ……!」

 

辛うじて立ってはいたものの、胸元に風穴が開き、それ以外の個所もさらに損壊していた……!

慌てて駆け寄り、倒れそうになったゼロに肩を貸そうとしたけど、他ならぬゼロに止められてしまう。

 

「無事だったようだな……。どうした……? しけた……顔なんかして。俺はまだぶっ倒れちゃいないぞ」

 

「ゼロ! しっかりしてよゼロ!」

 

「『エックスのために俺もロックマンになってやる』と粋がって、『何とかして見せる』と言った結果が……このザマだ。マルスとイーグリードに怒られない程度には、挽回できたけどな」

 

「ゼロ……」

 

「今から、俺のバスターのデータをお前の右手に移植する。俺の目をじっと見るんだ」

 

ゼロにそう言われて、俺は互いに見詰め合う格好でゼロの目を見た。

直後、俺の視界に色々なメッセージが表示され、アナウンスが頭の中に響く。

 

「これで、いい……。これで、お前もクラッシュバスターが……使える」

 

「ありがとう。……今からでも遅くない。ウォーダス・テードを呼ぶ。治療の準備も……」

 

俺の言葉も、言い切る前にゼロに止められた。

そうした理由は分かるけど、けど……。

だけど!!

 

「自分がどうなっているかぐらい、自分が1番分かっている……。後は『ロックマン』であるお前に頼むぜ…………」

 

「任せて……よ……。同じ、『ロックマン』から……『ロックマンゼロ』から頼まれ……たんだから…………!」

 

「最高の褒め言葉、ありがたく貰っておく……。先に、懐かしい未来へ逝くぜ……! イレギュラーハンター、『ロックマンエックス』……!」

 

その言葉から間を置かず、……ゼロは……。

ゼロは俺にいつも見せてくれた強気な笑顔のまま、空を見上げるように倒れて……………………逝った。

 

「視聴者の皆様、……是魯君が、是魯君が!」

 

横山さんの泣きそうな声が耳に入る。

俺はただ、泣くことしかできなかった。

ゼロの亡骸を前にして、それしか…………!

だけど、悲しみに専念できる状況ではなかった。

気配が……VAVAの殺気と混じり合った気配がしたから!

VAVAのライドアーマーは、左腕が吹っ飛んでいたものの、それ以外はんだ無事だった……!

 

「『懐かしい未来』だと? 訳の分からないことを! また左手が吹っ飛んだが、俺のライドアーマーは健在だ! 邪魔者も無駄死にしたから続きと行こうぜ! エックス!」

 

「無駄死にだと……? ゼロの死を無駄死にと言ったか、貴様!!」

 

ゼロの死を無駄死にと言いはなったVAVAは、俺の手で殺す!

形見が込められた右手をフルチャージ!!

 

「クラッシュバスター!!」

 

クラッシュバスターが直撃したライドアーマーは、今度こそ爆破四散。

だが、俺には分かる。

奴はまだ無事だ!

 

「ゼロのバスターをゼロ以上に使いこなすとはな……。スゲーよ。これだ! これ! これを待っていたんだ! すべての始まりをブチ壊して、俺の力こそがレプリロイドの可能性だと証明できるこの瞬間を!!

 

 フハハハハァッ!! サイコーの獲物になってくれたことに感謝するぜ! ロックマンエックス!!!」

 

VAVAは高笑いを挙げながら、肩のキャノンを乱射してくる。

だが、今の俺にはいくら食らっても、蚊に刺されたほども効かない!

 

「砕けろ!! 裂けろ!! 消え失せろーっ!! ハーハハハハッ!!」

 

今はただ……ゼロの形見で奴を倒す!

両手を同時にチャージ。

フルチャージ後、両手をVAVAに向けて……発射ぁっ!!

 

「スパイラルクラッシュバスター!!!」

 

螺旋を描きながら大量のクラッシュバスターが発射された。

その全てが、VAVAのキャノンから放たれるビームを蹴散らし、そして……。

 

「本当にお前は最高だぜ!! ネクロバーストォッ!!」

 

VAVAの切り札ともいえるエネルギー衝撃波すら掻き消す。

 

 

 

VAVAの目の前に、エネルギー弾の奔流が押し寄せる。

ネクロバーストすら通じない奔流が。

まるでエックスの悲しみと怒りで守らているかのようなそれを目の当たりにしたVAVAに、恐怖は無かった。

 

(エックス。お前は、サイコーの……)

 

 

 

命中と同時に大爆発が起こり、熱風と衝撃破が俺の顔をなでるが、不思議と熱いとは感じない。

VAVAは爆炎と共に発生したキノコ雲に消えた。

これでいい。

ゼロをウォーダス・テードに運ばないと……。

けれど、それはまだ先の話みたいだ。

奴はまだ生きている……!

 

「始まり……は……潰す! 俺が潰……して、俺こ……そが世界の脅……威だ……と! レプリ……ロイドの……可能性だと、世界に……教えてやる!!」

 

アーマーはほぼ全壊状態。

それどころか素体も激しく損壊しており、顔の部分すら内部のメカニズムが露出している。

 

「ロックマン……エックス!!」

 

俺は、既に執念で動いているだけのVAVAを見て、驚くほど冷めた心になっていた。

だから、ただ冷淡にバスターを向けて、『普通』のエネルギー弾で胸板に風穴を開けてやった。

 

「ぐあっ……!」

 

その衝撃とダメージで盛大にのけぞりながら、VAVAは崖っぷちまで意図せず後退。

奴を追うように、俺は奴目がけて歩きながら呟く。

 

「『始まり』か……。それは否定できない。だが、俺は同時に『ロックマンという名の悪魔』だ!! 貴様に、ゼロの形見で殺される価値なんて……無い!!」

 

VAVAの首根っこを掴み、俺は目の前に広がる津軽湾に奴を投げ捨てる。

 

「こんなハッキリとしない、止めの……刺し方如きにぃー!!!」

 

この止めの刺し方に納得いかなかったのか、VAVAは抗議の声を挙げながら水底へと沈んで逝った。

あれだけの損傷だ、海水で中のメカニズムがオシャカになってすぐに死ぬだろう。

これでいい。

これが、悪魔らしい殺し方だ……!

 

 

 

 

 

それから数時間後。

警察署の前。

ゼロは既にウォーダス・テードの艦内霊安室に安置済み。

姉さんたちは……みんなは俺を心配してくれたけど、まだ、俺はみんなを近づけたくなくて、独りで突っ立っていた。

それにしても、あの時はゼロのことを気にしたりVAVAの襲撃があったりで気にならなかったけど、クモの巣が多すぎる。

第一、クモの姿も見えない。

クモの巣自体も何だか微妙に変な気がする。

 

「カサカサ。カサカサ。カサカサ」

 

何か、変だ。

クモが近くにいるんだろうけど、まるで漫画の擬音を口で言っているみたいに聞こえる。

ようやくクモも出てきたけど……。

これ、メカニロイドだ!

 

「カサカサカサカサカサカサカサ―!」

 

これは虫が動く音じゃない!

それを証明すると言わんばかりに、クモ型の大型メカニロイドが突っ込んできた!

ギリギリで避けたけど、危なかった……。

 

「まさか、ボスパイダーか!?」

 

「カサカサ! 御名答! 『アラクノフォビアメーカー ボスパイダー』さ! 一足先に本拠地に戻ったルールアンに土産話ができそうだ! カサカサカサ―!」

 

ボスパイダーは図体に似合わない俊足でこっちにまた突っ込んできた。

しかもアミダくじの様に直線的に曲がりながら!

止めようにも、エネルギー弾が弾かれてしまった。

ギリギリで回避したけど、軌道が読みにくい。

しかも小型のサポートメカまで出してきた!

よく見たらさっき見かけたクモじゃないか。

 

「クモ尽くしか!」

 

「肝心のあたいがクモだからな! 何だ!?」

 

しかし、横から飛んでくるかのように発生した爆発で小グモ達は吹き飛ばされる。

何事かと思ったら、姉さんとやいとが重火器を持っていた。

 

「大グモさん! 私の弟に近づかないでください!」

 

「クワガタムシの次はクモ? どの道このやいとちゃんの恵玖須に悪さする気なんだから害虫ね!」

 

やいとの判断基準が気になるけど、言葉には出さないでおこう。

間髪入れず今度はマーティがボスパイダーの足に槍を突き刺そうとするも予想以上に頑丈で突き刺さらず失敗。

続いてアクエアルの水龍剣による一太刀の方はギリギリで回避していた。

 

「堅いじゃない!」

 

「加えて俊敏だ」

 

マーティはちょっと舌打ちしそうな雰囲気。

アクエアルはちょっと冷静だ。

……敵はボスパイダーだけじゃないみたいだ。

どうやら第1汎用部隊とゼロが相手にしていた連中がまだ残っていたようだ。

いかにも農作業中です、と言った格好をした連中がいつの間にやら重火器を持って大挙して集まっている。

そいつらが持っている銃を切り刻みながら、理瀬さんとシルキスさんが駆け付けてくれた。

 

「この人たちは……!」

 

「どうしてこうも愚かしいことを……!」

 

理瀬さんとシルキスさんは嘆き混じりに言葉を絞り出す。

そんな2人の心境などどこ吹く風、と言いたげに杜論はドバイでくすねてそのまま私物化したらしき銃を躊躇うことなく撃っている。

ルナは鞭を振り回していたが、よく見ると放電現象が起きているような。。

 

「ほらほら! さっさとやられなさいよ、この負け犬ども!」

 

「恵玖須様の前から消えちゃいなさいな」

 

何だか殺す気満々に見えるのは気のせいだろうか……?

まあ、そうなりたくなるぐらいの相手だけど。

この状況についていけなかったらしくボスパイダーは固まっていたけど、運悪く今になって状況を把握してしまったようだ。

 

「怒涛の流れに呆然としてた!」

 

ボスパイダーが叫んだ直後、奴目がけて軽トラが飛び込み、ついでに爆発。

軽トラが飛んできた方向を見たら、桜樺とシャーロッテさんがいた。

 

「その隙を突くまでだ」

 

「便乗させてもらいましたわ」

 

桜樺が軽トラを投げて、シャーロッテさんがグレネードランチャ―で吹き飛ばしたようだ。

敵のゲリラモドキの1人がこの光景を見て喚いているので、そいつの軽トラなのだろう。

桜樺が武器代わりに投げるはずだ。

しかし、ボスパイダーはそれすら物ともせずに煙の中から出てきて、俺目がけて突撃してき!。

 

「この程度じゃねぇ! !?」

 

今度は華鈴さんが発射した大きな光の弾がボスパイダーに直撃。

それでも装甲に多少傷がついた程度のようだ。

追撃とばかりに麻希奈さんがアークセイバーで切りかかったが、こちらは避けられてしまう。

 

「ほとんど効いてないね」

 

「私なんか避けられたわよ」

 

「みんなは邪魔な連中の無力化を。ボスパイダーは俺が何とかするから!」

 

ボスパイダーは俺1人に狙いを絞っている。

ならば、そこに勝機がある。

 

 

 

 

 

警察署から数㎞程離れた町はずれの道路。

かなり見晴らしがよく、相手からすれば俺の姿はよく見えるはずだ。

だが、逆に俺の方も相手の姿がよく見えることを意味する。

ボスパイダーもそれを承知していたらしく、さっきよりもジグザグな軌道を描きながら突っ込んで来た!

 

「カサカサカサ―!」

 

「…………」

 

だが、俺も既に準備は済んでいる。

奴は一瞬だけ背中の装甲を展開して、半球形の赤いセンサーを露出することがある。

恐らく、あのセンサーで相手の動きを予測し、かく乱のためにジグザグに動いているのだろう。

だったら!

当たる直前にジャンプ。

空中で体を捻って……展開したセンサー目がけて!

 

「ショットガンアイス!」

 

「ぐっ! センサーが!?」

 

どうやら予想は当たったらしい。

ボスパイダーはジグザグに一定の距離を走った後に停止して、こっちに振り向いた。

しかし、ボスパイダー自身のダメージにはならなかったようだ。

 

「センサーはやられたけどね、アタイ自身はピンピンしてるよぉっ!」

 

「次は一直線に来い! 跳ね除けてやる!」

 

「だったらリクエストにお応えして! カサカサカサカサカサカサカサ―!」

 

ボスパイダーはさっきよりも速度を増して、曲がることなく真っ直ぐ俺目がけて突っ込んで来た。

だが、俺の方も両腕はチャージ済み。

ダッシュでこっちも相手に肉薄!

密着射撃だ!

 

「スパイラルクラッシュバスター!!!」

 

それは、数十秒の出来事だった。閃光と爆音と衝撃と爆炎が俺とボスパイダーを包み、爆炎が周囲に広がる。

キノコ雲に引き寄せられるように俺は空高く投げ出されたけど、辛うじて着地。

けれど、流石にダメージは大きかったようで足がガタガタ震えている。

爆炎が晴れた後、腹部に当たる部分が完全に木端微塵となり、残っている部分もズタボロになったボスパイダーの姿が見えた。

 

「あ、アタイがここまで、派手に……。まあ、いいさ。好き放題……暴れられたからね……。でもスティグマ、様には……アタイ以外にもまだ幹部が3人いる。……どこまで戦えるか……な……?」

 

捨て台詞を残し、ボスパイダーは死亡。

俺は、既に残骸となったボスパイダーへと、乾いた心で答えた。

 

「残りの3人を全て始末し、スティグマを倒し、…………ワールドスリーを潰すまで!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『アラクノフォビアメーカー ボスパイダー』。

出身:オーストラリア

待遇:ワールドスリー幹部

死因:爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

俺は、生き抜いて見せる……!

せめて、ワールドスリーを潰すまでは。

せめて、スティグマを倒すまでは。

だからまだ、俺は死ねないんだ!

次回! 「ジェノサイドのG」。

邪魔になるぐらい雑魚が大勢いるなら……全部滅菌すればいい!

 




オマケ:ボスキャラファイル



VAVA

戦闘用に開発された重武装タイプのレプリロイド。
実戦初参加後、極めて高い戦闘力から瞬く間にA級ハンターにまで上り詰めた実力者。
土木用補助ツールであるライドアーマーに戦闘的価値を見出し、ライドアーマー戦闘のノウハウを構築するなど、限定的ながらも発想力も優れている。
が、設計段階なのか開発段階なのかは不明だが頭脳に異常があるため、人間顔負けの凄まじい残虐性までも有してしまっており、戦闘の際はほぼ確実にバーサーカーと化して余計な被害まで巻き起こす問題児でもあったため、特A級への昇格は見送られていた。
A級のランク自体もどちらかというとライドアーマーでの戦闘のノウハウを確立した功績のおかげで何とか掴めた、という背景が強い。
極めて高い戦闘力を持つがために自己顕示欲が意外と強く、同時に強い標的を倒すことを楽しんでもいるが、その一方で力を有しながらも優しいが故に力を発揮しきれないでいたエックスに対してはヒステリックなまでの嫌悪感を抱いていた。
当然、エックスの親友であるゼロからは目の敵にされており、VAVAの方もゼロへの不快感を露骨に示していた。
ワールドスリーが蜂起する前日にトラブルを起こして留置場に収監されるも、その戦闘力を評価したスティグマに助けられる。
その際、エックスの無限の可能性と無限の危険性をスティグマから聞かされ、エックスを倒して自分こそが『世界の脅威』、『レプリロイドの可能性』であることを証明する絶好のチャンスが来たと判断して二つ返事でワールドスリーに参加した。
エックスの無限の危険性の前になす術もなく敗れ、海の藻屑となったが……?



アラクノフォビアメーカー ボスパイダー

オーストラリアで開発されたクモ型の大型メカニロイド。
既存のクモ型メカニロイドの大型版として開発されたが、なぜ開発されたのかはボスパイダー自身にも知らされていなかった。
自分の存在意義が分からず悶々とする日々を過ごしていたが、研究所のコンピューターにクラッキングを仕掛けて自分に連絡してきたスティグマのスカウトを受け、『存在意義が分からないなら自分で作ればいい』という発想に至り研究所を抜け出してワールドスリーに参加。
日本で展開されているゲリラ戦の指揮官の内の1名として東北で暗躍していた。





ボスキャラの元ネタ及びその他雑記

VAVA
・前回のクワンガー同様、性格はオリジナル版とボンボン版、イレハン版のごっちゃ混ぜ。当初はオリジナル版に近い小物になるはずが、イレハンとボンボン版の影響で複雑なキャラクターになりました。そのせいか、イレハン版と比べると若干落ち着いた性格になった気が。
・劇中での最期、実は伏線だっりします。

ボスパイダー
・ボンボン版を読んでて「流石にシグマステージのボス端折るのはもったいなくね?」と考えた結果、ご登場願いました。
・今回はゼロ死亡とVAVA瞬殺というイベントがメインなのでこのキャラの見せ場が少なくなってしまった。この点は残念。


他のキャラクターや設定あれこれ
・アームパーツとゼロのバスターの同時使用。実は別の二次作家の方が既に実行済みでしたがその方の作品を知る前に思い付いたので、没にはしませんでした。
・何気にシグナスがやっと登場しました。
・ロクゼロのあの四天王の平行世界上の同一存在の内、レヴィアタン以外はイレギュラーハンターとしてエックスの部下になっているという設定。なのでファーフニルとハルピュイアも実はイレギュラーハンターにいます。ファントムとは違って今回出てこなかっただけで。
・『ワールドスリーは占領した国では善政を敷いて味方を増やす』という設定は初期からあったんだけど今回ようやく表に出せました。





普通のあとがき
・執筆が更に遅れて投稿がまさかの3月末。。どうしてこうも執筆速度が遅くなるのか。
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