陸軍、上陸。
「なんだ、あなた達、帰って来たの?」
矢矧は呆れたようについ数十分前に鎮守府を出て行った筈の瑞鳳と磯風を見て呟いた。
「なんか急用が入ったらしいわ。ったく、私とのデートすっぽかすとかいい度胸してるわ」
「少し前から店長が不在らしくてな。店は休業中だった」
「今からでも商店街行って大和達と合流してきたらいいじゃないの」
矢矧の提案に二人は少し考えてから首を振った。
「面倒くさい」
「すれ違いになるのも嫌だしな」
「それじゃ、私も思いの外早く仕事終わっちゃって暇だから、雑談でも付き合って」
「ああ、喜んで。矢矧とはこうしてゆっくり話す機会も少ないからな」
「え、まだ昼前よ? もう仕事終わったとかマジ?」
食堂で腰掛ける三人が談笑を始めようとしたその時、水を差すようにチャイムの音が響いた。
鎮守府の来客用のチャイムである。
「……珍しい、役場の人達かしら? でも、提督が今いないことは伝えた筈なのだけど」
「誰だろうな?」
「さぁね」
「まぁいいわ。ちょっと行って来るわ」
矢矧が席を立って駆け足で食堂を出ていこうと扉をあけたその時。
「――きゃあ!」
「矢矧!?」
見れば、扉を開けた矢矧が悲鳴をあげて尻餅をついていた。
原因は開いた扉の目の前に立っていた大男だろう。
黒の外套に、陸軍の軍服と軍帽。鋭い目つきをした男は矢矧をギロリと見下ろす。
「……これは失礼。呼び鈴を鳴らしても応答がなかったので勝手に上がらせてもらっている」
「誰だ、お前達!」
磯風がすかさず矢矧の前に立って大男とにらみ合う。
緊張感が辺りを覆い始めようとしたところでその空気を割いたのは男の後ろから飛び出した小柄な少女だった。
「やめてください! 喧嘩は駄目で――――きゃっ!」
男と同じ軍服と軍帽を纏った少女は出先こそ勢いよく飛び出してきたものの、何もないところで突然つまずき、バランスを崩して、二人の丁度真ん中あたりで盛大に転んだ。
「……まるゆ、お前は何がしたいのだ」
「え? え?」
「痛い……」
目を潤ませながら、顔をあげるまるゆと呼ばれた少女はそう言っていそいそと立ち上がると。二人にそれぞれ左右の手の平を向け、
「やめてください! 喧嘩は駄目です!」
と、先刻言い損ねた台詞を言い直した。
「あ、ああ、そうだな。喧嘩は、よくないな」
「…………」
すっかり毒気を抜かれ、お互いにむき出しにしていた敵意を収めると、まるゆは嬉しそうに笑って見せた。
(なんなの、この人達、軍服から見て陸軍? 一体何の用でこんなところに――)
「――下がるであります、二人とも」
「――――ッ!?」
次の瞬間、矢矧がとった行動は即座に立ち上がり、磯風を後ろから抱きかかえるようにして一緒に後退することだった。
瑞鳳も矢矧と同様の寒気を感じたのか、席から立ち上がって既に臨戦態勢までとっている。
男とまるゆに続いて入ってきた二人の陸軍の軍服を纏った人間。一人は死人のような真っ白な肌に沼のように黒く淀んだ瞳の少女、もう一人は仮面をつけた銀髪を覗かせるおそらくはこちらも少女。
そのどちらからも、脳が警鐘を鳴り響かせるだけの気味の悪い寒気を感じた。
「あなた達、何者?」
「これは失礼。我々は陸軍特務小隊、名を『
白い肌の少女はそう言って笑みを見せた。
「陸軍、特務小隊? なんでそんなのがこの島に?」
「それは当然、任務であります」
「…………」
少女を何と呼べばいいか戸惑っている矢矧の様子を察し、少女は後ろに立つ大男と小柄な少女、仮面の少女の方を順に手で示しながら一人ずつ紹介を始めた。
「これは、大変申し遅れました。そこの愛想のない大男が原田、気弱そうなのがまるゆ、この仮面の少女は…………うん? そういえば名前を聞いていなかったでありますな、あなた、名前は?」
「……『ロスヴァイセ』でいい」
「覚えにくいでありますな。とにかくこの仮面の少女がロスヴァイセ。そして、私がこの蜻蛉隊の隊長、あきつ丸と申します」
丁寧にお辞儀をするあきつ丸に困惑気味に、矢矧はゆっくりと口を開いた。
「ご丁寧にどうも。私はこの鎮守府の提督代理の矢矧よ。それであきつ丸さんは一体どういう要件でウチにやってきたの? 悪いけれど、今ここの提督は不在で、あまり重要な案件は対処しかねるのだけれど」
「いやいや、そんな大層なことではないので、安心して欲しいのであります。本日は単にこの島を管轄とする鎮守府に挨拶をと思ってきただけでありますので」
「挨拶?」
物腰低く、笑顔を絶やさず、友好的な反応を見せるあきつ丸。しかし、それを見て尚も矢矧は肩の力が抜けないでいた。
「我々はとある任務でこの島にやって来たのでありますが、場合によってはこの島の住民やあなた方にもご迷惑をかけるやもしれないので、事前に断りをいれておくのが筋と思い、こうして鎮守府を訪ねた次第なのであります」
「……どういう意味? 荒事になる可能性があるってこと?」
「その可能性は否めないでありますな。何せ、相手は化物でありますから」
「化物!?」
磯風の驚いた声にあきつ丸は声のトーンを低くして真剣な表情で話し始めた。
「実は、この島に深海棲艦が入り込んでいるのであります」
「なんですって!?」
「確かなのか!?」
磯風と矢矧を見て、あきつ丸はゆっくりと頷いた。
「危険な奴であります。既に多くの人間が殺されている」
「そんな……」
「深海棲艦のコードネームはDW-1。我々の任務はこれを発見次第、鹵獲、もしくは撃滅することであります」
そう言って、あきつ丸はまるゆから小型の通信機のような機械を受け取って矢矧達に見せる。
「深海棲艦を設定した範囲内に探知するとこの探知機が反応して音を鳴らすのであります。これを使って包囲網を張り、追い詰めていく予定であります」
「それなら私達にも探知機を貸してくれない? 手伝わせてもらうわ」
「そうだな、ウチの島のことだ。放ってはおけない」
矢矧と磯風の申し出に、あきつ丸は首を横に振った。
「お気持ちは嬉しいのでありますが、今回、七丈島艦隊の皆様にはその逆のお願いをしにきたのであります」
「え?」
次の瞬間、それまで朗らかな笑みを見せていたあきつ丸の顔が急に厳しくなる。
「あなた方にはことが終わるまで一切手を出さず、大人しくして頂きたいのであります」
「え、なんで……」
納得いかない様子の矢矧に大男が問答無用と言わんばかりに彼女の声を封殺する。
続けてあきつ丸が補足をするように続けた。
「探知機を使ってこの島の周辺海域を見回りましたが、DW-1は見つかりませんでした。目標はこの島内に潜んでいる可能性が高いのであります。故に、陸上での戦闘を考慮し、あなた方に下手に手を出されると作戦に思わぬ支障をきたすリスクが高いと判断したのであります」
「つまり、全て我々に任せて大人しくしていれば良いということだ」
原田が嫌味ったらしく鼻を鳴らしてそう言った。
矢矧は眉をひそめてあきつ丸に反論する。
「納得いかないわね。あなた達が取り逃がしてDW-1が海に出たら、その時は一体誰が追いかけるのかしら?」
「無論、我々が」
矢矧は首を振った。
「無理よ、軍艦なんて沈められるだけだわ。深海棲艦に対抗できるのは艦娘だけよ」
「私とまるゆは陸軍製ではありますが、一応艦娘でありますよ」
「……二人だけで仕留められると? 凄い自信ね?」
「いえ? 当然、蜻蛉隊総勢30名をもって討伐にあたるつもりであります」
「ちょっと待って、あなたとまるゆはともかく他の隊員はどうやって海上で深海棲艦と戦うつもり?」
「無論、我々と同じようにでありますよ」
「……ごめんなさい、話が見えないわ」
困惑する矢矧にあきつ丸は食堂の窓まで歩いて、それを開いてみせる。
食堂の間取り的に、窓からは広大な海が見えている筈である。
「矢矧殿、全て、こちらに来てみればわかるのでありますよ」
「…………?」
矢矧があきつ丸の傍まで歩いて彼女の開いた窓から海を見下ろす。
その瞬間、矢矧の目が大きく見開かれた。
「何、これ……」
「どうしたのよ、矢矧?」
「私達も見にいこう」
矢矧の表情を見た瑞鳳と磯風も同様に窓から海を見下ろすと彼女と同じように息を飲んで言葉を失った。
「あれは……全部、艦娘、なのか?」
「艦娘じゃないわ。ほとんど男じゃない」
彼女達が見下ろした海には、たくさんの人間が立っていた。
無論、海面に立つことのできる人間などおらず、そんな芸当が可能なのは世界で艦娘だけであり、彼らも艤装のようなものを取り付けているのが遠目に見える。
しかし、艦娘とは、文字の通り、女性にしかなれないから艦娘なのだ。男が艤装を取り付け、ああして海面に立つ姿など、本来あり得ない光景である。
「なんなの、あれは……」
「我が陸軍が海軍から貰い受けた艦娘技術を研究し辿り着いた対深海棲艦装備の完成形であります」
「陸軍式艤装って訳ね……」
「名を陸軍式海上戦闘用機動兵装丙型『ワダツミ』。人間をやめることなく、また、適正も関係なく艦娘と同等の力を得ることをコンセプトとした秘密兵器であります。まぁ、まだ実験段階の投入なのではありますが、今のところ結果は上々。ここに来るまでにも、深海棲艦の主力艦隊を一つ殲滅しているであります」
あきつ丸の言葉に彼女の後ろに立つ原田達も自信ありげに笑みをみせる。
あきつ丸の言葉が本当だとすれば、彼女達蜻蛉隊とは、その全員が艤装による海上戦闘を可能にした小隊であり、また、大艦隊ということにもなる。
通常海域への出撃でさえ艦娘が6人、大規模作戦時でさえ連合艦隊と支援艦隊を合わせて24人が最大規模。蜻蛉隊の30人にはまだ届かない。
「わかったでありますか? あなた方の力など借りずとも、我々は十二分にDW-1を討伐できるだけの戦力を有しているのであります」
☆
「――戻ったか」
「ええ、第三、第四研究所もハズレです」
「ふむ、では、残るは第五、六、七研究所じゃな」
疲れ切った様子で畳の敷き詰められた和室に入ってきた提督を、元帥は大して労うこともなく迎え、一瞬だけ彼の方に視線を向けるとまたすぐに書類に視線を落とした。
また、提督もその反応を特に気にするでもなく、座布団の上に座り込む。
「まさか、陸軍研究所をしらみ潰しに調べる羽目になるとは思いませんでしたよ。もう少しマシなアイデアはなかったんですか?」
「ふん、ならば貴様が考えてみろ。あの狸からそう簡単に情報が盗めると思うなよ。あいつは身内の人間すら信用せん秘密主義の人間。そう簡単にボロなど出さぬわ」
参謀総長を狸と揶揄する元帥は忌々しげにそう答える。
「奴が何やらこそこそと小隊まで出してきて必死で追っているDW-1とやら。これが近頃頻発する深海棲艦の近海出没に関連していることはまず間違いない。後は、その確固たる証拠を見つけるだけじゃ」
「だから陸軍研究所を?」
「陸にいながら深海棲艦に関して海軍以上の知識を得ているのだとすれば、その源は研究所しか考えられん。あそこは陸軍で唯一我らが鹵獲した深海棲艦が運び込まれる施設じゃからな」
かといって、全国に七つもある研究所を一つ一つ回って、潜入してこいなどという任務は提督一人でやるにはあまりに負担が大きかった。
おかげで、すぐに戻ると矢矧に言ったにも関わらず既に二週間以上の時間が経ってしまった。
「ところで、悠長に休んでいる暇があるのか? おそらくは今頃、陸軍が七丈島に辿り着いている頃じゃろうがな?」
「は? なんですか、その話は……?」
「おや、言っておらんかったか? 一昨日特務小隊、蜻蛉隊とやらの動きが掴めてな。どうやら七丈島に向かったようじゃ」
「……聞いていないんですが?」
悪魔のような笑みを見せる元帥に、提督はいよいよ殺気立って立ち上がり、彼を睨みつける。
「戻ります、今すぐに……!」
「やめておけ、貴様が行ったところでどうにもならん。揉めて自分の首を絞めるのがオチじゃ。ただでさえ、『七丈島鎮守府』に『特権』と貴様を過剰に贔屓してやっているのだ。これ以上は庇えんぞ、儂は」
「それでも戻ります。蜻蛉隊が調査通り本当に全員海上戦闘が可能な小隊なら、あまりにあの子達が危険すぎる」
「……まぁ、待て。蜻蛉隊を止めたくば、正面からぶつかるより直接上を叩いた方が手っ取り早い。お前は研究所の調査に集中しろ。あの狸が今回の件に関わっているのなら、奴も恐らくはそこにいる筈じゃ」
歯ぎしりをしながら何か反論しようと提督は口を開きかけるが、元帥の言葉に反論の余地がないとわかっているが故に言葉がでない。
「第七研究所に向かうぞ。確証はないが、あの狸が出入りしている回数が他の研究所よりも数回多い。今回は儂も同行する。ヘリを呼んであるから支度せい」
「……わかりました」
不安を拭えない提督を元帥は少しばかり楽しそうに見つめていると、その肩を叩いて言った。
「そう不安がるな。七丈島については既に儂が手を打っておいた、ククク」
☆
「これで、あなた方の助力が必要ないということはわかっていただけたでありますか?」
「ええ、そのようね」
「矢矧!」
磯風がそれでいいのかと矢矧に抗議する。しかし、矢矧は首を振って言った。
「じゃあ、私達は私達で別に動かせてもらうわ。安心して、貴方達の邪魔はしないわ」
「ほう」
「貴様!」
原田が憤りの声をあげる。しかし、矢矧はむしろ彼を睨み返す勢いで続けた。
「あなた達が誰だろうと、どれだけ強かろうと、この七丈島は私達が守る場所! 黙って見ているなんてできないわ!」
「矢矧!」
「全く、張りきっちゃって、ウチの提督代理はこれだから」
磯風と瑞鳳も嬉しそうに矢矧の言葉に同調する。
原田が青筋を浮かべ、今にも殴り掛からんと矢矧に掴みかかろうとしたその動きを止めたのは、他ならぬあきつ丸の第一声であった。
「調子こいてると殺すでありますよ、屑共」
「――――ッ!?」
笑顔はそのままに、彼女の口から放たれたその『殺す』という単語に鳥肌がたった。
脅しではない。彼女は、あきつ丸は本気で殺すつもりで、『殺す』と言ったのだ。少なからず、矢矧はそれに恐怖を抱かずにはいられなかった。
「私はね、上からあなた達との交戦は極力控えろと言われていなければ、この島についた時点であなた方をまず殺しているでありますよ」
「なっ……」
「しかし、もう我慢ならない。罪人が、悪がのうのうと生きているだけでも度し難いというのに、『私達が守る』とはなんたる傲慢、万死に値するであります。そんなことは、私の正義が許しはしないのであります」
一歩ずつ、ゆっくりと、しかし着実に矢矧達に詰め寄るあきつ丸の拳は握り固められ、その瞳は溢れんばかりの殺意で満ちていた。
数秒後に、殺し合いが始まる。その場の誰もがそう確信した。
「ま、待ってください、隊長!」
「どくであります、まるゆ」
「も、揉め事は駄目です!」
「まるゆ、いいではないか。これは天意なのだ。この場で悪を誅することこそ我らが天命よ」
「原田さんまで!」
「もう十分に容赦はしたであります。御上への義理立てを成した今、悪にこれ以上の寛容はないであります」
「た、隊長ぉ……」
泣きそうな表情で縋るまるゆを押しのけ、再び歩を進めるあきつ丸と原田。
既に戦闘態勢に入りつつある矢矧達。
あと数歩で互いの間合いに入る距離まで双方が近づいたその時だった。
「――あらあら、相も変わらず賑やかですねぇ、この鎮守府は」
「なっ!? 何者だ貴様!? 離せ!」
食堂の扉を開け放ち、室内に突風が吹き荒れたかと思うと、いつの間にかそこには原田の腕を掴む柔和な笑みを浮かべる少女の姿があった。
その少女の姿を捉え、矢矧の表情が僅かに歪んだのは言うまでもない。
「横須賀鎮守府第一艦隊旗艦、神通と申します」
横須賀鎮守府第一艦隊旗艦、神通。O.C.E.A.Nランキング第3位。
「神、通……」
「うわぁ」
「また厄介な奴が来たわね……」
「助けに入ったのにその反応は流石の私も傷つくのですが」
全く歓迎されていない雰囲気に神通の表情が曇る。
「双方、矛を収めてもらおう。無益な争いはこの私が断じて許さない」
「そうですよ~、無益な上に無意味で、しかも迷惑ですからやめましょ~」
さらに一方は覇気の籠った、もう一方はどこか気の抜けたふわふわした声が響き、また新たに二人の艦娘が姿を現す。
一人は褐色の肌に真っ白な髪と赤い瞳に銀縁の眼鏡が特徴的な筋肉質な艦娘。
一人は栗色の長髪をポニーテールにした如何にもゆるふわな雰囲気の艦娘。
「同じく、綾波です。よろしくお願いいたします~。あ、名乗らなくていいですよ、覚えませんから~」
横須賀鎮守府第一艦隊、綾波。O.C.E.A.Nランキング第6位。
「同じく、武蔵だ。さぁ、文句のある奴はかかってこい」
横須賀鎮守府第一艦隊、武蔵。O.C.E.A.Nランキング第1位。
☆
「――ついたぞ、ここが
「そうね、それじゃあ早速――――」
「観光しましょ~!」
「ん? 何言ってるのかしら、ポーラ?」
「苦しい~、離してセレーネ姉――じゃないザラ姉様ぁ……」
笑顔でザラに胸倉を掴まれるポーラは息苦しそうにギブアップを訴える。
そこにエドモンドが仲裁するように割って入ってきた。
「まぁ、落ち着け、ザラ。昔、母さんも言っていた、『楽しむこと、それが成功の秘訣』ってね。いいじゃないか、観光。島を見て回りながら情報収集すればいいさ」
「流石エド~! わかってるぅ!」
「はっはっは、よしてくれ。色男だなんて、照れるじゃないか」
「そんなことは言ってないな~」
「もう、エドがそんなだからポーラが調子に乗るのよ!」
既にザラの言葉は二人には届いておらず、エドモンドとポーラは楽しそうに駆けだして行ってしまう。
「よし、まずはあのビッグスプーンなる店で
「日本もイタリアに負けず劣らず料理とお酒の美味しい国って聞いてるから楽しみ~」
「もう! 二人とも! DW-1は!? 任務は!?」
「でも、ザラも長旅でお腹空いただろう? それに、日本の料理にも興味あるんじゃないかい?」
「う……確かに、興味がないと言えば、嘘になるけれど……」
「よし、ザラ姉様の許可も取れたし出発~!」
「許可なんて出してない! ……もう! カレー食べたらすぐに任務に戻るんだからね!」
と、意気揚々と三人で店の目の前まで来たものの。
「あ、ごめんなさい、今日はお父さ――店長がいないので休業で……」
「マンマミーアッ!」
「ざんね~ん」
「嘘……」
何気に一番落胆していたのはザラだったという。
これからイタリア組の動向はこんな感じでおまけみたいに付け足されていく予定。
シリアス? イタリアにそんなものはない。