モモンガさんの奴もいないことだし、日がな一日ゴロゴロ漫画読んだり自室で物言わぬ太古のゴーレムごっこをしたり、時々体の大きな守護者やしもべと相撲を取ったり、という優雅な日常を送ろうとしていた俺だった。
だけど、そんな大いなる目論見はからくも打ち砕かれることとなる。
「え、いや……ナザリック内の事を差配するのに俺がなにか口出しする必要なくね?」
「何をおっしゃいますか。至高の御身がそこにある。それだけで下々の者も身が引き締まるのです」
デミウルゴスがそんな事を言ってくる。
やだやだー、と駄々をこねたい俺だったけど、デミウルゴスが一枚の紙を俺によこす。
それにはモモンガさんの字で、自分が不在の間もナザリックの運行をお願いね、などと書かれていた。
サボらないように守護者たちに監視させる、とも。
あ、あのハゲエエエ!
まぁ良いけどさ。別にスゥーっと来るほどの怒りでもないからさ。
ちぇっ。
そして。
主力というか、ナザリックの首脳陣の大半であるモモンガさんとアルベドがお外に出てる以上、ナザリックの運行ってもせいぜい現状維持くらいでは? と思っていたがどっこい。
日頃からいろいろな話し合いが行われていたのを知ることとなる。
ナザリックの隠蔽工作に関してはひとまず打ち切りつつも、いざという時のための避難場所。さらに偽のナザリックとも言うべき施設の建造計画やその進展などが語られていてビビる。
マジか、そんなのやってたのか……後で聞いたところ万が一に備えモモンガさんが避難場所は必要だと思ったこと。
あともう一つ。いずれ建国する際には人に限らず、リザードマンやらの異種族、意思疎通ができて平和的に共存出来うるモンスターなどが住まう「見せかけの理想郷」の作成が必要だとか。
仮に俺たち以外の「プレイヤー」がやって来たとして、そいつが人間種なら人間の街に住むのだろうが、マイノリティな異形種プレイヤーならば? 住む場所がなくて困った末に俺たちが作った「見せかけの理想郷」を目指すかも知れない。
そしてそういうプレイヤーに対し「我々は正義の味方、みんなの味方です」と、言いたいようだ。
あやつも色々考えてるものだな。
「ふーん、偽のナザリック……見せかけの理想郷? そっちってどんな感じなん?」
「は、はい。ひとまずはハリボテの大きな塔の建造中です。モ、モモンガさまがおっしゃるには塔に住んでいるように見せかけるだけなので、表面さえ完成すれば後はて、転移でナザリックへ帰還すれば良いとのことですから」
ふむふむ、偽の拠点はあくまで偽物ってことだな。
「でもその拠点って見せかけの理想郷って事で人が住みやすい環境を作る予定でもあるんだよな? そこらへんは大丈夫なのか?」
「は、はい。どのような種族が住むことになるのかが未知数ですので、ひ、ひとまず塔を中心として土地を4分割するみたいです」
「4分割?」
「深い森林系の土地。沼地。畑。そして平地となっております」
土壌開発は主にマーレの担当となっているが、計画は主にデミウルゴスがやってるらしい。
まさかモモンガさんに羊とか嘘をついて人間の皮を剥ぐ計画が? とも思ったが、そのへんはちゃんと注意しているらしく、大丈夫なようだ。いやよかった。
もしそんな行いをやってるのがバレたら敵性プレイヤーが現れた時に言い訳効かないしね。
俺は居ないと思ってるがモモンガさんはその辺をよく注意しているらしい。
「まぁ我がナザリック内の法は我々が決めることですゆえ。許されるのなら犯罪者などは一定期間、スクロール用の皮の提出、などの法を決めれたらと考えておりますが」
「それってモモンガさんはOKサイン出してたりすんの? まぁ犯罪者に対してならなぁ。冤罪とか、わざと犯罪者をでっち上げるのはやらないで欲しいけど」
「かしこまりました」
……こいつ、そのやり方を考えてた顔だな、今のは。
「ま、まぁどうせ住みやすい環境ってのを作ったとしても今日明日中に移民者が来るとも思えないし、そこら辺を細かく決めるのはじっくりやれば良いのか? そういや犯罪者といえば、プレアデス達がやっつけた犯罪者はどうだった?」
「はい。中々に面白い情報も引き出せました。あぁ、あと皮を剥いでスクロールの素材としてみたところ、一人だけ第5位階の魔法にまで耐える皮の持ち主がおりました」
「へぇ、そりゃすごい。体質とかか? その皮の持ち主ってマジックキャスター?」
「いいえ、戦士系の存在です」
「ふーん、職業よりレベルが優先されるのか? あるいは個人差かねぇ。まぁいいや。で、情報ってどんな感じ? 詳しく聞くのは纏まった情報をモモンガさんに提出する時のがいいと思うけど、軽く言えそうなのあったら聞いてみたいかもしれん」
悪の犯罪組織……秘密結社だったっけ? 国際的な活動をしてるのなら、俺の中途半端な未来知識より、より深い情報が得られたのかな?
「はい。女戦士の方ですが……法国の出身者であり、漆黒聖典出身、というだけあってオッ様によって倒された者たちの死体を見せれば色々と教えてもらえましたよ」
おおう、そっちか。そういやそんな事言ってたっけ。
「そんな深い情報を持ってたのか?」
「はい。少なくともあの女が知っている中で、世界で二番目に強い存在が、漆黒聖典の隊長とやらだったそうです」
圧倒的強者。
女戦士から見ればそれに分類される存在が、隊長とやらと、番外次席なる人物だという。
そんな強者が表立って己の存在を表明しないのは、そんな「圧倒的強者」の存在はこの世界のどこかにいる太古の竜王との戦争になり、法国の大地が焼き払われる恐れがあるから、だとか。
その発言はつまり、俺が出会ったラジコンドラゴンが法国を警戒していたというようなニュアンスの言葉の裏付とも言えるな。
しかし法国の大地を焼き払う……か。
確かに人間以外の生存を認めない存在は人間じゃないラジコンドラゴン的に困るのかもしれんが……互角、もしくはそれに近い存在が居るからってその瞬間、即大地を焼き払うとかちょっと器が小さすぎやしないか?
ていうか。
「やばくないか? そんな存在がいるのに王国や帝国と二面作戦で圧倒したらラジコンドラゴンの奴が顔真っ赤にして襲いかかってきそうだぞ」
「いえ、どうもあの女戦士、クレマンティーヌなる者の話しぶりからするに、法国の在り方の問題であるようですので」
人類至上主義を人間が掲げようと、どのみち力がなければ何もできない、とスルーされてるのが今の状況。
されど法国がレベル100級を複数揃えていることがバレればヤバイ……と、言われているらしい。
てことは、あのラジコンドラゴンの本体は1人でレベル100級を複数……2~3人くらいであれば相手取って勝てるというのだろうか?
ラジコン越しだから確証こそないけど、そこまで強くは見えなんだがなぁ。
「力がどれほどであろうと、会話可能であり……モモンガ様とオッ様の行動指針からして、そのドラゴンが我々に積極的な敵対関係を取ることはないかと思われます」
そうかぁ?
でもデミウルゴスが言うことだしのう……俺は置いといてもモモンガさんへたいする不安要素を放って置ける奴でもあるまい。たぶん。
「デミウルゴス。それは、モモンガさんの身の安全を考えた上での発言と思っていいんだな?」
「はっ。モモンガ様、そしてオッ様の命を危機にさらす事がないように、そういう発言のつもりです」
ならば良し……かぁ?
うーん、大丈夫なのかなぁ?
デミウルゴスがよもやモモンガさんの身を危険にさらすわけないと思って良いのかなぁ。
……まぁ、その時になったらモモンガさんが上手く何とかするだろう。
「それから次の話題はナザリック内の防衛施設の見直しについて、ですね。通常稼働ではコストを消費してしまいますので、普段はコストをかけずに、且つ消費しても時間で補充されるモノを使った対応策の配置が求められるわけですが……」
うーん、なんだか眠くなってきたのう。
いや寝れないんだけど情報を聞いても難しい問題になったら言葉が頭を素通りしてきたぞー。
だってゲーム時代でも俺はそういうトラップ関係は携わらなかったんだから、言われてもわかるわけないよ。
しかし毎日の会議をレポートにまとめて、帰還したモモンガさんに提出しないと罰ゲームって言われたしなぁ。
くっそ、あのハゲ……こんな面倒なことを押し付けおってからに……王都でうんこでも踏んづけるくらいの酷い目に会うがいいわ!
一人だけ第5位階の魔法に耐える皮。
クレマンティーヌです。
実際のところ、レベルで皮の耐久度変わるのか? についてはまだ語られてない部分ですので違ってたらどうしよう……とも思いますが、自称「英雄の領域に足を突っ込んだ人外」なんだし、この世界の英雄の領域の第5位階魔法のスクロール作成に役だって欲しいものです。
デミウルゴスはツアーを驚異に思ってないの?
めちゃ思ってます。
守護者一同、最大限の警戒を持っています。
ゆえに、仮に命令に逆らう裏切り行為になろうとも、危険の矢面に立つのは自分たちがやり、ツアーを殺す必要がある際には自分たちで殺る、と、アルベドやパンドラズ・アクター、その他守護者一同のコッソリ会議で決めちゃってたり。
モモンガさんにすら内緒なので下手なことは言えません。
まぁそんな事になるのかどうか? はわかりませんが。