ROCKMAN X : BOY OUT OF NIJIGEN DREAM - ANOTHER CRITICAL FIRST   作:あやか

9 / 10
WARNING!
今回の注意事項!

・エックスが微妙にスケベになっています

・エックス大激怒

・声優ネタ有り

以上の点にご注意ください


STAGE 8:あの姉弟に祝福を、姉弟の総ての敵に滅亡を

今は五月初日、台湾自由民国南部第2の都市、高雄(コーヒョン)

俺は今、両親、そして姉さんと一緒にこの街に来ている。

街全体が大騒ぎだ……。

 

「お祭りムードだな」

 

「新名所ができたんですもの」

 

「そうだな。そういえば、起動エレベータ建造に使う技術と建材のテストとして建造されって聞いたな」

 

両親は相変わらずラブラブだ。

俺はというと……。

姉さんが手を強く掴んで離してくれない。

振りほどくわけにもいかないし……。

 

「手を繋いだの、久しぶりだね」

 

「そうだけど……」

 

ちょっと気恥ずかしい。

そう思っていたら、そよ風で俺の髪が揺れる。

 

「短く束ねるのもダメなの?」

 

「前にキッパリ言ったでしょ。ダーメ」

 

 

 

 

 

STAGE 8:あの姉弟に祝福を、姉弟の総ての敵に滅亡を

 

ステージボス:『時空の斬鉄鬼 ブーメル・クワンガー』 『逢魔が時の紳色魔 バルドイ 』

 

 

 

 

 

何日か前。

日本ローカル放送局ギルドのトーク番組に出演した時のことだ。

 

「浮名が流れてますけど、その辺はどう収拾つけるつもりなんです? 後から聞いたんですけど、杜論ちゃんとルナちゃんも恵玖須君にぞっこんなんですけど」

 

「俺としては、正直に言うと『誰も選ばない』つもりです。俺はレプリロイドですから」

 

「マーティちゃんもレプリロイドですけど……! 言っときますけど、11股疑惑が浮上してるのに『子供を作れないから』はダメですからね!」

 

「初恋を含めたら、12股になる、かも……」

 

「初恋したことあったんですか!?」

 

横山さんが素で驚いている。

何か失礼な反応だな。

 

「初恋の人は、姉です。あの頃は『自分はレプリロイドだから』諦めましたけど」

 

初恋の剣はここで流しておこう。

横山さんが固まっている内に。

 

「話は変わりますけど、『子供を作れる』云々に関して、少し気になることがあるんです」

 

「どんなことです?」

 

「……この間、ウミウシェーラが言及していたマーティの特殊機能についてですが、機能の出所は恐らく、俺かもしれません」

 

その言葉に、横山さんが固まる。

何だか他の人たちも固まった気がするけど、続けよう。

 

「ライト博士から聞いたのですが、俺には人間との間に子孫を作れる機能があります。『パンドーラー』って名前なんですけど。いつデータを取ったのか分かりませんが、俺が出所としか考えられません。

 

 この機能が相手にどんな悪影響をもたらすかが不安で、正直付き合おうって気にはなれないのが現状ですね」

 

「…………言い忘れていたんですけど、このトーク番組、生放送なんですよね」

 

「はい!?」

 

「それに、お姉さんたちが見学に来ているんですよ……!」

 

ええ!?

それってすごくヤバいのでは……?

そう思った瞬間、頭に何か堅いものが押し付けられる。

スタッフからコンパクトミラーを手渡されたので、それを使って背後を見たら……。

姉さんだけじゃなく、華鈴さん、シャーロッテさん、麻希奈さん、桜樺、理瀬さん、シルキスさん、アクエアルがいた(全員変身or着替え済み)。

頭に押し付けられているのは、華鈴さんのスターライトロッドか……。

あ、やいとと杜論にルナ、マーティまでいた。

……よく見たら、みんな泣いてる。

 

「お仕置きの時間なので一旦CMです」

 

「横山さん!?」

 

 

 

「で、どうするの?」

 

「以前、ONMエクステが髪の毛について大騒ぎになったことがあったから、それでいく?」

 

「じゃ、それで行こうか」

 

華鈴さんが姉さんに尋ねたら、姉さんがとんでもないこと言い出した。

理瀬さんが相槌を打ち、シャーロッテさんがONMエクステの容器を持ってきた!

 

「ちょうど都合よく横山さんが用意してくださいましたわ」

 

ちなみにONMエクステとは、つけ毛用有機ナノマシンのことだ。

金属製のスライムみたいだけど、髪に付着させると毛髪か頭皮と融合して、髪の毛に変形するという仕組みになっている。

逃げようにも桜樺とアクエアルに押さえつけられて身動きが取れない。

 

「押さえつけているうちに早く」

 

「ゼロがいつ出しゃばるか分からないぞ」

 

振り解こうにも、2人がかりなので身をよじるぐらいしかできない。

しかも、麻希奈さんとシルキスさんが加わって4人がかりになった。

 

「大人しくしなさい!」

 

「抵抗しても無駄ですよ!」

 

そうこうしている内に、頭に粘度の高い液体……OMNエクステが振りかけられた!

 

「――――――!!」

 

 

 

それからそれから。

見事な赤紫のロングヘアーになってしまった。

 

「綺麗な色じゃないか」

 

マーティから褒められたけどどことなく嫌だ。

 

「恵玖須様ぁ。そのONMエクステは自動再生機能が強過ぎる古いタイプだから切った傍からまたくっつきますからね」

 

ルナに釘を刺された。

そして実演とばかりに杜論が髪の一部を斬ったら、あっという間に元に戻った。

 

「ほら、元通り」

 

仕方ないので何とか短く束ねようとしたら、今度はやいとに手をはたかれて妨害された。

 

「束ねるのは不許可よ!」

 

その後、収録の終了と同時に姉さんたち12人に連行される形で帰宅。

やいとたちに怒られ泣かれ、姉さんに怒られ泣かれ、両親にこってりと叱られ、散々だった。

 

 

 

 

 

夜、自宅の2階、姉さんの部屋。

4月最後の授業がある明日の準備をして寝ようとしたら、姉さんに引っ張られて部屋に連れ込まれてしまった。

で、今は一緒に寝ている状態だ。

御丁寧なことに、姉さんは俺を抱きしめている。

 

「当分はお姉ちゃんと一緒に寝ようね」

 

「……なんでいきなり?」

 

「部屋にいる時だけ束ねているかもしれないから」

 

その割には妙に楽しそうだ。

……そういえば、ここ最近、家でエミットの姿を見かけない。

 

「そういえば、エミットは?」

 

「ここ最近は翔子のとこにいるみたい。どうしてかは分からないけど」

 

 

 

それから数十分後。

 

「……恵玖須」

 

時々姉さんの寝言が聞こえる。

俺の方は長く伸ばされてしまった髪が気になってまだ寝つけない。

そういえば、姉さんが中学に上がるまで一緒に寝ることが多かった気がするな。

 

 

 

今から9年前。

 

『ここ……は……?』

 

『パパ! ママ! エックスがめをさましたよ!』

 

『エックス? それ……は?』

 

『あなたのおなまえ。あなたは「くすのきエックス」。わたしはあなたのおねえちゃん、「くすのきさえ」』

 

『エックス……。それが、俺の、名前……』

 

俺は目覚めたその日に、楠家に引き取られ、「楠恵玖須」になった。

それから色々あって……。

 

 

 

「……?」

 

どうやら思い出している間に寝てしまったようだ。

 

 

 

それからそれから。

朝食の席。

食べ終わってそろそろ学校行こうとしたところで父が不意に言葉を漏らした。

 

「昨日、急にケイリーさんから連絡が来てな。こっちの休みに合わせてゴールデンウィーク中の海外旅行をセッティングしてくれたそうだ」

 

「急な話だけど、今日の夜に出発なの。4人で行かない? 学校の方にはパパと私で連絡はしておくから」

 

母が続いた。

旅行か……。

この1か月、海外に飛びっ放しだけど旅行ではなかったからな……。

 

「久しぶりの旅行だから、私は全然OKだよ」

 

「俺も……問題はないよ」

 

俺の返事に姉さんと両親が不必要な位安堵している。

ここ最近、海外出張に加えて日本にいても帰れない日が続いているから仕方ないか。

直後、ドアホンが鳴り、母が応対した。

 

「あら、おはよう。やいとちゃん」

 

『おはようございまーす。お義母さん』

 

「ちょうど恵玖須も出るところだったのよ」

 

ドアホンから聞こえたのはやいとの声。

……なんで?

 

「登校中の間だけ髪の毛を束ねたりしないよう、やいとちゃんに見張ってもらうためよ。本当はお姉ちゃんが見張りたいけど、途中で通学路が別れるから」

 

 

 

 

 

それからそれから。

またも全校集会があり、今度はマーティも(1年生として)転入してきた。

それから時間は経ち、昼休み。

図書室でいつものように本を読んでいたら、隣に灯留手が座った。

疲れているな。

 

「また上級生から?」

 

「……これで10人目。みんな諦めが悪いから困っちゃう」

 

背丈が中学生並みに高く、顔も整っていて、複雑な血筋がもたらした可愛らしい顔立ちから灯留手は男子から人気になっていた。

だから上級生の中には告白する人もいるのだが、ことごとく失敗に終わっている。

 

「みーんなタイプじゃないんだよねぇ」

 

「灯留手のタイプって、基本的に暑苦しそうな人だからね」

 

「そうそう。中には恵玖須ちゃんに気があるのか、みたいなこと言う人もいたけど、あり得ないよ。恵玖須ちゃん、タイプとは程遠いし、それ以前に可愛過ぎる気がするもの」

 

微妙に癪に触るようなことを言われた気がする。

それにしても前髪が邪魔だ……。

 

「束ねちゃダメだよー」

 

「……セットするのは?」

 

「セットもダメ、とは言ってなかったけど……」

 

ならセットしても問題はないな。

レプリロイドの髪は整髪剤抜きでも固めることはできるから……。

 

「オールバック!」

 

「それ、ゼロ兄ちゃんとお揃い?」

 

「そうだよ」

 

自信満々に言った直後、いきなり後頭部をはたかれた。

何事かと思って振り向いたらマーティがいた。

 

「似合わないから不許可! それ以前にセットもダメ!」

 

それはさすがに理不尽だと思う。

 

 

 

 

 

その日の夕方。

俺と姉さんは両親と一緒にウォーダス・テードの艦橋にいた。

まさかこの艦で行くとは……。

 

「台湾政府きっての希望とのことです」

 

城戸さんが簡潔に説明してくれたが、納得できそうにない。

 

「まあ、友好目的ですから肩肘張らずに行きましょう」

 

 

 

艦長室。

俺は前髪を弄りながら茫然としていた。

……せっかくだから棚に置いてあるDVDでも見よう。

 

「……これにしよう」

 

『レジデント・エビル:アポカリプス』。

何年か前に映画館で見たホラー映画の続編だ。

プレイヤーにセットして……。

再生しようと思ったらドアホンが鳴った。

 

『恵玖須。いる?』

 

姉さんの声だ。

 

「開いてるよ」

 

俺が答えた直後に姉さんが入ってきた。

艦長室の広さに少し驚いているらしく、見回している。

 

「どうしたの?」

 

「お風呂に入れる時間になったから呼びに来たの」

 

 

 

艦内大浴場。

男湯、女湯、そして何故か混浴に分かれている。

男湯に行こうとしたら混浴に引っ張られた。

湯気で全体を見渡すのは難しいけど、そんな状態でもタイル絵が自己主張している。

 

「翔子から聞いたんだけど、こういうタイプのお風呂じゃ男湯でも最初に体と髪を綺麗に洗ってから湯船に入るんだって」

 

そう言った直後、ボディソープをかけたビニールタオルで、姉さんは俺の体をいきなり洗い出した。

 

「まだあなたが小学校に入る前の頃、覚えてる? あの頃のお姉ちゃんは背が低くて、背中を洗うのがいつも大変で……」

 

「足を滑らせて背中に抱き着く格好になったこともあったよね」

 

「そうそう。……去年あたりからあなたが1人で入るようになって、ちょっと寂しかったんだ。……また、2人っきりでお風呂に入れる日は来るのかな?」

 

「…………ごめん。約束できない」

 

洗い場の鑑に移った姉さんの顔は、その直後に一瞬だけ悲しそうな表情になってた。

ちょっと、気まずいな。

そう思った直後に、髪にシャンプーをかけられ、わしゃわしゃと頭を引っ掻き回される。

 

「だったらじっとする。お姉ちゃんは期待してたんだから……!」

 

 

 

それからそれから。

髪が長い場合、湯船につかる時は基本的に髪を束ねるかタオルで巻かないといけないのだが、どちらも姉さんが許してくれず、髪を湯船に漂わせる格好となってしまった。

 

「そういえば、姉さんが小学校に入ったばかりの頃、風呂の湯沸し機能がおかしくなって一緒に銭湯に行ったよね。姉さんが『妹』に間違えられてさ」

 

「そうそう。『この子は弟です! レプリロイドなんです!』って言い返したんだっけ」

 

ちょっと昔を懐かしんでいたが、柔らかい物が二の腕に当たる感触がした。

感触がした方を向くと、アクエアルがすぐ側にいた。

 

「……当たってるんだけど」

 

「……当てているんだ」

 

「放してよ」

 

「誰が放すか」

 

姉さんが引きはがそうとアクエアルの肩を掴んで引っ張り出す。

でもアクエアルの方もより力を込めて俺の腕にしがみついているため、中々はがせないでいる

そうこうしている内に、左の二の腕にも柔らかい物が当たる感触がした。

……今度はマーティだった。

 

「君もか」

 

「アタシもだよ」

 

これが引き金になったかのように、続いてシルキスさんが背中に胸を押し当て、ルナが向かい合うようにして俺の太ももの上に座ってきた。

 

「シルキスさんとルナまで!」

 

「時には大胆になりたくもなるのです」

 

「恵玖須様のお肌って相変わらずやーらかーい」

 

そうはさせまいと思ったのか、今度は理瀬さんと華鈴さん、杜論が俺の手を掴んで自分たちの位置へと強引に引っ張る

 

「大丈夫だった?」

 

「とりあえずは。……ところで、なんで華鈴さんは背中合わせになってるの?」

 

背中に当たる感触ですぐに分かった。

華鈴さんは俺の背中と自分の背中をくっつけている。

 

「南極の時は渚ちゃんに邪魔されちゃったからね」

 

「雅さんって以外と控えめな気がしない?」

 

杜論がちょっとムッとしたくなるようなことを言った気がする。

ともあれ、これ以上この状況下にいるのはよくない。

別の湯船に移ろう。

そう思って立ちあがり、少し歩いてから桜樺がいきなり前に立ち塞がったので、胸に顔を埋める格好となった。

 

「危ないよ」

 

「お前がいきなり立ち上がるからだ」

 

横にずれようとしたら今度は側頭部が麻希奈さんの胸に埋まってしまう。

 

「危ないってば」

 

「それほど危なくないわよ」

 

流石に本格的に危ないので別方向にずれる。

浴場を出よう。

……そうしようとしたら今度は足を引っ掛けられて湯船の中でこけてしまう。

 

「逃げるな!」

 

やいとだった。

なんて乱暴な……。

 

起き上がりはしたものの、半ば強引にまた湯船につかされてしまう。

しかもやいとに腕をガッチリと掴まれてしまう。

その隙を突くように、シャーロッテさんが頬に自分の胸を押し付けてきた!

 

「年上のやることなの!?」

 

「年上だからやれるのですわ!」

 

……本格的にまずい。

こ、このままだと……。

…………。

どうにでもなったところで問題ないか。

とりあえず、まずはシャーロッテさんの腰に手をまわしておく。

 

「! エックスさん!?」

 

「ちょっと! 何やって……んにゃ!? どこ触ってんのよ!」

 

さりげなくやいとのを触っておこう。

どこを触ってるかは、足の付け根近辺とだけ言わせてもらう。

 

「いいじゃん。やいとだって俺のを散々触って名前言わせようとしてたくせに」

 

「……いきなりどうしたの!?」

 

やいとが悲鳴混じりに言うけど、気にしない。

次第に大人しくなっているし。

でも姉さんは気づいたらしく、大声を上げた

 

「あ! やっぱり『リミッター』が飛んじゃった!」

 

その直後、どこからともなく風呂桶がやいとの目の前に着水し、水しぶきがやいとの顔にかかった。

 

「あ、危ないわね! 誰よ! 恵玖須に当たったらどうするのよ!」

 

「やかましい! お前のその顔めがけて投げようとしたらレイヤーに邪魔されて手元が狂っただけだ!」

 

……投げたのはゼロだった。

よく見たらレイヤーが隣でなだめている。

髪をタオルで巻かないで湯船の中をずかずかと歩いてこっちに近づいてきた。

そして俺の腕をつかみ、力任せにひっぱて立ち上がらせてくれた。

 

「もう温まってるだろ。のぼせる前に上がっとけ。今の様子じゃリミッターも飛んでるようだしな」

 

「うん。……そうするよ」

 

ゼロは安心してくれたけど、すぐに視線をやいととルナ、杜論や華鈴さんに向ける。

しかもレイヤーと見比べるような仕草までしている。

 

「フッ……。フフフ……。フハハハハハハハハ!」

 

そして思いっきり見下すようにやいととルナと杜論と華鈴さんの方を見ながら高笑いしだした。

 

 

 

 

 

結局、あの後ケンカが起きたのだが付き合いきれなかったので一足先に上がった。

今は艦長室に戻ってアイドルの際どい写真集(全年齢)を眺めている。

……いいアングルだ。

次は際どいDVD(全年齢)でも見よう。

そう思った矢先、またドアホンが鳴った。

 

「開いてますよ」

 

その言葉と共に、両親が入ってきた。

 

「恵玖須……それは」

 

俺が手に持っている写真集を見て父が眉を少しひそめた。

 

「18禁じゃないよ。子供でも買える写真集だよ」

 

「……それは分かっているんだが。いや、それじゃなかったな。さっき沙枝から聞いたんだが、リミッターがまた飛んだそうだな」

 

「うん。でも、しばらくはそのままにしようと思ってる。多分、リミッターをかけ直しても、ふとしたことで飛ぶと思うから」

 

俺の言葉に父は思わず黙り込んでしまう。

代わりのように、今度は母が口を開いたが。

 

「恵玖須……。戦いが終わった後はどうするの?」

 

「次の戦いがあるかもしれないし、今の立場が立場だからね。イレギュラーハンターを辞めるわけにはいかないよ」

 

「でも、恵玖須1人ががんばり過ぎているみたいで……」

 

「ある人に言われたよ、俺は世界の希望で、それは俺であっても否定できないって。だから、今は戦いから遠ざかる気は無いよ。……遠ざかることは、許されないんだ」

 

瞬間、両親の表情は一気に悲しげなものになった。

分かってはいるんだ。

俺には戦いと縁のない生き方をしてほしいと両親が思っていることを。

でも、戦って誰かを守れる力がある以上、それはできない。

 

 

 

 

 

同時刻、台湾南部某所。

 

「1ヶ月も経たないうちに8対の最高幹部が私達だけになってしまうとは。スティグマさんにとっても予想外過ぎる事態のようでした。少しは深刻そうにしていましたから」

 

「ロックマンエックス。げに恐ろしきはあ奴ということか」

 

「無限の可能性と無限の危険性。この2つが今回の戦いで完全に開花したことは確かでしょう。何の偶然か、彼はご家族と一緒にこちらに向かっているそうです」

 

「偶然もまた恐ろしい物であるな。だが、それがいい。今度は楠紗枝だけでなく、母親も味わえるのだからな」

 

「たまには熟女も、ですか? エックスほどではありませんが、違反者の趣味嗜好というのも多少は興味深いようですね」

 

 

 

 

 

『め! エックスはまだあかちゃんなんだからそんなのよんじゃめなの!』

 

『え? でも、裸じゃないよ』

 

『めっていってるでしょ!』

 

これは、姉さんと一緒に書店に行った時のことだ。

グラビア雑誌に目が行って、モデルの際どい水着姿を見て楽しんでいたら姉さんに怒られたんだっけ。

似たようなことがそれからまたあって、見かねた両親がDr.ケイリーに相談した結果、俺の頭脳にリミッターがかけられることになった。

 

 

『お前、そういうのも読むのか?』

 

『この間、イレギュラーに何回か頭突きしたことがあっただろ? あれの後から読みたくなっちゃって。変かな?』

 

『意外とは思ったが、変じゃないだろう。お前はそこらの人間より人間らしいからな。それもらしさってことさ。問題は、迎えに来てる姉貴の視界にもそれが入ってるってことだ』

 

これは、一度リミッターが飛んでしばらくたってからのこと。

休憩室に置いてあったグラビア雑誌を読んでいた時だ。

結局、この後すぐにまたリミッターをかけられたけど。

 

 

「……また、夢か」

 

そういえば、あの後姉さんがビートを見張りにって部屋に持って来て……。

枕に頭が埋まったまま首を動かすと、すぐ隣にビートが寝ているのが見えた。

 

 

 

「……なんで頭にビートを乗せているんだ?」

 

「どうしてかは分からないけど、いつの間にか頭の上に乗っていたんだ」

 

朝食を食べようと食堂に来た際、ゼロに言われてビートが頭に乗っていることに気付いた。

手に取ってどかそうとしたら自分で飛んで行ってしまった。

 

『現地時間の昨日午後6時にモスクワで黒帝(ツァーリ・チョールヌイ)が即位後初の外遊へ向かうとの発表がありました。黒帝(ツァーリ・チョールヌイ)は即位から数十年間、その姿をごく一部の側近と歴代の第1正統君主にしか見せず、影から国政を担っていました。

 

 そのため、どのような容姿なのか早くも様々な推測が飛んでいます。 なお、訪問先は台湾自由民国首都台北(タイパク)であり……』

 

日本ローカル放送局ギルドのCS局のニュースが流れている。

その後、朝食を食べ終えたので部屋でゆっくりしようとしたら、姉さんに捕まって髪を強引にブラッシングされた。

気のせいだろうか、ブラシをゼロと取り合っていたような気がする

 

 

 

 

 

それからそれから。

時と場所は現在に戻る。

 

「アレか……」

 

かなり高い。

軌道エレベータのプロトタイプだけあってとんでもない高さだ。

 

「名前は旭日塔(きょくじつとう)。台湾の偉い人が親日をアピールするためにわざわざ日本の企業に協力してもらって建造したんだって。全長1㎞以上で、500mあたりまではショッピングモールになっているの」

 

「そこから上は?」

 

「格安の賃貸マンションや公的機関用のテナントだって」

 

姉さんが説明してくれた。

 

 

 

それから10数分後。

開催セレモニーが終わり、俺が真っ先に案内される。

それと同時に野次馬たちの大歓声が響き渡った。

案内のままに中に入ると、そこには戦いとは別ベクトルの非日常が広がっていた。

 

「「「「「「「「「「タワー・オブ・ライジングサンへようこそ! ロックマンエックス様!」」」」」」」」」」

 

屋台街に台湾名物が並んだ免税店。

様々なテナントが、日本語が堪能なスタッフたちが、俺たちを出迎えてくれた。

 

「テナントエリアの総マネージャーを担当している、白小花(ベイ・ショーホァ)です。いらっしゃいませ、ロックマンエックス様!」

 

小花(ショーホァ)さんか。

そばかす美人といったところだな。

スーツで着やせしているけど、バストとヒップは実際はもっと大きいな。

一目見ただけで分かる

それから数十分、帽子やサングラス、それ以外にも買いたかった物を一通り買い揃えて、俺はあるフロアで立ち止まった。

 

「化粧品コーナーか……」

 

台湾ブランドの化粧品が選り取り見取りで並んでいる。

ふと、色取り取りの口紅に目が行った。

 

「……12本買おうかな」

 

色違いで12本買って、と……。

 

 

 

 

 

その頃、沙枝たちは……。

屋台街エリアの一角で休憩していた。

その表情は周囲の熱気に合っていない。

 

「完全に見失っちゃったね」

 

「まさかいの一番に案内されるとは……」

 

華鈴とシャーロッテは疲れたように呟く。

ちょっと探し疲れたらしい。

 

「流石に当てもなく探しても見つからないわね」

 

「あのそばかすの女のせいでとんだ迷惑だ」

 

麻希奈と桜樺も同様の状態。

 

「せめて連絡をとれればいいのだけど」

 

「でも恵玖須の携帯電話の番号、知らないのよね」

 

理瀬と杜論もどうしたものか、といった表情になる。

 

「どうしたものでしょうか?」

 

「こっちが聞きたいわよ」

 

シルキスが思案に暮れ、ルナが毒づく。

 

「……義姉上(あねうえ)ならエックスの携帯電話の番号を知っているのではないのか?」

 

「言われてみればそうだ! つか義姉貴(あねき)なら知ってて当然じゃないか!」

 

アクエアルの何気ない一言にマーティがそれもそうだと言わんばかりの反応を見せる。

直後、11人の視線が沙枝に集中する。

刹那、沙枝の携帯電話が鳴る。

着信メロディの選曲(西○警察メインテーマ)に11人がキョトンとしていたが、沙枝は構わず電話に出た。

 

「……もしもし。恵玖須!? え? いま私たちを探してるの? うん。屋台街の奥の方の大きなテーブルに集まってる。うん。……待ってるから」

 

「恵玖須からだったの?」

 

やいとの質問に対する沙枝の答えは、やいとの予想通りであった。

 

「うん。私たちを探してたみたい。翔子のアドバイス通りに私のも恵玖須のも海外でも使えるタイプにしておいて世界だったわ。場所は言っておいたから、もう少し待てば来ると思う」

 

沙枝の報告にやいとたちは揃いも揃って胸を撫で下ろす。

もちろん、沙枝の方も安堵した表情を見せる。

しかし、そんな空気を台無しにするかの如く良くない空気をまとった奴がすぐ近くに来ていた。

 

 

 

 

 

姉さんたち、喜ぶかな?

そう考えながら屋台街に入り、奥の方の大きいテーブルを探して……見つけた。

でも、何だか誰かと言い争っているように見える。

何があったん緒か分からないけど、急がないと。

少しづづ姉さんたちのいるテーブルに近づく。

ある程度近づいたところで、姉さんたちを言い争っている誰かの正体が分かった。

天声新聞の、それも悪質な取材で悪名高い記者、「本庄一太」だ。

俺は基本的に日本ローカル放送局ギルド(新聞事業部が発行する『日本憂国日報』を含む)の取材しか許可しないが、奴は最後までしつこく取材許可を求めた粘着質な男だ。

 

「貴様、彼女たちに何の用だ?」

 

「これはこれは……。そちらが頑として取材を受けてくれませんのでね。浮名のお相手さんたちにアプローチしてみようかと思いまして」

 

「その割にはOKを貰えそうな雰囲気ではないな」

 

「上級生2人と幼馴染に人魚は当然として、そこの8人は中古品とは思えないほどガードが固くて……」

 

この男!

姉さんたちを愚弄する気か!

一言物申そうと思った直後、小花(ショーホァ)さんがいつの間にか割って入った。

 

「ロックマンエックス様。そいつの相手をする必要などありません」

 

「何ですか? 今は取材中なんですが」

 

「塔内での取材行為は事前に申請してもらわないと困ります。あなたたち! ブラックジャーナリスト1名様を摘み出してちょうだい!」

 

小花(ショーホァ)さんの号令に合わせて、強面のスタッフたちが本庄を拘束し、この場から文字通り摘み出すために連れて行った。

本庄は何か喚いていたが、どんな内容だったのかは余りにも耳障りなので想像に任せる!

 

「マスゴミが……! っと、それでは引き続き塔内探索をお楽しみくださいませ」

 

こめかみに皺を寄せて憤怒の形相で本庄の後姿に罵声を浴びせたと思ったら、表情を瞬時に柔らかくしてから俺たちの方に向きなおした。

そして笑顔のままその場を立ち去った。

プロだなぁ……。

そう思っていたら、かぶっていた帽子を取られた。

帽子の内側に起用に入れていた髪の毛が、花が咲いて花弁が散るまでの様子を早送りしたかのようにふわっと出てくる。

 

「帽子の中に収納するのもダメだ」

 

帽子を取ったのは、アクエアルだった。

左手に持っている袋もマーティにひったくられてしまう。

 

「……何コレ? アイドルの写真集とかDVD!? それも際どいのばっかり! ……右手に持ってる袋には何が入ってるんだい!」

 

「口紅だよ。姉さんたちに合わせて12個」

 

「……はい?」

 

袋を開けて慌ててテーブルに並べる。

みんな呆然としている内にマーティから袋を奪還。

 

「これが杜論に、これがルナに、これがマーティに、それでこれがやいとに。そんでもって……」

 

やいとに渡し、今度は華鈴さんに渡そうとした直前にタイミング悪く、両親が来た。

 

「あら? みんな集まってるわね」

 

「そういえば、テーブルに口紅が並んでいるな」

 

父が残りの口紅に気付いたようだ。

これに対して姉さんが両親に説明してくれた。

 

「エックスが私たちに合わせて揃えてくれたんだって」

 

結局、ゼロも合流してくれたことに加え、場所が場所だったのでそこで昼食となった。

だが両隣になるかで揉めたけど、父とゼロの間、で落ち着いた。

……牡蠣入りオムレツ(オアチェンという名前だとか)が美味しい。

 

「? アクエアルがいないけど……?」

 

本当だ。

マーティの言うとおりアクエアルがいない。

直後、アクエアルが空のコップを13個も持ってきた。

それをゼロと父、俺以外に配る。

コップにはテーブルに置かれた順に、エメラルドグリーンで透明度の高い液体が湧きあがるように出てきて中を満たす。

 

「……これは?」

 

「一種の毒消しだ。何かあった時にと思ってな」

 

麻希奈さんの疑問にアクエアルはすぐに答えた。

直後に今度は桜樺が首を捻ったけど

 

「しかし何故義母様の分まで?」

 

「ワールドスリーが私達が『女』であることを突いてくる可能性は極めて高い。用心のために飲んだ方がいいと思ってな。予防薬というやつだ」

 

アクエアルの答えに、桜樺も自然と納得したようだ。

まあ、『そういう』被害を受けた者同士だから分かるってことなのだろう。

その一方で母はかなり困惑している。

 

「えっと……」

 

そんな母の困惑を見て、父がアクエアルに意見した。

けど、アクエアルは毅然とした態度で反論をぶつけた。

 

「アクエアルちゃん。気持ちは嬉しいが、特撮の悪役みたいな連中がそんな手を使うとは……」

 

義父上(ちちうえ)。ワールドスリーの構成員には敵対者当人だけでなく、関係者に対してもそんな手を喜んで使う者が大勢います」

 

妙に緊張した空気が流れる。

……壊しておこう。

 

「アクエアルも言っていたように用心のためだと思えばいいよ」

 

「恵玖須がそこまで言うなら……」

 

母も決心がついたらしく、予防薬が注がれたコップを手に取る。

それを合図に姉さんたちもコップを手に取った。

 

「味の方には少々問題がありましたが、今日の今日まで何度も改良を重ねているので大幅に改善されています」

 

それは、最初はとにかくひどい味だったという意味なんだろうか?

でも、アクエアルの一言で緊張が解れたらしく、母の表情から硬さはなくなった。

そして母と姉さんたちは予防薬を一息に飲んだ。

……やいとと杜論にルナ、マーティが苦い表情になる。

表情通りの味なのだろう。

一方、残りの9人は青ざめていた。

 

「こ・れ・で・改善されていますの!? 味覚障害にも程がありますわ!」

 

シャーロッテさんが姉さんたちの心境を代表するかのようにアクエアルさんに噛み付いた。

 

「…………1つ前のバージョンは飲み水同然の味だったのに!」

 

……味見してなかったらしい。

俺と同じようなことを思ったのか、シルキスさんもそこを突いてきた。

 

「つまり、今飲んだバージョンは味見をしていなかったってことですか!?」

 

「……面目ない」

 

これにはアクエアルもシュンとなってしまった。

それに追い打ちをかけるように麻希奈さんと桜樺がアクエアルを睨む。

更に華鈴さんと理瀬さんが毒づいた。

 

「最悪! アクエアルちゃんのバカ!」

 

「良薬口に苦し、で片づけられるレベルじゃないわ!」

 

ひどい味だったようだが、それにしても反応がやいとたち4人より激しい。

姉さんに至っては顔を青くしたまま固まっている。

 

「どんな味だったの?」

 

そんな俺の呟きに答えてくれたのは、母だった。

 

「恵玖須ちゃん。お姉ちゃんの口から知りたいの……?」

 

「…………じ、冗談だよ」

 

 

 

 

 

それからそれから。

エントランスの一角。

そこから下の階層の人だかりを見下ろしつつ、渡しそびれた分の口紅を見ていたらゼロに話しかけられた。

 

「……」

 

「渡しそびれたのか?」

 

「やいとに杜論、ルナとマーティには渡したんだけどね。」

 

横にゼロがいた。

ただじっと、その視線は俺にだけ向けられている。

 

「どうすればいいかもう分かってるんだろ?」

 

「うん。……ありがとう。君にはいつも助けられてばかりだ」

 

「趣味の一つだ。感謝されるほどのことじゃない」

 

 

 

 

 

「どれにしようかな……」

 

華鈴さんは高雄(コーヒョン)土産を扱うテナントが並ぶ土産物通りで少し迷っていた。

きっと家族や渚さん、クラスメートにあげる分を選んで悩んでいるのだろう。

 

「お土産?」

 

「あ。恵玖須ちゃん。そうだよ」

 

「……これ」

 

そっと口紅を差し出す。

華鈴さんは受け取ってくれた。

 

「渡しそびれたから、さ」

 

「……うん。ありがとうね」

 

「それじゃ、残りも渡してくるから」

 

 

 

「チャイナドレス向きなデザインが多いですわね」

 

シャーロッテさんは少し早く見つかったように感じた。

案の定、宝石市のフロアにいたから。

 

「シャーロッテさん」

 

「? どうかしまして?」

 

「さっき渡しそびれちゃったから」

 

口紅を渡すと、シャーロッテさんは一気に嬉しそうな表情を見せた。

縦ロールにセットされた髪が鼻に触れる。

甘い香りだ。

 

「私だけに、というわけではありませんけど、それでも嬉しいことに変わりませんわ」

 

「今の俺には、これぐらいしかできないから……」

 

 

 

「恵玖須……」

 

エントランスで上を見ながら突っ立ていた麻希奈さんに話しかけようとしたら、気付かれて先に話しかけられた。

 

「どうしたの?」

 

「ちょっと考え事。……ミレニアム絡みで1つだけ心残りがあるから」

 

心残りか。

……これはひょっとしなくても。

 

「レディ・アストレアのこと?」

 

「……正解」

 

「彼女なら、親衛分遣隊にいるよ」

 

これを言った瞬間の麻希奈さんの表情は忘れられない。

それほど彼女にとっては衝撃的な言葉だったようだ。

 

「親衛分遣隊が作られてから何日かたった後にメディがいきなり連れてきたんだ。ミレニアムが潰れてからDr.ケイリーが匿っていたんだけど、バーンアウトしてたそうなんだ」

 

「それで見かねたDr.ケイリーの言いつけでメディが親衛分遣隊に入れたわけね」

 

「そういうこと。あ、それはそうと、これ……」

 

口紅を麻希奈さんに渡す。

これで残り5本か……。

 

「……ありがとう。いつになるか分からないけど、次はキスがいいな」

 

 

 

「家族、か……」

 

桜樺は沢山の家族連れを見つめていた。

出生を考えると、沈痛な面持ちで家族連れを見るのも仕方ないと思う。

 

「桜樺」

 

「今のを見ていたのか……」

 

「うん」

 

「爺様がいるからそこまで寂しくはなかったが、やはり父母が揃った家族連れを見ていると、な」

 

桜樺……。

祖父の廉信(れんしん)さんがいるから言葉通り、寂しくはなかったんだろうけど……。

しんみりしているところ悪いけど、渡しておくか。

 

「これをどうぞ」

 

「愛の告白の方がいいが……。これはこれで凄く嬉しい」

 

 

 

「これ、いいかも」

 

理瀬さんは台湾人造形師が手掛けた野生動物のフィギュアを見ている。

そういえば理瀬さんはああいうリアルな造形の物の方が好きなんだった。

この距離だと造形が分かりにくいな。

すぐそばにまで近づいたら流石に気付かれた。

 

「恵玖須」

 

「ミーマからこういうリアル系の造形の方が好きだって聞いたことはあったから」

 

「昔からそんな感じなんだ」

 

どことなく嬉しそうな表情で答えてくれた。

ここですかさず渡しておく。

 

「これを理瀬さんに」

 

「ちょっと早い気もするけど、ありがとう」

 

「……どう、いたしまして」

 

 

 

「これは中々参考になりますわね」

 

シルキスさんは書店で台湾固有動物の図鑑を手に取っている。

そういえば、ララマザーじゃ動物に関する観察や調査の書類をかなり書いていて、いずれは彼女の名を冠した動物図鑑としてまとめられると聞いたこともある。

 

「シルキスさん」

 

「あ、エックス君」

 

「やっぱりそういうのが気になるの?」

 

「はい。他の動物図鑑を読むことはとても参考になりますから」

 

「そうなんだ。……っと、これを忘れてたから」

 

口紅を渡しておく。

一瞬だけキョトンとしてたけど、すぐに表情を緩めて受け取ってくれた。

 

「ありがとうございます」

 

「喜んでもらえて、安心できた。ごめん、残りも手渡してこないと」

 

「はい。行ってらっしゃい」

 

 

 

「この銘柄の鳳梨酥(オンライソー)(台湾名物パイナップルケーキのこと)を10箱。エックスと一緒に食べるから密閉していないハイグレード版を2箱」

 

アクエアルは台湾銘菓を大量に買い込んでいた。

……やはり精霊が人間の肉体を維持するのには大量のカロリーが要るみたいだ。

ロドス島での宴会の時も俺と一緒にかなり食べていたからなぁ……。

 

「10箱で足りる?」

 

「あの頃はかなり食べざるを得なかったが、月日が経ったから今はかなり落ち着いた」

 

そんなアクエアルの表情はどこか朗らかだ。

いつもはすまし顔だからちょっと新鮮かも。

 

「ところで、聞きたいことがあるんだけど」

 

「? どうした?」

 

「さっきの予防薬、どんな味がしたの?」

 

「…………あまり言いたくなかったけど。あの薬の味はな……」

 

あの予防薬を飲んだ13人の内、杜論、ルナ、マーティ、やいと以外が青ざめた理由がやっと分かった。

そりゃアレと全く同じじゃなぁ……。

しかも母以外にとっては無理やり飲まされた代物と同じ味、ってことになる。

……場の空気をかなり悪くしちゃった気がするので、換気のために口紅を渡しておこう。

 

「お菓子もいいけど口紅もどうかな?」

 

ドサクサに紛れる形で口紅を差し出す。

……でも両手が塞がってるので首の袖を少しまくって、胸の谷間に挟むように口紅を差し込んだ。

 

「て、手渡しじゃないのか!?」

 

「いや、両手が塞がってたから」

 

「……嬉しいが、指輪の時にしてほしかった」

 

「ごめん」

 

 

 

それからそれから。

姉さんを探している途中、ゲームセンターフロアでやいとに杜論、ルナとマーティを見つけた。

やいととマーティが『おどるバトルマイマイヤー』(A-COM(エー・コム)製。大ヒット音ゲーだ)をプレイしている。

あ、プレイし終わったらしい。

 

「やいとたちもゲームするんだね」

 

「するわよ。綾小路財閥はゲーム会社を筆頭にしてるのよ」

 

そうなのか……。

 

「ちなみにこのゲームを作ったA-COMのことだからね。補足すると『AYANOKOUJI-COMPUTER』を略して『A-COM』よ」

 

ええー……。

色々とビックリするしかないな。

 

「これ、かなり面白いよ」

 

「次は私と白金さんがプレイするけど、恵玖須もどう?」

 

マーティと杜論がプレイしないかと誘ってきた。

かなり夢中になってプレイしてたらしく、やいとの額には少し汗が浮かんでいるし、マーティもレプリロイドなのに肩で息している。

 

「ごめん。姉さんを探してる途中なんだ」

 

「そうですか。ちょっと残念ね」

 

ルナは少し残念そうな表情だ。

やいとたちも似たような表情をしている。

 

「今急に思い出したけど、あの予防薬って本当にひどい味だったよね。義姉貴(あねき)たちなんか顔真っ青になって、エックスが理由聞こうとしたら止められたし」

 

「……実はアクエアルにある物と全く同じ味だって教えては貰った」

 

数十秒後、『ある物』の正体を教えた(口止めはされなかったので言ってしまった)ら、4人とも物凄く怒ってアクエアルを探しに行った。

……後でアクエアルに怒られるな、俺。

 

 

 

「姉さん」

 

「あ……」

 

姉さんはアクセサリーショップにいた。

指輪を見ているけど、表情がちょっと曇っている。

 

「結婚指輪でも見ていたの?」

 

「ま、まずは婚約指輪から……って、お姉ちゃんをからかうんじゃありません!」

 

「ごめん。でも安心したよ、元気みたいだから。指輪を見てた時の姉さん、ちょっと元気がなさそうに見えたから、さ。ついでに、これも」

 

ついでと言いつつも、本来の目的を全うしておこう。

 

「これ、お姉ちゃんに?」

 

「姉さんにだよ。その口紅は」

 

姉さんも嬉しいらしく、それが表情に現れている。

喜んで貰えて良かった

 

「恵玖須。お姉ちゃんの初恋の人、知りたい?」

 

「……いきなり、どうしたの?」

 

「あの生放送で、お姉ちゃんが初恋の人だって恵玖須は言ってたでしょ? だからお姉ちゃんの初恋の人を教えておこうかなって。それだけ」

 

そう言う姉さんの顔は、指輪を見ていた時以上に曇っていた。

そしてその後でてきた言葉は、俺を十分過ぎるほど驚愕させた。

 

「あなたがお姉ちゃんの初恋の人よ、恵玖須」

 

「…………!」

 

 

 

 

 

その頃、漢方薬市場のフロア。

楠夫妻は試飲コーナーで立ち止まっていた。

 

「怪我に効くやつがあればと思ってきてみたが、よくよく考えてみると恵玖須はレプリロイドだったな……」

 

「あの子、最近色々と無茶をするから仕方ないわよ」

 

少々気まずくなっている夫だったが、妻・美沙子は穏やかにフォローした。

そんな2人に、スーツ姿のガタイのいい男が話しかけてくる。

 

「漢方ジュースの試飲は如何ですかな? 婦人病によく効く新製品ですよ」

 

「あら。いただきます」

 

美沙子は紙コップに入ったジュースを飲んだ。

直後、酒を飲んだ直後と同じような感覚に襲われる。

 

「え? お酒の味はしなかったのに……!?」

 

「大丈夫か!?」

 

夫が美沙子を心配して抱き寄せた直後、彼の首筋に冷たく鋭い物が押し付けられる。

 

「な……!」

 

「そのジュースはそういうものなのですよ。さて、これからイベントの開催を宣言しなくては。あなた方と、お子さんたちをメインゲストにしたスペシャルイベントの、ね」

 

クワガタムシ型のレプリロイドが彼の首筋にブーメランを突き付けながらそう言った。

直後、スーツ姿の男の服装も瞬時に変わる。

 

「おぬしらを、私とクワンガーが用意したスペシャルステージへと招待しよう。……拒否されても連れて行くがな」

 

「急ごしらえですが、奥さんのために私とバルドイから素敵な衣装もご用意させてもらいました。……拒否されても無理やり着せ替えますけどね」

 

 

 

 

 

『『マイクテスト。マイクテスト。本日は祭り日和』』

 

いきなり塔内部の各モニター内蔵のスピーカーから音声が響く。

モニター自体も画像が砂嵐になった。

 

『映像出力が終わっておらぬぞ』

 

『少し待ってください。今回線の調整が終わりましたよ』

 

スピーカー越しに聞こえる会話が終わった直後、すべてのモニターがある一室を映し出した。

そしてそこにいたのは……。

 

「ブーメル・クワンガー!?」

 

俺が思わず声を出した直後、姉さんも素っ頓狂な声を出した。

 

「バルドイさんまで!?」

 

『本日お集まりの皆様と楠姉妹のお2人、お待たせいたしました。「時空の斬鉄鬼 ブーメル・クワンガー」と!』

 

『「逢魔が時の紳色魔 バルドイ」が本日のスペシャルイベントを知らせよう!』

 

一体全体何が起きているんだ!?

困惑する俺たちを嘲笑うように、モニターに映る2人は更にとんでもないことを口走った!

 

『イベント内容は至極単純。我ら2人対ロックマンエックスのデスマッチ! 楠沙枝にも必ず来てもらうぞ。お主らの両親を人質に取っておるからな!』

 

『奥さんにはこのスペシャルイベントのために我々が用意したコスチュームに着替えてもらいました。……それではご覧あれ、ジャンジャジャァーン!』

 

カメラを塞ぐようにアップで立っていた2人がどくと、信じられない光景が映し出された!

 

「ママ!? パパ!」

 

「一体何が!?」

 

母さんが魔法少女のようなコスチュームを着て、困惑の意表情で赤面しながら立っていたのだ!

しかも画面の隅に椅子に座った状態で縛られている父の姿も映っている。

 

『我々はこの塔のもう1つの最上階にいます。ルートは開放しておきますので来れるでしょうが万が一日没までに来れなかった場合、バルドイを筆頭にこの塔にいる違反者が総出で美人の奥様を寝取りますから!』

 

『その時の様子は地元のテレビクルーを拉致した際の戦利品であるテレビカメラで生中継される。私としてはそちらの方がいいのだがな。まあ、ぜひとも来てくれたまえ、必ずな。では、ここでコマーシャル』

 

ディスプレイはもう1つの最上階と思しき部屋ではなく、本来映すべきテレビ番組などを再び映し出した。

……あいつら!

 

「恵玖須君!」

 

この声は……。

 

「出月さん!?」

 

 

 

数分後。

肩で息している出月さんから、俺たちは驚くべき情報を聞かされた。

 

「砂山さんと横山さんまで!?」

 

「……あの2人が現地のテレビ局クルーを拉致した際に、ついででこっちに出張した俺たちも拉致られたんだ。それで、もう1つの最上階への道案内ってことで俺だけが解放されて……。

 

 あいつら、2人のパパさんの首筋に刃物突き付けて、無理やりママさんに自分で着替えさせた挙句それを録画しやがって……!」

 

出月さんの表情には悔しさが滲み出ている。

ただ見ることしかできなかった悔しさだろう。

 

「だったら今すぐその『もう1つの最上階』まで行かないと!」

 

 

 

 

 

それからそれから。

俺と姉さんは出月さんの案内でテナント&コンドミニアムフロアまで来た。

 

「案内しておいて今さら気が付いたけど、『もう1つの最上階』ってどういう意味なんだろうな?」

 

言われてみると確かに。

本部に連絡してみるか。

 

「第17精鋭部隊隊長より本部へ」

 

『エックス! 無事だったの?』

 

「俺は無事だが、両親が人質にされた。クワンガーとバルドイは『もう1つの最上階』とか言っていたが、それについて少し調べて欲しい」

 

『それなんだけど……。実は旭日塔建造に関わった日本(こっち)の企業数社からの依頼で第12監査部隊が極秘に内定した結果が今日になって届いたの。結果、すべての企業の、それも旭日塔建造に関わった部署にワールドスリーに内通していた人たちがいたのよ。

 

 どうやらクワンガー達が接触してきたのを幸いと思って損得抜きで協力してたみたい。連中はその「もう1つの最上階」に必要な機材や建材を横流ししていたのよ。建造自体はクワンガーとバルドイが秘密裏にやっていたそうだけど』

 

「そんな! なんでそんな馬鹿な真似を!」

 

『すぐに警察に連絡して確保してもらったんだけど、捕まった連中は異口同音に「台湾が親日なのが気に入らない」みたいなことを喚いていたわ。日本って自分の国が他の国に好かれるのをよく思っていない国民が多いのよね……』

 

「そいつら、なんでもっと早く死ななかったのかな? とにかく報告ありがとう。連絡終わり。次は吉報を持ってくる」

 

通信を終えた直後、俺は自分が一気に眉をひそめたことを自覚する。

何事かと思った姉さんと出月さんに全部話しておこう。

それから数十秒後。

 

「何だよそれ! どんな判断だ!」

 

出月さんが怒りのあまり吼えた。

姉さんも怒りが顔に出ている。

 

「沙枝! エックス!」

 

「沙枝さん! 恵玖須君!」

 

いきなり姉さんと俺を懐かしい声が呼んだ。

この声は……。

 

「エミット!? 翔子も!?」

 

「私達もウォーダス・テードに乗って台湾に来たんだけど、沙枝たちを驚かせようと思って翔子たちと口裏を合わせて内緒にしてたの」

 

「……たち? エミットと翔子以外にも来てたの?」

 

「渚に亜理亜に来須博士にコサック博士にライトット、んでもって望とミーマと灯留手、そして静流」

 

静流さんまで来ていたのか。

そう思っていたら、やいとと静流さんを連れて小花(ショーホァ)さんが慌ててやって来た。

 

「非常事態発生です! 塔内に潜んでいた違反者が一斉に活動し始めました!」

 

小花(ショーホァ)さんが何故知っているのか気になるけど、今は気にしている場合じゃない!

 

小花(ショーホァ)さんはやいとと静流さんとエミットを連れて安全と思われる場所へ避難してください!」

 

しかし、それに対してエミットが以外過ぎる答えを出した。

 

「その点は大丈夫! 小花(ショーホァ)も即席魔法使いだから! ついでに言うとやいとと静流も!」

 

「……ええ!? ……って、こっちにも来たか!」

 

エミットの衝撃的な一言に驚いている内に、こっちにも違反者が立ち塞がってきた!

虎にスライムに深海生物詰め合わせなどなど……。

よくもここまで形容しがたいのばかりが出てきたものだ。

そして、そんな連中を見る姉さんの表情も複雑になっている。

 

「あの虎さん、多分私が最初にやっつけた違反者かも。スライムさんはその次に、あのいろいろと混ざり合ったのはルールアンさんの次に、トカゲさんはキツネさんの前に、そんでもってキツネさんはバルドイさんの前に……」

 

要するに姉さんに撃退された違反者を手当たり次第にこっちに送ったわけか。

よくもまあ掻き集めたものだ。

 

「勇気来来正義招来!」

 

思わず呆れていたら、不意に小花(ショーホァ)さんが大声を出した。

そういえば、彼女も即席魔法使いだった。

服の隙間から光が漏れるのと同時に、服が光の粒となり、それを内側に吸い込むように飴色の鎧が具現化して小花(ショーホァ)さんの体を覆った!

 

「違反者どもから台湾自由民国を守る鐵甲花(ティカーホァ)!」

 

「サナ○マンですか?」

 

翔子さんが予想通りのツッコミを入れたが、小花(ショーホァ)さんは頷いただけで視線は違反者たちに向けていた。

 

「ロックマンエックス様。下の階層はあなたに恋する10名様を筆頭に決死の迎撃に打って出られております。彼女たちが下で戦っている内に早く!」

 

「……これより、敵拠点へ突撃する! この場にいる即席魔法使いは攻撃支援をお願いします!」

 

返事はない。

代わりに、姉さんたちの変身を告げる言葉が響く。

それが、返事の代わりだ。

 

「トゥインクルスターライツ・フォームアップ!」

 

「セイクリッドクリスタル・フォームアップ!」

 

「天舞装身!」

 

「コンディション・メガミックス!」

 

「変身……雷電戦花(シャンティエンチェンホァ)!」

 

姉さん、翔子さん、静流さん、やいと、小花(ショーホァ)さんの順番だ(どうやら小花(ショーホァ)さんは二段変身式らしい)。

俺も完全戦闘モードに移行しよう。

ちょっと嫌な予感がするから。

 

「コンディション・レッドと判断し、完全戦闘モードに移行。システム・オール・メガミックス!」

 

姉さんたちが全裸になる直前、俺の体を蒼い光が覆う。

その光の一部が俺の体を離れ、姉さんたちの周囲を飛び交い、いい感じに見せちゃいけないところをガードしてくれた。

一旦デフォルトの戦闘形態になった後、今度は白い光が俺の体を覆い、ライト博士から受け取ったアーマーが装着される。

 

「撃たれる覚悟がある以上、俺たちは立ちはだかる貴様らを撃つ!」

 

俺が戦闘モードに移行し終える直前に、姉さんたちも変身を終えた。

姉さんは赤を基調としたマイクロミニのワンピースを身にまとい、これまた赤い二又のピエロ帽を頭にかぶった格好に。

翔子さんは暗めの青を基調としたゴスロリチックな魔女服。

静流さんは白と黒を基調とした、姉さんと翔子さんのよりはアクション向きな衣装に身を包み耳のあたりにウサギの耳と羽飾りの折衷のようなリボンがついている。

やいとは上が白いティアードカラーと赤い半袖、下が桜色のフリル付きの二段ティアードスカートといういかにも内証で、後頭部に赤い縁取りの白いリボンがくっついていた。

そして小花(ショーホァ)さんは……なぜだろう、どことなーく母が着せられたあの衣装とよく似ているのを身にまとっている。

相違点は配色が割と違ってて、胸元を守る装甲と肩アーマーがある点ぐらい……かな?

 

小花(ショーホァ)さんのその姿、前に一度見た気が……。デジャヴ?」

 

「私もここに来る前に見たような……」

 

俺と姉さんの言葉に一気に気まずくなったらしく、小花(ショーホァ)さんが口を開く。

聞こえたのは、これまた意外過ぎる内容だった。

 

「……何年か前に台湾では日本のアニメ制作会社に大枚はたいて作画してもらった魔法少女アニメを放映していたんです。大人気だったので衣装や、大人向けのコスプレ衣装とかも結構作られました。

 

 私のこの姿はそのアニメの主人公の衣装のグレードアップ版、というイメージの産物でして……。おそらく、お母様が着せられたものは敵がどこかから入手したコスプレ用だと思われます」

 

そういうことか。

さて、臨戦態勢になったんだからまだこっちに気付いていない違反者を片付けよう。

そう思った矢先、ゼロからの通信が入った。

 

『エックス! そっちはどうだ?』

 

「公共機関用テナントとコンドミニアムのフロアに着いたばかりだよ。まだ気づかれていないけど、違反者が大挙して立ち塞がっている」

 

『ということはまだ無事ってことだな』

 

どうやら俺が心配で通信を入れてきたらしい。

 

『それと、ちょっと面白いことが分かった。違反者はこの世界では致命傷を追ったら強制的にエーテルランドに帰還させられるはずなんだが、なぜか今戦っている連中は「死体」がそのまま残っていやがる』

 

「……それって、どういうこと?」

 

『最後まで聞け。その代りなのか、連中はいつもよりしぶとかったぞ。……これはレイヤーの推測だが、塔内全域にエーテルランド出身者の耐久力を上げる結界がかけられていて、副作用として致命傷を受けたらそのまま死に直結するのかもしれん』

 

「……つまり、塔内では違反者であろうと死は免れないってこと?」

 

『そう言うことだ。チッ! また新手か! 必ずクワンガーとバルドイを地獄に落とせよ! 通信終わり!』

 

それからそれから。

俺はゼロから聞かされたことを姉さんたちに報告した。

 

「……というわけだから、姉さんたちは援護に徹してくれ。トドメは俺がさす」

 

「お気遣いは嬉しいのですが、私としてはそのご厚意に甘んじる気はありません。こっちは乙の昔に殺し合いに足を突っ込む覚悟はできています」

 

「私も。……すごく怖いけど、放っておいたらまたこっちにやってきて誰かを襲うのが目に見えているから!」

 

しかし、翔子さんと静流さんはそれをはねのけた。

完全に腹を括っているらしい。

静流さんは少し震えているけど。

 

「ロックマンエックス様。私は魔法使いになってからはや数年、エーテルランド以外の異世界から来た敵を何度か殺めたことがあります。今さら気遣いに甘える気はありません」

 

「あんた一人の手を汚させる気は無いわ。流石に静流さんと一緒で怖いけど、このやいとちゃんは惚れた男と一緒に血みどろになる覚悟ぐらいできてるのよ!」

 

小花(ショーホァ)さん……。やいと……。

問題は姉さんだ。

姉さんはやっていいかダメか以前に性格的に優し過ぎるから……。

 

「恵玖須。お姉ちゃんも、みんなと同じだからね」

 

「姉さん……」

 

「大丈夫。バルドイさんとクワンガーさんが絶対にやっちゃいけないことをしたから、覚悟はできたつもり。お姉ちゃんも一緒だから。一緒に突き進めば辛くはないから」

 

……姉さん。

ありがとう。

 

「総員、突撃! 今回は殲滅戦だ! 各自、敵は確実に仕留めてくれ!」

 

「「「「「おー!」」」」」

 

さて、意見が一つなったところで左手をチャージ!

連中の眼前に姿を見せると同時に……。

 

「スパイラルバスター!!」

 

違反者の内の1人を容赦なく物言わぬ死体に変えた!

それに合わせるように姉さんたちも一斉に攻撃しだす。

 

「あー、あー、レポーターが人質に取られてるので不詳カメラマンの出月一史がレポーター代行も兼任します! テレビをご覧の皆様、ここは戦場です! 80年代のハリウッド製アクション映画顔負けです!

 

 恵玖須君以外は魔法で戦っています。なのに魔法の力で銃火器出してそれをバンバン撃ってるから可愛いコスチュームがすげえ台無しです! すぐ横で眺めてる妖精のエミットさん。どう思われますか?」

 

「まあ、シュールであるのは確かね」

 

何かエミットが呑気なコメントをしているけど放置。

今はそれどころじゃない!

 

「エーテルランドが呼ぶ、妖精たちが呼ぶ、人が呼ぶ。悪を倒せと私を呼ぶ! 効け、悪の違反者ども! 私は自由と正義の戦士! 雷電戦花(シャンティエンチェンホァ)!!」

 

「……決め台詞がイナ○マンと仮○ライ○ーストロン○ーじゃん」

 

ドサクサに紛れるように小花(ショーホァ)さんが決め台詞を叫ぶ。

……俺もエミットのツッコミと似たようなことを思ったよ。

気を取り直すか。

イーグリード、力を貸してくれ!

 

「ストームトルネードォ!」

 

左右両方のバスターから繰り出された横殴りの突風が、トカゲ型の違反者を壁に叩き付ける。

既に静流さんに体の各所を切り刻まれてダメージが蓄積していたので、ストームトルネードがトドメになったらしく動かなくなった

次はこれだ!

 

「ファイヤーウェーブ!」

 

ダッシュで接近して、そのままスライムを焼き払う!

火の勢いと温度に物を言わせてスライムを一気に焼き払い、焦げたゲル状の物質に変える。

 

 

 

それからそれから。

数分後、一応敵は全滅。

俺たちは出月さんの案内でエレベータに乗り、ある階層に来た。

 

「メンテナンス用のハッチが開いてるだろ? 塔の外からは見えないように不可視魔法と光学迷彩がかけられてるけど、あそこから延びる通路を通ればもう1つの最上階に行ける。その通路を通らないともう1つの最上階も見えない仕組みになってるんだ」

 

出月さんの説明に納得する。

なるほど、うっかり迷い込まれないようにここまでしていたのか。

 

「ですが、ここまでしてなぜ気づかれなかったのでしょうか?」

 

「バルドイって奴が、塔のスタッフにも協力者がいるって口を滑らしてくれたよ」

 

翔子さんの疑問にも速攻で答えてくれた。

それなら辻褄は合うな。

小花(ショーホァ)さんは表情に怒りが思いっきり出ている。

 

「殺す。裏切り者は殺す。法律に触れないように巧妙な手口で絶対殺す」

 

言葉にも表れている。

静流さんが引いている。

 

小花(ショーホァ)さん、すごく怒ってる」

 

「そりゃ怒るのも無理ないわよ。……また団体だよ! さっきよりは数は少ないけど!」

 

エミットが違反者を感知したらしい。

それを裏付けるように新たな違反者たちが押し寄せてきた。

 

「クラッシュバスター!!」

 

違反者の内の1体を、ゼロのチャージショットが吹き飛ばした!

 

「ゼロ!」

 

「ショッピングモールフロアの連中はアクエアル達に任せた! こいつらは俺が何とかする!」

 

俺の返事を待たずにゼロは違反者たち目がけてエネルギー弾を撃ちまくった。

そんなゼロに引っ張られたかのように翔子さんと静流さん、小花(ショーホァ)さん魔力で作った銃を違反者たちに向け、魔力弾をばらまきだした!

 

「私達は是魯君を援護します!」

 

「沙枝ちゃんとやいとちゃんは恵玖須君について行ってあげて!」

 

「ロックマンエックス様、御武運を祈らせてもらいます!」

 

……助かります。

 

「姉さん。やいと。ここはゼロたちに任せて先に進もう」

 

「うん!」

 

「このやいとちゃんも異議なしよ!」

 

 

 

 

 

数十分後。

メカニロイドを撃ち落としながら空中回廊を突き進み、もう一つの最上階にたどり着く。

ラグビーボールを角ばらせたような形をしているな。

このまま内部に突入しよう。

 

 

 

「……この扉の奥だ。クワンガーとバルドイがいるのは」

 

ワールドスリーのマークが記されたシャッター型ドアを指さして出月さんが告げる。

確かに良く無い気配が2つ、扉越しに漂っている。

エミットも似たような反応を示した。

 

「……間違いない。確かにバルドイの魔力を感じるよ」

 

俺たちが近づくと同時に、ドアが勝手に開く。

さっさと来いと言わんばかりだな。

来てやろうじゃないか!

俺たちはもう1つの最上階の中枢部に入り込んだ。

そこにいたのは、地元のテレビ局のクルーに、砂山さんと横山さん。

そして……。

 

「パパ! ママ!」

 

「お義父さん! お義母さん!」

 

姉さんとやいとが両親のもとへ駆け寄ろうとするが、嫌な予感がした俺は慌てて2人の手を掴んで引きとめた。

その直後、予感は姿を見せた!

 

「それでこそエックスです。あなたが引き止めなければそのお2人は生まれたままの姿を晒すところだったでしょう。それと、そこのカメラマンさん。レポーター代行とナビゲート、お疲れ様でした」

 

残像を連れてブーメル・クワンガーが現れた!

その隣に、ボディビルダーのようなポーズをした、上半身タキシードで下半身が競泳水着の筋肉質の大男が現れる。

奴がバルドイだ!

 

「楠沙枝に加えて綾小路やいとも来たか。今日は大漁だな」

 

「このやいとちゃんは恵玖須だけのモノだから! それに、魔法でどうこうしようとしても無駄だからね! アクエアルの用意してくれた予防薬を事前に飲んでるんだから!

 

 ……味は最低最悪だったけど。ついでに言うとお義母さんも飲んでるから、お義母さんに魔の手を伸ばしても無意味よ」

 

バルドイの下品極まる舌なめずり交じりの言葉に、やいとは吼えて反論。

言い方が少し引っかかるけど、あんな変態違反者のなすがままにはなりたくないと思うのも当然だ。

しかし、バルドイは悪意ある目つきで言葉を続けた。

 

「なるほど。それのせいで楠沙枝とロックマンエックスの母親は正気を保っていられるのか」

 

「ママに何をしたんですか!?」

 

「飲んでもらっただけだよ。婦人病予防という副作用がある催淫漢方ジュースをな。飲めば不感症など即根治する強力な代物なのだが、水の精霊が作った薬のせいで力を発揮しきれなかったようだな」

 

姉さん悲痛な言葉に、あらんかぎりの悪意を込めて答えてきたか。

こいつ、よくも母さんにそんな物を!

そしてこんな奴に協力するなんて……。

 

「クワンガー! ビートブートがどれだけ嘆いたと思っているんだ!」

 

「ビートブートには申し訳ないことをしたと思います。ですが、ビートブートが人間の悪意で迷惑を被らない時代を得るには、スティグマさんについていくことが最善だったのですよ」

 

だからといって!

その選択は間違っている!

 

「その割にはあんまり悲壮な感じがしないわね。もしかして、あの野獣メガネに従った方が楽しいから、ってのもあるんじゃないの?」

 

「当たりですよ、お嬢様。レプリロイドを差別する人間を自由に裁ける、これは想像するだけでもとても楽しいことです。それに、あなたたちのような強い敵とも戦える。ましてやこんなに楽しい戦い、滅多にあるものではない!」

 

やいとのツッコミに対してもクワンガーは冷静に答えている。

やはり、ビートブート以外の動機もあったか!

 

「それが本音か!」

 

「建前口上にしていると断定する言い方は自重しなさい! それはそうと、戦いの度にあなたのデータを更新していますが……。恐ろしいほどに速く成長している。元から非常に高かった戦闘力が更に跳ね上がっています。これがあなたの可能性の成せる業、ですか!」

 

「馬鹿な! それが俺の可能性だとでもいうのか!? そんな可能性に何の意味がある?」

 

「その通り! そしてそれがあなたの可能性であること自体に意味がある!」

 

クワンガーは自信たっぷりに言い切った。

そんな可能性に何の価値が……!

俺が何かを言うよりも早く、今度は姉さんが怒りを込めて吼えた。

 

「私の弟をただの兵器みたいに言わないでください!」 

 

「いいえ! あなたの弟は、エックスは紛れもなく超兵器ですよ! 核と比べ物にならないほど安全に効率よく、膨大な数の敵を殲滅できる! そして戦いの中で成長していく。まさに兵器! 生ける最終兵器です!

 

 それこそがエックスの無限の可能性と無限の危険性の証明となる! 沙枝さん。あなたとご両親知っているはずです。機密保持の名目で非公開となっているレプリロイド誕生のきっかけを」

 

「!?」

 

クワンガーの思いもよらない指摘に姉さんも、縛られている父も、魔法少女のコスプレ衣装に着替えさせられて顔を真っ赤にしながらへたり込んでいる母も顔が引きつる。

 

「その反応を見る限り、。図星のようですね。私も知っているのですよ。スティグマさんから教えてもらいましたからね。1950年代初頭、国会議事堂地下で奇妙な物体が発見され、調査隊が結成されました。

 

 調査隊の中には、身内のつてで参加した若き日のDr.ケイリーもいたのです。彼女は物体の中身を解析して得た極僅かなデータを頼りに、スティグマさんを、レプリロイドの存在そのものを生み出しました。

 

 物体はそのまま国会議事堂地下に死蔵されましたが、今から12年前に何者かに盗まれ、11年前にDr.ケイリーが発見しました。ですが、彼女は死蔵し直すことを良しとせず、物体をあるご夫婦に託したのです。

 

 そして10年前! 物体の中に安置されていた中身は目を覚まし、件のご夫婦は彼を養子として迎え入れた。……その養子とはエックスのことですよ! 我々レプリロイドはエックスを基に創られたのです!

 

 エックスはレプリロイドであってレプリロイドに非ず。極めて近く限りなく遠い存在! レプリロイドという人種のアダムにしてイヴなのですよ! 私は確かめたい! そんなエックスの可能性と危険性を!」

 

結局、自分のエゴが優先か!

クワンガー!

 

「ブーメル・クワンガー! 貴様には、弟の幸せのために尽力する資格はない!!」

 

「……その言葉、ビートブートへの侮辱も兼ねていると解釈してあげましょう!」

 

俺の言葉に怒りを覚えたようだ。

だが、俺の方はここに到着する前から怒りは頂点に達したままだぞ!

そして俺の怒りを更に煽るようにバルドイが粘着質な言葉を投げかけて来る。

 

「ロックマンエックス。貴様は多くの乙女たちに愛されている。だが、果たしてお主は乙女たちを愛せるかな? 血の繋がらぬ姉を愛せるかな? 乙女たちの内の7人と、楠沙枝は自分以外の者たちに純潔を散らされた傷物だと知ってもか?」

 

「……知っていたさ。それがどうした? だからと言って貴様にくれてやる気は毛頭ない! 杜論もルナもマーティもやいとも! 華鈴さんもシャーロッテさんも麻希奈さんも桜樺も理瀬さんもシルキスさんもアクエアルも! そして姉さんも! 絶対に渡さない!

 

 俺は全員愛している!! 12人全員、俺のモノだ!!!」

 

分かっているさ。

全員を傷つける言葉だということぐらい。

だけど、あいつらのような悪党に渡すぐらいなら、俺は全員を愛する!!

 

「何度でも言う!! 杜論もルナもマーティもやいとも! 華鈴さんもシャーロッテさんも麻希奈さんも桜樺も理瀬さんもシルキスさんもアクエアルも! そして姉さんも! みんな俺のモノだ!!!」

 

断言したぞ!

どうだ! まいったか!!

 

「カメラマン兼レポーター代理の出月です。とりあえず、レポーターを発見・接近に成功したのでマイクを返却します。はい、横っち」

 

「テレビをご覧の皆様、お手数をかけました。……恵玖須君は死ぬ気なのでしょうか? 堂々の12股宣言をぶちかましました! これに対しては一言しか言えません。おバカーーーーーーー!!」

 

外野がうるさいけど、無視!

開戦の狼煙は既に上がっているから!

 

「チャージショット!」

 

「遅いですよ!」

 

くっ! 避けられたか!

クワンガーの速さは相変わらずだ。

 

「私もいるぞ!」

 

今度はバルドイの力任せの攻撃か。

ギリギリで避けたけど、マントヒッター並みのパワーだ!

姉さんとやいとも魔力で作った銃でクワンガー目がけて魔力弾をばらまくけど、巧妙にかいくぐられている。

 

「速い……!」

 

「こーなったらそこの変態男爵にターゲットチェンジ!」

 

やいとが言葉通りに実行しようとしたら……。

何とクワンガーがブーメランも兼ねている自分の角をやいと目がけて投げてきた!

ギリギリで避けたからよかったけど……。

 

「危ないわね!」

 

「パートナーの弱点をカバーしただけです。それと、バルドイの異名は『逢魔が時の紳色魔』ですよ? それではもう一度!」

 

またハイスピードで動き出した。

狭い室内でここまで俊敏に動くとは。

 

「パワーハウスを忘れてはならぬぞ!」

 

バルドイが俺目がけてパンチを仕掛けてきた。

だがその程度じゃ俺の頭突きが勝つ!

 

「せーのっ!」

 

ヘッドブレークをバルドイの拳に炸裂!

結構なダメージを受けたようだが、拳自体は魔力で自動回復しているようだ。

 

「頭突きで競り勝つとは!」

 

「ライト博士の技術力を舐めるな! 後、服装と同じで下半身ががら空きだぞ!」

 

バルドイの右足を掴み、振り回す!

ある程度回転した後に人質がいない方向に投擲!

 

「おお!? だが私はタダでは投げ飛ばされぬぞ! クワンガー!」

 

「!?」

 

投げ飛ばした隙を突かれ、クワンガーの角に掴まれてしまう!

そしてクワンガーは俺を天井へ垂直に投げ飛ばした!

 

「デッドリードライバー!!」

 

「うわっ!?」

 

天井に激突し、そのまま落下する途中で体勢を立て直したバルドイのシュートで父と母のいる方向へ蹴飛ばされてしまった!

 

「ワールドカップでも通用するオーバーヘッドシュート!」

 

「あうぅっ!」

 

今度は壁に激突したけど、何とか立ち上がる。

向こうは更なる攻勢に出ようとしたが、姉さんとやいとが十字砲火で妨げた。

 

「恵玖須に何するんですか!」

 

「死ね! 何はともあれ死ね! このやいとちゃんの手にかかって2匹とも無様に死ね!」

 

凄まじい激しさだ。

熾烈としか言いようがない。

この隙を突いて父さんを縛っている縄を引き散っておく

 

「恵玖須…!」

 

「父さん。母さんを連れてカメラを持ってるあの人のところに!」

 

「ああ。お前はどうするんだ?」

 

「姉さんとやいとと一緒に、クワンガーとバルドイを倒す!」

 

武器チェンジ。

これの追尾性能なら、クワンガーに対処できるかもしれない。

戦闘に戻ろうとした直前、こんどは母さんが俺を呼んだ。

 

「恵玖須ちゃん……」

 

「……大丈夫。必ず勝つから」

 

 

 

一方、沙枝とやいとは思念で現出させたAA(アッチソンアサルト)12が魔力の散弾を更にばら撒く。

しかし、クワンガーはそれすらも巧妙に避け、バルドイは魔法障壁でガード。

バルドイの方は圧されているが、結界の影響で耐久力が上昇しているのでそこまで不利には見えない。

 

「やはりここまで激しいと動きようがないな。クワンガー!」

 

「お任せあれ!」

 

バルドイは魔力障壁を張りつつ、クワンガーに合図。

クワンガーはそれに対応して、角を頭から外してから手に持ち、残像を残しながら沙枝とやいとに急接近。

 

「ここです! さあ、あなたたちのプロポーションを確かめさせてもらいます! ストリップ・スタート!」

 

クワンガーは速さに物を言わせて沙枝のコスチュームの、肩のフリルを一気に切り刻む。

沙枝とやいとが驚いている隙を突いて、更にやいとのコスチュームの袖を切り裂いた。

 

「きゃぁっ!」

 

「やぁんっ!」

 

「胸元を晒しますか? それとも意表をついてパンツを失敬して、少しずつスカートの裾を短くしてあげましょうか? 避けさせませんよ!」

 

2人が避けようとしたのを瞬時に察して、クワンガーは頭の角を投擲。

つのはブーメランらしい軌道を描きつつ沙枝のピエロ帽とやいとのリボンを切り裂いた。

 

「ここは羞恥プレイらしくコスチューム全体が細切れになってもらいましょう!」

 

「ふざけんじゃないわよ、このイレギュラー!」

 

やいとが銃を向けようとするも、バルドイが掌から放った魔力弾で銃を破壊されてしまう。

 

「へうっ!?」

 

「それなら! ……って、ええ!?」

 

沙枝が代わりに銃を向けようとするも、こちらはクワンガーが投擲した角に切り裂かれてしまう。

それを見逃すバルドイではなく、魔力で沙枝とやいとの足元に魔力のフックを複数現出させて足を拘束。

クワンガーは沙枝とやいとのコスチュームを、角を時には手に持ち時には投擲して少しずつ切り、そこからバルドイが引きちぎっていった。

 

「やー! 嫌ぁーっ!」

 

「やいとちゃん! あぅっ!」

 

羞恥で泣き出してしまったやいとを心配する沙枝だが、彼女の方も左袖をはぎ取られてしまう。

沙枝とやいとをいたぶるように、クワンガーがバルドイは更に続けた。

 

「まだまだですよ! この程度じゃエックスの怒りは測れない!」

 

「もっと悶えろ! 極上の思念を私に味わせるのだ!」

 

既に沙枝もやいともコスチュームは胸元とパンツしか残っていない。

沙枝も羞恥で泣き出しており、やいとはエックスの名を叫んだ。

 

「やめてください!  きゃぁああっ!」

 

「恵玖須! 恵玖須―!!」

 

そしてクワンガーは、敢えて残したパンツと胸元に狙いを定めた

 

「さあ、ストリップの醍醐味ですよ!」

 

直後、クワンガーは敵意を察知して避けるも、飛んできた弾は軌道を変えてクワンガーを追尾。

直撃を食らったクワンガーは膝を突いた。

 

 

 

父さんを助けている間に好き放題して!

俺はホーミングトーピードでクワンガーを黙らせた。

念のためにもう1発!

 

「ホーミングトーピード!」

 

「ぐはっ!?」

 

クワンガーがついにダウン。

今度はバルドイだ!

 

「スパイラルバスター!!」

 

「うがぁっ!」

 

顔面に直撃して、バルドイは膝を突いた。

その隙を突いて姉さんとやいとは足に力を込めてフックを引きちぎる。

そしてクワンガーをストンピングしだしたから、まずはバルドイの方だ!

 

「姉さん! やいと! 鈍器を出してくれ!」

 

「え? ……うん!」

 

「あの魔男をブチのめしてちょうだい!」

 

唐突なせいか俺の言いたいことを理解するまでに少し間があった。

でも姉さんが大きめのスパナと、やいとが片手で持てるギリギリの小ささの岩を現出してくれた。

これならノープロブレム!

フルスイング!

 

「オラッ!」

 

「ガフッ!?」

 

スパナの一撃をアゴに食らってバルドイはやっとダウン。

あおむけに倒れたからそのまま馬乗りになって……!

 

「オラオラオラオラオラッ!」

 

スパナと岩で顔面を滅多打ち!

容赦してたまるか!

こっちは怒りが既に爆発しているんだ!

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラ、アッハッハァ~ッ!」

 

多分、この時の俺は笑っていたと思う。

ひとしきりグチャグチャに殴ってバルドイを満身創痍にした。

だけどこれで終わりはしない!

チャージしてから……。

 

「ショットガンアイス!」

 

氷のソリが出てきたのでそれを掴む!

持ち上げる!

狙いは定めた!

 

「食らえ、このエーテルランドの面汚しがぁぁぁぁぁ!!」

 

うずくまるバルドイ目がけて投擲!

バルドイの背中に見事に直撃した。

さあ! 次はクワンガーだ!

 

「バ、バルドイをそこまで叩きのめす、とは……! 凄まじい強さで……すぬぁっ!?」

 

「害虫さんは黙っててください!」

 

「くたばれ! このエロ害虫!」

 

姉さんとやいとが更に激しく蹴りまわす。

そんなやいとを言葉を使わずに静止し、バルドイを指さすことで矛先を奴に向けさせる。

姉さんとやいとは釘バットを現出させてバルドイを滅多打ちにしだす。

俺は狙いをクワンガーに定める。

 

「……! その顔は…! 随分久しぶりですね!」

 

「ショットガンアイス! エレクトリックスパーク! カメレオンスティングー!」

 

「ぐほぉー!」

 

特殊攻撃の波状攻撃だ!

クワンガーが盛大に悲鳴を上げる中、俺は更に攻勢を強める。

 

「ショットガンアイス! エレクトリックスパーク! カメレオンスティング! ローリングシールド! ファイヤーウェーブ! ストームトルネェェェェェェェェーッド!」

 

「ほげぁー!」

 

まだまだ!

第三波!

 

「ショットガンアイス! エレクトリックスパーク! カメレオンスティング! ローリングシールド! ファイヤーウェーブ! ストームトルネード! ホーミングトーピードォォォォォォォォォッ!」

 

「ぬわぁぁぁぁぁっ!」

 

波状攻撃でやっと大人しくなったらしく、クワンガーはズタボロの状態で倒れたまま、ピクリとも動かない。

バルドイの方は……あれだけ殴ったのに起き上がってきた!

追い打ちをかけようと思った直後に後ろからさっきを感じたので慌てて回避したら、横をクワンガーの角が掠めた。

 

「クワガタムシは死んだふりができるのですよ!」

 

自信満々にそう言った直後、残像を残して眼にも止まらない速さで姉さんとやいとの釘バットを斬り捨てる。

バルドイを抱え上げ、そしてまた高速移動して距離を取った。

 

「不思議とは思いませんか? 何故できたての観光地に我々が基地を構えていたのか? 何をしていたのか? これが答えですよ」

 

クワンガーが叫ぶと、グロッキーから回復したバルドイが指を鳴らす。

直後、室内に設置されたディスプレイが世界地図を映し出す。

 

「この塔には非常に優れたエネルギー運用システムが採用されています。強力な自家発電システムを持ち、半永久的に電気を貯蔵できるものの一度に開放することが難しい電子コロイドを一気に電力へと戻す機能もあり、エネルギー無線伝達システムまで備えてある。

 

 万が一台湾国内で大規模な停電が起きた時に備えての設備です。何故観光スポットにそんなものがあるか? 簡単です。この塔が軌道エレベータのプロトタイプだからです。軌道エレベータはサイズ上、人的被害が最小限で済むところへの建造を余儀なくされます。

 

 なので、必要な電力もひたすら長いケーブルで発電所から取って来るより、自前の発電機を持っていた方がコストパフォーマンスも優れて合理的。だからスティグマさんはそれを嗅ぎ付け、兵器として利用しようと考えたのですよ。

 

 膨大な電力で破壊光線を生み出し、クラッキングして乗っ取ったキラー衛星に無線伝達システムで送信し、地球上の標的を攻撃。そのためにこの塔に基地を構えたのですよ! ちなみに電子コロイドはチャット・ブラン発電所で作られたものです。

 

 パリを真っ先に攻撃することを条件に発電所の元職員たちは喜んで協力してくれましたよ。

 

 何故膨大な電力を作れるのに外からエネルギーを持ってきたか? 電力消費で怪しまれないためです。レーザーの連続発射で塔が停電したらそれこそ不毛ですからね。要するに用心のためですよ。スティグマさんは自家発電システム以外の機能目当てでしたからね。

 

 ちなみに電子コロイドは既に全部使用済み。この『もう1つの最上階』全域を膨大な量のエネルギーが駆け巡り、発射の時を静かに待っています。

 

 それと、エネルギーは私の電子頭脳とバルドイの魔力で制御しているので、我々が落命すればエネルギーが暴走し、ここは吹っ飛んでしまいますよ」

 

クワンガーは相変わらず冷静に説明してくる。

それに続くように今度はバルドイが説明してきた。

 

「ロックマンエックスよ。私とクワンガーが、お主に惚れている乙女たちの中に何故楠沙枝以外にも純潔を奪われた者がいることを知っていたか、気にはならなかったか?

 

 山上桜樺の場合はアルマージが気づかぬ内に言及してしまったが、それでも純潔を奪われたと気付いた者は少数であろう。我々が何故それを知っているか? スティグマが探し当てたからだよ。

 

 当事者たちの協力を得ているからスティグマは容易く情報を集め、我々も容易く知ることができた。ああ、そういえば、マスコミにもそれとなく流したな。アラビア各国といい、日本といい、性犯罪の被害を受けた女性に対しては排他的な者が多いからな。

 

 戯れに報道被害も味あわせてあげようと思ってリークしたのだった」

 

……それであの新聞記者は姉さんたちが非処女であることを知っていたのか!

あの悪徳記者は必ず潰す!

決意を新たにしたところで、姉さんが話しかけてきた。

 

「恵玖須。認証コードをお願い!」

 

「姉さんにも聞こえたんだね」

 

「うん!」

 

「それなら要請コードを頼む!」

 

俺がそう叫んだ直後、姉さんは大きな声で要請コードを叫んでくれた。

 

「いくわよ! 恵玖須! R.O.C.K-SET.T.E.R!!」

 

よし! 音声ガイダンスが聞こえた!

 

「システム・コンファーム!!」

 

クワンガーのせいでボロボロになっていた姉さんの衣装が、元通りになる。

その直後に、蒼い追加装甲が光を放ちなが装着され、最後にバイザーがピエロ帽を固定するかのように姉さんの頭部に装着された。

そのついでのように、やいとの衣装も元通りになっている。

 

「この瞬間がやってまいりました! 後は目の前の悪党の死亡シーンをこの目に焼き付けるだけとなりました!!」

 

横山さんの熱のこもったリポートを合図にしたかのように、ロケットランチャーを現出。

よく見ると、レジデント・エヴィル2のロケットランチャーと全く同じデザインだ。

 

「バルドイさん! お命覚悟!!」

 

大きめの魔力弾が発射された。

バルドイは慌てて魔力障壁を展開したが、思いっきり強化された魔力弾の前に砕け散ったらしく、バルドイ自体も大きなダメージを受けた。

現に、タキシードと競泳水着は完全に焼け落ちて嬉しく無いことこの上ない姿となり、体の各所にできた火傷も治る気配が見られない。

 

「クワンガー! バルドイ! 今日が貴様らの命日だ!」

 

「本気ですか……? 我々の死出の旅の道連れはあなた1人では済まないのですよ? 二次被害もどれほどの物にになるか……」

 

「父さんと母さん、出月さんたちはやいとと姉さんが魔法障壁で何とかしてくれる。それに、俺はここで死ぬつもりはない」

 

俺がそう言い切った直後、エミットが追い打ちとばかりに畳み掛けてくれた。

 

「後、ここが吹っ飛んだ際の瓦礫とかの心配もいらないから。翔子から通信魔法があって、あのメンテ用のハッチからここまで、静流と小花(ショーホァ)と一緒に、ボール状の障壁を張ったから二次被害の心配もないそうよ」

 

これにはバルドイも絶句するしかなったようだ。

完全に固まっている。

一方、クワンガーの反応は少し違っていた。

それに引っ張られるかのようにバルドイも続く。

 

「…………直接確かめようと行動した甲斐があったものです。ですが、そう簡単にはやられませんよ!」

 

「勝つのは我々だ! 最後まで諦めぬ!」

 

往生際の悪い!

大人しく散れ!

 

「やいと! 父さんたちを魔力障壁で守ってくれ!」

 

「このやいとちゃんにお任せ!」

 

俺が頼むと同時に、やいとは父と母と出月さんたち、そしてエミットと自らをラグビーボールみたいな形の魔力障壁の内側に内包。

これで憂いは無い。

後は引導を渡すだけだ!

 

「恵玖須! 最後はお姉ちゃんと一緒に!」

 

「そうだね。姉さんと一緒に!」

 

「「ダブルアタック・スタート!!」」

 

止めを刺す瞬間がやって来た!

俺たち姉弟が止めを刺す瞬間が!

 

「あなたが目覚めた時が始まりだった」

 

「そうと知らず互いを好きになった」

 

「私にはあなたが、あなたには私!」

 

「だから俺たちはお互い、寄り添えた!」

 

「「『愛・おぼえていますか』!!!」」

 

蒼く光る魔力弾が俺たちの周囲で大量に具現化。

姉さんは筒状の大きい機関銃を現出させて両手に持って構えた。

俺も両手のバスターを構える。

姉さんの機関銃と、俺のバスターが一斉に火を吹くと同時に魔力弾も角ばった軌道を描きながら突貫!

クワンガーとバルドイに容赦なく致命傷を与えた!

 

「こ……この力は……! そう、可能性と危険性! エックスの可能性と危険性です! 素晴らしい……! けれど、私がここで死んだらビートブートが……。ビートブートォォォォォォッ!!」

 

「認めぬ! 認めぬぞ! 私は私が欲する思念を僅かしか味わえていないのだ! なのに私が死ぬなど……! もっと思念を! 思念を味あわせろ! 女たちの『羞恥』の思念をー!!」

 

対照的な断末魔を残し、クワンガーとバルドイは爆破四散。

直後……。

 

 

 

 

 

クワンガーとバルドイの死によって姿を隠しきれなくなった『もう1つの最上階』は、その姿を完全に現した直後に、大爆発。

しかし、翔子たちが事前に貼ってあった魔力障壁のおかげで瓦礫による二次災害は起きなかったが。

完全に爆発が収まった後、翔子たちは魔力で瓦礫をゆっくりと地面に下した。

魔力障壁の影響で煙自体はまだ漂っていた。

しかし、それもすぐに晴れていき……、そして太陽がヒーローの姿を照らす。

 

 

 

「……あはは。助かりました。魔法様様……です」

 

横山さんは完全に脱力している。

地元テレビ局のクルーも同じ状態。

まあ、無理もないけど。

 

「出月ちゃん。俺、今まで恵玖須に何度も心の中で感謝してたけどよ、ここまで感謝したのは南極の時以来だよ」

 

「俺もです」

 

砂山さんと出月さんはしみじみとしている。

やいとは……顔を赤くして俺に抱き着いていた。

……あの無茶な愛の告白はやはりまずかったようだ。

姉さんは、父さんと母さんに寄り添っている。

何はとあれ、この件は一件落着か……。

 

 

 

数分後。

俺たちはようやく地上に戻った。

母さんは念のため近くの病院に搬送され(母さんの本来の服はエミットが回収してくれていた)、父さんはそれに付き添った。

大歓声を浴びながら、俺は姉さんとやいと一緒にいた。

歓声に混じって、あの新聞記者の悲鳴が聞こえたような気がする。

首を傾げると、ゼロと小花(ショーホァ)さんが話しかけてきた。

 

「頑張ったな」

 

「お疲れ様でした。あ、さっきのブラックジャーナリストが何か文句を言うために近づこうとしていたのですが、スタッフに命じて無力化させておきましたので」

 

さっきの悲鳴は幻聴じゃなかったのか。

そういえば、翔子さんと静流さんはどこだろう?

 

小花(ショーホァ)さん、翔子さんと静流さんは?」

 

「お二人なら、あなたの恋人の皆様をこちらにお連れしていますよ」

 

……そういえば、勢いとはいえ腹を括って告白したんだった。

やれやれ、我ながら思い切ったことをしちゃったな。

 

「長生きできるかな?」

 

「少なくとも大丈夫だろう。昨日、お前が風呂から上がった後、沙枝たち12人は何を考えたのか『淑女協定』を結んでな」

 

「なにそれ?」

 

「お前が誰か1人を選んだら残りの11人は潔く諦めるが、万が一お前が12人全員を選んだら、12人全員でお前を共有しよう、って約束だ。信じられないならレイヤーにも聞いてみろ。俺と一緒に湯船に浸かりながら沙枝たちの会話を聞いていたからな」

 

凄い結論にたどり着いたんだな……。

でも、おかげでちょっと楽になった気がする。

そう思っていたら、翔子さんと静流さんが、俺の恋人たちをこっちに連れてくるのが見えた。

そして、俺の両隣にも……。

 

「手を握っていい?」

 

「もうちょっと大胆になってもいいのに」

 

やいとはまんざらでもなさそうな態度でそう言った。

手を握ったら露骨に嬉しさが顔に出た当たり、照れ隠しなんだろう。

それじゃ、姉さんの腰に手をまわして、抱き寄せておこう。

 

「恵玖須!? ちょっと……人が大勢いるのに」

 

姉さんは嬉しにしつつも、あっという間に顔が真っ赤になった。

 

「見せつけてるんだよ。だって、姉さんは俺の恋人で、同時に俺と姉さんは初恋同士なんだもん」

 

 

 

 

 

 

 

 

WEAPON GET! 『ブーメランカッター』!

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

ワールドスリーの本拠地がようやく明らかになった。

決戦が始まり、俺たちは総攻撃に挑む。

でも、俺はその時はまだ知らなかった。

友の形見が、更なる力をもたらすことを……。

次回! 「閃光、命を懸けた果てに」。

そして、ゼロは「ロックマンゼロ」になる………………。

 

 

 

 




オマケ:ボスキャラファイル



時空の斬鉄鬼 ブーメル・クワンガー

クワガタムシ型(より正確なモチーフはギラファノコギリクワガタ)のレプリロイド。
第17精鋭部隊の元隊員であり、残忍な気分屋である一方、物事を冷静に分析できる頭脳派でもある。
異名に違わぬ容赦のない戦い方と眼にも止まらぬ超高速移動が特徴。
育った地域は日本では例外的にレプリロイドへの差別感情が強い人間が多く、地元警察とイレギュラーハンターが衝突することも珍しくなかった。
そのためレプリロイド差別(及びそれ以外の人種差別)に対しては過敏で、大変攻撃的な面を見せる。
イレギュラーハンターになった動機は「真っ当な人間とレプリロイドを守るため」であり、「人間もレプリロイドも、精神に異常がある犯罪者になれば等しくイレギュラー」という思想も持っていた。
郷土愛も無く、ある事件において件の地域でイレギュラーと戦闘となっても、被害の甚大化回避を優先して同地域でイレギュラーを意図的に刺激し、多数の死傷者が出る大惨事を起こしている。
この一件は地元の一部住民と警察の妨害があったことから穏便な解決が不可能となったが故の止むを得ない判断と見做されお咎めなしとなり、結果的にではあるが差別する者たちが激減したことによりレプリロイド差別が解決するきっかけともなった。
その前後で歳の離れた弟、ビートブートが起動している。
ビートブートに対しては優しい兄であり、ビートブートも彼を素直に慕う出来のいい弟である。
ヘイトクライムに対する厳罰には極めて肯定的であり、それ故にヘイトクライムへの厳罰を良しとしない日本の司法とそれにかかわる人間への不信が、世界中の司法と人間の司法関係者にまで対象が拡大。
どうしたものかと考えていたところにスティグマにワールドスリーへの参加を持ちかけられて冷静な思考を巡らした末に、レプリロイドを差別する人間たちを裁ける楽しみがあり、何よりビートブートがレプリロイド差別を受けることのない時代が来ると判断。
自分を慕うビートブートへの裏切りだと分かっていながらも己の判断が正しいと強く信じてワールドスリーに参加した、正しい意味での確信犯。
スティグマからエックスの出生を聞かされており、同時にエックスの無限の可能性と無限の危険性にも気付いていた。
エックスの完全に開花した無限の可能性と無限の危険性をこの目で確かめるため、楠夫妻を人質に取るという卑劣かつ大胆な方法に打って出るが……。



逢魔が時の紳色魔 バルドイ

エーテルランドからやって来た違反者(人間の思念を求め、エーテルランドから人間界へ違法に渡航した者たちの総称)の1人。
違反者の内3割は性犯罪目的であり、彼はその3割に属する。
女性の羞恥心を好み、沙枝も甚大な被害を受けた。
沙枝に敗北して強制送還されたのだが、いつの間にか再び人間界に来て潜伏。
偶然所在を掴んで秘密裏に接触してきたスティグマの誘いに乗り、ワールドスリーに参加する。
旭日塔建造に関わった日本企業内の不穏分子を煽って自分たちのアジトを塔の頂上に造らせ、そこで密かに活動していた。
その最中、偶然にもエックスたちが台湾政府に招待されて旭日塔に来たのを知って行動を開始。
クワンガ―の意図を知ってか知らずか、沙枝を再び辱め、今度は母親をも毒牙にかけるためにクワンガ―が提案した人質作戦に乗るが……。





ボスキャラの元ネタ及びその他雑記

クワンガー
・性格はオリジナル版とボンボン版、イレハン版のごっちゃ混ぜ。ただし、弟への情の有無はボンボン版でもイレハン版でも触れられていなかったので、兄弟愛の強さは本作オリジナルです。
・このキャラの親切丁寧な説明のせいで文字数が思ってた以上に増加した気がする。

バルドイ
・『魔法少女沙枝』の原作から出ている敵。ゲーム版のスタッフ(mille-feuille社員)曰く、声を当てるならアー○ストロング少佐の中の人、とのこと。断末魔もそれを意識して考えました。
・変態、見た目で判別できるレベルの変態。どんな見た目をしているかはmille-feuilleの公式サイト(18禁だから未成年は行ったらダメだよ)にある「魔法少女沙枝 vol.2」の紹介ページのキャラクター紹介コーナーを見てみよう。
・エックスを怒らせ過ぎたのが運の尽き、クワンガー共々命を縮める結果となりました。悪党だから念仏は唱えないけど。

他のキャラクターや設定あれこれ
・旭日塔の元ネタはPCゲーム「○マンド&コン○ー:○ッドア○ート3」に出てくる勢力、「エンパイア・オブ・○イジン○サン」。どんな勢力家は各自グーグルで調べてください。
小花(ショーホァ)はオリジナルキャラ。名前は決まるまでがちょっと大変だった。後、変身プロセスと決め台詞の元ネタは既に作中で言及されています。
・天声新聞の記者は実在する某新聞社の元記者がモデル。名前自体もモデルの名前を参考に捻りを入れたものです。そして天声新聞のモデルは言わずもがな。
・前回に引き続き炸裂したエックスの声優ネタ。そのせいでエックスの怒りの度合いが激しくなり過ぎたのは認めるしかない。
・アクエアルが用意した、対エロピンチ用予防薬。どんな味かというと……………………『エロゲのヒロインがほぼ確実に飲むことになる動物性ホワイトソース味』とだけ言っておきます。
・衝撃の12股宣言をぶちかましたエックス。当初は8股で済ませる(それはそれでアレだけど)はずが、「マーティ入れたら9股になるな。それだと中途半端な気がするから3人追加して12股にしよう」と発案して今の状態に…………。
・沙枝のコスは原作小説『魔法少女沙枝』でのみ出てた初代と、ゲームでお馴染みの二代目の2パターンがあります。劇中では沙枝が着ているのは初代の方。ちなみに二代目の方はやいとのコスとして流用しました。どっちも可愛かったので。





普通のあとがき
・PS3に夢中になり過ぎて執筆が遅れに遅れ、結局年をまたいでしまった……。次は今月以内に書き上げたいものではあるが……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。