七丈島艦隊は出撃しない   作:浜栲なだめ

81 / 119
前回のあらすじ
権能、DW-1の正体。




第八十一話「私、怒ってるのよぉ?」

 

「ふむ、やはり一筋縄ではいかないでありますか」

 

 隊員数名が天龍と龍田と戦闘。そしてあっけなく敗北した知らせを受けてあきつ丸は特にこれといって驚きもせず無感情に呟く。

 

「戦闘地点を考えると、両名は住宅街からエリアB内の町へ入り、人ごみの中に隠れるつもりかと思われます。どうしますか、隊長? いくら探知機でDW-1を捕捉できても人ごみの中で武器は使えませんし、こちらの足も鈍くなります。それが原因で万が一、横須賀に先を越されれば……」

「その時は横須賀ごと制圧すれば良いのだ、まるゆ」

「それは流石に厳しいと思うけどね」

「貴様、我ら蜻蛉隊の精鋭達が艦娘如きに劣るというのか!?」

「少なくともあなたじゃ勝てないよ、遅いし」

「貴様!」

「二人とも喧嘩はやめてください!」

 

 三人の喧騒の中、一人何かを考え込むように顎に手を当てていたかと思うと、あきつ丸は笑って言った。

 

「いや、むしろ人ごみの中に紛れてもらうであります。そちらの方が、都合が良い」

「隊長? どういうことですか?」

「この辺りで一番人通りの多い場所はどこでありますか?」

「事前調査ではこの時間帯では商店街辺りでしょうな。夕飯の買い出しに賑わっているはずです」

「では、そこへ。後、他の班にもエリアBまで包囲を狭めるよう連絡を」

「あ、あの、隊長、この島の方々を戦闘に巻き込むようなことは、しませんよね?」

 

 まるゆは心配そうにあきつ丸に尋ねる。

 この島に入ってからまるゆを含め、島民から声を掛けられることが多かった。そして、その誰もが労いの言葉をくれた。

 本土では陸軍が歩いていれば歩行者は道を開けて目を逸らす。

 戦争においてほとんど活躍のない陸軍が国内の治安維持に力を尽くした結果がこれだ。国内の犯罪率の減少こそ著しかったが、代わりに国民からはすっかり畏怖の対象である。

 そんな視線を日常茶飯事に受けて来たまるゆを含めた隊員達にとって、この島の人達の温かさがどれだけ心に響いたか、あきつ丸自身想像に難くない。

 故に、まるゆのこの意見をただ考えが甘いと叱責することはできない。

 

「当然であります。あんなに優しい声をかけていただいたこの島の方々を危険に晒すなど許されざる悪であります。なればこそ、我々はこれより商店街へと一刻も早く向かう必要があるのでありますよ」

「そうなんですか?」

「その通り。これは島民を守り、同時にDW-1を追いこむための一手。そのために――――」

 

 具体的に説明をしないまま歩き始めるあきつ丸はそこまで喋って、思い出したように言葉を区切る。

 

「誰か、そこらへんでマイクか拡声器を調達してきて欲しいであります」

 

 

「よし、もう少しで商店街だ。あそこの人通りなら少しはカモフラージュになるだろ」

「でも、私達も敵に気付き難くなるわ。それに、向こうには探知機みたいなもので私達を追って来る。どこに逃げても逃げ場は……」

「そうだな、この島の中じゃもう逃げ場はねぇ。蜻蛉隊だけじゃねぇ、横須賀も、後、多分あいつらも追って来てるだろうしな」

 

 天龍は寂し気な表情でそう呟く。

 

「天龍ちゃん……」

「いや、すまねぇ。とにかく、今は逃げ続けるしかねぇんだ。チャンスが来るまではな」

「チャンス?」

「なんとか夜まで持ちこたえりゃ、夜目の効く艦娘(俺達)の方が動きやすくなる。そこがチャンスだ」

 

 天龍は自信ありげにそう頷いてみせた。

 

「わかった。天龍ちゃんを信じるわ。きっと、チャンスを掴みとってみせる」

「お、なんだよ、ようやく腹くくったのか?」

「ええ、天龍ちゃん。私、怒っているのよぉ? 突然やってきて私がDW-1とかいう深海棲艦だなんて決めつけて、横暴よね? 私が誰かは私が決めること、赤の他人に口出しされるいわれは一切ないわぁ」

「ようやく、らしくなってきたじゃねぇか」

 

 二人が笑い合っていると、そこに、中年の男性が現れ、天龍達を指さして叫んだ。

 

「天龍!」

「おお、酒屋のおっちゃん。配達の帰りか?」

「おーい! 天龍を見つけたぞ! 陸軍の人! 聞こえるかー!?」

「なっ!?」

 

 突然その場で大声をあげて蜻蛉隊を呼び始める男性に、天龍は顔を強張らせた。

 

「やべぇ、龍田、走るぞ!」

「え、ええ!」

 

 何が起こったのかわからないが、とにかくその場に留まるのは危険と判断し、二人は走り始める。

 

「あ、天龍だ! 陸軍の人! こっちだー!」

「向こうに逃げたぞ!」

「協力感謝します! 隊長に連絡しろ! DW-1を発見した!」

 

 次々と、自分たちを見つけた何人かが天龍達を見つけるや否や声をあげる。

 さらにそれを聞きつけたのか、後ろからは怒声と軍靴の音が聞こえてくる。

 

「やられた、あいつらの仕業か……! 商店街はやめだ! 迂回するぜ!」

 

 人ごみに紛れるつもりが、むしろそれを逆手に取られた。

 そのことに気付いた天龍は小さく舌打ちをした。

 

 

『――えー、皆様、お騒がせしております。私はあきつ丸。陸軍の軍人であります。今日は皆様に、注意勧告とご協力をお願いするため、お話をさせていただいております。どうか、一時私の声に耳を傾けていただきたいのであります』

 

 拡声器を持って商店街の真ん中で声をあげるあきつ丸。それに商店街を行き交う人々は何事かと足を止めて彼女の周りに集まってくる。

 

『実はこの度、我々はこの島に身を潜めている深海棲艦を捕らえに参りました』

 

 深海棲艦。その単語一つで人々は不安げにざわめき始める。

 

『我々も全力を尽くし、深海棲艦を追い詰めておりますが、奴は艦娘の形に姿を変え、さらにはあろうことかこの島の艦娘の一人を洗脳し、操っているのであります』

「この島の艦娘ってことは、七丈島鎮守府の艦娘か!?」

「あの子達、私よく知ってるよ。どの子も愛嬌があって良い子達ばっかりさ」

「瑞鳳さんを筆頭に美人ぞろいだしな」

「俺プリンツさん派」

「結構ちっちゃい子もいたねぇ。ほら、ビッグスプーンでよく美海ちゃんと働いてる磯風って子」

「矢矧さんには困った時に相談乗ってもらってるから俺達は頭上がんねぇよ」

「大和ちゃんとはここで買い物してる時に何度も会うわ。この前も肉じゃがのコツ教えてもらったもの」

「天龍は儂の釣仲間じゃよ。若いのに結構根性ある奴じゃて」

 

 島民の七丈島艦隊の面々に対する想定以上の好評具合にあきつ丸は内心ほくそ笑む。

 

『深海棲艦に洗脳された艦娘は天龍であります。深海棲艦は龍田の姿に化けて天龍を洗脳して人質とし、我々から逃亡を続けているのであります』

「なっ、天龍が!?」

「畜生、深海棲艦の奴、ゆるせねぇ!」

「龍田って、最近この島に流れ着いたっていう?」

「私見かけたことあるわよ。怖いわぁ」

 

 あきつ丸は畳みかけるように続けた。

 

「我々は深海棲艦を捕らえるだけでなく、天龍も救いたい。そのために、皆さんにもご協力を願いたいのであります」

「協力してぇのはやまやまだけどよ、具体的にどうすりゃいいんだよ?」

「私そんな腕っぷしなんて強くないわよ?」

『皆さんには天龍を見つけたら、声をあげて我々を呼ぶか、私と同じ服装をした人間に報告をしていただきたいのであります。できる範囲で構いません。相手は深海棲艦であります、絶対に無茶はせず、危険を感じたならまず逃げることを優先して欲しいのであります。また、このことをまだ知らない方にも教えていただけると尚ありがたいのであります』

 

 そこまで聞いた島民達は協力する意思を示すようにあきつ丸に頷いてみせる。

 最後の仕上げとばかりにあきつ丸は声をさらに張り上げた。

 

『どうか! この島の平和を守るため! 天龍を救うため! 皆様のお力をお貸しください! 我々と、この島の全員の力で、愚かな深海棲艦を倒してやろうではありませんか!』

「よし、任せておけ!」

「見かけたら報告するだけでいいのね。それで天龍ちゃんを助けられるなら喜んで協力させてもらうわ」

「おし、早速配達しながら探してみるぜ!」

「深海棲艦に島の団結力を見せてやらぁ!」

 

 そう言って散っていく島民達。

 予想通りに事が運んだことに満足げに笑った。

 

「お疲れ様です、まさか、あそこまで島民の方々が協力的に動いてくれるなんて……」

「この島の人々は優しいでありますからな。それにこの島のような小さなコミュニティは結束と仲間意識が強い」

「七丈島鎮守府の艦娘が予想外に島民に慕われているのもありましたな」

「ええ、しかし、何よりも大きいのは。自分たちの為す行動が、『正義』であると裏打ちをしたこと。人は誰しも、正しい選択の中にいたいと望むものでありますからな」

 

――私自身も含めて。

 

 内心であきつ丸はそう言葉を付け加えた。

 

 

「くそ、人ごみに紛れる筈が、人ごみ自体が監視の目になっちまうとはな」

 

路地裏で荒い息を整えながら、天龍は呟いた。

 

「どうする? だんだん軍服の人間が多くなってきてる。きっとこの周辺に集まってきてるんだわぁ」

「商店街は迂回して抜けたが、結局何人かには見られて陸軍を呼ばれちまった。このままじゃいずれは見つかるな。かといって迂闊には動けねぇ……くそ、ここ抜ければすぐ二原山に入れるってのに……」

「山に入るつもりだったの?」

「ああ、向こうが何人で来てるか知らねぇが、山を囲むような人数はいねぇはずだ。そんな人数連れてきて、しかも探知機まであんならとっくに見つかってる。それに、山狩りは滅茶苦茶神経使う上に時間がかかる。向こうを疲弊させて、しかも夜まで時間稼げるって思ってな」

 

 夜になればこちらのものだ、と天龍は息まく。

 

「――向こうでDW-1と天龍を見かけたと報告が入ったぞ!」

「探知機も反応したらしい、急ぐぞ!」

 

 天龍達の隠れる裏路地に表通りを走り抜けていく蜻蛉隊の声が響く。

 一瞬、この場所が勘付かれたかと冷や汗を流したが、何故か足音は遠ざかっていく。

 

「……なんだ? 誤報か?」

「よくわかんないけれど、彼らがこの付近からいなくなったってことは今がチャンスかもしれないわよ」

「おし、よくわからんがラッキーだ。一気に駆け抜けるぜ」

 

 裏路地から出て二人は人通りの少なくなった道を一気に駆け抜ける。そして、ようやく二原山の麓に着いた所で、足が止まった。

 

「や~りま~した~! 探しもしてないのに向こうから見つかりに来ましたよ。必死に探してる蜻蛉隊の人達が馬鹿みたいですね~」

「本当ですねぇ、綾波さんの幸運属性の賜物ですかねぇ。私はもう少し気長に散歩していたかったんですけれど」

「神通に、綾波……!」

 

 山を目の前にして最悪の敵に遭遇してしまった。

横須賀艦隊の艦娘。しかもそれが二人。

天龍は諦めたように笑いながら尋ねる。

 

「見逃してくんねぇかな?」

「いいですよ」

「駄目で~す」

「どっちだよ!?」

 

 矛盾する返答に思わず天龍の声が大きくなる。

 神通と綾波も顔を見合わせてなにやら無言で見つめ合っている。二人とも終始笑顔なのが逆に怖い。

 

「じゃあ、神通さんはそこで立って見ているだけでいいです。全部私がやりますから」

「そうですか、頑張ってくださいね」

 

 ほぼ無言のまま話がまとまったらしく、神通は数歩下がり、同時に綾波が腰を低くして地面に左手をつける。右手は力を溜めるように曲げ、脇の下で拳を固く握っている。

 どうやら戦闘態勢に入ったらしい。

 

「くそ、やるしかねぇか! 龍田、油断すんなよ!」

「当然よ、返り討ちにするわぁ」

 

 天龍が軍刀に手をかけ、龍田が両の手を開手にして綾波へ向け、構える。

 

「いきま~す」

 

 瞬間、綾波の両の足と地面につけていた左手が地面を蹴った。

 地面に三つほど小さなクレーターを作り、爆発的な加速をして天龍達に一直線に突撃してくる。

 並の艦娘の航行速度よりも断然速いと確信する。

 しかし、天龍の目が追いきれない程の速度ではなかった。

 

「ふっ!」

「――ッ!」

 

 間合いに入った瞬間に、天龍の軍刀が光の線を描く。

 しかし、綾波もそれに気づいたのか、間合いに入る寸前で足を強引に前に蹴って後ろに飛ぶことで居合を回避する。さらには、そこからもう一度地面を蹴って再び天龍に向け加速してみせる。

 

(居合の弱点は攻撃の後です)

「ぐっ!」

 

 居合を空振り、刀を振り切った状態からでは、切り返すより早く綾波が懐に入る。

 それを防ごうと、龍田が綾波の真横から掌底を放つ。

 ほとんど視界の外からの攻撃、仮に視界の端の龍田に気が付いたところで、反応も反射も間に合わない。

 しかし――――

 

「甘いです」

「え!?」

 

 それは、最早、神域の反応速度であった。

 綾波の目が一瞬赤く光り、ギョロリと天龍から龍田の方へ向けられる。

 悪寒を感じた時には既に遅く、綾波は龍田の突き出された掌底をその手首を掴んで防ぐと、そのまま自分に向けて彼女の身体を引っ張り、同時にもう片方の手で拳を彼女の腹部に叩き込んだ。

 

「おっ……えっ……!」

「てめぇ!」

 

 胃の中身が逆流し、龍田の口から吐き出される。

 天龍が綾波に向けて振り下ろした刀も容易くサイドステップで避けられ、同時に懐へ踏み込まれることを許してしまう。

 距離を取ろうとする間もなく、がら空きの脇腹に綾波の拳が叩き込まれ、天龍は顔を歪め、地面に膝をついた。

 

「なんつー出鱈目な速度と力……お前本当に駆逐艦かよ」

「なんて凡骨な動きと技術、あなた達本当に深海棲艦と軽巡洋艦ですか~?」

 

 笑顔で毒を吐く綾波に天龍と龍田は徐々に気圧されていく。

 ほんの数秒の戦闘、僅か数撃にしか満たない攻防。それだけで目の前の小さな少女が今の自分達以上の力を持っていることは十分すぎるほどに痛感できた。

 

「くそ、こんな使い慣れねぇ軍刀じゃなきゃ、もう少し太刀打ちできたんだがな」

「弱い人ほど負けた理由を自分以外にに求めますよね~」

「……天龍ちゃん、悪いんだけれど、その軍刀の鞘、貸してもらえる?」

「――! おう、受け取れ!」

 

 天龍は鞘を龍田に投げる。

 口元を拭いながら龍田はそれをキャッチし、片手で鞘を華麗に回転させて見せる。

 それを綾波は興味深げに見つめていた。

 

「棒術ってやつですか~?」

「私、怒ってるのよぉ?」

「そうなんですか~」

「綾波ちゃん、武器って大事よ? 武器一つのせいで天龍ちゃんはあなたに勝てなくなった」

 

 鞘の中間と端を持ち、龍田が構える。

 

「でも、今からは逆。武器一つのせいで、あなたは私に勝てなくなるわ」

 

 雰囲気が変わった。

 後ろで退屈そうに綾波達の戦闘を観察していた神通の目がはっきりと見開かれる。

 

「面白い冗談です、癒されますねぇ~ ――――やってみてくださいよ」

 

 朗らかな笑みを見せる綾波の目が、再び赤く光った。

 

 

 一方その頃。

 

「へぇ、イタリアからわざわざこんな島まで来たんだ、提督さんは」

「はい……」

「イタリアじゃ住宅街のど真ん中で騒いでても注意はされない?」

「いえ……」

「じゃあ、駄目だよね」

「すみませんでした……」

「ああ、エド! エドが日本の国家権力にすっかり委縮してしまっているわ!」

「この人こわーい」

 

 表情は笑っているが目が笑っていないベテランの少しずつ逃げ場を防いでいくような説教にエドモンドはもう涙目だった。

 いや、たった今頬を透明な液体が伝った。

 そして、それをザラとポーラは見ないふりをした。

 

「いや、先輩ちょっと寝不足でしてね! 機嫌悪いんですよ! 後で後輩の私がキツくいいきかせておきますんで! はい!」

 

 隣の暑苦しい後輩婦警はその様子を見かねてエドモンドにフォローを入れる。

 

「ねぇ、誰のせいで寝不足になってるのか覚えてるかな?」

「…………」

「書類を期日までため込んでたのは誰だったかな?」

「私です……」

「で、それ一人で終わらせたんだっけ?」

「違います……」

「誰に手伝ってもらったの?」

「先輩です……」

「結局何時に書類終わったんだっけ?」

「今朝の…6時」

「7時だね」

「すみませんでしたッ!」

「ああ、婦警さん! 婦警さんが鬼の先輩警官にすっかり委縮してしまっているわ!」

「やっぱりこの人こわーい」

 

 表情は笑っているが目が笑っていないベテランの少しずつ逃げ場を防いでいくような説教に婦警はもう涙目だった。

 いや、たった今頬を透明な液体が伝った。よく見たら汗だった。

 そして、それをザラとポーラは見ないふりをした。

 

「はぁ、俺も少し八つ当たりが過ぎてキツク言い過ぎました、申し訳ありません」

「い、いや、そもそもこっちが迷惑行為をしたわけで、君達は仕事をしていただけであって頭を下げられるようなことは……」

「ああ、エド! エドが突然頭を下げられて困惑してしまっているわ!」

「ザラ姉様、その喋り方気に入ったの?」

「そうです、そもそも私が原因なんですから先輩が謝る必要はないです!」

「そうだよね、そこまでわかってて、なんでお前の頭は俺の頭上に見えるのかな?」

「申し訳ありませんでした!」

「土下座! 日本の伝統文化! 初めて見たわ!」

 

 頭を下げたベテランに睨まれ、思わずジャンピング土下座を繰り出してしまった婦警にザラは大はしゃぎであった。

 

「お嬢さん、どうかお顔をあげてください。そんなところに頭をつけられては折角の君の可愛い顔が見えないじゃないですか」

「ああ、エド! エドが先輩警官に怒られて精神的に弱った婦警さんをここぞとばかりに口説き始めたわ! 流石エドだわ、何考えているのよ、この恥知らずのナンパ男!」

(頬膨らませて嫉妬するザラ姉様かわいい)

 

 しかし、婦警は顔をあげると引きつった顔でエドを見る。

 

「ごめんなさい、台詞くさすぎて無理です」

「ぐはっ!」

「ああ、エド! 久々に瞬殺されちゃって、エド! 残念だったわね!」

(安心して笑みが隠し切れないザラ姉様かわいい)

「悪いですけれど仕事中なので、そういうのはやめてもらっていいですか?」

「え、先輩嫉妬!? それ、私を他の男に近づけたくないって嫉妬ですか!? うおおおお、熱くなってきたああああ!」

「違うよ」

「冷めてる!」

 

 そんなやり取りをしていたその時、エドモンドは見た。

 

「ぜぇ、ぜぇ……瑞鳳! 次はどこ行けばいいんですか!? ……はぁ!? 遠すぎです! 後どれだけ走らせるつもりですか!?」

「お姉さま! ファイトです!」

「なんであなたはずっと並走してて全然疲れてないんですか!?」

 

 片方は後ろ姿しか見えないが、長居黒髪をポニーテールにした少女。

 そしてもう一人は横顔からおそらくはゲルマン系と思われる金髪の少女。

 エドモンドはその金髪の少女から目が離せなくなっていた。

 

「ふつくしい……」

「エド?」

 

 エドモンドの様子がおかしいことに気が付いたザラが声を掛けたと同時に少女たちはどこかへと走り去っていく。

 反射的にエドモンドの身体が動いていた。

 

「待ってくれ!」

「ええ!? どうしたの、エド!?」

「あ~、それじゃあ、お勤めご苦労様です~」

「ええ、七丈島で良い一時を」

「熱い一時を!」

 

 警官に見送られ、エドモンド達は大和とプリンツを追って走り出した。

 

 

 




艦娘なのに陸で戦ってる(困惑)


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。