魔法少女リリカルなのはEX・S 過去にとらわれた転生者 作:レイレナード
言い訳しますと学校の課題が予想以上に厳しかったとか、2か月空けたらモチベーションがガタ落ちして書けなくなったとかいろいろありますが、とにかく待ってくれていた方すませんでした。
では、どうぞ
「ロードシューター!」
「スティンガーブレード!」
俺とクロノの魔力弾はどちらも傀儡兵のコアを的確に貫いていく。
ここに来るまでで、すでに何十体と言う数の傀儡兵を倒してきた。俺たちが通ってきた部屋や通路には大量の傀儡兵の残骸が転がっている。しかしそれでも、傀儡兵が減ったようには全く感じられなかった。現に俺たちの前には大量の傀儡兵が待ち構えているし、しかも次々とその姿を現してくる。
「くそ!このままじゃ、プレシア・テスタロッサのところに着くころには魔力が………っ」
クロノが苦しそうに吐き捨てる。
(クロノの言う通りだ。このままじゃ届かない。どうする………?)
………母さんは、私の事なんか、一度も見てくれなかった。
母さんが会いたかったのはアリシアで………、私はただの――
―――失敗作
私………、生まれてきちゃいけなかったのかな………。
(っ、なんだ?声?誰の………?)
本当は、ずっと前から気付いてたんだ………。
私を見る母さんの眼が、まるで仇を見るかのような、忌々しいものを見るかのような目をしていたことを。
「優雨、どうかしたか?」
クロノの言葉でようやく戻ってくることができた。しかし、今のは………。
「なのははできるだけ魔法を使わないで!この先どんどん数は増えてくるだろうから、できるだけ温存して回復するんだ!」
「それまではあたいたちが何とかするよ!」
「はい!」
いつにもまして心強いユーノくんの声と、力強いアルフさんの声にしっかりと返事をする。
駆動炉を破壊すれば、とりあえず暴走を止めることができるはず。そのためにも今は焦らず確実に行かなくちゃ!
廊下を進むと、先に扉が見えた。それを、
「どりゃああああ!!」
アルフさんのとび蹴りで勢いよく開け放つ。アルフさんに続いて私とユーノくんも部屋に入る。
するとそこにあったのは広い空間だった。まっすぐ上に向かって何もない円柱の中にいるかのような場所。その側面を回るように階段があり、ずっと上まで続いている。
「………ここは危ないかもしれないな」
ユーノくんがそれを見て呟く。たぶん心配しているのは今までのような部屋ではなく、広い通路であるということ。
「確かに、ここじゃどんどん敵が湧いてきそうだね」
アルフさんの言う通り、ここを登って行けば敵と遭遇する確率は高い。でも、
「それでも、ここを行ければきっと近道になるよね」
一刻も早く駆動炉を破壊する。その気持ちを強く持って言う。そんな私にアルフさんとユーノくんは笑って、
「ああ!その通りさ!」
「行こう!なのは!」
「うん!」
力強く、走り出した。
黒い閃光が傀儡兵を飲み込み、破壊する。
「なるほど。便利なものだな」
クロノが指すのは俺の手に握られた拳銃型のデバイス「ブラストレイ」だ。つい先日できたばかりの新デバイスだが、予想通りの戦果を挙げてくれていた。拳銃型と言っても、砲身は大砲のそれのように大きく、その見た目はまるでドライヤーのようにも見えた。
と、持ち手のすぐ上にあった筒が外れ、デバイスのデータ内に回収される。さらにそれと同じものが表れ、再びデバイスにセットされた。
「それがさっき君が言っていた魔力タンク型の超大型カートリッジか」
「そうだ」
俺はブラストレイをクロノに見せるように前に出す。
「このブラストレイは、装填されたカートリッジに込められた魔力をすべて消費して魔力砲撃を放つだけのものだ。変換も何も必要なく、ただシステムとして瞬時にそれを行うようプログラムしているから、魔法陣の展開もないし、チャージ時間もほぼ0だ。もっともそれしかできないし、1回撃つたびにカートリッジを装填しなおさなくてはいけないわけだが」
「だがその装填も自動で行われるようプログラムされているようじゃないか。君のスタイルで言うなら、それを放った後はすぐにしまって、いつものデバイスを使えばいい。その間に装填は終わるだろうからな」
クロノの言葉に頷いて答える。実際、これはそうして使うことを想定して作ったものだ。使用目的は基本的に奇襲。チャージの必要もなく放てるから、ジャンプステップでも何でも使って不意をつけば、ほぼ確実に当てることができるだろう。さらに、銃口が極端に短いからうまくすれば接近戦でも使える。
「………さて、早く行こう。これから少しの間、これを使って突破していくから魔力消費は抑えられるが、カートリッジは10個しか用意できていない。あと9発が限度だ」
俺の言葉にクロノが頷く。
「わかった。少し無理をしてでもそれだけで前に進もう。うまくいけば少しは魔力が戻る」
「ああ」
俺たちは飛行魔法を使わず、走って通路を進む。
スピードは落ちるが、魔力消費は抑えなければならない。仕方がないか。
私はただ、幸せだったあの頃に縋っていただけだったんだ。
認めたくなくて、きっと頑張ってれば昔みたいに戻ってくれるって。
だけど、結局私は………
「………っ」
(まただ。なんなんだ?)
もう、わかっちゃった。
もう母さんが私に笑顔を向けてくれることなんてない。
もうあの日々が戻ってくることなんて、ないんだ。
………あはは。馬鹿だな、私は。
戻ってくることなんてない、なんて。そんなの、私と母さんには初めからなかったのに………。
「………そうか。これは俺の能力の一つの形だ」
記憶を見る力。つまりは相手の気持ちを、心を見るようなもの。それは強ければ強いほど、俺の制御を超えて伝わってくる。そして記憶とは、それが起こった次の瞬間には記憶となるものだ。これは多分、ほんの一瞬前の思いが、そのまま俺に伝わってきているんだ。
(だとしたら間違いない。これは、フェイトの心の声だ)
私には、初めから幸せになる権利なんてなかったんだ。
そう願うことすらおこがましい。
だって私は「人」ですらないんだから。
私は人形。何の役にも立たない、役立たずの人形………。
(フェイト………)
もうどうでもいい。
なにもかも、どうでもいい。
もう、何も考えたくない………
もう………なにも………………
………
「ふざけるな」
………え?
「お前は、本当にそれでいいのか?本当に、何もかもどうでもいいのか?」
………だって、わたしは………
「お前のために頑張ってたやつらの気持ちも、どうでもいいと言うのか?」
………それは………
「ずっとお前を支えてきたアルフの気持ちは?お前の一番近くで、お前とともに歩んできたバルディッシュの気持ちは?」
っ………でも、母さんは、もう………
「お前を思って、ずっと言葉を投げかけてくれたあいつの気持ちは?」
っ!でも………私は………
「何より、お前の気持ちは?お前の思いを、ちゃんとプレシアに、母さんに届けたのか?」
………え?………でも、だって………
「お前の思いは、願いは、そんな簡単に捨てられるものなのか?」
………っ
「このまま、何も始まってないまま、終わっていいのか?」
………始まって、ない………
「今、やっとお前は、自分やプレシアの本当を知った。偽りの時間が終わったんだ。でもそれは所詮偽り。お前は、お前とプレシアは、まだ始まってもいない」
………私と………母さんの………―――
「………フェイト。お前は、どうしたい?」
………私の願い何て……どうせ………
「叶いっこない………か?」
っ………
「俺はそんなことを聞いてるんじゃない。どうせ叶わないとか、どうにもならないとか、そんなこと関係ない。取り繕ったものを聞きたいわけでもない。ただ、お前の本心を、お前の本当の願いを聞きたいんだ」
………私の、願い………
「自分に問いかけた時に、心に、ストン、と落ちてきたものを、そのまま言えばいい」
………
「もう一度聞くぞ?フェイトは、どうしたい?」
―――………私は………
………伝えたい。
伝えたいんだ。母さんに。
どうなるかなんてわからない。どうにもならないかもしれない。それでも、私は、
母さんに伝えたい。私の気持ちを!」
「………それが、お前の願いか。フェイト」
「うん。そうだよ。優雨」
「だったら、叶えないとな。その願い」
「うん。だけど………」
「大丈夫だ。俺が何とかしてみせる」
「………優雨が?」
「ああ。必ず、お前の気持ちをプレシアに伝えさせる。それを聞いて、プレシアがどうするかなんて俺にはわからないけど、でも、必ずお前とプレシアを会わせてみせる。それに………」
「?」
「お前の願いが叶うことが、今の、俺の願いだから」
「………そっか。………優雨」
「ん?」
「………ありがとう。本当に……ありが…とう……っ………」
「………ああ。だったら、………早く追いついて来いよな」
「……っ…、うん!」
気が付くと、私はベッドに寝かされていた。
薄暗い部屋で、すぐわきにモニターがある。そこには私の大切な人たちの戦っている姿が映し出されていた。
ずっと私を支えてくれていた優しい使い魔のアルフ。
アルフを使い魔にしてから、いったい、どれだけたっただろう。ずっとアルフには迷惑をかけてきた。ずっと私のために頑張ってくれていたのに、私は何一つ応えられてない。
(私は、そんなアルフに応えないまま、終わるつもりだったんだ………)
そして、拒絶しても、何度も言葉を投げかけてくれたあの子。
(………そうだこの子の名前、なんていうんだろう。ちゃんと教えてくれたのに………)
ジュエルシードを集めるために、母さんの願いを叶えるために、私は、いつもあの子を拒絶して。でも、それでもあの子は私に声を投げかけ続けてくれた。
(何度も………何度も………)
自分が情けなく、不甲斐なくて、でも、あの子の思いがうれしくて、自然と目元が熱くなるのを感じた。
そんな時、部屋の一角が光ったような気がした。
「………?」
私は涙をぬぐって、そこへ向かう。
「………あ」
そこにはバルディッシュがあった。待機状態でもボロボロだと分かる。
私はその愛機を手に取る。
「………バルディッシュ」
そのボロボロの姿に、さっきの誓いが揺らいでしまう。私の願いのために、また誰かが傷ついてしまうのではないか。また、優雨のように………。
「………私はこんなにも弱い。なのにそれを隠していたから、無理をしてたから、だから私は、私たちは、まだ始まってもいないんだ………」
だから勇気が欲しかった。誰かに、勇気をもらいたかった。
「そんな私だけど、お前はこれからも、一緒にいてくれる?」
だからだろうか。口から出た言葉は、誓いでも、願いでもなく、問いかけだった。
ここまで来て、またこんなところで尻込みしてしまう自分が情けない。
(本当に、どうして、私は………っ)
そんな私の手のひらの上で、急にバルディッシュが起動した。
その姿は、ボロボロ、何て言葉では言い表せないほど悲惨で、落とせばそれだけで砕けてしまいそうで、………なのに、
「………!」
だというのに、バルディッシュは開いていた斧を無理やり動かし、閉じようとしていた。ぎしぎしと軋みを上げ、そのたびに破片が落ちていく。しかし、それでもバルディッシュは斧を動かした。そして、ついにそれを完全に閉じきり、
『Get set』
ただ一言、当然のようにそう言った。
「………っ!」
それは、自分が起動したことを告げる言葉。主とともに戦うことを決意した証。
そしてなにより―――
「っ、そうだよね。バルディッシュもずっと私の傍にいてくれたんだもんね………っ」
―――バルディッシュも、
「お前も、このまま終わるのなんて、嫌だよね………っ」
『Yes sir』
愛機の言葉に自然と笑みが出る。もう、涙は止まっていた。
振り返り、もう一度モニターを見る。
そこに移っているのは、銃を構えた黒い少年。何度も私を助けてくれた、私に立ち向かう勇気をくれた、大好きな少年。億夜優雨。
夢の中であった不思議な言葉のやり取り。それがなんだったのかはわからない。でも、きっと、あれはただの夢なんかじゃなかったって思える。だから、この願いも嘘なんかじゃない。
(だから大丈夫。今なら、勇気を出せる!)
私はバルディッシュを構え、小さな誓いを立てる。
「うまくできるかわからないけど、一緒にがんばろう………!」
目を瞑り、バルディッシュに魔法をかける。
手のひらから光が生まれ、デバイス全体を包み込むように広がっていく。そして、ついにすべてを満たすと、その光は砕けるように消え、そこには完全な状態のバルディッシュがあった。
『Recovery complete』
実際は応急処置に過ぎないものではあったが、しかしバルディッシュの破損個所は外側だけであり、これで十分に戦える状態となった。
「私たちのすべては、まだ始まってもいない」
確かめるように、言葉を紡ぐ。
眼を開き、バリアジャケットを展開する。
「だから、ほんとの自分を始めるために」
それは誓い。浮かんでくるのは今までの、偽りの中で、ただ母さんの娘だからと戦っていた自分。でも、だから………!
足元に魔方陣を展開。転移魔法を起動させる。
「今までの自分を、終わらせよう………!」
そのために、私は行く。あの子のもとへ。
そして、伝えよう。母さんに。本当の私を、私たちを始めるために!
大きな螺旋階段のある通路。その中心、階段に囲まれたその場所で大きな爆発が起こった。アルフさんがそこにいた傀儡兵を破壊したのだ。
しかしその直後、アルフさんを狙おうとしている別の傀儡兵に気付き、それにディバインシューターを撃ちこむ。
(当たって!)
アルフさんを見ていた傀儡兵は私の魔力弾に気付く様子はなく、すぐにコアに直撃、破壊された。
「おお!?助かったよ!」
「はい!」
駆動炉へ向かう私たちは、その最短ルートであるこの螺旋階段を進んでいた。しかし当然、すぐに大量の傀儡兵が押し寄せてきて、迎撃のために階段を使うことを断念。数が多く、しかもそのほとんどが中型以上だったことで、ここからは私も戦うことになったのだ。
アルフさんとユーノくんのおかげで大分魔力を回復した私は、それでもこの先のことを考えできるだけ最小限の魔力で戦っていた。
「なのは!アルフ!こっちも頼む!」
上からの声にそちらを見れば、6体以上の傀儡兵をバインドで縛り付け、動きを止めているユーノくんがいた。
(すごい。あれだけのバインド操作をミスなくおこなって、しかもあれだけの強度を誇るなんて………、やっぱりユーノくんはすごいなあ)
「へえ!なかなかやるじゃんか!なのは、あたしは後ろの3体をやるよ!」
「じゃあ私は前の3体を!」
それぞれ倒すべき敵を分担し、魔力弾を3つ構成する。
(私も、ユーノくんに負けないくらい頑張ろう!)
「ディバインシューター!」
放たれた3つのシューターは、バインドに捕らえられ身動きの取れない目標のコアを的確に打ち抜き、破壊した。
「よし!」
上手く戦えていることがうれしくて思わず声が出る。そんな私をユーノくんたちもうれしそうに見ていたが、すぐに表情を引き締める。
「やっぱり、相当な数が来るな。しかも今までのより大きい」
「ここは広いからね。早く登っちまった方が…っ」
アルフさんが注意を促すが、すぐに上から大きな魔力反応がたくさん接近してくるのが分かった。
「言ってるそばから!行くよ!」
「ああ!」
「はい!」
ユーノが先に前に出て、攻撃を回避しつつバインドで一気に4体捕らえる。それを追い越し、アルフとなのはが前に出て、さらに降りてくる傀儡兵を応戦する。
傀儡兵は全部で10体。ユーノが捕らえている4体を抜けば残りは6体。
まずなのはが敵を分断するように中央にいた2体にディバインシューターを放つ。傀儡兵はそれを回避しようと動くがその大きさのせいで動きが制限され1体は破壊できた。しかしもう1体は速度を落としながら盾を向け、シューターを防ぐ。
(でも、分断させることはできた!)
1体は離れ、残り4体は2体ずつ左右に分かれた。即座になのはとアルフはそれに合わせて左右に分かれ、応戦する。
なのははすぐにディバインシューターを4つ構成し、勢いに任せて突っ込んでくる2体の傀儡兵に1発ずつ放ち破壊。さらにその向こうで再び動き出そうとしている1体に残りの2発を挟み込むように撃ちこむ。傀儡兵はそのうち一つを盾で防ぐが、2つ目には対応できずコアに直撃し、破壊された。
(やった! ………っ!)
しかしそれで終わりではなかった。さらに上から6体ほどの魔力反応が接近していた。
「だけど!」
すぐにディバインシューターを構成し、さっきと同じように一気に破壊していく。
「ああもう!キリがないね!」
傀儡兵を破壊したアルフが階段の手すりに着地しながら吐き捨てる。なのはもこれだけ休みなく動いたせいで体力が切れてきていた。しかしまだまだ敵は来る。
破壊しきれていなかった2体が爆発を突っ切るように飛び出してくる。
「っ、この!」
そのうち1体をアルフが蹴り飛ばして破壊。なのはも、切りかかってくる傀儡兵を回避し、すれ違いざまにディバインシューターを撃ちこんで破壊した。
その攻防の中で、ユーノの気がなのはたちに逸れた瞬間、ユーノが捕らえていた4体のうち1体がバインドを引きちぎった。
「な!?」
傀儡兵は機械だ。故に常に最優先で狙うのは、その場に最も近いものか、最も厄介なもの。その傀儡兵が選んだのは、無防備に背中を向けている後者だった。
「なのは!!」
「!?」
ユーノの言葉に気付きなのはが振り向くのと、傀儡兵が手に持っていた斧をなのはに放り投げるのは同時だった。
(っ、間に合わない!?)
背筋に冷たいものが走る。周りの音も聞こえず、思わず眼を瞑った。
その時、
「大丈夫」
凛とした声が、聞こえた気がした。
瞬間、巨大な稲妻が何本も降り注ぎ、そこにいたすべての傀儡兵の動きを止める。
なのはに向かっていた斧もそのスピードは落ち、とっさにプロテクションを張って防ぐ。
「!これって」
なのはは、その稲妻の攻撃に、金色の魔力色に、そのよく知る魔力反応に、上空を見上げた。
そこにいたのは金色の魔方陣の上に立ち魔法を行使する、長い綺麗な金髪と、黒いマントをはためかせた、”強い”眼をした優しい魔導師。
彼女――フェイト・テスタロッサはその愛機、バルディッシュを振り上げ、一気に振り下ろす。
「サンダー、レイジ!!」
降り注ぐ稲妻はさらに巨大なものとなり、残るすべての傀儡兵を破壊した。
「フェイト!?」
アルフは自らの主が今ここにいることが信じられず、思わずその名を呼び、ユーノも同じ気持ちで、自分達よりも上空にいる二人を見上げた。
バルディッシュを放熱し、フェイトはなのはの傍まで飛ぶ。
本当はまだ怖かった。
(あの子はきっとすごく優しくて、だからきっと受け入れてくれると思う。だけど………)
それでもフェイトは自分の罪を知っている。
(私があの子にひどいことをしたのは変わらないんだ)
だから、どんな顔をして会えば分らない。
(でも、もう逃げたくはないから。私も、前に進みたいから)
なのはの傍にはすぐについた。でも、やっぱり少し後ろめたくて、顔を背けてしまいそうになってしまう。
そんなフェイトの心境も知らず、なのはもまた驚きすぎて固まっていた。予想外だったしあまりのことに理解が追い付いていないのだ。
だけど、
(あ、眼が………)
その眼には確かに光があった。それはフェイトが悲しみに打ち勝ったことを示している。
それに気付いて、思わず体が動きそうになったその時、背後の壁が爆発した。
「「!?」」
壁を壊して出てきたのは、これまでのものより倍以上も大きい巨大な傀儡兵。
「大型だ。防御が固い」
フェイトがそれの持つ巨大な二つの盾を見て呟く。
「うん。たぶん攻撃も」
なのはも、それが構えた二つのランスの先に魔力がチャージされていくのを見て分析する。
(これまでよりもきっと強い。だけど、きっと)
二人なら。そう、なのはが考えた時、
「でも、二人なら」
フェイトがなのはを見て、はっきりとそう言った。
それは、ずっとなのはが願っていた言葉。友達になりと言ったあの時自覚した、一緒に頑張りたいという思い。それが届いた瞬間だった。
「!!………うん。うん!」
たまらなく嬉しくて、こんな時なのに何度も頷き返す。
フェイトはそんななのはを見て、ようやく自分に残っていた後ろめたさが薄らいだ気がした。
勇気を出して言った言葉。「話したい」「友達になりたい」ずっとそう呼びかけてくれたその思いに応えたくて言ったその言葉は、いつの間にか自分の願いでもあった。
(そっか。いつの間にか私も、この子と同じ気持ちだったんだ)
それにフェイトは今さらのように気付いて、そんなフェイトに頷き返してくれるなのはを見て、それだけのことがとても嬉しく感じた。
しかし現実は待ってはくれない。そんな二人に傀儡兵はチャージしていた砲撃を二人に向けて放つ。
「「っ!」」
二人はそれを紙一重で回避し、傀儡兵の周りを飛行する。
「なるべく敵の近くを飛んで!大きいからこちらを追い切れなくなるはず!」
「わかった!」
それでも傀儡兵は攻撃を続ける。さらに2本の突起を出し、最初のランスと合わせて、計4本から魔力砲を乱れ撃つ。
『master!』
「大丈夫!」
(なんだが体が軽い。すごく気持ちよく飛べてる)
それはきっとフェイトが立ち直ってくれたから。一緒に戦おうと言ってくれたから。あの時、初めて協力した時に正直に話した思い。それに少しだけでも答えてくれたから。
(今なら、もっと飛べる!)
なのはがそう思ってフェイトを見ると、一瞬の隙をついてバルディッシュを構えるのが見えた。サイズフォームで魔力刀を形成し、それを勢いよく振るう。
『アークセイバー』
「はああ!!」
それは最初にフェイトとなのはが会った時に、優雨がとっさに防いだ攻撃だ。魔力刀がデバイスを離れ、高速で回転しながら傀儡兵に向かう。傀儡兵にそれを避けるすべはなく、一撃で盾の付け根を切り落とした。
その反動か、一瞬攻撃が止んだ。
(今なら!)
素早くなのはも魔力弾を4つ展開。通常よりも魔力を込める。
その力を感じ、フェイトは少しだけ笑っていた。
(なんだろう。今までない感じ。すごく頼もしい。今なら、もっと強くなれる!)
『ディバインシューター』
そんなフェイトのわきを魔力弾が通過し傀儡兵に向かう。それに対し、傀儡兵は残ったもう一つの盾を向け防御するがディバインシューターの威力に耐えきれず、破壊される。
(これで盾は消えた)
傀儡兵がすぐに砲撃を放とうとチャージを始めるのを見ながらフェイトは冷静に分析する。
(もうこちらの攻撃を防御することはできない。なら!)
「バルディッシュ!」
『Yes. Sir』
バルディッシュをデバイスフォームにもどし、魔法陣を展開する。
「レイジングハート!」
『Yes. My master』
なのはも同時にレイジングハートをシューティングモードに変え、魔法陣を展開する。
フェイトは左手に、なのははレイジングハートを構えその先に、胸の奥にある熱い感覚をそこに移すように魔力こめていく。
「先に私が撃って敵のチャージを止める!」
フェイトが宣言し術式を起動。左手に込めた魔力を魔法陣として眼前に展開する。
「サンダー………、スマッシャー!!」
そこにバルディッシュを勢いよく突き入れると、魔法陣に込められた膨大な魔力がバルディッシュによって方向性を持って放たれる。
それはまっすぐ傀儡兵に向かうが、直前で展開されたシールドに阻まれた。
(でも、チャージは止まった!)
それに続きなのはもチャージを終え、術式を起動させる。
ずっと使ってきた、自分が最も信頼する魔法。それは今また、その信頼に応えるように放たれる。
「ディバイィィィン、バスター!!」
傀儡兵のシールドにさらに魔力砲が突き刺さる。それでも大型ゆえの防御力をフルに用いて、まだ倒れない。
しかしそんなことはなのはにとっても、フェイトにとっても関係なかった。
初めて協力した時は、なのは一人で言ったこと。それを今度は、まるで示し合わせたかのように、二人の心が通じ合ったかのように二人で同時言う。
「「せえのっ!!」」
声に合わせ、二人の放出魔力はさらに増大していく。桜色と金色、二色の魔力はそれに合わせて膨れ上がり、まるで滝のように押し寄せた。
そんな力に傀儡兵が耐えられるはずもなく、シールドが砕かれ破壊。それにとどまらず、壁という壁を突き抜け、ついには時空庭園に大穴をあけるに至った。
砲撃を終え、バルディッシュとレイジングハート、二つのデバイスが同時に放熱する。それに合わせて、なのはもフェイトも肩の力を抜いて一つ息を吐いた。
ようやく落ち着き、なのははフェイトを見る。
(今の戦いで全部わかった。フェイトちゃんは、きっともう大丈夫。だって…)
「フェイトちゃん…」
思わず読んだ名に、フェイトは笑って応える。そんなフェイトになのはが話しかけるより前に、フェイトを呼ぶ声がした。
「フェイトっ、フェイト!」
見れば、アルフがこちらに向かっていた。アルフはフェイトの前で止まるが、耐えきれないと言わんばかりに、すぐに抱き着いて嗚咽を漏らす。
そんな自らの使い魔をフェイトは愛おしそうに撫でる。
「心配かけてごめんね。アルフ」
未だ自分の胸に顔をうずめて泣き続けるアルフを見てフェイトは思う。
(そう、本当に心配かけてきた。本当にずっと………)
「私は大丈夫だよ」と何度もアルフに言ってきた。
(だけどその時、私はちゃんとアルフの顔を見ていただろうか)
いつも自分のことでいっぱいいっぱいだったフェイトにそんな余裕があったかどうかなど、考えるまでもない。
(ずっと無理をして、強がって。アルフはずっとそんな私の傍にいてくれたんだ)
そんな思いに押されて、フェイトはアルフを抱きしめる。
「ありがとう。アルフ」
「っ、うんっ、うん………」
そんな二人をなのはとユーノは並んで見守っていた。
「悪いなクロノ、先に行かなければならなくなった。雑魚は頼む!」
「…は?」
急に立ち止まって、動かなくなったと思ったら、眼を開けるなり優雨はそんなことを言ってきた。しかも驚く僕をよそに、あるものをその場に捨て、ジャンプステップを使って今まで以上の高速移動で先に行ってしまう。
「な!?おい!ちょっと待て!!」
すぐに止めようと声を上げるが、それで止まる優雨ではない。大量の傀儡兵を無視し、その攻撃の嵐を全てかわして、いつの間にか先に行ってしまった。その飛行技術に舌を巻くが、それよりもまず、
「………優雨の奴、後で覚えていろ」
言いつつ、僕は優雨が”わざと捨てていったもの”を拾い上げる。それは優雨がアースラで作った新しいデバイス、ブラストレイ。ご丁寧にカートリッジも7つほど置かれていた。
「術式の処理や必要な魔力は全てデバイスがやってくれる。使用者は狙いを定めてトリガーを引くだけ、か。ありがたく使わせてもらうぞ」
さっそく僕は、優雨を追って攻撃したせいでこちらに背を向けている傀儡兵に銃口を向け、トリガーを引いた。
遥か後方で爆発音が聞こえる。
(すまないクロノ。だが、俺も急ぐ必要がある)
フェイトとプレシアを確実に会わせるためにも、できるだけ早くプレシアに接触して時間を稼がないといけない。それに………
(まだ俺の用事も残っているからな)
なのはの優しさ。フェイトの決意。彼女たちのおかげでようやく冷静に慣れたとはいえ、俺の怒りが収まったわけではない。
(俺なんかの思いが届くなんて思わない。でも………)
もう、あんなのは見たくはないから。あんな―――
(………急ごう)
次元振により揺れる庭園。その中で、俺はさらにスピードを上げた。
どこかで誰かが、祈りを捧げたような、そんな気がした。
………祈られる対象である存在は、いったい何に祈るのだろう。
フェイト
優雨に勇気をもらい、再び立ち上がった私。
そんな私の背中を押してくれるあの子。
一緒に支えてくれるアルフやバルディッシュ。
私は本当に恵まれてる。
だけど、だから、母さんも………
次回 「プレシア」
作者「改めまして、すみませんでした!もう一度謝らせてください、すみませんでした!」
フェイト「ユーノに有言実行がどうこうと言ってたのにね」
作者「深く反省してます。せめて活動報告に改めて状況を書けばよかった」
フェイト「ちゃんと書いたことには責任持たないとね。皆さんも気を付けてくださいね」
作者「さて、話は変わって今回は映画でも注目の挿入歌のシーンでした」
フェイト「内容はそんなに変わってないけど、挿入歌が入っていたがゆえに表現しきれて
いなかった二人の気持ちを強く描いた感じだね」
作者「そういうのは小説の醍醐味だしね。それにある意味自己解釈が一番出るところだし」
フェイト「それでいてあのスピード感が出ていればよかったんだけど………」
作者「さすがに無理です。力不足です」
フェイト「あはは、大目に見てあげてほしいです」
作者「では報告に。次回なのですが、少しの間次話投稿をやめてこれまでの見直しと修正
をしたいと思っています」
フェイト「投稿しなおすってことじゃなくて、この状態のままプロローグから書き直す部
分を書き直したり書き足したりするんだって」
作者「今更になってこうしたほうが良かったと思えるところがたくさん出てきたので。ス
トーリーが大幅に変わるなんてことはありませんが、イベントが増えたり変わった
りするかもしれません。すみませんがおつきあい願います」
フェイト「少なくとも今年中には終わらせる予定だそうなので、これも大目に見てください」
作者「ではそろそろ」
フェイト「うん。それじゃあまた次回もよろしくお願いします」ノシ
「そういえば劇場版第3弾に触れるの忘れてた」
「まだ2ndA'Sも入ってないんだから別にいいと思うよ?」
「いや、喜びを分かち合いたいと」
「情報公開されてからもう結構立つよ?」
「………」