魔法少女リリカルなのはEX・S 過去にとらわれた転生者 作:レイレナード
作者「さささささ、さー?なぜかなー?」がたがたぶるぶる
そんな気分で急いで次の話を書いてます。
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前回の投稿からなんと3ヶ月……っ
すみませんでしたああああ!!
今回に関しては完全に私のモチベーションの問題でなかなか筆が進まなかったのが原因です。言い訳のしようもありません。
しかしながら途中で投げ出すことだけはないので、これからも頑張らせていただきます。
では、どうぞ
魔力反応はない。
と言っても、魔法を行使していない時は基本的に魔力反応はないか。
とにかく詮索は後にしてインターホンに応える。カメラを見ると、見慣れない女性がいた。
「どちら様ですか?」
『ええと、フェイトを迎えに来たんだけど………』
第一印象として、まず母親ではない。そもそも、おそらく黒幕であろう母親がこんなところに来るはずがないか。
となると、協力者か。
………っていうか、本当に玄関から来たな。
とにかくこのまますぐ信用するわけにもいかない。まずはテスタロッサに確認するか。
「…少し待っていてくれ」
俺はそう言って、すぐにテスタロッサのいる部屋へ向かう。
「テスタロッサ、入るぞ」
「えっ!? ちょ、まっ」
一声かけて扉を開けると、テスタロッサがすごい勢いでベッドの中に潜っていった。ゆっくりと布団の中から顔を上半分だけ出して、こっちの様子をうかがう。
………顔が真っ赤だが、何をしてたんだ。
部屋の中を見渡すと、勉強机の上においていた学校の教科書が少し散らばっていた。
「……気になるなら、別に見てもいいぞ」
「…………………はい」
よほど恥ずかしかったのか、また布団の中に潜ってしまった。まあ、勝手に部屋を見て回っていたのだろうから、少し気まずいのだろう。別に見られて困るものもないから、気にしなくていいのだが。
「ところでテスタロッサ。誰かに連絡してここに来るように言ったのか?」
そう聞くと、テスタロッサはすぐに起き上がった。
「あ! う、うん。アルフに連絡したら、すぐに迎えに行くって」
「アルフ?」
聞き覚えのない名前に首を傾げる。
「あ、私の使い魔だよ。こっちの状況は伝えてあるから、いきなり攻撃してきたりはしないと思う」
「…そうか。わかった」
本当にそうだったとは……、この子がどういう子なのかわかってきたような気がする。
とにかく、これで裏もとれた。「ここで待っていろ」と言い残して部屋を出る。……前に、机に置いてあるまだ手の付けられていない冷めたシチューを回収した。
「あ……」なんて残念そうに言うテスタロッサに「温めなおしてくるだけだ」と告げると、彼女は真っ赤になってまた布団に潜った。
「またせた。今開ける」
玄関を開くとカメラに映っていたのと同じ女性が少しこちらを睨んで立っていた。長髪で短パンと半袖の臍を出した露出度の高い服。手にはバックを持っている。しかし、カメラで見た時とは少し違う部分があった。イヌ科のもとの思われる耳と尻尾が付いているのだ。
……犬、もしくは狼の使い魔と言ったところか。
「アルフ、で、当っているな」
あの耳と尻尾は警戒していることの証なのだろうが、特に恐れる理由はない。すでに安全は保障されているのだから。
「そう言うあんたは、フェイトが言っていた仮面野郎かい?」
「………そうだ」
そんな風に呼ばれていたのか、俺は。まるで変質者か何かの扱いだな。
「まあいい。上がれ。テスタロッサの部屋まで案内しよう」
そう言うと、アルフはさらに鋭く俺を睨み、構えをとる。
「簡単に信用すると思ってるのかい?」
本気の警戒。それが、主人を思う気持ちから来ているのは明らかだった。だから、そんなふうに敵意を向けられても、むしろ嬉しくなる。
「信用されるとは思っていない。だが、俺はお前を信用しているよ」
「は?」
何を言っているのか理解できない。そんな顔をするアルフに、俺は理由を伝えた。
「テスタロッサが、"大丈夫"と言ったんだ。それだけテスタロッサはお前を信頼していて、そしてお前も、心からテスタロッサを心配している。それが確認できたんだ。なら、俺はそれを信用するさ」
テスタロッサは、目的のためには手段を択ばない。だというのに、その行動には甘さが映る。でもそれは、純粋すぎるほどに優しいからだ。優しいから頼まれたことをすぐにどうにかしようとするし、甘さも出る。そんな彼女はこんなことで嘘はつかない。なら、自らが使役する使い魔のことで「大丈夫」だという彼女の言葉は、決して間違いではないということだ
そしてアルフ。実際に会って、どれだけ主人を思っているのかがすぐに伝わってきた。フェイトは虐待されている可能性が高い。そんなテスタロッサのことを心から思ってくれているのなら、彼女の存在はテスタロッサの助けになる。そんな彼女のことを信用しないわけにはいかない。
俺の言葉にアルフは面食らったように目を丸くした。
「さあ、上がってくれ。あんまり時間をかけると、テスタロッサに心配されてしまう」
このままというわけにもいないので、急かしてみる。するとアルフはため息とともに渋々と言ったように構えを解いた。
「まったく。あんたも相当甘いね」
玄関の戸を閉め、靴を脱ぎながら彼女は呆れたように苦笑してそんなことを言う。
そんな彼女に俺は「こっちが心配になるくらい簡単に信用してきたお前の主人に影響されたのかもしれないな」と、肩をすくめて見せた。すると、彼女もまた、「ああ、なるほどね」と笑う。
その空気、その笑顔は、思わずつられて笑ってしまいそうで、俺は無意識のうちに顔を逸らした。
「その部屋だ。俺はまたあとで来るから」
「ああ、わかったよ」
部屋を差して伝えた後、俺は台所へ向かう。
途中、テスタロッサとアルフの嬉しそうな声が聞こえてきた。……まずは二人だけにしておこう。
冷めてしまったシチューを一旦鍋に戻し、温めながら時計を確認する。
「……10分でいいか」
それだけあれば十分話せるだろう。今頃はもう真面目な話になっているだろうか。
……そう言えば、使い魔についてはまだ何も知らないな。
「アイギス。聞いてもいいか?」
『やっと私の出番ですか! 前回とか全く出番なかったから今回もないかと思いましたよ! で、なんですか?』
………
触れないでおこう。
咳払いをし、改めて質問する。
「使い魔についてだ。正直俺に縁はないだろうと思うが、詳しく知っておきたい」
『なるほど、わかりました』
アイギスが光ると、目の前にディスプレイが表示された。そこには使い魔に関する資料が出ている。
『簡潔に言えば、使い魔とは魔導師によって作られた魔法生命体です。動物に人造魂魄を憑依させることによって造られます』
「人造魂魄? 魂を生み出す魔法があるのか?」
『厳密には少し違いますが、それに近いものですね。素となった動物によって人格も変わりますから。また、素となった動物の性質を受け継ぎ、その記憶も少しは残ると言われています』
「………待て。素となった動物はどうなる? 人造魂魄なんてものを入れられたらその動物は」
『はい。使い魔となった時点で死んでいます』
アイギスの説明に思わず絶句する。使い魔とは動物と契約し、使役するようなものだと考えていたが、それは甘かったということだ。
『使い魔は存在するだけで主の魔力を常に消費してしまいます。そのため、作成の際に契約として使い魔が成すべきこと、その目的を設定しそれに合わせて能力を決定することで、使い魔に縛りをつけます。そして目的が達成されたと同時に契約が切れ、使い魔は消滅します』
「目的が達成されると同時に、か。ならば、自分が死ぬまで護れ、とでも言えば使い魔は一生共にいるということか」
『その通りです。もっとも絶対はありませんから、使い魔に何かあって死んだりすればそれまでです。また、契約を行わずとも使い魔を造ることは可能ですが、その場合縛りがないので主に服従しないこともあり得ます。なお、当然ですが使い魔の性能が高ければ高いほど常に消費される魔力が高くなります。』
「逆に言えば、高性能な使い魔を持っている者は、それだけの魔力量を備えているということか」
『はい。アルフさんは人間並みの知性を備えており、おそらく戦闘力もかなり高いと予想されます。それだけフェイトさんが魔導師として素晴らしいということですね。その他、使い魔は主人の知識や技術をコピーすることもでき、成長を早めることや止めること、若返らせることも可能です。……使い魔に関しては以上です。その他、術式など細かいことはディスプレイに表示しています』
「ああ、ありがとう」
データを読んでいるうちに、気付けばシチューは温まりすでに10分も経っていた。火を消して部屋に向かう。
(使い魔、か)
上手く使えば便利なのだろうが、その目的のために一つの命を犠牲にしなくてはならない。そう考えると、使おうとは思えないな。
(………あのアルフはテスタロッサの使い魔なんだよな)
ふと、優しい魔導師の顔が頭をよぎる。テスタロッサは、どうして使い魔を使役したんだろうか。
あの心優しい子が、簡単に命を犠牲にしたとは思いたくない。きっと、何か理由があったんだろう。
……俺が一人で考えても答えが出るわけないか。そしてそれはきっと、俺が詮索するようなことではない。
そんな風に考え事をしていたからだろうか。
「入るぞ」
返事も待たず、さっきと同じように扉を開けてしまったのは。
「え?」
「な!?」
テスタロッサが着替えをしていた。
「………」
「………」
「………」
テスタロッサは一糸纏わぬ姿となっており、アルフは手に下着らしきものを持っている。そして俺は、扉を開けた体勢のまま固まっていた。
同年代、つまり小学3年生の裸を見たところで正直どうも思わない。ただ先ほどまで考え事をしていたのもあって、あまりに予想外な光景に頭がついてこなかったのだ。
長い沈黙が支配する。
と、見る見るうちにテスタロッサが赤くなっていった。
「――き、」
「…すまん」
叫ばれる寸前でようやく我に返った俺は、巻き戻しをしているかのように扉を閉めた。
「きゃあああああ!!」
「あんの野郎!!」
床を蹴る轟音が聞こえ、とっさにシールドを……、張ろうとしてやめた。さすがに自分の非は認めるべきだろう。すぐに扉は殴り壊され、その勢いのまま俺はアルフに顔面を殴り飛ばされた。
一瞬目の前が真っ暗になり、続いて凄まじい激痛が走る。いつの間にか足は床を離れ、体が宙を舞っているのが分かった。脳が揺れ、意識が刈り取られる。
その寸前、顔を真っ赤にして体を抱きしめるテスタロッサと振り下ろされる足が見えた気がして、
「ふん!!」
もう一回、頭に激痛が走った。
「悪かった。もっと気を使うべきだった」
俺は今テスタロッサとアルフの前で土下座している。
あの後、意識が戻った俺の前に、鬼のような顔をしたアルフが立っていて、その向こうに顔を真っ赤にしたテスタロッサがベッドの上で正座をしていたのだ。当然、既に着替えは終わっている。服はあのバックに入っていたのだろう。
すぐにさっきの失態を思い出し、俺はすぐに土下座したのだった。
「えと、不可抗力なのはわかっていますから、もういいです」
「フェイト!? そういうのはそんなに簡単に許していいもんじゃないよ! もっと怒ってやらないと!」
「ア、アルフ………」
さすがに俺がどうこう言える立場ではない。たとえ彼女のことをマセガキと思おうが2度目のけりは理不尽だと思おうが、結局悪いのは俺なのだから。俺は二度とこんなことにならないようにと誓いを立て、二人の怒り(というかアルフのか)が納まるまで土下座し続けた。
「はあ。まあ、本人が起こってないのにあたしがずっと怒ってても仕方ないか。もういいよ」
アルフの許しを得て顔を上げるが、「ただし!」と、アルフが怒りの形相で迫る。
「次同じようなことがあったら許さないよ!!」
「……わ、わかった」
有無を言わせぬ迫力があり、俺はただ頷くことしかできなかった。
俺の返答を見て、アルフは大きく息を吐きながらテスタロッサの隣に座る。
「さて。まず、あんたの目的は何なんだい? フェイトを倒したり、その後に治療したり、行動の意味がよくわからないんだけど?」
「テスタロッサから聞いてないのか? テスタロッサのことを知りたいから話をしたいと思っただけだ」
視線をテスタロッサに向けると、彼女は真っ赤になって顔を伏せた。
………まださっきのが残っているのか。
気まずくなり目線をアルフに戻すと、彼女はポカンとしていた。
……俺はそんなにおかしなことを言ったのだろうか?
「……あー。それはフェイトに気があるってことかい?」
「は?」
「ア、アルフ……!」
アルフの突拍子もない質問に思わず声が出る。さらに顔を真っ赤にして慌てだすテスタロッサを見ながら俺は自分の発言を思い返してみた。
俺はこう言った「テスタロッサのことを知りたいから話をしたいと思っただけ」と。これを俺の思考とかなしに何も知らない第三者の視点で見てみる。
………
ああ、なるほど。
「アルフ。そう言う意味じゃない。そもそも会って間もない女の子を、それがたとえどんな美少女だろうと、いきなり好きになるなんてこと俺はない」
言ってる間、急にテスタロッサが残念そうな顔をしたりまた真っ赤になって顔を押さえたりと忙しそうにしていた。
……さっきからテスタロッサはどうしたんだ?
「テスタロッサ、やっぱりどこか具合が悪いんじゃないか? さっきから挙動不審だし」
「え!? いや、えっと、その………うう~」
今の流れで何故睨まれる……。
「あ~、そういうこと」
アルフはどこか得心がいったというように肩を落とす。正直何もわからないので説明してほしいが、アルフにその気はなさそうだった。
「じゃあ、なんでフェイトのことを知りたいと思ったんだい?」
当然の疑問だろうが、テスタロッサには説明したはずなんだがな。
「テスタロッサの態度から、ジュエルシードを集めているのは彼女の本意ではないように思えたからだ。だとしたらなぜジュエルシードを集めようとしているのか気になった」
「っ……」
無意識にテスタロッサは視線を落とす。
「そりゃそうさ!!」
そんな主人の態度に反して、アルフは興奮を抑えきれないように叫んだ。
「フェイトみたいな優しい子が、好きで誰かを傷つけるようなまねするかい! あの鬼ババに言われて仕方なく…」
「アルフ!!」
そんな使い魔の言葉をテスタロッサが遮った。はっ、としてアルフがテスタロッサを見るが、彼女は視線を合わせず俯いたままだ。
「ご、ごめんよ。フェイト」
「……うん」
アルフの謝罪に、テスタロッサはちゃんと答えた。あの時のように感情が暴走することはなかったようだ。
重い空気が場を包む。
「…さっきも言ったが」
だから俺はさっきと同じ言葉を紡ぐ。
「俺はお前のことも、お前の家族のこともよく知らない。だから、今はお前の言葉を信じる」
テスタロッサは、わずかに顔を上げて俺を見た。その表情は、どこかほっとしたようで、だけど、その眼はどこか悲しそうなままだった。
ふと、時計を見ると6時を回ったところだった。テスタロッサと戦ってからもう半日以上が経過し、すでに朝を迎えていたようだ。
「さて、この話は一旦やめよう。飯の用意ができてるんだ」
「飯?」
アルフは首を傾げ、テスタロッサは一瞬、ピクリと反応した。
「ああ。時間は少し早いかもしれないが、二人とも腹も減っているだろう」
テスタロッサは寝ていたとはいえ昨日の夕食も食べていないし、アルフもおそらくテスタロッサを探していただろうからろくに何も食べていないだろう。
「とくにテスタロッサは、さっきお預けにしてしまったからな。もうかなり腹減ってるんじゃないか?」
「そ、そんなこと……」
クゥー………
気の抜けるような音が、部屋に響いた。
「「「………」」」
俺は少し呆れたように、アルフは温かい目でテスタロッサを見ていて、テスタロッサは今まで以上に真っ赤になって顔を俯かせていた。
「あー、なんだ。せっかく温めなおしたんだ。だから食べてくれないか?」
「………」
テスタロッサは答えなかったが、コクリ、と頷いてすぐに立ち上がる。そんな風に恥ずかしさをごまかそうとするテスタロッサは、ちょっと可愛かった。
「うま!」
「おいしい!」
「そりゃどうも」
どうやら俺のシチューは好評なようだ。
やはりアルフもおなかが減っていたのかすごい勢いで食べている。テスタロッサもあの性格にしては速いスピードで食べている気がした。
というか、敵かもしれないやつの作った飯を何の疑いもなく食べるとか……、それだけ信用してもらえたということなのか。それとも単に天然なのか。
「……それで、結局ジュエルシードを集める理由は母親から頼まれたから、であってるな」
「っ!」
俺の問いにテスタロッサは動きを止める。しかしアルフは「あ~」と頭をかいて、確かめるようにテスタロッサに呼びかけた。
「フェイト。もうこっちの事情を説明してもいいんじゃないかい? こいつなら言えば協力してくれるかもしれないしさ」
「で、でも……」
アルフの提案にテスタロッサは渋る。しかし俺は先に「すまん」と二人に声をかけた。
「俺はあの白い魔導師の知り合いなんだ。できれば敵対したくはない」
そう言うと、途端にアルフは眼を鋭くして俺を睨む。
「なんだい。結局は向こうの味方か」
「っ、 」
テスタロッサが息を飲むのが分かる。が、俺はすぐに首を振った。
「勘違いするな。敵対したくないだけだ。基本的に向こうに協力するつもりもない」
「じゃあ、あんたはこの件にはこれ以上関わらないってことかい?」
先ほどの威嚇を収めて、アルフは首を傾げる。
「いや、場合によっては今後も関わっていくつもりだ。特に、お前たちやあいつらの命に関わるような何かがあったときは、必ずな」
アルフはその言葉に目を細めて笑った。
「ふ~ん。随分自信があるじゃないさ。私らでどうにもならないことでも、自分ならどうにかできるってのかい?」
確かにさっきの言葉は傲慢なようにも聞こえるか。でも、
「そんなことは思ってないさ。でも、二人よりは三人の方が強いだろ? それにもしそれでもダメだったら、俺が命をかけて二人を逃がすだけさ」
「ちょっ、そこまで……。はあ、あんたがどんな奴か、わかってきたよ」
そう言うアルフは、どこか呆れたように笑った。そしてそれは、同時に、仕方がないな、と諦めたようなものにも感じられる。そんな、こちらのことを気遣ってくれる優しさをもった彼女に俺は「お前のことも、な」と答えた。
「……――も、――だ……」
「?」
ふと、テスタロッサが何かを言ったような気がした。だが、テスタロッサは顔を俯かせて、目を合わせないようにしている。
「テスタロッサ。何か言ったか?」
「い、いえ! なんでもない、です…」
慌てたように否定するが、すぐに言葉から元気がなくなっていく。気になり、続けて問おうとすると「ああ、ところでさ」と、アルフが話しかけてきた。テスタロッサのことは気になるが、無視するわけにも行かないので、そちらに意識を向けることにした。
(アルフ、ありがとう)
私は自分を気遣ってくれたアルフに心の中でお礼を言った。
二人は「そういえばまだちゃんと名前聞いてなかったね」「ああ、そういえばそうだな」と話している。そんな二人を見ながら、私はさっき思わず口にしたその一言を思い返した。
(……あの子も、なんだ……)
命に関わることがあったときは助ける。その一言はすごく嬉しくて、心が暖まるのを感じた。でも、同時に、あいつら、という言葉が、胸にチクリと刺さったのだ。
(私、どうしちゃったんだろう)
この人の言葉や一挙一動に心が動く。嬉しくなったり、恥ずかしくなったり、怒ったり、苦しくなったり。だけど不思議と、そこに不快感はなくて。むしろ、心地よいと感じてさえいた。
(最初に会った時は、強敵が現れたとしか思わなかったのに)
今でも、彼の戦闘技術はすごいと思う。予測できない魔法。動き。そして感の鋭さ。どれをとっても、今の私では敵わないだろう。だけど今では、その事実すらどうでもいいと感じてしまう。それほどに私は、彼を受け入れていた。
何が自分をそれほどまでさせるのか。出会ってからまだ数日しか経ってない、時間にしたら一日もなってない彼に、どうしてこんなに惹かれるのか。
ふと、彼を眺めてみると、そこにはこれまでと同じ無表情な顔がある。整った顔立ちで少し長めの黒髪。そして、そこだけははっきりと感情の分かる、優しげな瞳。今の彼からは、戦いの時に見せるような強さはほとんど見られない。そんな彼に感じるのは、やはり敵と向かい合ったときに感じるのとは真逆の感情。
「ん? どうした?」
と、私の視線に気付いた彼が私を見る。そこからは、ずっと一緒にずっと居たいと、つい思ってしまうような、そんな心地よい暖かさしか感じられない。
「いえ、なんでも」
咄嗟にそう否定してしまうが、私はすぐに首を振った。
どれだけ考えても、今は答えが出ない。だけど、この気持ちはきっと悪いことじゃないから。だから、
「あの、聞いていいですか?」
だからもう少し、この気持ちに素直になってみよう。
あれから少し話して、互の今後のことを話し合った。大体の方針は変わらない。ただ、手伝って欲しい時はテスタロッサたちの方から連絡したいとのことだ。無論、なのはたちと戦う場合を除いて、俺はそれを了承した。
そうして一息ついたところで、唐突にテスタロッサが聞いてきた。
「そういえば、あの、あなたはどうやって魔法を学んだんですか?」
「ん? なぜそんなことを?」
咄嗟に聞き返す。が、言ってからすぐに理由を察することができた。
「私は、たった3年とはいえリニス……、えっと魔法の先生から魔法を習ってきました。その間にいろんな魔法の本を読んだし、先生に聞いてきましたけど、あなたが使った魔法はどこにも載ってなかった。それも一つや二つじゃない」
「そういえばフェイトから聞いたあんたの魔法は確かにあたしも聞いたことのないものばっかりだったね。それにあのデバイスも気になるんだけど。………あんた、実はミッドチルダ出身だったりしないかい?」
テスタロッサの説明にアルフも乗っかってくる。どちらも予想通りの理由だった。
(さて、どうするかな)
テスタロッサの問いにはすぐに答えることが出来るが、アルフの問に対するそれらしい答えは考えてなかった。慌ててマルチタスクを使ってそちらの理由を考え、同時にテスタロッサに答えた。
「そうだな。まず魔法に関してだが、載っていないのは当然だ。あれはすべて自作した魔法だからな」
「「自作!?」」
二人揃って目を見開いて驚いた。そこまでされるとこっちまで驚いてしまう。
「魔法の基礎はこのデバイス、アイギスが教えてくれた」
そう言って首から下げて服の中に入れていたペンダント、アイギスを取り出す。
『やっと私も会話に混ざれますね。初めまして、マスターのデバイスのアイギスです』
………混ざりたかったのか。
「へえ。随分感情豊かなデバイスだね」
『ふふん♪ 私は規格外に高性能な最新機種ですからね!』
感心したようなアルフの言葉にアイギスは胸を張って答える。いや胸も何もないがそんなイメージがあっている。
とりあえずそんなアイギスは放っておいて……
「さっき言った通り、こいつに魔法の基礎を習って、その後は体力作りと戦闘訓練。そしてひたすら魔力制御技術の向上を目指して特訓してきたんだ。魔法の自作もその一環だ」
「でも、自作なんてできるものなんですか?」
テスタロッサは首をかしげる。当然の疑問だろうな。
「この魔法っていうのは術式によって成り立っている。つまりその式を変えたり、付け加えたりすればいいんだ。それを頭でやるかそれとも何か媒体を使うかは自由だが、術式さえ組み立てられれば、それは魔法となる」
言いながら、シューターの術式を表示する。
「例えば、このシューターの術式を変えようと思う。テスタロッサはこのシューターの性能を見て、どうすればもっと自分に合うと思う?」
「え?」
突然の質問にテスタロッサは戸惑うが、すぐに術式からそのシューターがどういうものかを理解しようとする。
「えっと、本にあるような基本的なシューター、ですね。私なら……、もっと速いほうがいいです。誘導ができなくてもいいから、もっと速く飛ぶシューターの方が」
テスタロッサの意見に俺は頷くと、術式を改変し始めた。
「誘導の必要がないのなら、術式を使い手が制御する必要はない。だからまずそこはいらない。代わりに速度と威力を術式発動時に込める魔力量で変化するように新たな法則を術式に入れる。参考になる術式があればそれを応用してな。さらに形状もより速い速度を維持できるように変えよう。このあたりの設定は楽にできる。あとは微調整を重ねて………」
たまにテスタロッサの顔を見て、理解しているかどうかを確かめながら進める。説明しながら淡々と術式を新しくしていく俺をテスタロッサは唖然と見ていた。
「……と、これで大体終わりだ。あとは実際に試して調整を重ねればいい」
出来上がった新たなシューターを見せながら、俺はテスタロッサに向き直る。
「それほど難しくもないだろ? 慣れてくれば一から術式を考えることもできるようになる」
「な、なるほど…」
納得したように頷くも、やはり微妙な顔をしたままだった。無論俺だって直ぐにこんなことができたわけではない。何度も試行錯誤して慣れてきただけだ。だからこんな説明を聞いてもテスタロッサはピンと来ないのだろう。
「でも普通は一から魔法を作ろうなんて奴いないっての。ほんと変わった奴だねえ」
アルフがからかうように言う。
まあ、そう思われても仕方がないか。魔法がある。才能もある。なのに魔法の本はなく。アイギスも基本的なものしか持っていない。とくれば、自然とこの考えに至るものだとも思うが、それを言ったところで意味はない。
「それで? 魔法のことはわかったけど、あんたは結局ミッド出身なのかい?」
続いて出た質問に俺は、しまった、と表情に出さずに動揺した。
そうだった。この不自然な状況にある俺がどこに人間か。その答えを俺はまだ用意できていないのだ。まさか転生者であることばらすわけにもいかないだろうし。
そんな俺の様子を察してか、アイギスが代わりに話しだした。
『いえ、マスターはこの世界の生まれですよ。ただ母上がミッド出身で、この世界で父上と出会い、こちらに移住したんです』
「へえ」
『母上は優秀な魔導師であり、デバイス・マスターでもありました。私も母上によって作られ、マスターのデバイスとして渡されたんです』
とっさの思いつきにしてはしっかりしている。調べたりしない限りこれといった矛盾もない。
(もしかして前から考えてくれていたのか?)
アイギスの説明を聞きアルフがさらに質問しようとすると、またすぐにアイギスは「ストップです」とそれを止めた。
『これ以上はプライベートということで。あまり聞かないてもらえると助かります。ですよね、マスター?』
「ん、そうだな」
あまり追求されるとボロが出かねないからな。早めに切っておいたほうがいい。
「ふ~ん。ま、別にいいか」
どうやらアルフも引き下がってくれたようだ。心の中でため息をつく。
(今回は上手く誤魔化せたが、もしかしたらまた同じような事が起こるかも知れない。高町家には海外の仕事と言っているが、早めにそのあたりの”設定”を考えておかないとな)
そう思いながらも、みんなを騙していることに心が痛んだ。
できることならそんなことはしたくない。
(だけど俺に親がいないことを、ずっと一人でいることを知られたら、余計な重さをみんなに背負わせることになりかねない)
少なくとも俺がこの街に来てから接してきた人たちは背負ってしまうだろう。皆、元の世界からは考えられないくらいいい人たちばっかりだから。
「……? あの、どうかしましたか?」
心配そうにテスタロッサが声をかけてくる。いつの間にか顔が暗くなっていたようだ。
「いや、なんでもない。それよりもシチューのおかわりはいるか?」
空になっていたテスタロッサたちの食器を確認し、ごまかしも含めて提案する。
「お! もらうよ!」
「あ、じ、じゃあ、私も…」
すると余程気に入ってもらえたのか、アルフはすぐに、テスタロッサも少し顔を赤くしながら食器を渡してきた。
「すぐに持ってくる」
食器を持って立ち上がり、シチューの鍋のある台所へ向かう。
……そうだ。あの二人には、皆には笑顔でいてほしい。
だからみんなは余計なことを知らなくていい。誤解からくる重さも、罪の意識からくる重さも、俺が背負っている重さも、全部、知らなくていい。
それは全部、俺が背負うものだから。
「それじゃそろそろ行くよ。久しぶりにゆったりできて、良かったよ」
「えと、お世話になりました」
三杯目のシチューを食べ終わった後テスタロッサたちはすぐに出ていくことになった。アルフはともかく、テスタロッサもそんなに食べるとは思わなかったがそれだけお腹が減っていたのだろう。
ふと、忘れていたことを思い出しテスタロッサに声をかける。
「あの時のジュエルシードだ。俺には不要なものだからな」
「あ、ありがとうございます」
ジュエルシードも渡し、後は見送るだけだ。
「じゃあな。テスタロッサ、アルフ」
『気が向いたら遊びに来てくださいね』
おいアイギス。勝手に何を言っている。
「ああ。そうさせてもらうよ」
そして承諾するのかよ。
「………? フェイト?」
いつまでたっても何も言わない主人に、アルフが首をかしげる。なぜかテスタロッサは黙って何か不満そうな顔をしていた。
「どうしたテスタロッサ?」
俺からも呼びかけてみるが、ピクっ、と反応するもそれ以上動かない。一体どうしたのかと心配になってきたところで、テスタロッサは少しだけ顔を上げて上目遣いで俺を見た。
「………あの、フェイトって呼んでもらえませんか?」
やっとの思いで放たれたその言葉に、俺は僅かながら驚いた。
恥ずかしそうに、しかし懇願するように放たれたその言葉はどこまでも弱々しくて。だけどあのジュエルシードと母の願いしか頭になかった少女が今、初めてそれ以外を求めているのだ。
そんなテスタロッサの様子が、ふと2年前のなのはと重なる。あの時と同じで、期待と不安の混じった必死な顔。
自然と、諦めに近い溜息が出た。
(そんな顔されたら、断る事なんてできないな)
「ああ。わかった」
「ほんとですか!?」
テスタロッサ……フェイトは本当に嬉しそうに笑った。
「ああ。別に断る理由もない」
これは嘘だ。2年前と同じで、本当は断るべきだと思っていた。だけどやはり2年前と同じで、そうするべきではないとも思ったのだ。
「だからフェイトも敬語はやめてくれ。俺のことも優雨でいいから」
「あ、うん。わかり………わかった。優雨」
微笑むフェイトを見ると、なぜかどこか安心する。きっと、ずっと気丈に振舞っていたのを知ったから。そんな風に力の入っていない彼女に安心するのだろう。
………ところでアルフ。その生暖かい笑みは何だ。なにか無性にイラッとくるんだが。
「むふふ。いい雰囲気ですなあ」
「あ、アルフ!?」
すぐにアルフがからかい出し、フェイトは真っ赤になって驚く。
すごく平和で、楽しい光景。
(……護らないとな)
ただ静かに、何度も決意した思いを繰り返す。今度こそ、絶対に、と。
「さて、それじゃ。そろそろほんとに行こう、フェイト」
「うん。それじゃあね、優雨」
控えめにフェイトは手を振る。その小さな、簡単に折れてしまいそうな手に、俺は軽く手を上げて応える。
「ああ。がんばれよ、フェイト」
二人が家の門を出て、塀の影に隠れるまで俺はそこにいた。
決意は変わらない。むしろさらに強くなった。俺たちは互いの名を呼び合うようになり、少なくとも赤の他人ではなくなったのだ。
これから先も、きっと何度も出会い、一緒に時を過ごすようになるだろう。
その中で、彼女たちが笑っていられるように。俺は俺にできることをやろう。
新たな決意とともに俺は家の中へと戻った。
どこかで誰かが、怒って(嫉妬して)いるような、そんな気がした。
「いきなりどうしたんだい? フェイト(ニヤニヤ)」
「べ、別どうもしないよ? ただ、アルフは名前で呼ばれてるのに私だけ苗字なのがなんか嫌だったというか………」
「といっても、あたしは「アルフ・テスタロッサ」でなくて、ただの「アルフ」だから当然じゃない?」
「あ。そ、そっか。でも、なんか、私も名前で呼んでほしかったというか………うう」
「ニヤニヤ」
フェイト
沈みかえる教室。どす黒いオーラは教室の外まで漏れ出していた。
そんな中、少女は久しぶりにある人と会話をする。
次回「2年ぶり」
フェイト「なに、この次回予告………?」
作者「のり?」
フェイト「え、なんの?」
作者「前書きの?」
フェイト「それを私にさせなくたって………」
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優雨「三ヶ月か」
作者「はい」
フェイト「………」
作者「前書きでも申し上げましたが誠に申し訳ありませんでした!」
フェイト「はあ。まあ、あんまりしつこいのもアレだし、話題変えようよ」
優雨「そうだな。悪かった」
作者「了解。ではまずは……、なんか気が付いたら修正前の2倍以上の文量になってた」
フェイト「流れ自体は特に変わってないんだけど、随分変わったよね」
作者「状況を整理して想像し直しながら書いてたらこうなった」
優雨「今までも文量は増えていたが、今回は別格だな」
作者「もしかしたらこの先も増えるかも」
フェイト「ほどほどにね。これ以上更新が滞るのもどうかと思うし」
作者「了解です。気が付けば去年の今頃から修正し始めたんだよなあ」
優雨「いい加減本編を進めたいな」
作者「もう少しっ、もう少しだけお待ちを!」
優雨「……はあ」
作者「では、そろそろこの辺で」
優雨「そうだな。もしまだこんな小説を読んでくれているのなら、もう少し付き合ってやって
くれ」
フェイト「次の投稿とかはもう不定期ですけど、気長に待ってくれたら嬉しいです」
作者「ではまた!」ノシ