ナイフを腕に刺したせいかHPが2割程削れてしまう。だが、そのような事を気にしてる場合ではない。優華は覚悟を決めてこう叫んだ。
「紅き焔の魔剣レーヴァテイン、我の力を贄にここに具現化せよ!」
次の瞬間、祥吾の張った結界がレーヴァテインの炎によって内部から破裂した。その炎によって祥吾もすみれもダメージを負っていたが、優華の口の中にすかさずポーションを突っ込む。
「やった!」
「これで上手く……優華?」
意識の中に何かが入り込んでくるのがはっきりわかる。これは本当にゲームなのか?そんな疑問が薄れ行く意識の中で浮かんだ。あまりの苦痛に喉の奥から断末魔にも等しい叫び声が迸る。
髪が金色に、背中からは七色のクリスタルが輝く羽が伸びる。
神崎さんが恐怖のあまり地面にへたり込む。
「フランドール……スカーレット……」
「神崎さん、危ない!」
祥吾がすみれを庇った瞬間、祥吾の背中にレーヴァテインが突き刺さる。
「コレデ……ヒトリメ……」
破壊と殺戮の衝動に駆られた、優華だったものが残忍な笑みを浮かべて剣を引き抜いた。
「すみれ……にげ……ろ……」
逃げようとするが、腰が抜けて力が入らない。祥吾がポリゴンの欠片となって消えて行くのをただ見ていることしか出来ない。そしてすみれの心臓に灼熱の剣が刺さった。肉の焦げる匂いが辺りに充満する。そして、すみれはポリゴンの欠片になって祥吾と同じ運命を辿った。
「あらあら、能力が不完全なせいで暴走してるのね。いいわ。相手してあげましょう」
幽々子は、これまで出会ったことのないほどの強敵に思わず笑みがこぼれた。
そんな笑みに応えるように、理性を失った優華は笑い返した。
その頃、プレイヤーホームで復活した祥吾とすみれは悩んでいた。どうして優華はあのような状態になってしまったのか、と。初めに話したのは祥吾の方だった。
「多分、何らかのペナルティが発生したんじゃないかな。運営も流石にこのポーションリジェネには気付いているだろうし、前回のアップデートで何か修正でも入ったのかもしれない。」
「でも、優華は完全に理性を失っていた様に見えたけど、あんなペナルティが本当にゲームに存在するのかな?何らかのバグかな?」
「いや、流石に理性が飛ぶ様なバグなんて致命的過ぎるだろ。その上、今までそんなバグはポーションリジェネを使ったプレイヤーの間では報告されていないはずだ」
色々と引っかかるところが多すぎる。
二人は再び頭を抱えて悩み始めた。