俺ガイル短編集   作:黒猫withかずさ派

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ヴァレンタインは甘くない

 

 

 

 ヴァレンタイン。

 明日はヴァレンタインだが、あいにく休日ではない。ここは心に鉄のカーテンをして挑まねばなるまい。普通の男子生徒は義理チョコさえもらえないのが現実だ。

 友チョコだ、本命チョコだときゃっきゃっうふふと騒いでいるリア充どもは別世界の人間だと最初から除外するとして、かの有名の義理チョコでさえただの男友達ではもらえないのが宿命である。

 ましてやただのクラスメイトであったり、部活が一緒であるくらいでは絶望的である。もしかしたらチロルチョコくらいはと希望を抱く男もいるだろう。だが考えてほしい。使えるお金が限られている高校生がどうして無駄なうけねらいのチョコを配るというのだ。

 あれは隣に住む幼馴染みの女の子が毎朝起こしに来るくらいのテンプレ都市伝説だと訴えたい。

 そんなわずかな希望を抱くくらいなら、最初からヴァレンタインに希望を抱かない方が100倍ましだと思う。

 まあ、プロのぼっちからすれば、明日のヴァレンタインはいつもの平日と同じよう過ごせばいいんだが。

 それに、俺には本命チョコが期待できる。きっと家に帰れば、最高の妹たる小町からヴァレンタインのお恵みのチョコが用意されていたるはずだ。

 たとえ小町が食べたいチョコレートであったとしても、そのチョコレートの大半は小町の口の中に消えるとしても、それがなんだというのだ。小生意気にかわいい小町から貰えるのだから、俺には文句など出るであろうか。

 

「さて比企谷。準備はいいか?」

 

「はい?」

 

 平塚先生、何を言っちゃってるの? さすがにぼけが始まる年でもないし…………、それともあれか? あまりにも現実を悲観してしまって幻想と現実が混合してきたとか?

 

「ぐはっ!」

 

「あまり失礼な事を考えないように」

 

 平塚先生は俺の腹にめり込んだ拳を引き抜きながら静かに問い質す。

 

「できることなら拳で語る前に言葉をお願いします」

 

「比企谷ならこういう展開の方が好きかと思ってな」

 

「いや、ラノベで読む分には笑えますけど、現実では遠慮したいですね」

 

「その意見にはおおむね私も賛成だな。まあいいか。さて時間も惜しいし始めるとしようか」

 

「始めるって、なにをですか?」

 

「そりゃあこの材料と明日のイベントを知っていればわかるってものだろ?」

 

 馬鹿な事を聞くなって言うその顔。本気で殴りたくなっちゃうからやめてくださいよ。ただ、まじでやったらかえりうちどころか、キズものにした償いとしてそのままお婿さんになってしまいそうだから、まじで、まじで、やらないけど。

 

「チョコレートですよね? ……手作りですか?」

 

「…………そうだ」

 

「………………えっと、頑張ってください。陰ながら応援しています。じゃっ、そういうわけで俺かえりますね。あとは一人で頑張ってください」

 

「ん? 何故帰ろうとする?」

 

「何故骨が砕けそうなくらい俺の肩を掴んでいるんですか? ってかまじで痛いからはなしてくださいっ」

 

「それはわるかったな。そうだな、私が手作りチョコなんておかしいよな。笑えるよな。そうさ、笑えばいい。そして明日ここで見た事をみんなに話して私の事を馬鹿にするんだ。そうに決まっている」

 

「いや、泣かないでくださいって。そもそも俺には話をする相手さえいませんから。だから秘密の保守はきっちりしますから」

 

「そ、そうか?」

 

 だから、涙ぐまないでくださいって。実年齢の半分くらいの年に見えちゃうじゃないですか。しかも、暴力的に可愛いから下手に近づかないでっていうか。

 

「はい、チョコ作りも俺ができる範囲で手伝いますから。味見なら任せてください」

 

「手伝うと言いながらも味見しか手伝わないと宣言するあたりは君らしいな。まあ私も初めから味見をしてもらうために呼んだのだからかまわないが」

 

「適材適所っていうじゃないですか。………………って、なにやってるんですかっ?」

 

「エプロンをつけているんだが?」

 

 するするっと着ていたコートを脱ぎ、フリル満載の純白のエプロンをつけるところまでは、この際問題にしないことにしよう。

 なんというか、意外と乙女チックなエプロンが頬を赤く染めるその姿に似合っているので、野暮な事は言わない方がいいだろう。もちろん俺が血迷った事をしないことを警戒しての二重の意味も込めてだ。

 

「そのエプロンの下にきている服は、もしかしないでも高校の制服ですよね? わかってます。誰にも言いません。だから俺を解放してください」

 

「そんな土下座までもしなくても襲ったりしない。…………それよりもどうだ? 自分で言うのもあれだが、案外悪くはないだろう?」

 

 くるくるっとエプロンで隠れていない後姿を見せようと回る。これもまた意外と似合っているし、年齢の割には悪くはないとも言える。さすがにこのまま制服で外出したら風俗の人だと指を刺されてしまうだろうが、こういうプレイが好きな人であれば十分すぎるほどの威力を秘めているのだろう。

 

「えっと、うちの制服ではないですよね?」

 

「あぁ、私が高校時代にきていたものだ。さすがにわざわざうちの制服を買えるほどの度胸はもちあわせてはいないんでね」

 

「その……、こういうのは俺がいないところでやってもらえませんか。ほら、俺も一応男ですし」

 

 彼氏ができてからだと言わなかったのは武士の情けだ。

 というか、その言葉を発した瞬間に切り捨てごめんで切られているのは俺の方だろう。

 

「そ、そそそそそうか。悪くはないか。うん、比企谷も男だしな」

 

 なにを腰をくねくねとよじらせて喜んでいるんですか。間違って押し倒しそうになってしまうじゃないですか。

 

「それよりも靴下はどうだ? 紺のハイソックスは古いんだよな? 今は短めのが多いみたいなのでそれに合わせたのだが、色は白でよかったか? 一応ニーハイソックスも買ってみてはいるのだが、ちょっとな。いや、あれだ。似合わないんじゃないぞ。そう、威力でありすぎて比企谷には見せられない。そうなんだ」

 

「いやまあ、今はいているので悪くはないと思いますよ」

 

「そ、そうか。…………よかった」

 

「で、なんで制服なんてきているんですか? チョコレートを作るんでしたよね?」

 

「今までこういうイベントには縁がなくてだな。今年ようやく本気で頑張ってみようと思ってな」

 

「まじですか?」

 

 これで俺がお婿にいく心配がなくなったってことか。でもあれだな。いくら俺との結婚なんて無縁の相手でも寂しくなるもんなんだな。

 

「あぁ、本気だ」

 

「顔が近すぎるのでとりあえず離れてください」

 

「すまない」

 

「ということは、明日その制服を披露すると? でもあれですよ。いきなり制服で登場したら男の方もひきますよ? そういうのはもっと仲が良くなってからがいいと思いますがね」

 

「これは今日の為にきただけだ。…………ちょっと待て。何故逃げる?」

 

「いや、体が反応してしまって、ですね」

 

「とって食おうなんてしないから戻ってこい。それとも私に強制連行されたいのか?」

 

「いいえ。比企谷八幡、戦線に復帰いたします」

 

「よろしい。…………ごほん。この制服だが、高校時代こういったイベントとは無縁だったのでな。だから、今回自分に気合いを入れる為にもきてみたのだが、どうだ?」

 

「そ、そうですか。悪くはないですよ」

 

「そうかっ。よかった」

 

 というか、前はエプロンで隠れているからいいんですけど、後ろから見えるミニスカはどうにかできませんか? 由比ヶ浜並みにビッチな尻がふりふりと揺れるたびに間違いを起こしそうになってしまうんですけど……。

 平塚先生、恐ろしい子っ。

 

「まあ、いい。とりあえず試作品をいくつか作ってあるから食べてみてくれないか? その感想を見て手を加えてみる予定だ」

 

「わかりました。役に立つかわかりませんが」

 

「大丈夫だ」

 

 何時間経ったのだろうか?

 目の前でうちの高校の制服を着ている平塚先生が恥ずかしそうに立っているのはどうしてだろうか?

 

「比企谷はマニアックな趣味をもっているんだな。……男なんだし、普通なのか?」

 

「別に普通ですよ」

 

「そ、そうか。それよりも比企谷が言うように、膝まであるスカートの裾を両手でミニスカートの丈くらいまでつまみ上げる方が恥ずかしいんだな。スカートの丈自体は同じなのに、この違いはでかいな」

 

「世の中ビッチを求めている男だけじゃないんですよ。ビッチはビッチなだけに羞恥心ってものが感じられないんですって。いくら目の前にご馳走があっても、毎日だと飽きるじゃないですか」

 

「そうか。そういうものなんだな。勉強になる」

 

「わかればいいんですよ」

 

「なあ比企谷。いつまでもこうしてスカートをまくっていないといけないのか? いくら見えていないとわかっていても恥ずかしすぎる」

 

「どうせなら後姿も見せてくださいよ」

 

「…………わかった。お前にだけなら」

 

 

 

 

 

 

 

 朝日が眩しい。というか、ここはどこだ。

 って、酒癖ぇ。

 なんだ、胃がむかむかするんだけど、俺酒飲んだのか?

 猛烈な危機反応に導かれて隣を見ると、予想通り平塚先生がいる。しかも総武高校の制服までしっかりと着ちゃって。シワになりますよ、なんて言うべきではないだろう。

 一応ブレザーはハンガーにかかっているから、いいのか?

 あとなんだか知らないけど、テーブルの上に婚姻届が置かれているのは見なかった事にしよう。うん、見なかった。八幡何も見ていないよ。

 

「ようやく起きたか。そろそろ起きたほうがいいぞ。一度家に戻ってから高校に行くのだろ?」

 

「これは夢ですよね? はい、夢でした。というわけでもう一度寝る事にします」

 

「もう一度寝るのはかまわないが、学校を休むのは教師として見過ごせないからな。比企谷がぐずぐずするのならば私の車に同乗させて学校まで連れて行くだけだ」

 

「はひっ。比企谷八幡は今起きました。だから大丈夫です」

 

「そう焦られると私としても傷つくのだが、まあいいか」

 

「すんません。それであの。俺酒飲みましたか? というか記憶がとんでいるんですが」

 

「酒は飲んでいないぞ。一応私も教師だからな」

 

「そですか。でもなんだか頭が痛いし、胃もちょっと……」

 

「それはチョコレートに入っていた酒の影響だろうな」

 

「はい?」

 

「だから、チョコレートに入れる酒はどれがあうか試食してもらってだな」

 

「酒入りのチョコで酔うなんて漫画じゃあるまいし」

 

「いや、けっこう強めのもあったし。それに、ウォッカをそのままつめたのもあったから、その影響かもしれないな」

 

「いや、まじでやばいですって」

 

「いいじゃないか。終わった事だ」

 

 人生終わっていなければいいんですけど。おもに俺の結婚。

 

「あの、ちょっと聞きたい事が」

 

「あぁ言ってみろ」

 

「そこの婚姻届ですけど、俺、書きましたか?」

 

「安心しろ。白紙のままだ。比企谷が書きたいというのなら止めはしないがね」

 

「はぁ……。心臓に悪いのでテーブルの上に置いておかないでください」

 

「でも、比企谷は昨晩署名しようとしていたがね」

 

「はひ?」

 

 殴りてぇ。昨日の俺を抹殺してぇ。というけ、平塚先生に拉致られるまえにもどりてぇ。

 

「安心したまえ。…………ただ、ベッドの上での君は激しかったが」

 

 そこで止めるのやめてくださいって。しかも年甲斐もなく顔が真っ赤だし。

 あれですか? 本当に死亡フラグですか?

 俺の人生決まっちゃうの?

 

「…………はぁ。わかりました」

 

「ん?」

 

「もし俺が平塚先生とそういう仲になったといなら結婚しましょう。だから正直に話してください。…………昨晩何があったのですか?」

 

「君が考えているような男女の仲はなかったよ。これは誓ってなにもなかったと言おう」

 

「そですか」

 

「でも君はあれだな。肝が座っているというか男らしいというか」

 

「俺以上に男らしい趣味をしている人に言われても。でも、あれですよ。ここで嘘をついても俺を騙せたままでしたよ? 昨晩の真相を知っているのは平塚先生だけですからね」

 

「まあそういうな。たとえ君が結婚してくれるとなったとしても、最初から嘘だけは付きたくはないからな」

 

「そうですか。いいんじゃないですか?」

 

「なにがだね?」

 

「そういう男らしい性格好きですよ」

 

「な、なにを言ってるんだ君は。昨晩の事といい、君って奴は」

 

 隣で見悶えるはよしてくれませんかね。おっきな胸が俺に体当たりしてきて、俺の精神が保てそうにないです。

 

「一応聞きますけど、俺、何をしでかしたんですか?」

 

「本当に覚えていないのか?」

 

「えぇまあ」

 

「君はだな、君はだな、私の事を抱きしめたまま、私が寝るまで頭を撫でてくれていたんだ。ただ、君は酔っていたから、君の方が先に寝てしまったがね」

 

 殺してぇ。

 まじ、俺殺したい。むしろ死なせてください。

 そして精神力が枯渇した俺が意識を取りもどしたのは、平塚先生の車で高校の近くまで送ってもらった時だった。

 一応平塚先生も俺を高校まで連れていけない分別だけは持ち合わせていたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず何事もなくヴァレンタイン当日の高校生活は過ぎ去ってゆく。

 あとは放課後の部活動を無難に切り抜ければお終いだ。

 もしかしたら由比ヶ浜あたりが気を使って、雪ノ下を巻きこんで義理チョコをくれるかもしれない。

 …………期待はしてないよ?

 だから、気が抜けていたのかもしれない。今朝の事を忘れようとしていた事は事実だが、最近俺の身に起こっている事実を考えようとしていなかったのは最大のミスであった。

 

「さあ比企谷。どのチョコレートを受け取る?」

 

「ねえヒッキー。あたしのチョコはママと一緒に作ったんだけど、愛情だけはたっぷりだから」

 

「あの、比企谷君。これからは毎日食事を作りに行ってもいいのよ? もちろんお昼のお弁当も用意するわ」

 

「…………あの、これはいったいなんでそうか?」

 

 奉仕部の扉を開けると、横一列に並んでチョコレートの包みらしきものを持つ平塚先生、由比ヶ浜、それに雪ノ下が俺を待ちかまえていた。

 3人とも頬をそめ、まさしくヴァレンタインのイベントど真ん中の顔をしている。あの雪ノ下までそうなのだから、現実を受け入れねばならないのだろう。

 

「なにってヒッキー。今日ここで誰がヒッキーの彼女になるか選んでもらうって事にきまってるじゃん」

 

「いや、決まってないから。というか、いつ決まったんだよ?」

 

「あら比企谷君。私は伝えたのだけれど?」

 

「だからいつだよ」

 

「一昨日いつものように一緒に夕食を取り、あなたが私を自宅まで送ってくれたときだけれど」

 

 小首を傾げて伝えてくるその表情に嘘偽りはないようだ。もちろん雪ノ下だって嘘をつく事はあるだろうが、今のその姿からはあり得ないと結論が出る。

 

「な、なんて言ったんだよ?」

 

「近々重大な選択をしてもらうから、その時はお願いねって」

 

「あれって小町が受験に失敗した時の覚悟じゃなかったのか?」

 

「そのようなわけあるわけないじゃない。私が毎日家庭教師をしていたのだから、小町さんが受験に失敗することはあり得ないわ」

 

「さようですか」

 

「あたしだってヒッキーに伝えたよ?」

 

「ほんとかよ。お前の場合はぽよぽよ~ってしているから、言っていたつもりだったんじゃないのか?」

 

「違うしっ。この前ヒッキーとお昼ご飯食べた時に言ったし」

 

「あれ、もうやめないか? クラス中が俺達を注目していて食べた気がしないんだよ」

 

「べ、別にいいじゃん。一緒のクラスなんだし、一緒にお昼ご飯を食べたって」

 

「だけどよ、どうして俺が由比ヶ浜と二人で、しかもうちの教室で昼食を食べないといけないんだよ」

 

「ヒッキーは嫌なの?」

 

「いやっていうか、注目され過ぎてだな。せめて目立たないところで」

 

「うんじゃあ明日からねっ。ん、どうしたのヒッキー?」

 

「あっ、いや、なんでもない」

 

 もう何を言っても無駄な気がする。だったらまずは目の前の難題から片付けるべきだろう。

 

「一応聞きますけど、平塚先生はいつ言いました?」

 

「もちろん昨夜だ」

 

「さようですか」

 

「それにしても平塚先生。レギュレーション違反ではないでしょうか?」

 

「そうだよ。お泊まりはいいとして、一緒のベッドに寝るのは反則っ。むぅ」

 

「なにを言ってる。私は全デートトークンを昨夜につぎ込んだんだ。このくらいのハプニングは想定の範囲内だろう。その分お前たちはデートトークンを分散して使って毎日のように比企谷と一緒だったではないか」

 

「たしかに平塚先生は全トークンを使ったのですからお泊まりデートはできる規定です。しかし、一緒にのベッドに、しかも抱っこしてもらいながら寝るのは規定違反です」

 

「あ、あたしもゆきのんと同じ意見かな。だって今日選んでもらうまでそういう恋人らしいことはしないって約束だったじゃん」

 

「なにを言ってる。お前たちは外堀を埋めるべく行動してきたではないか」

 

「つっ」

 

「うっ」

 

「雪ノ下。知っているのだぞ。お前が妹の小町君だけじゃなく、比企谷の両親とまで食事をするようになったそうではないか。先週末も昼食だけでなく夕食まで比企谷家の面々と食事をしたそうだな。しかも最近では送ってもらうときは手をつないでいるではないか」

 

「何故知っているのかしら?」

 

「細かい事は今は重要ではない。由比ヶ浜も教室内で比企谷の彼女のように振舞っていたではないか。今やクラスでは公認カップルみたいな扱いだそうだな」

 

「そ、それは……」

 

「まあいい。お互いさまってところだ」

 

「そうね。今日で決着が付くのだから」

 

「そだね。ヒッキーがきっちり決めてくれれば」

 

「お、おい雪ノ下。お前は小町の家庭教師をしてくれるためにうちにきてくれたんじゃ?」

 

「ほんとうにそれだけだと思っていたの?」

 

「それは…………」

 

「まあいいわ。さあ選んでちょうだい」

 

 ヴァレンタイン。

 甘酸っぱい青春のイベント事だと世では言われている。

 でも実際はなにもない。いざ意気込んで学校に行っても義理チョコさえもらえないのが現実だ。

 いくらヴァレンタイン前に俺チョコレート欲しいんだよアピールをしても女どもに笑いのネタを提供するにとどまってしまう。

 だからこそチョコレートをもらえるとならば喜んでいただこう。それが義理チョコであっても本命チョコであっても貰える事に喜びを感じるのだから。

 だけど気が付いて欲しい。

 仮に本命チョコを貰えるとしても、それはたった一人の相手からもらえるからこそ幸せであり、それがこちらも好意を抱いている相手であればこそでもある。

 ただ、その相手が複数であった場合。

 そう今みたいな状態だ。

 その時は甘い時間が様変わりし、いくら鈍感系主人公であっても血を見る事は明らかである。

 

「あら? ど本命候補の私を差し置いて話を進めないでよね」

 

 新たな台風。

 陽乃さんがきたわけだが、もうこの際災いの種がいくら増えようとかまいやしないと、小さくため息をついた。

 

 

 

END

 

 

 

 

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