現在10ターン目。ターンプレイヤーは静香先輩。
場にはラビー・ドラゴンと竜魂の城のみという状況で、ドローカードを行った静香先輩は笑みを浮かべる。何か強いモンスターでも引いたのか。しかしそれでも、くず鉄のかかしがある以上、攻撃を一度なら防げる。
あるいはそれすら、織り込み済みなのかもしれないが。
「行くぞ、私は青い眼の乙女を攻撃表示で召喚!」
出てきたのは、ワンピースを纏った白い髪の女性であった。青い眼と言う通り、モンスターの瞳は青い。まるで、青眼の白龍のようであった。
「そして、このカードを使う! 魔法カード、巨竜の羽ばたき!」
大きなドラゴンが羽を大きく広げたイラストの魔法カードだ。効果処理は、まだされていない。俺はチェーンを挟むことが出来ないから、どうやら静香先輩がまだ動くつもりらしい。
「竜魂の城の効果! 墓地のアレキサンドライトドラゴンを除外して、青い眼の乙女を対象に発動! 攻撃力を700上げる!」
青い眼の乙女の元々の攻撃力は0だから、上がった所で700。大した驚異ではない。上げるのであれば、ラビー・ドラゴンの方がいいとは思うのだが。
「そして青い眼の乙女の効果! このカードがカード効果か戦闘の対象になった時、デッキ・手札・墓地のいずれかから、青眼の白龍を特殊召喚する!」
再び轟音。降臨する白龍。攻撃力3000。スターダスト・ウォリアーと並ぶ。さてどうしたものか。
「チェーン2の竜魂の城の効果で攻撃力を上げ、チェーン1の巨竜の羽ばたきの効果でラビー・ドラゴンを手札に戻し、場の全ての魔法・罠カードを破壊する!」
「っ」
ラビー・ドラゴンが一層強く羽ばたきを行い、突風が引き起こした。
伏せてあったくず鉄のかかしに加え、表側のリビングデッドの呼び声、竜魂の城をガタガタと震わせると、そのまま破壊した。リビングデッドの破壊に伴い、ジャンク・ウォリアーが破壊される中、竜魂の城が更なる効果を発揮した。
「竜魂の城の効果! このカードが破壊された時、除外されているドラゴン族モンスター1体を特殊召喚する! アレキサンドライトドラゴンを復活させる!」
先のターンに破壊したばかりのアレキサンドライトドラゴンが再び場に現れた。スターダスト・ウォリアーの効果は多分使えない。仮に使えても、青眼の白龍がいる状況でそれを使ったら、ライフが0になるので使えないが。
「手札の暴風竜の防人の効果を発動! 手札のこのカードを装備カード扱いで通常ドラゴンに装備する! 青眼の白龍に装備!」
青眼の白龍に何やらオーラのようなものがまとわりつく。攻撃力の変動はないが、さて、何が起こるのか。
「バトル! 青眼の白龍でスターダスト・ウォリアーを攻撃! 滅びの爆裂疾風弾!」
「迎え撃つ。行け、スターダスト・ウォリアー」
青眼の白龍の放った光線に対し、風を纏ったスターダスト・ウォリアーの拳が反撃する。光線を受けながら突き進むスターダスト・ウォリアー。だが、その拳は青眼の白龍に届くことなく、白いオーラを発散させるのみに終わった。
「身代わり効果……」
「一応守備貫通の能力も付与されていたがな」
切り札であるスターダスト・ウォリアーが破れ、場はガラ空き。静香先輩の場には青い眼の乙女とアレキサンドライトドラゴン。合計攻撃力2700。対して、俺のライフは2800。
「2体でダイレクトアタック!」
残り――100ポイント。
まさに、首の皮1枚、繋がった。
「中々劇的だな。ターンエンド」
静香先輩の手札は残り1枚。バウンスしたラビー・ドラゴンである。伏せカードが無い今、攻めるとしたら今なのだが、虎の子のシンクロモンスターは既に全滅。エクストラは空っぽである。
「手札も現状じゃ死に札と。成る程」
確かに、ここから逆転出来たら、劇的だ。
「俺のターン。ドロー」
今までで最も鋭い動作で、デッキトップのカードを引き抜く。
逆転に使えるカードは1枚。引けなければ詰みだ。青眼の白龍の光線は俺を撃ち抜くだろう。
僅かに上がった動悸を深めの呼吸で元に戻し、引いたカードを確認する。
ムカつく面の壷のが書かれた魔法カード。望んだカード。
「貪欲な壺を使います」
「ほう!」
嬉しそうな静香先輩。
「デッキに戻すカードはジャンク・シンクロン、ジャンク・ウォリアー、シンクロン・キャリアー、スターダスト・ウォリアー、アクセル・シンクロンの5枚。それぞれメインとエクストラデッキへ戻し、シャッフル」
3枚はエクストラデッキの場所へ入れ、ジャンク・シンクロンとシンクロン・キャリアーはメインデッキへ入れてシャッフル。オート機能なんてついてないから手動。する気はないが、イカサマを疑われそうである。
「切りますか?」
「いや。構わないよ」
静香先輩がそう言ってくれたので、お言葉に甘えて、自身でのみシャッフルしたデッキをそのままインサート。デッキトップに手をかける。
「2枚ドロー」
そして、カードを引いた。どちらもチューナー。
だが――繋がった。
「勝ちです」
「……」
「まずはスターライト・ジャンクションを発動」
フィールド魔法、スターライト・ジャンクション。シンクロン・エクストリームの新規カードの1枚。屋上の景色が一変、どこかのハイウェイのように変わった。
「ジャンク・シンクロンを召喚します」
このデュエル2度目の登場であるジャンク・シンクロン。妨害の手は静香先輩に無い為、勝手に進める。
「効果発動。墓地からターボ・シンクロンを蘇生」
緑色の丸っこい体の機械が飛び出してくる。調律の時に落ちたカードだ。
「ジャンク・シンクロンを手札に戻し、A・ジェネクス・バードマンを特殊召喚」
手札に居た、ターボ・シンクロンと同じ色の体を持って、バードマンと言う通りどこか鳥っぽいチューナーモンスターを、続けて出す。このモンスターには、自分の場にいるモンスターを手札に戻すことで、手札から特殊召喚出来る効果があるのだ。
「スターライト・ジャンクションの第1の効果。場にいるチューナーをリリースする事で、そいつとレベルの違う「シンクロン」モンスターを特殊召喚出来ます。バードマンをリリースして、シンクロン・キャリアーを特殊召喚」
魔法陣の中にA・ジェネクス・バードマンが姿を消し、代わりにシンクロン・キャリアーが姿を現した。もうひと手間。
「シンクロン・キャリアーの効果で、通常召喚以外に「シンクロン」チューナーの召喚が可能。ジャンク・シンクロンを再び召喚」
今回3度目の登場である。ホント便利。優秀過ぎる。
「ジャンク・シンクロンの効果で、墓地からソニック・ウォリアーを蘇生します」
「ソニック・ウォリアー? ……ああ、ジェット・シンクロン蘇生のコストか」
「はい」
緑色の体の新たな戦士――また緑か。緑ばっかだな。いいけど別に。
「最後に墓地のボルト・ヘッジホッグの効果。場にチューナーがいれば、自己再生します」
1ターン目に破壊されたネズミを蘇生。これで準備が整った。
「ラストシンクロです。レベル2のソニック・ウォリアーにレベル3のジャンク・シンクロンをチューニング。集いし星が、新たな力を呼び起こす。光差す道となれ。シンクロ召喚。出でよ、ジャンク・ウォリアー」
ジャンク・シンクロンと同じく、今回3度目の登場となるジャンク・ウォリアー。
シンクロ召喚の為、効果が発動する。
「チェーン1、場のレベル2以下のモンスターの攻撃力を自身に加える効果。チェーン2にソニック・ウォリアーの効果を発動。墓地に送られた場合、場のレベル2以下のモンスターの攻撃力を全て500ポイント上昇させる」
だから本当は7ターン目にジェット・シンクロンを蘇生させた時、ジェット・シンクロンの攻撃力が上がっていたのだ。直ぐシンクロ素材にしたので、関係ないが。
「チェーン3、シンクロン・キャリアーの効果」
むん! と意気込むシンクロン・キャリアー。頼りにしてます。
「逆順処理で。チェーン3のシンクロン・キャリアーの効果により、シンクロン・トークンを特殊召喚」
シンクロン・キャリアーのクレーンが、3ターン目と同じようにトークンを引き上げてくる。
「チェーン2。攻撃力上昇」
シンクロン・キャリアー、ターボ・シンクロン、ボルト・ヘッジホッグ、シンクロン・トークン。場に残っていたジャンク・ウォリアー以外の全てのモンスターの攻撃力が500ポイントずつ上昇――そして。
「チェーン1。ジャンク・ウォリアーの効果。パワー・オブ・フェローズ」
2300+(0+500)+(100+500)+(800+500)+(1000+500)=6200
「こ、攻撃力6200のジャンク・ウォリアーだと!?」
なんか、ノリノリで静香先輩が驚いてくれたところで、ラストバトルである。
「ジャンク・ウォリアーで青眼の白龍を攻撃。スクラップ・フィスト」
一層の唸りと共にエンジンが点火、ブースターが火を噴き、マントを棚引かせながら急上昇。
高高度まで上がったところで、一気に加速しながら、青眼の白龍へと迫る。
「迎え撃て、滅びの爆裂疾風弾!」
静香先輩、まさかの指示。答えるように、青眼の白龍が上を見て、ジャンク・ウォリアーに向かって攻撃を放った。マジかよ。
迎撃されるのかと思ったが、流石に演出らしい。光線をものともせず、ジャンク・ウォリアーは爆進し、スターダスト・ウォリアーでは届かせられなかった拳を、青眼の白龍へと届かせた。
青眼の白龍が姿を消し、ライフが静香先輩から削られる。
残り2700から、差分の3200。
「ふっ」
静香先輩のディスクのカウンターが、0を刻んだ。
✝ ✝ ✝
どこか夢見心地な気分だ。初決闘、初勝利。頭で理解していても、心がついてきていないというか。
「遊」
名前を呼ばれてはっとする。いつの間にか、静香先輩が近くにいた。
「いいデュエルだったな」
「はい。楽しかったです」
「なら、何よりだ。次はきちんと自分で組んだデッキでやろう」
「……」
「遊?」
「すみません。約束しかねます」
悪いとは思うが。
「遊戯王は楽しいです。続けたいとも思います。だけど、それが今だけなのか、そうじゃないのかを確かめないと行けません」
「ふむ?」
「なので、明日から暫く部活に参加しません。暫く時間を置いて、もし気持ちが冷めたら、遊戯王を続けることもないでしょう」
「……面倒くさいな、お前」
「よく言われます」
自覚もある。
まあ、でも今は。
「本当に、楽しかったです。ありがとうございました」
「……ああ。私もだ」
静香先輩のその言葉に頭を下げてから、こちらに歩いてくる決闘同好会のメンバー達の方へと視線を向ける。
夕暮れの空の下で行われた初めての決闘。
召喚の興奮、接戦の熱、勝利の歓喜。
それら全て大切にしまっておけるように、俺は頭ではなく心に焼き付けた。
決着。次回更新は予定通り12日の水曜日。