42人目の至高   作:マッキンリー颪

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第8話

「さて、そんじゃ王国戦士長との対面と行きますか」

「はい。ですが……オッさん、本当にこのメンバーでいいんですかね?」

「何言ってんの。ちゃんと時間かけて話し合った上で、デミウルゴスとアルベドからも問題なさそうと言われただろ」

「いえ、そうなんですが」

 

 偵察部隊から武装集団が村と接触しそう、の報告が届いたので早速出発することになった俺たち。

 特に村が焼かれていない健全な状態なら注意勧告を促したりするだろうが、一つの村にそれほど長く足を止めてくれてるとも思えないのでそれなりに急ぐ必要有り。

 だけど、モモンガさんのやつはここに至っても尻込みしてるみたい。

 

「モモンガ様。何かご懸念がおありでしょうか?」

 

 そんなモモンガさんに対して、労りと親愛と忠誠の感情を隠しもしないアルベドが寄り添って質問。

 距離近ぇーよ。

 

「む、その……な。これから交渉する相手が人間だと考えれば、な」

「たかが人間。それも此度は友好より圧力を……と、考えるのであれば。プレアデスのような表面上は人間のように見えてしまう者達よりは良い選出である、と思ったのですが」

「う、む。そう……だな」

 

 そうしてモモンガさんがちらりと周りを見渡す。

 今回の王国戦士長との対談メンバーを。

 

 まず俺。

 そしてマスクくんで正体を隠しているモモンガさん。

 さらに鎧姿でなく羽や角を隠さない普段のドレス姿なアルベド。

 あとニューロニストにペストーニャ、そしてデスナイトだ。ちなみにデスナイトはモモンガさんがうっかり殴り殺してしまった騎士を素材にしている。

 

 あとは受け渡しをする交渉材料となる、騎士軍団と法国の悪の軍団……陽光聖典とかいう連中である。

 最初は身ぐるみ剥いだ状態で簀巻きにして渡そうと思ったのだが、それをすると「こ汚い全裸のオッサンども」以外の何者でもなく、渡された方も彼らの身分がわからないだろうと思って、所持品などは鑑定を済ましてから返却している。

 全員、装備に見るべきところのないしょぼい物だったからな。

 一応モモンガさんが殺してしまった隊長とやら、あやつの所持していた水晶はそれなりに貴重品だが、中に入ってる魔法がクソすぎたので、別にそのまま渡しても良いという結論になった。

 いや、この世界においてはすごい魔法という知識はあれど、俺たちにとっては大したものではないというだけだな。

 ちなみにそれを提案したのはデミウルゴス。

 あれが「この世界にとっての貴重品」という前提があるのなら、それを無能貴族の目に触れる形で提出すればどうなるか? 自分たちで確保したいと言い出す存在もいるだろうし、正しく法国に返却することで法国との橋渡しにしたい者もいるだろう。

 そうやって足並みを乱してくれれば相手の動きは遅くなり、その間に我々は体制を整えることができる、というわけだ。

 

 うむ、まったくもって問題のない布陣……に、見えるじゃないの。

 何が問題なのさ。

 

「私がマスクくんで正体を隠すというのに、見るからに異形種を連れているというのは……大丈夫ですかね?」

「大丈夫と思いますよ。たしか見た目を人間と装いながらも、モモンガさん自身が人間ではないっていうのは隠さない方針だったよな?」

「はい。偉大なるモモンガさまが人間などという下等動物である、などと思われては業腹です。ですが、人間の下等たる所以……排他的で自己完結した思考回路を持ち己から見て異質な存在を遠ざけようとする性質を考えれば、見た目だけでも人間に近い存在が組織の頂点である、というだけで多少は相手の緊張感を解くことができますから。……もっとも、正直人間ごときにそこまで気を使ってこちらが譲渡をしてやる必要性は無いかと、そう仰るのならモモンガ様のご懸念もわかります」

 

 こいつ人間の悪口になると早口になるの気持ちわるいな。などと言ってる場合ではないが、だいたいアルベドの言うとおりではある。

 俺たちが人間集団じゃない、と言っても組織の頂点の見た目が人間に似ていたら思考形態とか趣味嗜好が人間に近いんじゃないか? と思ってもらえるからね。

 親しみを持つ、まで行かなくとも接しやすかろう。

 その上で異形種……見た目美人なアルベドやかわいいペストーニャ、だけでなく、ガチの異形種であるニューロニストもお出しすることで、相手の警戒心を引き上げることもできる。

 親近感を持たれつつも一定以上の警戒心を、そう思えばこの布陣は完璧に思えるのに、モモンガさんのやつはまだ不安がってまぁ。

 

「むう……アルベドよ。お前個人の感情に私は口を挟むべきではないと思っているが……それでも、あまり他者、人間を見下すかのような発言は、相手の前では控えてくれ。余計な軋轢というものは作るべきではないのだからな」

「も、申し訳ありませんモモンガ様!」

「よい、許す。お前の人間に対する蔑視は言い換えればナザリックに対する誇りでもあるのだからな。それを否定する言葉など、私は持たないさ」

「はうぅぅ……モモンガ様ぁ」

 

 モモンガさんのフォローによりうっとりした表情のアルベド。

 童貞のくせに上手くこましちゃってまぁ……竿もないくせにさ。

 

「あらぁん、モモンガさまぁん。アルベドのようなブスを横に侍らすよりもぉ、外部との接触であれば私を伴に付けて下されば宜しいではありませんの。私ならばぁ、例え人間の下賎な視線に晒されることとなってもぉ、至高のお方の命とあれば我慢できますわぁん」

 

 そしてモモンガさんがアルベドとイチャついてたらアルベドの逆側……まぁ俺とモモンガさんの間に入り込んだニューロニストがモモンガさんにしなだれかかる。

 肉食系女子……いや、肉食系両生類? ってやつだな。

 ニューロニストはデブデブしくギトギトしく禍々しい、ブレインイーターなので俺が生身の人間の感性だったらドン引きしてた事間違いないのだが……ゲームで見慣れてたからか、あるいはこの体になってるからか、視覚的に不快感を感じない。

 肉体に欲望を感じるかどうかで言っても全くもって感じないがな。

 

 そんなニューロニストがモモンガさんを間に挟んでアルベドをディスりながら自分の売り込みをして、アルベドは上位者の余裕を見せようとしてあしらいの言葉を吐いている。

 血管がぴくぴく浮いてるので内情は簡単に伺い知れてしまうけどな。

 

「お前たち、今は別にいいが現地に着いたら発言を控えて後ろにいるだけってのはちゃんと覚えてるだろうな? お前らが言葉を発する事があるとすれば俺たちが声をかけたら、だぞ?」

 

 とりあえず話が脱線しそうになるのをたしなめるいぶし銀な俺。

 

 ペストーニャは「かしこまりました、わん」と答えるがアルベドは不満タラタラ、ニューロニストは……まぁ肯定してるのだろう、多分。声に出さないが頷いているし。

 

 さて。

 

「ま、失敗のしようなんてないから強気で行こうぜ。異形種を抱えている事を全面に押し出せば法国が動いてくるだろうが、王国が単独で何をしようと俺らには絶対に届かないはずなんだし安全は確保されてるだろ」

「そう……ですね。襲われたとしても死ぬ心配はない、というのは強気になれますか」

 

 うむ。

 そのための布陣でもあるからな。

 もし、王国戦士長が人間至上主義で襲いかかってきたとしても、俺とモモンガさんとアルベドには傷ひとつ付けれまい。

 戦闘タイプじゃないペストーニャとレベルの低いニューロニストに関しても、俺とアルベドとデスナイトが前衛として立てば守りきれるはずだし。

 法国の陽光聖典とかいう連中の戦闘力を目安に、それより強い集団が相手でも安全を確保できるのが今回のメンバーに選ばれる条件でもあった。

 

 そんなメンバーで出立するのだから不安はあるまい。

 そもそも、件の村の周りにはシャドウデーモンやエイトエッジ・アサシンも詰めているのだから戦闘となれば即効で勝てる……はずだ。

 戦闘になれば、だがね。

 

「じゃ、行きますか」

「ん……では、行くぞ皆の者」

 

 そしてモモンガさんの号令。

 これに対しモモンガさんには忠実なNPCたちは「はっ!」と一斉に返事をする。

 ……毎度思うが練習して打合せしとるのかね?

 

 

 

 で、転移魔法一発でやってきたんだが……近くね?

 

「ッ! なっ、何者だ!」

 

 怪しいものです、と、言いたいのは俺だけではあるまい。

 それもそのはず、騎士たちの目の前に現れちゃったのだから。

 

「ちょっと近くね?」

「悪気は無いんで……んんっ! いや失敬。少し近すぎたようだが我々に戦闘の意思はない。それをまず理解していただきたい」

 

 王国の戦士長および彼の率いる軍団……と、思われる連中は我々に対し明らかな警戒心を持っているが、モモンガさんの神対応か、もしくは「転移魔法を使うほどの使い手に対する警戒」かは不明だが、とりあえずすぐに攻撃してくるということはなさそうだ。

 その隙に離れるべきか?と思ったが向こうが勝手に後ずさって距離をあけてくれた。

 

 ……と、言っても友好的な話し合いをするためじゃなく、今にも飛びかかりそうな間合いの取り方なんだけどね。

 見事に警戒されてしまったわフハハ。

 

 が、俺の真眼(サイクロプス)……じゃなく洞察力で見たところ、全員弱い。

 一番強い奴はサシで戦えばニューロニストが危ないか? ってくらいの実力であって、デスナイトくんが2体いればまず全滅可能な戦力だ。

 だから必死に警戒してる姿も滑稽に見えちゃう。

 悪気は無いんだけどね。

 

「さて……警戒されている理由は察するが、とりあえず落ち着いて話を聞いて欲しいものだが? 相談してくれても構わない。賢明な判断を期待している」

 

 そしてモモンガさんお得意の魔王ロールである。

 かっけー。

 アルベドとニューロニスト、あとペストーニャも憧れの目で見ておるわ。

 言葉を発するな、という命令を守ってお口にチャックだけど、その指示がなければアイドルを見たファンみたいに盛り上がってそうだぜ。

 

 モモンガさんの上から目線な発言に兵隊連中はムカついたかのような反応を見せるが、一番強いやつは子分を手で制する。

 普段からよく躾けているのだろう、ボスの抑えで子分軍団は攻撃の意思をグッと我慢している。

 

「ふむ、いい抑えだ。そして正しい判断でもある。君のおかげでこの出会いはお互いにとって益のあるものになるだろう」

「お世辞はいい。だがこの出会いが益のあるものになるかどうかはこれからのお互いの対応次第になるのではないかな?」

 

 めっちゃ近くに転移しちゃう、という事前に想像すらできないヘマをやらかしたモモンガさんだが、ナイスアドリブで上手く大物感を出すことに成功したが、相手も中々デキるやつだ。モモンガさんを驚異に思いつつも「一歩も引かないもんね!」という態度をとっている。

 戦力差を考えればすごい勇気である。

 戦力差を分かった上での言動であれば、だがね。

 

「ふむ、君の言うことももっともだ。だがまぁ、まずはお互いの自己紹介から始めようか。お互い名前もわからないままではまとまる話もまとまらないだろうからね。私の名はモモンガ。アインズ・ウール・ゴウンのモモンガだ。お見知りおきを」

 

 頭も下げずに居丈高な自己紹介。

 ちなみにこれは魔王ロールというより練習して、だ。

 たかが人間ごときに頭を下げるなどと! というデミウルゴスやアルベドの嘆願プラス、上から目線な演技をやるなら軽々しく頭下げちゃいかんよね? という事を考えた結果である。

 

「アインズ・ウール・ゴウンのモモンガ……すまない、知らない名だ」

「それもそうだろう。今の世においては無名だろうからね」

「今の世? いや、すまない。では私の方も……私の名はガゼフ・ストロノーフ。リ・エスティーゼ王国で戦士長の座に就かせてもらっている者だ」

「ふむ。自己紹介ありがとう。いろいろ聞きたいところはあるが、まず私たちから君たちへと贈り物をしたい。喜んでもらえると良いが……シャルティア、送れ」

 

 モモンガさんがメッセージでシャルティアに指示を出す。

 送られてくるのは……って。

 

「近っ!」

「くっ。なぜこうなるのか……まぁ良い。私からの「贈り物」とはこいつらの事だ。君たちが探していたものだと思うが……どうかね?」

 

 連中との間くらいにおいてくれればいいのに、連中の鼻先にボトボトッと落とされたのが、俺たちが捕まえた法国の騎士や陽光聖典の軍団である。

 気絶こそさせているが縛ってもいないので拘束はそちらもちでね、という意思を込めていたのだが……近すぎて驚いてるね、やっぱ。

 

「少々近くに転移させてしまったが……まぁいい。彼らはここ最近、この周囲ではしゃぎまわっていて煩かった連中だが、君たちの探し人ではないかね?」

 

 にやり、と言うような表情……に、見えるモモンガさん。

 このハゲ、やっぱ演技を始めたらノリノリよのう。

 いや今はマスクくんのおかげで髪の毛生えてるように見えるがね。

 

「こいつらは……この騎士はバハルス帝国の騎士か? しかしマジックキャスターたちの方は……この数のマジックキャスターを同じ装備で揃えるということは……スレイン法国の者か!?」

「ああ、確か自分たちをそのように言っていたな。少々尋問したら死ぬ魔法がかけられていたらしく何人かは死んでしまったが、その内の一人が彼らの中で一番地位が高かったようでね……こいつだ。死体を送られても困るだろうが、一応こいつだけは死体でも君達に提供しようと思う。他の死体は我々で引き取らせてもらうが生きているものたちは君たちに進呈したい」

 

 モモンガさんから提供された悪の軍団……スレイン法国の連中の出現に驚くガゼフ軍団。

 もっと驚くがいい、と思ったのだが王国戦士長のガゼフとやら。こやつはやはり中々の人物のようだ。

 

「これは……詳しい話を聞かせてもらってもいいか?」

「もちろんだ。とはいえ、我々にとってはなんの驚異にもならん連中ゆえに拘束していないが、君たちは彼らを拘束しておかなくていいのかね?」

「む……そうだな。すまない、話を聞くのはこいつらを拘束してからでいいだろうか?」

「ああ、待つとも。彼らを拘束しなかったのも言ってしまえば我らの手落ちになるだろうからね。そのくらいの時間は待たせてもらうさ」

「かたじけない……おい! 縛るものを持って来い!」

 

 

 そうして法国の連中を拘束するガゼフ軍団を見ながら俺たちは一定の手応えを感じる。

 

「転移場所が近すぎたときはどうなるかと思ったけど、中々うまくいったじゃん」

「ええ……正直アドリブは苦手なんで勘弁して欲しいですけどね」

 

 はっはっはと和やかムードな俺達。

 とりあえず一息つけるか? と、思っていたら拘束は部下に任せたのか、ガゼフの野郎がこっちに歩いてくる。

 仕事熱心な男よのう。

 

「すまない、待たせてしまって」

「いやいや、気にするまでもないさ。ところで君の部下はまだ仕事中のようだが……」

「ああ、大丈夫だ。あなたたちがしっかり気絶させてくれてたようなので縛るだけなのでね」

 

 さて、ここから駆け引き開始である。

 果たして俺たちのモモンガさんは上手く乗り切れるのか?

 

「あの法国の連中。特定の状況下で質問に答えた際に死んでしまう術がかかっていたらしく、数人殺してしまったが君たちの方で同じように魔法的な尋問をすると死んでしまうかもしれない。気をつけてくれ」

 

 とりあえずの牽制。王国で尋問した時にこいつらが勝手に死んだら俺らが悪い事にされかねないしこれは言っておかないとね。

 

「そうか。ところで、あなたは先ほど彼らがこの周囲で煩かった、と言っていたが、それを理由で彼らを取り押さえるということは、この周辺に住んでいると思ってもいいのだろうか?」

「ふむ。そうだな……ところで君はリ・エスティーゼ王国の戦士長であり、その職務としてこの周辺地域の治安維持として、彼らを探していた……と、思っていいのだろうか? 質問に質問で答える形になってしまい申し訳ないがね」

「確かに、ここは王国の土地であり、その土地に住まう民を守るのが私の役職であるがゆえに、私はここ最近でエ・ランテル周辺の村々を襲い、民を虐げる王国の敵を追っていたのだが」

「なるほど……となると困った事になるな。君の質問である私はこの周辺に住んでいるのか? という質問に対する答えはイエスであるが……私達は王国の民ではない」

 

 そしていよいよ本題である。

 本題である。

 

「王国の民ではない? この周辺に住んでいる、と言っていたが……君の言う周辺とは相当に広い範囲、ということになるのか?」

「いいや? 距離的に言うと……そうだな。単位が違ってくるかもしれないのだが……この村から東南の方にかなりの規模の都市があるだろう? その都市から見て北東……いや、北北東にあるのだが、その都市と我々の拠点までの距離はだいたいこの村とその都市までの距離と同じくらい、と言ったところだろうかね」

「む……」

 

 モモンガさんの答え。まぁかなり大雑把な答えだが、間違えてはいないだろう。

 おそらく地理的には……ナザリックは王国の土地の一部になるのかな?

 でないとWEB版で王国の無能貴族が税金税金と騒ぎ立てることもなかっただろうしな。

 

 とはいえ、周囲を開拓してる様子でもなかったそんな土地の所有権を主張されても困る、などの言い方では弱いらしい。

 デミウルゴスやアルベドがそう言ってたんだからそうなんだろう。

 

 発言が「弱い」場合に発生するデメリットは王国の態度がでかくなる、我々の自治権を求める声の正当性が無くなる、とかがあるとか。

 もうちょっと細かいことを言ってた気がするが、話の内容が難しくなってきたので途中から聞き流してたので詳しくは知らない。そういう知的労働はモモンガさんの役目だしね。

 

 だったらどうすれば「強い発言」として我々の自治権の正当性を求めることができるのか……だが。

 

「君たちの国……リ・エスティーゼ王国と言ったかね? 私はそんな国は知らない……といのも、私たちが活発な活動をしていた時期にそんな国はなかったからなのだよ」

 

 こんな感じである。

 ようは「我々はお前たちより古くから居る存在なのだ!」と、言い張ることである。

 デミウルゴス曰く、中途半端な態度ではダメで、もうマジで当たり前の常識、知らないお前たちが悪い! と、言い切るくらいの勢いがあると良いらしい。

 

 さて、モモンガさんはどこまで言い切って押し切れるのかな?

 

「王国の建国以前の歴史……だと?」

「うむ。我らが拠点。栄光あるナザリック地下大墳墓。その周辺はかつて広大な沼地であった。だが一眠りし、夜が開けたと思えば周辺は草原になっているではないか。それだけならまだしも、我らの縄張りの中に気付けば人間が住み着いている始末……困ったものだ」

 

 なるほど、ひと眠りして気付いたら土地の形が変わるくらいの時間が経っていた、という線で行くのね。

 ここら辺の打ち合わせは本当にデミウルゴスとアルベド頼みだったからなぁ。

 しかし……それで押し切れるものだろうか?

 

「俄かには……信じられない話だな」

「信じる、信じないは関係ないさ。事実があるだけなのでね。我々としても寝て起きたらこのような事になっていて、正直困っているのだよ。当時であれば我々の支配地からの供物でナザリック地下大墳墓の運営はつつがなく行われていたというのに、その我々の支配してた対象も突然居なくなってしまってね」

 

 肩をすくめながら一息。

 アンデッドだから呼吸の必要はないのだけど、人間の外装を纏っているので……まぁ、サマにはなっているか?

 

「だがね。私達は人ではないが邪悪な鬼畜生でもない。だから知らぬうちに我々の土地に住み着いてしまっている人間を虐げたいとは思わない。そこは理解してくれるとありがたいのだが?」

 

 むむ? 土地の所有権を欲しいってんだから、ここで一定の土地は我々のものだから出て行け! とか言うかと思ったが違うのか。

 それとも、住むのは構わないが税金は払ってもらう! と、こっちが言う側に回るのかな?

 

「人ではない? いや、それよりも話が大きすぎて、私がどうこう決めれる話でもないのだが……な」

「それもわかるさ。だからまぁ……君の上司に伝えてくれればそれで良い。あの法国だとかの連中。アレらはそのための土産のようなものだからね」

 

 王国戦士長……ガゼフと言ったか。

 彼は額に脂汗を浮かべながらもどうするべきか、と言うような表情で悩んでいる。

 

 モモンガさんのハッタリに関しては半信半疑。

 いや、7割以上は嘘だと思っているが、それでも力を持つ存在の嘘は強引に真実になる、こともある。

 それを恐れて文句が言えない状況……かな。

 

 とはいえ、その情報を持って帰って上司……この場合は王様とか貴族か。

 それらに報告したとしても、その連中が信じることはないだろうし、逆にモモンガさんに対しイチャモンをつけるのは目に見えているがゆえの悩みだろうな。

 

「ふむ、そうは言ったが言葉だけでは我々の事がうまく伝わらない可能性もあるな。多少時代が変わったようだが、人間という存在のあり方を私も多少は知っているからな。ふむ、特別に少々、我々の力を見せておこう。そうすれば君の上司も愚かな振る舞いはしないはずだ」

 

 そんな戦士長の悩みを見抜いたかどうか知らんが、モモンガさんが力を見せるとか言い出した。

 こんな展開だったの? とアルベドの方を見ると、アルベドは口こそ開かないが自信満々のドヤ顔である。

 むう……予定通りの行動でありモモンガさんのスタンドプレイではないのか? いや、もしそうだったとしてもアルベドはこんな表情しそうなんでわからんけどさ。

 

 さて、力を見せるとはいったが何をするのか?

 モモンガさんの得意魔法は死霊系……殺傷力は高いがビジュアル的には結構地味な感じだし、超位魔法をこんな場所で使うとも思えん。発動までの時間もちょっとかかるから準備期間中にお互い無言だと気まずそうだし。

 じゃあ一体何を見せるのだろう?

 

 確かにそれなりに見栄えのいい魔法も使えただろうけど、一撃でせいぜい数百人規模を殺せるって程度の魔法を空打ちした程度じゃ派手さに欠ける気もする。

 と、思ってたらモモンガさんは振り向いて俺の方に目を向ける。

 

「ん? なに?」

「いえ、オッさん。大技を頼みます」

 

 は? 俺?

 

「俺なんですか?」

「はい……あー、すまない。少々待っててくれ」

 

 俺が会話についていけないでいると、モモンガさんのやつ俺の方に近寄って小声で言ってきた。

 

「いや、打ち合わせをしたでしょう。力を見せてプレッシャーを与える場合はオッさんの大技系が良い、って。私の魔法だと殺傷力はあっても見た目の変化が微妙すぎるから、って」

「あ、そうだったっけ? ごめん、聞いてなかったわ」

「お、おま……」

「いやごめん、マジで。ちゃんとやるから。人に被害が出ないような、その上で見栄えのすごい大技っすよね?」

「ええ。いくつかあるでしょう? 超位魔法だと人に撃たないつもりでもどこで当たるかわかったもんじゃないですしね」

 

 なるほど、ならば俺がやるしかあるまいて。

 

「了解した。それじゃあ俺がちょっと力を見せようじゃないの」

「む、そのゴーレム……モモンガ、殿の作品か?」

「なに?」

 

 あ、こらあかんパターンだ。

 

「あー、ガゼフと言ったな。戦士長とやら。前もって言っておくが俺はゴーレムだが、誰かに作られた存在ではない。俺という一個の意志を持った存在だぞ」

「な!? そのようなものが!?」

「うん。そういえば法国の連中のボスっぽいやつ、あいつも俺のことをどこかの遺跡で発掘した存在と思っていたようだがな。俺は普通に俺だ。俺たちの時代? ってのはそんな感じだったのだ」

 

 とりあえずそんなフォローでいいか?

 モモンガさんのやつ、法国のあいつが俺をモノ扱いしたことに本気で切れてたからなぁ。

 目の前にいる俺に対する侮辱? であんな切れてたら、もし今この場にいない仲間を誰かが侮辱したらどのくらい切れるのか想像もつかなくて怖いよ。

 

「俺の名前はオッ。まぁモモンガさんの……仲間? 部下でもいいけど。そんな所だ。けして道具じゃないんでそこら辺を間違えるなよ? マジでな」

 

 それだけ注意して俺は戦士長に背中を見せる。

 人に向けずに打つ技の空打ち、とはいえそれなりの規模の大技だし下手に人間がいる場所には打てん。

 あと自然環境もあんまり歪めたくないし……と、いうことで知覚能力を拡大して、人だけでなく動物、モンスターも少ない方向と、その上で近所の人間が困らなさそうな方向はここらへんかとアタリをつけて……

 

「はぁー……」

 

 スキルを使い攻撃力アップ、次に打つスキルのランクアップ、その他様々な効果を起動させる。

 この際、ギミックの設定で表面装甲の隙間から光が漏れ出すような設定にしていてすごくかっこいい。

 まぁゲーム時代は「攻撃の直前に技の属性とか色で教えてくれるやつ初めて見た」とか言われて舐められていたがな。

 ゲームなんだからかっこよければいいのだ、と思っていたものよ。

 そもそもその程度のデメリットがあろうと大概の相手は実力でゴリ押し出来たしな!

 

 さぁーて、この世界に来て初めての大技の発動だししっかり落ち着いて……

 

「タービンストーム! マッ!」

 

 体をひねり、その反動で両腕を振り回すことで竜巻発生!

 格闘系のジョブのスキルでこれを見たときは驚いたがすぐに飛びついて取得、強化しまくったのが俺だ。

 使用回数からの熟練度も高く、最大効率で発揮された我がタービンストームの威力たるや……って、なんだこりゃ?

 

「こ、これ……は」

「あっら~……ちょっと派手すぎるか?」

 

 ゲームでは、高さ百メートルくらいのトルネードが数秒発生して前方に突き進んで対象範囲内の敵に風属性ダメージとノックバック効果を与える……程度の技だったんだが、現実になるとどうだ。

 

 天まで届く巨大トルネードが砂塵を巻き上げ森の木々を巻き上げその暴威を振るっている。

 ぎゅお~、とかギャグみたいな音を上げた大竜巻だ。

 マジ怖い。

 

 と、止まらなかったらどうしよう? てか止めるべきだわな、自力で。

 

「デュワッ!」

 

 このままじゃ不味いと思った俺は竜巻に飛び込んだ。お馴染みの飛行方によるジェット噴射で。

 フレンドリファイアが解禁された世界なだけあって、風属性及び巻き上げられた土砂や木々が擦れる追加ダメージが俺の表面に感じられるが、防御力もHPもクソ高い俺には対したダメージにならない。無視してよかろう。

 そのまま竜巻の中心付近まで飛んだ俺は、再びスキルで攻撃力や攻撃ランクを目一杯上げて。

 

「シングデモリッションウェーブ! マッ!」

 

 と、やった。

 この技はダメージこそ低いが全方位への攻撃とノックバック、判定に成功すれば装備破壊などなどの効果もあるイカした技なので、最大効果で放てば例え巨大竜巻といえども……

 

 ばちん!

 

 と、音を立てて破壊されるって寸法よ!

 

「ふっ、さすが俺……って、うおわ!」

 

 余裕ぶってたら物理的に発生した巨大竜巻の破壊に伴う余波か、周囲の空気が一瞬で膨張したかのような衝撃に吹っ飛ばされてしまった。

 ダメージこそないけどビックリした。

 

 

 

「あー、ちょっと派手すぎたかな。すまん」

 

 としか言えない。

 吹っ飛んで地面に激突したが大したダメージを受けていない俺はすぐに飛んでモモンガさんたちのいた地点まで戻ってきたが、そこで待ってたのはなにやってんだか、と呆れ顔のモモンガさんと侮蔑の表情を隠しもしないアルベド。

 たぶんニューロニストもペストーニャもアルベド寄りの感情だろうな、と思うと二人の顔はとてもじゃないが見れない。

 

 そして、一方で茫然自室としているガゼフや、もう何がなんだか理解すら出来ていない兵士たちと、天変地異か世界の終わりかという顔でお祈りを捧げている村人たちが見えた。

 今まで俺らにビビってたのか、村人たちは家の中からチラチラと見てただけだったのだが、もう突然の出来事にびっくりしすぎてどうでも良くなっちゃったのかな。

 

「はぁー。オッさん、派手だったら何でもいいってもんじゃないですよ? 私が防御魔法を使わなかったらこの村とか大惨事でしたからね」

「ぐぬぬ」

 

 ええい、一々細かいことを……そんなだからハゲんだよ! このハゲ!

 

「あー、ガゼフ殿?」

「は……はっ!? む、な、なにかな? モモンガ殿」

 

 と、俺がハゲをハゲと思っていたら、モモンガさんの奴まるっと俺を無視してガゼフの方に向きおった。

 

「とにかく、今オッさんの放った技が我らの力の一端である。私達は非情ではあるが非道になるつもりはない。だから争いを避けたいと思う気持ちはあるが、人間の感性で動いていないのでね。人間の権力者が好きなつまらない駆け引きを持ちかけられて受けるつもりはない。だから、君の上司にはくれぐれも、誤った判断を起こさないように注意して欲しいのだが」

「わ、わかった……善処……いや、全力を尽くそう」

 

 非情だけど非道ではない? どう違うのかよくわからんが何かカッコいい気がするぜ! でも多分アドリブだな。デミウルゴス監修の台本だったらもっと賢そうな言い回しになってたはずだ。

 しかし、何事も勢いが大事。

 言葉の意味はよくわからんがすごい自信を見せるモモンガさんにガゼフの奴は圧倒されている。

 へのつっぱりはいらんですよ!

 

「うむ。私としても君の上司が君のように誠実な対応をしてくれることを祈るよ……それでは、我々は帰らせてもらおう。もし我々とコンタクトを取るのであれば……まぁ我々の居住区はさっき言ったように、規模の大きい都市から見て北北東にあるので……できれば君が使者をやるか、使者の引率をしてくれていれば誠実に対応しようと思う。国単位の人の取り決めが今日明日で決定付くとは思っていないので、ある程度は気長に待っているよ」

「う、うむ。必ず伝える。だからどうか……その間、我が王国の民との摩擦が起きないことを……願っている」

「ああ、そうしてくれ」

「じゃあ帰るとするか。異界門(ゲート)。では、ごきげんよう」

 

 最後にガゼフにそう言って転移魔法のゲートをくぐるモモンガさん。

 次いでアルベド、ニューロニスト、ペストーニャ、デスナイトと続き……

 

「あー、そんじゃまた? まぁ会うことがあれば、またね」

 

 曖昧にそう言い残して、俺もゲートをくぐり、ナザリックへの帰還を果たすのであった。

 

 このあとモモンガさんになにやってんの、とチクチク言われたりペストーニャから治癒魔法を使いますか? わん、などと、言われて本音では馬鹿にしてるのかなぁと思うと辛い気持ちになるのだった。

 別に治癒魔法が必要になるダメージなんて受けてねーし。自然治癒で時間が経てば勝手に治るわ。




 戦士長と対面するメンバーの選出。
 WEBや書籍で皇帝にやったみたいに完全に圧倒するのが目的なら、ナザリックの最大戦力と一緒に素顔のモモンガさん、で良かったかもしれないけど、一応対話だから相手の思考回路が凍結しないレベルの親しみを持てるレベルのメンバー選出です。

 アインズ・ウール・ゴウンのモモンガ。
 モモンガさんは名前を改名しない方針で行くようです。
 でもまぁ「アインズ・ウール・ゴウン」の名を世に轟かせる計画は諦めていないので「アインズ・ウール・ゴウンのモモンガ」「アインズ・ウール・ゴウンのオッ」と名乗るような感じで行くようです。

 法国の人たちが尋問で死んだ?
 一応主人公からそう言われていたけど実験してみないことにはなんとも……なので魔法で口を割らせてみたら本当に死なれてちょっとびっくり。
 死んだ奴はモモンガさんのスキルでアンデッドにしてナザリックの常駐戦力になりました。

 ナザリックは昔からあったよ説。
 書籍版9巻で王国の人たちは建国からの歴史を調べてもそんなの無かったよ! な態度だけど、王国より古い歴史なのだと「言ったもん勝ち方式」で行くようです。
 とはいえ不当な支配はしませんよ? とアピールすることで「存在するかも知れないイレギュラーなプレイヤー」への言い訳を作ってます。

 主人公の大技。
 モモンガさんは死霊系魔法で殺傷力はあってもビジュアル地味ですからね。
 超位魔法で隕石を落としたりすれば派手だけどコストになる経験値が勿体無すぎます。<追記>経験値消費はウィッシュ・アポン・ア・スターですね、勘違いしてました。
 とはいえ発動までの時間がかかるのと、ついでに言えば「自分たちの底」をあまり見せずに見栄えは派手なだけの技、がこの場合には相応しいでしょう。
 だから主人公の大技に頼ることに。
 技やスキルは捏造ですが、魔法職に魔法強化の魔法とかがあるくらいなんだし、物理職もスキルを強化する系統のスキルくらいあるんじゃね? と、思いました。
 界王拳みたいに発動中常時HP現象のペナルティがあるけどステータス強化、とかのイメージで。

 シングデモリッションウェーブ。
 マッ!

 マッ!
 これは多分アレです。モモンガさんが「絶望のオーラ(即死)」とかをやるように「シングデモリッションウェーブMAX(マッ)」みたいな言い方……じゃないかなぁ、と。
 もちろん今思いついた嘘ですが。

 以上、相変わらず進みの遅い内容で済みません。


<追記>
 ニグンが所持していた魔封じの水晶はニグンの死体の懐に入れています。
 さすがに王国だって死体の見分くらいするよね? と期待していますから。
 その結果、水晶の中に封じられた最高位天使(ユグドラ時代はザコ扱い)の入った水晶だ、と鑑定されれば王国の国内でも「こんな水晶を見逃すとは奴らは阿呆か?」「そんな馬鹿な、彼らにとってはこれほどの超級のアイテムは取るに足らないと言っているのではないのか!?」などなどと揉めてくれれば嬉しいな、と思ってます。
 最悪なパターンは死体の見分もせずに埋葬されちゃうことですかね。
 流石にないよね? と思ってますが。
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