魔法少女リリカルなのはEX・S 過去にとらわれた転生者   作:レイレナード

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今の環境が、月曜日内の投稿を許さないんだ!!

という言い訳と共に報告があります!いま言った通り月曜日内での投稿が困難になりつつあるので、投稿は月曜日から火曜日にかけてという具合に変更します。

待っていてくれてる方、申し訳ありませんOTZ

では、どうぞ!


Episode15 母の願い

 「友達に、なりたいんだ」

 

 なのはがそう言った時、俺はやっと気づいた。それこそが、フェイトに一番必要なことだったのだ。

 

 今まで俺は、フェイトにもう傷ついてほしくないだとか、助けたいだとか、そんな風にしか思ってなかった。

 

 だけど、なのはの言葉を聞いて、フェイトに一番必要なこと、フェイトが一番欲しかったこと、それが、やっとわかった。

 

 「やっぱり、なのはの方が、ちゃんとフェイトを見てたみたいだな」

 

 俺の方が、もっと近くにいたのに。俺は、そのことに全く気が付けなかった。

 

 「ダメだな、俺は」

 

 『そんなことはありませんよ』

 

 自分に呆れていると、突然アイギスがそんなことを言う。

 

 「アイギス?」

 

 『マスターは、マスターなりに、しっかりとあの子のことを考えていました。いつだって、体を張って、私の忠告も無視して、あの子を………あの子たちを護ろうとしてきた。もう魔法が使えなくなるかもしれないってふうになっても、あの子たちのことを優先した。そんなマスターが、ダメなはずがありません!』

 

 「アイギス………」

 

 アイギスの一言一言が胸にしみわたってくる。今なら、そうかもしれないって、少しだけ自分を肯定できそうな気がした。

 

 『マスターは、私の自慢の”主(マスター)”です!』

 

 嬉しかった。

 

 今まで、俺はずっと自分をさげすんできたから。自分のせいだって、ずっと。そんな自分をこんなにも想ってくれている奴がいる。それが本当に嬉しかった。

 

 「ありがとう。相棒(アイギス)」

 

 本当にアイギスには感謝してしきれない。いつも俺のことを一番に考えてくれていた。いつも俺を助けてくれた。そんなアイギスは俺にとっても自慢の相棒だ。

 

 辺りを見回せば、なのはの言葉を聞いたみんなが、それぞれ、何かを考えているようだった。

 

 ユーノはただ、静かに笑っている。あいつはずっとなのはと一緒にいたから。この中でなのはがどういうやつは一番知っているのはユーノだ。そんなユーノが自分の気持ちをやっとフェイトに伝えることができたなのはを見て嬉しくないはずない。きっとそんな思いでいっぱいなんだろう。

 

 アルフは、本当に驚いていた。アルフにとってなのははフェイトの邪魔する悪いやつでしかなかったから。そんなふうに思っていたなのはがフェイトに、友達になりたい、何て言ったんだ。驚いて、呆然としてしまうのも仕方がない。

 

 そしてフェイトも、なのはの言葉が信じられないとばかりに目を見開いて呆然としていた。フェイトの悲しい眼に寂しさがあることに俺は今になってやっと気付けたけど。でも、きっとそれはフェイトも無自覚にも求めていたものだったのだろう。だからこそ”友達になりたい”というなのはの気持ちは、きっとフェイトの心に何かを与えたはずだ。

 

 なのはの想いがみんなの心に何かを抱かせている。なのははきっと、ただ自分の思いを口にしただけ。だけど、だからこそそれは、皆に、そしてフェイトに届いたんだ。

 

 雲間から差し込む光の柱が俺たちを包む中、俺はずっと、こんな時間の中にいたいと思った。

 

 

 

 

 だけど、そんな時間は長くは続かなかった。

 

 突然、晴れかかっていた空は再び曇り、雷の音と光が鳴り響く。そして、同時にとてつもないほど大きな魔力が近づいてくるのを感じた。

 

 「な!?」

 

 突然の出来事に、俺は身動きができない。

 

 そして、

 

 「母さん!?」

 

 フェイトの怯えた声が聞こえるのと同時に、フェイトに雷光が降り注いだ。

 

 

 「ああああああああああああ!!」

 

 フェイトの悲鳴が響き渡る。フェイトの母、プレシア・テステロッサの放った雷撃が、無慈悲にフェイトを襲ったのだ。

 

 「「フェイト(ちゃん)!!」」

 

 俺となのはの叫びが重なる。

 

 俺たちはフェイトに手を伸ばすが、降り注ぐ雷光に弾き飛ばされてしまった。

 

 「くっ………そおおおおおおお!!」

 

 俺は吹き飛ばされ崩れた体勢を何とか持ち直し再びフェイトの方を見るが、水しぶきが上がり見えなくなってしまう。

 

 そんな中で俺はフェイトの魔力が移動していくのを感じた。

 

 「これは、転送!?」

 

 まさかさっきの雷撃に転送魔法が組み込まれていたのか!?

 

 思わず虚空へと手を伸ばす。

 

 「フェイト………、フェイトおおお!!」

 

 フェイトが、やっと小さな幸せを見つけたかもしれないフェイトが、遠ざかっていく。それがどうしようもなく苦しかった。

 

 

 

 

 フェイトに雷撃が降り注ぎ、大きな水しぶきと津波がおきる。

 

 今のは鬼ババの魔力!?なんで、どうしてフェイトが攻撃されるんだよ!!

 

 どうしようもない怒りが湧き起こる。

 

 でも今すべきは起こる事じゃない。感情が怒りに染まる中、頭は冷静にものを見ていた。

 

 そうだ。わたしはまだやらなくちゃならないことがある。

 

 さっきの雷は確実にフェイトの母親、あの鬼ババがやったことだ。もしこのままジュエルシードを一つも持たずに帰ったら、それこそフェイトがどんな目にあわされるかわかったもんじゃない。

 

 あたしはすぐにジュエルシードのもとへ飛んだ。ジュエルシードまではそう遠くない位置にいたから、すぐに近くまで来れた。

 

 急がないと。早くフェイトのもとに行かないと!

 

 あたしはジュエルシード回収しようと手を伸ばす。

 

 しかし、

 

 ガっ!

 

 それを阻む奴がいた。あの時優雨を傷つけた管理局の魔導師だ。あたしが伸ばした手はそいつのデバイスに遮られていた。

 

 それを理解した瞬間、

 

 どうして邪魔するんだ!

 

 フェイトを守りたいのに、なんで邪魔するんだよ!!

 

 抑え込んでいた怒りが弾けた。

 

 「邪魔…」

 

 あたしは遮られていた手でそのまま奴のデバイスをつかみ。

 

 「!?」

 

 「するなああああ!!」

 

 それを怒りのままに後ろの方へ投げ飛ばした。奴はデバイスを離さなかったのでそのまま投げ飛ばされる。

 

 その隙にジュエルシードを回収しようとそちらを見ると、

 

 「3つしか無い!?」

 

 あたしは再び奴のほうを見ると奴の左手には5本の指の間に1つずつ、つまり4つのジュエルシードがあった。

 

 すぐに奪うことを考えたが、そんな暇はない。

 

 「く、うあああああ!!」

 

 私はどうしようもない葛藤を抱きながら、真下の海面に向かって魔力弾を打ち込み再び大きな津波を起こす。

 

 仕方ない。仕方ないんだ。今はこの3つのジュエルシードを持って、早くフェイトのところに………!

 

 しかし、転移魔法を発動しようとしたその時、誰かに腕を掴まれた。

 

 「!?」

 

 すぐにその腕を振り払おうとする。だが、

 

 「アルフ!俺だ!」

 

 それは優雨だった。

 

 「優雨!?なんであんたが………」

 

 「頼みがある!」

 

 優雨はあたしの質問を遮って言ってくる。その時、優雨の眼が見えた。その瞬間、あたしは背筋が凍ったような気がした。

 

 「俺を、」

 

 だって、その眼は

 

 「俺をフェイトの母親のところに連れていってくれ!!」

 

 あたしなんて話にならないほどの怒りを込めた眼だったから。

 

 

 

 

 津波が去った時にはすでにフェイトとアルフの姿はなかった。

 

 さっきの雷――次元跳躍魔力砲撃――はここだけでなくアースラにも直撃しており、その魔力量と技術に驚く。

 

 すぐに第2波が来ないとも限らないので、少しの間僕たちはその場で警戒態勢を取っていた。

 

 その中で大きな問題が起こっていた。

 

 

 億夜優雨の魔力反応が見つからない。

 

 

 この報告がみんなを不安にしていた。今もできうる限りの捜索はしているが、手掛かりは全くなかった。

 

 しかし、そんな中でなのはは意外にも落ち着いていた。

 

 「なのは。どうかしたのか?」

 

 そんな彼女が気になり、声をかけてみる。

 

 「あ、ううん。ちょっと考えてたんだ。優雨くんがどこに行ったのか」

 

 「!まさか、心当たりがあるのか?」

 

 そういう僕になのはは首を振る。僕は落胆にも似た感情を抱いて肩を落とした。しかし、

 

 「でももしかしたら、フェイトちゃんのところに向かったのかもしれない」

 

 そのなのはの言葉に固まった。

 

 「………なのは。いくらなんでもそれは」

 

 ない。と言う前になのはは口を開く。

 

 「優雨くんなら、きっとそれぐらいはやっちゃうような気がするんだ」

 

 なぜかその言葉には納得できてしまった。確かに優雨ならあり得るかもしれない。何故と聞かれても、それが優雨だから、としか言えないけど。

 

 だけど、

 

 「優雨くんなら、あんなのを見たらきっとフェイトちゃんと放っておけないと思うから」

 

 僕には、そう言うなのはが少し寂しそうにしていたことの方が気になっていた。

 

 

 

 

 「………ここが、時空(とき)の庭園か」

 

 俺はアルフと一緒に転移した。その場所の名は時空の庭園。アルフの話によれば、フェイトたち家族がずっと暮らしてきた場所だそうだ。今はその転送ポートのある部屋にいる。

 

 「ちょっとフェイトの様子を見てくるから、優雨はここで待っていてくれないかい?」

 

 「ああ。わかった」

 

 アルフはすぐに走り出し、部屋を出て行った。

 

 『マスター』

 

 そのあとすぐ、アイギスが声をかけてきた。

 

 『なぜ、突然こんなことを?』

 

 アイギスの疑問は当然だろう。その質問に俺はすぐに答える。

 

 「フェイトの母親、プレシア・テスタロッサに会って、確かめたいことがあるんだ。」

 

 『確かめたいこと?』

 

 「ああ。俺は2度フェイトの記憶を見てしまったわけだが、その記憶に違和感を感じたんだ。それを確かめるためには、プレシアに直接聞くか、もしくはプレシアの記憶を見るしかない」

 

 言いながら俺はアイギスにさっき使用した分のカートリッジを装填しなおす。

 

 『なるほど。しかしいいのですか?聞き出せなかった場合は記憶を見る、というとこはその能力を自分から使うということですよね?だけどマスターはその能力を………』

 

 「ああ、嫌いだ」

 

 俺はアイギスが言いたいことがよくわかる。だけど、

 

 「だけどそれよりも、必要なことだと思うから」

 

 俺は感情を殺してそう言う。アイギスはもうそれ以上何も言ってこなかった。

 

 

 

 対象物の記憶を見る能力。記憶と言う限定があるものの、言ってしまえば過去を見る能力だ。しかしそれは、相手の過去を勝手に見るというもの。相手が隠していたいことも、その気持ちもすべてわかってしまうのだ。

 

 それは最低だ。

 

 相手の想いを覗き見る行為。俺の能力はそういうことなのだ。

 

 だから俺はこの能力が嫌いだ。できる限る使いたくはない。でも、もしそれが必要なら。そんな能力を使ってでも知らなければならないことがあるなら。俺は迷わない。

 

 それがフェイトやプレシア、そして「アリシア」の秘密を知れるなら。

 

 

 ………

 

 今思ったが、プレシアと「アリシア」という名は似ているな。

 

 もしかしたら、フェイトはもともとアリシアのという名前だったんじゃないか?

 

 だけどそれなら、どうしてフェイトと呼ぶようになったんだ?

 

 そもそも、呼び方がアリシアからフェイトに変わった時から、プレシアの態度はがらりと変わっている。それに、フェイトのしぐさや性格、魔力資質なども。そこに、その間に何があった?

 

 思い当たるのはフェイトがプレシアに、最後にアリシアと呼ばれた時のひとつ前の記憶。プレシアが働いていた場所が光った記憶だ。

 

 「………!?」

 

 そこまで考えて、一つの仮説に行き当たった。

 

 この仮説が正しければ、フェイトのその周りで変わったすべてのことの説明がつく。

 

 だけど、それはできれば当たってほしくはなかった。もしこの仮説が本当だとしたら、フェイトは………。フェイトの心は耐えられるだろうか?

 

 いや、今はそのことは考えるな!

 

 俺は頭を振って、そこまでの考えを慌てて振り払う。

 

 俺はいてもたってもいられなくなって、その部屋を出ることにした。

 

 一刻も早くプレシアに会ってすべてを聞き出す。そうすればすべての答えは出るはずだ。

 

 俺は躊躇いを振り払い、能力を使う。

 

 見るのはアルフが出て行った先の廊下の記憶。そこにはさっきのアルフの記憶と言う名の思いが残っている。俺はそれをたどって、アルフの、フェイトのもとへ向かった。

 

 

 「フェイト!フェイト!!」

 

 俺が記憶をたどって走っていると、そんな声が聞こえた。それは今は知っている廊下の先の部屋からのものだった。

 

 俺はジャンプ・ステップまで加えてスピードを上げその部屋に飛び込む。

 

 そこはまるで王の玉座のような場所だった。全体的に紫色で統一されており、床には円を中心にして4つの線が描かれ、それが淡く光っている。そしてその円の中心には、

 

 「フェイト!?アルフ、これは………?」

 

 そこには傷だらけのフェイトを抱きしめ、泣いているアルフがいた。

 

 「………あいつだよ。フェイトの母親が、あの鬼ババがやったんだよ!!」

 

 俺は一瞬その言葉が信じられなかった。

 

 確かに俺は、最初にフェイトの記憶を見てしまった時に、プレシアがフェイトを鞭で叩いていたのを見てしまっていた。だから、その時からフェイトはプレシアに虐待されているとわかってはいた。

 

 だが、今目の前にいるフェイトは、その時の記憶よりも、もっとひどいありさまだった。服のいたるところが裂け、ひどく衰弱している。そしてその顔は、記憶で見たどんな顔よりも苦痛に染まっていた。

 

 俺の心は、すぐに怒りに支配される。

 

 フェイトを見たショックもあり能力はすでに発動していた。だからプレシアの場所も分かっている。

 

 「アルフ。フェイトを頼む」

 

 「………優雨?」

 

 俺は、プレシアが向かったドアを睨みつけたまま言う。

 

 「俺は、プレシアと話がある」

 

 俺の顔を見たアルフは、恐怖していた。

 

 俺は今、どれほどひどい顔をしているんだろうな。

 

 俺はアルフの返事を聞かないまま、プレシアの入った部屋に向かった。

 

 

 

 

 あたしは、優雨を追うことができなかった。

 

 本当は、あたしが鬼ババのところへ行くつもりだった。

 

 だけどさっきの、優雨の顔を見て、あたしは怒りが恐怖に変わっちまった。それほどまでに、その時の優雨は殺気を出してたんだ。

 

 その顔はいつも通りの無表情のくせに、本当に今までにないほどの、さっきあたしに「連れて行け」と言っていた時よりも強い怒りを持っていたように思える。

 

 正直に言うとあたしは優雨のそんな顔を見たくなかった。

 

 優雨はいつも無表情で、何を考えてるのかわからないときがあるけど、だけどその眼は、いつも優しさを持っていたと思う。

 

 そんな優雨だからこそ、フェイトもあたしも心を開けた。優雨の優しさはいつもあたしたちを包み込んでくれた。

 

 なのに、そんな優しさとは全く真逆の強い殺気。それを出す優雨にはいつもの優しさなんて微塵もなく、恐怖しか抱くことはできなかった。

 

 正直、フェイトが起きていなくてよかったと思う。優雨のあんな顔はフェイトには見せられない。フェイトの中の優雨は、ずっと、優しい優雨であってほしい。だってもしかしたら優雨は、フェイトの初めての友達かもしれないんだから。

 

 そこまで考えて、あたしはここに来る前の出来事を思い返した。

 

 あの子、なのはだったっけ?あの子もフェイトに、友達になりたいって言ってくれたんだったね。

 

 ずっと戦ってきたのに………。

 

 そういえば、あの子はいつも、フェイトに話しかけていた。

 

 あたしはフェイトのことで頭がいっぱいで、ろくに聞こうともしなかったけど、だけどなのはもきっと、ずっとフェイトのことを気にかけていてくれてたってことなんだろうね。

 

 ………ほんと、悪いことしたね。

 

 そこまで考えた時、

 

 「!」

 

 優雨が出て行った方、つまりプレシアと優雨があっているであろう場所から爆発音が聞こえた。

 

 「………ごめんねフェイト。あたし、行ってくるよ!」

 

 あたしは、フェイトを横にしてバリアジャケットのマントをかけてあげる。そして、その部屋に向かって走り出した。

 

 

 

 

 ………ここか。

 

 俺は扉を開けようとしてみるとどうやら鍵がかかっているようで開かなかった。

 

 「面倒だな。破壊するぞ、アイギス」

 

 『わかりました』

 

 アイギスもいつもより声が低い。どうやら本気で怒ってくれているようだ。

 

 俺はペネトレイ・ライフルを構える。

 

 そしてライフルに魔力を流し込み、登録されたスペルの一つを発動させる。

 

 「ロード・ブラスター!ファイア!」

 

 『レベルBスペル、ロード・ブラスター!』

 

 圧倒的な貫通力を持つ優雨が最も多く使う砲撃。それは分厚い扉に直撃し、大きな爆発音ともに大穴をあけた。

 

 「行くぞ」

 

 俺は誰に言うでもなくそう言い、あけた穴から中に入った。

 

 

 中に入ると、紫がかった黒の、少しきわどい服を着た髪の長い女性がいた。それは間違いなく、何度もフェイトの記憶の中で見たプレシア・テスタロッサだった。

 

 彼女はこちらを一瞥するととても不愉快そうに眉をひそめた。

 

 「あなた、確かあの時フェイトを庇った少年ね。なぜここにいるのかしら?」

 

 「お前に話があるからだ」

 

 プレシアのもとへ歩きながら答える。

 

 「何で、フェイトにあんなことをするんだ?」

 

 俺の問いにプレシアは

 

 「ああ、そういうこと………」

 

 そう、あきれたように答えた。まるで、何を馬鹿なことを言っているんだろう?と、言いたげに。

 

 「っ、ふざけるな!!」

 

 俺には許せなかった。

 

 「あんたはあいつの母親で!あいつはあんたの娘だろ!?いつも無理して、お前のためにあんなに頑張ってる娘に、なんであんなことができるんだ!!?」

 

 頭にかすめるのは前世の記憶。母さんや俺たちを苦しめた父さんと、俺のせいで罪を背負い、俺たちのために頑張って、そして俺のせいで死んでいった母さんの記憶。

 

 最悪な思い出だ。でも、母さんの俺たちを思う気持ちは本当に嬉しかった。どんなに苦しくても、そんな雰囲気を俺たちに感じさせまいといつも優しく気丈にふるまっていた。

 

 それとは逆に父さんはいつも家族を苦しめていた。暴力なんて日常茶飯事だ。

 

 そんな俺の家族はひどいものだったと言っていい。いつだって家の中は荒んでいて、嫌な場所だった。

 

 他の家庭をうらやましく、妬ましく思ったことだって一度や二度じゃない。

 

 でもだからこそ、他の誰にもそんな思いはしてほしくなかった。自分と同じような苦しみは、誰にも味あわせたくなかった。

 

 そしてそれは今でも変わらない。むしろより強くなっている。

 

 だから、自分の娘を虐待するような行為をさも当然のように言うプレシアを許せなかったのだ。

 

 しかし、プレシアはそんな俺の言葉を嘲笑した。

 

 「うるさい子ね。私の前から消えなさい」

 

 そう言ってプレシアはこちらに向かって魔力弾を放ってきた。

 

 「っ!」

 

 その弾速は早かったが、ぎりぎりで右に跳び、かわすことができた。

 

 「悪いが………」

 

 『セカンド・ドライブ、ストライク、発動!』

 

 「そうはさせない!!」

 

 俺は「セカンド・ドライブ」によって早くなった身体速度によってすばやくプレシアに接近し「ストライク」を纏った剣で切りかかる。

 

 「甘いわ」

 

 しかしその剣はプレシアの張ったシールドに遮られてしまった。

 

 「甘いのはどっちだ!!」

 

 俺はすぐにアイギスに指示を出す。

 

 「アイギス!ディフェンス・フォーム!」

 

 『?り、了解!』

 

 アイギスが疑問を浮かべたのも分かる。ディフェンス・フォームは防御のためのシールドだ。相手が防御しているこのタイミングで発動するのは、普通に考えたらおかしい。

 

 しかし、俺が目をつけたのはその特性だ。

 

 ディフェンス・フォームは超高速振動によってぶつかった魔力を拡散させ、魔力弾や魔力砲撃の威力を殺し無効化するもの。

そう。"ぶつけさえすれば"どんな魔力でも拡散させるのだ。

 

 俺はディフェンス・フォームのシールドをプレシアの張ったシールドにぶつかるように張った。

 

 すると、プレシアの張ったシールドは超高速振動によって一瞬震え、すぐにぶつかっていた箇所が拡散された。

 

 「な!?」

 

 プレシアの驚いた声が聞こえる。

 

 プレシアのシールドに穴が開いたことを確認すると同時にディフェンス・フォームを解除し、そこにストライクを突き立てる。すでに崩壊しかけていたシールドは、それで完全に崩壊した。

 

 本来ならこのまま切り付ければいいのだが、今回は話すために来ているのだ。さっきの怒りもあり、とにかく切りつけてしまいたいが、何とか抑え、プレシアに掴み掛る。

 

 そしてその瞬間、

 

 「………っ!」

 

 

 

 

 俺は答えを見た。

 

 

 

 

 予想はできていたから、あまり驚きはしなかった。だけど、それでもやはり信じたくなかった。

 

 だけど同時に、それとは別のプレシアが心の奥にしまった「アリシア」との昔の思い出が見えた。そこにあったのは、本当に幸せそうに笑う、思わずうらやましいと思ってしまうような、そんな家族の姿。

 

 「………っ」

 

 どうして、どうしてこんなことになるんだよ!!

 

 俺は、誰に向けるわけでもない、どうしようもない怒りに震えた。

 

 だけど、今はプレシアに伝えないと。

 

 フェイトを、プレシアを救えるかもしれない、あの記憶を!

 

 「………プレシア、いい加減気付けよ!なくしたものはどうあっても戻らない。たとえどれだけ研究しても、アルハザードへの道を見つけたとしても!死んでしまった人を取り戻すことなんてできないんだ!!」

 

 「!!どうしてあなたが、それを知っているの!?」

 

 「そんなことはどうでもいいんだよ!!今アリシアは確かにいないけど、お前にはフェイトがいるだろ!?どうしてフェイトじゃ駄目なんだよ!?」

 

 「黙りなさい!!」

 

 突然腹に痛みが走った。プレシアが俺に腹に魔力弾を撃ったのだ。

 

 「ぐッ、ガアアア!!」

 

 『マスター!?』

 

 非殺傷設定になっていない本気の一撃。それは、クロノの放った牽制のためのものとは比べ物にならないほどの激痛だった。

 

 俺はたまらず吹き飛ばされ、うずくまる。

 

 「いつも仕事ばっかりで、全然一緒にいてあげられなかった。研究が終われば、それまであげられなかった時間をすべて、アリシアのために使うつもりだった。なのに!!あんな失敗作のための愛なんてあるわけないじゃない!!」

 

 「ふざけるな!!」

 

 俺は痛む体を無視して無理やり立とうとする。

 

 「フェイトだって、お前の娘だろ!!たとえクローンだとしても、お前が生んだお前の娘だ!!それにアリシアだって言ってただろ!"妹"が欲しいって!!」

 

 「!!」

 

 俺はプレシアの記憶の中で見たんだ。プレシアがアリシアに、誕生日のプレゼントに何がいいかと聞いて、そしてアリシアが、「妹が欲しい!」と言ったのを。

 

 そう、生まれ方が普通と違うとしても、確かにフェイトはプレシアの生んだ娘だ。つまりアリシアにとってのフェイトは妹なのだ。

 

 「………わたしは」

 

 「優雨から、離れろおおおお!!」

 

 

 

 

 あたしは爆発があった方向へ走っている。

 

 扉の向こうにはまだ通路があって優雨はずっと先へ行ったようだった。

 

 フェイトを倒した優雨なら、万全の時の優雨なら大丈夫だと思う。だけど今の優雨はまだ無理はできない状態だと言っていた。そんな優雨にもしものことがあったら、フェイトは悲しむだろう。もちろん、あたしだって嫌だ。

 

 それに、あたしは誓ったじゃないか。フェイトのためにも、優雨をもう傷つけさせないって。

 

 だからあたしは優雨を守るために走る。

 

 

 やがて大穴の開いた扉が見えた。おそらく優雨が開けたものだろう。ならこの中に優雨はいる。

 

 あたしはその穴に飛び込んだ。

 

 そこには、おなかを抑えながら立とうとしている優雨と、杖を優雨に向けている鬼ババがいた。

 

 あたしは、自分の頭が熱くなるのを感じた。

 

 なんで、なんであんたは………っ!

 

 「優雨から、離れろおおおお!!」

 

 あたしの大切な人たちを傷つけんのさ!?

 

 あたしは、怒りのままに鬼ババに殴り掛かる。

 

 「アルフ!?」

 

 「………ふん」

 

 しかしその攻撃は鬼ババの張ったシールドで簡単に防がれてしまう。

 

 しかも、

 

 「なっ!バインド!?」

 

 こぶしが当たったところから紫に光る鎖が何重にも腕に巻きついた。「カウンター・バインド」その名の通り、相手の攻撃を受けると同時に発動し、相手の動きを封じる。接近戦を主体とする者の天敵ともいえるバインドだ。

 

 「教育がなっていないわね」

 

 バインドのせいで身動きが取れないあたしに、鬼ババは自分の杖を鞭に変えてそのまま横なぎに振った。

 

 「っうあ!!」

 

 鞭はあたしの脇腹に直撃してあたしを拘束していたバインドを砕いて吹き飛ばした。そのまま、あたしは優雨のすぐそばの柱にぶつかり、さらに痛みが増す。

 

 「アルフ!!」

 

 優雨がすぐにあたしに近寄る。

 

 「くっ………!!」

 

 顔を上げると、すぐ目の前にデバイスをこちらに向けた鬼ババがいた。

 

 「邪魔よ。私の前から消えなさい」

 

 鬼ババがそう言うとデバイスの先に魔力が集束される。

 

 「っ、プレシア!」

 

 『マスター!?』

 

 優雨があたしをかばうようにあたしとプレシアの間に割り込む。

 

 優雨はすでに満身創痍だ。まともに何かできるはずもない。

 

 「優雨………このっ!」

 

 あたしは痛む体を無視して魔方陣を優雨とあたしを囲むように展開して範囲内の床を崩れさせた。あたしと優雨がそのままそこに落ち、同時にプレシアの魔力弾が放たれすぐ後ろの柱に当たり爆発した。その爆風に巻き込まれさらに体が痛くなる。

 

 だけど、優雨は絶対に救ってみせる!!

 

 あたしは一緒に落ちている優雨を抱き寄せて、転送魔法を使った。

 

 

 

 

 フェイトの使い魔と、少年が転送されたのを見ながら、私は彼が言った言葉を考えていた。

 

 あの時彼が言った言葉が頭に響く。「それにアリシアだって言ってただろ!妹が欲しいって!!」

 

 「うるさい」

 

 そう言われた時、あたしの中にあったアリシアの、一緒にピクニックに行ったときに約束した時の記憶がよみがえってきた。

 

 確かにあの時アリシアはそう言った。そして私は、アリシアの笑顔に負けて、約束した。妹をプレゼントすると………。

 

 「うるさい、うるさい!」

 

 フェイトはアリシアの体のデータと記憶から作り出したクローン。確かに生まれ方は違った。でもそれなら確かにフェイトは………。

 

 「うるさいっ!!」

 

 私はでたらめに魔力弾を展開し適当に放った。瞬間、少し離れたところで大きな爆発が起こる。

 

 「あんな失敗作がなんだっていうのよ!!あんなまがい物が、あんな………ッ!」

 

 そうだ。あれはただのまがい物。アリシアじゃない。

 

 「私にはアリシアが必要なのよ!アリシアだけが………!あんなまがい物じゃない!!」

 

 

 

 

 

 (アリシア。お誕生日プレゼント、何かほしいものある?)

 

 (ううんとねえ………。あ!私、妹がほしい!)

 

 

 

 

 

 「っ!!」

 

 一瞬脳裏をかすめる忘れていた記憶。

 

 「あんなもの捨ててしまえばいい!あんな役立たずなんて、あんな人形なんて!!」

 

 

 

 

 

 (だって妹がいたらお留守番も寂しくないし、ママのお手伝いもいっぱいできるよ!)

 

 

 

 

 

 「っ!ああ!!」

 

 次々とあの時の記憶が蘇ってくる。

 

 

 

 

 

 (妹がいい!ママ、約束!)

 

 

 

 

 

 「ああ、でもアリシアとの約束が、ああ、あああ、あああああ!!」

 

 暗いボロボロの部屋の中にその悲鳴はむなしく響き渡っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は、一つの想いを願うことにした。

 

 「………そう。いつもそうね」

 

 あの少年が、なぜ私の過去を知っているのかはわからない。だけど、そんなことは関係ない。

 

 私はもう、戻れない。

 

 「いつも気付くのが、遅すぎる」

 

 いつの間にか、頬は濡れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どこかで誰かが、何かを訴えているような、そんな気がした。

 




リンディ
 ジュエルシードはすべて見つかった。
 しかし、その半数はまだフェイトさんたちが持っている。
 そんな中、なのはさんたちはいったん海鳴市へと帰ることとなった。
 そして優雨君は意外なところから見つかることとなる。
 次回 「思い出 of A」







リンディ「皆さん。ご愛読ありがとうございました」

作者「打ち切りみたいな響きを入れないでくださいよ」

リンディ「あら?そうだったかしら。まあそれはそうと、次回は思い出話なのね」

作者「はい。誰の思い出話かは of A から察してください」

リンディ「そんな言い方したらわかりやすいじゃないの」

作者「そうすかね。そういえば後から気づいたんですけど、バルディッシュって普通に英語で
   しゃべってたんですね………。バルディッシュってドイツ語だからてっきりドイツ語で
   しゃべってたんだと思ってました」

リンディ「あら。ミッド式なんだから当然じゃない。勉強不足ね」

作者「ぬう………」

リンディ「それじゃそろそろお別れね」

作者「はい。では次回お会いしましょう」ノシ
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