ROCKMAN X : BOY OUT OF NIJIGEN DREAM - ANOTHER CRITICAL FIRST   作:あやか

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WARNING
今回もホモ・サピエンスの死亡描写があります。
その辺にご注意ください。


STAGE 7:両手には乱れ咲く蒼い花、眼前には蒼い海原

ギリシャ領、ロドス島

地中海の一角、エーゲ海にある歴史長きこの島は、今では観光地が多いギリシャでも有数の観光地だ。

数百年前に災害で遺失してしまったが、世界七不思議の1つがあった島でもある。

古き良き時代ある街並みとエーゲ海のコントラストが美しいが故に、些細な海洋汚染が命取りとなる。

重要な観光収入源であるこの島の景観を重要視したギリシャ政府は、俺たちイレギュラーハンター、というより俺個人に泣きついてきた。

 

「一介の小学生に泣きつくなんて……」

 

「世界征服を企む悪の軍団の最高幹部陣を壊滅状態にした、物凄く強い小学生だがな」

 

呆れて呟いていたら、アクエアルにカウンターを投げかけられた。

 

 

 

 

 

STAGE 7:両手には乱れ咲く蒼い花、眼前には蒼い海原

 

ステージボス:『深海の武装芸術家 ランチャー・ウミウシェーラ』 『セントエルモの黒い獣(シャドウファング) クラインハードリス・ヘイドリッカーズ 』

 

 

 

 

 

4月も既に下旬。

イレギュラーハンター本部での話。

第17精鋭部隊隊長用の執務室。

またもここに泊まり込む形になった俺は、朝食が届くまでの間、シルキスさんたちと話し込んでいた。

 

「今日の『日本憂国日報』の一面トップは『ノイプロイセン王国軍、三軍合同で日本に部隊を派遣。名目は友好の意の物理的表明と大使館警備』、ですね」

 

「随分と行動が速いですね。前もって打ち合わせはしていたのかもしれません」

 

シルキスさんが新聞を読んで、簡潔な感想を述べている。

デゴナスガンテがそれに相槌を打つ。

スワンがテレビのスイッチを入れたらニュース番組が流れ、チャット・ブラン発電所を破壊して不時着したデスログマーを第11調停部隊と第7空挺部隊が共同で回収しているニュースが数十秒流れた後に、画面が変わった。

普台埋立地(※このSSの世界観における中央防波堤埋立地のこと。内側と外側を合わせてこう呼び、現実より縦長。一応お台場の一部。ノイプロイセンの援助で作られた埋立地なのでこの名がついた)が映っている。

ノイプロイセンは成田と同じぐらいの大きさのあの埋立地に大使館を置いてあり、専用滑走路まで設置してある。

 

『こちら、港区普台埋立地に立地するノイプロイセン大使館前です。ノイプロイセン王国海軍遊撃試験艦隊旗艦、ディ・シュテルンターラーの艦内甲板から次々と空軍の機体が発艦し、大使館地内の滑走路へと向かっています。あ、陸軍の部隊なども降りてきています』

 

テレビではリポーターが言うように、ノイプロイセン大使館上空に滞空しているディ・シュテルンターラーから、部隊や機材、物資が次々と降りてくる。

画面にはU-ヴァールハイの姿も確認できる。

 

 

 

それから数分後。

話題は変わり。

 

「両国会談か……」

 

「ジュエル魔獣の黒幕が明かされた今、ララマザーとウィンザーが行動に出るのは当然です。当然ですが、私もそれに出席しなければなりません。ある程度片が付いたらそちらに駆けつけますが……」

 

「何か、問題でも?」

 

俺が首を傾げて数秒後、デゴナスガンテが理由を説明してくれた。

 

「スワン先輩がジュエル魔獣であることと、シルキス様がナイトスワニィに変身していることが物議を醸しだしているのです。それに、ダークスワニィ殿に純潔を散らされた一件も問題視されていまして……」

 

そういうことか。

あの時はシルキスさんが変身するところも中継されていた。

些細なことで騒ぐ奴らはどこにでもいる。

スワンの方も困惑を体の動きで表現している。

 

「しばらくの間は向こうに釘付けにされるのか……」

 

「数日の間ですから」

 

 

 

 

 

それからそれから。

時は経って今は学校。

そんな折に全校集会があった。

転入生と海外からの留学生が来たからだ。

 

『2人の転入生とノイプロイセンからの留学生が皆さんのクラスメートとなります。では、自己紹介をしてもらいましょう』

 

『い、1年生のアクエアル・アクアポルタムだ……』

 

『3年生の円井灯留手です』

 

『ノイプロイセンからの留学生で……4年生のエルメントーラ・アイクル・マルフリート・ロンメル……です……』

 

…………え!?

灯留手だけなら納得できる。

でもなんでアクエアルが転入してくるんだ?

なんでマルフレートが小学生として留学してくるんだ!?

当人だけでなく灯留手もかなり気まずい表情をしている。

……!

目が合ってしまった、アクエアルとマルフレートの2人と。

助けを求めるような表情をしているけど、今この状況では無理だよ……。

 

 

 

 

 

「肉体的には人間だけど、アクエアルちゃんは正しくは召喚術の影響で人間に近い実態を得た精霊なの。でも、そのせいで厄介なことが起きたわ。アクエアルちゃんが肉体を得てからの経年はたったの6年。実年齢は6歳ということになるから恵玖須ちゃんより年下。

 

 日本における行政や保護者が子供に教育を受けさせなければならない義務、いわゆる義務教育は年齢主義。御丁寧なことにアクエアルちゃんははジャストミートしてたの。そこでケイリーお婆ちゃんがあちこちに掛け合って、小学校教育から受けさせることが決定したのよ」

 

こっちに来てくれた灯留手が説明してくれる。

またあの人か……。

実年齢が下なせいか、灯留手はアクエアルを『ちゃん』付けで呼んでいる。

不安でいっぱいらしく、アクエアルは4年生の教室であるこっちに来ている。

そのついでとばかりにマルフレートもいるが、彼女は俺たちのクラスに入るそうだ。

 

「そういうことなんだ……。そういえば、マルフレートはどうして小学生として留学することになったの?」

 

「将官への昇進の条件として提示されたんです。出向もかねての9年間の留学を。その条件を飲んだんです。小学生としての留学は、私の学歴が原因です。

 

 ……小学3年の時のことです。話の種にするつもりでIQ測定を受けたら260ぐらいあって、そのせいで大学への飛び級進学を勧められたんです。少し前に軍人になるって目標を決めていたから指定校推薦でベルリン三軍士官大学に進学して……。

 

 私、時々口が悪くなることがあって、トラブルを何回も起こしていたんです。作戦遂行時にやり過ぎたことも1度や2度じゃなくて……今までは功績のおかげでお咎め無しで済んだのですが……。きっと、今回の留学は懲罰的な意味も強いと思います」

 

なるほど。

9年間っていうのは小学校の残りの3年間+中高6年間、ということか。

 

「あ、こっちにいた。アクアポルタムさん、教室に戻りますよー」

 

不意に、1年のクラスの内の1つの担任がこっちに来た。

どうやらアクエアルを探していたようだ。

それだけでなく、3年のクラスの担任までこっちに来た。

 

「2人を探しに来たんだろうな」

 

「何だかいきなり不安になりました」

 

 

 

 

 

授業と授業の合間の小休憩時間。

マークされているらしく、アクエアルと灯留手はこっちには来ていない。

マルフレートも男子たちに質問攻めを受けている。

 

「……やいと、座る席を間違えてるよ」

 

「わざと間違えたのよ」

 

「どうして?」

 

「逃げ出さないようにするため」

 

かくいう俺も、女子たちに囲まれて好き放題弄られている。

抵抗しようにも膝の上に座っているやいとに腕を掴まれているので払うこともできない。

結局、次の授業までこの状態は続くこととなった。

 

 

 

 

 

 

お昼時、学食。

俺たち4人は1つのテーブルに固まる格好になっている。

ここは学食なのでメニューは数種類あるが、何の偶然か4人そろって同じメニューと来ている。

 

「それで、授業の方はどうだった?」

 

「正直、辛かった」

 

あの後どうなったのか気になってアクエアルに聞いてみたら、案の定な答えが返ってきた。

相当に好奇の視線を向けられたはずだ。

 

「マルフレートの方もどこか辛そうだったけど……。灯留手の方は?」

 

「こっちもこっちで質問攻めにされちゃった」

 

質問の中には改造人間であることも含まれているのだろう。

表情から見て取れる。

それから十数分後、全員が食べ終わったあたりで、連絡が来たとかでこの場を離れていたメディが急いで戻ってきた。

 

「隊長。次の敵拠点が判明しました」

 

メディは端末を操作して、その拠点を預かる幹部たちの画像を表示した。

 

「ギリシャ領、ロドス島の近くにある海上研究所。責任者は元第六艦艇部隊隊長ランチャー・ウミウシェーラと、マールジェーマ王国の国王親衛隊の元副隊長クラインハードリス・ヘイドリッカーズの2人です」

 

 

 

 

 

ウォーダス・テードの艦橋。

事態が事態なので俺たちは早引けして、ここにいた。

 

「親衛隊副隊長……。どうにも面識がない気がする」

 

「トルブレヒトさんから聞いたところ、アクエアルさんが召喚された当初は別任務で本隊から離れたそうです。アクエアルさんが捕まって……その……にゃんにゃんされてた時は参加しなかったとか。

 

 その内本格的に仲間に愛想が尽きて、ヴァハが倒されてすぐに国外逃亡しています。その後はどうやったのか不明ですが、こっちの世界に流れ着き、異世界人極秘保護プログラムを受けて西島総合機械製販でサラリーマンをしていたそうです。

 

 入社数年でブルートザウガーの開発にも関わるなど非常に優秀な社員で、人当たりもかなり良かったのですが、ある時不正の濡れ衣を着せられた腹いせにブルートザウガーの試験モデルと会社所有の古い機械を盗んで姿を晦ましました」

 

アクエアルの疑問にメディが説明で答えてくれたが、一部がやっぱり気まずそうだ。

まあ、仕方ないよね。

 

「……エックス。その……」

 

「ごめん。ここに来るまでに全部思い出した」

 

そう答えた瞬間、アクエアルの顔が真っ赤になった。

気まずいな……。

 

「とりあえず、すぐにでもギリシャに向かいましょう!」

 

気まずい空気を払拭しようと、マルフレートがカラ元気を出している。

メディの言葉の意味を理解できていない灯留手だけがキョトンとしていた。

 

「大人になれば自然と意味が分かるから」

 

「恵玖須ちゃんは私と同い年なのに意味が分かってるじゃない」

 

 

 

それからそれから。

出発して既に1時間以上経過。

現在は高度10000m以上。

ウォーダス・テードは大変な巨体だから、音速を出すためにはかなりの高高度を飛ぶ必要がある。

地中海に到達したら着水して海上航行に入る。

 

「城戸さん。艦内に異常は?」

 

「追加乗員が艦内探検中にみんな道に迷って、陸戦隊が捜索に向かっています。それ以外はありません」

 

「艦内探検?」

 

「本艦はただでさえ巨大な上に圧縮空間も利用しているので艦内が非常に広大です。そのため配属されたら最初に艦内の間取りをある程度覚える必要があります。そのための艦内探検です」

 

なるほど。

そういえば、旧日本海軍でも大和と武蔵に配属された新しい乗員を対象とした艦内スタンプラリーをしていたって、ゼロから聞いたことがある。

 

「でもいつの間に?」

 

「今朝からです」

 

今朝からか。

暇なのかどうか分からないな。

 

 

 

 

 

更に時が過ぎ、地中海。

着実にロドス等にまで近づいている。

艦橋の窓越しに見る海原が綺麗だな。

そう思っていたら、通信室から連絡が来た。

 

『シリア空軍、イスラエル空軍、トルコ空軍から一斉に通信が来ました。「地中海に入った理由を教えて欲しい」とのことです』

 

「『ワールドスリー最高幹部の拠点の1つを発見し、真偽確認のため現在同施設の近くにあるギリシャ領ロドス島に移動中。ギリシャ政府の了承は得ている』と伝えてください」

 

「了解です」

 

数分後。

再び通信室から連絡が来た。

 

『三者からの返答です「ロックマンエックスの健闘と栄光を謹んで祈らせてもらう。通信終わり」だそうです』

 

「ありがとう。エジプト空軍からも同様の通信が来る可能性もあります。ギリシャ領海に入るまで引き続き警戒を」

 

 

 

 

 

時は戻りギリシャ領、ロドス島。

観光地なので両舷上陸許可を出したら、乗員たちは任務の合間にロドス島の街並みを見て楽しんでいる。

その一方、俺とアクエアル、城戸さんはリンドス町の小高い場所にあるアクロポリスから見える、沖合いに視線を集中させている。

 

「メディの報告だとあの海上研究所は、表向きは外資系企業が海洋清浄システムの実験目的で建造したとある。しかし、企業の名前が非公開。警備が異様に厳重で島との接触も皆無。だから島民が気味悪がり、次第に政府も無視できなくなっていった。

 

 それに加えて今月からワールドスリーが世界中で暴れているから、拠点の一つではないかとの噂までたった。噂を懸念して不安になった政府がハンター本部にSOSを打診してきたんだ。そこで、最高幹部の拠点を調査中だったゼロがついでで研究所を調査したころ……」

 

「噂が真実だった、ということね。どう攻める?」

 

「海の中から攻め込もう。ウォーダス・テードを囮にすれば戦力の大部分はそこに集中する。それに、ワールドスリーには潜水機能がある大型艦艇は少ない。ウミウシェーラが寝返る時に第6艦艇部隊から盗んだ数隻ぐらいだ」

 

アクエアルへの回答として具体案を出したところ、城戸さんがすぐに対応してくれる。

 

「各隊員に通達。総員、帰艦。これより艦長とアクエアルさんが海岸から敵拠点へ突入します。ウォーダス・テードは囮になって敵警備陣を引き付けます。繰り返します、囮になって敵警備陣を引き付けます」

 

 

 

約1時間後。

リンドス沖の海中。

俺とアクエアルは戦闘態勢に入って(俺は戦闘モードに移行済み。アクエアルも翠の布地と銀色の胸当てや手甲、額当てで構成された鎧を身にまとっている)いる。

そのままアクエアルが召喚したユニコーンに乗って海中を移動している。

途中、ウツボロスを初めとする水中用メカにロイドが海上で研究所に接近するウォーダス・テードの相手をするために移動しているのが見えた。

作戦はここまで一応成功。

それから数分後、ふと深海航行用の大型高速潜水艇が現れ、通信が入ってきた。

 

『追いついた! 追いついた―!』

 

「横山さん!?」

 

「ほら! ちゃんとここにいた!」

 

人魚……じゃなくて水中移動機能を強化した人魚型レプリロイドも目の前に出てきた。

ウェーブのかかった金髪ロングか……。

ストレートな銀髪ロングのアクエアルとは対照的だな。

首にチョーカーを巻いているけど、どこかメカメカしいな。

 

「あんたがロックマンエックスかい?」

 

「確かにそうだけど、君は?」

 

「マーティ。いつもはこの辺の海域をブラブラしているんだけどね」

 

『うっかり研究所に近づき過ぎて捕まりそうになったところを、調査に来ていた是魯君に助けられたそうです。で、偶然目にしたことを洗いざらい供述して今に至る、と。運良くロドス島海底探索番組の収録の予定があったんで一足先に待たせてもらいましたー』

 

なるほど……。

だからそんな大それた乗り物に乗っていたのか。

ん? 操船は誰がやってるの?

 

「誰が操船しているの?」

 

『ディレクターである俺の担当さ。昔バラエティ番組の企画で小型船舶免許を取得したんで、俺が操船しているのさ』

 

『ちなみにこの潜水艇は「ゼーヒュントヘン」。ノイプロイセン製の最新型潜水艇さ』

 

砂山さんと出月さんも案の定いた。

 

 

 

 

 

研究所内。

各所に水中移動エリアも存在する妙な構成となっている。

マーティは水陸両用らしく、下半身は人間と全く同じ状態に変形していた。

 

「視聴者の皆様、内部は全自動化されているようです。職員の姿があまり見当たりません」

 

横山さんが小声でリポートしている。

潜入しているのでそれを意識しているのだろうけど、TV中継している時点で無意味だと思う。

 

「水槽が多いわね」

 

「表向きは水質清浄研究所だから、形から入ったのかもしれない」

 

アクエアルの疑問に少しアバウトに答えながら、俺は内部を見渡す。

ふと、気配が生じた。

 

「チャージショット!」

 

向こうにある扉をチャージショットで破壊!

直後、見覚えのある人相の集団が慌ててこちらに攻撃してきた。

 

「畜生! 内通があったから用意しておいたってのになんでいきなりバレるんだ!?」

 

「あの時といい、今度といい! なんで妙に勘が冴えることがあるんだあの小僧は!」

 

武器は剣の他、最新の銃火器

そして恰好はいまどきの軍服とはだいぶ違う。

ひょっとして……。

 

「国王親衛隊!?」

 

「あの後何人か行方不明になったと聞いたが、どうやらクラインハードリスを介して今度はスティグマの下についたようだな」

 

アクエアルがこう言った以上、事実なのだろう。

 

 

 

 

 

「……あの小僧、一体どんな直感をしているんだ? 分厚い防音自動ドア越しに旧親衛隊の連中の存在に勘付くなんて、相変わらずなんて奴だ。……? こんな時に着信? ……ウミウシェーラか。どうした?」

 

『監視カメラから送信された映像、みたでしょ? 今すぐそっちにも戦闘態勢に入ってもらうから』

 

「……了解。サイドス溶液の用意を頼む」

 

『お任せあれ』

 

通話が終わり、その場にいた男は携帯の電源を切る。

そして、目の前にある黒いパワードスーツに視線を注ぐ。

 

「やはりスティグマさんとウミウシェーラ、自分自身以外で頼れるのはこいつだけか……。力を借りるぞ、黒い炎(シャッテンフラッケルン)。精霊をモノにできるかどうか、この後の戦いにかかっている……!」

 

 

 

 

 

「これで全部か……。アクエアルがいてくれた助かった」

 

「頼りにしてもらえたのなら光栄だ」

 

旧親衛隊の残党をアクエアルが水龍剣でまとめて斬り捨ててくれた。

正直、人間を攻撃する覚悟は既にできているのだけれど、周囲が気遣ってなるべく俺が手を汚さないように腐心している可能性を感じてしまう。

そのせいで、覚悟が鈍る時がある。

 

「……あんた、本当にあのロックマンエックス? なーんか締りがないってゆーか……」

 

「生憎、私のエックスはシリアルキラーじゃない。幻想を真実だと思わないことね」

 

マーティに対してアクエアルはどこか刺々しい態度を見せる。

何故だろう?

 

「いくらなんでも不自然過ぎる。こいつらの内の1人が内通云々言っていた。ならば気づかれずに私たちがあのルートで来ることを知らせた奴がいたはずだ。私たちの中に。

 

 砂山達はワールドスリーに仲間を殺されているから、その恨みがある以上、裏切るとは思えない。私とエックスは論外。だから……」

 

「流石にそれは飛躍しすぎだろ!?」

 

なるほど、疑っていたんだ。

それなら……。

 

「まったく! いきな……ひゃんっ!?」

 

「エックス!?」

 

マーティの頬を舐める。

……海水の味と混ざってるけど、この味は……。

 

「アクエアルの推測、当たりだよ。マーティから嘘をついた時の味がした」

 

「……そ、そんな特技があったのか?」

 

出月さんが仰天し、砂山さんと横山さんは絶句している。

そこまで驚くことかな? と思っていたらアクエアルから頭をべしべしはたかれた。

 

「どうしてそういう方式なんだ! どうして!」

 

「人間は健康状態や心境で皮膚上に滲み出る物質の構成が違ってくるんだ。だから、舌で舐め取ったそれをサーチして嘘をついているかどうかを調べたんだよ」

 

「マーティはレプリロイドだぞ!」

 

「マーティみたいに容姿が人間と遜色ないレベルになると皮膚の構造やら何やらが豚以上に人間に近くなるから、人間の時と同じ方法で嘘の見分けが可能になるんだ」

 

アクエアルは納得し切れていなさそうだけど、割り切ってはくれたようだ。

それを示すようにシャドーボクシングをしだす。

 

「……だからっていきなり舐めなくてもいいじゃん。……」

 

マーティもマーティで妙に様子がおかしい。

そう思っていたら通信が来た。

 

『艦長。各部署から攻撃許可の求める声が出ています。ここは許可を出すべきかと』

 

「艦の指揮は特例的にマルフレートに一任します。研究所には灯留手と陸戦隊を送るように。艦による直接攻撃は敵警備部隊と水中戦力にのみ行使するようマルフレートに伝えてください」

 

 

 

それからそれから。

襲い掛かる敵を適度に蹴散らして俺たちは奥へと進む。

そんな中、マーティは俺たちを不思議そうに見ていた。

 

「なあ。なんであたしを始末せずにまだ連れて歩いてるんだい? 内通者だよ?」

 

「ウミウシェーラは男女問わず気に入ったらコナをかけることで有名だったからね。大方それ絡みなんだろうなって……」

 

「……この首輪、見えるかい?」

 

「チョーカーじゃなかったの?」

 

「首輪だよ。GPS付きのね。どこに逃げても位置を割り出せる優れもの。これがある限りあたしはウミウシェーラから逃げられないのさ。外そうにもあたしの力じゃ無理さ」

 

なるほど。

文字通りというわけか。

ウミウシェーラめ!

 

「……外れればいいのだな?」

 

アクエアルはそう言った直後、水龍剣の刃をそっとマーティの首輪に当て、押し切りの要領で動かした。

それと同時に留め金にあたりそうな箇所が真っ二つになって、首輪はマーティの首から見事に外れた。

あまりのことに出月さんが変な大声を出したので、説明しておこう。

 

「すげー! どんな切れ味してるのそれ!?」

 

「水龍剣の刃は高い水圧その物だから、切断力が異常に高いんだよ」

 

マーティの方はキョトンとしている。

 

「これで、追われる心配もない。今すぐ逃げた方がいい」

 

「……最後までついてくよ。あのクソバカ軟体生物が死ぬとこ見ないと腹の虫が治まらないからね。ありがとな」

 

アクエアルに逃げるよう促されたけど、マーティは何かを決めたようだ。

 

 

 

 

 

研究所の更に奥深く。

休憩室らしく、自販機が数台用意されている。

 

「日本にあるのと余り変わらない品揃えだな。焼きおにぎりとホットドッグの自販機もあるけど。……カップじゃないうどんの自販機!?」

 

「よく見たら日本じゃめっきり減った『カップラーメン自販機』もありますよ。それどころか、お弁当とかハンバーガーみたいな絶滅同然の奴まで」

 

砂山さんと出月さんが物凄くもの珍しそうに自販機を見ている。

そういえば、どれも初めてみるタイプだ。

横山さんもはしゃいでいる。

 

「あ! トーストサンドイッチの自販機や、カレーライスのまでありますよ!」

 

しかし、なんでギリシャ領海のこんなところに日本のレアな自販機が大量に置いてあるのだろうか?

 

「あの時メディの説明で出ていた、『会社所有の古い機械』は恐らく、この部屋に並んでいる自販機かもしれない」

 

アクエアルの仮説に、俺は何となく納得していた。

それなら辻褄は合うな……。

 

 

 

 

 

それから数分。

俺たちは更に奥深くへと。

その間に城戸さんから研究所制圧完了の報告を受けたが、あの2人は見つからなかった。

となると、もっと奥か。

最深部へのルートは二つ。

内部の通路を通るルートと、水槽から直接殴り込むルート。

陸戦部隊と一緒のルートで入って来た灯留手と合流後、俺とアクエアル、マーティは横山さんたちの守りを灯留手に任せ、水槽を通るルートに入った。

道中、ウツボロスの襲撃を受けつつも受け流し、さらに奥へと。

そして、最深部へとたどり着く。

窓越しに横山さんたちの姿が見えるな。

そう思っていた直後、不穏な2つの影が目の前に現れた。

片方の黒いパワードスーツは、恐らく盗まれた試験モデル。

そしてもう片方はウミウシェーラ!

 

「よーこそー! 地中海基地の最深部へ! 『深海の武装芸術家 ランチャーウミウシェーラ』と!」

 

「『セントエルモの黒い獣(シャドウファング) クラインハードリス・ヘイドリッカーズ 』が歓迎しよう!」

 

パワードスーツに包まれて表情が読み取れないクラインハードリスとは対照的に、ウミウシェーラは表情豊かにまくしたてそうな勢いだ。

 

「ウミウシェーラ! 何故スティグマに与した!?」

 

「私は戦闘時の破壊でアートを描くアーティストなのよ、エックスちゃん。でもね、長いこと周りは全っ然理解してくれなかったのよ~」

 

「スティグマがそれを理解してくれたというのか?」

 

「Yes! 私みたいに理解されにくい者たちがちゃんと理解される世界を、私たち自身がスティグマさんと一緒に作る。それがワールドスリーの戦う意味なのよぉ!」

 

「イレギュラーに劣る手段を使っておいて!」

 

「……私の芸術的手段をそんな風に評さないでちょうだい!」

 

瞬時に激昂するウミウシェーラ。

それをクラインハードリスが制した。

 

「この戦いに、俺が手にしたいものが、アクエアルが掴めるかどうかがかかっている。死んでもらうぞ! ロックマンエックス!」

 

「死ぬのは貴様とウミウシェーラだ!」

 

「……そうだ、それだ! そんなあなたを屈服させたい! 誰の力も借りず、俺1人の力で! あなたに魅入られた日からの悲願! そんな気持ちを込めたホイレンフレーテの一撃を送ろう!」

 

クラインハードリスはそう叫んだ直後、右手に持っている大砲を発射!

エネルギー弾が発射されるが、アクエアルは紙一重で避ける。

アクエアルが避けた直後、エネルギー弾は溶けるように消えた。

 

「やはりこっちの攻撃にも影響が出るか。まあ、仕方あるまい」

 

「エックスちゃんたちに説明しとくけど、この水槽の水は『サイドス溶液』っていう特殊な液体に変換済みなのよん。サイドス溶液はエネルギー弾を大幅に減衰させる作用があるから、エックスちゃんのバスターでまともに戦えるかどうか」

 

……厄介だな。

だが、もう引くわけにはいかない。

 

「それで負けるつもりはない!」

 

「エックスは最後は私と一緒に勝つ! それだけだ!」

 

俺に続いて、アクエアルが啖呵を切ってくれた

こういう時はやっぱり頼もしいな。

 

「カッコつけが決まってるじゃなぁ~い。それはそうと……どうやったのか分からないけど、マーティちゃんにプレゼントした首輪が外れてるようね。スーパーレアな子だからオス簡単には壊れないのをチョイスしたのに!」

 

スーパーレア?

どういう意味だ?

それが気になった瞬間、マーティの怒号が耳元に聞こえた。

 

「うるさい! 黙りな!」

 

「誰が黙るもんですか。せっかくだから教えてあげるわ。マーティちゃんはね、テストモデルだったのよ。生殖機能、分かり易く言えば人間の子供を妊娠・出産できる機能を持ってるのよん!

 

 ちょーどエックスちゃんが3歳か2歳ぐらいの頃に作られたから、今は6歳ぐらいかしら。機能そのものは作った研究所のオリジナルじゃなくて、違うとこからの提供な上、出所自体は極秘情報扱いで最後まで分からなかったけど。

 

 研究所の方がミレニアムの買収を蹴って少ししてから事故で潰れちゃってから行方不明になってたんだけど、遺された資料を見て一目ぼれして以来、ず~っと捜してたんだわさ!

 

 んで、先月頃によーやく見つけてゲットしたってわけ! 聞かれる前に答えとくけど、世の中には人間に自分たちの子孫を産ませることができる化け物ってのが銀鬼以外にも結構いるの。人間と全く同じ生殖機能を持つマーティちゃんもそいつらの子供を産むことができる!

 

 素晴らしいじゃない! この事実は私の芸術の視野を広めてくれたわん! 命の破壊と誕生! 破壊のアーティストである私が人ならざる命の誕生に立ち会い、それによってよりセンスを深めるのだから!!!」

 

狂っている!

そんなことのためにマーティにあんな首輪をつけたのか!

 

「貴様はイレギュラーだ! VAVAとは違って正真正銘のイレギュラーだ!」

 

俺の怒りの絶叫に対するウミウシェーラとクラインハードリスの答えは、ミサイルだった。

俺たちは慌てて回避。

 

「あ! マーティ!?」

 

マーティを忘れていた!

 

「何とか回避したよ!」

 

それを聞いて安心した。

それじゃ気を取り直して。

 

「スパイラルバスター!」

 

サイドス溶液で減衰するなら、減衰しきれない量のエネルギー弾を撃ち込めばいい。

流石にすんでで避けられたが、ウミウシェーラとクラインハードリスを焦らせるには十分な威力を発揮したようだ。

 

「このシャッテンフラッケルンの装甲でも無事じゃすまなさそうだな」

 

「実際、余波だけでアザラクちゃんとローゼさんをダウンさせたぐらいだからね。だからこっちもチョット趣向を凝らして……エクセレント!」

 

ウミウシェーラが回転しだし、巨大な渦潮が発生。

引き寄せられそうになるが、アクエアルが水流の壁を発生させて渦潮の引き寄せる力から俺を守ってくれた。

しかし、少し距離を置いていたマーティが引き寄せられてしまう!

 

「きゃぁー!?」

「かかったわねぇ~ん!」

引き寄せられたマーティを、ウミウシェーラはボディのヒレでつつみ込んだ!

 

「素晴らしい肌触り! ついでにエネルギーを失敬!」

「ぎゃー! 離せー!」

 

助けないと!

駆け付けようとする俺の目の前にクラインハードリスが立ちはだかったが、アクエアルが足止めしてくれている。

今の内にダッシュながら武器セレクト。

エネルギー弾でも減衰しそうにないので意表を突こう。

ダッシュが終わる前にジャンプして肉薄!

 

「ローリングシールド!」

 

「あっらぁーん!?」

 

思っていた以上に効いた。

エネルギー不足になって動きが鈍くなったマーティをキャッチ。

間に合ってよかった。

 

「あ、ありがと……」

 

「あの2人は俺とアクエアルが倒す。だから君は逃げた方がいい」

 

「あんたがいるから安心して見物できるよ」

 

やれやれ。

存外気が強いな。

ローリングシールドが思いの外効いたのでローリングシールドをメインにして戦うか。

一方、アクエアルは精霊の力を存分に発揮して、クラインハードリス相手に有利に進んでいる。

 

「シャッテンフラッケルンの理論上はウォーターカッターにも耐えるプラモドキ装甲に傷をつけるとは……!」

 

「ウォーターカッター以上の水圧で切り裂くのが水龍剣だ」

 

「……そうらしいな。だが、このシュニッタ―クーフースはウォーターカッターをも弾く!」

 

確かに、装甲のあちこちに傷はついているけど、左手の大型クローは傷一つついていない。

それに気づいた瞬間、大きな音がしだした。

何事かと思っていたらいきなり水位が下がりだす。

1分ほどで完全にサイドス溶液が引いた。

 

「え? ええー!?」

 

何事かとウミウシェーラは驚愕。

クラインハードリスも鍔迫り合いをやめて距離を取ってから仰天している。

 

『ウォーダス・テードより艦長へ。敵海上戦力の殲滅と研究所占拠を完了。陸戦隊に中央制御室のコンピューターを操作させてサイドス溶液の排水を行いました』

 

「了解。後はこっちに任せてくれ。ウミウシェーラ! クラインハードリス! 俺たち以外の戦力を甘く見ていたようだな。この研究所はもうお前たちだけだ!」

 

「……お前たちだけが有利になったと思うなよ! ライエンフォイヤートリラープファイフで目に物見せてやる!」

 

そう叫ぶと、クラインハードリスのパワードスーツの胸部に仕込まれた武装から大量のエネルギー弾が発射された。

機銃を内蔵していたとは。

 

「ブルートザウガーの性能試験用強化モデルだ! 積んでる武器もとっておきの逸品だ! デストルクトフォーゲルのミサイルをもう一度披露してやるぞ!」

 

今度はミサイルか!

しかもウミウシェーラまでまたミサイルを発射した!

 

「すばらしい新世界へ!」

 

殆ど乱射状態であり、この場と灯留手たちのいる部屋を隔てる強化ガラスも破壊した。

咄嗟に灯留手が盾になったので、横山さんたちは無事のようだけど。

 

「なんなんですか! あの変な女! 滅っ茶苦茶です!」

 

横山さんは完全に熱くなって轟々たる非難をウミウシェーラに浴びせている。

ウミウシェーラの方はどこ吹く風だったが。

 

「手数の多さは戦いの基本でぇ~っす!」

 

しつこいったらありゃしない!

チャージしてから……。

アルマージ、力を貸してくれ!

 

「ローリングシールド!」

 

俺の全身を球状のエネルギーシールドが覆う。

ミサイルの雨をエネルギーシールドで露払いしながら突撃。

そのままウミウシェーラにダッシュ頭突き!

 

「~~~~~~~~~!?」

 

「……ぐっ!」

 

ウミウシェーラは声にならない呻き声を挙げている。

こっちは……流石にエネルギーシールドが霧散してしまった。

 

「貴様! ウミウシェーラを!」

 

クラインハードリスが激高しながら大型クローを振り下ろしてきた!

大分違うけど真剣白刃取りの要領で掴む!

 

「いつもそうだ! 好事魔が多しと言いたげに誰かが邪魔をする! 俺の親といい、会社のかつての上司共といい、レオルギスと言い、貴様といい! 貴様があの時すぐにあの国からいなくなれば、俺はアクエアルをモノにできたのに!」

 

クラインハードリスの絶叫に合わせるように、機銃から放たれたエネルギー弾が俺の視界を閃光で包む。

ボディパーツのおかげでそこまでダメージは受けないが、流石に連続で食らうとキツイ。

 

「いい加減にしな!」

 

「な!?」

 

いつの間にか近づいていたマーティがクラインハードリスのパワードスーツに飛び蹴りを入れた。

 

「お前もか! 魚介類めが! ぬあー!!」

 

「うわ!?」

 

左腕を俺ごと振り回し、クラインハードリスはマーティを弾き飛ばした。

 

「あいだっ!?」

 

「死ね! 死ね! 死ねって言っているだろうがぁーっ!! 実体弾発射!」

 

クラインハードリスの戦車砲から実体弾が発射され……。

 

「! マーティ!!」

 

実体弾がマーティの脇腹を粉砕し、その余波で左腕まで吹き飛ばした!

 

「……!」

 

そのままマーティは倒れてしまう。

それを見て、俺は瞬間的に激高した。

 

「チャージショット!」

 

「ぬお!?」

 

チャージショットを至近距離で発射!

怯ませることには成功した。

直後、クラインハードリスが背中から斬られる。。

さっきまでウミウシェーラの相手をしていたアクエアルが水龍剣で斬ったのだ。

 

「今の内にマーティを砂山達のところに!」

 

「了解!」

 

大急ぎでマーティを回収し、ダッシュで横山さんたちのところへ運んだ。

 

「どうして俺を助けようとして!」

 

「言ってくれる……じゃない……。魔性の坊やのくせに……さ……」

 

「年下に坊や呼ばわりされて喜ぶ趣味はしていないんだ」

 

俺の反論に瀕死の状態ながらもふくれっ面になるマーティ。

やれやれ、意地っ張りというか……。

砂山さんに託して急いでアクエアルの援護に向かわないと。

 

「マーティを頼みます」

 

「任せてくれ。それはそうとヴァルキューレの嬢ちゃん、アレを恵玖須に!」

 

砂山さんに促され、灯留手はアレを……!

 

「恵玖須ちゃん、コレを!」

 

紫炎を俺に手渡してきた!

 

「いつの間に!?」

 

「何かあった時のためって、メディさんがハンター本部の執務室から持ち出して用意してたの」

 

全く、メディったら……。

礼を言う前に注意しておかないと。

そう思いつつも、俺はヒルデが掴んでいる鞘から紫炎を抜き取った。

 

 

 

「何故だ! 何故だ! 何故なんだ! あなたはどうしてあの小僧に入れ込む!? あなたを置いていなくなったあの小僧に!」

 

「エックスがいたからこそ私は心をヴァハに捧げずに済んだ! ヴァハを倒すことができた! そして、この肉体を失うことなく生きる道を手に入れた!! お前は私をモノにしたいようだが、それ決してかなわない! 私は既にエックスの物だ!」

 

アクエアルの咆哮と共に、水龍剣の刃がクラインハードリスの右腕をパワードスーツの装甲ごと刺し貫く。

その隙を突くように、ウミウシェーラが後ろからジャンピングアタックで襲い掛かる。

 

「隙有りよ~ん!」

 

「ヤエー!」

 

その直前、エックスの掛け声と共に、ウミウシェーラの胸板に一閃が走った。

 

 

 

「そ、それは…………アルマージの日本刀!」

 

「紫炎は妖刀。レプリロイドをも切り裂いて刃こぼれ一つしないのはアルマージが自ら証明…………してくれた! 大般涅槃(マハーパリニルヴァーナ)!!」

 

仏教用語を叫びながら、俺はウミウシェーラの胸板を紫炎で刺し貫いた!

驚愕の表情のままウミウシェーラが倒れた直後、俺は次にクラインハードリスに斬りかかる!

紫炎は刃こぼれ一つせず、パワードスーツの顔面を真っ二つに切り裂いた。

 

「シャ、シャッテンフラッケルンのメインカメラに異常が……!」

 

クラインハードリスがパニックに陥る。

その隙を突くようにアクエアルが話しかけてきた。

 

「エックス。脳に直接響くような声が聞こえた。『要請コードをお伝えします』と」

 

「決着がつく合図だよ、それは」

 

「それなら……。認証コードを!」

 

「御安い御用で!」

 

「頼むぞ! エックス! R.O.C.K-SET.T.E.R!!」

 

頭の中に要請コード確認の音声ガイダンスが流れた。

いつものように、承認あるのみ!

 

「システム・コンファーム!!」

 

アクエアルの体に、蒼く光る追加装甲が展開される。

上半身は手甲や胸当てがあるせいかそれをよりガッチリと固める感じの意匠に。

下半身は足回りが少々重厚そうに、アソコの部分はシャーロッテさんとシルキスさんの時同様に白い半ズボン状。

そして、額当ての羽飾りと干渉しないようにバイザーが装着された。

 

「本で読みかじった程度の技だが……。新撰組副長発祥! 平突き!!」

 

アクエアルはクラインハードリスに対し、刃を水平にしてから水龍剣を突き刺した!

腹部を易々と貫いただけでなく激し過ぎる勢いはクラインハードリスを吹き飛ばす。

だけど、俺たちには分かる。

クラインハードリスも、ウミウシェーラもまだ生きていると!

ウミウシェーラと、ヘルメットを外してようやく素顔を晒したクラインハードリスはまだ戦う気だ。

 

「まだよん! まだまだ私たちは元気よん!」

 

「戦いは……これからだ!」

 

悪いけど、戦いはもうすぐ潮時だ!

 

「エックス……。これ以上奴らに付き合う気にはなれない!」

 

「奇遇だね! 俺もだよ!」

 

「「ダブルアタック・スタート!!」」

 

一瞬、俺たちの心に水の一滴が落ちる音が聞こえた。

それが最後の一撃の合図だと、感覚でわかる!

 

「お前が祈れば、不思議なことに皆は立ち上がる」

 

「みんなは君のために、素敵な君のままでと祈る」

 

「命の火があるから私達は行く」

 

「この星が目覚めたから明日(あす)へ」

 

「「『De Javu』!!!」」

 

俺たちの足元に、水の一滴が水面に落ちる音を連れて光の波紋が無数に発生する。

波紋は消えることなく、1つ1つが光のチャクラムとなって浮かび上がり、その全てがウミウシェーラとクラインハードリス目がけて突撃し、肉体を切り裂きながら突き刺さった!

 

「き、綺麗……。とっても……美しい。なんて素晴らしいの! これが私の武装芸術の理想形よ! あなたたちのことが羨ましいけど、それ以上に愛おしいわん! こんなに! こんなに美しく敵を、私達を倒せるんですもの!」

 

「お、俺は……まだ終わる気はない! まだあの世に行く気はない! み、認められるか! 精霊を! アクエアルを自分の物にできないまま死ぬなんて! 俺は……! 俺は、ただ……アクエアルそのものが欲しかったのに……!!」

 

「芸術は…………爆発なのです!!」

 

急所や頭部に光のチャクラムが突き刺さったクラインハードリスは無念のまま事切れ、全身に光のチャクラムが突き刺さったウミウシェーラは歓喜しながら爆発四散した。

やれやれ……。

今回のも迷惑な連中だったな。

 

 

 

 

 

ウォーダス・テードの医務室。

人間を対象とした医療行為の他、レプリロイド修理用の設備も用意された便利な部屋だ。

幸い、資材も大量に用意してあったのでマーティの修理も迅速かつ簡単に行えた。

 

「修理完了。動ける?」

 

「ああ……。でも驚いたよ。前より体が軽い感じ。……ウミウシェーラは、死んだんだよね?」

 

「確実に死んだ。爆発して砕け散ったところは君も見ただろ」

 

俺の言葉にホッとしたらしい。

マーティは安堵の余り気づかない内に嬉し泣きを始めていた。

 

「……え? あたし……泣いてる!?」

 

「これで3件目。恵玖須ちゃんに修理されたレプリロイドは涙が流れるようになるのは確定事項みたいね」

 

そうだな……。

いずれにせよ、声で今回は一件落着だ。

 

「? あの自販機、確か研究所で同じタイプのを見た気がするんだけど」

 

「ああ。盗品だったから所有権がある会社に問い合わせたら、『回収して届けてください』て回答が返ってきたんだ。だから全部を艦内の各所に置いてある」

 

「……そう、なんだ……。ありがとな、本当に重ね重ね」

 

「助けたいから助けただけさ。……どうして抱き着くの?」

 

何故かマーティはいきなり抱きついてきた。

 

「いきなりどうしたの?」

 

「惚れられるようなことしといて、その言い草はないよ……」

 

そんなことを言われても……。

どうすればいいかと困っていたら、更にアクエアルにまで抱き着かれた。

 

「アクエアルまで!」

 

「自覚があるくせにどうしてお前はそうなんだ……! 魅入られた側の身にもなってくれ」

 

「……参ったな。これじゃ8股に増えた、とか騒がれるのは確実だね。付き合う気は無いのに」

 

思わず困惑の余り呟いてしまう。

そうしたら、室内にいた城戸さんとマルフレートに睨まれ、マーティとアクエアルにステレオで怒鳴られた。

 

「「エックス!」」

 

「恵玖須ちゃん、昔からこの手のトラブルが絶えないよね」

 

灯留手も呆れている。

助けて欲しいけど、目が「嫌」ってハッキリっと即答している。

どうしたものか……。

 

 

 

 

 

数時間後。

ロドス町の眺めのいい某所。

島を挙げての宴会に招待されたので、2度目の両舷上陸を許可し、総出で島民の皆さんの厚意に甘えることにした。

 

「お祭り騒ぎです。驚くことに島全体がこの状態です。ムサカが美味しー!」

 

横山さんのみならず、砂山さんと出月さんも中継と並行して料理にありついている。

城戸さんとマルフレートもほろ酔い気分だ。

灯留手は……流石にギリシャは飲酒に年齢制限がある(飲酒に年齢制限を課していないノイプロイセンの方が珍しいのだが)ため、2人をちょっと羨ましそうな顔で見ていた。

 

「どうしたんだい? どっか複雑そうな顔してさ」

 

「マーティ……。みんな、思い思いに楽しんでいるなって、そう思っただけだよ」

 

気が付いたら、マーティがすぐ隣に寄り添っていた。

遅れてなるものかと、アクエアルまで。

どうしたものかと何となく振り向いたら、当然海が見えた。

日没前だから、空と海はまだまだ蒼い。

綺麗だな、と思って見詰めつつも、自然と両手はアクエアルとマーティーを抱き寄せてしまう。

驚きつつも、2人ともどこか満更でもなさそうだ。

 

「……。そんなところが本当に油断ならないんだよ、アンタは……」

 

「せめて、断りぐらい入れて欲しい……」

 

……。

2人が蕩けている間、もう少しだけ海を眺めていよう。

両手に華、目の前には海原。

絶景、かな。

 

 

 

 

 

 

 

 

WEAPON GET! 『ホーミングトーピード』!

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

台湾自由民国南部に位置する、台湾第2の都市、高雄(コーヒョン)

ゴールデンウィークということもあってか、俺は家族と一緒に、その街で建設されたばかりの超高層タワーに招待された。

楽しいことと刺激に満ちたタワーではしゃぐ一方、俺は妙な気配を感じとる。

そして気配の主たちが牙を剥いた直後、俺と姉さんの2人が立ち向かった

次回! 「あの姉弟に祝福を、姉弟の総ての敵に滅亡を」。

超高層タワーを舞台に、優し過ぎる魔法少女が悪の熱情を乱れ撃って叩き潰す!

 

 




オマケ:ボスキャラファイル



深海の武装芸術家 ランチャー・ウミウシェーラ

ウミウシ型の元特A級ハンター。
元第6艦艇部隊隊長であり、手数と知恵でのし上がった叩き上げ。
しかし経歴に反して本人は芸術家肌であり、作戦や自分の戦いに美を求め、美しく戦うことが大好き。
性格は陽気で社交的だが特異な美意識を自分の周りの人間に理解してもらえず、それに対する鬱屈を抱え込む内に人間を守り奉仕する自分の立場を疑問視するようになる。
結果、スティグマにその美意識を理解してもらえた嬉しさから彼の下につくことを選ぶ。
自分の心を射抜いた者は男女不問という性癖を持っており、勝気だが乙女心溢れるなマーティや、優し過ぎる故に戦う覚悟がありながらも苦悩し続けるエックスをかなり前から虎視眈々と狙っていた。



セントエルモの黒い野獣(シャドウファング) クラインハードリス・ヘイドリッカーズ

マールジェーマ王国国王親衛隊元副隊長で、「親衛隊最強の男」「親衛隊で一番危険な男」「親衛隊で唯一まともな男」の異名を持つ猛者。
剃刀の如き鋭利な視線と黒髪が特徴の美丈夫だが、信頼できるかどうかがに最も重点を置く男であり、例え一度忠誠を誓っても信頼に値しなくなったと判断すればすぐに軽視する。
これは幼少時、平民との友達付き合いを快く思わなかった両親に騙され自らの手で平民の友人たちを全員殺害させられたことによって性格が屈折したため。
その後、復讐のため舞踏会の際に王の目の前で自殺騒ぎ起こして動機を吐露し、両親を死刑に追い込んだ。
刑の執行で両親が死んだ後、幼くして莫大な財産を相続している。
親衛隊の例に漏れず女性問題を起こしっ放しだったが、抱く時は必ず対価を払っていたので関係を持った女性たちからの評価は意外と良かった。
主君がアクエアルに敗れると、元々軽蔑していたこともあり財産を持ってさっさと次元をまたいで逃亡。
その後はどういう訳か作中世界の大企業でサラリーマンとして静かに豊かに思うままに生きていた。が、職場の不正行為の濡れ衣を着せられ、過去の経験がフラッシュバックし、発作的に激昂して会社の試作品と、会社所有のレア自販機数点を盗んで姿をくらました(濡れ衣自体は直後に晴れた)。
作中では会社の試作品でもある、ブルートザウガー過剰性能測定試験モデル『黒い炎(シャッテンフラッケルン)』を装着して戦っていた。
ちなみに、レア自販機まで盗んだのは会社への報復と同時に、個人的に欲しかったからでもある。
女性としてのアクエアルに魅入られており、彼女だけは自分で独占したいという夢を密かに抱いていた。





ボスキャラの元ネタ及びその他雑記

ウミウシェーラ
・オクトパルドに代わる海系ボスとして考案。セリフは書いてて楽しかった。
・性格はイレハン版オクトパルドをベースにしています。イレハン版は岩本版より個性的だったので。
・キャラクターコンセプトは「文系版+悪の百目○里香」(『地球防衛○業ダイ・○ード』に出てくる天才少女科学者)! あの手の倫理が欠けてるっぽいキャラは案外ネタにしやすい。

クラインハードリス
・PCゲーム版『精霊騎士アクエアル』で新たに設定された現況、レオルギスのキャラクター像がつかめなかった(PCゲーム版を買おうにも見つからなかった)ため、代役として考案。
・名前は前のナチス高官として悪名高いラインハルト・ハイドリヒと、『青の騎士ベ○ゼ○ガ物語』の初代大ボス、ク○ス・カー○の名前を混ぜ合わせたもの。
・シャッテンフラッケルンの当て字と武装の構成も、ク○スが登場していた「シャ○ウフレ○」そのまんま。ただ、ドリルは搭載位置が分からなかったので未実装に。
・シャッテンフラッケルンという名前自体、「シャ○ウフレ○」のドイツ語直訳。

他のキャラクターや設定あれこれ
・マーティの登場の仕方や立ち位置は岩本版から大幅にアレンジ。例の『あの機能』の出所は当然エックスです。
・本作オリジナル設定である、『精霊騎士アクエアル』の舞台となる国の名前はラテン語で『宝石の海』。なんでオリジナルで付けたかというと、原作中に国名を確認できなかったので。
・これまた本作オリジナル設定であるアクエアルの名字は「ウォーターゲート」のラテン語直訳。言うまでもなくあのアメリカ政治史に残る大スキャンダルから取りました。
・城戸舟子はロックマンエグゼ4に出てきた同名のキャラが元ネタ。
・嘘かどうをエックスが確かめるあのシーンは声優ネタ(元ネタとなったキャラクターの中の人も櫻井さんなのだ)。ただ、皮膚の表層上にある物質の構成云々は『絶対○憐チル○レン』のあるキャラが主人公の一人の健康状態を測るシーンが由来。
・エックスが紫炎でウミウシェーラを刺すシーンで叫んだ四字熟語は、正しくは「だいはつねはん」と読む。ルビとして降られていた「マハーパリニルヴァーナ」の和訳であり、意味はいずれも『仏陀入滅=仏教の開祖・ゴータマ・シッダールタの死』。





普通のあとがき
・前回がいつも以上の大容量になったせいか、今回は自然といつもより字数が控えめに。
・結局前回から1か月以上経過してやった投稿できた。なんで執筆ペースが短くならないのかな……?
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