魔法少女リリカルなのはEX・S 過去にとらわれた転生者   作:レイレナード

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気が付いたら火曜日だった!?
月曜日を日曜日だと思っていました。すみません。

あ、先週言ってたパソコンはやはり修理に出すしかなさそうです。Windowsを更新しても治らなかったし。
その際Dドライブに移せばデータが消えないと聞き、安心してWindowsを更新したらデータがきれいに消去されましたハッハッハッorz


Episode12 時空管理局

 「あの、お願いがあるんですけど………」

 

 アースラと言う船に転移して、仮面の子が担架に乗せられて運ばれていった後、私はクロノくんにそう切り出した。

 

 「?なんだ?」

 

 クロノくんが振り向いて聞いてくる。その顔は少し不思議そうに見えた。それはそうだろう。連れてこられてまだ何も話していないのに、いきなりお願いがあるなどと言われたのだから。

 

 でも、私は頼まれたから。

 

 「今からするお話、あの子の傍でしたいの」

 

 私はアイギスに、傍にいてやってほしい、って頼まれたから。それに私は、はい、って答えたから。だから、応えなければならない。それに私自身、彼の傍にいたいと思うか。

 

 クロノくんは、少し考えるようなそぶりを見せたが、

 

 「………わかった。僕から艦長にそう言っておこう」

 

 そう答えてくれた。

 

 「ああ、それと、バリアジャケットは解除しておいてくれ」

 

 あ、そっか。

 

 「はい」

 

 すぐにバリアジャケットを解除してレイジングハートを待機状態にする。

 

 それを見届けてから、次にクロノくんはユーノくんを見て言った。

 

 「君もだ。その姿が本当の姿じゃないんだろ?」

 

 「?ああ、そっか。ずっとこのままだったから忘れてた」

 

 「?」

 

 本当の姿じゃないって、どういうことなんだろう。

 

 そう思いながらユーノくんを見ていると、ユーノくんが突然光り出して、その光が少しずつ大きくなった。

 

 「え?え!?」

 

 その光が消えた時、そこには私と同じくらいの背丈の男の子が立っていた。

 

 「なのはにこの姿を見せるの、久ぶりだよね」

 

 そう言ってくる男の子。ってことはやっぱりユーノくん!?

 

 「ユーノくんって、普通の男の子だったんだ!?」

 

 「え?えええ!?」

 

 私の思わず言った言葉に、ユーノくんも動揺した。

 

 「僕は最初にこの姿でなのはにあったと思うんだけど………」

 

 ユーノくんはそう言うけど、私は大きく首を振ることで否定する。最初にあった時からフェレットだったよ!!

 

 そんな慌てる私たちをしり目に、クロノくんはどこかに通信していた。無視なんてひどいと思うの!

 

 「僕にどうしろと………」

 

 心を読まれた!?

 

 ………

 

 

 

 「そうだ。君たちは、あの少年の知り合いか?」

 

 唐突にクロノくんが聞いてくる。

 

 「ええと。素顔を見たことはないし名前も知らないけど、いつも助けてくれてたんだ」

 

 「………そうか」

 

 私の答えを聞くとクロノくんは手を組んで何か考え込んでしまった。そんなクロノくんに不思議に思っていると、向こうから女の人が二人来るのが見えた。一人は緑色の長い髪をポニーテールでまとめている女の人。もう一人は薄茶色で短髪。最初の人よりも若い人みたい。

 

「わざわざありがとうございます。艦長」

 

「いいえ。気持ちはわかるから」

 

 クロノくんがその人たちに気付いて前に出る。それに緑の髪の女の人が答えた。この人が艦長さんみたい。

 

 「それじゃあ、自己紹介だけ済ませちゃいましょうか。この船の館長を務めています。リンディ・ハラオウンです。よろしくね」

 

 「あ、はい!高町なのはです!こちらこそよろしくお願いします」

 

 艦長さん――リンディさんの突然の自己紹介に少し驚いたけど、何とかちゃんと自己紹介できた。

 

 続いてクロノくんと薄茶色の髪の人が前に出る。

 

 「改めて、クロノ・ハラオウンだ」

 

 「エイミィ・リミエッタです。クロノくんの補佐をしてま~す!」

 

 「ユーノ・スクライアです」

 

 最後にユーノくんが自己紹介する。

 

 「さて、それじゃああの子の医務室に行きましょうか。まだ治療中でしょうから、邪魔にならないようにね」

 

 「はい」

 

 リンディさんに連れられてさっそく医務室へ移動する。

 

 あの子、大丈夫かな?

 

 ………そう言えば、まだあの子の名前聞いてないや。なんていうんだろう?

 

 

 医務室には6つほどのベッドがあり、その一つに6人ほどの白衣を着た人たちが集まっている。たぶん、そこのあの仮面の子がいるんだろう。

 

 リンディさんは一度そこに近づき、何かを聞いていた。それをずっと見ていると、突然驚いたような顔になり、しかしすぐにさっきまでの優しそうな顔に戻ってこちらに戻ってきた。

 

 同時に集まっていた先生たちも席を外していく。

 

 「治療は終わったそうよ。峠は越えたって」

 

 「本当ですか!?良かった~」

 

 安心した。ユーノくんが、命の危険がある、何て言うから正直怖かったけど、本当に良かった。

 

 「あれだけの怪我でもう?そんな………」

 

 ユーノくんは腑に落ちないって顔をしているけど、大丈夫だったのなら別にいいと思う。それにこの前フェイトちゃんを通してお礼を言ったけど、やっぱりちゃんと直接言いたいしね。

 

 「さ、もう大丈夫みたいだし、こっちで話しましょう」

 

 「あ、はい!」

 

 「わかりました」

 

 リンディさんに言われるがまま、私はあの子の寝ているベッドに近づく。

 

 その時、ふと気付いた。寝ているあの子に仮面が付いていないことに。一度気が付くとどうしても気になって、私はあの子の顔を見るように近づいた。

 

 そして、

 

 「………え?」

 

 見てしまった。その顔を。

 

 ずっと前に私を助けてくれて、そして今も私を支えてくれている。小学1年の春に出会った、とても強くて、優しくて、弱くて、もろくて、とても寂しそうな背中をした、私の大切な人。

 

 「優雨………くん?」

 

 いつの間にかベッドの、優雨くんのすぐわきまで来ていた。優雨くんは少しだけつらそうな顔をして眠っている。

 

 あの仮面の子が、優雨くんだった?

 

 そんな………ううん。本当はずっと前から気付いてた。

 

 だけど信じられなかった。信じたくなかった。

 

 優雨くんにはかかわってほしくなかったんだ。

 

 だって、優雨くんはとても脆そうで、いつだってその背を見るといつの間にかどこかに行ってしまいそうに思えていた。戦いなんかに巻き込まれてしまったら、本当にいなくなってしまいそうで。

 

 そして、本当に命の危険にまでさらされて………。

 

 「優雨くん………っ」

 

 何かに動かされるように、私はその場に膝をついて優雨くんの手を握っていた。その時、ほんの少しだけど優雨くんの辛そうな顔が和らいだ気がした。

 

 そんな彼がとても愛おしく思えて、だけど、やっぱり傷ついている彼が見ていられなくて。

 

 私は顔を伏せて、声を押し殺して、少しだけ泣いた。

 

 

 

 「なのは?」

 

 呼びかけても、なのはは返事をしなかった。あの仮面の人の素顔を見てからだ。それを見た瞬間から、なのはは周りの声が聞こえていないみたいにふらふらとその人に近づいて行って、今は声を押し殺して泣いている。

 

 「?これは、どういうことだ?」

 

 執務官――クロノが聞いてくるけど、僕にわかるはずがない。さっきなのはが、優雨、って言っていたから、それが名前だとは思うんだけど。っというか、なのはは彼を知っていたのか?

 

 「知り合いだった、ってことかな」

 

 それも、とても大切な。

 

 「そうか」

 

 そう言うと、クロノはもう何も聞いてはこなかった。

 

 声を押し殺して泣くなのはが痛々しくて、しばらくの間、ここにいるだれもが声を出せずにいた。

 

 

 

 

 ………

 

 真っ白い空間にいた。

 

 ここに来るのは久しぶりだ。

 

 いや、もしかしたら別のところなのかもしれないな。

 

 だけど、ここにいるということは、俺は死んだのだろうか?

 

 「いいえ。あなたは死んでいませんよ」

 

 この声を聴くのも久しぶりだな。心を読まれるのも。

 

 「まあ、私にとってはそうでもないんですけどね」

 

 そうなのか?まあ、お前は神だからな。それもそうか。

 

 それで?俺は何でまたここにいるんだ?

 

 「これはあなたの夢です。優雨はもともとこの世界の人ではないので、たびたび魂の一部が世界の境に来ることがあるんです。ここは、前とは違う場所ですが、あの時と同じく、世界の狭間です」

 

 つまり大怪我したせいで少し死にそうになったから、一時的に魂が肉体を離れてここに来たってことか?

 

 「まあ、大体そんな感じです。基本的にこういうのは世界が決めることなので、私もよくわからないんですけどね」

 

 相変わらずいい加減だ。まあ、別にいいけどさ。ところでお前の姿が見えないのは何でだ?

 

 「………」

 

 何故そこで黙る?

 

 「まあ、いろいろあるんです。いろいろ」

 

 そうか。ならいい。

 

 「………随分あっさりしてますね」

 

 ここで濁すってことは言いたくないんだろ?別に無理して聞くことでもないし、何よりお前が言いたくないって言うなら、言えるようになるまで待つさ。

 

 「………はあ。やっぱり優雨は優雨です」

 

 どういう意味だ?

 

 「自分で考えてください」

 

 ?

 

 「はあ。まあそれはそうと。早く起きてあげてください。彼女が泣いてますよ」

 

 彼女?………なのはのことか?

 

 「さっきまでの状況で、他に候補がいますか?」

 

 ………泣いてるのか?

 

 「ええ。泣いています」

 

 そうか。

 

 ………また、泣かせちまったのか。

 

 「だから、早く行ってあげてください。今彼女の悲しみを止められるのは、あなただけなんですから」

 

 ………

 

 「ほら!早く!」

 

 ………わかった。"またな"、プリエル。

 

 「………はい。"また"、です。優雨」

 

 

 

 

 「………っ」

 

 「!!優雨くん!?」

 

 「「「「え!?」」」」

 

 目を覚ますと、体を襲う痛みに気付いて思わず声を漏らしてしまった。それに気づいたなのはが大声を上げて、さらにその後ろから驚いて声が聞こえる。

 

 「………少し声を抑えてくれ。傷に響く」

 

 「優雨くん!!」

 

 わりと本気で言ったのだが、聞こえていなかったのか、なのははまた大声を上げてきた。しかも同時に抱き着いてきた。

 

 いや、心配してくれるのは嬉しいのだが、

 

 「っ!!」

 

 俺は今傷だらけだと言っている!

 

 強く抱きしめてくるから痛みが半端ないぞ。声を出さなかった俺は称賛を受けてもいいはずだ。

 

 「な、なのはその辺で、彼すごく痛そうだから」

 

 「あ!ご、ごめんなさい!!」

 

 俺が痛みを我慢するような顔をしたことに気付いたのだろう。なのはを止めてくれた。

 

 しかし、助けてもらってなんだが、こいつは誰だ?

 

 「ああ、とりあえず皆落ち着いてくれ。まずはもう一度自己紹介しておこう」

 

 こいつは………ハラオウンだったな。ハラオウンとなのはは知っているが他に知らないやつが3人もいる。自己紹介してくれると言うならありがたい。

 

 

 

 「………なるほど。ロストロギア、ジュエルシードを見つけたのはあなただったんですね」

 

 リンディ提督がユーノに向かって言う。

 

 あれから自己紹介をした後、簡単に彼らの組織、時空管理局に関することを聞いた。時空管理局とは、主として魔法技術や時空関連の技術などを悪用した犯罪の捜査・摘発を行う機関らしい。もちろんその中には何種類もの部署が存在しており、管理世界から管理外世界に至って、様々な事象に対処しているそうだ。なお、管理世界とは時空管理局と交流があり、様々な世界と行き来が可能となったことを万人が知っている世界のことで、管理外世界とはそれ以外の世界、つまり自分たちの世界以外にも世界があることを知らず、管理局のような組織とも交流がない世界のことだ。

 

 なお、リンディ提督と名前で呼ぶのはハラオウンとかぶるからだ。結局ハラオウンのこともクロノと呼ぶことした。で、自分だけ苗字は嫌だと言うことでリミエッタさんもエイミィさんと呼ぶこととなり、最後にならば自分もということでスクライアもユーノと呼ぶことになった。

 

 リンディ提督たちはこの辺りを航行していた輸送船が突然消息を絶ったとかで調査に来たのだそうだ。管理局についての説明を聞いた後、これまでの経緯を話してくれと言われたのでまずユーノが、途中からなのはも加わって、自分達がしてきたことと事情を簡単に話したのだ。

 

 その中には俺の知らなかった事実も含まれていた。ジュエルシードはユーノが見つけたもので、それを輸送してもらっている途中でその船が事故にあい、この世界のこの町にジュエルシードが降り注いでしまったというのだ。ユーノはそれを知り、ジュエルシードを回収するために一人でこの町に来たのだそうだ。

 

 「立派だわ」

 

 リンディ提督は一言ユーノを褒める。

 

 自分が掘り起こしてしまったものなのだから、それが何か問題を起こしたらそれは自分のせいだと思い、自分でどうにかしようとする。責任感と言う意味でなら、確かに立派と言える行為だ。しかし、

 

 「だが無謀すぎる」

 

 クロノがバッサリと切り裂く。

 

 同感だ。危険だということが分かっているのだから、急いで対処しようと思うのは良い。だが、こういった組織――管理局があることが分かっているのなら、まず優先すべきはそこに連絡することだ。何せ、ジュエルシード単体に関する知識はユーノのほうがあるかもしれないが、こういった事態全般に対処する知識と経験は管理局の方が上なのだから。

 

 ユーノもそう思ったのか、少し顔を伏せて落ち込んでいる。

 

 と、そこでなのはが軽く手を上げた。

 

 「あ、あのロストロギアって………?」

 

 話題をそらすことでユーノを庇ったのか?

 

 そう言えば、さっきリンディ提督はジュエルシードの前にロストロギアと言っていたな。ロストロギアについての説明は俺も求めたい。

 

 「ん~、遺失世界の遺産って言っても、わからないわよね」

 

 ………なるほど、大体理解できた。

 

 「ん?まさか、さっきのだけで理解しちゃったの?」

 

 横から聞こえてきた声に振り向くと、エイミィさんが俺を覗き込むように見ていた。

 

 そんなに顔に出ていたのか?

 

 「ああ。時空管理局についての説明と合わせれば、大体予想できる」

 

 「あら。それじゃあ代わりに説明してくれるかしら?」

 

 リンディ提督の突然の申し出に正直戸惑うが、なんだかおもしろそうにしているのが癪だ。いいだろう。

 

 「わかった。遺失世界、つまり何らかの理由で滅んでしまった世界の事だ。その中には自らの科学や力で滅んでしまった世界もあるだろう。しかし滅んだとしても、何かしら残るものはある。その中でも様々な面から見て危険だと判断された遺産の総称、それがロストロギアだ。そう俺は予想したが」

 

 俺の説明になのはは納得の顔をし、他の人は驚いた顔をした。なのはは歳のわりに理解が早いからな。今の説明でもわかるだろう。

 

 「よくあれだけでそこまで理解できるわね。本当に次元世界の知識はなかったの?」

 

 感心したようにリンディ提督は言うが、

 

 「あれだけでも十分理解できる。遺失世界の意味とあんた達管理局の仕事を知っていればな」

 

 遺失世界の遺産、だけでは滅んでしまった世界に残された遺産としかわからないが、管理局が重要視して探しているものだというのなら、それが危険なものだと絞ることができる。何せ、管理局の仕事は言わば世界の守護だからな。

 

 「………なるほどね」

 

 リンディ提督も納得したようだ。………いや、俺の説明にではなく、何か別のことに納得したように見えたな。なんだ?

 

 俺の疑問をよそに、リンディ提督は真剣な顔で説明し始めた。

 

 「優雨さんの言う通りよ。私たちが正しく管理していなければならない品物。そして、ジュエルシードもその一つ。あれは次元干渉型のエネルギー結晶体。流し込まれた魔力を媒体として次元振を起こすこともある危険物」

 

 次元振?また聞きなれない言葉が出てきたな。

 

 なのはも同じように首をかしげている。

 

 「君とあの子が衝突した時の振動と爆発。あれが次元振だよ」

 

 「!」

 

 クロノが説明してくれた。なるほど、あれか。思い返すと同時に、なのはとフェイト、二人の記憶を見てしまったことを思い出した。そう思うと、フェイトのことが気になりだす。無理だけはしないでほしいが、無理だろうな。

 

 俺がフェイトのことを考えている間も、クロノの説明は続く。

 

 「たった一つのジュエルシードでも、あれだけの威力があるんだ。複数個集まって発動した時の威力は、計り知れない」

 

 クロノの説明が終わり、リンディ提督が言葉を続ける。

 

 「大規模次元振やそれ以上の災害、次元断層が起これば、世界の一つや二つ、簡単に消滅してしまうわ。そんな事態は防がなきゃ」

 

 そこでリンディ提督は一旦言葉を切る。そして、今までの重い空気を軽くするように、表情を緩めた。

 

 しかしついで放たれた言葉は俺たちの希望を軽く打ち砕くものだった。

 

 「だから、これよりジュエルシードの回収は私たちが担当します」

 

 「え?」

 

 「っ!」

 

 なのはは驚き、ユーノは悔しそうに握る手をさらに強く握りしめた。そして、

 

 「っ」

 

 それは俺も同じだった。

 

 「君たちは今回のことは忘れて、それぞれの世界に戻るといい」

 

 クロノがそう言うが、俺の耳には入っていなかった。

 

 ここで終わるわけにはいかない。しばらく療養は必要だろうが、それでも、ここで終わったらフェイトたちのことも諦めなくちゃならなくなる。それだけはごめんだ。

 

 しかし、

 

 「まあ、急に言われても気持ちの整理もつかないでしょう」

 

 ………なに?

 

 今のリンディ提督の言葉に、俺には希望が見えたような気がした。なぜなら、

 

 「今夜一晩三人で話し合って、それから改めて、お話しましょ?」

 

 ここでその言葉は、明らかにおかしいから。

 

 

 

 「リンディ提督。少し、お話があります」

 

 「あら。何かしら、優雨さん」

 

 話しを終え、医務室を出ようとするリンディ提督を俺は呼び止めた。リンディ提督は応じてくれたが、

 

 「その前に。なのは、ユーノ。お前たちは先に帰れ」

 

 「え!?な、なんで!?」

 

 なぜかなのはショックを受けたように聞いてくる。

 

 「もともと俺たちは行動を共にしていたわけじゃない。お前たちはお前たちで答えを出せ」

 

 俺の言葉に、なのはは迷ったが、結局受け入れたようだ。しかしそれでもなのははすぐに帰ろうとはしなかった。

 

 「どうした?」

 

 「あの………。優雨くんは、どうするの?」

 

 おずおずと聞いてきた内容に、少しため息が出そうになる。

 

 ………ここで迷ってどうするんだよ。

 

 「前にも言っただろ。お前は、どうしたいんだ?」

 

 「わたしは、どうしたいか?」

 

 なのはは少しだけ顔を伏せ、何かしら考えていた。だが、やがて答えが出たのか、顔を上げた時のなのはの顔は晴々としていた。

 

 「うん!ありがとう、優雨くん!」

 

 元気よく言って、ユーノの手をつかむ。

 

 「行くよ!ユーノくん!」

 

 「あ、ちょ、ま、待ってよ!なのは!」

 

 「おい!君たちはアースラの中を知らないだろ!」

 

 「全くもう。なのはちゃん待ってよ!」

 

 なのはがユーノを連れて勢いよく医務室を出て、それをクロノとエイミィさんが追いかけていった。

 

 「あらあら」

 

 「………」

 

 そんな光景をリンディ提督は楽しそうに見ていた。

 

 「さて、それじゃあいいですか?」

 

 「ええ。それで、なにかしら?」

 

 ここでの話で、俺のこれからが決まる。もっとも、確実に勝てる内容だがな。

 

 「今回の事件。俺に協力させてほしい」

 

 「………なぜ、今頼むのかしら?」

 

 リンディさんは不思議そうに聞く。それはそうだ。たった今、明日話そうと言ったばかりなのだから。わざわざ今日これを言う意味などないように思える。だが、

 

 「早いに越したことはない。それに、今頼もうが後で頼もうが、そちらの答えは決まっているはずだ」

 

 「!」

 

 言った瞬間、リンディ提督が一瞬固まった。やはり予想は当たっていたか。なら、少しは融通が利くようにもう少し切り込むか。

 

 「うまいやり方を思い付くものだな。あれならこちらから協力させてほしいと言わせることができるのだから。戦力が欲しいと言っても、管理局側から申し出て、もし怪我でもさせたら、管理局には重い責任がかかる。だがこちらから無理に頼んで協力した結果なら、そこまでの責任にはならない」

 

 「………よく気が付いたわね」

 

 必死に隠しているようだったが、リンディ提督の声は少し震えていた。そこからかなり動揺しているのが分かる。

 

 「管理局が俺たち一般人をこれ以上事件に介入させるわけにはいかない、というはわかる。なら、わざわざ俺たちに考えさせる時間など与える必要はない。いや、本来考えさせる時間など与えてはならない。だが、あなたはあえてそれを与えた。俺たちが悔しがっているのを知っていてな。だから気付けたのさ」

 

 俺たちはこの事件に介入できないことを悔しがっていた。なら、考える時間を与えれば必ず、協力させてほしい、と言ってくることは簡単に予想できる。

 

 俺の言葉を最後まで聞いた後、リンディ提督は大きく息を吐いて、俺を見た。

 

 「………ふう、負けたわ。その通りよ。管理局は人不足でね、今回連れてくることのできた戦力の中でフェイトさんやその使い魔とまともに戦えそうなのは、クロノしかいないのよ」

 

 「だからフェイトと戦うことのできる強力な戦力であり、ジュエルシードを集めてきた経験もある俺やなのは、ユーノを戦力として取り込みたかった、と。そしてあわよくばそのまま管理局に、か?」

 

 「本当に何でもお見通しなのね。まあでも、そこは仕方がないわ。なのはさんやあなたほどの力を持つ魔導師は、そうそう見つかるものじゃないもの」

 

 なるほどな。

 

 ………そろそろ本題に戻るか。

 

 「さて、それでだ。俺は別にあなた達管理局に迷惑をかけたいわけじゃない。ただフェイトのことが気になるだけだ」

 

 「なるほど。それでこちらの意図が分かっていながら、協力させてくれ、と言ってきたわけね」

 

 リンディ提督は納得と言ったようにすっきりした表情をしていた。

 

 これで向こうはこちらに多少の恩ができたわけだ。少しは融通を聞かせることができるだろう。

 

 そう考えていると「でも!」という言葉とともに指を突き付けられた。

 

 「まずは怪我を直してください。そんな状態のあなたに魔法を使わせるわけにはいきませんから」

 

 リンディ提督は突きつけた指を下しながらそう言った。その眼を見ると俺を本気で心配してくれているということが分かって、俺は言い返すことができなかった。

 

 「………」

 

 「さて、優雨さんはしばらくこちらで療養してもらいたいのだけど、大丈夫かしら?」

 

 「あ、ああ。大丈夫だ」

 

 「そう。でもちゃんと家の人に連絡はしておきなさいね。携帯は通じるようになってるから」

 

 「………ああ。わかった」

 

 連絡する相手はいないが、余計な事情を持ち込みたくはないので黙っておく。

 

 その後リンディ提督は「仕事があるから」と言って部屋を出て行った。

 

 

 「………アイギス」

 

 『何ですか?』

 

 リンディ提督が医務室を出て行って、眠るために暗くした部屋のベッドの上で、俺はアイギスに声をかける。

 

 「………力、貸してくれるか?」

 

 『………』

 

 それは、誓いのための言葉。

 

 「俺はフェイトを救いたい。なのはの力になりたい。あの二人を、護りたい」

 

 ずっと後悔していた。前の世界で、一緒にいたかった、護りたかったすべてを護れなかった。

 

 「そのために、力を貸してくるか?」

 

 なのはたちをそれと重ねるわけじゃない。だけど、俺と同じように心に傷を持つ彼女たちを、俺は護りたい。そのための、誓い。

 

 『………』

 

 俺はアイギスの返事を待つ。

 

 正直に言えば怖い。それは、俺がもっと傷つくかもしれない、と言っているようなものだから。アイギスは、ずっと俺と一緒にいてくれて、その間にずっと人間らしくなってきた。いつも俺を心配してくれていた。全部、俺のためにだ。

 

 そんなアイギスが、こんな自分をさらに酷使するようなことを言う俺に力を貸してくれるだろうか。

 

 『………私は』

 

 どんなに怖くても、返事は来る。俺はそれに身構える。

 

 そして、

 

 『私は、あなたを主(相棒)と認めたデバイスですよ?』

 

 そう、答えてくれた。アイギスは俺の願いに応えくれたのだ。

 

 「………そうか。ありがとう」

 

 『いえ』

 

 俺はアイギスに感謝しながら、そっと瞳を閉じた。

 

 

 

 

 「すごい子ね。彼は」

 

 医務室を出てから、私はずっと優雨さんのことを考えていた。

 

 満身創痍の状態でもクロノと戦うことのできる技術、そしてわずかな情報と違和感から真実を導き出す観察眼と知性。どれも歳不相応なものだわ。

 

 「あの子が協力してくれるのなら、切り札が一つ増えると言っても過言じゃない。………だけど」

 

 だけど、あの子を見ていると、とても不安になるのは何でかしらね。あんなに強くて、揺るがない眼をしていたのに。なのにとても、脆く見えた。

 

 彼の存在が、とても儚いものに思えた。

 

 「………怪我のこともあるけど、あの子には戦ってほしくない、って思うわね」

 

 フェイトさんを逃がすためにクロノと戦った時、彼は自分のリンカーコアが危ない状態であることを知っていながら魔法を使って戦った。

 

 「つまり彼は、他人のために平気で自分を切り捨てることができる、ということよね」

 

 でも、それは危険なこと。人として、何かが壊れていると言ってもいい。それに不可思議なこともある。それは優雨さんの体の事。

 

 「運び込まれた直後は確かに危険な状態だった。なのに私たちが医務室に入るまでのわずか20分足らずで彼は持ち直した」

 

 そもそもが魔力的な傷がほとんどだったため手術などが必要なわけではなかった。しかしそれでも、命すら危険なほど肉体やリンカーコアが傷ついていたのだ。最低でも6時間以上の集中治療と数か月ほどの安静期間が必要なはずだったのだ。

 

 「彼には何か秘密がある。ということね」

 

 もしかしたらとても危険な存在なのかもしれない。彼の想いはなのはさんやフェイトさんを助けること。ならもし私たちが下手に彼女たちを危険にすれば………

 

 「………だめね。一度不安なことにぶつかるとどうしても嫌な方に考えちゃう。とにかく今は彼の怪我を直してもらわないといけない。でなければ、何があっても前線には出さない。今は、これでいい」

 

 それに彼はきっと私たちと協力している間は私たちに銃を向けはしない。彼がどういう人なのかはさっきの話でだいたい察することはできた。

 

 それよりも心配なのは彼の生き方そのものだ。自分を犠牲に何かを護るという自己犠牲の考え。彼はそれを当然のことと考えているのだ。

 

 それではいけない。だから私は、

 

 「彼のことを知ったものとして、私はきっと」

 

 きっといつか、彼の進もうとしている道を変えることができますように………。

 

 ブリッジに向かいながら、私は、静かに祈った。

 

 

 

 

 

 

 どこかで誰かが、頭を下げたような、そんな気がした。

 




フェイト
 目を覚ました優雨だけど、その傷はひどくしばらく動くことはできない。
 白い子とあのフェレットの少年は時空管理局の協力員としてジュエルシードを回収していく。
 そして、わたしも母さんの願いをかなえるために、そしてもう誰も傷つけないように………
 次回 「治療期間」







作者「そう簡単には終わらんよ!!」

フェイト「よかった………本当に………」

作者「………あー、えっと。言い辛いが、一応場が場だから泣かんといて」

フェイト「あ、そ、そっか。ちょっと待って………」

作者「ええっと。じゃあ場繋ぎとして。投稿が一日遅れてすみませんでした。日曜日まで大会なん
   かがあって、その疲れもあって曜日感覚があいまいになってました。今日になってようやく
   気付く始末。ほんと申し訳ありませんでした」

作者「さてさて、さっきも言いましたが優雨はそう簡単には死なせません。魔法も使えます。秘密
   なのでまだまだ明かせませんが、そうなってます。悪運が強いのは主人公の特権ですしね」

フェイト「………う、ん。ふう………うん。もう大丈夫だよ」

作者「ごめん。もう言うこと全部言っちゃった」

フェイト「ええ!?」

作者「それではまた次回に」

フェイト「あ!えっと、また次回もよろしくお願いします!」
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