魔法少女リリカルなのはEX・S 過去にとらわれた転生者   作:レイレナード

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遅くなってすみません。

この時期はいろいろとリアルが忙しくてあまり執筆時間が取れなくて。

少し更新が遅れがちになるかもしれませんが、よろしくお願いします。

では、どうぞ


Episode22 怒り

 今、何が起こったの?

 

 フェイトちゃんと戦って、やっと勝って。

 

 フェイトちゃんの前に女の人が、フェイトちゃんのお母さんが表れて。

 

 それでその人がフェイトちゃんの頭を撫でようとしているように見えた。

 

 よく頑張ったねって、言ってるように見えた。

 

 なのになんで、なんで今フェイトちゃんは、墜ちてるの?

 

 

 

 

 「あああああああああああああああああああああああああああっ!!」

 

 一瞬、それはフェイトの悲鳴だと思った。

 

 しかしその声の主はフェイトを貫いた雷を放ったフェイトの母、プレシア・テスタロッサに襲いかかっていた。

 

 何度ぶたれても、何度突き放されても、それでも母のために頑張っていた自らの主。そんな主に対して行われたその母の行為。

 

 もはや自分の感情を、その怒りを抑えることなど、アルフにできるはずがなかった。

 

 しかし、

 

 「うるさい使い魔ね」

 

 プレシアは瞬時にシールドを張る。しかも、

 

 「なっ、がああああああああああ!!」

 

 そのシールドは表面が電気変換により放電されており、怒りに任せて飛びかかったアルフをあっさりと弾き飛ばす。

 

 「アルフさん!!」

 

 気負失っているのか、呼びかけても反応がない。しかし、すぐにそれに反応した人物がいた。

 

 アルフのわきを黒い影が通り抜け、アルフを受け止める。そしてその影はさらに加速して下に降り、今まさに海に落ちようとしていたフェイトを受け止めた。

 

 「優雨くん!」

 

 その影、優雨はアルフを背負い、バリアジャケットが解除された私服姿のフェイトを抱きかかえている。

 

 しかし、優雨は顔を伏せたままだった。その肩は何かを抑えつけているかのように震えている。

 

 (優雨、くん?)

 

 そんな優雨の様子に、なのはは悲しくなった。なぜなら今優雨から感じるものは怒りでもましてや恐怖でもない。

 

 「………どうしてだ」

 

 まぎれもない、悲しみだったから。

 

 「どうしてなんだ!?プレシア・テスタロッサ!!」

 

 その瞳には涙がたまっていた。

 

 

 

 

 「どうしてなんだ!?プレシア・テスタロッサ!!」

 

 俺の叫びを聞いても、プレシアは一笑しただけで転移魔法を発動させた。その手にはフェイトが持もっていたであろう9個のジュエルシードがある。もはやここにいる意味はないと言わんばかりだ。

 

 「待て!待ってくれプレシア!もう一度考えてくれ!俺が言ったことを、アリシアの言葉を!!」

 

 アリシア。プレシアの一人娘であり、プレシアの行動理由。その名の上げても、プレシアは止まろうとしない。

 

 しかし、

 

 「アリ、シア………?」

 

 「!」

 

 見ると、フェイトがうっすらと目を開けていた。とりあえず無事なようで、思わずほっとする。

 

 「そうね。考えたわ」

 

 頭上からの声。気付けば、プレシアがこちらを見下ろしていた。

 

 「だけど答えは変わらないわ。所詮は身代わりの人形。しかも出来損ないの失敗作。そんなものを娘扱いするのはもう、終わりにするわ。聞いていて?フェイト」

 

 プレシアは確認するようにフェイトを見る。それに応えるように、フェイトはゆっくりと、怯えたように震えながらプレシアを見た。

 

 「あなたの事よ」

 

 「!!」

 

 たった一言の真実。その絶望がフェイトを貫く。

 

 「せっかくアリシアの記憶をあげたのに、そっくりなのは見た目だけ。研究の手伝いに利用するぐらいしか価値のない、私のお人形」

 

 そこまで言って、プレシアは思い出したように笑う。

 

 「ああ。もう、その程度の価値もないんだったわね」

 

 見たものすべてに恐怖を抱かせるような、見下した笑み。

 

 俺でさえ、背筋が冷たく感じた。

 

 「こ、のぉっ」

 

 「!アルフ!気が付いたか」

 

 気付けば、アルフが目を覚まし、その顔を怒りで歪めていた。

 

 「アルフ、気持ちはわかるが、少し落ち着け」

 

 「…っ。くっ!」

 

 アルフは悔しそうに顔をそらした。きっと自分でもわかっているんだ。今飛び込んでも、何もできないってことが。

 

 「ゆ、優雨」

 

 ふいに俺を呼ぶ声。振り返ると、ユーノが俺を見ていた。

 

 「君は、何か知っているのかい?」

 

 その言葉に、その場の全員の視線が俺に集まる。それを受け止め、俺はプレシアの言葉を補足するように、真実を言う。

 

 「………昔、プレシアが働いていた場所で事故があって、その時にプレシアの一人娘、アリシア・テスタロッサがなくなったんだ」

 

 「………一人、娘?」

 

 俺の言葉に、アルフが疑問を口にする。きっとなのはやフェイト、ユーノも感じでいる疑問だろう。でも、きっとみんなさっきのプレシアの言葉でうすうす感づいているはずだ。ただ認めたくないだけで。

 

 「安全管理不良で起きた魔導炉の暴走事故。アリシアは、それの唯一の被害者だった。そして、その後プレシアが行っていたのは使い魔を超えた人造生命の生成。死者蘇生の技術」

 

 ちらりとプレシアを見れば、答え合わせをするかのように、笑う姿。

 

 ………プレシア。お前は今、何を考えている?

 

 「記憶転写型特殊クローン技術。プロジェクトFATE」

 

 その名を聞いて、プレシアを除く全員が驚く。なのはとユーノとアルフは心配そうにフェイトを見る。そして俺の腕の中にるフェイトは、うつむいていてその顔を見ることはできない。

 

 「そう。その通りよ」

 

 いつの間にか、プレシアの横にディスプレイが表示されていた。そこに移っているのは生体ポットのようなものに入った、幼い金髪の少女の姿。

 

 「でも、失ったものの代わりにはならなかった。作り物の命は所詮作り物」

 

 その少女、アリシアを見る眼は、それだけは、深い絶望を知った母親の眼だった。

 

 「アリシアはもっと優しく笑ってくれたわ。わがままも言ったけど、私の言うことをとてもよく聞いてくれた。アリシアは、いつでも私に優しかった」

 

 しかし、すぐにその眼は怒りに変わり、うつむくフェイトを睨みつける。

 

 「フェイト」

 

 いつもの、フェイトを呼ぶ時の声。なのに俺にはその先に何を言うかが分かった。わかってしまった。

 

 「あなたは私の娘じゃない」

 

 「………やめろ」

 

 しかしプレシアは言葉を止めようとはしない。

 

 「ただの失敗作」

 

 「やめろ」

 

 そして、

 

 「だから、あなたはもういらないわ。どこへなりとも消えなさい!!」

 

 「っ」

 

 「やめろ!」

 

 思わず手に力が入る。そのせいなのかプレシアの言葉を聞いたからか、フェイトの体が震えているのが分かる。

 

 見れば、待機状態でもわかるくらいボロボロになっている愛機を、ギュッと握っていた。まるで痛みに耐えるように。

 

 それ以上言うな。もう、フェイトを傷つけるな!

 

 「それ以上は、もう!」

 

 しかし俺の言葉などで、プレシアを止めることなどできはしなかった。

 

 「教えてあげるわ、フェイト」

 

 「やめろ!!」

 

 プレシアは言葉を続ける。

 

 「あなたを作り出してからずっとね、私はあなたが――」

 

 そして、決定的なその言葉を、

 

 「――大嫌いだったのよ」

 

 言ってしまった。

 

 「………っ」

 

 小さく漏れるフェイトの声。

 

 ガシャン、と何かが落ちて壊れる音が響いた。足元を見れば、フォールエアで足元に展開された足場に、バルディッシュが落ちていた。そしてその瞬間、フェイトの体から力が抜けた。

 

 「!フェイト………っ!」

 

 手足がだらりと伸び、うつむいていた顔も重力に従って上を向く。そしてようやく見えたその顔には生気がなく、その瞳に光はなかった。

 

 「さあ、私はもう行くわ。管理局ももう簡単には動けない。たった9個のジュエルシードでたどり着けるかはわからないけど」

 

 プレシアの声が聞こえる。しかしその声を頭は聞いていなかった。

 

 「………どうしてだ」

 

 腕の中にいるフェイトはピクリとも動かない。なのはやアルフがどれだけ呼びかけても、その瞳に光が戻ることはなかった。

 

 「どうしてこうなるんだよ!プレシア!!」

 

 突然大声を上げた俺に、なのはたちは驚く。しかし、そんなものは俺には見えない。ただ眼を瞑って感情のままに叫ぶ。

 

 「前にも言ったはずだ!どんなに生まれ方が違っても、フェイトはお前の娘なんだ!」

 

 フェイトを苦しめる理不尽が許せなかった。

 

 「アリシアの代わりじゃない、アリシアの妹なんだよ!!アシリアの残した最後の願いだったんだろ!?」

 

 アリシアの気持ちを無駄にしてほしくなかった。

 

 「頼むから、今を見てくれ!!プレシア・テスタロッサ!!」

 

 そして、プレシアに今を見つめて生きてほしかった。

 

 過ぎてしまった時間を苦しむのは仕方がない。それを忘れろなんて言うつもりはない。そんなこと、できるはずがないから。

 

 それでも人は今日を生きて、明日を求めなくちゃならない。でないと、その場所からいつまでたっても抜け出せないから。それじゃ、ただ意味もなく苦しむだけだから。たくさんの人が傷つくだけだから。

 

 だから、

 

 「フェイトの傍にいてやってくれ!!」

 

 俺は顔を上げて、プレシアを見る。プレシアはその時すでに転移魔法によって消える寸前だった。だが――

 

 「………え?」

 

 

 

 

 優雨くんが顔を上げるのと同時に、プレシアさんは消えていった。

 

 でも、私はそれよりもフェイトちゃんが心配で、その顔を覗き込む。しかしやっぱりさっきと変わらず、その顔に生気はない。それほどまでに心を閉ざしてしまったんだ。

 

 「フェイトちゃん………」

 

 それが悲しくて、私はフェイトちゃんを抱きしめる。今は、そうしていたいから。

 

 「なのは」

 

 そうしていると、ユーノくんが私の肩に手を置いてこちらを見ていた。

 

 「フェイトをアースラに転送してもらおう。そして僕らは、プレシアを止めるんだ」

 

 「ユーノくん………」

 

 その眼は強い決意の眼。責任感からジュエルシードを集めていた時とは違う、純粋な気持ち。

 

 「うん。そうだね。私たちはプレシアさんを止めなくちゃ。ユーノくん。少しで言いから、魔力分けてくれる?」

 

 「わかった」

 

 すぐにユーノくんは私に魔力を分けてくれる。さっきまでのダメージはやっぱり大きいけど、ここでじっと何てしていられないから。

 

 そのまま、私は考える。確か今転移先はクロノくんたちが調べているはず。ならきっとそのうち連絡が………?

 

 「ねえ、ユーノくん。どうしてアースラから連絡が来ないのかな」

 

 「え?」

 

 ふと浮かんできた疑問。よく考えれば、プレシアさんが転移してきた時点で、何かしら連絡があってもいいはずだ。それどころか、黒幕と呼べる存在がいたのだから、クロノくんが転移してきてもおかしくない。しかし実際は通信の一本もない。

 

 私の考えを伝えると、ユーノくんも考え出す。

 

 「確かにおかしい。もしかして何か………あ!」

 

 すると、すぐにユーノくんが声を上げる。何かに気付いたようだ。

 

 「さっきプレシアがこう言ってた。"管理局ももう簡単には動けない"って!」

 

 「あ!それって!」

 

 私もそれを思い出し、すぐに予想が立つ。ユーノくんもそれに頷いて答える。

 

 「うん。たぶん今アースラで何かが起こってるんだ。僕たちに連絡できないほどの何かが」

 

 その推測に、私はあわてる。

 

 「そ、それじゃあ早く戻らないと!」

 

 「でもアースラの位置が変わってるかもしれないから下手に転移できないし、今試したけど、こっちから連絡することもできないみたいなんだ」

 

 「そんな………」

 

 それじゃあ私たちはここで待っていることしかできないってこと?そんなこと、できるわけないよ!

 

 「そ、そうだ!優雨くん!」

 

 私はさっきから何も言ってこない優雨くんに聞いてみることにする。きっと優雨くんなら何か思いつくはず。

 

 「ねえ、優雨くんは何か――」

 

 「………るな」

 

 「え?」

 

 優雨くんが何か言ったが、声が小さくてよく聞き取れなかった。もう一度聞こうと聞き返そうとすると、

 

 「ふざけるな!!」

 

 「え!?ご、ごめんなさい!?」

 

 突然優雨くんが叫んだ。その言葉に思わず謝ってしまう。でもそれは私たちに向けられたものではなかった。

 

 「ふざけるなよプレシア!そんな、そんな決断!認めるわけないだろうが!!」

 

 今は誰もいない、さっきまでプレシアさんがいた場所を睨みつけて、優雨くんは叫ぶ。

 

 そんな優雨くんに私やユーノくんはもちろん、アルフさんまで驚いている。

 

 「アルフ!」

 

 「は、はい!?」

 

 優雨くんは背中におぶっているアルフさんを見る。

 

 「もう飛べるな?フェイトを頼む」

 

 「へ?あ、ああ」

 

 アルフさんを下して、フェイトちゃんを任せる。

 

 「全員こっちに寄れ。アースラに転移する」

 

 「え!?で、できるのかい!?」

 

 ユーノくんが驚いて優雨くんに聞く。

 

 「アースラの転送装置とアイギスは繋がるようにしてある。アースラに転移すれば、そこにつく」

 

 そう説明する優雨くんはいつもと変わらないように見えるけど、少し怖く感じた。いつもの優しい雰囲気は、今はどこにもない。

 

 「行くぞ、転移」

 

 『目標、アースラ』

 

 アイギスが優雨くんに応えると、魔法が起動し、私たちはアースラに転移した。

 

 

 転移が終わり、気付けばアースラの転送装置の部屋だった。しかし、

 

 「わ!揺れてる!?それにこのアラート………」

 

 「やっぱり何かあったんだね」

 

 部屋の外に出ても警報はやっぱりなり続けている。

 

 「皆、俺につかまれ!ジャンプステップで一気にブリッジへ向かう!」

 

 「うん!」

 

 私たちが優雨くんに摑まると優雨くんは魔法を発動して、連続で転送していく。

 

 「っ、わああ」

 

 私は思わず感嘆した。転送魔法を駆使した高速移動。その圧倒的な速さと、不思議な感覚。

 

 優雨くんはいつも、こんな感じの中で戦ってたんだ………。

 

 気付けばすでにブリッジの前。皆が優雨くんから離れると、すぐにブリッジの扉を開いてブリッジに入る。

 

 「リンディ提督!」

 

 「! 優雨さん!なのはさんたちも………、それに、フェイトさんもいるわね」

 

 優雨くんが呼びかけると、リンディさんは安心したように息を吐く。

 

 「あの、いったい何があったんですか?」

 

 そう聞くとリンディさんはアースラで起こっていることを説明してくれた。

 

 「まず次元跳躍攻撃が来たんだけど、それはシールドで防げた。でもその隙にハッキングを受けてね。その直後に、艦内に敵のものと思われる大量のロボットが転移されてきたの」

 

 「ロボット?」

 

 アルフさんがロボットと言う単語に反応した。リンディさんがそれに気付くと、アルフさんもそれに応えるように前に出る。

 

 「そのロボットって、どんな見た目なんだい?」

 

 「迎撃に向かったクロノの報告では、外見は様々だけど、こんなのね」

 

 リンディさんの横にディプレイが表示され、そこにロボットが映し出される。それは西洋鎧をいびつにしたような見た目で、確かにいろんなのがいた。

 

 それを見たアルフさんは、やっぱり、と呟く。

 

 「これは傀儡兵だよ」

 

 「傀儡兵?」

 

 私は聞き返すと、アルフさんは頷いて説明する。

 

 「普段は屋敷の警備のためのものなんだけどね。小型の奴から大型の奴まで様々だけど、そのすべてがAクラス以上。特に大型は砲撃性能も高いけど、それよりも防御力が高くてね、厄介だよ」

 

 「そう。情報ありがとう」

 

 リンディさんがアルフさんにお礼を言うと、さらに、と続ける。

 

 「もう一つ困った問題が、目の前のあれ」

 

 「あれ?」

 

 リンディさんが見ているのはブリッジの大きなディスプレイ。そこには、巨大な何かがあった。

 

 「な、なに?あれ」

 

 「な!?あれは!」

 

 一つ目を中心とした丸い外見で、たくさんのとげが突き出しているかのような何か。

 

 「あれは一種のコロニーのようなもの。時空の庭園、と言ったところかしら」

 

 「………その通りだよ」

 

 アルフさんが応える。偶然にも時空の庭園と言う呼称はあっていた。

 

 「つい先ほど、あの庭園の内部に異常な魔力暴走を感知したわ。その影響で次元振が発生してる。彼女の持つジュエルシードが全て発動したのよ」

 

 この揺れは次元振のせいだったんだ。でも、

 

 「そんなことをしていったい何が?」

 

 ユーノくんが聞く。それは私も疑問に思う。ジュエルシードは願いを叶える石だけど、ああいうふうに暴走したら周囲に被害を出すだけなんじゃあ。

 

 「………さっき。なのはさんたちがここに来る前にプレシアから連絡があったのよ」

 

 「「「!!」」」

 

 「その時彼女は言ったわ。ジュエルシードと庭園とこのアースラの二つの駆動炉、それらを暴走させることで生まれる膨大なエネルギーを使って私たちは旅立つ、と」

 

 「旅、立つ?」

 

 アルフさんがつぶやいたその疑問にリンディさんはまっすぐこっちを見て答えた。

 

 「永遠の都アルハザード。忘却の都とも呼ばれるそれは過去に滅んだとされる伝説の世界。そこには数々の秘術が眠るとされているの。おそらくそれを使って、取り戻そうとしているのよ」

 

 「取り戻すって、まさか!」

 

 その意味に私は気付けた。取り戻す。プレシアさんがなくしたもの。それは、

 

 「………なくした時間と、娘を」

 

 次元振によって船が揺れるなか、私たちは少しの間、動けなかった。

 

 

 

 「………あそこに、プレシアがいるのか?」

 

 「え?」

 

 聞いたのは優雨くん。優雨くんはじっと時空の庭園を睨みつけたままアルフさんに聞いていた。

 

 「あ、ああ。たぶんね」

 

 アルフさんは少し声がどもってしまっていた。

 

 やっぱり、怖い。今の優雨くんからは怒りしか伝わってこない。そんな優雨くんは、できれば見たくなかった。

 

 「………リンディ提督」

 

 優雨くんは振り返り、リンディさんを見る。

 

 「俺に、あそこに行かせてください」

 

 そこにあるのは決意の瞳。それはきっと揺らぐことのない強い思い。

 

 「一人で行くと言うの?」

 

 「ほかに来る人がいないのなら、そうなります」

 

 でも、その怒りを纏った決意とは、どんなものだろう。私は………、それを確かめたい。

 

 「だったら、私も行きます!」

 

 しかし優雨くんはすぐに首を振った。

 

 「なのはは駄目だ。まだフェイトとの戦いのダメージが残っているだろう。ユーノから魔力を分けてもらったとはいえ、半分以下だ。危険すぎる」

 

 「でも!」

 

 「駄目だ!」

 

 「………」

 

 「………」

 

 沈黙が続く。優雨くんが心配してくれてるのはわかる。確かに体力も戻り切ってないし、足手まといになっちゃうかもしれない。それでも、

 

 「………それでも、これが今、私がやりたいことだから!」

 

 私にも何かできることがあるかもしれない。それだけの力は持ってるから。だから、私は優雨くんが言ったように、自分の思いを正直に言う。

 

 「………はあ。わかった」

 

 私の顔をじっと見ていた優雨くんは、やがて溜息を吐きながら了承してくれた。

 

 「それじゃ、僕も行くよ。なのはが危ないときは僕が護る」

 

 「ユーノくん………」

 

 一歩前に出て、そう宣言してくれるユーノくん。そこには最初の頃にあったような弱々しさはどこにもない、すごく頼りになる存在になっていた。

 

 「あたしも、フェイトを医務室に寝かせたらすぐに行くよ」

 

 「アルフさん」

 

 アルフさんもそう言いってくれる。

 

 みんなそれぞれに何かを決意し、心を強くしている。それがとても頼もしくて、とても嬉しい。これならきっと、ハッピーエンドを迎えられるって、そう確信できるくらいに。

 

 「………仕方ないわね。クロノも同行させましょう。艦内の傀儡兵は私と武装局員で何とかするから」

 

 「はい!」

 

 リンディさんも許可をくれた。クロノくんも来てくれるならなお心強い。

 

 「………わかりました。ならできるだけ早く。急がなければプレシアを捕まえるどころじゃなくなってしまうかもしれない」

 

 「わかったわ」

 

 しかしそれでも、優雨くんは急かしていた。早くあの場所に行きたい。その思いがその表情から分かる。

 

 一体優雨くんはどうするつもりなんだろう。

 

 

 

 「みんな、くれぐれも気を付けてくれ。これから行くのは敵の本拠地だ。何があるかわからない」

 

 「ああ」

 

 「うん!」

 

 クロノくんの言葉に皆それぞれに答える。

 

 「それじゃあ、行くぞ! 転移、時空の庭園!」

 

 これから、フェイトちゃんのお母さんのところに行く。私にどこまでできるかはわからないけど、でも精いっぱい頑張って、みんなが笑っていられるような、そんな終わりを迎えよう。

 

 きっと優雨くんもそんな終わりを望んでるよね。

 

 

 

 

 時空の庭園の内部。アルフの情報をもとに俺たちは行動していた。

 

 途中、道が二手に分かれる場所があるらしいが、そこからはプレシアのところに向かう組と、この庭園の駆動炉の破壊に向かう組。二手に分かれる予定だ。

 

 だけどそんなことは今はどうでもいい。

 

 ――部屋に飛び込むと、目の前には大量の傀儡兵。

 

 ………あの時のプレシアの顔。

 

 あれが彼女の本心なら、この派手な立ち回りの意味も、あの時の言葉も、全てつながる。

 

 ――クロノとともに魔法を行使。ペネトレイ・ライフルをディフェンス・ビットの1つと接続し、残りの3つとリンクさせて、ロード・ブラスターを放つ。3方向へと発射されるロード・ブラスターのバリエーションの一つ、ヴェァリアスシフトで一掃する。

 

 その思いも、理解はできる。

 

 だけど、それでも!納得できるか!!

 

 ――生き残った傀儡兵をストライクを纏わせたデルタリーフで両断する。

 

 理解できるからと言って納得できるわけじゃない!

 

 そんな一人よがりの思いを認めるわけにはいかないから。

 

 「待っていろ、プレシア・テスタロッサ。その顔、一発ぶん殴らないと気が済まねえ!!

 

 ――ロックされている目の前の壁をロード・ブラスターでぶち抜く。

 

 ………たぶんプレシアの目的に気が付いているのは俺だけだ。だから俺が行かなくちゃいけない。

 

 そして止めるんだ。皆笑顔で終わるために。

 

 ――部屋の中には20機以上の傀儡兵。飛び込むと同時にその半数以上がAクラス以上の砲撃を放ってきた。

 

 「だから」

 

 ――スプレッド・アブソープションを展開し、軽く防御しきる。さらに拡散され周囲に散った魔力を即座にペネトレイ・ライフルに集束し、

 

 「そこを、どけえええええええええええええっ!!」

 

 集束砲撃魔法、レベルA、ブレイズ・ブレイカーを放つ。砲撃は傀儡兵たちの中心に当たり巨大な爆発を起こす。その閃光が消え目を開くと、そこには傀儡兵の残骸しかなかった。

 

 

 

 「道が分かれてる。アルフ、ここか?」

 

 「へ?あ、ああ。そうだよ。右の道に行けば駆動炉。左に行けば、鬼ババの部屋に行けるはず」

 

 先のブレイズ・ブレイカーのせいか一瞬呆けていたようだが、すぐに答えてくれる。

 

 「俺はプレシアの方へ向かう。皆は駆動炉へ向かってくれ」

 

 俺がそう言いってさっさと行こうとすると全員が俺を止めてきた。なのはに服を掴まれ、クロノが俺の前に立つ。

 

 「え!?一人でなんて駄目だよ!」

 

 「危険すぎるって!」

 

 「民間協力者1人で次元犯罪者のもとに行かせるわけにはいかないな。君は駆動炉の方へ向かうべきだ」

 

 クロノの言っていることは正しい。俺は所詮民間協力者で、クロノは執務官。できる限り、俺を危険な目にあわせたくはないのだろう。だが、

 

 「………はなせ」

 

 「っ!優雨、くん………?」

 

 俺の声の低さに驚いたのか、服を掴んでいたなのはの手が離れる。

 

 「………それじゃ駄目なんだ。俺がプレシアのところに行かないと、駄目なんだよ」

 

 彼女の痛みを俺は知ってる。ほんの少しかもしれないけど、確かに俺は同じ痛みを知っているんだ。

 

 だからこそ、彼女の選んだ道は許せない。その道を行かせるわけにはいかないんだ。

 

 「だとしても、1人で行かせるわけにはいかないし、君と僕の戦力は一緒に行くよりも別れた方がいい」

 

 「………それでも、俺はプレシアのところへ向かう」

 

 「優雨!」

 

 クロノが苛立った声を上げる。

 

 「俺とクロノがプレシアの方へ、そしてなのは、ユーノ、アルフが駆動炉へ向かえばいい」

 

 「だからそれは!」

 

 クロノの心配はおそらくなのはがすでに消耗していることだろう。

 

 「なのははここに来るまで魔法を使用していないから少しは回復もしているだろうし、ユーノやアルフが一緒ならここから駆動炉へ向かうまでくらいは問題ない」

 

 そうだよな、となのはを見ると、大きく頷いてくれた。

 

 「うん!大丈夫だよ!」

 

 それでもクロノは渋る。クロノも必死なのだ。仕方がない。

 

 とそんなクロノになのはが、それにね、と続けた。

 

 「優雨くんは私達にはわからないことが、プレシアさんのことが、少しわかってるみたいだら。だから優雨くんは、プレシアさんのところに行くべきなんだよ。きっと」

 

 「なのは………」

 

 なのはの優しさが心にしみる。おかげで、少し冷静になれた。

 

 もっともだからと言って意見は変えないが。

 

 「君まで………、はあ。わかった。さっき優雨が言った通り、僕と優雨でプレシア・テスタロッサのところに、そして君たちは駆動炉を壊しに」

 

 「うん!」

 

 また、なのはに助けられたな。本当に優しいやつだよ、君は。

 

 「ありがとう。なのは」

 

 「え?」

 

 なのはが聞き返してくるが、俺はそれに答えず前を見る。

 

 「行くぞ。クロノ」

 

 「ああ。君たちも気を付けるんだぞ!」

 

 「「「了解!」」」

 

 俺とクロノは左の道へ、なのはたちは右の道へ、それぞれ向かう。

 

 待っていろよ。プレシア。必ず、止めて見せるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どこかで誰かが、その意思を押したような、そんな気がした。

 




ユーノ
 プレシアの最後の目的。
 それは二つの駆動路とジュエルシードの暴走によってアルハザードへの道を開くことだった。
 それを阻止するために僕たちは動く。
 だけど優雨は、そして彼女は、違う目的を持っていた。
 次回 「願い」







作者「怒りってタイトルなのに怒り成分少ねえ!!」

ユーノ「今更タイトルは変えられないよ。仕方がない」

作者「来週ほんとに"願い"まで行けるかなあ」

ユーノ「そこは君の腕の見せ所だよ。それに別に場合によっては長くなってもいいじゃない」

作者「それはまあそうだけどさ」

ユーノ「というか、その悩みは絶望の時からだよね。この話の最初のほうはそれだし」

作者「難しいものだねえ。というか主人公って冷静だから言い争いにならないと怒ってる風にか
   けないんだよなあ」

ユーノ「まあ、彼はね。それで、結局最後の戦いの場所は庭園なんだね」

作者「それでも原作と同じにはならないさ。もちろん同じところもあるけどね」

ユーノ「そこは応援するよ」

作者「なんか機嫌良いな君。もしかしてカッコイイこと言ったから?」

ユーノ「えっ、いや、べ、別に関係ないよ!それよりもほらそろそろ終わるよ!」

作者「ふはは。そうだな。では来週もよろしくお願いします!」ノシ





「ちゃんと有言実行しろよ~このこの!」

「うっ、わ、わかってるよ!」
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