こんな○○○は絶対に間違っている   作:ディストピア

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4月1日の午前0時を回った頃にふと思い付き、書き上げる事が出来た話です


このファミリアで彼が胃薬を手放せないのは間違っているだろうか【エイプリルフール編】

「ふ………ふふふふ、うふふふフフフフフフ」

 

光の宿らぬ瞳を血走らせ、その顔に狂気的な笑みを張り付け壊れたかの様に笑う少女、彼女の狂気を現すかの様に色が抜け落ち白く染まった髪が怪しく蠢く

 

 

余りにも禍々しい気配を一切隠そうとすらせず、殺意全開で外に飛び出そうとしている少女の名は清姫

 

 

 

 

 

彼女は【嘘】という存在を、心の底から嫌悪し憎悪し怨み憎み呪い否定し拒絶している

 

 

 

 

そんな彼女が今は狂気の化身と化して我を失い、全ての【嘘つき】を自らの血も肉も心も魂も、己の全存在を焼き付くしてでも殺し尽くそうと暴走している彼女を

 

 

「静まれ清姫!!、嘘を聞きたくないならわざわざ外に出るな、ファミリアの中に嘘を言う奴は居ないからって外の連中に反応するなぁ!!」

「ご主人様に羽交い締めされているなんてきよひーってば羨まし………じゃない、落ち着いて下さいませ清姫さん」

「捕縛用の魔法具は何処に有ったかしら…………鎖程度じゃ今の彼女は止められないわね、絶対に引き千切られる」

「もっと強力な睡眠薬か麻痺毒は無いのか、0.1グラムで象を容易く昏倒させる麻痺毒を無効化させている以上…………同じ量でクジラを動けなくする程に強力な物を使わねば効果は無いと言うのか!!」

「ユーリ、清姫さんと彼女を羽交い締めにしているゼブルを、そのまま二人纏めて魄翼を使って全力で掴んで下さい」

「シュ………シュテル、清姫さんに掴まれた魄翼がギシギシと軋んでます~~!!」

 

 

ヘカテー・ファミリアに所属する人員が総出で止めていた(今ホームの中に居る者だけだが)

 

 

 

ゴライアスを素手で殴り殺すのと今の清姫の相手をするのとどちらが良いか選んだ場合、誰もがゴライアスを殴りに行きそうな程の修羅場と化しているが

 

 

 

 

今日は4月1日、エイプリルフール

 

 

 

 

嘘を言う人間が世界に大量発生する日だ

 

 

 

 

「アルベドさんや俺もそうだけど、怒り狂って狂化したら能力が向上しすぎだろ、玉藻、呪術で俺諸とも清姫を凍らせろ」

 

「分かりました、呪術発動、『氷天よ、砕け!』」

 

懐から呪符を取り出し、指示に従い清姫をゼブルごと氷付けにする

 

 

巨大な手に変化して二人を掴んでいた魄翼も凍っているが

 

 

 

「止まった…………か?」

 

清姫を止める為の部隊の1つに指示を出していたディアーチェがそう呟き、意識を緩ませ

 

 

 

 

「………フフフフ」

 

 

氷の中から清姫の笑い声が聞こえた瞬間、再び意識を引き締めた

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

清姫が氷を内側から【動いた】だけで粉砕して歩き出す、その直後二つの影が駆け抜ける

 

 

 

それぞれが極太の鎖を持ったまま二つの影、ジャックと義経が清姫の周囲を回り、彼女を鎖でがんじがらめにして他のメンバーと共に鎖を引いて引き止める

 

 

 

その鎖の反対側はパッションリップとメデューサが持ち、全力で引いていた

 

 

 

「クソッ、これだけやってもまだ前に進む力の方が僅かながら上かよ、ダンジョンに潜ってるのと近隣住民に近付かない様に外で呼び掛けている連中が居たら止めれそうだけど………」

 

 

悪態を付きながらも清姫を羽交い締めしているゼブルだが、地面に跡を残しながら引き摺られている

 

 

 

 

それは彼の力不足とか以前の問題で

 

 

清姫の身長は『158㎝』

 

 

それに対してゼブルの身長は『154㎝』

 

 

 

身長で普通に負けているゼブルは羽交い締めでは絶対的に清姫を持ち上げられないのだ

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

一方その頃

 

 

 

ランスロット、ガウェインモードレッドの三人が危険を呼び掛けていた

 

 

「そこの人、この先に今は近付かない様に、毎年恒例の事が起こっていますので」

 

 

「テメエらはこの辺の奴じゃねえな、死にたくなかったら今日は絶対にこの先には行くんじゃねえぞ」

 

 

「ガウェイン、モードレッド、我々も向こうを手伝った方が良いのではないか?」

 

 

ランスロットがそう言うが、帰って来たのはモードレッドの溜め息と呆れた様な眼差しだった

 

 

 

「去年そう言って合気でぶん投げられた後に踏み付けられて足の骨を踏み砕かれたのは何処の誰だよ」

 

 

モードレッドの言葉を聞いて顔をそらすランスロット

 

 

 

ガウェインも似た様な有り様だったからか顔をそらしている

 

 

 

そこに

 

 

「ヘカテーの所の子供らやないか、こんな所で何やっとるんや?」

 

「…………久しぶり」

 

 

ロキとアイズが現れた

 

 

 

「何って、毎年恒例のヤツだよ」

 

 

「毎年恒例のって…………何か在ったか?」

 

 

モードレッドの返答に首を傾げ疑問に思うロキ、アイズも首を傾げている

 

 

 

「神ロキよ、今日が何の日だかお忘れなのか」

 

 

ランスロットのその言葉を聞いて思い当たる事が有ったのかアイズが口を開く

 

 

 

「今日は4月1日、エイプリルフール」

 

 

「そういやそうやったな、って事は清姫が暴れとるんか?、時々買ってるらしい神酒を分けて貰えたらな~って思って行くとこやったんやけど、どんな反応するか嘘付いてからかってみようかな~」

 

そう軽く言ったロキの言葉

 

 

 

 

それを聞いたランスロット、ガウェイン、モードレッドの三人は、ロキは清姫が嘘を凄く嫌っているといった『程度』にしか理解していない事を理解した

 

 

 

アイズは顔を青ざめさせてカタカタと震えているので知っているという事も把握した

 

 

 

 

「ロキ………駄目、それだけは絶対にしてはいけない」

 

 

「ってアイズたん、何でそんなに青ざめとるんや、ものごっつう怯えとるし」

 

 

「ヘカテーに神酒の事で交渉すんのは構わねぇ、だけどなぁ…………嘘だけは絶対に言うんじゃねえぞ」

 

「彼女の前で嘘だけは言ってはいけない、取り返しが付かなく成りますからね」

 

「相手が神でも例外では在りません、嘘を付けば必ず……」

 

 

ランスロットはそこで言葉を止めたが、三人の目と態度が言外に言っている

 

 

 

 

『嘘を付けば必ず殺される』と

 

 

 

 

 

そうしてヘカテー・ファミリアのホームを訪れたロキとアイズ

 

 

 

彼女達の前に広がる光景にロキは言葉を失い、アイズは手伝った方が良いかな?………と悩んでいた

 

 

 

「うふふふふふフフフフ、アハハハハハハハ、殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す焼き殺す絶対に焼き殺す、愚かなる嘘付きは一切合切例外無く塵も残さず魂すらも蒸発する程に焼き払ってご覧に入れましょう、『我が身は………』」

 

 

「詠唱などさせるものかぁ、今の暴走してる君がその魔法を使ったら本当にこの辺り一帯が焼き尽くされて灰塵しか残らなくなる」

 

羽交い締めしたまま必死に清姫の口を左手で塞ぎ、詠唱を強制的に中断させる

 

 

その結果起きた詠唱暴発で清姫は多少ダメージを負った様だが完全に痛みを無視している

 

 

 

 

二人の周りには途中で断ち切られた鎖の破片が散らばり、鎖を掴んだまま気絶している者達が転がり

 

 

まるで『人の形をした何か』が引き摺られた跡や、叩き付けられて出来た様なクレーターが到る所に存在し、植えられた木々は凪ぎ払われてへし折れているか、根が露出して倒れている

 

 

 

敏捷に優れた者が駆け回って気絶している者を回収して回復薬で治療して回り

 

 

 

無事な者達は激戦の真っ最中といった雰囲気で戦意をたぎらせている

 

 

 

「え゛っ…………なんや…………これ」

 

 

『嘘』に反応して怒り狂う清姫を初めて見たロキがこんな反応をするのも当然だろう

 

 

 

 

「ん~~、離して………くだ……さい」

 

ゼブルを振り払う為に体を動かし、自分を止める為に込められている力を利用して合気で投げようとしているが

 

 

「他の者なら兎も角、君に合気を教えたのは他ならぬこの俺だぞ、合気の対処法も体に叩き込まれているから理解している、それに、下手に力を込めて力んだら俺が逆に合気で投げて押さえてやる、しかし……………殆んど力を使えない筈なのにこの惨状って、この身の未熟がこの時ばかりは恨めしい、力0技10の領域は遠すぎる」

 

 

「くぅ………何故、嘘などという愚かしく、許されざる行為を行う愚か者を焼き払う邪魔をするのですかぁ」

 

 

 

「今の君だと片っ端から焼き払いかねないからだよ、嘘を言う可能性が在る………成らば焼くって感じに、そんな事をしたら『嘘付きを』焼くと言いながら、嘘を付いていない者すら焼いて、自分の言葉を行動で『嘘』にしてしまったら君自身が『嘘付き』に成るぞ、その辺の区別と言うか………判別が今の君に出来るのか?」

 

その言葉を聞いて、身体をビクッと震わせる清姫

 

 

「それ………は……」

 

暴走してから初めて清姫が動きを完全に止めた

 

 

 

「迷惑を掛けた皆や怯えさせた子供達にちゃんと謝って、落ち着く事が出来たなら…………今度一日だけ、デートだろうと愛を囁くのだろうと新婚バカップル的な事も………本番以外なら全部受け入れるししてやるよ」

 

大真面目に真顔で断言したゼブルのそんな言葉

 

 

「なっ………えぇ」

 

「ご主人様ぁ!?」

 

 

清姫は顔を瞬時に真っ赤にして慌てふためき

 

 

玉藻は絶叫した

 

 

 

「ご………ご主人様の本命ってきよひーだったのですかぁ」

 

悲壮な雰囲気を纏いながらそう訪ねる玉藻

 

 

「いや………別にそうじゃないけど、好きか嫌いかで言えば好きだけど、友愛や親愛ならば愛していると断言できるレベルで大好きだけど…………清姫だけでなく君の事も」

 

 

「はわぁ」

 

「まぁ………ファミリア自体が依存対象で、愛情がファミリアに向いてるから所属している全員に対しては好意が振り切れて………………二人揃って聞いてないな」

 

 

顔を真っ赤に染めて目をぐるぐる回して混乱中の清姫と玉藻の二人がその言葉を認識できなかったのは、幸か不幸か………どちらだろうか

 

 

 

清姫の暴走が終わった事を感じ取ったのか、奥からカレンが呆れた様な眼差しをゼブルに向けながら現れた

 

 

 

「乙女の恋心を弄んで、しかも確信犯だなんて………酷い人ね」

 

「酷い言い草だ、嘘偽りは一切口にしていないし全て本心だよ、止める為に恋心を利用したのも事実だけど」

 

 

「愛が深くて対象が広すぎる………と言うのも考え物ね」

 

「確かにね、清姫、そして父方の親戚のアルベドさんが可愛く思える程に、愛に狂って過去と約束された未来の全てを投げ出しながらも愛憎が反転して自らの手で愛した男を殺した愛に狂った女が先祖だしね、恋愛感情を理解し自覚するのが本気で怖いんだよ」

 

 

「それでハーレム人員を増やしているというの?、故郷………実家が在る国に婚約者が二人も居る癖に、何人も女の子を口説いて骨抜きにして」

 

 

「口説いた覚えは無いし、それに婚約者『候補』だよ、エヴァさんは家の血を確実に深めて受け継ぐ為の相手で又従姉だし、アリシアは知り合いで仲も良いけど相性が良いからって叔父が決めた事だし、上位貴族で重婚可能だからってふざけた理由で婚約者は元々三十人は居たし、上位貴族なのに本家筋で生きてるのが高齢の爺と病気の影響で種無しの叔父、叔父の所に二歳の時に養子に行った二歳下の妹とボクの四人だけだし、挙げ句当主の証がボクに発現してるからか十歳の頃から事在る毎に子供を作れだの種をばら蒔けだの帰ってこいと手紙でもそればっかりで鬱陶しいし、ヘカテーの側に居るのもファミリアが探索系に成る前からの、ウラノス達より少し遅れて降り立ったヘカテーを主神としたファミリアが誕生した頃からの、神々が地上に降り立つ前の時代からの、魔導を司る女神ヘカテーを崇める巫女と神官で『魔法使い』の家系で在る一族の義務でも在るのに、その辺無視して五月蝿いんだよ!!」

 

 

「…………そんなに長々と愚痴るなんて…………貯まっているのかしら」

 

「貯まってるよ、貯まりまくりだよ、売って金に出来るならば億処か兆の桁すら狙える程に貯まりまくってるよ」

 

 

「口調や一人称まで本来のモノだなんて…………爆発寸前ね」

 

 

「ところで………そこに居るロキとアイズはナンノヨウカナァ」

 

息を乱していたゼブルが突然、ぐりんと壊れた半笑いのまま片言で喋りながら振り返る

 

 

「うぉ、用か………用件はなぁ…………神酒を少しでエエから分けてくれないかって交渉に来たんやけど」

 

若干怯えながら用件を伝えるロキ、彼女はアイズが怯えていた理由を今では完全に理解していた

 

 

 

「神酒か………今月分の受け取りは明日なんだよね、金を払うだけでなく材料も全て持ち込みで頼んでずっと造って貰っていたからこその確実な定期購入だし、交渉なら奥に居るから直接してね」

 

 

「交渉出来るんは有り難いんやけど、1つ聞いてええか?」

 

 

「今年は特に酷かったけれど清姫の暴走は毎年恒例の事だよ、それとも他の事?」

 

 

「………ありがとうな、よう分かったわ」

 

 

力無く答えたロキは勝手知ったる他神の家と言わんばかりに、ヘカテーが居そうな場所に向かって迷い無く一直線に向かっていく

 

 

 

ホームの中ではなく、敷地内にひっそりと建てられている祈祷所に

 

 

 

 

 

これは近隣住民すらも毎年の事だと若干慣れてしまっている4月1日の出来事で在る




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