魔法少女リリカルなのはEX・S 過去にとらわれた転生者   作:レイレナード

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「ジュエルシードを感知しました」をドイツ語変換したらジュエルシードの部分がEdelsteinsamenなんて変換されてびっくりしました。一応これも「宝石種子」って意味らしいですけどね。

とかどうでもいいことを話しつつ本編をどうぞ。


Episode13 治療期間

 あれから2日たった。

 

 予想通り、話しを受けた次の日にユーノとなのはは管理局に協力することが決まり、それからはジュエルシードの捜索をしている。管理局がジュエルシードを探し、なのはとユーノがそれを封印するという手順だ。

 

 俺はまだ怪我がひどく、ベッドの上から動けない状態だった。やることのない俺はこの暇な時間を最大限生かすために、とあることを考えていた。

 

 コン コン

 

 「ん?」

 

 ノックする音が聞こえた。扉の方に目を向けるとその向こうから声が聞こえてくる。

 

 「優雨、いいか?」

 

 「クロノか。どうぞ」

 

 応えると、ドアが開きクロノが入ってきた。

 

 「調子はどうだ?」

 

 「まだ痛いが、昨日よりはいい。順調だ」

 

 答えるとクロノは安心したように肩の力を抜く。

 

 「そうか。それは良かった」

 

 そんなクロノの様子に何か違和感を感じた。どこか一歩引いているような………

 

 「クロノ」

 

 「ん?なんだ?」

 

 俺に対して後ろめたいことがあるような態度。一つだけ覚えがあった。

 

 「もしかして、あの時のこと気にしてるのか?」

 

 「っ!」

 

 すぐに反応があった。やはりフェイトを庇った時に背中に直撃した魔力弾のことを気にしているらしい。わざとぼかしていったのだから、気にしていなければすぐに「あの時」が分かるはずがない。気にしていたからすぐに反応してしまったのだ。

 

 あの時クロノは非殺傷設定を解除して撃っていたから、俺はその魔力弾で怪我をした。俺の体の怪我で外傷はそれだけだ。今も俺の体には包帯が巻かれており、その魔力弾の威力を物語っている。そしてクロノはそのことを気にしているのだろう。

 

 「お前は正しいことをした。もしあの時俺があの場におらず、非殺傷設定のままで撃っていたら、たとえそれがフェイトに当たっていたとしてもジュエルシードの回収を止めるには至らなかっただろう。時空管理局の執務官として、お前が非殺傷設定を解除して撃ったのは正しい行動だ」

 

 「っ、だが!そのせいで君は!」

 

 「俺は気にしていない」

 

 「!!」

 

 そう、俺は気にしていない。クロノは正しいことをしただけ。俺がけがをしたのは俺自身のせいだ。それに何より、クロノにいつまでも"そんなこと"を後悔していてもらいたくはなかった。

 

 「それに、お前の攻撃が当たっていなかったとしても俺の行動は変わらなかった。俺の怪我が治る時間も変わらなかっただろう」

 

 それにだ、と俺は続ける。

 

 「お前の魔力弾が俺に当たったのは俺がそれの射線上に入ったからだ。お前が気に病む部分などどこにもないんだ」

 

 それでもクロノの表情は変わらなかった。

 

 「………だが。それでも僕が君に怪我を負わせたことに変わりはない」

 

 ………まったく。頑固な奴だな。

 

 クロノはどこまでも自分に厳しく、ルールを厳守するやつだ。それはいいことでもあるが、少しは肩の力を抜くべきなんだよな。

 

 まあ、どうしても考えを変えないなら、

 

 「わかった。なら、許そう」

 

 「………何?」

 

 突然の俺の言葉に、クロノは信じられないと言ったように目を見開いて俺を見る。

 

 「お前が俺に怪我を負わせたこと。お前がそれを罪だと思うなら、俺はそれを許す」

 

 そんなことを言う俺にクロノはしばらく唖然としていたが、ふいに顔を伏せ、そして小さく笑った。

 

 「………まったく。君にはかなわないな」

 

 そう言って顔を上げたクロノはあきらめたように、しかしどこか嬉しそうにそう言った。

 

 「そんな風に言われたら、いつまでも気にしているわけにはいかないじゃないか」

 

 クロノは困ったように言うが、それとは逆に肩の荷が下りたように見える。

 

 「だから気にするなと言っている。それに、お前とは気軽に話せる仲になりたいと思っていたんだ」

 

 「?どうしてだ?」

 

 俺は工場での戦いを思い返しながら言う。

 

 「あの時のお前の動きは場数の多さと努力からくる強さが見えた。それは後悔を繰り返したくないという、"今度こそ"という気持ちからくる強さだ」

 

 「!」

 

 驚くクロノにかまわず言葉を続ける。

 

 「俺も、そうありたいと思っている。だから」

 

 そこで言葉を切り、しっかりと思いを乗せて言葉を紡ぐ。

 

 「共に、強くなっていきたい」

 

 「………優雨」

 

 それは本心からくる言葉。クロノの強さは本物だ。それだけの努力をクロノは続けてきたのだ。そしてそれだけの努力を強いるほどの何かを、抱えているのだ。だったらそれは俺も同じだ。だから俺は同じ強さを求めるものとして、共に強くなりたい。

 

 クロノは不意に笑って俺の思いに応える。

 

 「いいだろう。僕も君と一緒ならもっと強くなれる気がする」

 

 「………ありがとう。事が済んだら、頼む」

 

 会って、まだ少ししかたっていないクロノと俺。しかし、その思いは早くもつながったように思えた。

 

 

 

 

 ユーノとなのはがアースラに来てから4日たった。

 

 俺はまだ回復できていないので医務室で休養中だ。しかし、ようやくリンカーコアも安定しだした。もう罅はなくなったと、医師も驚いている。

 

 「治ったばかりでまだ魔法は使えないが、体の怪我はだいぶ治ってきた。もう日常行動に支障はないだろう」

 

 「本当に大丈夫なの?」

 

 「ああ」

 

 「本当に回復が早いね。みんな驚いてるよ」

 

 俺は今医務室でなのはとユーノと話している。二人とも暇なときは俺と一緒にいることが多い。というより、なのはがこっちに来て、ユーノがそれについてくる、と言った感じだ。

 

 「ジュエルシード、順調に集まってるか?」

 

 「うん!昨日で2つ!」

 

 4日で2つか。十分なペースだな。

 

 「ありがとう、なのは。俺は今こんなだからな」

 

 「ううん。優雨くんにはたくさん助けたもったもん。今はゆっくり休んでて」

 

 本当に感謝している。だけど、なのはたちだけに任せておくのは、やっぱり情けない。早く治したいものだ。

 

 「………そう言えば、あとでクロノとエイミィさんが来るってさ」

 

 「?そうか」

 

 わざわざ予告付きで二人で来るってことは管理局としてくるってことだよな。しかし、デバイスの整備とかは遠慮したし、今さら俺に聞くことなんてあるのか?

 

 「ジュエルシードは一つ破壊されてしまったって言ったら、すごく驚いてね。それをしたのは君だと教えたから、それを聞きにくるみたい」

 

 ああ、なるほど。やっぱり普通は破壊できるものではないのか。まあ、あれだけの術式と収束された魔力量を考えると、当然の結果ではあると思うが。

 

 「わかった。少し準備しておくか」

 

 「準備?」

 

 「データや映像をな」

 

 さて。覚悟しておくか。

 

 

 

 

 「入るぞ」

 

 「どうぞ」

 

 なのはたちが部屋を出てしばらくすると、ノックとともにクロノの声がした。それにこたえると、ドアを開けてクロノとエイミィが入ってくる。

 

 「ヤッホー!身体の方は大丈夫?」

 

 エイミィはいつも元気だな。

 

 「大丈夫だ。あと2日もすれば魔法も使えるようになってくると思う」

 

 『マスターの回復速度は異常ですね』

 

 まるで人じゃないみたいな言い方だな、アイギス。まあ俺自身、怪我の詳細を聞いたときには驚いたものだが。

 

 そんな俺たちに苦笑したクロノとエイミィだったが、すぐにクロノは真剣な表情になった。

 

 「さて、僕たちがここに来た理由は多分知っているな」

 

 「ああ。ユーノから聞いた。ジュエルシードを破壊したことだろ?」

 

 俺の言葉に少し目を細めつつクロノは言う。

 

 「当然のことだが、ロストロギアはそう簡単に破壊できるものじゃない。特に今回のジュエルシードは次元干渉型のエネルギー結晶体。その力の大きさは歪んだ形になりやすいとはいえ、人の願いを叶えることができるほどの馬鹿げたものだからな。そう簡単に破壊できるような軟なものじゃない」

 

 クロノに続いてエイミィが言う。

 

 「そんなわけで、その時優雨くんが何をしたのか。できればその時のデータと一緒に教えてもらいたいなあ、って」

 

 「管理局としては、そこを知っておかなければならない」

 

 「管理局にとって、どんな脅威になるかわからないから、か?」

 

 「っ。………そうだ」

 

 クロノの言葉に俺が指摘してやると、一瞬驚きはしたが、ごまかせないと思ったのか正直に答えてくれた。

 

 管理局は言ってしまえば次元世界を護るための防衛機関だ。ロストロギアを破壊するような力が不明のままというわけにはいかないからな。

 

 と言っても特に隠す必要などないし、そもそも俺の力だけじゃジュエルシードを破壊することなんてできないのだから、そこまで脅威でもないのだがな。

 

 「わかった。話そう。てっとり早くその時の映像データを見ればいいだろう」

 

 「………いいのか?」

 

 クロノが少し申し訳なさそうに聞くが、俺は「別にかまわない」と答える。

 

 「正直に言えば、手の内を3つもばらすことになるのだから、嫌だと言いたい。だが、別にどうしても隠さなければならないというものでもないからな。というか………」

 

 そこで言葉を切りクロノを見て言う。

 

 「お前も執務官なら、ここは堂々としているべきだ。お前もまだまだ甘いな」

 

 「な!?」

 

 わりと本気でそう思う。いくら俺が怪我人で、さらにできるだけ手の内を知られないようにしているとは言え、ここで一歩引くようでは執務官としては失格だろう。

 

 「あはは。まあ、クロノくんは優しい子だからねえ。甘いところは確かにあるかも」

 

 「エ、エイミィ!」

 

 エイミィにまで言われるとは思っていなかったのだろう。面白いくらいに動揺していた。

 

 「さて、準備は終わったぞ。出していいか?」

 

 「………ああ。頼む」

 

 少し恨めしそうにクロノはこちらを見てはいたが、何とかこらえて言った。その言葉に応えるように、俺はアイギスに頼み映像が流れた。

 

 

 

 『受け止めろ!スプレッド・アブソープション!!』

 

 彼のデバイス、アイギスから3つ薬莢がはじき出されると同時に、彼の魔力が急上昇したのが分かる。さらにひし形の盾が展開され、それはジュエルシードから放たれる方向を見事に防いでいた。

 

 「やはり君のそれはカートリッジシステムを採用しているんだな」

 

 映像を見ながら僕は優雨に聞く。それに優雨はただ「ああ」とだけ答え、その映像をじっと見ていた。僕もそれに倣い、黙って映像に集中した。

 

 それにしても、ジュエルシードの魔力放出を受け止めるとは、その時点で馬鹿げたものだ。だが見ているとその原理も分かる。単純にそのひし形の盾が高速で、それこそ人の目にはわからないほどの速さで振動しているのだ。その振動は結合された魔力を分解し、分散させることで、その威力と勢いを大きく減少させている。だが、さすがにジュエルシードの魔力放出を止めきるのは厳しいようで、あの危険なカートリッジシステムも使用してなお、優雨は今にも吹き飛ばされそうな体を必死にその場にとどめていた。

 

 しかし、

 

 「な!?」

 

 「え!?」

 

 崩れかけていたシールドと彼は、カートリッジをさらに使用することで無理やり持ち直した。だが、それはあまりに危険な行為だ。事実、今映像の中の優雨からは体中が悲鳴を上げているのが分かった。

 

 「君は!」

 

 思わず優雨を見て叫ぶ。だが優雨はそんな僕に平然と答えて見せた。

 

 「あの時はああするほかなかった。あのままではどうせ俺のシールドは砕け、俺だけじゃなく後ろにいたなのはやフェイトたちも巻き込むことになる。結果としてこうした方が全体的な被害も俺自身の被害も少なくて済んだ」

 

 「………」

 

 そう言う優雨の顔はずっと無表情で、まるで感情がないように見えた。優雨は、これを当然のことと思っているのだ。確かに理屈は分かるが、それでもそれを‷自分が犠牲になるのが当然‴だと、平然と言えるだろうか。僕がその事実に恐怖している間も、映像は流れていった。

 

 

 カートリッジを使い切り、シールドが限界に達して壊れるのと、ジュエルシードの魔力放出がとまるのは、ほぼ同時だった。だが、すぐにジュエルシードは周囲の魔力を再び収束し始める。

 

 しかし、優雨の方が早かった。

 

 『っアイギス!!あれをは破壊するぞ!!』

 

 そう宣言した優雨は続いて「グングニール」と言った。おそらくこれがジュエルシードを破壊した魔法だ。

 

 「………っ」

 

 「これって」

 

 僕とエイミィは唖然としてそれを見ていた。

 

 優雨が右手を横に突き出すと、そこにあの盾――スプレッド・アブソープションによって拡散され、優雨の周囲に満ちていたジュエルシードの放った魔力が急速に集束され出したのだ。

 

 それはほぼ一瞬で槍のように長い棒状のものとなり、さらに圧縮率が高すぎることで熱が圧せられているのか、彼の魔力色である黒ではなく、紅色の光を放っていた。

 

 深紅の槍。

 

 次元振を起こすレベルの恐るべき量の魔力を小さな一本の槍となるまで圧縮することで生まれたそれに思わず恐怖を抱く。

 

 だが、

 

 『っ!ガハッ!!』

 

 「「!!」」

 

 その槍が形成されると同時に優雨が血を吐いた。

 

 当然と言えるだろう。彼の魔力量から考えると、ジュエルシードの魔力放出を防ぎ切った時点で、彼の体にかかっていた魔力負荷はとんでもないものだったはずだ。それこそ、魔導師としての一生にかかわるほどに。

 

 そんな状態で使用したこの魔法も、ジュエルシードの放出したほとんどの魔力を、一瞬でこんな小さなものになるまで収束し圧縮したのだ。理論そのものは収束魔法の延長。収束魔法は周囲に散った魔力を収束する繊細な作業をなるべく迅速に行わなければならない。しかもその収束する魔力の中には自分以外のものも含まれる。他人の魔力を制御するのは、また難しいし、それだけリンカーコアに負担が生じる。それはやはり他人の魔力は自分にとっては異質のものだからだ。それを優雨はふつう考えられる量を遥かに超えた量を、考えられない速さで収束した。その負担は、普通に収束魔法を放つよりも、ずっと高いもののはずだ。

 

 しかしそれでも優雨は倒れなかった。

 

 形成した真紅の槍――グングニールを掴み、ほんの数メートルだけ走って槍を振りかぶる。そして、

 

 『貫け!!グングニール!!』

 

 ジュエルシードへ向けて投擲した。その瞬間、グングニールに砲撃を撃つ時に展開される加速術式が組み込まれている環状魔法陣が5つも展開され、放たれた。結果、目で終える速さを超えたそれは一瞬にしてジュエルシードに到達し、一瞬の拮抗の末、貫いた。

 

 「………」

 

 僕は言葉が出なかった。

 

 グングニール………。確かにジュエルシードの魔力のほとんどを収束したからこその威力ではあるが、それでもこの収束速度と収束率。そして最も脅威なのがその投擲速度と貫通力。管理局にとって、十分に危険となりえる魔法だった。

 

 優雨が言っていた3つの手の内とはカートリッジシステム、スプレッド・アブソープション、グングニールの事だろう。確かにどれも隠しておきたいほど強力なものだ。おそらくこの二つの魔法は彼の切り札級のものだろう。

 

 ジュエルシードを破壊したところで映像は終わっていたが、おそらくこの後優雨は倒れたはずだ。それだけの無理をしていたのだから。

 

 「あとこれがグングニールとカートリッジシステムの詳細データだ。スプレッド・アブソープションのデータはブラックボックスになっていて詳細は渡せないからそっちはアイギスの観測データを渡そう」

 

 「………ああ。わかった」

 

 渡されたデータファイルを見ながら思う。今回渡されたデータは想像以上の脅威を示していた。しかしこれだけのものを相手に管理局は何ができるだろう。グングニールの方はどう見ても体への負担が大きいし、スプレッド・アブソープションの方もデバイスに搭載された特別な機能のようだ。どちらも管理局で採用するのは難しい。対抗策としても、有効な手段などあるのだろうか。あるとすれば「発動前に倒す」ぐらいしかないのではないだろうか。

 

 少しの間考えたが結局答えは出なかった。思わずため息が出る。

 

 ちなみにカートリッジシステムは一応管理局にもある。もっとも、まだまだ安全性に問題があるので、採用はされていないが。

 

 「優雨くん。これからはあんまり無茶しちゃだめだよ。この時は仕方がなかったかもしれないけど、今は私たちもいるんだから」

 

 エイミィが心配そうに優雨に注意する。そこにはさっきまでのような陽気さはない。あんなものを見てしまったのだから当然だろう。

 

 「ああ。わかってる。必要な時しか無茶をする気はない」

 

 それに対し、優雨は当然だ、とでもいうように答える。

 

 必要な時しか、か。

 

 「データの提供に感謝する」

 

 僕は、一瞬浮かんだ感情を押しこめ、執務官としての言葉を言う。

 

 「ああ。ご苦労様」

 

 優雨も簡単に答え、ねぎらいの言葉をくれた。

 

 「さて、それじゃあ僕たちはもう行かせてもらうよ。まだ仕事が残っているからな」

 

 「じゃあね、優雨くん。しっかり休んで、体治してね」

 

 「ああ。ありがとう」

 

 僕が先に部屋を出て、その後をエイミィが続く。それからしばらく無言だった。少し空気も重い。少し経つとエイミィが話しかけてきた。

 

 「なのはちゃん達が心配するのも分かるね」

 

 「ああ。彼は無茶をしすぎだ」

 

 僕があの時感じて、すぐに押しこめた感情。それは恐怖だ。

 

 僕は優雨を怖いと感じた。それは優雨の強さとか、そういう意味での恐怖じゃない。むしろその逆だ。優雨の在り方、必要なら自分を簡単に犠牲にできるというその在り方に、恐怖を抱いたのだ。

 

 なのはがアースラに来た時、彼女は僕にある頼みごとをした。それはできるだけ優雨はジュエルシードの捜索や封印作業に出さないでほしいというものだった。その時は何でそんなことを頼んだのかは分からなかった。だが今ならわかる。

 

 優雨は本当に、呼び止めないとすぐにどこかに消えてしまいそうな、そんなふうに思えるのだ。

 

 すぐに手を伸ばさなければ、もう二度と届かない場所に行ってしまう。父さんと同じように。

 

 「………そうか」

 

 僕は抱いたのは恐怖は、彼を失うことに対する恐怖だったのか。

 

 彼がアースラに来てから4日。その間にまともに話したのは2日前の許しと約束の時だけだ。

 

 だが、それだけで十分だった。あの時、僕は彼の優しさを感じた。強さを感じた。そして共に強くなりたいと願ってくれた。そんな彼と、僕は共にいたいとと思ったのだ。

 

 「なんだ。僕はもう、彼を友人と思っていたんだな」

 

 今更な自覚に、思わず苦笑する。だが、分かったからこそ、改めて決意できた。

 

 「エイミィ」

 

 「ん?何?」

 

 不思議そうに聞く執務官補佐に僕は宣言するように言った。

 

 「僕は、彼を護るよ」

 

 そんな僕に、エイミィは一瞬驚き、しかしすぐに優しく微笑んで、

 

 「僕"たち"、でしょ?」

 

 そう言ってくれた。それが少しうれしくて、だけど少し照れくさくて、僕は少し顔を背けた。

 

 「そうだったな。よろしく頼む」

 

 「ああ!クロノくん照れてる?」

 

 「な!?照れてない!」

 

 いつの間にか、重い空気はどこかへ消えていた。だけど、心に決めた思いは消えていない。

 

 必ず、彼を護ろう。自分と、そしてみんなのために。

 

 

 

 

 「………優雨大丈夫かな」

 

 隠れ家である隣町のマンションでフェイトはつぶやく。家に様子を見に行ったのだが、優雨はいなかった。帰ってきた様子もなかったから、管理局の方で治療を受けているのかもしれない。

 

 「………また、私のせいで優雨は傷ついた」

 

 最初は暴走したジュエルシードから私たちを守るために。私があの子よりもあと少し早くジュエルシードに触れていれば、あんなことにはならなかったかもしれない。

 

 そして今回は、私が不用意にジュエルシードを取ろうと動いたせいだ。母さんのためにも、ジュエルシードを取らずにあの場を去るなんてことできるはずがない。だけど、もっとやり方があったのではないか。私がもっとうまくやっていれば、優雨は私をかばったりはしなかったはずだ。

 

 私は自分の無力が嫌になる。

 

 あの時、最初に優雨に守られた時から、もう優雨に負担はかけないと、もう傷つけさせないと誓ったのに。なのに、優雨は傷ついた。また私を守るために。

 

 どうしてこんなことになるのかな。

 

 私が弱いからいけないのかな。

 

 私が弱いから、母さんは私にお仕置きをするし、昔みたいに笑ってもくれない。

 

 そして優雨も私が弱いから傷ついていく。

 

 だったら強くなりたい。

 

 もっと、もっと強く。

 

 『Sir. Die Reaktion von Jewelseed ist wahrgenommen worden.(主、ジュエルシードの反応を感知しました)』

 

 手に握っていたバルディッシュが力強く瞬く。

 

 「行こう」

 

 もっと強くなろう。

 

 

 

 

 私とユーノくんは今アースラに寝泊まりしている。

 

 ユーノくんがうまく話を運んで管理局に民間協力者という形で協力することができてから、もう6日たった。

 

 その間に私たちが見つけたジュエルシードは3つ。フェイトちゃんたちは推定1つ。

 

 これで私たちの持つジュエルシードは6つ。フェイトちゃんたちも推定5つ。優雨くんが1つ壊しちゃったから、残りのジュエルシードは9個ということになる。

 

 クロノくんたちも頑張ってるけどなかなか見つからないらしい。ジュエルシードもフェイトちゃんたちも。

 

 私はフェイトちゃんと話がしたい。

 

 もっとちゃんと、あの日優雨くんが私に言ってくれたように、自分の気持ちを正直にフェイトちゃんにぶつけたい。

 

 そうじゃなきゃ、きっと伝わらない。

 

 私自身まだ何を伝えたいのかわからないけど、それでもあの悲しい眼を、放っておくなんてできないから。

 

 きっと優雨くんも、そう思って戦ってるんじゃないかと思う。

 

 そうじゃなきゃ、あんなにボロボロになるまで戦ったりしないと思うから。

 

 クロノくんやユーノくんの話を聞いて、初めて優雨くんの体がどれほど悪い状態か分かった。

 

 もう二度と魔法が使えなくなるかもしれない。そんな風になったら、私は耐えられるだろうか。

 

 優雨くんは耐えたんだ。だからあの時、フェイトちゃんをかばったんだ。

 

 ………なんだか、嬉しいはずなのに、悔しいな。

 

 それだけ思われてるフェイトちゃんが、なんだかちょっとうらやましい。

 

 だけど、もう優雨くんに無理は絶対にさせたくない。

 

 もう優雨くんが傷つく姿なんて絶対に見たくないから。

 

 そのためには、今のままじゃだめなんだ。

 

 だから、

 

 『ジュエルシードの反応を見つけました!なのはちゃんとユーノ君はすぐに現地に向かって!』

 

 突然艦内放送でエイミィさんから連絡が来る。

 

 『Let's go. My master.(行きましょう。我が主)』

 

 「うん。行こう!」

 

 もっと、もっと、強くなるんだ!

 

 

 

 

 アースラに来て7日。

 

 身体を伸ばしながら体の状態を確かめる。

 

 「まだ無理はできないけど、一応問題なく魔法が使えるレベルには達したな。魔力運用しても痛みはない」

 

 『だからと言って使わない方がいいのは変わりません。最低でもあと3~4日は魔法を使わないでください』

 

 「了解だ。俺もできれば無理はしたくないからな。体の痛みのほうはもう大丈夫そうだし、そっちの方は軽く動かしておこう」

 

 『それでも無理はしないでくださいね』

 

 ………なんだかアイギスがむちゃくちゃ過保護だな。まるで母親のようだ。

 

 まあ、心配かけまくったからな。仕方ないか。

 

 「あと、少しデバイスの調整とか新システムと新デバイスの設計なんかもしたいんだよな」

 

 『え?新システムと新デバイス、ですか?』

 

 アイギスが素っ頓狂な声を上げる。

 

 「ああ。今のシステムのままじゃまだ足りない。もっと強くなるためには俺自身への負担を極限まで減らして、負担の多い強力なスペルを何度も使えるようにする必要がある。でないと、護る前に俺がもたない」

 

 『(………やっぱり、自分は二の次なんですね。でも理由はどうあれマスターの負担が減るのならそれでいいです)それにあわせて、新デバイス、ですか』

 

 アイギスの言葉に俺は「ああ」とだけ答える。

 

 新システムでは当然今のシステムをもとに改良するが、そのシステムはデバイスが多いほどいい。アイギス本体のデータ容量の増加は必須だがそのための改良はすでに考えてある。

 

 「さて、それじゃあクロノにアースラのデバイスルームの使用許可でも貰いに行くか」

 

 誰かを護りたいなら、まず自分がそこに立っていなければならない。そのためには自分へのダメージを最小限にとどめる必要がある。そして当然、もっと強くならなくちゃならない。

 

 ずっと。もっと。どこまでも強く。何よりも速く。

 

 そして、

 

 「行くぞ、アイギス」

 

 『はい、マスター』

 

 "今度こそ"、護って見せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………優雨の「今度こそ」の意味を私は知っている。

 

 それは彼のもとの世界であったこと。

 

 優雨は護れなかった。護りたかったすべてを。

 

 優雨は罪を犯した。許されざる罪を。

 

 だから優雨は護ろうとする。だから優雨は自らを犠牲にする。

 

 だけど私は優雨を許したい。優雨に幸せになってほしい。

 

 だから、きっと同じ想いを抱いているあの2人少女と共に、そして彼の周りにいるすべての同じ思いを抱く人達と共に、同じ思いを祈ろう。

 

 どうか。彼を護れますように。

 

 

 

 

 どこかで誰かが、何かに祈ったような、そんな気がした。

 




クロノ
 優雨たちがアースラに来てから10日がたつ。
 その間、フェイト・テスタロッサたちと遭遇することはなかった。
 しかし同時にジュエルシードの捜索も難航していた。
 そんな時、ついにフェイト・テスタロッサは行動を起こす。
 次回 「共闘」







作者「行け!ガントレット・バスター・ドラゴン!アタック42000!!」

クロノ「センチネルっと」

作者「………」

クロノ「………って、もう始まってるじゃないか」

作者「はっ!!いきなりお見苦しいところを見せてしまった!作者は今ヴァンガードにはまってい
   るのだ!」

クロノ「どうでもいい。早く小説の話をしろ」

作者「………」

クロノ「さて、今回の話は治療期間、つまり10日の間に起ったことをまとめた形だな」

作者「ああ、うん。2回に分けようかとも思ったけど、面倒になって1話にまとめました」

クロノ「しかしこうやってみると、この小説は人物の想いを語るシーンが多いな」

作者「書いてるとなぜかそういう心の中みたいなシーンが多くなるんだよね。一人称視点だからか
   な?」

クロノ「残念ながら3人称で書くほどの力が作者にはない。これからもこういったシーンは多くな
    ると思うが、勘弁してやってくれ」

作者「では、今回はこの辺で」ノシ

クロノ「次回もよろしく頼む」
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