ROCKMAN X : BOY OUT OF NIJIGEN DREAM - ANOTHER CRITICAL FIRST   作:あやか

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今回、投稿までに予想以上の時間がかかったことを前もってお詫びします。


STAGE 3:カーテンコールの主役達は砕けて散った

カナダ首都、オタワ。

 

「……ここまでやるのか」

 

「今度の敵は形振り構わないタイプみたいね」

 

俺の隣で、来須麻希奈(くるす まきな)が呟く。

それほどまでに、オタワが受けた被害は深刻だ。

壊滅とはいかなくても、かなりの被害を受けている上に火事場の犯罪も多発している。

敵のやり方は非常に悪質だけど、カナダの脆弱過ぎる治安を的確に利用しているな。

何より、都市攻撃に使った兵器が陰湿だ。

 

「洗脳・武装して兵器化した動物を使ってくるなんて……」

 

麻希奈さんに先に言われてしまった

これが爆弾を内蔵していれば、まだ割り切って攻撃できた人も出てくるだろう。

しかし、相手は単純に洗脳・武装しただけに過ぎない。

却ってこちら側の隙も大きくなってしまう。

話は変わるが、カナダは『北米アパルトヘイト』と悪名高い『レプリロイド対策法』があるからレプリロイドである俺は普通なら入国できない。

軍からの非公式なSOSには『何とかする』とあったけど。

周りは俺が視界に入っても何事も無いあたり、その『何とか』が上手くいったと思っていいだろう。

 

「そこのあんた! イレギュラーハンターなんだろ?」

 

「……ああ。どうかしたのか?」

 

「誘拐犯が出たんだよ! 多発し過ぎて俺達警察だけじゃ手におえない! 手伝ってくれ!」

 

「分かった! ところで、レプリロイドの俺のことを誰も気にしていないように見えるんだけど」

 

「知らないのか? 軍の一部の偉い人が騒ぎに乗じてクーデター起こして政権を乗っ取った上で、ウエストミンスター憲章撤回宣言を出したんだ! カナダはもう独立した国じゃない。香港と同じ連合王国の植民地さ!

 

 だから、『レプリロイド対策法』を守る奴なんて警察には誰もいないよ! 国の法律なんてほぼ無意味になってるからな」

 

……ええ!?

 

 

 

 

 

STAGE 3:カーテンコールの主役達は砕けて散った

 

ステージボス:『幽林の妖撃手 スティング・カメリーオ』 『爆音の終焉宣言者 ガンスモークスレイブ』

 

 

 

 

 

「そんな物、俺はいりません!」

 

「そうはいきません! シャーロッテ様をお救いし、更には国賊を討伐した英雄に対して何もしない訳には……」

 

「俺は勲章を受け取るために来たわけではありませんので。自国の王女が罪人になるまで暗部を放置した人たちからの勲章なんかに、何の価値が……!」

 

俺は縋りつきそうになる初老の人を払い除け、シャーロッテさんの自室を目指す。

ここに来るまで、やれ歓迎会だの、やれ勲章授与だのと言われたが全部断った。

一介のイレギュラーハンターにそんなことする暇があるなら、シャーロッテさんの罪を「恩赦」なり「愛国無罪」なりで不問にするべきだと思う。

エーテルランドには次元の境を越える魔法が存在する。

まあ、それが無いとこちら側には来れないよな。

シャーロッテさんはそれを疑似的に再現した装置でこっちに来ていたとか。

それと同じ装置で俺は次元の境を越えて、マグルゲーテ王国に来た。

……一介のイレギュラーハンターである俺がこうも簡単に一国の中枢に簡単に入れるのもどうかと思うが、マグルゲーテにとって2回も英雄的な働きをしたことになる俺は顔パスで入れてしまった。

王城は今、非常に慌ただしい。

怪盗黒猫の正体が他ならぬ、この国の第三王女であるシャーロッテさんであったことだけでも一大事だというのに、更にフレイアによって公衆の面前でひどい辱めを受けたとあって、家臣一同に王族郎党は大騒ぎ。

軍の方も大粛清が始まっているそうな。

そう言えば、最初にここに来た時はどうやって来たのだろうか?

その辺がおぼろげなのだ。

ここに来る前と戻った直後がいつなのかが思い出せない。

シャーロッテさんとは直接関係ないせいか、あの時も思い出せなかった。

思い出した方がいいかもしれないけど……。

 

「今は、必要ないな。シャーロッテさんの無事を確認しないと」

 

少し話をしたらすぐに退散しよう。

俺はそう決めてシャーロッテさんの部屋をノックした。

 

「どちら様でしょうか?」

 

「エックス」

 

使用人さんが中にいるのだろう。

シャーロッテさん以外の人の声が訪ねてきたので名乗り、自分で扉を開けて中に入った。

 

 

 

「まあ! 会いに来てくださったのですか!?」

 

「無事を確認したくて」

 

シャーロッテさんの首には、エレガントなデザインではあるが明らかに『幽閉する人にはめています』と言わんばかりに首輪がはめられていた。

ドレスの方もえらく露出が激しい。

 

「それで、怪盗としての罪は、どうなったの?」

 

「流石に不問とはいきませんでしたわ。現在、王宮では私の罪をどうするか検討中。私はその間この状態ですわ」

 

「自分たちの無為無策を棚に上げて……!」

 

シャーロッテさんは本気で心配だけど、この国からは一刻も早く出たい気分になる。

確かにシャーロッテさんのやったことは完全な犯罪だ。

だけど、シャーロッテさんが犯罪という手段に走ったのは他ならぬ、暗部を放置し続けた国の責任。

それを棚に上げて…………!

 

「エックスさん……。私のためにお怒りになってくださることには感謝いたしますわ。ですが、私のしたことはどこまで行っても犯罪。償わなければなりませんの」

 

「…………また、来るよ」

 

 

 

 

 

 

王城を出て、俺は裏通りにいる。

街に出ても俺を見る視線が鬱陶しくて、一人になりたくなった。

だが、ここでも俺を見る視線が尽きない。

フレイアに騙されていたとはいえ、こいつらはシャーロッテさんに何をしたのか忘れたというのか!

 

「なあ。あんた、エックスだろ?」

 

「……だったらどうした?」

 

俺に話しかけてきた男の言葉は、ここでは言えないほど卑猥で侮辱的なものだった。

そう言えば、フレイアの口車に乗った連中を必死に探していると聞いたことがある。

 

 

 

表通り。

俺は話しかけてきた男を片手で持ち上げて、街を巡回する兵士にそいつを突きだした。

 

「衣食住には困らないよ。良かったね」

 

「ふざけんな! どの道シャバに戻れないじゃねえか!」

 

「死ぬよりいいじゃないか。王族に襲いかかった罪に対する罰がその程度で済んだんだから」

 

恐怖に引きつった顔で喚くその男に笑顔で皮肉を吐き捨て、俺はその場を後にした。

もうこの国にはいたくないな。

 

「あの……是非とも王城へ……」

 

「断る。これ以上この国にいたくない」

 

 

 

 

 

それから、元の世界に戻ってきて……。

何故か笑顔で怒っているやいとに捕まった。

そして現在、俺はやいとの家にある彼女の部屋にいる。

やいとの抱き枕代わりに。

 

「……あれ?」

 

「逃げようとしたら躾が厳しくなるだけよ。それでも浮気のお仕置きとしてはとーっても軽いと思うけど!」

 

「俺、やいとと付き合いっている記憶が無いんだけど」

 

「……」

 

気のせいだろうか、ツッコミを入れた瞬間にやいとが更に怒り出したような気がする。

……ワールドスリーはまだ健在なのに。

不安になった直後、外から部屋が激しくノックされ出した。

 

「グライド? 何かあったのかしら? いい。ジッとしてるのよ!」

 

何事かと思ったやいとが起き上がり、バスローブを羽織ってドアを開ける。

部屋の外にいたのはグライドさんではなかった。

亞里亞さんと……もう一人、彼女のお姉さんである麻希奈さん。

 

「まったく。なーに大人しく監禁されてんのよ!」

 

亞里亞さんは相当お冠だ。

やいとを脇に抱えながら怒っている(やいとの方もかなり吠えているが)。

麻希奈さんの方はひどく心配そうな顔をしている。

 

「恵玖須。私のこと、覚えている?」

 

「来須麻希奈さん、でしょ?」

 

「初めて会った時のことは?」

 

「ミレニアム日本支社のトップ、御堂を倒すために初めて会った」

 

 

 

 

 

イレギュラーハンター本部。

ようやくやいとから解放された俺に、今度は姉さんたちの怒りの視線が降りかかってきた。

まるで針のむしろだ。

 

「シャーロッテに抱きしめられてるシーンをあの時見たから、みんな怒っているのよ」

 

「レイヤーから聞いた」

 

俺には、そう言うしかなかった。

その時からある程度は覚悟しているつもりだったから。

 

「……まあ、だからと言って監禁していい理由にはならないからな。俺が直接殴り込むつもりだったが、当人の希望で麻希奈に救出役を譲った」

 

「それで、どうして亞里亞さんまで一緒に?」

 

「可愛い姉貴をお前と二人きりにはしたくなかったんだとさ。シスターコンプレックスってやつなんだろうが……。俺から言わせればアレは行き過ぎて心の病気になっているようなものだ」

 

麻希奈さんが一瞬、ゼロを睨んだ。

亞里亞さんのことを悪く言われてムッとなったのだろう。

 

「話は変わるが、敵の所在がまた分かった。レイヤー、説明を頼む」

 

ゼロに頼まれたレイヤーは、少し顔を赤くしつつも指示通りにディスプレイを展開。

3組目が表示された。

 

「演習中の事故で多数の重傷・殉職者を出して壊滅状態に陥った第9レンジャー部隊で唯一のMIAだったスティング・カメリーオと、ミレニアムの元最高幹部で一斉掃討作戦時に情報を提供してくださったガンスモークスレイブ。今回のターゲットはこの2名です」

 

カメレオンと狸のコンビか……。

ガンスモークスレイブの顔を見る麻希奈さんの表情が複雑そうに見える。

 

「ガンスモークスレイブは背信の疑いをかけられ粛清されかけたことへの報復から、こちらに多大な情報提供をしてくれました。おかげでミレニアムを殲滅できたのです。それ以降は司法取引で無罪放免になり、Dr.ケイリーに保護されていたのですが……」

 

レイヤーはそのガンスモークスレイブと面識があったのか、若干寂しそうに説明していた。

そして再度ディスプレイを操作して、二人の拠点の位置を地図に表示してくれる。

 

「カナダの東部にある、ウッドバッファロー国立公園。どうやって基地を建設したのかは不明ですが、ターゲットはここを拠点としているようです。今回も少数メンバーで殴り込み、ターゲットを処分するというシンプルな作戦です。

 

 カナダの領内という立地上の大きな問題があります。カナダは『北米アパルトヘイト』なる蔑称がつくほどの悪法『レプリロイド対策法』のせいでレプリロイドは入国できません。カメリーオは密入国でカナダ国内に入り込んだと思われますが……」

 

「その点は大丈夫だ。アラスカで敵を調べていた時に暗号化された非公式な通信だが、都合よくカナダ軍からSOSが届いた。解読したのを再生するぞ」

 

今度はゼロがコンピュータを操作して、『通信』の内容が再生された。

 

『イレギュラーハンター。アラスカにいるのだろ? こちらはカナダ軍だ! 私はオタワにあるカナダ軍本部所属のアーサー・コールドウェル陸軍准将! 貴殿が日本国籍を有していると判断して日本語に堪能な私が、日本語で通信を入れている。頼む!

 

 今から伝える内容をハンター本部に何が何でも届けてくれ! 信じられないかもしれないが、こっちは武装化した野生動物たちの攻撃で各都市が大打撃を受けている! 民間人の救助に追われてこっちはお手上げだ レプリロイド対策法はこっちで何とかする!

 

 だから助けてくれ! 可能ならエックスをこちらに送って欲しい! 御礼も弾むから!!』

 

「俺を指名してくるあたり、かなり切羽詰っているな」

 

「そうでしょうか? どちらかというと、ワールドスリーの最高幹部を4人も葬ったエックスさんの勇名を知ったから、エックスさんに何とかして欲しいんだと思いますよ」

 

パレットの言ったように、そうなのだろうか?

俺1人の力で何とかした訳じゃないのに。

過大評価もいいところだ。

 

「俺は、救世主なんかじゃないのに」

 

「経緯はどうあれ、ワールドスリーの最高幹部を倒したのは事実よ。あなたがワールドスリーにとっては最大最悪にして最強の敵、転じて世界の希望であることはもう誰にも否定できないの。例え、あなた自身であろうと」

 

「エミット。……世の中は俺一人なんかに縋りつかなきゃ持ちこたえられないっていうのか……?」

 

「その点については悩むなー! そんだけワールドスリーがトンデモなく厄介な敵ってことなんだからー!」

 

エミットに怒られてしまった。

そんなエミットを遮るようにして、ゼロが俺の前に出てくる。

 

「今回は俺も同行する。お前と麻希奈、亞里亞のだけじゃロクなことにならないからな。ほぼ亞里亞のせいで」

 

「ちょっと、目の敵にでもしてる訳!?」

 

「癪に障るなら、狂った性癖と病気レベルのシスターコンプレックスを何とかするんだな。……最初に会った時は『日本支部長』みたいな奴に骨抜きにされてた癖に」

 

「あんたの口の悪さ、イレギュラーレベルね。処分してあげるわ!」

 

不味いな。

売り言葉に買い言葉で、ゼロと亞里亞さんは完全に一触即発状態だ。

ゼロってある意味VAVAより怒りの沸点が低いから、この調子じゃ本気の殺し合いになりかねない。

ここは割って入っておこう。

 

「ゼロも亞里亞さんも落ち着いて。内輪の殺し合いなんて笑い話にもならないから」

 

俺が割って入ったせいか、ゼロと亞里亞さんの毒気も多少は抜けたようだ。

 

「やれやれ」

 

「スケコマシのくせに」

 

 

 

 

 

それから時が流れて現在、場所はオタワに戻る。

誘拐犯を縛り上げ、俺は少し溜息を吐いていた。

 

「みんなが大変な時なのに!」

 

「レプリロイド対策法ができる以前からボロボロだったんだよ、カナダは。子供向けのMANGAまでポルノ扱いしやがって……」

 

警察の人が諦め半分な表情で愚痴をこぼした。

確かに、カナダは俺が生まれる前から性犯罪の発生率が呆れるほど高く、創作物規制も悪質だったとは聞いていたけど……。

 

「ただでさえ今まで犯罪って形で少しづつ噴出していたのに、今回の混乱で一度に全部噴き出たんだ。無法地帯にもなるさ」

 

「……」

 

俺は、なんて言えばいいか分からず黙るしかなかった。

 

 

 

 

 

「来て早々災難だったな」

 

軍本部から戻ってきたゼロと合流した。

ゼロが戻ってくるまで、俺は半ば引っ張りだこ的に警察の手助けをし、麻希奈さんと亞里亞さんも似たような状況になっていたのである。

ちなみに、ゼロに同行する形でコールドウェル准将もいる。

 

「俺はレプリロイドだからカナダのことはよく思っていなかったけど、ここまでひどくなっていたなんて……」

 

「もう過ぎたことです。気にしないで今はワールドスリーの幹部をどうするかを考えましょう」

 

コールドウェル准将は何故か俺に対しては妙に態度が丁寧だ。

何故だろう?

 

「ウッドバッファロー国立公園に基地があるのは確かなんですね?」

 

「ああ。空軍の新入りが訓練飛行中に発見した人工物らしき影を、衛星写真や動物兵器を運搬するステルス輸送機の予測ルートと併せて更に調べ、私自らが編成・参加・前線指揮した偵察部隊がやっとの思いで突き止めたんだ。あの時は死ぬかと思った……」

 

ほら、麻希奈さんたちの場合はこのように偉そうな口調。

露骨に違うでしょ?

 

「今回の作戦は二者択一。1つ、エックスが基地の責任者を倒して早期解決の電撃戦。1つ、国立公園と動物兵器ごと敵を吹っ飛ばすのも辞さない殲滅戦。2つ目はエックスが間違いなく反対するだろうから、ここまで黙っていたがな」

 

「どういうことなんだ!? ゼロ!」

 

ゼロの口から出た信じられない言葉に、俺は驚きのあまりゼロに食って掛かった。

余りにも激しく噛みついたせいか、麻希奈さんに抑えられてしまう。

しかし、麻希奈さんもゼロが言ったことは『寝耳に水』だったらしく、胸を押し付けながら俺を抑える彼女の表情には動揺が目に見えていた。

 

「亜里沙さんの抑え役って名目は、嘘だったのか!?」

 

「……嘘は言っていない。俺は別の役目を黙っていただけだ。シグナスが俺と亞里亞に提案、3人で話し合った結果、シグナスが作戦決行直前まで内密にするようにと決めたんだ。万が一に備えて、俺と亞里亞が殲滅戦に打って出ることはな」

 

「亞里亞まで!?」

 

ゼロの言葉に麻希奈さんも噛みつきそうになる。

それどころか、既に俺を抑えるのも忘れてゼロと亞里亞さんを問い詰めだした。

 

「亞里亞も2つ目に賛成なの!?」

 

「そんなところかな。まあ、お姉ちゃんと恵玖須に言ったら、2人とも怒って2人きりでカナダに行く、って言い出しかねないから言わないことにしたんだ。それに、2つ目はあくまでも保険。お姉ちゃんと恵玖須が1つ目を成功させれば問題ないから」

 

作戦前からギスギスし始めた。

先行きは凄く不安だ。

それから、俺達の移動先をシグナスに教えてもらった横山さんたちが押しかけ、コールドウェル准将と一悶着を起こしたが、俺のとりなしで解決。

みんなでウッドバッファロー国立公園へと飛行艇で向かった。

 

 

 

 

 

ウッドバッファロー国立公園内に違法建設された秘密基地の一室。

手回し式の古いプレイヤーを模した、レーザーニードル式のスカーレス・レコードプレイヤーの上を、古いレコードが廻っている。

流れているのは『G線上のアリア』。

レプリロイドと羽織袴姿の男のコンビが、うっとりした表情でそれを聴いていた。

 

「流石ヨハン・バッハ。いい音だぎゃぁ……」

 

「全くだ。クラシックはバッハこそ頂点だな」

 

その一方、その部屋にいた怪人が呆れた表情で二人を見る。

 

「とりあえず、説明しておくぞ。お前らの手引きでドレイク達が本拠地の方に入り込むことができた。後はスティグマの寝首をかいて、ミレニアムの再興宣言をするだけだ。奴がいない間にアンタが協力を申し出てくれて助かったぜ」

 

「礼には及ばんだぎゃ。俺達は任務を全うしただけに過ぎないだぎゃ。…………ミレニアム復活を夢見るバカども殲滅のな」

 

「なんだと………………!?」

 

直後、レプリロイドの尻尾から発射された光の針が怪人に突き刺さる。

更に羽織袴の男の姿が変貌し、狸の如き姿をしたメカニカルな異形になった。

 

「貴……貴様……!」

 

「裏を書くために化けていたのさ。俺達の任務は動物兵器の運用と、ミレニアム残党の内、『スティグマさんに忠誠を誓った奴以外』を全部始末すること。今頃ドレイク達は返り討ちにあっているだろうさ。スティグマさん自らの手でな」

 

「俺達は信頼を裏切る奴らが大嫌いでな~。スティグマさんにこの任務を命じられた時は二人で大喜びしたんだぎゃ。にににに!」

 

レプリロイドの笑い声に合わせるかのように狸の怪人が右手に内蔵された銃を発砲。

それが怪人へのトドメの一撃となった。

 

「ふぅぅぅぅぅぅぅ~。心配の種は最早無いも同然! こ・れ・で・動物兵器の運用に集中できるな! ぼんぼこぼーん!」

 

「その通りだぎゃぁ~! にににに! にっにっにっに! にーっにっにっに!」

 

狸の異形はミレニアムの元最高幹部、現在はワールドスリーの最高幹部の1人、『ガンスモークスレイブ』。

レプリロイドは元第9レンジャー部隊副隊長、現在は同じくワールドスリーの最高幹部の1人、『スティング・カメリーオ』

室内では、しばらくの間カメリーオの笑い声がG線上のアリアと共鳴するように響き続けた。

 

 

 

 

 

ウッドバッファロー国立公園。

世界遺産にも指定されているだけあって、一面が豊かな自然に包まれている。

余計に殲滅戦を許すわけにはいかないな……。

 

「我々はカナダ最大の国立公園、ウッドバッファロー国立公園にいます。この国立公園は多種多様な野生動物が生息していますが、その中でも特にシンリンバイソンとアメリカシロヅルが有名です。観光地としても抜群の知名度を誇っていました。

 

 ですが、『レプリロイド対策法』の悪影響による海外からの観光客激減の影響を免れることはできず、閑古鳥が鳴いていたとのことです。ワールドスリーがなぜ、どうやってこの国立公園に秘密基地を建造したのか? 謎は全く尽きません。

 

 また、今回の戦いは世界遺産であるこの国立公園が焼け野原になるか否かが掛かっています。万が一、恵玖須君が作戦に失敗した場合、この国立公園全域ごと敵を吹き飛ばす第2作戦が決行されることになります。

 

 私はエコロジストではありませんが、何が何でも恵玖須君には作戦を成功してほしいと願っています」

 

横山さんもかなり複雑な表情になっている。

今頃、本部には日本中から抗議の電話が来ているかもしれない。

亞里亞さんは既に変身済み、ゼロも戦闘モードに移行していてアーマーを装着している状態だ。

一方、俺と麻希奈さんは普通に制服姿。

この辺りに考え方の違いが見て取れる。

 

「恵玖須君と麻希奈さんはまだ戦闘モードじゃないようですが……。まあ、今回は事情が事情なので突っ込めません」

 

 

 

秘密基地へと続くルート。

コールドウェル准将達が偵察時にそれこそ命がけで切り開いてくれた道だ。

それにしても、今日は自身でも発生しているのか?

わずかだけど人間がハッキリと感じ取れるレベルの揺れが発生している。

だが、この揺れ方は……。

 

「恵玖須。この揺れ、どう思う?」

 

「地震と思いたいけど、それにしては揺れの感覚が開き過ぎている。何か大きくて重たい物が定期的に揺れを起こしているみたいだ」

 

それどころか徐々に揺れが大きくなっている。

こっちは立ち止まっているのにだ。

揺れの感覚もわずかながら短くなっている。

 

「! 『震源地』が来るぞ!」

 

ゼロが叫んだ直後、その『震源地』がジャンプしながらこちらに襲い掛かってきた。

緑色のかなり図体の大きい……レプリロイド、なのだろうか?

 

「ロックマンエックスと来須姉妹! おいらはRT-55J! お前ら3人には戦いの手を止めてもらうダス!」

 

RT-55Jはいきなりそう言ったと思ったら、こっち目掛けて走り出してきた!

あの時のスティグマみたいに俺のことを『ロックマン』と呼んだが……何を知っているのだろうか?

 

「ゼロ! 麻希奈さん! 亞里亞さん! 砂山さんたちを頼む! RT-55J、こっちだ!」

 

「む! 自分を囮にするつもりダスな! 小生意気だから敢えてそれに乗ってやるでダス!」

 

よし、簡単に乗ってくれた!

 

 

 

大分離れたな……。

ここまで誘き寄せれば、問題ないか。

本当はカメリーオたちを倒すことを優先すべきだけど、RT-55Jが名指しで襲い掛かってきた以上迎え撃つしかない。

 

「今のあなたの勇気は無謀と紙一重よ」

 

!? この声は……。

 

「麻希奈さん!?」

 

「砂山さんたちなら、亞里亞と是魯(ゼロ)がいるから大丈夫。あなたには、あなたを守る人が必要よ」

 

装甲している内に、RT-55Jが追いついてしまった。

本来やるべきことがある以上、このまま逃げ続ける訳にはいかない。

戦うしかない!

 

「コンディション・レッドと判断し、完全戦闘モードに移行。システム・オール・メガミックス!」

 

「ディバインアーク! フルドライブ!!」

 

俺が完全戦闘モードに移行した直後、麻希奈さんの『変身』が始まった。

一瞬で裸になった麻希奈さんの身体(下腹部に刻み込まれている文字が、彼女の過去を端的に表している)を、薄い水色をしたほぼ透明な光の膜が覆う。

それが一瞬のうちに黒いインナーへと変化。

ついでに麻希奈さんの胸が揺れる……目の保養だね。

白い装甲が手足と胸に、頭部に左右一対のブローチ上の飾り、背中に翼のような光を放つ飾りが装着される。

そして、麻希奈さんの黒髪がピンク色に発光、その光の色が髪の色へと変化して、麻希奈さんの変身が完了した。

 

「ディバインハート・マキナ!! ドライブモード、フォームアップ!」

 

各部にクリスタルが埋め込まれた装甲。

ピンク色の髪。

光の翼。

かつてミレニアムが自分たちの宝『ディバインアーク』を使ってまで生み出した元・最終兵器。

人体改造で得た力と、決して折れなかった心でミレニアムに最終兵器としての強さを身を以て味あわせ、滅ぼした反逆の女神。

それが麻希奈さんだ。

 

「私はディバインハート……。悪を敢然と討つ光の翼! ディバインハート・マキナ!!」

 

「な、中々セクシーな変身シーンだったダス。特に、プルンプルン揺れるところとかが」

 

男ならそこが気になるよね。

俺はレプリロイドだけど、同時に年相応の男児だからRT-55Jと同じところに視線が行きました。

年頃の男子としては当たり前だろ?

 

「恵玖須以外に言われてもあまり嬉しくないわ」

 

「結構つれないダス……」

 

以外とそっけない返事だ。

さて、そろそろ戦闘開始と行くか!

発射!

 

「? 弾かれた!?」

 

「おいらのこのボディは頑丈ダス! 首から下に攻撃しても無駄ダス!」

 

…………それは、首から上なら攻撃が聞くと解釈していいんだな?

では、試しに頭部目掛けて発射!

 

「ぐはぁ!? な、何故弱点に気づいたダスか!?」

 

「首から下に攻撃しても無駄ってことは、首から上なら攻撃が効くってことでしょ?」

 

「……く、口が滑ってしまったダスー!」

 

意外と間抜けだ。

麻希奈さんも呆れている。

まあ、弱点が分かったことだし、頭部を重点的に攻撃するか。

 

 

 

数分後。

RT-55Jは頭部が木端微塵になって機能停止。

……身を守るためとはいえ、また俺は……。

悲痛な気持ちになりかけた直後、不意に後ろから人の気配がした。

振り向くと、そこにはひげ面で眼鏡をかけた金髪の人がいた。

 

「私の予想通りの結果になったようだな。賭けは私の勝ちのようだぞ!」

 

その人はRT-55Jに対して呼びかけているようだ

死んだはずのRT-55Jがそれに反応し、目に見えて分かるレベルで振動している。

そして、胸部の装甲が弾け飛び、そこから操縦かんを握っている別のロボットが出てきた!

どことなくRT-55Jを髣髴とさせるシルエットをしている。

 

「はぁ……。流石はライトナンバーズ唯一の『生まれつきの戦闘用』と、ミレニアムをぶっ潰したスーパーヒロイン。あっさり負けちゃったでダス。あ、おいらの本当の名前は『ライトット』ダス! 二人のことはライト博士と来須博士から聞いてるから自己紹介は不要ダス」

 

なんだか軽そうな感じがする。

麻希奈さんがまた呆れているのが隣にいるだけで分かってしまう。

でも、悪者には見えないな。

 

「私はミハイル・セルゲイビッチ・コサック。ライトット共々、ライト博士がいた世界から来た者だ」

 

向こう側から来たのか……!

この人も悪人には見えないな。

……麻希奈さんは何を疑っているのか、まだ警戒を解いていない。

 

「おいら、昔はライト博士の助手をしていたダス。長い付き合いになるかもしれないからよろしく頼むダス!」

 

「待って。私のことは、来須博士から聞いた、そう言ったわよね?」

 

「言ったダス。っていうか、おいらは来須博士に、あんさんと亞里亞ちゃんが戦うのを止めて欲しいって頼まれたダス。来須博士、あんさんと亞里亞ちゃんには戦いとは無縁な人生を送ってほしいっていつも言っているダス。酷い時には酒飲んで泣きながら言うダス。

 

 ちなみに、来須博士は実はその頭脳を惜しんだ御堂がこっそり蘇生したんダスが、蘇生が完了する前にミレニアムが潰れたんで会いに行きたくても会えなかったそうダス。 来須博士は今頃、亞里亞ちゃんたちと合流している。早くこっちも合流するダス!」

 

「……そうね。急いだ方がいいわね」

 

麻希奈さんの表情は、嬉しさの余りかなり柔らかくなっている。

そういえば、来須博士は麻希奈さんが改造された際、ミレニアムの走狗になるの防ぐために……。

なんにしても、生きていてくれて良かった。

 

「100年近く前に死に別れてしまったが、私にも娘がいた。離れ離れになった親子が生きている内に再開できることは、いいことだ……」

 

「……100年近く前?」

 

感慨深く呟くコサック博士には失礼だが、思わず『100年近く前』と言う部分に反応してしまった。

いや、人間の寿命って、90年未満が普通じゃないか。

それに、コサック博士はパッと見でも父より10歳ほど年上にしか見えない容姿だ。

 

「言い忘れていたな。私は昔、不治の病を患ってね。娘は『人体改造』と『コールドスリープ』による治療を試みた。治療は成功し、私は人間離れした力と頑丈な肉体を手に入れたのだが……。

 

 目覚めたのはコールドスリープの開始から100年近く経った後。当たり前だが娘は既にこの世を去っていたよ…………」

 

コサック博士の顔は、今にも泣きそうな顔だ。

それだけショックが大きいみたいだ。

そんなコサック博士を他所に、ライトットは何かを思い出したような仕種を見せる。

 

「あ、その前に……。ライト博士、頼むダス」

 

ライトットの言葉に応えるように、あの声が久しぶりに俺の心奈中に聞こえる。

 

(エックス……。元気そうで何よりだ)

 

(ライト博士!)

 

(私は、お前がロボット三原則を不要と判断する可能性を、恐れていた。ロボットは人間よりも力が強く、頑丈だ。ロボット三原則が無ければ大変なことになると、ずっと信じていたが、それは人間としてのエゴに過ぎなかったのかもしれん。

 

 この世界は、人間と同じ権利を有することができるロボットが存在し、それ故彼らにロボット三原則を当て嵌めることを良しとしない世界だ。にも拘らず私は、それを長らく受け入れることができなかった。ロボット三原則の方が間違っていると分かっていたのにだ)

 

博士の声は、酷く悲しげだ。

 

(博士……。ですが、博士はこことは違う世界で、ロボット三原則が当たり前だった世界で育った人です。そう簡単に納得できなくて当然です!)

 

(……今回は、新しい力を送る他に、お前の記憶を司る部分にプログラミングした『セーフティ』を削除しよう。このセーフティは、お前が精神的に大きなダメージを負った際に、その原因となった個所を暗号化して封印するものだ。

 

 Dr.ケイリーはそれのプログラミングを解析・応用することでお前の記憶の一部を封印したのだ。お前が悩み抜いた末に人間を傷つけ、それと引き換えに自分自身の心を傷つけ続ける残酷な未来を防ぐために……。だが、それが却ってお前を苦しめる結果となった)

 

(俺は、たとえどんな残酷な未来が待っていても、自分の記憶を自分の意志で見れる自由を求めます!)

 

(すまない、エックス…………。セーフティを削除するが、Dr.ケイリーによる封印自体は、お前が少しづつ自力で解きなさい。一度に全て解放したら、お前の頭脳に大きな負担がかかる恐れがあるからだ……。その後に、新たな力を送る)

 

(それで、構いません。俺は、時には俺が自由でありたいと思うこともありますから)

 

そうだ。

俺は今、自分の自由を選んだ。

どれだけ残酷な結果が待ち受けていたとしても、俺は自分の記憶を他人の好きなようにはされたくない!

俺は進み続ける。

迷って、躊躇って、悩み続けながら……。

 

 

 

 

 

時は少し経ち、秘密基地の一番広い部屋。

ゼロと亞里亞達は来須博士と合流した後、立ち塞がる敵を全て蹴散らしてこの部屋にたどり着いた。

 

「恵玖須君達と逸れると言う大アクシデントにもめげず、我々は代役二名のおかげで何とかたどり着けました」

 

「癪に障る言い方だな。それにしても、この部屋は随分と散らかってるな」

 

ゼロの言う通り、この部屋はレプリロイドやメカニロイドの残骸が散らばっている。

 

「……この部屋の主たちの趣味かもしれないな」

 

来須博士が何気なしに呟いた直後、暗い室内に明かりが灯る。

同時に、洗脳・武装化によって兵器化した動物たちがその姿を現した!

 

「にににに! ようこそ! パーティ会場へ! おや? 主賓はまだみたいだぎゃ」

 

「そういえば、緑色のデカいメカニロイドに追いかけられていた、って報告を聞いていたな。それで遅れてるのだろうな!」

 

数テンポ遅れて、カメリーオとガンスモークスレイブもその姿を現す。

その姿を確認した瞬間、ゼロと亞里亞は戦闘態勢に入る。

 

「主賓が来る前にお開きにしてやる!」

 

「お姉ちゃんの御情けを仇で返す奴のパーティなんか台無しにしてやるんだから!」

 

ゼロと亞里亞の啖呵を正面から受けてなお、カメリーオとガンスモークスレイブはひるまない。

 

「にににに! まずは動物たちがお相手するだぎゃ。この部屋の散らかり具合を見れば分かると思うが、破壊力は検証済みだぎゃ!」

 

「俺達自慢の破壊集団の接客を楽しでももらおうか! ぼんぼこぼーん!」

 

 

 

「そう上手くいくかしら?」

 

「そこの二人!」

 

俺と麻希奈さんは、コサック博士やライトットと共にこの部屋にたどり着いた。

どうやら、ゼロ達が先にここまでたどり着いていたようだ。

 

「よぉ。ロックマンエックスとディバインハート・マキナ。おめえら主賓の到着を待っていたぎゃ」

 

「主賓がいないと盛り上がらないからな。さあ、歓迎の花火だ!」

 

ガンスモークスレイブの一声に反応するように、動物たちが攻撃してきた!

俺は咄嗟に自分を盾にして麻希奈さんを庇う。

 

「うわぁっ!」

 

激しい爆炎と衝撃が室内を包む。

だが、俺はそれすらものともしない。

 

「「正に計算通り!」」

 

確かに、今は奴らの計算通りだ。

だが、計算通りなのはここまで!

 

「ここまでは……な!」

 

「ぎゃ!?」

 

「なぬ!?」

 

爆炎が晴れ、俺と麻希奈さんの視界に、カメリーオとガンスモークスレイブの姿がようやく映る。

カメリーオとガンスモークスレイブは、怪訝そうな表情だ。

 

「けれど1つ、致命的な計算ミスがあるわ。それは……!」

 

「俺のこの姿を見れば分かる!!」

 

今の俺は、ライト博士からの新たなる力『ボディパーツ』を身に着けている!

それを見たゼロが呟き、横山さんも相槌を打った。

 

「純白の、鎧!?」

 

「視聴者の皆様。ゼロ君の言う通り、恵玖須君が身に着けているのは正に純白の鎧です。なんか眩しいです!」

 

輝く純白が室内の明かりに反射し、カメリーオとガンスモークスレイブだけでなく、ゼロ達も照らす。

カメリーオは固まり、ガンスモークスレイブも驚愕している。

 

「そ、そんなものを一体どうやって……?」

 

ガンスモークスレイブの疑問ももっともだろう。

だから、俺達は手短に、正直に説明した。

 

「『緑色のデカいメカニロイド』を倒した後、奴をけしかけた人に会ったよ……」

 

「そして恵玖須に白い鎧を送ってくれたのよ!」

 

説明を聞き終えた瞬間、カメリーオとガンスモークスレイブは露骨に悔しがる。

カメリーオに至っては悲鳴を上げているほどだ。

 

「ぐぎゃ~! なんてこった!? もう一通りぶちかましてやるぎゃ~!」

 

八つ当たりなのか苦し紛れなのかは分からないが、カメリーオはもう一度動物たちに攻撃させようとする。

そんなこと、させるものか。

 

「もう……もういいんだ。戦わなくて」

 

俺は、動物たちが発射体制に入っている中、彼らへと1歩ずつ近づく。

撃たれると分かっていても、歩みを止める気は無い。

 

「自然の中で一生懸命生きてきたんだもんな……。こんなことで死なせられないよ!」

 

無駄だと分かっていても、俺は彼らを撃つ気は無い。

俺達が今倒すべき敵は、彼等ではなくカメリーオとガンスモークスレイブだからだ。

彼らの弾が尽きるまで、そのすべてを受け止めるつもりだ。

だが、そんな気持ちが通じたかのように、動物たちが一斉に吠え出す。

直後、動物たちの洗脳はあっさりと解け、武装もすべてパージされた!

 

「これが、恵玖須の力。凄く優しくて、暖かい力……。私が恵玖須を好きになるきっかけになった力」

 

麻希奈さんが何か気になることを言ったような気がするが、今はそれに注意を逸らす暇はない。

正気に戻った動物たちは、そのまま出入り口を通って森へと帰っていく。

それでいいんだ……。

 

「視聴者の皆様! 奇跡です! 恵玖須君が戦わずして動物たちの洗脳を解いてしまいました!! これをご都合主義とか言う人がいたら、私はその人を最低だと断言できます! 奇跡に都合の良し悪しなんて関係ないんだー!!」

 

「これが、麻希奈の心を射止めた少年のなせる業か……。これは勝てそうにないなぁ……」

 

横山さんは半ば狂喜乱舞状態、初老の白衣の男性(あの人が来須博士なんだろう)も凄く感慨深げだ。

砂山さんと出月さんも表情から嬉しそうにしているのが分かる

そしてゼロと亞里亞さんもどこか安堵した表情をしていた。

 

「な、何でこうなるだぎゃ~!?」

 

「プロテクターの方に洗脳の効果を維持するための安全装置を付けていたのに!?」

 

あちらさんのショックはかなり大きいようだな。

だが、立ち直り自体は早いようだ。

 

「2対4のままもつれ込む気は無いから、ゼロとデモニックギア・アリアには他のゲストたちと踊ってもらうぎゃ!」

 

「そういう訳で……、基地内の全全力に告ぐ! 総員、大至急司令室前に集結し、敵を撃破せよ! 繰り返す。司令室前に集結し、敵を撃破せよ!」

 

そう来たか!

これに素早く反応したゼロと亞里亞さんは、すぐにこの部屋を出る。

 

「エックス! 麻希奈! 手下どもは俺と亞里亞で何とかする。お前たちはその二人を確実に地獄に落としてくれ!」

 

「お姉ちゃん、安心して戦って大丈夫だから!」

 

来須博士と思しき人は、コサック博士から鉄パイプのようなものを受け取り、ライトットも工具を手に持っている。

コサック博士もどうやらこの部屋の外で戦う気のようだ。

それと、鳥型のメカニロイドみたいな何かがコサック博士の周りを飛び回っているな。

 

「微力にしかならないと思うが、私も亞里亞を手伝う! ……最後にお前が勝つと信じているからな、麻希奈……」

 

「おいらもちょっと手伝うダス」

 

「私も助太刀してくる。なに、レプリロイド並みの腕力に加えて、この『ビート』もいるからな!」

 

あの鳥は『ビート』っていうのか……。

いつの間に出てきたのかが気になるけど、それを気にするのは後だ。

みんなが外に集まった残りの敵を迎え撃つために出た後、俺と麻希奈さんはもう一度カメリーオとガンスモークスレイブの方を睨む。

 

「最後に頼れるのは自分達だけ、ってことか……!」

 

「こればっかりは同意するしかないぎゃ!」

 

やっぱり反省の色は無いな。

俺としても、前回とは違って引っかかるものが無いから却って戦いやすくなる!

 

「当然だよ。カメリーオ! ガンスモークスレイブ!」

 

「貴方たちのやり方で……命は! 縛れはしない!」

 

「B級止まりとビッチ体質が何言うぎゃ~! てめえらのせいで『エコテロリストなりきり動物兵器作戦』はオシャカだぎゃ!」

 

「『ミレニアム残党を選定して陰で笑っちゃおう作戦』が大成功に終わったから幸先がいいと思った矢先に! 許せねえ!」

 

ネーミングはこの際置いておくとして……。

ミレニアム残党を選定? どういうことだ?

 

「ミレニアムの残党を選定するとは、どういうこと?」

 

「言葉の通りさ。ワールドスリーに参加したミレニアム残党の中には、ミレニアム再興を夢見てるやつらが結構いてな。そいつらを焙りだして始末していたのさ」

 

「……あなたは躊躇わなかったの? 裏切られたとはいえ、同じ理想を信じて集まったかつての仲間を罠にはめることに!」

 

「大喜びで罠にはめたぞ。だってそうだろ? 俺のことを信じなかった奴らが易々と引っかかって片っ端から死んでいったんだからな! 最高に楽しい復讐だったぜ!! クソッタレの御堂や恩知らずの首領があんたと妹になす術もなく殺された時と同様にな!

 

 先に裏切ったのは向こうだ! 裏切りの容疑をかけられてもなお信じようとしたヤツを信じなかった連中に何の価値がある!? 悪いのは向こうだ! 俺がそういう手段を使うようなことをした向こうだ!」

 

麻希奈さんの疑問に答えたガンスモークスレイブ今の言葉は本心だろう。

目の色と表情が分かり易過ぎる。

 

「にににに! ガンスモークスレイブはぶれないぎゃ。やっぱりに信頼するのは似た者同士に限るぎゃ」

 

「お前とガンスモークスレイブは、自分とお互いしか信じていないというのか? スティグマも信じてはいないというのか?」

 

「当然だぎゃ。自分とは違うタイプを信じたところでバカを見るのは、第9レンジャー部隊にいた頃に経験済みぎゃ。部隊のためにあらゆる手段を講じ、合理的な意見を言うのがそんなに悪いことだぎゃ?

 

 部隊に尽くした末に得た評価が『卑怯者』『毒舌な野心家』じゃあまりにも報われないぎゃ! だから演習の時に罠を張って第9レンジャー部隊を潰してやったんだぎゃ! ざまーみろ以外の何物でもないだぎゃ!!

 

 俺たち二人、スティグマさんに拾われた一生物の恩があるし、加えてスティグマさん自体が強いから従っているだけぎゃ! スティグマさんからもお墨付きだぎゃ!」

 

何かすごく嫌なことがあったから二人は歪んだのだろう。

だからと言って、そのやり方を許す気にはなれない。

 

「だったら俺たちは、そのやり方ごとお前たちを倒す!」

 

「にににに! 主賓が来たことだからダンスパーティの開催を『幽林の妖撃手 スティング・カメリーオ』と!」

 

「『爆音の終焉宣言者 ガンスモークスレイブ』が主催者権限で開催を宣言するぞ! ぼんぼこぼーん!」

 

天井に張り付いていたカメリーオが、舌でぶら下がる体制になってから振り子の要領で揺れ出す。

瞬間、天井から棘が降ってきた!

麻希奈さんはタイミングよく回避。

俺はボディパーツで敢えて受け止める。

 

「……相当に苛立っているな。……うあっ!?」

 

首に何かが巻き付いたと思ったら、それが凄い力で締まりだす。

 

「そりゃそりゃそりゃ~!」

 

カ、カメリーオの舌が巻き付いたのか……!

 

「すぐには殺さないぎゃ~! 恐怖と言うオーケストラ演奏をBGMにして、死神とダンスを踊ろう極上の演出に酔いしれている内に……体中穴だらけにしてやるぎゃ!! ん? おおっと!」

 

いきなり舌を俺の首から離したと思ったら、何かを避けるように再び天井に張り付く。

それからコンマの差で、俺の背後の辺りが一瞬だけ淡い水色状に明るくなる。

この色は、かすかに覚えている。

麻希奈さんの方を向くと、思った通り、麻希奈さんがレーザーライフルを構えていた

 

「死神の相手は、あなたの方よ!」

 

「そうは言われてもなぁ……。死神はロックマンエックスの方と踊りてぇ~とよ!」

 

麻希奈さんの啖呵に、カメリーオは言葉だけでなく尻尾の先端から出す光線でも返してきた。

それを、俺はまたしても自分を盾にして受け止める。

それでも結構効くな……。

 

「んぅっ!」

 

「おーおー。死神があっちで手ぐすね引いて待っているだぎゃ~!」

 

「恵玖須は私が守る!」

 

麻希奈さんが再びレーザーガンをカメリーオ目掛けて撃とうとする。

だが、それよりも速く麻希奈さん目掛けて銃弾が飛んでくる。

ギリギリで避けたが。

 

「ディバインハート・マキナ! お前のお相手達が行列を作って待っているぞ! ほうら! お前に殺されたすべてのスレイブノイドが! 御堂が! 首領が! 押しのけ合いながら待っているぞ!」

 

今度はガンスモークスレイブが全身に内蔵した銃火器を派手に発射。

凄まじい爆炎と衝撃と轟音が響き渡る。

 

「……流石はミレニアムの元最高幹部ね!」

 

「御堂が霞んで見えるレベルの火力だ!」

 

油断ならない相手だ。

麻希奈さんの言う通り、確かにミレニアムの元最高幹部なだけはある。

 

「さあ、俺達が推奨する名曲の演奏でも始めるだぎゃ~」

 

「「曲名は?」」

 

「「ヨハン・バッハの二大最高傑作が片割れ! 俺達が愛してやまない名曲中の名曲! 『トッカータとフーガ・ニ短調』!!」」

 

刹那、カメリーオの姿が消えた!

どこだ? とにかく、死角を可能な限り消さないと……!

壁に背をつけておこう……。

どこだ……どこにいる! カメリーオ!

 

「! 恵玖須! すぐ上!」

 

「え? うわぁっ!」

 

頭部に衝撃が走る。

まさか壁に張り付いていたとは。

 

「この!」

 

「ひょいひょーい!」

 

避けられてしまった。

しかもまた姿を消したか……。

手強い!

だったら!

 

「動きが取れないようにするだけだ!」

 

床に転がっている、動物たちが装備させられていた武器にチャージショットをブチ当てる!

当然、ガンスモークスレイブの砲撃並みの大爆発が起きる武器が砕け散り、その破片が室内を高速で舞う。

その空気の流れが、カメリーオの位置を割り出した。

 

「ぎゃ!? そう来たかぎゃ! うおーい、ガンスモークスレイブ!」

 

「まかせときー! ぼんぼこぼーん!」

 

ガンスモークスレイブが十字砲火を展開。

俺が起こしたそれより、激しい大爆発を起こした。

爆炎と砂煙が激し過ぎて、却ってカメリーオの姿が隠れてしまう。

 

「対策を全く同じ方法で潰すなんて……! 恵玖須! 避けて!」

 

「効果は抜群だ! そらそら食らえ食らえ吹き飛ばんかー!」

 

「きゃぁっ!」

 

麻希奈さんが悲鳴を上げているが、攻撃の勢いが激し過ぎて今度はこっちの身動きが取れない。

ぐっ! 流れ弾がかなり当たってくるのでダメージも馬鹿にならない!

爆炎と砂煙が収まった後、麻希奈さんの姿がようやく見える。

インナーが所々敗れ、肌が露出しているので扇情的に見えてしまう。

一方、カメリーオもガンスモークスレイブの隣で再び姿を現す。

 

「俺が体色を環境と同調させ、効果的に奇襲を加える!」

 

「俺が十字砲火を繰り出して、対策を潰すのと同時に敵を蹴散らす!」

 

「「俺達二人、お互いの特技を有効活用した合理的戦術よ!」」

 

自信満々に言い切る2人。

俺達は砂埃や煤で汚れながらも、闘志を秘めた目で2人を睨む。

 

「これだけの実力がありながら、どうして動物たちを利用した!」

 

「あんな手を使わずとも、あなたたち2人ならカナダ位は容易かった筈よ!」

 

しかし、カメリーオとガンスモークスレイブは動じない。

 

「カナダって国が気に入らなかっただけぎゃ! レプリロイドなら当たり前の感情だぎゃ! アパルトヘイトみたいな法律でレプリロイドを排除するような国が大事にしている動物を兵器として利用して、国を攻撃する! 最高のエンターテイメントだぎゃ!」

 

「俺もカナダが嫌いだ。下らないイデオロギーを国民に押し付けている下らない政治家共が支配する下らない国だ! そんな下らない国が俺達の手でなすすべなくガッタガになっていく様はスカッとしたぜ!」

 

ガンスモークスレイブの砲撃が再開された。

カメリーオが再び透明化して、なんと麻希奈さんの方に接近して舌で締め付けだした!

 

「うあぁっ!」

 

「にににに! ナイスバディだぎゃ!」

 

「し、視聴者の皆様! 変態です! ゲスなだけじゃなくて変態です! スティング・カメリーオは!」

 

「男ならこんな美人に興奮しない方が異常だぎゃ!」

 

横山さんが悲鳴交じりで怒号を上げる。

助けに行かないと!

しかし、そうしようとした直後に、ヘルメットを掴まれてしまった!

 

「うわっ!」

 

「ぬーん! 一度はやってみたかった、密着砲撃! 食らえ、ロックマンエックス!」

 

くっ!

むざむざ当たるわけにはいかない!

まずはチャージ、その次にヘルメットを脱着!

これが初めてじゃない気もするが、それは置いて相手の懐に入り込む!

 

「はい!?」

 

そして発射!

 

「チャージショットだ!」

 

「うっがぁーっ!?」

 

至近距離での直撃でガンスモークスレイブ自身が派手な爆発に包まれる。

それを目の当たりにして呆気にとられたカメリーオの隙を突いて、麻希奈さんは奴の舌を引き千切った!

 

「な!? お、俺の自慢の舌が!」

 

「カメレオンってどうして、スレイブノイドでもレプリロイドでも……あんな手を使うのよ! だりゃああああああああ!!」

 

「のっぎゃっ!? いでっ! めっちゃいてーぎゃ!」

 

カメリーオの口に手を突っ込み、麻希奈さんは奴を複数回床に叩き付け、〆とばかりに投げ飛ばした。

しかしカメリーオは特A級ハンター。

受け身を取ってすぐに体勢を立て直した。

 

「ディバインアーク・アクセラレーション! ジェネレーション・アークセイバー!」

 

それを見越したかのように、麻希奈さんは光の大剣『アークセイバー』を展開。

カメリーオ目掛けて振りかぶった!

 

「ディメンションスライサー!」

 

「ぬおおおおお!?」

 

カメリーオは麻希奈さんの斬撃を辛うじて回避。

完全に避け切れた訳ではなく、横一文字の大きな傷が腹に出来ていた。

 

「その傷なら、透明化も意味は無いわ!」

 

「にににに! なら見せなければいいだけの話ぎゃ!」

 

「それに、俺の砲撃はまだまだ終わる気は無いぞ! そうら、死神や首領、御堂達が正装をしてお前たちをお出迎えしているぞ!」

 

激しい砲撃と奇襲のコンビネーションはなおも続く。

だが、爆発の影響で武器の何割かが機能不全を起こしているらしく、さっきほどの勢いはなかった。

 

「もう少し大人しくなれ!」

 

「ぬおっ!? さっきの奇策といい、今の横槍といい!」

 

もう一度チャージショットを当てて、強引に砲撃の勢いを殺ぐ。

だが、それでもガンスモークスレイブの勢いはそこまで衰えない。

 

「流石にミレニアムの元最高幹部だけあって、御堂とは違ってそこまで同様はしていないようだな! ヘルメットを咄嗟に外して不意を打つ方法は、御堂と戦った時に使った手口だ!」

 

「……なん、だと!? お、俺があの御堂如きに通用するような手段に引っ掛かったというのかぁっ!?」

 

「それが致命傷にならなかった分、お前の実力が凄いことは確かだ!」

 

ガンスモークスレイブが目に見えて激しく動揺する。

そうだ、思い出した。

麻希奈さんと出会った時のことを、ミレニアム日本支社に突入した時のことを!

 

「あれ!? 視聴者の皆様! 怪現象の発生です! 当たり障りの無い茶髪だった恵玖須君の髪の毛が、鮮やかな赤紫に変色しました!! なんなのこの超展開!!」

 

え!? 髪の毛の色がいきなり変わった!? どういうことなんだ!?

横山さんたちや麻希奈さんだけでなく、カメリーオとガンスモークスレイブまで固まっている。

その隙を突くように、真っ先に元に戻った麻希奈さんの身体が光り輝く。

 

「そう簡単に無効化できないというのなら、もっと激しい手段を使うまでよ!」

 

光は範囲を急激に増し、やがて部屋全体を純白に塗りつぶす。

眩しいな……。

 

「ま、眩しくて何となく目が痛いです! 視聴者の皆様はテレビ越しだから問題ありませんが、こっちは目が痛いです! あ! 出月さん何片目閉じてるんですか! プロデューサーに至っては両目を! 私と恵玖須君と麻希奈さんを見習ってくださいよ!」

 

何かケンカしている声が聞こえるけど、それを気にする暇はない。

カメリーオは……いた!

壁の天井近くか!

 

「見つけたぞ!」

 

「ぎゃっ!? い、いきなり明るくなったせいで変色機能が追いつかなかったぎゃ!!」

 

「撃たせてなるものか!」

 

そうだ、カメリーオの変色機能は封じたけど、まだ状況は進んでいない。

オマケに麻希奈さんの発光も終わってしまった。

しかし、それを物ともせずに麻希奈さんの声が室内に響く。

 

「恵玖須! 認証コードを!」

 

「了解!」

 

「恵玖須! R.O.C.K-SET.T.E.R!!」

 

「システム・コンファーム!!」

 

麻希奈さんの頭の飾りと光の翼が一旦分離。

すぐに追加装甲とバイザーが装着され、その上に頭の飾りと光の翼が再度装着された。

 

「今の光景もすっかり恒例行事になった感があります。そろそろ戦いの幕が下りる合図として」

 

横山さんが達観したように解説している。

確かに、お馴染みになった感が凄い。

そう思った矢先、麻希奈さんが凄いボディブローをガンスモークスレイブにお見舞いした。

 

「がふっ!? な!? そのパワーは……!」

 

「ディバインアークと、恵玖須から届いた愛。この2つの力があるから負けない!」

 

……これも何となくおなじみになった気がする。

またやいとがうるさくなりそうだ。

 

「おのれぇ! こうなったらもう1度変色機能で……」

 

「残念だけど、ダンスパーティは既にお開きの時間よ、カメリーオ!!」

 

「な、何故ぎゃ!? 変色機能が停止しているだと!?」

 

「麻希奈さんが発した光は、ディバインアークの力で発した特殊な奴だ! お前の姿をいぶりだすのと同時に変色機能をマヒさせたんだ!!」

 

「あ、ありえねえだぎゃ!?」

 

「そ、そんなことでカメリーオの変色機能を封じたというのか!?」

 

カメリーオとガンスモークスレイブの2人が派手に驚愕する。

その隙を突くように、俺達はトドメの準備に入った!

 

「カーテンコールの主役は!」

 

「お前たち2人だ!」

 

2人の趣向に合わせた言葉を贈った上で、俺達はダブルアタックを開始する!

死神や御堂、ミレニアム首領共々向こう側に吹きとべ!

 

「「ダブルアタック、スタート!!」」

 

俺と麻希奈さんが光り輝く。

さあ、宴もたけなわだ!

 

「手を取り合い、この星と一緒に踊りましょう」

 

「手を取り合い、この空を一緒に照らそう」

 

「あなたの魂は燃える希望色!」

 

「あなたの心は熱い太陽色!」

 

「「『Alive A life』!!!」」

 

俺のバスターと、麻希奈さんのレーザーガンが水色に淡く輝くトンデモなく巨大な破壊光線を撃ちだす。

オレのバスターから放たれた分がカメリーオを、麻希奈さんのレーザーガンから発射された分がガンスモークスレイブを、それぞれ撃ち抜いた。

 

「「バ……カ……なーーーーーーーーーっ!!」」

 

カメリーオとガンスモークスレイブは、共学の表情のまま粉々に砕け散って爆発。

破壊光線は部屋の壁を貫通して、太陽の輝きをこの部屋にもたらし、それに合わせるようにカメリーオの武器チップが降ってきた。

 

「力と自分、お互いだけしか信じられなかったお前達だ。自分たちを一撃で殺すほどの強大な力に負けたのなら、本望だろ? この武器チップのデータ、使わせてもらう!」

 

「ほんの少しでもスティグマを信じる気持ちがあれば、あなた達は力に溺れることも無く更に強くなっていたはずよ。あの時の、私の光の眩しさに負けないぐらいに……!」

 

俺達は、日光を浴びながらしんみりとなった。

麻希奈さんの言う通り、信じる気持ちがマヒしなければ、あの2人は更に手強くなっていたのだから……。

そうしている内に、ゼロ達も手下たちの片付けが済んだらしく、戻って来た。

俺の髪を見た、ゼロ達の反応は見事に分かれた。

 

「……エックス!? その髪は……懐かしいな」

 

ゼロはどこか嬉しそうな表情をしている。

ライトットとコサック博士、ビートはあらかじめ知ってはいたが実際に目にしたのは初めて、といった感じ。

来須博士と亞里亞さんの方は横山さんたちと全く同じ反応だった。

だが、来須博士の方は麻希奈さんの方が気がかりだったらしく、彼女の方へと駆け寄っていく。

 

「…………この日を、お前にもう一度会える日をどれだけ待ったか」

 

「…………父さん、生きて帰って来てくれて、ありがとう」

 

そんな二人と一緒に喜ぶように、そこに亞里亞さんが駆け付ける。

来須博士は穏やかな笑顔で麻希奈さんと亞里亞さんを抱きしめた。

こういうのって、いいな……。

ヘルメットを回収しようとしたら、先にゼロに回収されてしまった。

 

「久しぶりにその色の髪を見たからな。もう少しだけ、見せてくれ」

 

「……うん」

 

男がピンクに近い色の髪をしているのもどうかと思うけど、ゼロが嬉しそうだからいいか。

? 何かかすかに揺れたような?

それに、何かが崩れ出すような音も……

 

「うわ!?」

 

瞬間、天井から大きな破片が落ちてくる。

しかも、壁にも無数の亀裂が!

この部屋が崩れ出しているんだ!

 

「うわー! うわー! うわー!」

 

「出月ちゃん! 逃げるぞ! ほら! 横っちも!」

 

「視聴者の皆様! 大事です! 勝利の余韻に浸っていたら大変なことが起きました! 戦闘の余波で部屋が崩壊し出しましたー! という訳でこの部屋から撤退します!」

 

「コサック博士! ビート! 急くダス!」

 

「安普請なのも影響しているかも!」

 

床にまで亀裂が!

急いでこの部屋から出ないと!

 

「…………あれ?」

 

俺のいた辺りが一気に崩れて、気が付いたら俺は壁に開いた大穴の内、麻希奈さんが開けた方から外へと宙を舞うように飛び出していた。

直後、麻希奈さんが駆け付けて、俺を抱きしめる。

 

「麻希奈!!」

 

「お姉ちゃん!!」

 

来須博士と亞里亞さんが、麻希奈さんを呼ぶ悲鳴が聞こえる。

 

「エックスーーーーーー!!」

 

ゼロの悲鳴を聞きながら俺は麻希奈さんに抱きしめられたまま、木々が生い茂る山肌へと落ちていく。

カメリーオとガンスモークスレイブの死に場所となった、あの部屋が崩れていく様を見つつも……。

 

 

 

 

 

飛行艇の着陸地点。

ゼロ達は夕闇が出始める中、待っていた。

エックスと麻希奈を。

ゼロはエックスのヘルメットを手に持っている。

 

「視聴者の皆様、どうすればいいのでしょうか? 恵玖須君が敵基地の崩落に巻き込まれてしまいました。安否が気になります」

 

「生きているさ。絶対に戻ってくる。アイツは、死なない」

 

「後、お姉ちゃんのことを忘れるな!」

 

「視聴者の皆様……。私も信じます。どうか、皆様も信じてください。2人が、ロックマンエックスとディバイン・ハート・マキナは必ず帰って来てくれると!」

 

「『ロックマン』? あんさん、その名前をどこで知ったダスか!?」

 

横山の言った単語に、ライトットが反応する。

コサック博士とビートも驚愕の表情をしている。

 

「えっと、スティング・カメリーオとガンスモークスレイブが恵玖須君のことをそう呼んだことがあるんです。知っているんですか?」

 

「……おいらはエックスを造った人を知っているダス。ロックマンはその人が2番目に造った『心を持つロボット』ダス。そしてエックスは、ロックマンの新型として造られたダス。詳しいことは、日本に戻った後、オフレコで説明するダス」

 

「あれ? 放送はNGですか!?」

 

呆気にとられる横山を尻目に、コサック博士が補足に入る。

 

「彼の出生に関わる問題なんだ。だから今はまだ全てを明かす訳には……」

 

「もしオープンしていい日が来たら、その時は日本ローカル放送局ギルドの独占取材、ということでお願いしますね。こっちは報道を商売にしてますんで……」

 

しかし、砂山は抜け目なく釘を刺す。

そんなやり取りを亞里亞は冷ややかな目で見つつ、2人が戻ってくるのを待っていた。

来須博士と一緒に。

 

「戻って、来てくれるよな?」

 

「パパの長女で、私のお姉ちゃんだもん。きっと戻って来てくれるって!」

 

それから更に数分後。

より夕闇が色濃くなっていく中、ゼロ達の目の前に、エックスに助けられた動物たちが大挙してやって来た。

そして、彼らの中央に陣取るかのように歩くシンリンバッファローには、肩にアメリカシロヅルを乗せているエックスを、お姫様抱っこしている麻希奈が乗っていた。

 

 

 

「エックス!!」

 

「お姉ちゃん!!」

 

「麻希奈!!」

 

みんなが、俺と麻希奈さんに駆け寄ってくる。

麻希奈さんは俺を抱き上げたまま、シンリンバイソンから器用に降りる。

俺の方に乗っていたアメリカシロヅルも、器用に羽ばたき、シンリンバイソンの背に乗りかかった。

直後、動物たちは名残惜しそうに、バラバラに散開していく。

あっという間に、みんな森へと帰って行った。

 

「弱肉強食。自然のごく当たり前の決まり事だ。だが、動物たちは君たちを私たちの元に届けるため、その垣根を越えた。明日になれば、また狩る者と逃げる者に分かれる。そんな動物たちなりの、自分たちを救ってくれたエックスへのせめてもの恩返しだったのかもな」

 

「コサック博士……?」

 

「そう難しく考えない方がいい。さ、一度オタワに戻ろう。お前と麻希奈が無事だったことに喜んでいるのは、俺達だけじゃないからな」

 

 

 

 

 

時間が経ち、場所はオタワ。

コールドウェル准将が大喜びで準備させたらしく、軍本部の結構広い部屋で宴会が始まった。

特にコールドウェル准将は子供みたいにはしゃいでいる。

 

「ワールドスリーの作戦がまた一つ、粉砕された。エックス君には旧カナダ軍を代表してもっと盛大にお礼をしたいほどだ」

 

はしゃぎつつも、しっかりとインタビューには答えている。

みんなも、楽しそうだ。

けど、俺は少し気がかりなことがあった。

オタワに戻る途中で、ライトットから教えてもらった『ロックマン』という名前の意味。

カメリーオとガンスモークスレイブは俺のことを『ロックマン』と呼んでいた。

そして、『ロックマン』とはライト博士が2番目に造ったロボットで、俺はその『ロックマン』の新型ということを。

そういえば、スティグマもあの時俺のことを1度だけ『ロックマン』と呼んだ。

だとすると、ワールドスリーはライト博士のことを知っているのだろうか?

 

「どうした?」

 

「浮かない顔をしているけど、大丈夫?」

 

「ゼロ……。麻希奈さん……。敵が俺のことを、『ロックマン』って呼んだことが少し引っかかって」

 

「今は忘れて、この宴会を楽しめ。悩むのも大いに結構だが、時には悩みを忘れることも重要だぞ」

 

ゼロが、俺の赤紫の髪を触りながら呟く。

それに対抗するかのように、麻希奈さんも俺の髪に触れた。

 

「世間じゃ、私は『スーパーヒロイン』って言われているわ。そして、ヒロインとしては『ディバインハート・マキナ』って名前がある。あなたもいつか『ロックマン』の名を受け入れられる日が来るわ。あなたは、私から見ればスーパーヒーローだから」

 

麻希奈さん……。

俺が不思議な気持ちになっていると、飲み物が注がれたグラスを両手に持ったゼロが、その内の片方を差し出してくれた。

 

「カナダドライ・ジンジャーエールをメープルシロップで更に甘くしたハイスイートバージョンだ。これならお前でも飲めるだろ?」

 

「ありがとう」

 

俺はそれを受け取る。

よく見ると、麻希奈さんも同じ色をした飲み物が注がれたグラスを持っている。

 

「俺達3人、揃って未成年だからな。ソフトドリンクで乾杯と行こう」

 

「私達3人の色鮮やかな髪に」

 

「世界の明日とライト博士、そして『ロックマン』という名前にも」

 

乾杯。

 

 

 

 

 

 

 

 

WEAPON GET! 『カメレオンスティング』!

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

中華統合共和国江西(じゃんしー)九江(じゅーじゃん)市南部にあるは世界遺産・廬山。

この山々は、古来より数え切れぬ文人を魅了し続けている。

ある日、ワールドスリーの最高幹部の一人がこの地にある極秘鉱山基地での決闘を俺たちの申し出た。

彼にただならぬ覚悟を感じ取った俺は、一人の巫女と共にその決闘に挑むこととなる。

次回! 「武士道と云ふは死ぬことと見付けたが故に死狂ひ也!」。

中華屈指の名山を舞台に、鬼巫女の破邪の刀が悪を斬る!

 




オマケ:ボスキャラファイル


幽林の妖撃手 スティング・カメリーオ

カメレオン型のレプリロイド。
森林・山岳戦のエキスパートである第9レンジャー部隊で元副隊長にまで上り詰めた、隊随一の実力者。
その合理的な思考と隊のためならどんな手段も使える冷徹さ、己の意見を正確に伝える正直さで隊を支えてきた。
しかし、あまりにも効率を優先した思考と行動、思ったことを全部ぶちまけえる口の悪さから体内の評判は芳しくなく、それが人望に響いて隊長への昇格は叶わなかった。
それでもいつかは自分のやり方を分かってもらえると信じ続けていたものの、結局部下たちはおろか隊長にすら分かってもらえなかった。
結果、失望が隊その物への憎悪へと変わり、同時期に実力を私兵集めに暗躍していたスティグマに買われたのが縁で、彼に従属。
従属の意志を証明するのも兼ねて、復讐のために演習中の部隊を原因不明の事故に見せかけて壊滅に追い込み、自身はMIAに見せかけて潜伏。
動物兵器の試験的運用のための任務に就き、気長にガンスモークスレイブと2人で気長に念入りな準備を進めていた。
クラシック音楽に傾倒し、戦いをダンスパーティに見立てるなど変わった嗜好の持ち主であり、同じ嗜好を持っているガンスモークスレイブとの相性は良好である。
スティグマに従属したのは実力を評価してくれたことへの礼と、自分を従わせられる力がスティグマにあると判断したからであり、ハンター時代の経験もあってスティグマの人となりは全く信用していない。


爆音の終焉宣言者 ガンスモークスレイブ

元ミレニアムの幹部で、狸のスレイブノイド。
スレイブノイドの共通欠点であった凶暴性と性欲の異常増加を肉体の各所の機械化という力業で解決し、戦闘力増大にも成功した『進歩したスレイブノイド』。
組織と首領への厚い忠誠心を評価されて首領直属の最高幹部に登用されたため、そのことを誇りにしていた。
が、その戦闘力と立場、何よりも忠義の厚さを疎んだ格下である日本支社の最高責任者・御堂の罠で、裏切者として追われる身となる。
誰よりも信じていた首領に信じてもらえなかったショックから、「裏切り者扱いされたから、本当に裏切ってやる」ためスティグマと接触。
彼から得た多数の情報によりマキナとアリア、スティグマはミレニアムに壊滅的大打撃を与えた。
結局、これが原因で御堂は組織への背信行為が明るみとなり、制裁として時間稼ぎのため、マキナ・アリア姉妹への捨て駒にされた末に敗死、ミレニアム自体も首領が葬られたのがトドメとなって壊滅している。
その後はスティグマの保護下にいたが、元々有していた世間への嫌悪感と彼への恩義から、蜂起に参加。
カメリーオとコンビを組んで、ミレニアム残党の内、スティグマの思想に賛同してくれた者たちだけを集め、残りを始末する選定任務に就いていた。
裏切られた経験から忠義という概念には否定的であり、スティグマには『一宿一飯の恩義とスティグマ個人の強さに価値を見出しているから』事務的に従っているに過ぎない。




ボスキャラの元ネタ及びその他雑記

カメリーオ
・やっと出せた「X側の原作に出てきた」ボス。流石に全部を全部オリキャラにするのも無理があるので……
・キャラクター設定は、オリジナル、岩本版、イレハン版をごっちゃにした感じ。合理的思考と「にににに!」はイレハンから、クラシック音楽好きと「~ぎゃ」は岩本版が由来だぎゃ! にににに!

ガンスモークスレイブ
・狸の怪人になったのは何となく。その結果、「ぼんぼこぼーん!」という口癖が生まれたわけだけど。
・PCゲーム版『ディバインハート・マキナ』での大ボスに当たる日本支社責任者・御堂(原作版では鳴海)が性格上どう考えても大人しくスティグマの下につくわけないだろ、と考えて素直に従い、それでいて御堂よりずっと格上なキャラとして作りました。
・性欲と凶暴性を機械化で抑えた『進歩したスレイブノイド』という設定は、PCゲーム版の続編『ディバインハート・カレン』でのスレイブノイドの設定(凶暴性と性欲をより増大化して強くする)へのオマージュ。
・当初の名前は「ファイヤパワースレイブ」になる予定でしたが、なんか脳内で構築したイメージに合わなかったので「ガンスモーク」に変更。

他のキャラクターや設定あれこれ
・カナダ軍の偉い人のフルネームはカナダ人映画監督『アーサー・ヒラー』と、その人が監督したアメリカ映画『大陸横断超特急』の主人公『ジョージ・コールドウェル』から。それっぽい名前にするのは大変だった。
・RT-55Jの中身がライトットだったのは、公式設定で『ロボット相撲の横綱』とされていたにもかかわらず、デザインと配色からライトットとの関連を疑うファンが以前からいたため。それにヒントを得てまんまライトットにしました。
・コサック博士の登場はちょっとしたサプライズ。Xシリーズでの消息が未だに不明だからできた荒業です。ビートまで出てきたのは、コサック博士が開発したから。
・実は原作の方でも来須博士は…………。なので本作ではオリジナル設定を盛り込んでご登場願いました。
・どこかおかしいワールドスリーの作戦名。これはセガサターン用RPG『マ○カ~真○の世界~』の敵組織、『Fa○tion of T○ue』 (通称は『フ○クト』『F資○』)の首領・真○の人(○ゥルーマン)の立案した作戦の中に、何個か笑いを誘う名前がついていた物が散見されたことへのオマージュ。
・義姉と御揃いの茶髪が、いきなり赤紫(マゼンタ)に変色したエックスの髪。今回は本文中では説明しきれなかったが、ライト博士はセーフティ(記憶の部分的封印システム)が機能していることを視覚的に第三者に伝えるため、機能している間は意図的に髪が変色するようにプログラミングしていた。なので実際はセーフティのせいで茶髪に変色した髪が、セーフティが削除された&エックスの記憶にかけられた封印の一部が解除された影響で元の色に戻っただけ。



普通のあとがき
・今回はいつもより分量が多少増えたかも。メモ帳の容量を調べたら50kbオーバー……。
・次話の投稿は今回よりは早めにしたいところ。しかし、遅筆なので望み薄かも。
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