ROCKMAN X : BOY OUT OF NIJIGEN DREAM - ANOTHER CRITICAL FIRST   作:あやか

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WARNING!
激烈なセクハラ描写と、レプリロイドが人間を攻撃する描写があります。
また、未成年の飲酒描写(今回の舞台となる国では一応、飲酒の年齢制限はないという設定ですが)もあります。
以上のことに留意して閲覧してください。


STAGE 6:勇者よ、我らは君と果てしなき大空に誓う

『アテンションプリーズ。間もなくミュンヘン・ヴィッテルスバッハ記念空港に到着します』

 

パレットの冗談交じりのアナウンスが聞こえる。

飛行艇は今、ノイプロイセン王国最大の州、バイエルンの州都ミュンヘンはミュンヘン・ヴィッテルスバッハ記念空港に向かっている。

 

「しかし、この非常時にイレギュラーハンターが客船の受け取りとはな。いくらあいつが引っ掛かる可能性が多少はあるとはいえ、あの婆さん、何を考えている?」

 

「確かにかなり不自然な気がする。おびき寄せるためとはいえ、自分が発注した船の受け取りをイレギュラーハンターにさせるなんて」

 

Dr.ケイリーは一体何を考えているのだろうか?

いくら頭の中がいつもどうかしているとはいえ……。

これじゃゼロが不満を言うのも無理はない。

 

「ケイリーお婆ちゃんから聞いたけど、受け取る船って物凄く大きいんでしょ? ミュンヘンの何処で作ってるのかな?」

 

「正確にはミュンヘン南西の地方都市、フュッセンで秘密裏に建造されているって聞いたけど」

 

灯留手の疑問に対して、正確な情報で答える。

それにしても、どうして日留手まで同行しなければいけないんだ?

 

「どうでもいいけど、どうしてその子まで同行するの?」

 

これまた何故か同行している白金ルナも疑問に思ったのか、直接言葉に現した。

 

「……ルナさんだって、同行している理由がわからないじゃないですか」

 

「お互い同行する理由が分からない人同士ってことで手打ちにした方がいいよ」

 

灯留手が答え、俺が補足したら、ルナは一応納得してくれた。

俺はふと、ノイプロイセン成立までの歴史を、図書館で読んだ本の内容通りに思い出す。

第1次世界大戦後、フランスとイギリスの援助を受けた反体制派が起こした革命でヴァイマル共和国が成立した。

けれど三頭政政権の強引な手法と不手際の数々から経済が破綻。

これが当時は一介の政党に過ぎなかったナチスの台頭を招き、ナチスによってヴァイマル共和国はドイツ第三帝国へと再編。

第二次世界大戦後に東西に分割され、ソ連を偶発的に滅ぼしてロシア第二帝国の第二正統君主となった黒帝の支援でノイプロイセンへと生まれ変わり、現在に至る。

過去の経験から庶民の間では共和制への不信感が根強く、貴族間では子孫が世襲の権力に溺れる危険性への不安から共和制に理解を示しているため、ノイプロイセンは双方の見解を尊重して貴族院と民衆院が王室に従う方式を採用している。

これは他の州でも同様である。

 

「そういえば、ノイプロイセンでは良民間の政治への関心の低さが社会問題になっていると、Dr.ケイリーからお聞きしたことがあります」

 

「俺も、そのことはテレビで聞きかじったことがある」

 

そう、ノイプロイセンは民間が貴族を非常に強く信頼しているが故に、もう一人の同行者であるシルキス・ララマザーさんの言ったとおり民間における政治への興味が低く、民衆院は最近まで定員割れが選挙の風物詩となっていた程立候補者数が少ないそうだ。

今は、それを社会問題と捉えた王室や上位貴族の根強いキャンペーンで大分改善されたってテレビ番組で見聞きしたけど……。

それでも高い見識と教養をもった貴族に政治を担ってもらいたいと思う人は多く、その辺は法律で州知事が原則各州の公爵家による世襲任命になっていることからも伺える。

 

『バイエルン州は民間の貴族に対する信頼度が特に高いので、民衆院への立候補者数に民衆院議員の割合と人数、定員割れの発生年数と継続年数がワースト1位。このワースト5冠は1954年のノイプロイセン建国以来、未だに更新中です。

 

 民間で広まっている「バイエルン州の正式名称はビーアレーゲン公爵領である」なんてジョークからもそれが伺えますね。アテンションプリーズ。当機はこれよりミュンヘン・ヴィッテルスバッハ記念空港へ着陸します。シートベルト着用のまま、じっとしててください』

 

パレットのアナウンスがまた流れる。

 

「ララマザーのようにはいかないみたいですね」

 

「国の政治体制っていうのは歩んできた歴史が物を言うからね」

 

 

 

 

 

STAGE 6:勇者よ、我らは君と果てしなき大空に誓う

 

ステージボス:『天空の貴公子 ストーム・イーグリード』 『宝魔の守護騎士 デゴナスガンテ』

 

 

 

 

 

時は少し遡り、華鈴さんが入院している病院の別の病室。

今度は前回の戦いで火傷を負った理瀬さんが入院している。

 

「外側だけじゃなくて、気道も火傷しちゃったから」

 

「そう言えば、看護師さんからそれで合併症も起きたって聞いたけど」

 

「白リンを含んだ炎で火傷した(白リンは人体に有害です)上に、そこからよくないのが入り込んだから、安静にしなさいってお医者さんに言われた。でも、あそこでよくないのがいる場所ってあったかな?」

 

「多分、軍事用サイボーグ研究エリアあたりだと思う。それ以外だと、あの工業街内部で植物が生い茂ってた箇所全部」

 

俺がそう言ったら、理瀬さんは何となく納得できたみたいだ。

そういえば、ミーマと望さんがいない。

ミーマはともかく、望さんがいないのはちょっと気になるな。

 

「ミーマと望さんは?」

 

「ミーマは用事があって一時的にエル・テルレークに帰省中。望の方は放課後に見舞いに来るって連絡があった」

 

なるほど……。

ミーマの方は……。

 

「スーサとデート中、かな?」

 

「かもしれないね」

 

理瀬さんもそう思うか。

仕方ないと言えば仕方ない。

Dr.ケイリーとシグナスの要請で、エル・テルレークの首脳陣直々にスーサはこの騒動が収まるまでこっちの世界への渡航禁止を厳命されたから。

確かに、スーサの軽率な判断の結果、日本で何度も凄惨な事件が発生したわけだけど……。

そんな風に考えていたら、室内の時計でも見たのか理瀬さんが時間がらみで言ってきた。

 

「学校、大丈夫? 時間的にヤバいわよ」

 

「そんな時間なんだ……」

 

ちょっと名残惜しい気もするけど、ここ最近休みがちだから遅刻はできない。

 

「好きな男の子が見舞いに来てくれるのは凄く嬉しいけど、無理して失敗したら恰好がつかないよ」

 

「そうだね」

 

結局、そのまま理瀬さんに後押しされるように病室を飛び出して、俺は学校へ向かった。

 

 

 

 

 

昼休み、ここは初等部の学食。

この間の一件があったので、親衛分遣隊のメンバーのうち何人かがガードに入ってくれている。

念のためということでゼロもガードに入りたがっていたけど、そっちは中等部の先生たちの待ったが入ったそうだ。

 

「ゼロさんが入ってくれたら物凄くガードも楽になったのですが」

 

「いつも助けられてるからはっきりとは言えないけど、ゼロはすぐに暴力沙汰を起こすから……。ところで、灯留手はどうしてる?」

 

「何とか元気を取り戻しています。やむを得ないとはいえ、引き離すように一足先に帰国させてしまったのでちょっと気がかりでしたが」

 

そうだ。

あの後、おじさんとおばさんに状況を説明して、灯留手を一足先に帰国させたんだ。

Dr.本部勤務の専業ハンターの何人かが見ていてくれてるので、その辺はちょっと安心している。

 

 

 

 

 

それからそれから。

時間は放課後。

俺は高等部の美術部員の顧問に呼び止められてしまい、高等部の美術室に連れ込まれていた。

 

「デッサンのモデルですか?」

 

「そうなのよ。ここ最近、行内の風景画ばっかりでマンネリ気味なの。だからね、綺麗どころをモデルにしてデッサンでも、って思ってたの。昨日は誰に頼もうかと首を捻りながら帰ってたら白金さんに話しかけられてね。

 

 事情を話したら楠君を勧められたのよ。先生としても、『それだ!』って閃いちゃって。だから、今日のデッサンのモデル、やってくれない? モデル料も出すから!」

 

「そこまで言われるのでしたら、構いませんけど」

 

 

 

数分後。

顧問は嬉々として準備している一方で、俺に向ける表情は凄く申し訳なさそうだった。

理由は、この場で後ろから俺の手を掴んでいるやいとと初等部5年生の白金ルナが物語っている。

 

「あんまり切羽詰まって、“ヌード”モデルだってことを言い忘れるなんて、意外と抜けてるわね」

 

「人間、失敗することもあるのよ」

 

やいととルナが世間話っぽく会話している。

そのくせして、2人とも俺の手首を思いっきり爪を立てながら掴んでいる。

 

「それで、なんで俺の手を掴んでいるの? 爪を立ててまで」

 

「「逃走防止」」

 

それを聞いた瞬間、ちょっと乱暴だけど振りほどこうとした。

しかし読んでいたらしく、2人して俺を挟み込むように抱き着いてきた!

 

「あう!?」

 

「「抵抗しちゃダメ。大人しく脱いでくれたら、こっちも激しいことはしないから。脱いでくれるでしょ? 返事は『はい』よ。ね?」」

 

俺の体をまさぐりながら抱きしめてくるやいととルナ。

でも、すごく優しく、丁寧な手つきで。

そんなに優しくされたら……。

 

「…………はい」

 

「うわ! 何? すごいゾクゾクするわ!」

 

「前から思っていたけど、恵玖須様って本当に可愛いのね!」

 

2人の声は物凄く嬉しそうだ。

鼻息も、滅茶苦茶洗い……。

 

 

 

それからそれから。

俺をヌードモデルにしたデッサンが始まってしまった。

俺は、ポーズをとりながら、顔を真っ赤にして視線をみんなから逸らすことぐらいしかできなくて……。

 

「最高よ楠君! その恥らう顔とスベスベのお肌、辛抱堪らないわ!」

 

「恵玖須って初等部の『手を出したくなる男の子ランキング』ぶっちぎりの第1位ですから」

 

「数少ない男子票とかもほとんど恵玖須様に入っていましたし」

 

顧問や、やいととルナが好き放題何か言っている。

それから数分して、ようやくデッサンは終了。

これで終わった、と思っていたら……。

 

「楠君、ストップ! まだよ! モチモチのお肌触っていないのよ!」

 

膝立ち状態になったところを顧問に抱き着かれ、身動きが取れなくなった。

 

「妬ましい! 無駄毛とは無縁で筋肉がついてるようにすら見えないスベスベモチモチなそのお肌が妬ましい!」

 

凄く変なことを言っている!

!? 何か変な感触が!

 

「何なの? お尻の肌触り。イチゴ大福の皮を分厚くしたような柔らかな感触じゃないの!」

 

「る、ルナ……あう!? やいと! そこは触らないで!」

 

「そこ? そこってどこよ! 言いなさい!」

 

「……え?」

 

「言うのよ! 言わないとバナナを咥えさせるわよ!」

 

「お…………おち………」

 

「お口だけじゃなくてお尻にも咥えさせるわよ! それが嫌なら言えー!!」

 

「……おちん……………」

 

言い終わるよりも早く、変な叫び声が響く。

それは、男の声のようだった。

 

「ヤエェェェェェェェェェッ!!」

 

鈍い音が響いたと思ったら、やいとの……あれを握る力を感じなくなった。

やいとの方を向いたら、左目の方に何やらアザができている。

鈍い音がっ更に響き、ルナと顧問が俺から引きはがされるように倒れたので、俺は何とか身動きが取れるようになった。

その直後、鈍い音が連続して鳴り響く。

嫌な予感がして振り向いたら……。

 

「……ゼロ!」

 

「危なかったな」

 

ゼロが金属バットを手に美術部の女子部員たちを殴った後だった。

きっと、あの叫び声もゼロが発したのだろう。

 

「男子部員が大急ぎで知らせてくれた。素手で殴る気にもなれなかったから、ソフトボール部からバットを借りたんだが……。すまない、それで遅くなった。……それにしても、とんでもない変態どもだな。歯を何本か叩き折っておこうか?」

 

「そ、そこまでしなくていいよ……。助けてもらえただけで、……十分だから」

 

服を着ないと……。

でも、脱いだ時にやいとに持って行かれたから、その前に探さないと。

 

「どうぞ」

 

「あ、ありがとう……」

 

そう思っていたら、金髪の綺麗なドレスを着た人がたたまれていた俺の服を手渡してくれた。

この人を……俺は知っている。

 

「シルキスさん……」

 

「思い出していただけて何よりです」

 

 

 

 

 

それからそれから。

着替え終わった俺はシルキスさんとゼロに連れられ、ハンター本部のミーティングルームにいた。

……戦いの度に仲間が、俺を愛してくれる女性たちが怪我や別の用事でいなくなっていく。

カリンさんは凍傷の治療はある程度目途がついたけど、安静のためまだ入院中。

シャーロッテさんは何とか無罪放免になったものの、城に未だ軟禁中。

麻希奈さんはまだアップデートの途中。

桜樺は依頼の処理に追われている。

そして、理瀬さんは火傷で入院。

ここにいない人たちのことを考えていたら、エイリアのよく通る声が耳に入ってきた。

エイリアの方を向きなおすと、アイスランドが赤く染められた地図と一緒に、イーグリードとその相棒の写真が表示される。

 

「ゼロのおかげでデスログマーは現在、アイスランドのどこかに停泊中であることまでは分かったわ。だけど、アイスランドは現在ワールドスリーの勢力下。なので、しばらくはアイスランド全域をNATOが監視して、動き出したらこちらに連絡してくれるわ。

 

 でも、それは本題じゃないの。今回、エックスとゼロには、灯留手を連れてノイ・プロイセン王国のミュンヘンまで行ってもらうわ」

 

「それは、どうして?」

 

俺が聞き返すと、エイリアは凄く申し訳なさそうに答えてくれた。

 

「あまり気分のいい話じゃないけど、ノイ・プロイセンの造船会社に発注した旅客用の飛行船の受け取るためにバイエルン州にあるフュッセンという街に行ってほしいそうよ。

 

 その途中で、発注を仲介してくれたビーアレーゲン公爵とも会うようにって。上手くいけば、飛行船に釣られてデスログマーがやって来るかもしれないってDr.ケイリーは言ってたけど、どこまで信頼できるか分からないわ。

 

 納得できないかもしれないけど、Dr.ケイリーがシグナスを介して最優先事項扱いで命令してるから、どうしてもあなたたちを動かさないといけないのよ。灯留手を連れて行くことに関しては、向こうに行けば分かるってはぐらかされちゃったわ」

 

エイリアもかなり困惑した表情をしている。

そんな表情になって当然だ。

あの人は本気で何を考えているのやら。

 

「エイリア。受け取りには、私も同行してよろしいですか?」

 

「……戦力は多い方がいいから構わないけど、どうして?」

 

シルキスさんの言葉に、エイリアは質問で返す。

それに対してシルキスさんの答えは意外なものだった。

 

「イーグリードさんの相棒にあたる敵は、本来ならもっと以前に私が倒すべきだった敵だからです。彼の名前はデゴナスガンテ。ララマザーとウィンザーを襲う害悪、ジュエル魔獣の内の1体です」

 

 

 

 

 

それから次の日、つまり現在。

俺たちを乗せた超音速飛行艇がミュンヘン・ヴィッテルスバッハ記念空港に着陸する。

俺たちが下りた後、飛行艇はそのまま帰ってしまった。

到着ターミナルに入るや、灯留手は何故かつばがかなり大きい帽子を深々と被る。

Dr.ケイリーが手をまわしたのか、入国審査の際はパスポート提示を求められなかった。

 

日本人(ヤーパニッシュ)4名に、異世界の人1名。内2名はレプリロイド、と。君たち2人はイレギュラーハンターで残りの3人は外部協力者って聞いたけど」

 

「その通りです」

 

「……ビーアレーゲン公爵領へようこそ。歓迎しますよ、第17精鋭部隊隊長エックス・クスノキ御一行様。それにしても、いくらハンター本部からの要請とはいえ、公爵閣下は何を考えておられるのやら。

 

 イレギュラーハンターだけならまだ納得できますが、同行者までフリーパス(ファイカルテ)かつ荷物検査免除とは……」

 

審査の人は形式的にそう言った後、勢い余ってこっちに聞こえる音量で不満を漏らした。

とりあえず、これで晴れて正式にノイプロイセンに入国したことになる。

 

「恵玖須ちゃん。そういえば、あの時のテレビ局の人たちは?」

 

「Dr.ケイリーが一足先にこっちに送ったそうだ。多分、到着ロビーで待っているかもしれない」

 

そう答えたら、灯留手は「そうなんだ」といった表情で納得していた。

しかし2人して立ち止まってしまったらしく、シルキスさんに注意されてしまう。

 

「エックス君。ヒルデちゃん。ゼロ君とルナちゃんが待っていますよ」

 

「あ……」

 

「はーい」

 

灯留手が手を挙げて元気に返事した。

……のだが、勢い余って挙げた手が帽子にぶつかってしまい、落としてしまう。

 

「「あ!」」

 

帽子を落としてしまった灯留手と、灯留手の顔がはっきりと見えた審査の人の声が偶然にもハモる。

審査の人は、灯留手の顔をまじまじと見て、叫んだ。

 

「ヒ、ヒルデ様ー!」

 

それと同時に灯留手は帽子を拾って駆け足で税関を走り抜ける。

俺たちも、灯留手を追いかけるように急いで税関を通り抜けた。

 

 

 

 

 

「一体どうしたの!?」

 

「説明はテレビ屋さんたちと合流してから!」

 

ルナの疑問に大声で返しながら、灯留手は大急ぎで走っている。

何分改造人間なのでレプリロイド並みの速度を出している。

俺はルナとシルキスさんを脇に抱えながら灯留手を追う。

ゼロは少し呆れ気味に俺と並走中。

慌てて走っていたらしく、灯留手は躓いて立ち止まった。

直後、足元の少し前が銃撃される!

俺たちが振り向いた先には、重火器を構えたレプリロイドが数人。

ワールドスリーの下っ端か!

俺とゼロはブレザーを脱ぎ、シャツの袖をまくってバスターを展開。

灯留手もあの時同様に重火器満載の鎧をいつの間にか身にまとっている。

数人の敵を相手に、俺たちは破壊力に物を言わせて対抗する。

 

「まさかいきなり釣れるなんて!」

 

「あの程度の数ではイーグリードさんたちが釣れたとは考えにくいです!」

 

「そうでもあるけど!」

 

シルキスさんのツッコミに返事しながらエネルギー弾で敵を吹き飛ばしていく。

 

 

 

数分後。

敵を何とか全部片づけた。

しかし、周りは敵の残骸にガラス片、銃弾の跡や焦げ跡だらけだ。

 

「職員さんが、警察に連絡したって。だからしばらくお待ちくださいって」

 

「そうか……」

 

灯留手の言葉に相槌を打つ。

直後、窓が粉砕されて大きな影がこっちに突っ込んできた!

 

「……何だ!?」

 

俺がバスターの銃口を向けた瞬間、影は俺の方に顔を向けた。

……イーグリードに、もう1人!

 

「スティグマの後釜に据えられるだけのことはあるな。あの程度の人数じゃ相手にもならなかったか」

 

「我ら8対の最高幹部を半分以上も撃破しただけはあるということ。と、これは失礼。私はダークスワニィ様の命でワールドスリーの最高幹部が一人を務めるデゴナスガンテ。……ジュエル魔獣で唯一! 騎士の資格がある存在!!」

 

デゴナスガンテは非常に仰々しく自己紹介する。

俺たちだけでなくイーグリードも少し呆れ気味だ。

 

「そいつとコンビを組んでて疲れないか?」

 

「ワールドスリーでは逆に肩の荷を軽くしてくれるよ。効き過ぎて時々意識が天に上りそうになるけどな」

 

見た限りでは隙だらけ。

気は進まないけど、ここで多少は手傷を負わせて戦いを有利にした方がいいな。

そう思ってバスターを向けようとした瞬間、デゴナスガンテの剣の切っ先が目の前に突き付けられた。

 

「今回は軽い挨拶程度。なのであなたもこれ以上の発砲は自重……」

 

「する気はない!」

 

ゼロがデゴナスガンテの言葉を遮ってセミチャージショットを発射。

しかしすんでのところで避けられてしまう。

その直後、イーグリードの踵の爪(足は鳥同様、つま先とかかとの前後に爪がある)がゼロの首筋を突き破った!

 

「ぐわっ!?」

 

「ゼロ!!」

 

それを見た瞬間、俺は何かを言う前にイーグリードの顔面に頭突きを炸裂させた!

 

「……堅さが足りないが、いい一撃だ」

 

「何故だ! どうしてスティグマに従う!」

 

「……お前を妬む奴がエコエコアザラクとローゼ以外にいるということを覚えておけ! お前の目の前に! 涙を流せるお前を妬む奴がいることを!」

 

イーグリードはゼロが膝をつくのを確認した後、そのまま浮遊状態を維持。

デゴナスガンテの両肩を足の爪でガッチリと掴んだ。

 

「今回は軽い挨拶をしに来たに過ぎない。こちらとしても空港でのドンパチは気が進まないからな。……お前たちが船を受け取った後にまた会おう」

 

「というわけで今回はこれにて失礼します。Sehen(ゼーエン) wir(ヴィア) uns(ウンス) wieder(ヴィーダー)!!」

 

英語で言う「See you again」に相当する言葉をデゴナスガンテが叫んだ直後、イーグリードは彼を足でつかんだまま急加速で離陸し、別の窓を突き破ってその場を空を飛んで逃走。

……俺たちが来るのを待っていた横山さんたちと合流できたのはそれから数十秒後、警察が到着するのと同時だった

 

 

 

 

 

それから数十分後。

簡易的な事情聴取が終わり、俺がゼロの破損個所を修理。

ようやく電車でミュンヘンの中心部へと向かっていた。

 

「傷は、うずきますか?」

 

シルキスさんがゼロを気遣っている。

かなり深々と突き刺さっていたから、心配するのも無理はない。

 

「エックスが手際よく修理してくれたからな」

 

「応急処置に毛が生えた程度だけどね。けれど……俺が涙を流せることが、そこまで激しい嫉妬を煽ったっていうのか? 『ハンターの鑑』ストーム・イーグリードまでも嫉妬させてしまったっていうのか……!?」

 

「……それだけであいつがあそこまで馬鹿になるとは思えん。……別の理由があるはずだ」

 

車内はガラガラ。

だけど、俺たちはとても席に座る気にはなれなかった。

立ち乗りしている俺たちを揺らしながら、電車はミュンヘンの中心部に向かって走り行く……。

 

 

 

 

 

ミュンヘン中心部の、ヴィッテルスバッハ統合宮殿(現実世界ではレジデンツ博物館となっている)。

バイエルン王国王室であったヴィッテルスバッハ家の本宮殿で、数世紀に渡る増改築の末、各時代の主要様式が入り混じっているのが特徴だ。

王室の末裔であるビーアレーゲン公爵家の居城になることが決まった際に様式はそのままに内部設備を近代化し、現在に至っている(ミュンヘン州都庁舎は別にある)。

俺たちは、そこの謁見室(玉座の間ともいう)にいた。

 

「バイエルン州知事を務めさせてもらっている、ミヒャエル・エルヴィン・フォン・ビーアレーゲン公爵です。遠路はるばるよく来てくれました」

 

「イレギュラーハンター第17精鋭部隊隊長、エックス・クスノキです」

 

「ケイリーから客船のことを聞いているとは思います。しかし……。あれ? そう言えば、TV局の方たち以外に、4人お連れがいるとは聞きましたが、1人、それもすごく重要な1人がいないように思えます」

 

「? ……! 灯留手がいない!?」

 

いつの間にか灯留手がいない!

それから数秒後、メイドたちが両脇を抱えながら灯留手を連れてきた。

帽子の方は……俺が受け取ったので、今は俺が持っている。

 

「宮殿内を帽子を深々と被って歩いていたので呼び止めましたら、ヒルデ様でしたので……」

 

「連れてきたのならそろそろ放してやりなさい」

 

眉間にしわを寄せながら公爵が命じると、メイドたちは丁重に灯留手を開放した。

直後、公爵は玉座から立ち上がってこちら側へと近づいてくる。

それを見た瞬間、灯留手は後ずさった。

 

「……ヒルデ!?」

 

「…………お母さんのお腹の中にいた時に私が『産まれる前に死んでた』なんて勘違いしてたのに、どうして私のお祖父ちゃんでいようとしてるの!?」

 

涙目になりながら怒鳴る灯留手を見て、公爵は愕然とした表情になる。

……ルナたちに入ってなかったけど、灯留手のお母さんはノイプロイセン人。

そして、ビーアレーゲン公爵の子供の1人だ。

だから、灯留手は公爵の孫娘にあたる。

実は、エイリアから指令の内容を聞いてすぐにDr.ケイリーとビーアレーゲン公爵の意図にはすぐ気付いた。

だけど、それを言っていいものかと迷った末に、あの時は言わないと決めてしまった。

そのせいで……。

結局、ヒステリー状態になった灯留手を落ち着かせるため、その場はお開きとなった。

 

 

 

 

 

宮殿内に複数ある来賓用の居間の1つ。

灯留手は今、隣の寝室で昼寝させている。

代わりとばかりに、王国陸軍(ケーニヒライヒ・ヘール)の第1装甲師団第88ロボット戦車大隊(ロボターパンツァー・バタリオン)(二足歩行戦車「ヴァイゼエンテ」を試験的に運用している部隊)隊長、ティーゲルト・フォン・ビーアレーゲン大佐がいる。

彼は公爵の二男で、とある戦車乗りに憧れて陸軍に入った人だ。

軽い性格のムードメーカーだが、それが裏目に出て騒動を起こしてしまうトラブルメーカーでもある。

演習中、調子に乗り過ぎて他の部隊を怒らせ、演習地内を逃げ回ったこともあったと聞く。

灯留手が公爵たち母方の親族から距離を置きたがるのも、この人が原因だ。

 

「あの時、調子に乗って『笑えるから笑い話として残しましょうぜ』なんて言わなきゃよかった……」

 

「過ぎたことを言っても解決しません。問題はどうやって償うかです」

 

「……ありがとよ。ちょっとは気分が軽くなった気がする」

 

その後、灯留手がだいぶ落ち着いたので俺たちは公爵が手配してくれたマイクロバスでフュッセンに向かった。

 

 

 

 

 

フュッセン。

ここにはバイエルン州の重要な観光資源であるノイシュヴァンシュタイン城がある。

今俺たちがいるのは、この街一番のホテルであるシュヴァンクライト城。

かつて、この州がバイエルン王国だった頃、騎士物語や神話に傾倒する趣味人だった第4代国王が打ち立てた築城計画で作られた城の一つであり、ノイシュヴァンシュタイン城より後に築城が始まった。

当時はファルケンシュタイン名義で建造されていたが資金難で工事は中断。

第4代国王があまりの浪費の激しさと執務嫌いから失脚に追い込まれた後、謎の死を遂げたことで築城計画自体が白紙となる。

しかし、とある物好きな大富豪が建築案の現実的な拡大と城名を白鳥(シュヴァン)にあやかったものに変更することを条件に資金援助したことで計画が復活し、完成したのだ。

バイエルン王国がヴァイマル共和国の州の一つになる形で滅び、ヴァイマル共和国が解体されてドイツ第三帝国に、第三帝国が傾いて東西に分かれ、数年後に再統一してノイプロイセン王国が成立した現在、この城は古城ホテルとして観光客に憩いと安らぎを提供している。

 

「公爵閣下からお話は伺っております」

 

しっかり話は通してあったか。

用意がいいというかなんというか。

 

 

 

時間が遅いせいか、チェックインしてから少しして夕食が始まった。

未成年相手にここまで堂々とアルコールを出すあたりが、らしいというか……。

 

「……あれ? 私たち、未成年ですけど」

 

「ノイプロイセンは建国時の混乱の影響で飲酒の年齢制限がないんだよ。度数が極端に低いビールとかも大手が製造してるもんで、政府も子どもの飲酒はあまり問題視してないし」

 

ルナの素朴な疑問に、砂山さんが答えた。

そう、ノイプロイセンは喫煙には厳しいが、文化的に飲酒には非常に甘い。

未成年の急性アル中問題に対して醸造所が度数1%以下のビールを作るという対策をしたら、政府がそれに安心するほどに。

灯留手はそれにかこつけて早速値段と度数の両方が高そうなビールを飲んでいる。

流石に出月さんが心配そうに話しかけた。

 

「それ、度数も高そうだけど大丈夫?」

 

「……サイボーグだから平気です」

 

あっさり返してしまった。

少し開き直りが混ざっている気がする。

よく見たら高そうなワインまで注文しているようだ。

 

「それ、ボトル1本が最低でも1000ユーロは越える超高級品!」

 

「あの人が後払いしてくれるんですから問題ありません!」

 

砂山さんが悲鳴を上げてもケロリとしている。

……鬱屈が溜まっていたのかな?

流石に看過できないと思ったのか、ルナとシルキスさんも小声で話し込んでいた。

 

「あの子、酔い潰れるまで飲む気かも」

 

「そうなる前にそれとなく止めた方がいいでしょうね」

 

 

 

 

 

それからそれから。

食事が終わってそれぞれが用意された部屋に入って少し時が経って。

俺は、灯留手の部屋にいた。

ゴミ箱にビールの空き缶空き瓶が大量に突っ込まれ、テーブルにはまだ封が開けられていないビール瓶が置かれている。

どう見ても自棄酒だな。

 

「……あの人にどなったところ見て、ビックリしたでしょ? 私も後になって少し驚いたの。こんな体になる前は、他人行儀になる程度だったのに……」

 

「怒るかもしれないけど、きっと、改造されたトラウマとストレスのせいだと思う。……それなら、辻褄は合うから」

 

「あの人のことを許せて、『お祖父ちゃん』って言える日、来るのかな?」

 

「きつい言い方になるけど、そうなるよう、歩み寄ればいいんだよ。そうすればそんな日もきっと来るさ」

 

 

 

廊下。

俺とゼロ、シルキスさんは窓越しに月を眺めていた。

 

「できる限りのフォローはエックスがした。あとは、あいつ次第だな」

 

「大丈夫だと、思いたいです。不安だけど、何とかなるって信じる以外に方法はありませんから」

 

話題はやっぱり、灯留手のことだった。

最初はイーグリードのことを聞こうとしたけど気まずくて、ワンクッションのつもりで灯留手のことを話題にしたんだ。

ゼロは俺のそういう意図には薄々気づいていたのか、一気に切り出してくる。

 

「昔話でも聞くか? 俺がDr.ケイリーに拾われて、イレギュラーハンターに所属させられた直後の話だ」

 

 

 

 

 

(いつになったら実戦に出れるんだ?)

 

ゼロはそう考えながら、訓練室を出て廊下を歩く。

高い戦闘力を誇るゼロは、既にVRレーニングはA級までクリアしていた。

クールだがどこかとっつきやすいゼロは訓練生仲間たちからも慕われている。

なので、自然と人だかりができていた。

 

「ゼロってすげえな! A級のVRトレーニングのクリア時間、VAVAの記録を見事に更新するんだもんなぁ」

 

「どうせなら実戦で評価されたいんだけどな」

 

人だかりに対して顔をしかめるゼロ。

そんなゼロの愚痴に賛同したのは意外な奴であった。

 

「よく分かっているじゃないか。こういうのは実戦での結果がモノを言うからな」

 

「……まさかVAVAと意見が合うとはな」

 

「意外そうな顔に少しムッと来たが、ヒステリーを起こすほど俺は短気じゃない。これから区内パトロールだ。プロはドンパチ以外の仕事も任されるのさ。じゃあな」

 

VAVAは言いたいことを言ってそのままその場を去る。

ゼロ以外はポカンとしていたが、ゼロの方は何となくVAVAの言いたいことが分かっていた。

VAVAが去った直後、今度は別方向から怒鳴り声が響く。

 

「取り巻きみたいな真似する暇があったら、追いつく努力をしたらどうだ!?」

 

怒鳴り声の主は、猛禽類型のレプリロイド。

それを見たゼロは勝手にできた取り巻きの1人に尋ねた。

 

「誰だあいつ?」

 

「ストーム・イーグリードだよ。特A級のVRトレーニングでVAVAと全く同じクリア時間をたたき出したってもっぱらの噂」

 

少し冷めた表情で、ゼロは取り巻きの1人の説明をだま敵機ながら歩く。

一方のイーグリードも、歩いている途中でゼロのことを認識する。

 

(あのブロンドの長髪は……最近になってDr.ケイリーが拾ってきた奴だな。名前はゼロ、だったな)

 

ゼロとイーグリードは、すれ違う。

 

「いったいどこから来たんだ、ゴロツキが」

 

「鳥なのになんで腕が2本もあるんだ?」

 

その瞬間、火蓋を2人が切って落とした。

 

「吹っ飛ばされたいか!?」

 

「その言葉、バスターで叩き返してやる!」

 

「止めないか2人とも!」

 

一気にヒートアップする2人を、たまたま通りかかったスティグマが怒声で制した。

 

「全く! VRトレーニングの結果がすこぶる良好だったから、2人とも明日からの実戦参加が許可されたことを口で伝えようとした矢先にこれか! 気に入らないなら手柄で競い合え!」

 

この一件を機に、ゼロとイーグリードは何となくではあるが悪友みたいな間柄となる。

これに関して一番不思議がったのは、他ならぬスティグマであったという。

 

 

 

それから時が経って。

強盗を退治し(縛り上げ)て、護送用のパトカーが来るまでの間、ゼロとイーグリードは休んでいた。

 

「面目ない、ゼロ。お前に助けられたのはこれで17回目と来たな」

 

「俺がそっちに助けられたのは14回。そろそろ回数差を1個ぐらい減らしてくれよ」

 

「そうしたいんだがここ最近、焦り気味でな」

 

ばつの悪そうな表情を見せるイーグリード。

ゼロはそんな彼を見て「やれやれ」といった表情になる。

と、そこにイーグリードに寄り添うように少女型のレプリロイドが現れた。

 

「ゼロさんですね。イーグリードから話は聞いています。私はティル。こう見えてもA級ハンターなんですよ」

 

にこやかに挨拶するティル。

毒気を抜かれる格好となったゼロの疑問の矛先は彼女ではなく、彼女が抱き着いているイーグリードに向けられた。

 

「ああ。……おい、イーグリード。その彼女、誰だ?」

 

「……もうすぐ、指輪を贈ろうと思ってる仲だ」

 

「つまり恋人ってこと……だとっ!?」

 

「そこまで驚くことはないだろうが」

 

それ以降、何となくゼロはイーグリードだけでなくティルとも親交ができた。

第17精鋭部隊でもイーグリードとティルのカップルの一件はゼロ経由で瞬く間に広まり、イーグリードはスティグマにまでからかわれたという。

しかし……。

 

 

 

3人が第11調停部隊への短期研修期間中に事件が起きる。

バイエルン州領空ツアー用の飛行船がハイジャックされたのだ。

警備にあたっていたティルが、下世話なハイジャック犯たちに拘束されたと聞き、いてもたっていられずスティグマに命令を頼み込んだゼロとイーグリードが現場へと急行。

フュッセン上空で無事に潜入した2人は、どっちが船尾側(ティルが拉致されているところ)に行くかで揉めていた。

 

「もしも相手がティルを盾にした場合、平常心を保てるのか?」

 

「……操舵室の方に向かう。ティルの方は、任せたぞ」

 

「任せとけよ!」

 

ゼロの判断は正しく、イーグリードは多少は焦れど、平常心を失うことなくハイジャック犯たちを容赦なく叩きのめしていったのである。

通信でそれを確認したゼロは、自分の判断が正しかったと確信できた。

ゼロもまた、ハイジャック犯たちを制圧していたからだ。

 

「他愛もなかったな。にしても、こいつらどうやって入り込んだんだ? 積荷や客の乗船前チェックはミュンヘン市警に協力してもらったはずだ」

 

「それとなく聞き出そうとしましたけど、意外に口が堅くて情報は得られませんでした」

 

「……尋問の方はイーグリードと合流してから考えるか」

 

拘束されていたティルの救助を済ませ、ゼロはそれとなく考え込む。

直後、操舵室に向かったイーグリードから意外過ぎる通信が入る。

 

『大変だ! 船員の中に内通者が何人かいた! ほぼシメておいたが、残りの1人がそっち側にいる!』

 

「……!」

 

この通信に驚愕した隙を突くかのように、内通者の最後の1人が船内の設備から何かを取り出す。

銃身を大幅に短くした、エネルギー光弾式の対物ライフルである。

 

「王制打倒のために!」

 

ゼロ目がけて、引き金が引かれる。

直後、ゼロより先に気付いたティルが咄嗟にゼロを突き飛ばし、代わりにエネルギー光弾の直撃を受けてしまう!

ゼロが、悲鳴を上げる。

 

「ティル!」

 

更にトドメとばかりにもう一度引き金を引こうとした内通者であったが、それよりもずっと早く、Zバスターのセミチャージショットが対物ライフルごと奴の右手を粉砕した!

 

「あんぎゃぁああああああああ!?」

 

激痛でのた打ち回る内通者の両足と残った左手も容赦なく骨が粉砕骨折するまで踏みつけ、顔面を船内の壁に何度も叩き付けて気絶させてから、ゼロはティルに駆け寄る。

 

「もっと早くアレに気付いていれば……」

 

「……ボディに風穴が開いただけだから、大丈夫ですよ。それよりも、さっきのエネルギー光弾のせいで船体にも穴が」

 

空元気状態のティルの後ろには、鍵と取っ手の部分を狙い澄ましたように破壊され、開きっぱなしとなった気圧扉。

現在の高度は2000m前後。

そのため温度はそこまで急激に低下しないが、やはり気圧の問題があるのですぐにでも着陸する必要が生じた。

 

『ゼロ! どうした!』

 

「すまない……。最後の1人から俺を庇ってティルが撃たれた……!」

 

『何だと!?」

 

「内通者は銃ごと右手を吹き飛ばし、無力化した。しかしティルはボディに風穴が開く重傷。早急な修復を要すると判断。急いで飛行船を着陸させた方がいい!」

 

銃声と悲鳴、爆発音を通信越しでたまたま耳にしたイーグリードが慌てて通信してくる。

ゼロの報告に素っ頓狂な声をイーグリードがあげたが、ゼロは報告を続ける。

そして……ゼロが気圧扉の方を向いた瞬間、ついに直立を維持できなくなったティルが開きっぱなしの気圧扉の方へもたれかかってしまい……。

 

「!?」

 

「ティル――――――――!!」

 

ゼロが慌てて駆け出すも間に合わず、ティルは……船外に投げ出されるように落ちて逝った………………。

 

 

 

 

 

「……この一件のショックで精神的に弱っちまったあいつは一足先に帰国。それより先に政府が詫びとばかりにハイジャック犯たちと内通者連中に類を見ないスピード裁判で死刑を宣告して、刑を執行したがそれが救いになったかどうか……。

 

 結局、俺が日本に帰って事件解決の手柄で特A級に昇格したのと同時に、あいつは同じ理由で第7空挺部隊に隊長として栄転。時々顔を合わせることは仕事柄あったが、詫びを入れるタイミングは終ぞ見つからなかった。

 

 それでまた荒れそうになったのを、まだハンターになる前にエックスに救われて今に至るってわけさ……。更に気の滅入る話をしてすまなかったな。……先に寝るぞ」

 

そのまま、ゼロは自分の部屋へと戻っていった

俺がハンターになる前にそんなことが……。

余計に暗い気分になりそうになる直前、シルキスさんがそっと俺を抱き寄せた。

 

「シルキスさん?」

 

「確かに、婚約したいと思うほど愛し合っていた方を失ったことは、イーグリードさんの身に降りかかった悲劇です。それでも、道を踏み外したことは紛れもない事実です。だから、次に相対した時に、覚ましてあげましょう。彼の眼を」

 

「……うん」

 

「こうしていると、思い出しませんか?」

 

「……思い出したよ、あの時、自分が何者なのか分からなくて不安になっていた俺を、今みたいに抱きしめてくれたこと。俺、不安なんだ。シルキスさんたちは俺に惚れてくれているけど、それは不幸なことかも? って、そんな風に悩むことがあるんだ

 

 子供を作れない云々以前に、俺は、シルキスさんたちのことが好きなのかすらも分からなくて……」

 

「今の私は幸せですよ? 意中の方をこうやってまた抱きしめることができましたから」

 

 

 

 

 

朝。

城内の大食堂の一角。

俺たちは朝食の真っ最中。

横山さんたちは打ち合わせしながらパンをほおばっている。

灯留手は……あの後もかなり飲んだらしく、見事な二日酔いだ。

流石に改造人間でも許容限界があったらしい。

 

「サイボーグだから……平気れふ……」

 

なのに強がりを言っている。

全然平気そうじゃないよ。

流石にげんなりしたルナが話しかけてきた。

 

「誰がどう見てもアルコール依存症手前にしか見えないけど」

 

「自棄酒でかなり飲んでいたから……。そういえば、なんでルナが今回の任務に同行してるの?」

 

「知らないの? ゼロってあの暴力沙汰のせいで自宅謹慎付きの停学くらったのよ。で、任務とはいえ国外に行くから、それを知らされた学院側が条件を付けたの。学院側が指定したお目付け役を、今回の任務の同行させる、っていうのをね」

 

「そのお目付け役がルナってことか……」

 

ヴァイスブルスト(その名の通り白いソーセージで、バイエルン州名物。傷みやすいので専ら朝の一品用)を食べながら、ルナの説明に呆れてしまう。

……美味しい。

おいしさにちょっと目が丸くなっていたところ、

 

「いた―――! いました―――! いましたぜ―――! ほら、こっち! すっげえ綺麗なマゼンタ(マゲンタ)の色した髪の小僧!」

 

ノイプロイセン海軍の軍服を着たゴリラっぽい人相の人がいきなり現れて、凄く嬉しそうに吼える。

その直後、彼の上司と思われる、端正だけど男らしい顔つきの人が近づいてきた。

 

「ノイ・プロイセン王国海軍第4Uボート艦隊群所属のヴォルフラム・フォン・フランツェン中佐だ。この騒がしいのは副官のゴルムート・ハインツェ大尉。イレギュラーハンター第17精鋭部隊隊長、ロックマンエックスだな?」

 

「確かに。俺が第17精鋭部隊隊長、エックス・クスノキだ」

 

「迎えに来た。チェックアウトを済ませてからでいいから、俺たちについてきてほしい」

 

 

 

 

 

チェックアウト後。

俺たちはヴォルフラムさんたちの案内でフォルッゲン湖の湖上にいた。

 

「もう少しだけ待てよ。お目当ての船に入れたら好きなだけ撮影させてやるからよ」

 

ゴルムートがそう言いながら機械を操作すると、霧が発生。

俺たちが乗っていた船は別の場所にいた。

 

「ここは……?」

 

「この世界には、魔法というものがある。そうやって作った狭い亜空間だ。ノイプロイセン海軍の軍艦は機密保持のため、こういった亜空間で建造されている。ここで建造している奴は特に完成前に知られたくないのばかりでな。

 

 俺とゴルムートが乗る新しいUボートや新型戦艦、お前たちが受け取る超大型飛行戦艦はあのドック艦、フリーゲンデ・シャツトゥー(空飛ぶ宝箱)で建造された」

 

ヴォルフラムさんが指差した先にある、ドックのように展開している軍艦『フリーゲンデ・シャツトゥー』は何事もないようにその姿をこれ見よがしに誇示している。

展開している個所に停泊している軍艦は、どれもかなり大きい。

……? 飛行戦艦? 俺たちが受け取る?

 

「俺たちは空飛ぶ客船だと聞いた」

 

「……あのババア、味方に嘘教えやがったな。いいか、お前たちが受け取るのは客船じゃねえ。フリーゲン・シャツトゥーよりでかそうなあの飛行戦艦だからな! ディ・シュテルンターラー級の2番艦で名前は……確か、ヴォータズ……」

 

「英語式の発音で『Wodahs-Htaed(ウォーダス・テード)』という名前だ」

 

ゴルムートの説明を補足するように、ヴォルフラムさんが名前を教えてくれた。

 

「排水量がどれくらいあるのか見当がつかないな」

 

「全長だけで1㎞を余裕で越えている。50万トンで済むかどうか」

 

 

 

艦内。

とにかく内部も広くて複雑だ。

いや、あの大きさでもあり得ないほど内部を広く感じる。

ようやく撮影許可が下りて嬉々としている出月さんを尻目に、横山さんと砂山さんも同じことが気になっているようだ。

それを読み取ったかのように、海軍の士官服を着た女性がいきなり現れて話しかけてくる。

 

「この艦は内部の大部分が圧縮空間になっているんです。内部の総面積は、理論上は本来の数倍になります。私はノイプロイセン王国海軍遊撃試験艦隊所属、エルメントーラ・アイクル・マルフリート・ロンメル大佐です」

 

「イレギュラーハンター第17精鋭部隊隊長、エックス・クスノキです。……苗字からして、『砂漠の狐』か『大空の狐』の?」

 

「その両名とは先祖と苗字が共通しているだけの遠縁です。私自身、いずれは『海の女狐』と謳われる軍人になる、という夢はありますけど。とりあえず、艦橋に案内しますね」

 

 

 

艦橋。

流石にここは圧縮空間ではないようだ。

船体のサイズに合わせてかない広いけど。

 

「では、私は自分の艦に戻りますね。これが艦内の簡単な地図と、艦の取扱説明書です。この艦の艦長なんですから、目を通しておいてくださいね」

 

俺に艦内地図と説明書を手渡し、エルメントーラは艦橋を後にした。

俺がこの戦艦の艦長!?

そう思った直後、館内放送が流れる。

 

「ワールドスリーに協力する敵性組織のミュンヘン侵攻を確認! 陸軍と空軍は既に迎撃態勢を整えて待機中! 本艦はこれより出航します! これより出航します! 艦長は艦橋にあるご自身の席にお座りください」

 

それと同時に船員と思しき人たちが一斉に入ってくる。

そのうちの一人に押されるように俺はかなり座り心地がよさそうな椅子に座らされた。

 

「この艦の副官として海上自衛隊から派遣された、城戸舟子(きどしゅうこ)二等海尉です。よろしくお願いしますね、艦長。とりあえず、出航に合わせてこの亜空間は消滅し、ここに存在する艦艇と大量の水はすべて現実世界に戻ります。

 

 ちなみに、フリーゲン・シャツトゥーやこの艦を初めとする、この亜空間内にある艦艇は特殊機関の力で飛行可能となっていますので、ミュンヘンへは飛んで行きますからあしからず」

 

 

 

 

 

ミュンヘン郊外上空。

デスログマーの甲板上。

イーグリードとデゴナスガンテを後ろに従えるように、2人の女性が甲板上に立って、地上のミュンヘン市街を眺めていた。

片方はルールアン、もう片方は……。

 

「御気分は如何ですか? ローズ姫様」

 

「上々。まずはミュンヘンを足掛かりにして、そこからノイプロイセンはおろかヨーロッパを攻略。ロシア第二帝国とアメリカ合衆国攻撃の新たな拠点にする……。スティグマ殿も考えるわね。ノイプロイセン内の反王制派も味方につけてるなんて」

 

「彼らが目的を忘れて単純な王制打倒しか考えていないことを見越していたのでしょう」

 

デゴナスガンテの説明に自然と納得する彼女はローズ・ウィンザー。

異世界にあるララマザー王国とは双子にあたるウィンザー王国の第一王女。

快楽主義者で稀代の同姓好き兼宝石好き。

それがいき過ぎて遂には道を踏み外し、女性を(中略)をもとに宝石を作り出す『ジュエル魔獣』を創造して各国で活動させている世紀の大悪女でもある。

デスログマーはローズが異世界で密かに建造させていた飛行艦と、ワールドスリーが保有する飛行艦の半分以上で構成された艦隊(乗っているのはワールドスリーの構成員や海賊などの札付きの悪党ばかり)と、ジュエル魔獣(飛行形態)の大編隊を引き連れている。

地上でも、バスに偽装した大型装甲車で悪党軍団がミュンヘンに接近中である。

 

「ミュンヘンを攻略するついでに大勢の女の子たちを気持ちよくしてぇ、宝石もたくさんゲット。実に効率的よねぇ。この作戦で手に入れた宝石、何個かお譲りしましょうか? ルールアン女史」

 

「私としては女の子たちと仲良くなりたいわね」

 

「ルールアン女史って案外一途なんですね。ま、どのみち今回の作戦は成功したも同然。そうでしょう? ストーム・イーグリードさん」

 

ローズは満面の笑みでイーグリードに話しかける。

イーグリードは表情を変えることもなく、風に揺れるローズの紅い髪を不快そうに思いながら淡々と答えた。

 

「仰るとおりでしょう。予想外のことがなければ、の話ですが。ほおら、予想外の事態が起きた」

 

 

 

艦橋の窓越しに、デスログマーを筆頭とする敵艦隊が悠然と空を飛んでいる。

 

「敵艦隊、衝撃砲(シュラーグ・カノーネ)の射程内です。ノイプロイセン艦は本艦の攻撃を合図に戦闘を開始すると通達してきました」

 

「デスログマー以外の敵艦を狙うんだ。デスログマーは俊敏だから回避機動を取りながら反撃してくる可能性がある。可能ならば僚艦を全て落とした後で拿捕するように。攻撃を許可する!」

 

俺がそう言った瞬間、シュラーグカノーネが光線を放つ。

光線はデスログマーの僚艦数隻を一撃で打ち抜き、木端微塵にする。

それを合図にして、ノイプロイセン海軍の空飛ぶ艦隊がワールドスリーの艦隊を一斉に攻撃しだす。

 

「空飛ぶ艦隊は全て新型複合機関を搭載しています。この艦も例外なく。あの魚みたいな形の潜水艦はフランツェン中佐が指揮するU(ウー)-ヴァールハイ。

 

 あの銀色で本艦と変わらない大きさの戦艦はマルフレート大佐が艦長を務める星の銀貨(ディ・シュテルンターラー)です。本艦の姉妹艦であり、ネームシップです。

 

 現在、敵艦隊は航空戦力の大半を損失。ですが、別働の地上戦力の数割が市街に到達する可能性が極めて高く、飛行揚陸艇数隻が市街への侵入に成功し、中心部に移動中との報告が陸軍第1装甲師団から来ました。

 

 陸戦隊の出撃を検討しますか? こちらの飛行揚陸艇はいつでも稼働可能です」

 

「この戦闘における艦の指揮は経験がありそうな城戸さんに一任します! 俺たちは陸戦隊と一緒に市街中心部に入り込んだ敵を迎撃します」

 

 

 

 

 

ミュンヘン市街中心部。

ヴィッテルスバッハ統合宮殿の正門前。

俺たち(俺、ゼロ、シルキスさん、横山さんたちいつものトリオ、灯留手、監視の名目でいつの間にか忍び込んだルナ)と陸戦隊は飛行揚陸艇から降りた。

陸戦部隊の人たちは、Dr.ケイリーが自衛隊の人たちと一緒に秘密裏に開発したパワードスーツ、『ブルートザウガー』を身にまとっている。

 

「俺と第一分隊は艦長たちと一緒に敵部隊の迎撃! こっちはプロ○クトギア顔負けのパワードスーツ着けてるんだ! プラモドキ(正式名称はプラスチックモドキ合金)なんて締りのない名前してる挙句、名前通りに無駄にテカッている素材で出来てるが強度は本物だ!

 

 だから安心して敵の弾を浴びたっていいんだ! ロケットランチャーの直撃を食らっても立ち上がって返り討ちにするぞ! なお、ジュエル魔獣とやらは普通の銃弾では聞かない可能性が高い。出てきた場合は無反動砲か対物ライフルを使え」

 

「残りは市民の避難誘導と護衛をお願いします!」

 

陸戦隊の隊長と俺の命令に隊員たちが復唱した直後、銃声が響く。

現在の銃火器を持った山賊みたいな格好の連中が大挙して押し寄せてくる。

敵の地上部隊がそこまで来たか!

 

「第一分隊、散開! 狙いを集中させるな! アサルトライフルは移動しながら撃て! どうせパワードスーツが力づくで反動を抑えるから照準はブレたりしないぞ!」

 

第一分隊の人たちが散開しながら銃を発砲。

敵部隊を次々と撃ち倒していく。

中には立ち止まって連射式に改造された無反動砲で敵を吹き飛ばしている人もいる。

 

「そこ! それは対ジュエル魔獣用に持ってきたんだぞ!」

 

「今撃ってるのは対人榴弾です! 慌てて出撃したので装備の中に紛れていました! もったいないと思ったので使用しています!」

 

「そうか。バックファイヤーに気をつけろよ。陸戦部隊(俺たち)はパワードスーツを着ているからいいが、避難する市民が後ろを通る時はグレネードランチャーでも使うように」

 

「了解」

 

陸戦隊の隊長が直後に俺たちの方を振り向く。

何を言おうとするのかは何となく予想がつく。

 

「作戦中失礼でありますが、お願いがあります。予想以上に我々の方が優勢なので、こちらには是魯さんだけを残していただければ……その……」

 

「俺たちの方は残りの分隊と一緒に避難誘導に向かいます。ゼロは、どう?」

 

「俺はここに残っても問題はない」

 

「だそうです。ゼロとの連携は忘れないでください。無事を祈ります」

 

「ありがとうございます。艦長たちもご無事でありますように」

 

 

 

 

 

数十分後。

市民たちの避難先の一部となっているヴィッテルスバッハ統合宮殿の一角。

俺たちは出入り口の前にガードするように待機している。

中心部の戦闘が一段落ついたのでこっちに駆け付けてくれたゼロは当然のことながら、俺も既に戦闘モードに移行済み。

それでも敵地上部隊がまだまだこっちを目指していることに変わりはないので予断を許さない状況下だが、ビーアレーゲン公爵が話しかけてきた。

 

「市警からの連絡では、市民の市内各所にある避難所への避難は滞りなく進んでいるとのことです。敵地上部隊も陸軍の部隊が迎撃中と、ティーゲルントが教えてくれました」

 

「ウォーダス・テードの城戸さんからも、対空砲火を免れたジュエル魔獣がこっちに飛来しているそうです。大方、避難所としては一番目立つここに狙いを絞ったのでしょう」

 

俺がそう言った矢先、遂にジュエル魔獣が辿り着いた!

直後、城戸さんからまた通信が来る。

 

『空軍からの連絡が来ました。「現在、艦砲射撃を潜り抜けたジュエル魔獣の内、半数以上の撃墜に成功。立地上、空対地ミサイルでの攻撃が不可能なため、虫のいい話だが地上に到達した分はロックマンエックスに迎撃を頼む!」とのことです』

 

「すでにこっちに集まりつつある。そちらは引き続き敵艦隊撃滅に専念を」

 

城戸さんとの通信が終わった後、シルキスさんと戦闘モードになった灯留手、横山さんたちも前に出てくる。

流石に横山さんたちは非戦闘員だから……。

 

「せめて中に入った方がいいと思いますけど」

 

「恵玖須君の側が一番安全と思っただけです」

 

「「横っちと同意見」」

 

「私も」

 

横山さんたちどころかルナまでもか……。

どこまでガードしきれるか分からないけど、やるしかないか。

 

「スワンちゃん!」

 

シルキスさんが吼えると同時に、胸元から光が現れ、その中から胸に大きな宝石を埋め込んだ白鳥が飛び出す。

彼の名はスワン。

本来はジュエル魔獣の王として創造されながらも、かつての仲間の非道を嫌ってシルキスさんの戦う力になる道を選んだ。

 

「魔法変身!」

 

シルキスさんの足元に光の魔方陣が展開。

彼女のドレスとスワンが光り輝いて粒子状に変化し、髪が魔法の力でストレートの金髪からカールのかかった桃色に変わったシルキスさんの体を覆う純白のビキニアーマーに変化。

双剣を手にし、シルキスさんが名乗りを上げた。

 

「百翼の姫騎士! ナイトスワニィ、見参!!」

 

シルキスさんがジュエル魔獣たち目がけて切りかかる。

こっちも攻撃しておかないと。

 

「チャージショット! すぐにもう一発!」

 

ジュエル魔獣の内の1体にチャージショットを2発浴びせ、撃破!

それが引き金となり、陸戦部隊の分隊たちも対物ライフルでジュエル魔獣に十字砲火を浴びせる。

中には無反動砲で対戦車榴弾を発射している人もいる。

ゼロと灯留手も躊躇うことなくジュエル魔獣を吹飛ばす。

 

「あっという間に激戦区になりました! 特に接近戦でジュエル魔獣を次々と切り刻んでいくシルキスさんの勇猛さが目立ちます! あ、王国陸軍の部隊も何個か駆けつけてきました! 後から来たジュエル魔獣や飛行揚陸艇を撃破しています!」

 

ティーゲルントさん率いる第88ロボット戦車大隊を中心とした戦車隊が宮殿の敷地外にいるジュエル魔獣や、増援の敵兵たちを次々と吹き飛ばしだす。

歩兵部隊も王国群で採用されているパワードスーツ『アウスガーベンヴォルフ』で身を守っているので敵の攻撃で負傷する様子は見られない。

 

 

 

数十分後。

陸軍の部隊は別の地区の敵に狙いを変えて移動。

ジュエル魔獣を軒並み片づけ、俺たちは一息ついた。

宮殿周辺の敵を掃討し終えたので、

しかし、不安は拭えない。

何か雨で濡れた服のようにべっとりと張り付いている。

それを少しで散らそうと思って、何となく灯留手の振り向いた瞬間、不安は明確な形を持って目の前に現れた。

 

「きゃぁああああああああああああああ――――――!!?」

 

ヒルデの体を覆っていた装甲が武器ごと吹き飛び、アンダーウェアもビリビリに破れてかなり露出度の激しい状態となる。

 

「灯留手!?」

 

同時に、瘴気みたいなものを感じる。

こっちは原因がはっきりと分かる。

 

「ルールアン!」

 

「ローズ姫!」

 

正気の根源である二人の悪女が目の前に現れる。

そいつらの名前を、俺とシルキスさんは叫んだ。

1人は姉さんの純潔を無惨に踏みにじった女!

もう1人はジュエル魔獣を生み出して、ウィンザーとララマザー、その周辺諸国に災厄をばらまいた女!

 

「前もってドバイの連中から灯留手ちゃんのコントローラーを受け取っておいて正解だったわ。灯留手ちゃんの方の調整が間に合わなかったから、自爆装置しか作動しなかったけどね」

 

「うふふふふふふふ。せっかくだから、私たちの手で調整しちゃいましょうか。魔法変身!」

 

ローズが叫んだ直後、彼女の胸元から胸に宝石が埋め込まれた黒鳥が出現し、ドレスごと光の粒子となって彼女を包む。

魔法の力で赤から白銀に変わった髪をなびかせ、露出度の高いワンピースドレス型の黒紫の鎧と、黒いマントを身にまとう。

そして、死神が持つような鎌を手に名乗りを上げた。

 

「暗黒の騎士、ダークスワニィ参上!!」

 

ローズ改め、ダークスワニィは名乗りを上げた直後にマントを6匹の鉄の蛇のような鎖に変え、その内の1本を伸ばす。

その鎖は灯留手の首目がけて、リング状の先端を口を開けるように展開して灯留手の首を咥えこんだ!

 

「クラッシュバスター!!」

 

しかし、思い通りにしてなるものかとゼロがフルチャージショットで鎖を破壊。

俺は短いダッシュで灯留手に駆け寄り、抱きかかえる。

それと同時にシルキスさんがダークスワニィに斬りかかった。

 

「何ならもう一度可愛がってあげようかしら? アレは素直になるまでお預けですけど」

 

「戯言を!」

 

ダークスワニィの鎌と鎖を颯爽と避けながらも、その鎖のせいで思うような決定打を与えるまでには至っていないらしい。

ゼロはルールアンの方を相手にしている。

ならば……。

 

「ゼロ! ルールアンの相手をそのまま頼む! 第2から第4分隊へ艦長命令! ゼロの援護を! 俺はシルキスさんの援護に回ります! 避難所になっている建物に流れ弾が当たらないよう、攻撃時の立ち位置には注意してください!」

 

分隊の人たちから復唱が来た直後、またも城戸さんから通信が来た。

 

『空軍から要請が来ました! 面倒くさいので中継します!』

 

『こちらは王国空軍第一空軍師団指揮下第74戦闘航空団115戦闘機部隊隊長。敵指揮官と思しき女性2人を確認したが、立地的に対地ミサイルは使えない! どちらか片方でいいから何とか空に飛ばしてくれないか?』

 

「髪の短い方はこちらで対処するので、髪の長い方を空に飛ばしてみます。そいつの目印は、銀色の髪に黒いドレス。銀色の髪に黒いドレスです!」

 

『ロックマンエックスの了承と的確な助言に感謝する!』

 

通信を終えると同時に、俺はチャージを開始。

だが、スパイラルバスターを撃つわけじゃない。

武器セレクト!

 

「ショットガンアイス!」

 

氷のソリが生成され、ダークスワニィめがけて突進。

当たる直前に鎖の内の1本に破壊されたが、それをシルキスさんが切断。

すかさず足目がけてセミチャージショット!

狙い通りジャンプと同時にそのまま空中に浮遊。

その隙を突いてダッシュでシルキスさんに接近して耳元でささやきかける。

 

「ダークスワニィを可能な限り高高度まで飛ばしてください。空軍が攻撃してくれるそうです」

 

「分かりました」

 

シルキスさんも飛翔し、ダークスワニィに突貫。

リクエスト通りに上手くダークスワニィを上昇させてくれている。

ある程度の高度にまで上昇してから数秒後、十数発のミサイルがダークスワニィを直撃!

かなりの距離を吹き飛ばされたから、しばらくは戻ってこれないだろう。

 

『協力に感謝する。ワールドスリー本軍からの航空増援を確認したので我々はそちらの迎撃に移る。貴殿の勝利を祈る!』

 

 

 

シルキスさんが着陸したところで、俺たちはゼロの援護に移ることにした。

エーテルランドの住人はこちらの世界にいる間は物理攻撃をある程度まで緩和することが可能だ。

流石にゼロのエネルギー弾は効いているが、陸戦隊の人たちの火器に対しては弾幕で怯みはするもののそれほどのダメージにはなっていない。

 

「凄まじい銃撃です! ですが違反者はその特性上、物理的な攻撃に対する強い体制を有しているため、膠着状態となっています!」

 

そんな状態を打破しようと援護に回ろうとした瞬間、イーグリードがデゴナスガンテを運びながら飛来してきた!

 

「呼ばれていませんがいきなり出場! ダークスワニィ様は吹き飛ばされたようですがあの方のことなのでご無事でしょう。それはそうと……ナイトスワニィ殿、いざ尋常に勝負!」

 

デゴナスガンテは大袈裟な仕草でまくし立ててから、シルキスさんに斬りかかる!

剣さばきが速過ぎる。

ダークスワニィの鎌より重そうな大剣を片手で難なく振り回している。

かなりの腕だ。

俺の方には、イーグリードが襲い掛かる。

突進してきたのを見計らい、今度も頭突き!

 

「……昨日よりは効くな。だが、それでも足りん! ……!?」

 

攻撃に移ろうとしたイーグリードを牽制するように、銃弾がイーグリードのボディに当たり、潰れた後地面に落ちる。

イーグリードを撃ったのは……ビーアレーゲン公爵……!

灯留手を抱きかかえながら、ヴァルター(ワルサーとも言う)P38を構えている。

 

「……私にはこうする以外にヒルデに詫びる方法が分からん。こうする以外に、あの女たちや、あの女たちに従うお前らに牙を剥くことでしかヒルデに償うことができん!」

 

「…………お祖父ちゃん」

 

「この子に祖父と認めてもらえた以上、残りの未練も振り切れるというものよ!」

 

まずい、公爵は死ぬ気だ!

止めるように呼びかけようとしたが、それよりも先にライト博士のホログラムが現れた!

 

【エックス。最後のパーツを届けに来た】

 

ライト博士が手短に告げた直後、俺が被っているヘルメットが光り輝く。

光が収まった後、ライト博士が説明してくれた。

 

【ヘッドパーツはヘルメットの耐久性を爆発的に高めてくれる。また、左右一対の飾りから放たれる高周波によって頭突きを強化した『ヘッドブレーク』の使用も可能となる。これで、お前のアーマーは完全となった。

 

 だが、今回はもう1つ私がなすべきことがある】

 

そう呟いたライト博士は、視線を灯留手の方に移す。

瞬間、灯留手の体が宙に浮き、光に包まれた。

光が消えた後、灯留手は私服姿に戻っており、肌についていたススや破片も消えていた。

 

【あの後、君を改造した際の設計図を覗き見させてもらった。その設計図を参考にして君の体の改造された箇所を改良し、新しいアーマーと武器も用意した。……私には、こうすることでしか君を助けることはできなかった。

 

 戦わなければならぬ時、「甲冑物質化(ルストン・マテリエリーゼ)」と唱えるんだ。そうすれば、君も『ロックマン』になれる。許してくれとは言えない。だが、これからもエックスの良き友でいて欲しい。心正しく生き続けて欲しい】

 

「……あなたは?」

 

【私はトーマス・ライト。エックスを設計し、開発した科学者だ】

 

灯留手に対してライト博士はそう答えた後、再び俺の方を向く。

そういえば、ルールアンはまだ健在のはずなのに攻撃してくる様子がない。

ライト博士がいきなり出てきたので、驚いているのだろう。

 

【私には、こんなことしかできない。願わくば、この戦いがお前とヒルデ君の勝利で終わることを……】

 

ライト博士がそう告げて消えると同時に、抱きかかえられていたる灯留手は立ち上がり、俺たちの方へと歩き出した。

 

 

 

『えっと……わるきゅーれ……?』

 

『外れよ。これは、正しくは「ヴァルキューレ」って読むの。ドイツ語では、W(ダブリュー)のことを「ヴェー」って発音するから』

 

『ばるきゅーれ……』

 

何故か、小っちゃい頃のことを思い出したの

ドイツ語の絵本を読んでて、それに出ていた女の人を「ワルキューレ」って発音したら、お母さんが「ヴァルキューレ」って教えてくれて……。

あの科学者の人は、私も「ロックマン」になれるって……。

それじゃあ、私は今日からその「ロックマン」ってことになるんだ……。

……戦わなきゃ。

お祖父ちゃんも、この街の人たちも、何故か分からないけど、守りたいって思うから!

 

 

 

「ルストーン・マテリエリィーッゼ!!」

 

灯留手が叫んだ直後、その体がまたも光に包まれる。

一瞬で裸になり、赤いアンダーウェアにその身を包まれた。

その上に、黒い縁取りが付いた白い鎧が装着される。

最後に兜が装着された直後、灯留手は名乗りを上げた!

 

「ロックマンヴァルキューレ!!」

 

俺たちはビックリするしかなかった。

敵味方問わず驚いているらしく、一瞬だけ静寂が辺りを包んだ。

その隙を突くように、灯留手は攻撃態勢に入る!

 

「ソリーデシュッツ!」

 

背中から展開されて出てきた砲身から、物凄い勢いで弾丸が発射されて唖然としているルールアンを直撃。

激しい爆発を起こし、顔の半分以上が吹き飛んだ。

 

「……ゆ、油断、した……わ……!」

 

「ハントリッヒラケーテンアブシュスクリート!」

 

二の腕のアーマーが展開されて、小型の連装ロケットランチャーが出てきた。

そこから数十発のロケット弾が一気に発射され、ルールアンをさらに痛めつける。

爆炎が晴れると、更にズッタボロになったルールアンがそこにいた。

 

「……分が悪すぎるわね! イーグリード! デゴナスガンテ! 私はローズ姫様を回収してデスログマーに撤退するから! ついでに増援も用意してあげるわ!」

 

その言葉と共にルールアンは空を飛んで撤退しだす。

逃がすまいと思ったが、ルールアンが魔法で増援であるジュエル魔獣たちを大挙して召喚してきた。

中には明らかに灯留手目がけて職種を飛ばしてくる奴もいる。

 

「あわあわあわ!」

 

鎧の重量のせいか、灯留手の動きは前の装甲の時より割と遅くなっている。

だが、流石にやられっぱなしになる気はなく、一気に反撃に出た。

 

「レンクフルカーパーガンポタズ!」

 

鎧の各所が展開され、そこから小型のミサイルが大量に発射されてジュエル魔獣たちを吹き飛ばす。

ミサイルはイーグリードとデゴナスガンテにも狙いを定め飛翔。

イーグリードは空を飛ぶと同時に、アーマーに内蔵されていたオプションメカを囮にして振り切る

デゴナスガンテはその剣さばきでミサイルを全て切り落とすが、直後に発生した爆風を浴びて僅かにダメージを受けていた。

 

「大丈夫か?」

 

「爆風を浴びただけですので……」

 

「流石に分が悪いか……。決着はデスログマーの甲板の上でつけよう!」

 

そう言うや否や、イーグリードはまたもデゴナスガンテの両肩を足の爪でつかんで空中へ逃走した。

 

「エンゲルスフリューゲル!」

 

背中から翼を展開し、灯留手は飛翔。

イーグリードを追跡するために飛んでいく。

直後、飛行揚陸艇がゼロの目の前に降りてきた。

 

「乗って! デスログマーを追います!」

 

陸戦隊の隊長が第1分隊の人たちと一緒に乗っていた。

残りの分隊と横山さんたちにルナが乗り込むが、ゼロはこういって飛行揚陸艇の甲板の上に立つ。

 

「こっちの方が乗り降りが速い。すぐに出してくれ」

 

「はあ……。ですが、艦長とお姫様が……」

 

判断に迷う陸戦隊の隊長の背中を押すように、今度はシルキスさんが声を発した。

 

「エックス君は私が運びます。私も空を飛べますから!」

 

「そう言うわけなので、そちらはそのまま離陸してイーグリードを追跡。対空防御はゼロに任せるように」

 

「了解!」

 

更なる後押しとして俺が命令を下したので、陸戦隊の隊長は意を決することができたようだ。

直後、シルキスさんは俺をお姫様抱っこで抱きかかえて飛翔した。

 

 

 

現在の高度は、軽く見積もっても4000m以上。

何回かジュエル魔獣が襲い掛かってきたが、飛行揚陸艇の甲板の上にいるゼロと、ミサイルを全て発射態勢にした灯留手、シルキスさんに抱きかかえられている俺が撃ち落とす。

……デスログマーが見えた。

 

『こちら艦橋。デスログマーは今の今まで攻撃してきませんでした。何かの作戦でしょうか?』

 

「これより、デスログマーの甲板上に着艦します。引き続き他の戦力の撃滅に専念してください」

 

 

 

デスログマーに着艦し、俺たちは身構える。

直後、四方からジュエル魔獣たちが飛来してきた。

それを見た瞬間、シルキスさんの掛け声に呼応して、バイザーのクリスタルが強く輝く。

 

「輝け! 勇気の証、スワニィクリスタル!!」

 

眩い光の中でマントが光の翼に変化し、合わせるように双剣までも強く輝く。

 

「必殺! 白鳥の湖っ!!」

 

シルキスさんの掛け声がより強く響く。

それと同時に光の翼が3対に増える。

光の翼がジュエル魔獣を切り刻み、開店しながら双剣を横なぎに振るうと同時に6枚の光の刃に変貌。

ジュエル魔獣たちをあっという間に全滅させた。

 

「綺麗に全滅させちゃったね」

 

「……そうだね」

 

灯留手は茫然となって呟き、俺も相槌を打った。

直後、デスログマーは高度をいきなり下げ始める。

大分下げたので、気になってヒルデに聞いてみた

 

「現在の高度、わかる?」

 

「センサーだと、1500m位になってるよ」

 

そこまで下がったのか。

そんな風に思った矢先、羽が羽ばたく音が聞こえだした。

デゴナスガンテを足の爪で掴んだまま、イーグリードが姿を現す。

彼を着地させてから、イーグリードも着地した。

 

「戦いの準備は済んだか? 『天空の貴公子 ストームイーグリード』と!」

 

「『宝魔の守護騎士 デゴナスガンテ』はいつもいつでも準備万端です!」

 

もちろん、俺隊も準備は万端だ。

俺は両手のバスターを展開し、シルキスさんも再度剣を構える。

 

「イーグリード! あなたは本気で俺への嫉妬だけでスティグマに味方したと言うのか! それはティルへの侮辱にしかならないというのに!」

 

「俺らしくない理由なのは、ティルを愚弄する馬鹿な真似なのは、百も承知だ。より深く知りたいなら、俺たちに勝て! イレギュラーハンター・ロックマンエックス!!」

 

俺の言葉にイーグリードは少しだけ思案したのか、数秒間だけ目を閉じる。

しかし、覚悟を決めた表情で吼えた。

 

「ナイトスワニィ……。貴女は身も心も美しい。できることなら、スワン先輩のように貴女の側につきたかった。この無念を戦う力に変えて、貴女に謹んで挑ませてもらいます!」

 

「それならば、私も正々堂々と、参ります!」

 

シルキスさんの言葉をゴング代わりにして、俺たちの戦いが始まる。

イーグリードの右手から放たれた突風が襲い掛かる。

シルキスさんは空を飛んで回避し、俺はダッシュで突きぬけてスパイラルバスターを発射した。

 

「スパイラルバスター!!」

 

「ぬあっ!?」

 

一瞬ひるんだ!

チャンスとばかりにさらに距離を縮めようとする前に、デゴナスガンテの斬撃が襲い掛かってきたので慌てて回避。

 

「私、とても身軽でして」

 

爽やかな笑顔で軽口を言っているが、直後にシルキスさんが切りかかってきたので慌てて大剣で防御。

ゼロも加勢しようとしたが、どこかで見たような鎖が襲い掛かったのでやむなく避けていた。

 

「ダークスワニィとルールアンも戻って来たか」

 

「俺と陸戦隊、灯留手はあのビッチコンビを何とかする。お前たちはイーグリードとデゴナスガンテの相手に集中しろ」

 

「了解」

 

ゼロの言葉を信じて、イーグリードとデゴナスガンテの相手に専念しよう。

イーグリードは再度オプションを展開。

 

「往け!」

 

こっち目がけて放ってきた。

エネルギー弾の1発や2発では壊れないので、武器をチェンジ。

ある程度接近してきたところで……。

 

「ファイヤーウェーブ!」

 

ファイヤーウェーブの火力で強引に全部撃墜。

だが、イーグリードは再度上昇し、俺の方目がけて真っ直ぐ突撃してきた。

だったら!

 

「もう一度頭突きに打って出る!」

 

ダッシュで勢いをつけ、そのまま突撃してくるイーグリードの顔面に3度目の頭突きを炸裂させる!

 

「……! 堅さも十分。とてつもなく効いたぞ!」

 

「次はこれだ! カメレオンスティング!」

 

「ぐあっ!?」

 

頭部の亀裂と、スパイラルバスターが当たった際にわずかに亀裂が走った胸部目がけて、カメレオンスティングを発射!

効いているみたいだ。

 

「まだだ!」

 

また飛翔した。

今度は俺の方目がけて、上空から斜め下に落ちるかのように突っ込んでくる!

カメレオンスティングが効いていたから、今度はチャージして発射だ。

 

「はああっ!」

 

「カメレオンスティング!」

 

3本の光の屋は……発射されなかった。

しかし、その代わりに俺の体がホログラム状の半透明になる。

直後、イーグリードが俺の体をすり抜けてしまう。

 

「何!?」

 

この隙を逃してはいけない。

慌てて着地し、俺の方を振り向いたイーグリード目がけて……。

まずは右手のバスターで連射!

次に!

 

「スパイラルバスター!!」

 

「うぐっ!?」

 

〆の一撃!

 

「カメレオンスティング!」

 

「があああああああっ!!」

 

イーグリードは悲鳴を上げながら、膝をついた。

それを見たデゴナスガンテも、戦意を喪失したらしく、剣を鞘に収めて肩の力を抜いた。

 

「……これで、いいのです。私たちの目的も達成されました」

 

「……それは一体?」

 

「私とイーグリードの目的は1つ。この戦いでローズ姫様が作った艦隊そのものを潰えさせ、ワールドスリーの空中艦隊の戦力を大きく削ぐことでした。私が情報をあらかじめノイプロイセン政府とイレギュラーハンター本部に流して、そちら側の戦力を整えさせたのです」

 

デゴナスガンテの答えに、尋ねたシルキスさんだけでなく俺も驚愕する。

高度が下がったのでいつの間にか横山さんたちもデスログマーの甲板上に出ていたらしく、一緒に驚いている。

もちろん、ゼロや灯留手に陸戦隊の皆さん、そして……ルールアンとダークスワニィも驚いた。

 

「まさか、あなたみたいなお気楽極楽な奴が内通していたなんてね……」

 

「どういうつもりなの? よりにもよって、私の守護騎士として創造されたあなたが何で裏切るのよ!!」

 

ルールアンは怒りに震えながら呟き、ダークスワニィは怒りをむき出しにしながら吼える。

 

「騎士道に則る者として、貴女のような非道な方に忠誠を誓いきれなかった。ただ、それ故に裏切ったのであります。裏切りは恥にして罪なれど、邪悪その物に媚びへつらうよりはマシというもの! 私は騎士として、弱き者たちの盾となりたかったのです!!」

 

デゴナスガンテは、悲痛な表情で涙を零しながら吼える。

騎士として生きようとしたが故に、騎士として許されざる選択を選んだ騎士の悲哀が、そこにはあった。

ならば、俺は……。

 

「次は眼前にいる騎士の命を消させないために戦う!」

 

「その命諸共始末して差し上げますわ! 必殺! 暗黒の湖!!」

 

6本の鎖が鎌と一体となって稲妻をまとい、一斉に襲い掛かった!

襲い掛かる直前、ゼロが俺に話しかけてくる。

 

「エックス! フルチャージショットの同時発射だ!」

 

「了解! スパイラルバスタァーッ!!」

 

「クラッシュバスターッ!!」

 

「ラングヴァッフェンブルースト!」

 

「白鳥の湖!!」

 

6匹の電撃大蛇の内、俺とゼロのダブルショットが半分を破壊。

1匹を灯留手が胸部装甲が展開されてそこからせり出した砲身から破壊光線を発射して破壊。

残りの内片方はシルキスさんが白鳥の湖で破壊。

最後の1匹はどこかから飛んできたミサイルらしき物体が吹き飛ばした。

 

『おおーい、ロックマンエックスゥ! 無事か? 無ー事だよなぁ? 髪が焦げてる程度なら艦長には無事って報告するからな!』

 

いきなりゴルムートからの通信が入ってきた。

ということは……。

 

「今のミサイルはU-ヴァールハイが?」

 

ホーミング(ツィールズッフ)ロケット(ラケーテ)魚雷(トルペード)だ。空中でも水中でも発射できる魚雷であってミサイルではない』

 

ヴォルフラムさんが割って入って説明してくれた。

そろそろ爆炎が晴れるころだ……。

あくまでも鎖を破壊しただけなので、ダークスワニィ本体はさほどダメージを受けていない。

ルールアンは言わずもがな。

 

「……どこまでもしつこいわね!」

 

「ローズ姫! 諦めなさい! この戦いは日本だけでなく、ララマザーとウィンザーにも中継されています! 変身するところだってバッチリ中継されていたんですからね! 大人しく法の裁きを受けてください」

 

「……え? ララマザーとウィンザーにも中継してたの!?」

 

「はい」

 

今度はララマザーとウィンザーにもか。

用意がいいというか、なんというか。

でもどうやって異世界の国にも中継しているのかな?

まあ、今はそれどころではないけどね。

 

「うふふふふふふふふふふふふふふ……。なぁーんってこっとを……してくれるのよ!!」

 

「あー、あー、聞こえませーん。それはそうとエックス君。R.O.C.K-SETシステムの認証を!」

 

ダークスワニィの絶叫をさらっと無視していつものアレをシルキスさんを要請してきた。

しょうがないな……。

 

「了解」

 

「エックス君! R.O.C.K-SET.T.E.R.!!」

 

「システム・コンファーム!!」

 

俺が承認コードを叫んだ瞬間、シルキスさんの鎧の内、バイザーの額飾りと肩アーマー、左右一対の腰アーマーが外れた上で、シルキスさんの体に蒼く光る追加装甲が装着される。

その後、額飾りと肩アーマー、腰の左右一対のアーマーが再度装着された。

 

「恒例行事の時間がやってまいりました! そろそろこの大激戦も終わるようです!」

 

横山さんが定例行事のお知らせの如くリポートする。

俺も謎の安心感を感じている。

 

「またパワーアップイベントなのぉ……?(ナイトスワニィは原作終盤の手短なパワーアップイベントを経てダークスワニィを撃退しています) こぉーなったらぁ、私の新必殺技をお披露目してあげるわ! 必ぃぃっ殺ぅ!! 暗黒のぉ、大っ津ぅっ波ぃいいい!!!」

 

ダークスワニィが大音量で掛け声をあげ、それと同時に稲妻を放ちながら大回転。

おびただしい数の黒鳥が稲妻をまといながら、6匹の稲妻大蛇と共に飛来。

それを見たシルキスさんも大技の発動体制に入った。

 

「必ぃぃぃぃぃぃぃぃっっ殺っっ!! 白鳥のっ、大ぉっ津波いぃっっっ!!!」

 

光り輝きながらシルキスさんは回転。

それと同時に翼から無数の羽が放出されて、その全てが光の白鳥へと変化。

稲妻をまとう黒鳥の群れ目がけて突撃する。

激しい爆音と共に大技同士の激突は相殺という形で終わった。

これにはダークスワニィは茫然自失となり、代わりにルールアンが狼狽している。

 

「……嘘でしょ!? ローズ姫様が実際に試し撃ちした時には白鳥の大津波を超える威力を叩き出したのに!」

 

「うふふふふふふふふふふふふふふふ……あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは! どこまで私の邪魔をすればぁああああああああああっ!!! 暗黒のぉ、大っ津ぅっ波ぃいいい!!!」

 

ダークスワニィが再び大技を発動する。

そろそろ、アレをするタイミングかもしれない。

 

「エックス君、往きましょう!」

 

「うん!」

 

「「ダブルアタック・スタート!!」」

 

この戦いは今日、決着をつける!

俺とシルキスさんがみんなと一緒に!

 

「未来に届くほどの勢いで空を飛びましょう」

 

「一緒に手を繋ぎ、嵐を超えて行こう」

 

「明日は誰にも分かりません」

 

「だからときめくままに突き進む」

 

「「『Garnet Moon』!!!」」

 

俺とシルキスさんは互いを見詰め合い、そっと両手と両手をつなぐ。

そして光り輝きながら回転し、シルキスさんの翼から白鳥の大津波の時以上の数の羽が、蒼く光りながら舞い散る。

その全てが、俺のデフォルトの戦闘形態を模したアーマーに身を包んだ光の白鳥に変化!

口から大量のエネルギー弾を発射しながら一斉に突撃した!

 

「か、体が、私が、エーテルランドに送り返されていく!? 私が、私の体がぁぁぁぁぁぁぁ……!!」

 

「あり得ない! こんなのあり得ないわ! 暗黒の大津波を打ち破ってなお、まったく勢いが衰えないなんて! あり得ませぇぇぇぇぇぇぇんわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ルールアンがエーテルランドに強制送還され、ダークスワニィもまた、光の白鳥たちに吹き飛ばされてあさっての方向へと消えて行った。

…………。

 

「終わった……」

 

 

 

「……? た、戦い、は……?」

 

「イーグリード! 私の名を言うのです! 言えば元気が出ますよ!」

 

「……お前の名は、デゴナスガンテ。ジュエル魔獣で唯一、騎士の資格がある存在だ……」

 

「良かった……! エックス殿! 修理は上手くいったようです! イーグリードが元気になってくれました!」

 

その言葉に、俺たちは安どのため息をつく。

修理が間に合って良かった。

 

「俺はあの時、機能が停止したはずだ……」

 

「エックスがお前を修理してくれたのさ。昨日、お前の爪で首に穴が開いた俺のようにな」

 

「そうか……」

 

ゼロの説明を受けたイーグリードは、安心しつつもどこか寂しげな表情になる。

 

「イーグリード……。本当に、エックスへの嫉妬だけがワールドスリーに参加した理由だったのか……?」

 

「……エックスへの嫉妬でワールドスリーに協力したのは事実だ。だが、参加した理由は違う……。俺は……あの蜂起が起きる何週間も前に、偶然にも奴の計画を知った。だから、それを止めるために挑み、敗れたことで奴に従うと誓ってしまった。

 

 すぐにでも、あの婆さんかシグナスにチクってしまえばよかった。だが、それができなかった。それは、涙を流せるエックスと一緒に戦うことになるということだから……。エックスと共に戦うことは、嫉妬で凝り固まっていた俺の心その物が許してくれなかった……。

 

 馬鹿な話さ。エックスが偶然泣いていたのを見てしまい、ティルが死んでも泣くことができなかった俺はそれ以来エックスを激しく妬むようになった。その結果がこれさ……

 

後悔が滲み出た表情で語りだすイーグリード。

高度1500mの冷めた気温と風が、俺たちだけでなくイーグリードにも冷たくぶつかる。

 

「……馬鹿野郎が! ティルが今のお前を見たら、どんな気持ちになると思ってやがる!」

 

「そうだな……。間違いなく泣いて怒って、また大泣きした……だろうな……。……ゼロ!? お前もか!?」

 

「? どういう……! これは!?」

 

ゼロが絶句したので、俺たちもゼロの方を見る。

ゼロが……泣いていた!!

 

「俺まで、涙を!? だが一体何故? !? そういうお前だって!」

 

「…………! 俺も、泣いて、……いるのか?」

 

ゼロに続いてイーグリードまで……いったいどうして?

 

「ふっ……ふははははははは! そうか! そうだ間違いない! お前に修理されたから泣けるようになったんだ。俺とゼロの共通点の内の1つがそれだからな! 何てことだ。涙が流せるようになった途端にお目への嫉妬が消えて無くなってしまった……!

 

 だが……嫉妬の末に道を踏み外した代償は、払わなければならないようだ。エックス、ワールドスリーに参加した奴がたいていはどんな末路をたどるか、見ておくんだ」

 

そう言いながらイーグリードは立ち上がる。

数秒後、胸部の破損個所から爆発が起きた。

 

「「イーグリード!!」」

 

「これで、いいんだ……。もう……すぐ、ティルのところへ……逝ける……。今すぐデスログマーから離れるんだ。安心しろ。デスログマーの乗員は始末した後だ。今は自動操縦で動いている。今回の戦いは、フランスの一部の軍人と政治家もワールドスリーに協力している。

 

 国の安泰の保証と、ノイプロイセンの王制打倒を保証してもらうのと引き換えにな。だから、奴らにとって重要な施設にデスログマーを落とす。民間人がいないところだから安心しろ」

 

「……イーグリード…………。もう少し、もう少し加減できていれば……!」

 

「男のおしゃべりは、みっともないぜ……。ましてや、泣きべそかきながらじゃ尚更だ。それと……すまない、イレギュラーハンター・ロックマンエックス」

 

イーグリードは笑顔のまま、強がりを言う。

だけど……だけど!

 

「イーグリード……。俺は、お前に詫びねば……」

 

「謝ることなんか、無いさ。あの時、お前に頼り切ってティルが撃たれた時に駆けつけることができなかった俺に、お前を恨む資格なんかないさ。……ナイトスワニィ、あんたみたいな女いるあたり、エックスは果報者だよ」

 

ゼロの詫びの言葉をさえぎり、シルキスさんに対して軽口をたたく。

 

「イーグリードさん……」

 

ちょっと顔を赤くしているシルキスさんを笑顔で一瞥して、イーグリードは今度はデゴナスガンテに語りかける。

 

「デゴナスガンテ……。お前、これからどうする?」

 

「可能ならば、シルキス様とスワン先輩に仕えたいと思います。もちろん、シルキス様のご判断に身を委ねるつもりですが」

 

その言葉に安心したのか、イーグリードは最後に再び俺に語りかける。

全てを受け入れた、悟りの境地のような表情で。

 

「遠隔操作で落下場所を指定した。……現在、フュッセン上空か。後を追うにはうってつけの……場所、だな。ティルと俺が生きていた世界を、あの異常者から守ってくれよ……ゼロ、エックス」

 

「当り前だろうが……」

 

「あなたとティル、この大空に誓って」

 

ゼロと俺の言葉を聞いて、イーグリードは笑った。

優しい笑顔だった……。

 

「なら、安心だな……。先に逝ってるぜ!」

 

イーグリードは別れの言葉を遺して飛翔。

ある程度飛んだ後、爆発と共に落ちて逝った……。

 

「ば…………馬鹿野郎がぁああああああああ――――!!!」

 

直後、ゼロは涙を流しながら風の音を切り裂く絶叫を響かせた………………。

 

 

 

 

 

 

イーグリードは落ちていく。

大地ではなく、フォルッゲン湖の水面へと。

そのまま叩き付けられ、沈んでいく。

やがて、湖底へと着底していく直前、イーグリードはようやく再会した。

金属製の亡骸となった、ティルと……。

 

(ティル! やっと……やっと……また会えた!)

 

着底したイーグリードは、最後の力を振り絞って側に寄り添い、ティルを抱きしめる。

 

(すぐにお前の所に逝くからな……。愛してるぜ、ティル………………)

 

イーグリードは、満足したような笑顔で、ティルの亡骸を抱きしめながらフォルッゲン湖の湖底で散って逝った……。

 

 

 

 

 

次の日。

ミュンヘンの繁華街。

市内全域がお祭り騒ぎを通り越して、お祭りの真っ最中だった。

所々戦闘の傷跡が残っているけど、数人の軽症者が出ただけで、王国群にも市民にも死者が奇跡的に出なかったこの戦いでの完全勝利を祝して、みんながはしゃいでいる。

けれど、俺たちは……はしゃぐ気になれなかった。

市内の高そうなレストランのオープンテラス席に、俺とゼロと横山さんたち、ルナと灯留手が集まっていた。

ヴォルフラムさんとゴルムート、エルメントーラにティーゲルントさん、そしてデゴナスガンテも加わっている(デゴナスガンテはシルキスの判断で、彼女に忠誠を誓うことになった)。

俺とゼロと灯留手は明らかにリットル単位で入っているビール瓶、残りはジョッキを手にしている。

 

「天空の貴公子」

 

「イレギュラーハンターの鑑」

 

「「ストーム・イーグリードを弔って、乾杯」」

 

殆ど自棄酒の意味合いもあるせいか、みんな割と早い頻度で飲んでいる。

かくいう俺とゼロ、灯留手は度合いが突き抜けて酷く、既に数本を空にしたが。

 

「お代わり、お願いします」

 

「私も、瓶でお願いします」

 

灯留手は10本目を頼んでいる。

デゴナスガンテまでも瓶でのラッパ飲みにシフトしだした

それを尻目に、ゼロがふと呟く。

 

「ルールアンはエーテルランドに強制送還されたと考えていいとして、ダークスワニィが気がかりだな」

 

「満身創痍の上に表の後ろ盾を失った以上、表だって動くことはないでしょうが、少なくともしばらくすればまた暗躍しだすでしょう。ですが、いずれは裁きを受けさせるつもりです」

 

「そうしてもらえると助かるぜ。そうじゃないと、あいつが浮かばれない……」

 

シルキスさんの言葉に安心したのか、ゼロはテラスの方向を振り向いてまた飲み始める。

 

「イーグリードさんは、ティルさんに再会できたのでしょうか……?」

 

シルキスさんは、アルコールで顔を赤くしながらも不安げな表情になる。

多分、再会できたと思う。

何故かは分からないけど、そう確信している。

 

「きっとまた会えたよ。ティルが死んだ時と同じ空で散って逝けたんだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

WEAPON GET! 『ストームトルネード』!

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

地中海を構成する海域が一つ、エーゲ海に浮かぶギリシャ領、ロドス島。

ギリシャを代表する観光地であるこの島の近海に突如として建てられた海上研究所には黒い噂が付きまとっていた。

噂を懸念したギリシャ政府の要請で、俺は水の精霊と共に一路、ロドス島へと飛ぶ。

そこで、俺たち2人は随分と勝ち気な人魚と出会った……。

次回! 「両手には乱れ咲く蒼い花、眼前には蒼い海原」。

エーゲ海の海底という名の戦場を駆け巡って、精霊騎士が悪の芸術を圧して潰す!

 

 




オマケ:ボスキャラファイル



天空の貴公子 ストーム・イーグリード(イーグル)

イーグル型のレプリロイド。
空中艦隊を率いる元第7空挺部隊の元隊長で、その見た目とモチーフ通りのスピーディな空中戦を得意とする。
誇り高くもどことなくとっつき易い性格で口数もそれなりに多いが、親しい人物がいない時や感情が表に出ていない時では口数が少なくなる傾向があり、少々近寄りがたい雰囲気がある。
しかし、隊内ではそんな性質を理解されていたため、人望は非常に厚かった。
ゼロとは同期であり、訓練生だった頃の些細な理由での激しい衝突が縁で親友同士となる。
イレギュラーハンターになる以前からティルとは交際しており、実はお互いが知らないままハンターになり、訓練期間を終えてから2人揃ってハンターになっていたことに気付いた、という微笑ましい出来事もあった。
ゼロを交えての仲良しトリオは第17精鋭部隊の癒しとなっていたが、海外研修の際にティルが殉職し、精神的に弱ったためゼロより先に帰国。
ハイジャック事件解決の功績で第7空挺部隊隊長への栄転が決まるが、タイミングが悪く、ゼロとはすれ違いになってしまう。
ティルの死に関しては自分にも責任があると考えており、ゼロへの怨讐の感情は全く無かった。
彼女の死は泣きたくても泣けなかったこともあって大きなトラウマとなっており、それ故にエックスが涙を流せることを偶然知ってから強い嫉妬心を抱くようになる。
スティグマが裏で蜂起を企てていることを知った際も、エックスへの嫉妬から共闘を拒む感情が芽生えてしまい、無謀にも単騎で挑んでしまう。
死闘の末に圧倒的な力の前に敗れ、従属を余儀なくされてしまった。


宝魔の守護騎士 デゴナスガンテ

異世界の国家『ウィンザー』の王女、ローズが私的な目的のために子飼いの悪人に創造させた怪物『ジュエル魔獣』に分類される存在。
ジュエル魔獣のリーダーを補佐する者、として造られたため人型で高い知能と、数種類の宝石をモチーフとした戦闘的かつ美麗な外観を有している。
「ジュエル魔獣で唯一、騎士の資格がある存在」を自称しており、自称通り騎士道を貴ぶ騎士に相応しい性格をしている。
剣の腕も非常に高く、剣聖と讃えられるべきレベル。
大げさで芝居がかった言動や仕草に癒されていたイーグリードから妙な信頼を得ており、彼自身も正義観と誇り高さを兼ね備えたイーグリードを尊敬していた。
役割上、基本的にローズおよび、彼女が変身する『ダークスワニィ』の補佐が本来の役割だが、今回はローズの命令でワールドスリーに合流。
そのため、「命令だからスティグマに従っている」だけでありワールドスリーの思想には賛同しているわけではなく、むしろ嫌っている節すらある。
ダークスワニィに忠義を誓ってはいる一方で、彼女のあまりのエゴイスティックな性格と所業には実は内心嫌気がさしており、ある時我慢の限界を迎えてしまう。
イーグリードに心境を吐露し、彼の言葉に救われたことで、騎士道に反すると分かっていながら騎士道を貫徹するためにダークスワニィとワールドスリーの両方を裏切り、航空戦力に大打撃を与えるべく内通という手段を選んだ。





ボスキャラの元ネタ及びその他雑記

イーグリード
・ボンボン版とイレハン版をミックスし、更にアレンジを加える形でキャラクター像を作りました。
・アレンジにあたり、「エックスへの嫉妬の末に道を踏み外し、命を落とす」という流れが出来上がりました。岩本先生、ごめんなさい。
・ティルへの想いは岩本版以上に強調したつもり。文中で言っていた「指輪」とは当然婚約指輪です。

デゴナスガンテ
・『鬼武者2』のキャラクター、「ゴーガンダンテス」をモデルにしたキャラクター。以上!
・自己紹介の時の決め台詞も、実はゴーガンダンテスの名乗り口上のパロディ
・当初は別の名前で、末路も二転三転する内に今の名前に変更し、生き残る格好となりました。
・名前のアルファベット表記は「Degonasgante」。「Gogandantess(ゴーガンダンテス)」のアナグラム。

他のキャラクターや設定あれこれ
・灯留手は当初、前回でロックマンヴァルキューレに変身するはずだったのに、長丁場になりそうだったので今回に回しました。結果、今回が予想以上の長丁場になったけど……
・ヴォルフラム中佐とゴルムート大尉は『宇宙○艦ヤマ○2199』の「ヴォルフ・フラーケ○」と「ゴル・○イニ」がモデル。ゴルムート大尉のセリフは書いてて妙に楽しかった。
・エルメントーラ大佐のモデルは『機動○士ガ○ダム○GE』のナ○ーラ・○イナス。性格はモデルよりは強気にしてあります。ちなみに、『宇宙○艦ヤマ○』の登場人物、「ドメ○」の元ネタが砂漠の狐「ロンメル」だったことにヒントを得て作ったキャラクターでもあります。
・ウォーダステードの元ネタは『宇宙○賊キャ○テン○ーロック』に出てくる海賊戦艦「アル○ディア号」。どうして? と思う人は本文中に出てきたアルファベット表記を右から読んでみよう。
・ノイプロイセン軍人の名前は基本的に実在の名前をもじったりミックスした物です。
・ヴァイゼエンテは『超鋼戦紀キカイオー』の「ワイズダック」、ブルートザウガーとアウスガーベンヴォルフは『ボト○ズシリーズ』の「ブラッ○サッカー」と「スペ○ディングウルフ」、といった具合に名前はそれぞれ元ネタのそれを何とか独訳したものです。
・ロックマンヴァルキューレの装備や武器の名前は全部ドイツ語。さらに付け加えると『ボト○ズシリーズ』に出てくるロボット、「アーマードトルーパー」用の武器をたまに意訳交じりで独訳したり、時には別の単語を付け加えたものだったりします。



更なるオマケ:ディ・シュテルンターラー級の大雑把な諸元
排水量:膨大過ぎるため非公開(関係者曰く「50万トンで済むかどうか」)
全長:推定1315m(戦艦大和の約5倍。艦によって艦首形状が変わるため、艦体差が大きい)
全幅:タイタニック号の全長とほぼ同じ
全高:380m以上
機関:収束ソーラーモーターと水動力エンジン(詳細は非公開)のハイブリット
   空を飛ぶための反重力炉と慣性制御機関も搭載されているが機密のため詳細は不明
速力:水上90kt以上
   水中70kt以上
   空中1600kt以上  
   最大速力は機密のため非公開
航続距離:機関の構造上、なし
乗員:通常は1350名ほど(高度かつ的確に武装が自動化されているため)
   非戦闘員数万名の収容も可能
兵装:65口径46㎝二段式6連装(通称六文銭式)シュラーグカノーネ15基
   80口径15.5㎝二段式6連装(通称六文銭式)シュラーグカノーネ20基
   60口径120㎜二段式4連装(通称田の字式)高射用シュラーグカノーネ(CIWS)30基
   37㎜連装物電両用機関砲(CIWS)多数
   20㎜3連装物電両用機関砲(CIWS)多数
   多目的ホーミングロケット弾(対潜対機雷試用も可能)内蔵式と外付け式、いずれも多数
   艦首衝角
艦載機:公称では100機以上搭載可。実際はもっと多く搭載可能
艦内設備:艦内全域に冷暖房完備
     風呂は男湯、女湯、混浴の3種類
     ラムネ他フルーツジュースも製造可能なジュース製造機
     数種類のアイスクリームを作れるアイスクリーム製造機
     蔵書総数180万冊以上の図書室(現在時点で。書庫自体は400万冊以上を所蔵可能)
     大型のクリーニング施設
     スーパーセンター並みの規模の艦内PX(購買部)
     残りは「言ったところで信じてもらえないから」という理由で非公開





普通のあとがき
・今回は文字数がギリギリの状態に。おかげで時間がいつもよりかかり、8月中には投稿できなかった。次回は9月中に投稿したいところではあるが……。
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