七丈島艦隊は出撃しない   作:浜栲なだめ

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前回のあらすじ
横須賀艦隊、乱入。





第七十九話「わりぃ、俺、七丈島艦隊やめるわ」

 

「さぁ、文句のある奴はこの武蔵が相手になるぞ」

 

 武蔵の声に一瞬は苦虫を噛み潰したかのような表情を見せたあきつ丸。

 しかし、すぐにまた怪しい笑みを浮かべると、彼女の方へ一歩ずつ近づきながら口を開く。

 

「横須賀艦隊、しかもその第一艦隊の艦娘が三隻も乱入とはいやはや参りましたな。しかし、本当に、良いのでありますか? 武蔵殿?」

「本当に良いとは、どういう意味だ?」

 

 少しずつ距離を縮めてくるあきつ丸の次の行動は誰にも予測できない。今にも武蔵の顔面めがけて拳を打ってもなんら不思議はない。彼女ならそれくらいはやると思わせる狂気的な雰囲気が矢矧達に気持ちの悪い緊張感を与える。

 

「本当に、私が、あなたと、戦闘になって大丈夫なのかということでありますよ」

「……その口調では互いの実力のことを言っている訳ではなさそうだな」

「今、どちらに正義があるのかという話であります」

 

 話の先が見えない磯風とは裏腹に、その一言で矢矧と瑞鳳の顔がこわばる。

 

「御上からの任務に従事している我々と、横から飛び込んできたあなた方、争って損をするのはどちらなのか、わからぬわけでもないでありましょう?」

 

 あきつ丸達蜻蛉隊は参謀総長から直属の命令を受けて行動をしている。それに関して艦娘がその任務行動を妨げるということは海軍による陸軍への妨害行為と取られかねない。

 いくら関係に亀裂があろうと同じ旗を仰ぐ仲間同士。不和は原則正されねばならない。今ここで正規行動をしているのはあきつ丸達。この場において正義は陸軍側にある。

 よって、ここで蜻蛉隊と全面的に対立するということはここにいる艦娘のみならず、その監督役である提督達でさえ反逆者として軍法会議で裁かれかねない。

 いくら横須賀艦隊とはいえ、ここであきつ丸達と争うことはできない。

 しかし、そこまで釘を刺されて、武蔵は何故か口を大きく開けて笑い始めた。

 

「はっはっは、あきつ丸。お前は何か勘違いしているようだな」

「勘違い?」

「別に私はお前達の任務を妨げる気などない。ただ、ヒートアップしていた所に水を差したものだから鬱憤が溜まっているのではないかと思って、そのはけ口になって差し上げようと提案したまでのこと」

「ほう、つまりはサンドバッグになっていただけると?」

「その解釈で構わない」

 

 あはは、と乾いた笑い声をあきつ丸があげた刹那、突然武蔵の腹にあきつ丸の拳がめり込んでいた。

 

「お気遣い痛み入るであります、では、遠慮なく」

「ぐ……ふ、ふふ、中々、いい拳じゃないか……もっと来い!」

「ちょ、ちょっと!」

 

 止めに入ろうとした矢矧を呆れ顔の神通が止めた。

 

「あー、いいんですよ。お気になさらず、武蔵さんのことはもう好きにさせてあげてください」

「え、でも、あれじゃ……」

 

 神通と話をしている間にも二発、三発とあきつ丸の拳が休む間もなく武蔵の露出度の高い褐色の肢体に次々と叩き込まれていく。

 

「どうでありますか、陸軍仕込みの体術は? 身体を鍛えていても効くものでありましょう?」

「…………くっ」

 

 体の各所に一通り拳を撃ち込み終えたあきつ丸は、満足げにうなだれている武蔵を見下ろす。

 それを見ていた原田もまた楽し気な笑みを浮かべ、まるゆはおろおろと申し訳なさそうに辺りを見回している。

 矢矧達もそのリンチの惨状に表情の歪みを隠し切れない。

 そんな中、平然と笑みを崩さない者があきつ丸達以外に三人。

 神通、綾波、そして、顔をあげた武蔵だった。

 

「くっ、くくく、くははは! 衝撃が、中々どうして、体の奥まで響く! 拳の一発一発がまるで鉄骨に打たれたかのようだ! 素晴らしい! いいぞ、もっと来いッ! ほら、早くッ!」

「なっ」

 

 歓喜の笑みを浮かべながら更なる追加攻撃を要求する武蔵の姿はさしものあきつ丸でさえ気味悪く感じたのか、ずっと浮かべていた、見下したような笑みがここにきて崩れた。

 

「どうした? お前はまだまだこんなものではないだろう? お前の全てを受け止めてやる! だからお前の全部を私にぶつけて来いッ!」

「…………予想外でありますな」

「え、何、あれ?」

「あぁ、昂ぶってらっしゃいますねぇ、武蔵さん」

「相変わらず気色悪い性癖ですね~」

 

 困惑する矢矧に神通と綾波も嘆息と共に声を洩らす。

 

「お前の拳をもっとこの肌で感じたいんだッ!」

 

 O.C.E.A.Nランキング第1位。世界最強の艦娘は、規格外に特殊な性癖をお持ちであった。

 端的に言えば、ドMであった。

 

 

「興が削がれたであります」

 

 拳を撫でながらあきつ丸は溜息をついて武蔵に背を向ける。

 一見して武蔵の性癖に呆れたように見える、しかし、実の所、武蔵を殴った彼女の両拳は主に鈍い痛みを訴え続けていた。

 

(……まるで大木でも殴ったかのようでありますな。伊達に1位という訳でもないでありますか)

 

 内心、舌打ちをしながらも表情は笑顔で再度矢矧達に向き直る。

 

「話を戻すでありますか。とにかく、こちらの任務が終わるまで、あなた達には余計な手出しを控えてもらいたいのであります」

「……それは」

「できない、とは言わせないでありますよ」

 

 できない。そう言いたい。

 しかし、任務の妨害ととられれば、横須賀艦隊はともかく、既に首の皮一枚で留まっている七丈島艦隊の面々は今度こそどうしようもない。

 了解の返答を矢矧が言おうとしたその時、

 

「いえ、それは無理な相談ですね」

 

 口を挟んできたのは神通だった。

 

「なんでありますか、私は今、七丈島艦隊と話をしているであります」

「ええ、知ってますよ。でも、困るんですよねぇ、その方々を拘束されるのは。こちらも任務なので」

「任務?」

 

 神通は張り付いたような笑みのまま一枚の書類を取り出すとあきつ丸達の方に差し出す。

 

「元帥からの命令でしてね、『七丈島に出向き、潜伏している敵を殲滅せよ。必要ならば現地の艦娘との協力を許可する』とのことです」

「成程、そういうことでありますか」

 

 明らかに蜻蛉隊の任務と意図的にバッティングさせてある命令書を見てあきつ丸は顔をしかめた。

 お互いに任務に従事した上で起きた衝突なら、正義は双方にある。

 一方が一方に何かを強要することはできない。

 

「横須賀艦隊と七丈島艦隊はこれより協同でDW-1殲滅の任務にあたります。よって、横須賀、七丈島両艦隊への行動制限はご自重願えますか?」

「馬鹿な、納得がいくか! あからさまに我々の任務を妨害する魂胆ではないか!」

「あら、酷い誤解です。偶然、任務内容がバッティングしただけだというのに」

 

 相変わらず癇に障る台詞回しと笑顔である。

 あきつ丸を含め、蜻蛉隊側の表情に明らかに敵意が混じったのが一目でわかる。

 

「……そういうことなら仕方ないでありますな。ここは退くとしましょう。DW-1殲滅にあたり、任務行動に関しては互いに不干渉ということでよろしいでありますな?」

「協力はしないが、妨害もしないということですね? はい、それで結構です」

「ぐ、ぬぬ……」

 

 満足気な神通の声に原田の顔がますます険しくなっていく。

 

「やめるであります、原田。向こうがDW-1の情報を嗅ぎ付けていたのは驚いたでありますが、流石にそれ以上の情報はない筈。ならば探知機と数のあるこちらが有利なのは自明。こちらが先にDW-1を捕獲すれば何も問題はないであります」

 

 原田の肩に手を置いて小声でそう宥めると彼は頷いて握りしめていた拳を開いた。

 

「まるゆ、念のため探知機を起動しておくであります」

「は、はい、隊長!」

 

 あきつ丸に言われてまるゆが探知機のスイッチを押す。この場ではどうやら彼女しか探知機を持っていない辺り、数の少ない貴重品なのかもしれない。

 そんなことを考えている矢矧の視界に神通の顔が横から割り込んでくる。

 

「どうですか、矢矧さん? 私が来て良かったでしょう? 助かりましたよねぇ? あと一歩で何もできずに蜻蛉隊のいいようにされていたんですから。お礼に横須賀艦隊に入ってくれてもよろしいんですよ?」

「入らないわよ」

「一ヶ月、いや、一週間だけでもどうです? 絶対に後悔はさせませんよ?」

「ウチの監察艦を引き抜こうとするのはやめろ」

 

 神通はそこで一旦、あきつ丸達が何か内輪で話を始め、こちらへの意識が薄れていることを確認すると、真面目な顔になって小声で囁く。

 

「それで、実際DW-1について何か思い当たる節はないんですか?」

「DW-1についてっていったってねぇ」

「その容姿もわかってないしな……」

「自分の島のことなのに何も見えてないんですね、ある意味凄いと思います~」

「う、ぐ」

「やめなさい、綾波」

「そうだぞ、毒を吐くなら私に向かって吐けと何度も頼んでいるだろう?」

「武蔵さんもこれ以上ご自分の格を落としたくなければ黙っていた方が賢明ですよ?」

「底辺から這い上がる、というのも悪くない」

「黙っててください」

 

 柔らかな笑顔で毒を吐く綾波。

 無駄に良い顔で、罵倒を求める武蔵。

 その二人を諫める神通。

 三人のやり取りを見て磯風と瑞鳳がドン引きしている中、矢矧だけは何かを考え込むよう俯いていた。

 

「そうですね、例えば、ここ最近島に現れた方とかいないんですか?」

「ここ最近、か。別に化け物を見たとか、怪しい人影を見たみたいな話しは聞かないが」

「……まさか」

「矢矧さん? 何か心当たりが?」

 

 神通が険しい顔をしている矢矧に声をかけたその時だった。

 

「よーっす、帰ったぜー!」

「いやぁー、大量大量! これでしばらくお米には困りませんね!」

「お、重い」

「ただいま帰ったわぁ~」

 

 大和、天龍、プリンツ、龍田。

 四人が米袋を抱えて食堂に入ってきた瞬間、探知機のアラームが鳴り響くのがほとんど同時だった。

 

 

「――ッ!」

 

 食堂内にいた全員の視線が大和、天龍、プリンツ、龍田の四人に集中する。

 拙い、と矢矧が思ったのも束の間、彼女が声をあげる間もなく、あきつ丸達は即座に大和達を取り囲んだ。

 

「てめぇら、さっき商店街で会った奴ら……」

「え、え、え!? なんです、このアラーム!? 私達何か悪いことでもしました!?」

「お姉さま、怖い!」

「…………」

「これはこれは、まさかそちらから網にかかりに来るとは僥倖でありますな、DW-1」

 

 状況を把握できない大和達。

 

「あなた方四人のうちの誰かが、深海棲艦であります故、確かめさせてもらうであります。まるゆ、探知機の最小範囲は?」

「現在設定している5メートル範囲内が限界です」

「ふむ、逃亡の危険も考えるとそこまで距離を離したくないでありますな」

「はぁ? 深海棲艦? いる訳ねぇだろ。俺たちはどっからどう見たって艦娘だろうが!」

 

 天龍があきつ丸の言葉に怒鳴り返す。

 

「この探知機が反応したということはそういうことでありますよ。いや、まさか艦娘に擬態できるとは予想外でありましたが」

「おい、てめぇ訳わかんねぇこと言ってねぇで――――」

「ああ、そうだ」

 

 天龍の言葉を完全に無視しつつ、あきつ丸が思いついたかのように手を叩く。

 

「DW-1が七丈島に来たのはつい最近の筈でありますな。矢矧殿? この四人の中で新参の方は誰でありますか?」

「それは……」

 

 口ごもる矢矧。磯風は信じられないという表情を浮かべ、瑞鳳は顔をしかめる。

 七丈島艦隊とは見知った仲である神通も、厳しい顔つきで『彼女』を見つめている。

 四人の視線の先には龍田だけが映っていた。

 

「…………龍田、よ」

 

 絞り出すような声で矢矧はその名前を言った。

 蜻蛉隊に協力した訳ではない。ただ、自分の仲間のすぐ隣に深海棲艦が立っているという状況に耐え兼ね、それを打破するための最短の策を選んだだけにすぎない。

 これで少なくとも、天龍、プリンツ、大和の安全は保障される。

 そして、何より、矢矧の胸中には沸々と燃え上がる怒りがあった。

 

「騙していたのね、龍田……」

 

 怒りを抑えるあまり、声が上手く出せない。

 敵が自分達の仲間を装って数週間共に生活していたこと、その間、幾度となく仲間を危険に晒していたこと。そして、そんな状況に今更になって気付いたこと。

 龍田に対してよりも自分自身への怒りで矢矧の頭は一杯だった。

 

「よろしい、龍田以外を包囲から解放するであります」

「あの、すみません」

「え? ちょ、ちょっと! どういうことですか!? 説明をお願いしたいんですけど!」

「お姉さま! とりあえず今は離れた方がいいと思う」

「プリンツまで!」

 

 大和とプリンツがまるゆに手を引っ張られて輪の外に出される。

 

「おい、貴様もさっさと出ろ」

 

 腕を掴まれる天龍が龍田の方を見る。

 

「…………天龍ちゃん」

「…………」

 

 俯いて、一言そう呟いた龍田に、何故か天龍は笑いかけた。

 そして、原田の腕を振りほどくと、笑って言った。

 

「悪い、やっぱ駄目だわ」

「え?」

「おい、貴様、何を言って――――」

 

 苛立たし気に天龍を引っ張り出そうとする原田の顎に飛んできたのは天龍の拳。

 そのまま原田は仰向けに倒れた。

 

「がっ……!?」

「おお、今日はよく顎を殴られるでありますなぁ、原田」

「隊長! 笑ってる場合じゃありません! 包囲に穴が!」

「天龍、何やってるのあなた!?」

 

 矢矧が困惑と怒りの入り混じった声で叫ぶ。

 天龍は矢矧に申し訳なさそうに笑うと龍田の手を取って引っ張る。

 

「わりぃ、俺、七丈島艦隊やめるわ」

「はぁ!?」

「天龍ちゃん……?」

「大丈夫だ、龍田。俺はお前の味方だからな」

 

 そう言うと、一目散に食堂の入口へ走り出す天龍達。

 しかし、そこにはあきつ丸が立ちふさがっている。

 

「ははは、逃がすとでも思っているでありますか?」

「思わねぇよ。だから、斬るぜ」

「ん……!?」

 

 天龍がスカートのベルトに手を掛けたかと思うと、それを見て何かを察知したのかあきつ丸が扉から横に飛ぶ。

 次の瞬間、天龍が腕を勢いよく振りぬいたかと思うと、食堂の扉が横に真っ二つに両断されて崩れ落ちた。

 

「うえ!?」

「ほう」

「これはまた珍しいですねぇ」

「物騒ですね~、これだから罪艦は」

 

 何が起きたのかわからない大和を他所に横須賀の面々は感心したように声を洩らしていた。

 

「ちっ……腰帯剣(ようたいけん)、でありますか」

 

 天龍の手にいつの間にか握られている、しだれた薄い銀色の刀身を見てあきつ丸が呟く。

 腰帯剣。ベルト内部に、薄っぺらの360度しなる刀身を仕込んだ現代暗器の一つ。扉を両断したのはそれだった。

 さらに天龍は、右手首についていたスタンリングもあっさり切断し、床に落としてみせると、再び龍田の手を掴んだ。

 

「これでよし、と。ほらいくぜ!」

「ちょっと、天龍ちゃん!?」

「隊長、どうします!?」

「当然、追うであります。まるゆは全隊員に通信を入れて包囲網を。原田、いつまで寝ているでありますか! 私と貴様で奴らを追う!」

「了解……くそ、あの女、ただでは済まさん!」

 

 退路を確保し、食堂から逃亡した天龍達に向けて小さく舌打ちをすると、あきつ丸は即座に指示を飛ばしながら原田の頭を蹴って叩き起こし、天龍達を追って走り去っていった。

 

「嘘、天龍……なんで……」

 

 何が何やら状況にまるで追いつかない大和の頭の中で、ただ一つ理解ができたことは、天龍が七丈島艦隊からいなくなってしまったこと、それだけだった。

 

 

 一方、その頃。

 

「いやぁ、ここは良い店だなぁ。お酒と料理は美味しいし、何より、女将さんが美しい」

「あら、お上手ですねぇ、流石は紳士の国イギリスの方です」

「僕はイタリア人なんだけれどね」

「そっちですかー!」

 

 ビッグスプーンで美海から教えてもらった居酒屋に足を運んでいるエドとザラとポーラは伊良湖の料理とお酒を満喫していた。

 

「うぇへへ~、日本酒おいし~、もう一杯~」

「ポーラ、まだ飲む気!? やめておきなさい!」

「そうですよ、そろそろカクテルとかも頼んでくださいよ、自信作あるんですよ」

「お酒飲むのをやめろって言ってるんです!」

「そっちですかー!」

「じゃあ~、ワインくださ~い」

「あ、カクテルじゃなくてそっちですかー」

 

 日本酒一升瓶を既に三本空にしてさらにワインに手をつけようとするポーラにザラがチョップを入れた。

 

「痛い……」

「これ以上は駄目よ」

「そうです、カクテルにしときましょう、自信作あるんです」

「お酒を勧めるのやめてもらえる?」

「ごめんなさい」

 

 その時のザラの顔はまさに般若であった。

 

「はっはっは、じゃあポーラの代わりに僕がその自信作のカクテルを頂きましょう」

「ちょ、エド!」

「ありがとうございます!」

 

 エドの注文に伊良湖が嬉々としてカクテルを作り始める。

 

「もう! エドも飲みすぎよ!」

「何、大丈夫さ。それに、こんな美しい女将さんが作ってくれるカクテルなら、僕は無限に飲める!」

「でも、お客さん、飲み過ぎには本当に気を付けた方が良いですよ? アルコールには脳を麻痺させてしまう作用があります。脳の麻痺が生命維持に関わる中枢部分にまで及ぶと、心臓の働きや呼吸機能を停止させてしまい、最終的には死に至ります。急性アルコール中毒の症状をきっかけに、転落や交通事故での死亡や、嘔吐物を喉に詰まらせた窒息死なども発生しており、急性アルコール中毒は、時として死へもつながる恐ろしいものなのです。東京都では毎年1万人以上が急性アルコール中毒で救急輸送され、なかには死亡者も出ているらしいですよ?」

「…………」

「…………」

「…………」

「お待たせしました、オリジナルカクテル『七丈島』です」

「この流れで出す!?」

「え、なんでですか!? 注文してくれたじゃないですか!?」

「いや、そうだけれど!」

「すみません、水ください」

「ポーラ!?」

 

 ポーラが真顔で水を頼み始めた。

 

「僕が飲んだアルコール量を概算するとこうなるから、これを分解するために必要な水量は……」

「何で居酒屋で電卓叩いてるの、エド!?」

「お二人ともどうしたんですか、急に……なんだか私怖いです」

「多分あなたのせいよ!?」

 

 居酒屋で平和な一時を過ごした三人であった。

 

 




早速、イタリア組との温度差が酷い


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