42人目の至高   作:マッキンリー颪

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番外・1

 メッセージ、対象はアルベド。

 モモンガは使うことに違和感を感じなくなった魔法を使う。

 そしてまるで何年も前から使うのが当たり前、そう感じるほど自然に魔法は発動する。

 

「アルベド、私だ。忙しいところをすまないが玉座の間へ来てくれ。……その際にデミウルゴスも連れてくるように」

 

 ギルド「アインズ・ウール・ゴウン」の本拠地、ナザリック地下大墳墓最奥の玉座の間。

 その玉座に深く腰掛けモモンガは「ふー」と息を吐く。

 呼吸の必要のない体ではあるが、生身であった頃の残滓か、肉体的に意味はなくとも精神的にため息の一つも付きたくなる状況だからだ。

 

 ユグドラシルのサービス最終日。

 孤独なままこのゲームを終え、あとは無味乾燥な人生を送ることになるのかと覚悟していた。

 最後の日、サービス最後の瞬間に、ほんの少しの時間でも仲間が再び駆けつけて来てくれた時は本当に嬉しかったが……よもやこんな事になるとは。

 

 彼が、実は前世の記憶と称するこれから先の未来の知識を持っている、という発言は正直眉唾物であったのだが、少なくとも今の時点では怖いぐらいに彼の知識は正しい。

 彼の記憶の曖昧な部分が多い、というのを差し引いてもなお、その未来知識はこの上ない強力な武器となるだろうことは想像に難くない。

 これからも、本当かどうかの検証は随時やっていく事になるのだろうが、完全な手探り状態より答えのモデルがある状態の方が数段も楽になるだろう。

 

 

 彼は、未来の知識を持ってモモンガが「この世界」に来ないことを望んでいたという。

 確かに彼から聞いた未来の話、自分が本当にそのような狂人の如き振る舞いをするのか?と思えば彼の心配もわかる。

 しかし、正直なところ、彼には申し訳ないがもし、モモンガはこの未来を前もって知っていたのなら……間違いなく、現実の世界を切り捨てこの世界を選んでいたであろう。

 そんな自分のために、彼の人生を犠牲にしてしまったことを非常に申し訳なく想う気持ちがある。

 

 だからこそ、モモンガはせめて彼の言うように、人間性を廃した怪物になる事なく、それでもこの世界を生き抜こうと思った。

 思っていたのに……気付いたら、アレだ。

 

 肉体の変化に伴い精神性が人間のそれと異なっている、そう言われた時は、それでも限度というものがあるだろうと気楽に考えていたが、話以上のものだった。

 なにしろこの世界の人間を見ても人間のように思えない。

 ナザリックのNPC……守護者たちに対しては、異形の者がいることを含めてなお親しみを感じることができたというのに。

 そして、せいぜいが意思疎通可能な虫けら程度にしか思っていない存在の挑発に激高してしまい、冷静なまま怒りに任せて殺してしまうという失態。

 

 このままではいずれ本当に彼の言うように数十万の人間を笑いながら殺す怪物となりかねない。

 

 モモンガの最初の考えでは、国力の低い「王国」とやらを相手になるべく友好的に接することで自治権を手に入れ独立するというものだった。

 その餌をとして法国の者を使う予定であったのだが……

 

「王国の貴族は無能であまり友好的な態度ではない、むしろまともに付き合えば怒りを覚えるかも……か。先の事を考えれば挑発されても大概のことは我慢できる、そんな自信はあったんだけどな」

 

 法国の雑魚、あの程度の存在の挑発に激高してしまうようでは今後、不意な挑発を受けたときにもまた激高してしまい、決定的な失敗をしてしまう危険性もある。

 そうならないためにも、せめて敵とのコンタクトの際に相手の発言を先読みし、どんな侮辱をされても激高せずに踏みとどまれるよう、支配者としての心構えを持てるようにならなければ。

 

「そのためには……部下を、彼らを信じろ、か」

 

 はたして出来るのだろうか?

 いいや、しなければならない。

 モモンガは深く決意する。

 

 

「モモンガ様。守護者統括アルベド、そして第七階層守護者デミウルゴス、お招きに預かり参上しました」

「ああ、夜分遅くにすまないな。如何に非常事態といえど、ただでさえ激務のお前たちに休みすら与えることができぬ事、許して欲しい」

「許すなどと! そのようなことは言わず、モモンガ様はただ命じて下されば良いのです!」

「そうです、我ら守護者一同。いいえ、ナザリックに存在する全てのものは至高の御身のためのもの! 如何様にでもお使いください!」

「お前たちの忠誠、嬉しく思う。だが、オッさんも言っていたように、お前たちは替えの効く存在ではない。いいや、替えが効こうが効くまいが関係ない。誰ひとりとも無駄にしたくないのだ。……だが、今はそうはいかぬ。だからこそ、お前たちを頼らせてくれ」

「なんという御慈悲……これからもより、誠心誠意モモンガ様にお仕えする事を誓います!」

「至高の御方々の命を果たす事こそ我らの存在意義。我らをいかようにもお使いください!」

「う、うむ」

 

 彼らの態度。忠誠は演技には見えず、そして彼の言うようにこの忠誠が本物だと聞いた。

 しかし彼の語る未来の知識において、モモンガはこの忠誠を完全に信じきることはできなかったという……信じたくない話ではあるが、もし一人で、何も知らずに「ここ」に来たのであれば、モモンガは保身から彼らに一切の弱みを見せる事ができなかった、というのも頷ける話ではある。

 そのような「身内」に向ける疑心暗鬼。これは絶対に排していかねばならないだろう。

 そうでなければこれから先、どのような失態をするのか。

 

 彼から得た未来知識ではモモンガは常に失態を隠し、誤魔化し、勘違いを利用し上手く行くという綱渡りをしていたらしいが、これから先の未来においてもそれが可能だなどと思うのは怠慢であろう。

 ならば、彼らにも自分の「弱み」を見せることを恐れずに、彼らの力を頼りながら生きていかねばならない。

 

「では、これより私がオッさんから得た未来の知識をお前たちに伝える。その上で、我々の望む未来に近づけるためにはどのような行動をとるのが正解か……お前たちの忌憚ない意見を聞かせて欲しい」

「はっ!」

「ところでモモンガ様……オッ様はどこへ?」

「む」

 

 これを言われると、辛い。

 モモンガは彼からの提案、ひとまず精神を落ち着けるために、眠れなくとも何もせずに休むことが必要だという案を蹴って、ここにいる。

 ここで仮に「オッさんは今は休憩中」などといえば、彼が意図的に下げている守護者からの忠誠が更に下がってしまう。

 特に、彼の言うことが確かであればサービス終了間際に悪乗りした自分によって設定を改変されたアルベドは、モモンガ以外のアインズ・ウール・ゴウンのメンバーを疎ましく思うようにすらなっているというのに。

 

「オッさんは……今は、彼の見た未来の知識、それの整理中だ。私に書置きを残していたとは言え限られた時間でのことであり、さらにその「未来を見た記憶」というのも細部が曖昧な部分が多いらしくてな。私もまた一通りの流れしか聴いていない状況なのだ」

「おお、未来を見渡すという真眼(サイクロプス)……!」

 

 なんでそんな変な設定にしたのかなぁ……まぁ説明にはなるんだろうけど。

 自称真眼(サイクロプス)という能力を持っていた、という事になっている彼に対する評価自体は高そうなので、ここを起点に彼も守護者たちからの忠誠を得られるようにできればいいなぁ、と思うモモンガ。

 デミウルゴスと比べると、真眼(サイクロプス)に対する熱の少なそうなアルベドをみて、より一層、そう思うのであった。

 

「さて、私たちの転移したこの世界。ナザリックの周辺には3つの人間の国家があるそうだが」

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