42人目の至高   作:マッキンリー颪

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第18話

「さて、と。それじゃあ真面目に話し合いをしようじゃないか」

「あ、ああ。わかった……っ!」

「うん、すまん。またタンマだわ」

 

 シャルティアだけでなく、残り全員にも言って聞かせたので余計な口出し、茶々入れこそないが……俺の背後から巨大な質量を錯覚するほどの空気のゆらめきを感じる。

 タメ口聞かれた程度でわざわざ殺気を漏らすでないわ。

 

「はい、君たち全員撤収。もとの通常業務に戻りなさい」

「なっ!? し、しかしオッ様! オッ様一人を残してなどと」

「うん、お前らの主張はわからんでもない。でも細々と邪魔されたら面倒だからね。だから帰りなさい」

 

 相手の姿勢とかに口出しするわ、相手の言葉使い一つで殺気を垂れ流すわで、そんな事してたらただの圧迫外交でしかないのだ。

 それだとモモンガさんの「アインズ・ウール・ゴウン国は種族を問わず仲良く暮らせる楽園だよ計画」を成し遂げたとしても、外の人間がこいつらに話を聞いたら「脅されて無理矢理に組み込まされました」って言ってしまうかもしれぬ。

 居るとは思わんが、もし「正義感が強くてワールドチャンピオンでナザリック並のバックアップを兼ね揃えたプレイヤー」が居て、そんな存在に事をチクられててみろ。全力で俺等を滅ぼしにかかってくるかも知れんのだぞ。さらさら負けるつもりもないが勝てるとも言い切れん。

 だから、な。

 

「お前たちはこの場において邪魔だと俺が判断した。お前たちが理由を分からない以上、この場においてその判断は覆らん。ゆえに帰れ」

 

 しっし! と手の平を振るとザワザワと戸惑ったような雰囲気から、お通夜みたいな沈痛な雰囲気へシフトし、デミウルゴスを筆頭に守護者、しもべが一同に膝をつく。

 ……毎度思うがその一糸乱れぬ動きって練習してんの? どういう事態を想定した練習だよ。

 

「オッ様! 例え我が身の無能を誹られようとも、どうか! なにとぞ我らを」

「だーかーら、それをストップ! つってんだよ! いちいち重くすんな!」

 

 今にも「自害して詫びます!」ってな表情で何か言ってくるのでそれを妨害。

 こういうのが面倒だから、俺はあんまり動きたくないんだよ。そういうのはモモンガさんの仕事だっつーのに。

 くっそ、あのハゲ。俺に面倒な仕事を押し付けよるわ。

 

「いいか? 今からする交渉は俺らとあやつらとの間の話し合いだ。はーなーしーあーい! つまり、暴力ダメ絶対! 威嚇も暴力とみなす! つってんのにお前らそれを理解しなかっただろ! その上、まだ俺らとあやつらの間に上下関係なんて存在しないファーストコンタクトだってのに、何回言っても理解しねーじゃん! だからお前らはこの場じゃ邪魔だって言ったの! それはあくまで「この場で邪魔」ってだけでお前らの存在に文句言ってんじゃないの! お前らがこの作業できないんだから、出来る作業をやってろと言ってんの! それ以上でもそれ以下でもないから、お前らは通常業務をしろ!」

 

 とりあえずガーっとまくし立てて追い払おう。めんどくせえ。

 しかし、こやつらは折れなかった。

 

「ですが、もし至高の御身にもしもの事があれば」

「ねえよ。仮にあったとしても自力で対処するわい」

 

 もし俺に「何とか」ができない事態なんてものが発生したとして、それに対応できるのはモモンガさん以外にいないだろうからお前らじゃいても無駄だってーの。

 

「それに交渉の内容の記録も必要かと……モモンガ様からオッ様の業務態度の報告の命を受けている以上は!」

 

 で、結局そこまで言うのならばと10歩以上離れた距離での同席をギリギリで許すことに。

 もし次に余計なことをしたら即帰らせると誓わせた上で。

 

 あー、しんど。

 これだけ労力をかけてなお、実は肝心の話し合いはひとつも進んでないんだぜ。

 お互い自己紹介してそこから停止とか。

 幸先悪すぎるわ。

 

 さて、と。

 

「何度も待たせてすまんね」

 

 と、ペコリと謝る。ここで守護者どもが殺気の一つでも出すようなら即効で帰らせる口実もできるが……そうはならなかった。ちっ。

 一応、ピンポイントでの威嚇とかも注意しておかねばならぬがね。

 

「さてと。で、話し合いっていうか……まぁ、俺らはさっき言った通り、聖帝十字陵とか色々作ったわけだが、お前たちは何でこんな所まで見に来たんだ? 住処はもうちょっと遠いんだよな?」

「そこまでお見通し……か。たしかに我々の所在地とここに直接の関係はない。だが、その……な」

「あのような砦、一夜を経ただけで突然現れたことに驚異を感じないものは居ないだろう」

 

 なるほど。

 そりゃそうだ。

 

「てっきり人間の軍隊とやらが俺等を攻め滅ぼすために来たんじゃねえか、みたいに思ってたからな」

「ふーん……っても、普通の人間じゃあの建築速度は無理だと思うぜ」

「普通じゃない……だからこその驚異だった。それに立ち向かうためには全部族の結束が必要と思われるほどの驚異だと思った」

「全部族……? って割には少なくね?」

「いや、あくまで今は偵察だからな」

 

 なるほど。まぁ人数が少ない事に関しては俺の読みが当たってた感じかな。

 やはりこやつらは少数精鋭だ。

 そして、その「精鋭」がこの程度のレベルということはリザードマンの戦力は俺たちから見て問題のないレベルであるな。

 

「うむ、まあ大体はわかった。特にリザードマン……どのくらいの数がいるのかは知らないが、全部族が協力体制をとってくれてるのなら、内部でのゴタゴタはあるかもしれんが一度の交渉で全部の決着がつきそうで良かった」

「け、決着……か?」

「うん。俺らとしてはこの辺の土地を使う予定なののだが、先住民族を虐げたいとは思ってないのでな。実はこの辺がリザードマンの縄張りで、種族的、あるいは宗教的な聖地であったというのなら……まぁ立ち退いても良いとは思ってる。せっかく作らせたモノを解体させるのはちょっとばかしあやつらに悪い気もするんで、出来ればあの土地は使わせてもらいたいのだが」

「な、なん……だと!?」

「あ、やっぱダメ? まぁ良いけどさ」

「い、いやそうではない。そうではないのだ……あれほどの建造物を、事も無げに潰すといったことに対して驚いたのだ」

 

 主にこやつら3人の中でさらに代表っぽいシャースーリューと話をしていたら、なんだかやけに驚いた顔をしよる。

 その理由は建造物を潰す云々に対することらしいが……まぁ確かに勿体無く思うわな。

 しかしリザードマンの顔の表情もなんとなくとは言え分かるもんだなぁ……ステータスやスキルの恩恵だろうがすごいね俺。

 

「立ち退くもなにも……あんた……いや、あんたらなら力尽くでこっちの意見なんて押しつぶせるんじゃねえのか?」

「ゼンベル!」

 

 リザードマンたちが絶句する、そんな中でゼンベルなるリザードマンが疑問を口にした。

 なるほど、力尽くで、か。

 

「可能か不可能か、で言えば可能だろうな。たとえ相手が何者であろうとも。でもやりたいかやりたくないか。それで言えばやりたくないのだ。まぁそれは俺個人の考えゆえ全体の意でそうなった場合は……それが必要だというのならやるかも知れない。その場合はお前たちには気の毒な話だが、戦いになるだろうな」

 

 戦いになればナザリックが負けることはない……というより、酷い蹂躙にしかなりえないので、そうならないようにしたいとは思っているが。

 

「戦いを望んでいるわけではない……と?」

「俺個人としてはそうなるな。つっても、細かい説明は端折るが俺たちは地形が変わるくらいの大昔の存在でな。なんか気付いたら近所の地形が変わってるわ、支配地が無くなって新しい生き物が住み着いてるわでビックリだ。かつてはそれなりに力を持つ存在として君臨していたってのに素寒貧だと格好もつかんので、そのうち種族問わずに支配下に入れる予定ではあるが」

「支配!?」

「そう支配。つっても別に不当な支配とか蹂躙とか圧政をしたいわけではないんだがね。あとは保護……生活の援助かなぁ? 種族、国を問わずに困ってる者があれば助ける代わりに支配下に入れ、みたいな形になるはずだ」

 

 いずれくる王国か帝国との戦争、ってやつはある意味「こっちが戦争を誘発する」事になるであろうから、そういう意味では嘘をついてることになるのが心苦しいが……まぁ流石になぁ。仕方あるまいて。

 さて、話し合いとはいったがなんのことはなく、お互いに攻撃しないなら今はなぁなぁで済ましますよ、と意思の確認を取ったことだし、これで終わりと思って良いのかね?

 

 が、そうはならないのが世の中の辛いところ、俺が面倒に思うところ。

 あんま複雑に物事を考えさせるのは止めてほしいんだがね。

 

「圧政をする気はないと言うが支配下、という事はいずれ外部勢力との争いがあれば矢面に立たせるつもり、という事か?」

「いや? ていうか、多分だが外部との戦い、とやらになれば俺らが出るのが一番早い。支配下の存在の保護と言ってるし、戦いの矢面に立たせるのなんて矛盾するだろ?」

「しかしそれではそちらにメリットがあるように見えない。何かの言えない理由でもあるのではないかと勘ぐってしまうぞ」

「メリットってもな。まぁ敢えて言うなら……見栄えか? 仮にもかつて天下にその名の轟かせたアインズ・ウール・ゴウンだ。今の世の中になって縁が切れたから支配下に外部の存在はいません、拠点の身内だけが全てです、なんてのは格好悪いだろ。だから見栄えのためにも支配者らしくしたいわけよ。言えない理由としては……うーん、なんかあるのかね。敢えて言うなら俺たちが正義の味方だってアピールして欲しいって下心か? それくらいかな」

 

 俺が言うとさらにざわつくリザードマン達。

 少し良いかと問われ了承を出すと集団の方によって何事かの話し合い。

 まぁ俺らも散々やったことだしね。相手の秘密会議にいちいち文句言うまいて。

 

 今、後ろを向けばデミウルゴスを筆頭に守護者やらしもべやらがこっちに寄りたそうな目を向けてるんだろうなぁ、って事はわかるが後ろを向かない。

 下手に今あいつらと会話したら、まーたリザードマン達に対して威圧的な態度をとりかねんから、余計なことをしたら退場して通常勤務、の緊張感は持ち続けてもらう。

 ……そのせいで俺はひとりで考えて交渉しなきゃならないというプレッシャーも感じているのだけどね。

 やっぱ俺には向いてねーわ頭脳労働は。これ以降のこういう面倒な作業はモモンガさんに全振り決定だな。

 

 そして、彼らの中での話し合いにひとまず区切りがついたっぽく、再び俺との会話パートが始まる。

 もう俺が言えそうなネタは全部ゲロったから言うことなんてない気がするけどな。

 

「先ほどそちらの言っていた……支配下に入った者の保護、というのは具体的にどういうことをするのか伺っても良いだろうか?」

「んー? まぁ保護っつっても支配下の連中が何を望むかにもよるが……ただ働きもせずにグータラしたい、とか言いだしたら流石に蹴り飛ばすとは思うが。そうではなく、個人の頑張りでどうにもならん事態に手を貸す形になるだろうか? 例えば食糧事情がやべえ、って時は当座の食料を与えつつ、食糧事情の危機になる原因の除去をの手伝い、かなぁ? 畑がダメだってんなら土壌操作とかで豊かな土地を作ってやったりするし、肉を食いたいってんなら食肉用の家畜の養殖計画とかを立てたりか? そんな感じだ」

「養殖……それは、魚の場合でも可能なのだろうか?」

「んー……俺の常識に比べて生態系も差異があるかも知れないから何とも言えんが、魔法のサポートなんかも考えればかなり高確率で成功すると思うな。そのうえで、こちらの手助けなしで自立できるように導くのがベストなんだけど」

 

 具体的な説明を求められても困るのが俺だ。

 とりあえず当たり障りのないことを言ってごまかしてくれるわ。

 

 しかし、その俺の説明が何か驚く要素でもあったのか、再びリザードマンたちに動揺が走っている。

 へ、変な事を言っちまったのか? くそっ、こういう時にこそ、デミウルゴス辺りに知恵を拝借したいのに、下手に知恵を借りるとそこを取っ掛りにしてあいつはリザードマン達に高圧的な態度を取るからダメなんだよなぁ。

 ぐぬぬ、もうこれで話を打ち切ってお帰りしたいよう。

 

「支配下の者の食糧事情の保護、というのは定員が何名まで、などと言うのはあるのだろうか?」

「定員? んー……どうなんだろうな? 俺らの活動が始まったばっかり過ぎて確約はできないが……まぁン10万とかがいきなりやってきて土地と食料と仕事をくれ、って言われるとキツそうな気がする。でもまぁ数千から1万人くらいなら大丈夫か?」

 

 大丈夫かな? まぁナザリックの総資産を考えれば実は数10万人を何年か養うのも不可能じゃないが、資源が外に出ていくだけでリターンがないっていう状況は気持ち悪いからやりたくないのよな。

 こういう時にどこまで本当のことを言って良いのかの意見のすり合わせとかも、組織内でやっとくべきだったのなぁ。

 いや、実は俺が聞いてないだけで既にモモンガさんが言った後だったりして。……ひょっとしたら俺は今の時点で大分ヘマをやらかしてる可能性もあるのか?

 やっべ、なんか急に怖くなって……あ、スゥーっときた。

 でもなんにも解決してねえ! くそ、役に立たない機能だ。

 

「それほどの人数を養えるというのなら」

「待てザリュース! 結論を急いではならん!」

 

 そう思ってたらリザードマン側でもちょっと揉めてるみたい。

 うん、いいよいいよ。もっと揉めて。そしてその結果ひとまず解散とかしてくれ。

 

「今の時点でも食糧危機に陥っていないとは言え」

「戦いもせずに軍門に下るなんてのはできねえだろ」

「そもそも、下った者が本当に言葉通りの遇され方をする保証などないのだ」

 

 ヒソヒソ話のつもりがちょっと声大きいせいで聞こえちゃうが仕方ない。

 でも基本的に怪しい奴について言っちゃダメ、で意志が統一されそうだからこの場はお開きと思って良いのかなぁ?

 

「オッ殿。ひとつ訪ねたいのだが」

「おう、なんじゃい」

 

 なんでも言ってみろ、な態度に見えるが実は嘘である。もう何も聞かずに帰ってよぉ。

 

「仮に、我らの集落から一部……2割から3割前後の者がそちらの支配下に降り、残りは今まで通り、などと言うような形になった場合はどうなるのだろうか?」

「んん? あー、すまん。実は俺自身は異種族の見た目って結構わかりにくく感じてしまうことがあるんで、そういう場合は支配下の者たちとそうでない者との区別を付けるためにも、なんか目印の着用を義務付ける事になるかもしれんぞ?」

 

 いやまぁ、今目の前にいる連中……っていか前に出てる3人なら体色の違いや体格、装備の違いで見分けはつくがそれ以外がね。流石に。

 すると、なにか驚いたような顔をされる。

 げっ、また何か答えをミスった?

 

「他の者達と隔離をしないという事か!?」

「そりゃな。お前たちが水辺に住んでるって事は、お前たちにとってはその環境が住みやすいって事だろ? 新しく似たような環境の土地を作っても別にいいけど、めんどくせえし。少数を隔離するくらいなら少数にそれとわかる印を付ける方が楽だろ。さっきも言ったが支配っつっても普段から干渉するつもり無いんだ。そっちが困った事があれば手を貸す。その代わり、こっちがお前らの発言を必要とした場合は「アインズ・ウール・ゴウン万歳」みたいに言ってくれ、って程度の付き合いだぜ?」

 

 さっき言ったよね? これで間違ってないと思うのだが……大丈夫かなぁ。

 

「しかしそれではそちら側に全くメリットがないではないか」

「いや、俺の話聞いてる? 俺らの活動が正当なものだって言われるだけで良いってのに」

 

 どのみち、将来的に「だだっ広い土地」さえ手に入れば、資源の問題は何とかするはずなんで、あくまで人助けは余力でやってる行為だから大した事じゃないんだけどね。

 そこら辺をどうやって説明したらいいものか? ……説明しなくていいか。さらに細かいツッコミされたら答えられる自信がない。

 

「ところで困ったことがあったら手を貸す、てのは食料だけじゃないってことか?」

「うん? まぁそうなるな。あんまり困る事ってのが思い浮かばんが……疫病なんかが流行した時は回復魔法を使える人材を派遣するなりして治療しても良いが、ここら辺は治しきれるのかどうか微妙かな? あとは何か外敵か。そういうのに襲われてヤバイって言うなら助っ人をやってもいい」

 

 とりあえず思いつくのはこれくらいか?

 本当にそろそろ会話を終わらせてくれないかなぁ……もうそろそろ俺が決めていい事の限界を超えててもおかしくないぞ。

 

 しかし、どうにもそうはいかないみたい。

 今の俺の言葉の何が引っかかったのか、ザリュースとか言うやつがハッとした表情になってから、ゴクリと唾を飲み込み覚悟の顔で問いかけてくる。

 重い内容はやめてほしいんだがなぁ。

 

「外敵との戦い……仮に、我々がそちらの支配下に入らず、しかし後にそちらの支配下に入った種族が居たとして。その種族がこちらを一方的に敵視し、攻め立ててくる場合、その攻め手にそちら側……アインズ・ウール・ゴウンからの助っ人も参戦する、という事だろうか?」

 

 ザリュースのその発言で、シャースーリューとゼンベルも「あっ」という顔になる。

 こいつらにとって重要なことなんだろうけど……えーと、その場合はどうなるんだ?

 

「んん……一方的に敵視? それは好き嫌い、とかだよな? だったら俺らは関与しないと思うぞ。そのはずだ。逆に、その種族がお前たちに攻められて滅びそうでヘルプを要請してきたのなら、俺たちはその種族を守ろうとするが、敵対種族を滅ぼすような真似もなるべくしたくないからな。適当な落としどころを探るんじゃないかな。仮にお前たちが「その種族」とやらを主食にしてて、そいつらを食べないと絶対に死ぬとか言われた場合は……どうすりゃ良いんだろ? その時はその時に考えるか。だいたいそんな感じと思って欲しいが……答えにはなったかな?」

「う……むう」

 

 むう、じゃねーよ! 答えとして満足かどうか言ってくれってばよ!

 めんどくさすぎる。

 そういうのマジでやめて。

 

 俺の言葉がどう受け取られたのか知らないが、再び連中の中で会議して、ちょっと紛糾したり、それでも宥めたりといった感じのアクション。

 そして。

 

「オッ殿。すまない……我々は一応、それぞれの部族の族長などと言う立場にいるが……あくまで代表の一人に過ぎない。我らだけでこの場でリザードマン全ての命運を左右する話に決断を下すわけにはいかないのだ」

「そうか。まぁそうだよな。一旦帰って大勢で会議とかそんな感じだろ? 別にいいぞ」

 

 むしろそうしてくれ。ください。お願い。

 

「か、感謝する。それではまた……」

「うん、後日ね。日にちとか決めなくて良いぞ。適当に近付いたらこっちから補足できると思うし。そんじゃ、な」

 

 ばいばーい。

 と、いった感じでお開きである。

 帰っていくリザードマンたちはしきりに後ろ……こっちを振り向いて気にしながら去っていったが……はてさて。

 

「あー……しんど」

 

 とりあえず俺も帰りたい気分で満タンである。

 だけど、後ろを振り返れば奴らがいるのよね。

 守護者やしもべどもが!

 

「さて……と」

 

 なんて言えばいいんだろね。

 こいつら俺に呆れてる可能性ビッグだよなぁ……俺の裁量でどこまで決めて良いかとか、当の本人である俺が一番知らないから、ひょっとしたらモモンガ案件を勝手に俺が踏みにじった可能性もあるし。

 

 それをチクられたら……別にいいのか?

 よくよく考えれば悪いのはモモンガさんのような気がしてきたぞ?

 そうだよ! そもそも俺は面倒な作業嫌いだし向いてないプー! ってずっと言ってたんだ。

 だというのに俺を混ぜようとするモモンガさんのせいでこんな事になったんだ。

 なら悪いのはモモンガさんじゃん! 俺悪くないじゃん!

 

 へっへっへ、帰ってきたらモモンガさんの見てない所で勝手をやりすぎて予定が狂っちゃいましたー、とかなればいいんだ。

 そうすりゃ今後、モモンガさんも俺に発言力を持たせるのヤバイと気付くだろうさ。

 ストレスでハゲろ! いや元からハゲか。

 

 さて、事後弁護終了。

 こいつらに関してはどうしたものかねぇ?

 

「あー、お前ら」

「申し訳ありません!」

 

 とりあえず守護者たちに声をかけたら、デミウルゴスを筆頭に全員一斉に膝を付いて頭を下げる。

 いつも通りの一致した動きである。練習風景を見てみたい。

 

「んん?」

「オッ様の深遠なるお考えに対し、いたらぬ振る舞いを何度もしてしまい」

「は? し、深淵?」

 

 イヤミか貴様ッ!

 と、思ったがそうでもない? なんぞこの状況。

 

「まさかリザードマンにあのように利用なさるとは……」

「り、利用?」

 

 なんの事だってばよ?

 

「ど、どういう事でありんすか?」

「ふふふ、わからないのかねシャルティア?」

「あ、あの……俺もわからないんだが? デミウルゴスくんは何か勘違いしてない?」

「オッ様? ……あぁなる程、そういう事ですか」

 

 なにかデミウルゴスは勝手に納得しているぞ?

 俺を含めてシャルティアやその他守護者たちもわからないって顔をしてるんだが……皆に、というか俺に分かるように説明したまえデミウルゴス。

 

「オッ様のお考え、わかりました。ではそういう形で彼らには通達しておきますので」

「いや、あの……俺がわからないんで俺に分かるように言ってってば」

「ええ、大丈夫です。オッ様がそのように振舞う理由、皆にしかと伝えておきますゆえ」

「聞けよ俺の話」

「かしこまりました。余すことなく伝えておきます」

 

 おい!

 結局、わけわからない顔をしてるほかの連中や俺を思考的に振り切ったデミウルゴスは守護者やしもべたちにナザリックへの期間を命じつつ。聖帝十字凌建設チームやらは再び業務に戻らせ、夜に伝えるとかなんとか言ってるが……

 

 俺はどうすりゃいいんだろう?

 

 ……も、もういいや! 全部悪いのはモモンガさんだもんねー!

 面倒事は全部他人のせいにして押し付けてやるぜ!




 タメ口を聞かれたら殺気を漏らす守護者たち。
 これだけだと王都のアルベドやプレアデスに比べて抑えが効かなすぎに見えますが、王都では「モモンガさんが演技をしてる」というのを前提でアルベド達は我慢できました。
 こっちは素の主人公が姿と名前を晒してるんだから、外の存在は威光を前に畏れをなし傅くのが礼儀だろ! とか思っちゃってるみたいです。

 ペコリと謝る。
 守護者たちは凄まじい憤りを感じてしまいました。 
 と言っても主人公に対して、ではなく主人公に頭を下げさせた自分たちの浅慮に対してですが。
 重い。

 聖帝十字陵を人間の軍隊と思ったリザードマンたち。
 だから結束してみんなで立ち向かおうぜ! という形でザリュースがリザードマンを一致団結させるための大冒険をしたり、クルシュと出会ってラブロマンスをやったりとする話もあったのだけど、まぁ概ね原作基準です。備える相手が違うだけで。

 俺個人としては~云々。
 セコい言い方というか……そんなに責任逃れしたいのか。
 いやまあ中身が普通の人ですしね。

 支配下の住民の遇し方。
 この辺は主人公の勝手な大暴走、になりますね。
 モモンガさんも今の時点では考えて無かったというか、まずは王国の人間の都市を手に入れることになると思ってたので、対人用の法律とかの草案をアルベドやデミウルゴスとメインでやってましたし。
 もちろん主人公もその場にいたけど右から左に聞き流してたり。お約束です。

 わからないのかねシャルティア?
 はい、俺もわかりません! と、モモンガさんと違って素直に言ってるのに主人公の演技と思っちゃうデミデミ。
 買いかぶりすぎです。

 面倒事は全部他人のせいにして押し付けてやるぜ!
 成長の見られない主人公。
 WEBおよび書籍のコキュートスの方が精神的な成長を見られる気がしますね。
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