42人目の至高   作:マッキンリー颪

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第7話

「だから何回も言ってんだろうが! あいつらの忠誠はモモンガさんに向いてるし、そのままの方が都合が良いって!」

「それはオッさんの都合でしょうが! 彼らの事を考えてあげてください!」

「考えた上だっつーの! むしろ一度憎んだ相手にいまさら忠誠誓えねっての!」

「あなたの勘違いとは思わないのですか! 」

「思わねーよ!」

 

 もはや定例と化したかのような言い合い。

 後の行動のための「未来知識」を思い出しながら、二人で紙に書いて整理して、その都度それらの事態に対するスタンス、その際の設定などの打ち合わせをして、隙あらばモモンガさんの奴は言う。

 

「オッさんの守護者に対する態度、突き放すようなものは良くないと思うのです」

 

 などと。

 突き放しているのではなく、意図的に連中をムカつかせて連中のヘイトを稼ぎつつ俺との違いを見せつけモモンガさんへのより一層の忠誠を高める俺の作戦に文句を言いまくるから困る。

 

 それから熱が入りすぎるとお互い「スゥー」ときて落ち着いて、ひとまずこの話題は置いといて次の話……と、なるのが朝からずっと続いていたことだったりする。

 この揉め事がなければ話し合いなんて半分の時間で済んでそうな気もする。

 

「それに、この2巻とか5・6巻、それに9巻ですか? これに該当する英雄」

「モモン・ザ・ダークウォリアー?」

「そんな嘘の名前はいいんです。とにかく、この英雄の存在、これを押し出すのなら私は外に出る必要がありますよね? まぁ実際のところ、この世界の情報を前もって得ているのならそんな遊びをやる必要もなさそうな気もしますが」

「うん、それがどうした?」

「その際に、私が外に出ている間はナザリック内を指揮する存在が必要じゃないですか? それを、誰がやるというんですか」

「アルベドやデミウルゴス、あとパンドラズ・アクターがいるじゃないですか」

「実務じゃなく、精神的な支柱ですよ!」

「それはアンタが」

「そうじゃなくて……あ~もう、オッさんの警戒してるように、組織の頭を増やすことによる弊害は確かに無視して良い問題じゃないでしょう」

「わかってんじゃねーか」

「ですが、それで私を立てるというのなら私が社長でオッさんが副社長的な、そんな感じのノリでいいじゃないですか」

「それでいくにしても、トップが完璧なら嫌われ役がナンバー2をやる方が良い、とも俺は言ったろ」

「私は認めてません」

 

 こんな感じの会話を、何度も何度もグダグダと。

 まったくもって不毛な話だ。

 

「それじゃあわかりました。では、彼らに聞いてみましょう」

「はぁ?」

 

 モモンガさんは考えたそうだ。

 ナザリックの住民たるNPC全体が、どう思ってるかを聞いてみるべきだと。

 

「モモちゃんよー、そんなん口頭で聞いたら嫌いな相手に嫌いと言える? しかも仮にも上司ぞ。普通は無理だし普通じゃなくてもまず無理だわ」

「聞く、と言っても言葉で聞くのではありません。匿名のアンケート用紙、それも筆跡が出ないようなマークシート形式で聞けばいいのです」

「ま、それでモモンガさんが現実を直視するなら良いけどよォー。その用紙作るのがまずひと手間じゃね?」

「……まぁ、それは図書館の司書長に頼みましょう。オッさんの字では解読するのも一苦労ですし」

 

 こっ、こやつ……まぁいいや。

 

「そんじゃ不毛な話し合いはひとまず置いといて、先の展開も概ね言い切ったことだし……実際に俺等が行うアクションをどうすべきか、考えますか」

「そうですね。まず、王国に対する対応となりますか」

 

 

 

 モモンガさんの策では王国に対し、恩を売る……フリをして煽り、無理難題を吹っかけさせ、それを相手の想定以上の方法で解決することでビビらせる。

 できれば帝国との戦争への参加要請がベスト。

 それが無理な場合はできる限り居丈高な態度で振るまい「どちらが上かをわかっていない態度」をとっている演技をする。

 実際には保有戦力はこちらのほうが圧倒的なのだから、最悪戦争になっても問題はない。

 もしそれが原因で王国との戦争になった場合は王国相手にレベル少数のレベル70前後モンスターを使い圧倒し、法国への危機意識を煽りつつ倒せる戦力をお出しすることで、法国の主力をおびき寄せ叩く。

 

 つもりだったそうだが。

 

「オッさんの言う1巻と2~3巻との間のタイムラグが不明、なのが痛いですね」

「うむ」

 

 俺の覚えてる限りの2~3巻の内容を言ったらモモンガさんは「その話はタイムテーブルにおいてほぼ同時進行と思ったほうがいい」と言い出した。

 2巻ラストのシーンでシャルティアが裏切りの疑いをかけられ、3巻ではその原因が語られる形になってたからな。

 だから2巻でモモンガさんたちが英雄ごっこをやってる間にシャルティアが洗脳されたということになるのだろう。

 

 そこで浮き上がる問題が、3巻におけるシャルティア洗脳チームのフットワークの軽さだ。

 昨日のモモンガさんが放った、覗き屋に対するカウンターアタック発動で連中も大騒ぎであろうけど、早ければ今日中にでもその対策としてシャルティア洗脳チームが出発しているのかもしれない。

 王国と法国との地理的な関係による移動時間の算出ができない今、彼らがどのくらいのペースで動くのか? それがわからないが、昨日捕まえた連中をプレゼントして王国の上役……腐敗した貴族などに渡りを付け、煽ってムカつかせてる頃に到着してしまうかも知れない。

 仮にも権力者が、俺たちみたいな出自が謎の連中を相手とした交渉のテーブルに座るまでの時間が「じゃあ明日お話をしましょう」なんてなるわけもないしな。

 

 そうなると俺等が王国対策で動けない状態で法国の連中がこの近所に来て、結局エンカウントのタイミングを逃してしまいかねない。

 流石に連中がワールドアイテムを2つ以上持ってるとは思わないが、もし持っていたとしてもこちらもワールドアイテムを所持、装備することで「ワールドアイテムの特殊効果」に対する防御が出来るわけだから。

 確実に来る相手、に大して万全の態勢で備える事ができればかなり優位にことを運べそう……なので、できればそのイベント発動を優先して動きたいところ、だとか。

 

「じゃあ法国の連中を王国に売るのはお預け、になりますかね?」

「うーん……その、オッさんの知識においては私はどう振舞ってたんです?」

 

 そんな雑魚の趨勢まで覚えてられるわけ無いじゃん! とも言えないな。

 

「えーと……たしか、アニメで見た感じだと騎士の連中は半分ほど殺して残りは逃がしたか? で、連携してた悪の軍団については……全員を捕虜としたけど戦士長には逃げられたって嘘を付いてた気がする」

 

 たしかそんな感じ……だった、気がする。

 アニメでも詳細な決着シーンこそ語られてないが、敵の最強天使が予想以上の雑魚とかそんな感じで楽勝でしたってオチだし。

 

「む……そうなると、法国の連中の出発は騎士軍団の到着を待ってからという可能性も? いやいや、流石に連中の装備やレベルから出る移動速度を考えれば、連中の到着を待たずに洗脳チームが出発してるはずですよね」

「そうだよなぁ。そもそも騎士連中を逃がしたのも村人を助けてビビらせないためのパフォーマンスで、逃げてる騎士を後から捕まえてる可能性もありますし」

 

 というか、細かいことを言い出せばモモンガさんから逃げる許可をもらった連中が、ちゃんと家まで帰れたかどうかも未知数だしな。

 

「ふむ、そうなると……いや、大した問題でもないかも、ですね。確か王国の戦士長、とやらは私が法国の軍団を倒したのを貴族に宣伝してくれてるはずなんですよね?」

「たぶん。それで無能貴族が自分で見てもいないモモンガさんをディスったりして戦士長を煽るとか、そんな展開だと思う。戦士長も平民出身で無能貴族から煙たがられてた気がするし」

「うわぁ、働きたくない環境だー……まぁ、そういうのは我々が哀れむべき相手でもないでしょうけど」

 

 うん、気の毒とは思うがその就職先を選んだのは戦士長本人だと思うしね。

 

「しかし無能貴族と戦士長とやらは仲が悪い……ですか。では……あの捕まえた法国の連中、やはり王国の戦士長に進呈しましょう。その際に少しばかり我々の力を見せて敵対しないほうがいい、と戦士長に思わせるくらいで良いんじゃないですかね」

 

 そうすれば、戦士長と仲の悪い無能貴族は「モモンガは強い」と宣伝する戦士長をディスり、逆に自分たちの手勢で「モモンガを取り押さえてやろう」などと兵を差し向けてくるかもしれない。

 それを相手にある程度上位モンスターで返り討ちにすれば力を見せつける結果につながるし、正直なところ王国、帝国に対してはノーガードの無策でも問題がないので戦いに俺たちが対応する必要はない。

 その間に俺たちは法国のシャルティア洗脳チームにターゲットを絞って行動すべき、か。

 

「最終目標は「最低限の人死で我々の安全と自治権の確保」で、当面の目標としては「シャルティア洗脳チームの捕獲、もしくは全滅」ですね」

「そんな感じ……かな。ところで、2巻で大活躍する漆黒の英雄、モモン・ザ・ダークウォリアーの英雄譚はどうします?」

「だからその名前はいいですって。まぁこの世界の情報は簡単に手に入りそうだし、無理に英雄ごっこをする必要もないでしょう。正直、もしオッさんがいなくて一人で完璧な支配者を演じていたなら、息抜きや逃避を兼ねて外に出て遊びたい、と思う気持ちになるのも理解できますが……今はそれほど切羽詰ってませんしね」

「ふーん、そんなもんなんだ」

「とはいえ、2巻部分、とやらで起こる事件。大きな都市をアンデッド軍団が襲ったりするのを見過ごすのも気分がいいものではありませんし、それ以上にその犯人たちがこの世界での「強者」に該当する存在なら……そいつらを秘密裏にお持ち帰りできれば情報源として役に立つかもしれませんね」

「そいつらは悪人ですし、どんな目に合わせても問題なさそうですが……そいつらが事件を起こすのとシャルティア洗脳チームの到着ってタイミング近いですよね。どうしましょう」

 

 うーん。

 そうやって俺たちが頭をひねっていると、モモンガさんがなにか急に独り言。

 というかメッセージの魔法が届いた感じ、かな。

 

「む、そうか。ふむ……そうだな、手は出すな。移動速度からして近隣の村に接触するまで1日前後だな? ならば引き続き察知されない距離での監視を続けるのだ」

 

 などと言っている。

 相手の声は聞こえないがモモンガさんの声は聞こえるし、なんとなく会話の内容も想像がつくが……これ声に出さずに会話とかできないものかね?

 

「オッさん。オッさんの言われていた戦士長、とやらの一味をしもべが捕捉したようです。馬での移動ですので移動速度は難有りですが、おそらく進行方向の村を訪れると思われるので、その村で戦士長に連中の引渡しを、でよろしいでしょうか?」

「良いんじゃね? 連中との接触が明日になりそうなら、その時の態度とかの打ち合わせをする時間はまだまだあるし」

「そうですね」

 

 それから俺たちは、時おり休憩を交えつつ王国の戦士長と対峙した時の態度ややりとりの流れの打ち合わせをするのであった。

 

 しかし、小説とかを読んでる身では「あれから数日後」とかでサラッと流れるシーンだろうに、こんな大変な打ち合わせやタイトなスケジュール調整が必要とか……物語かどうかは置いといて、変な事件は他人事ならいいけど自分が巻き込まれると大変だなぁ、と思わざるを得ないな。




 モモン・ザ・ダークウォリアー。
 モモンガさんは自分がそんな恥ずかしい名前を名乗ってたことは認めたくない様子。
 実際その恥ずかしいフルネームを名乗ったことはないので正解だけど。
 主人公はなぜかモモンガさんがそのフルネームを名乗ってたと勘違いしています。

 マークシート形式の質問書。
 匿名希望だからアルベドが主人公に対する悪感情を前面に出しても平気! ……なのかなぁ。
 常識的に考えればなんだかんだで本音を誤魔化して記入しそうな気もしますが果たして?

 最終目標は安全と自治権の確保。
 なんだかんだでそれさえあれば良いだろう、とは思ってまるようです。
 主人公自身、この世界の人間を見ても路傍の石ころくらいにしか感じられなくなってますが、その感性に従って行動していてはとんでもない事をしかねない、という恐怖があるのでできる限り早く外部とナザリックの干渉を断ちたい所でしょうか。

 戦士長たちの移動速度。
 もうちょっと早いような気もするけどよくわからないので大雑把に。
 ちなみに接触予定地点はカルネ村ではなく、アニメで焼かれてたのを見て戦士長が憤ってた村と思われます。
 全然意識してないところで人死の犠牲を減らしてるので、主人公たちはきっと正義の味方ですね。
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