地面から伸びる光の柱。その中から、青と紫の狭間のような体の色をした、マフラーをつけた戦士が現れる。顔についた目元に、ジャンク・シンクロンの面影があった。中々スタイリッシュで恰好いい。
俺の人生初のシンクロ召喚モンスターとしては十分過ぎるのではないだろうか。ジャンク・シンクロンと合わせて使いやすいし、今後デュエルモンスターズを続けていくのなら、恐らく多用するだろう。
それはともかく。効果処理である。
「シンクロ召喚成功時、ジャンク・ウォリアーの効果を発動。チェーンして、シンクロン・キャリアーの効果を発動します。シンクロン・キャリアーは、「シンクロン」チューナーが戦士族か機械族のシンクロモンスターのシンクロ素材として墓地に送られた場合、機械族・地属性・レベル2・攻撃力1000守備力0の「シンクロン・トークン」1体を特殊召喚出来ます」
シンクロン・キャリアーの背中についたクレーンが降りて、地面にできた穴に入る。
その中から、エンジンを一つ、取り出して場に置いた。これがトークンらしい。攻撃力1000とシンクロン・キャリアーよりも高いが、どうやって攻撃するのだろうか。気になる。
「ジャンク・ウォリアーの効果。シンクロ召喚成功時、場にいるレベル2以下のモンスターの攻撃力を自身に加えます。パワー・オブ・フェローズ」
場にいるのはシンクロン・キャリアーとシンクロン・トークン。キャリアーは0、トークンは1000。よって加えられるポイントは1000ポイント。
2300+1000=3300。3000の大台は突破した。
「メイン終了、バトルフェイズへ。ジャンク・ウォリアーでミラージュ・ドラゴンに攻撃。スクラップ・フィスト」
飛び上がったジャンク・ウォリアー。背中のエンジンが動き出し、ブーストが点火。自由落下も合わせ、かなりの速度でミラージュ・ドラゴンに迫り、その右拳を叩きつけて破壊した。
「続いてシンクロン・トークンでダイレクトアタック」
攻撃指示をしたのはトークンなのに、何故か動いたのはシンクロン・キャリアー。背中のクレーンが伸び、トークンを持ち上げる。
そのまま振り始めた。グングン速度と勢いを上げて行くトークン。やがてそれが最高潮に達した時、ポーンとクレーンから離れて飛んでいった。ぐんぐん飛んで、静香先輩に当たる。予想外だったのか、ぽかんとした様子の静香先輩。表情の変化は乏しいだろうが、俺も似たような感じだろう。
シンクロン・キャリアーのクレーンが相手の場に伸び、飛んでいったトークンを回収、俺の場に持ってきた。ご苦労様です。今度は最初から、投げなければいいと思うよ。
とりあえず、合計ダメージは2700で、8000-2700=5300が、静香先輩の残りライフ。先手は取れた。
「バトルフェイズ終了。メイン2も飛ばしてエンドフェイズです。ターン終了」
「私のターンだな。ドロー、そしてスタンバイからメインフェイズ」
気を取り直したように、静香先輩がカードを引く。引いたカードを見、にやりと口角を釣り上げた。
「エースにはエースだろうな。私は龍の霊廟を発動する。デッキからドラゴン族モンスターを墓地に送り、その時送ったモンスターが通常モンスターであれば、更にドラゴン族を墓地に送れるカードだ」
ボルト・ヘッジホッグやジャンク・シンクロンのようなカードがあるのだから、カードを墓地に送るというのが有効な戦術というのは分かる。そう考えると、たった1枚で任意のカードを2枚も墓地に送るというのは中々破格だ。
「効果で通常モンスターのラビー・ドラゴンを墓地へと送り、追加で
サーチ効果。手札枚数だけ見るなら、ターン開始時と変わらない。墓地に好きなカードを落としただけだ。だが、加えたカードはレベル8。モンスターがいない今、あのカードを出す術は無い……筈。あの伏せカードが特殊召喚効果なのだろうか。
そんなことを思っていると、静香先輩は加えたカードではない別のカードを手に取り、場に出した。奇天烈なマスクとコートをまとったモンスター。HAHAHAという笑い声が、何か馬鹿にされてる気がする。
「正義の味方カイバーマンを召喚!」
正義の味方?
「カイバーマンの効果を発動! このカードをリリースすることで、手札から青眼の白龍を特殊召喚する!」
「さっき加えたカード」
「出でよ、青眼の白龍!」
ゴゴゴと雷鳴のような音が響き、天から雷の如き光が降り注ぐ。その光の中から、白銀の体を持ったドラゴンが、その姿を現した。
「お、おおー」
少し気圧されるも、その姿は俺の中にぼちぼち眠らないでもない少年心を燻り、興奮させる。
「フハハハハハハハ!」
静香先輩がすっげー高笑いしてる。いきなりナチュラルハイにでもなってしまったのだろうか。
それはそうと、青眼の白龍である。攻撃力3000だが、通常モンスターで効果はなく、こちらの場には攻撃力3300のジャンク・ウォリアーがいる。出てきた所で、さしたる驚異はない。
「バトルだ! いけ、青眼の白龍! シンクロン・キャリアーを攻撃! 滅びの爆裂疾風弾!」
青眼の白龍の口から光線が放たれ、シンクロン・キャリアーを一瞬のうちに破壊した。衝撃が襲ってくる。顔をしかめながら、ライフを確認。当然3000きっかり削られて、残り5000。
「ターンエンドだ!」
「俺のターン、ドロー」
さてと。どうしたものか。
手札に打開策が無い。そもそもこのデッキに入っているモンスター除去カードはジェット・ウォリアーだけだ。後は殴って突破するしかない。
「つまり攻撃あるのみということだな。スタンバイからメイン。ジェネクス・ニュートロンを召喚」
ジャンク・ウォリアーのエンジンが点火。ブースターが再び火を噴いた。
「ジャンク・ウォリアーで青眼の白龍を攻撃。スクラップ・フィスト」
唸りを上げ、拳を構えたジャンク・ウォリアーが青眼の白龍へ迫る。
伏せカードが攻撃反応の罠なら、さっきのターンに発動したはずだから、大丈夫だと思っていたのだが。そうは問屋が卸さないらしく、ダメージステップに入って、静香先輩は伏せカードを起動した。
「竜魂の城を発動! 墓地のミラージュ・ドラゴンを除外し、青眼の白龍を選択! 攻撃力を700ポイント上昇させる!」
「うっ」
攻守変動系だった。墓地のカードを除外しないといけないから、先程は発動できなかったらしい。攻撃力が上がって、3700。これはきつい。
「迎え撃て、滅びの爆裂疾風弾!」
光線がジャンク・ウォリアーを粉砕する。ライフが更に削られた。4600。
だが、それ以上に攻め手が居なくなったのがきつい。もはや打点で戦えなくなってしまった。
「メイン2。シンクロン・トークンを守備表示に変更して、エンドフェイズ。ジェネクス・ニュートロンの効果。デッキから機械族チューナーであるジェット・シンクロンを手札に加えます」
バウンス用にジェット・ウォリアーの為のカードを加えておく。後は次のドローしだいだ。
「私のターン! ドロー! そしてスタンバイからメインフェイズへ入る! アレキサンドライトドラゴンを召喚!」
成金趣味のような、やたらキラキラしたドラゴンが出てきた。通常モンスターながら、攻撃力2000。超強い。
「バトル! 青眼の白龍でジェネクス・ニュートロンを攻撃! 滅びの爆裂疾風弾!」
俺のモンスターが再び青眼の白龍の一撃に沈む。ライフが1900とごっそり削られた。
次のアレキサンドライトドラゴンが、シンクロン・トークンを爪で切り裂いて破壊。俺の場はガラ空きになる。
「メイン2。私はカードを1枚伏せてターンエンドだ」
「俺のターン」
ドローして、スタンバイからメイン。
「いいカードが引けました。まずはジェット・シンクロンを攻撃表示で召喚」
小型ロケットのようなモンスターが、飛ぶようにあらわれた。
「更に墓地のジェネクス・ニュートロンを除外して、暗黒竜 コラプサーペントを出します」
黒い宝玉をつけた、アレキサンドライトドラゴン程の大きさの黒い竜が姿を現す。
「お楽しみタイムです。レベル4の暗黒竜 コラプサーペントにレベル1のジェット・シンクロンをチューニング。シンクロ召喚。ジェット・ウォリアー」
「口上は無しか」
「wikiに書いてなかったので。考えてもませんでした」
必須らしいし、今度出すときまでには考えておこう。
「ジェット・ウォリアーの効果。シンクロ召喚成功時、相手フィールドのカード1枚を手札に戻します。青眼の白龍を手札に」
「む」
このデッキ唯一の除去効果を使って、一先ず青眼の白龍は除去。まあ、何かしらの方法でまた出てくる可能性は否めないが、とりあえず今はこれでいい。
「さらにコラプサーペントの効果。このカードが場から墓地に送られた場合、デッキから輝白竜 ワイバースターを手札に加えます」
これでよし。
「墓地の暗黒竜 コラプサーペントを除外して、輝白竜 ワイバースターを特殊召喚」
今度は白い宝玉のついた竜が出てくる。このワイバースターにも、場から墓地に送られたとき、デッキからコラプサーペントを加える効果がある。白と黒、光と闇で対になっているのだ。使いやすいのだが、ターン制限があるため、幾らでもというわけには行かないのだが。それに、このデッキにはどちらも1枚ずつしか入っていない。
「さらに手札1枚をコストに、墓地からジェット・シンクロンを蘇生」
自己再生の効果を持つジェット・シンクロンを特殊召喚して、これで再びレベル5のシンクロが可能になる。
「レベル4のワイバースターにレベル1のジェット・シンクロンをチューニング。シンクロ召喚。アクセル・シンクロン」
続いて赤いレーシングカーの様な体を持つシンクロモンスターを出す。
このモンスターは、シンクロモンスターであり、チューナーモンスターである。自身のレベルを変更する能力も持っているのだが、まあ今回は関係ない。
「ラスト。レベル5のジェット・ウォリアーにレベル5のアクセル・シンクロンをチューニング。集いし力が拳に宿り、鋼を砕く意志と化す。光差す道となれ」
今までにない、一層強い光を発しながら、アクセル・シンクロンは光の輪に変わり、ジェット・ウォリアーは星へとその姿を変え。
合わさったその二つはさらに大きな柱となる。
「アクセルシンクロ。現れよ、スターダスト・ウォリアー」
柱を割るようにして、白銀のアーマーを纏った戦士が、その姿を現した。
あらわれたスターダスト・ウォリアーを前に、静香先輩は笑みを浮かべた。にやりと口角を釣り上げたそれは、獲物を前にした肉食獣のようで何か怖い。こっそりと、深めの呼吸を一つ挟んで、メインフェイズの終了を告げる。
「バトルフェイズ。スターダスト・ウォリアーでアレキサンドライトドラゴンを攻撃」
「ダメージステップに竜魂の城の効果を発動! 伝説の白石を除外して、アレキサンドライトドラゴンの攻撃力を700上げる!」
「それでも、スターダスト・ウォリアーの方が上です」
スターダスト・ウォリアーが動く。ジャンク・ウォリアーのような白兵戦がメインらしく、風を纏いながら加速して、その拳をアレキサンドライトドラゴンの体へと叩きつけた。
キラキラとアレキサンドライトドラゴンのウロコが舞い、消滅する。攻撃力の差は300ポイント。その分だけ、静香先輩のライフが削られる。
追撃を行うならここだろう。
「伏せカードオープン。永続罠リビングデッドの呼び声。効果で墓地からジャンク・ウォリアーを蘇生します」
「くっ」
再び現れるジャンク・ウォリアー。効果は発動しないが、それでも攻撃力2300と十分。
「ダイレクトアタック」
ブースターを吹かせたジャンク・ウォリアーが、静香先輩を強襲する。さらに2300削れて、静香先輩の残りは2700。
「メイン2。カードを伏せて、ターン終了です」
「私のターンッッ!!」
俺の分も盛り上げんとばかりに、静香先輩が声を張り上げながらカードを引く。手札3枚。1枚は青眼の白龍。さて、どうするつもりだろうか。
「罠発動! リビングデッドの呼び声! 墓地よりラビー・ドラゴンを蘇生させる!」
発動した罠カード。リビングデッドの呼び声。自分の墓地からモンスターを特殊召喚するカードだ。カードから飛び出すように、ウサギのような長い耳と白い体毛を持ったドラゴンが、場へと現れる。
「えっと――スターダスト・ウォリアーの効果は使えますか?」
スターダスト・ウォリアーには相手がモンスターを特殊召喚する際に、このカードをリリースして無効にし、そのモンスターを破壊する効果がある。可能なら、ラビー・ドラゴンを破壊したいのだが。
しかし、静香先輩は「無理だな」と一言告げた。
「スターダスト・ウォリアーが無効に出来るのは、チェーンブロックを作らない特殊召喚だ。シンクロやエクシーズ、自身効果による自己再生等だな」
「……良く分からないですけど、無理なんですね?」
「うむ」
「分かりました」
納得出来るかと言われると怪しいが、でも反論材料は持っていないし、態々嘘をつくような人でもないので、素直に頷く。
「続けてください」
「ならバトル。ラビー・ドラゴンでスターダスト・ウォリアーを攻撃する!」
場には竜魂の城。あれで攻撃力を上げて一気に倒す算段なのだろう。
「通しません。攻撃宣言時、罠発動。くず鉄のかかし」
廃材で作られたような十字のかかしがスターダスト・ウォリアーの前に立ちはだかり、ラビー・ドラゴンの放ったブレスを受け止め、無力化する。
「発動後、くず鉄のかかしは再びセットされます」
そして、表側になったくず鉄のかかしは再び裏に。罠カードは伏せたターンは使えないため、このターンは使えないが、それでも次のターンも攻撃を止められるのは大きい。本当は、くず鉄の像で竜魂の城を無効化して破壊して、迎撃というのが理想だったのだが。まあ、ワガママは言えない。
「くず鉄のかかしだったか。メイン2にカードを1枚伏せてターンエンド」
「俺のターン。ドロー」
1枚引く。引いたカードは魔法カード。現状では何の意味もなければ、ブラフにもなりそうにない。このターンはどうしようもないようだ。
「ターン終了」
「私のターン! ドロー!」
カードを引く先輩。引いたカードを確認し、にやりと笑う。嫌な予感がした。