魔法少女リリカルなのはEX・S 過去にとらわれた転生者   作:レイレナード

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短すぎたのですぐに投稿することに。

次でようやく介入です。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

とてもとても久しぶりです。

いろいろな要因が重なり、同時に私自身なかなかモチベーションが上がらず実に5カ月ぶりくらいの更新となりました。

さて、前書きで長々と言い訳するのもなんなので、本文をどうぞ。



Episode2 始まり(改)

 海鳴自然公園。そこは海鳴市にある公園の中で随一の面積を誇る自然豊かな公園であり、森と見間違うような雑木林や、ボートを漕げる大きな池などを有している。昼には子供連れの家族や小さな子供たち、若いカップルや軽い運動をしている者たちなど、様々な人たちが訪れ、暖かい空気を作り出す。

 

 しかし、その日の夜はそれとは正反対だった。少なくとも、月も街灯の光も届かない真っ暗な雑木林の中を一人で走っている少年にとって、そこはむしろ不気味に思える。周囲に人影はなく、自分の息遣いと走る音だけがやけに大きく響いていた。

 

 彼は目的無く走っているわけではない。彼の走る先で何かが飛び跳ね、少年から距離をとろうとする。そう、彼はそれを追っているのだ。

 

 しばらく走ると、それは再び大きく飛び跳ね、池の上に降り立った。いや、正確にはそれは水面には触れておらず、その上に浮かんでいるのだ。雑木林を抜けたそれは月の光を浴びてようやくその姿を確認できた。それはまるで泥の塊。しかしそれは人よりも一回り以上大きく、さらに明らかに意思を宿した眼のようなものがあった。

 

 続いて少年も雑木林を抜け、できるだけそれに近づこうとボート乗り場の橋の上まで来る。それによって少年の容姿も確認できた。まるで探検家と民族衣装を合わせたような服を身に纏っており、その顔立ちはまだ幼く、9歳そこらに見える。しかしそこには年齢に見合わない大人びた雰囲気、知性を感じられた。

 

 少年は泥の塊を確認すると、息を整え、懐から赤い宝石を取り出す。

 

 「お前は、ここにいちゃいけない……!」

 

 自分を奮い立たせるように少年は呟き、宝石を持つ右手を前に突き出す。すると、その掌の前に翠色の魔方陣が表れた。それに続き少年は呪文を唱える。

 

 「妙なる響き、光となれ。許されざるものを封印の輪に!」

 

 それを見ていた泥の塊は、それを自分の脅威となると判断したのか少年に向かって突進する。しかし、それは少年の読み通りであった。

 

 泥の塊の突進は、魔法陣によって阻まれる。巨大なエネルギーの突進と、それを阻む魔法陣のエネルギーがぶつかり合い、周囲を吹き飛ばすほどの激しい光を放つ。その瞬間、それはそこに固定された。

 

 「っっ!!!」

 

 泥の塊は自身の体が動かないことに気付き慌てて抵抗するが、それよりも早く少年が動く。

 

 「ジュエルシード! 封印!」

 

 必死の抵抗に負けないよう踏ん張りながら、魔法陣に込めた術式を発動させる。すると、徐々に泥の塊はその体を維持できなくなり崩れていった。しかし、その中に微動だにしないものがあった。きれいな青い宝石。それこそが少年の目的のものだった。

 

 少年はそれを封印しようとさらに力を加える。しかし、

 

 「……!?」

 

 ほんの一瞬宝石が光ったかと思うと、途端に抵抗の力が強くなり、術式を崩してきた。さらに崩れかけていた泥の体も元に戻る。

 

 「な!?」

 

 少年が驚ろいて集中を途切れさせた隙に、泥の塊はその場を飛び跳ね自らの体の一部を弾丸のように飛ばしてきた。それは少年のすぐ横、少年の立つ橋の先に当たりそれを完全に破壊し、大きな水柱を立てた。

 

 「っ!」

 

 その破壊力に戦慄するが、少年にはそんな暇すら与えられない。

 

 泥の塊は再び湖の上に降り立ち、先ほどと同じように、しかも今度は大量に連続で泥の弾を放ってきた。

 

 少年はあわててその場を飛びのくが、一発が近くに着弾した。

 

 「うあっ!」

 

 もろにその衝撃をうけ、少年は地面を転がる。その隙を逃さず、泥の塊はさらに弾を放った。

 

 「っ、まだ!」

 

 痛む体に鞭を打ち、何とか立ち上がって先ほどのように魔法陣―――シールドを張る。しかし、その程度で防ぎきれる攻撃ではなかった。

 

 「うわあああ!!」

 

 シールドを貫通することはなかったが、その衝撃に体の方が耐えきれず大きく吹き飛ばされてしまった。

 

 それを見届けた泥の塊は、再び大きく飛び跳ね、その場を去っていった。

 

 「っ、追いかけないと……!」

 

 雑木林の中まで吹き飛ばされた少年はそれを感じ取り、何とか起き上がろうとする。しかし、結局痛みに耐えきれず、そのまま意識を失った。

 

 すると少年の体に変化が起こる。体が光り始めたかと思えば、その大きさや形までもが変化し始めたのだ。光が納まる頃にはそこに少年の姿はなく、代わりに小さなフェレットが横たわっていた。

 

 

 

 

 朝の暖かい日差しが差し込む。ぬいぐるみやかわいらしい模様の多い少女らしい部屋に携帯アラームがこだましていた。ベッドの上、膨らんだ布団の中から小さな手が出てきて、その音を止める。

 

 「ふあ~」

 

 温かくふかふかなベッドが気持ちよくて、そこを離れたくない衝動に駆られるが、そんな欲求を理性で征し、ようやく少女は体を起こした。すぐに体を伸ばし、まだ残っている眠気を吹き飛ばす。

 

 「………なんか、変な夢………」

 

 ふと漏らした言葉。それは先ほど見た化け物と戦う少年の夢のことだ。普段見るような夢とは何か違う、とてもリアルな夢だったように感じる。

 

 しかし、それを気にするのも一瞬だった。すぐに気持ちを切り替え、彼女はベッドから抜け出す。

 

 その夢が彼女の長い物語の始まりだと、少女――高町なのはは、まだ気づいていない。

 

 

 

 

 

 その夜、時刻は22時を回ったところ。普段の俺なら家で宿題でもやっている時間だ。だが今日はそうも言ってられない。

 

 「…ここだな」

 

 俺が来たのは海鳴自然公園のボート乗り場だ。

 

 いつものようにトレーニングを終え、食材の書いた詩にスーパーに立ち寄った時、「ボート乗り場が壊れてしまい、しばらくボートに乗れない」という話を偶然耳にしたのだ。もしやと思い、こうして確かめに来たのだが。

 

 (この惨状はどう見ても何者かによって破壊された後だな)

 

 半ば確信を持ちつつ調査してみると、案の定魔力残滓を確認できた。

 

 「間違いない。ここで、何かがあったんだ」

 

 『はい。状況と残滓の量から考えると、昨晩あたりでしょうか』

 

 アイギスの言葉を聞きながら状況を整理する。

 

 あの魔力の塊のようなものがこの町にばらまかれたのを感じてからすでに3日経った。その間に俺が魔力を感じたのは昨日の昼。学校が終わるのを待ってすぐに捜索に出たが、魔力を感じたその場所にはすでに何もなかった。

 

 それと今回の破壊が同じものによるものとは限らないが、昼に感じたそれがその日の夜にどこかに被害を出したとしても不思議ではない。

 

 そこまで考えたところで、ふいに魔力を感知した。

 

 「! これは!」

 

 『魔法の発動を確認! 市街地にある動物病院を中心とした半径400mの地点にミッド式の封時結界が発動しています!』

 

 封時結界――空間を切り取り、時間信号をズラすことで外部から認識、及び侵入を妨げる結界魔法。この空間へ入る方法は2つ。術者が許可するか、それを認識し、侵入できるほどのスキルを持つ者がそれを行使することだ。

 

 「それなりに高位の魔法だったはずだが、それだけの範囲で発動できる者がいるとはな……」

 

 『封時結界はまだ練習すらしていない魔法です。これからですよ、マスター』

 

 「分かっているさ」そう言いつつ、俺は別の可能性を考えていた。ここの破壊が例のもののせいなら、こんな結界をはれるはずがない。つまりあれはほかの魔導師が発動したものだ。そして、それが街のど真ん中で、しかもこれだけの範囲で封時結界を張ったということは……

 

 (あの中で戦闘が行われている可能性が高い、ということか)

 

 ならば俺のとる道は一つ。

 

 「行くぞ、アイギス! セットアップ!」

 

 『Standby ready』

 

 

 

 

 

 私は今、夜の街を走っていた。目的地は、昼間に自然公園で拾ったフェレットを預けた動物病院。22時近いそんな時間に小学3年の私がなぜそんなことをしているかと言えば、声が聞こえたからだ。

 

 『お願いします。僕の声が聞こえる方、助けてください!』

 

 普通そんな言葉を聞いたら、気味が悪くなるものだと思う。もしそうならなくても、まず自分の頭を疑うだろう。

 

 でも、私はそうは思わなかった。何故かはわからないけど、これは現実なんだと、何とかしなければならいという確信があったのだ。その声がどこから聞こえてくるのかまで何となく感じ取った私は、すぐに家を飛び出した。

 

 「……!? なに?」

 

 もうすぐ動物病院に着くという所に来て違和感を感じた。その動物病院から何か力が広がるのを感じたのだ。そしてそれはすぐに目視で来た。半透明な壁のようなもの。それはすぐに私をすり抜け、私を中に取り込む。気が付けばそれは巨大なドーム用になっていた。

 

 (いったい、なんなの…?)

 

 私は不安に駆られながらも、とにかく声の主に会おうと思った。あの声が自分に聞こえた。そこにはきっと意味があるから。

 

 それからすぐに目的地にたどり着き、門から中に入る。すると、突然病院の壁が爆発した。

 

 「きゃあ!?」

 

 思わず悲鳴を上げてしまう。それは爆発と言うよりは何かがそこにぶつかり突き破ったものだった。ずんぐりとした黒い塊が瓦礫の中から姿を現す。

 

 (な、なに!?)

 

 さらにそれは自分の体の一部を弾丸のように打ち出し始めた。その狙いを見ると、小さな動物がそれを回避しながら逃げ回っている。それは、

 

 「あの時のフェレット!?」

 

 逃げ回るフェレットの特徴は自分がこの動物病院に預けたフェレットに酷似していた。と、そのフェレットが爆風に飲まれてこちらに吹き飛ばされてきた。

 

 「あ!」

 

 「…!」

 

 私の声にフェレットも私に気付いたようだ。とっさに手を伸ばしフェレットを抱き留める。しかし、すぐに黒い塊が私をめがけて飛びかかってきた。

 

 「ひっ!?」

 

 恐怖に負け、思わず尻餅をつく。が、それが功を成した。さっきまで自分の体があったその場所を黒い塊は通り過ぎ、後ろにあった動物行院の壁に突っ込んでいったのだ。

 

 「きゃあ!」

 

 その威力は凄まじく、壁はその一撃で崩れ、私もその衝撃で吹き飛ばされてしまう。

 

 「……いったい、なんなの?」

 

 体を起こしながら、思わずつぶやく。あの黒い塊を見ると、壁に突っ込み崩した瓦礫に埋もれてしまい動けなくなっていた。

 

 ひとまずそのことに安堵し息を吐く。と、

 

 「来て、くれたの…?」

 

 どこからか声が聞こえた。それは自分に助けを求めた者と同じ声。

 

 「え?」

 

 声の主を探して声がしたほうを見る。そこは自分の腕の中。そこにいるのは先ほどのフェレット。

 

 「……え?」

 

 頭がついて行かず、混乱する。

 

 「…あの、大丈夫ですか?」

 

 と、ふたたびフェレットから声がした。

 

 「しゃべった!?」

 

 訳が分からない。混乱がピークに達する。と、そこで瓦礫が崩れる音がした。

 

 はっとしてそちらを見れば黒い塊が瓦礫を崩し、動きを取り戻そうとしていた。

 

 「ここは危険です! ひとまずこの場所を離れて!」

 

 「あ、はい!」

 

 フェレットの指示にしたがい、私は痛む体を奮い立たせて立ち上がり、走り出した。

 

 「あれはいったいなんなの? どうしてこんなことに……?」

 

 走りながら腕の中のフェレットに聞く。フェレットがしゃべったことに関しては一先ずそういうものなのだと頭の隅に追いやった。

 

 「すみません、今はそれを説明している時間はありません! それより、あれを止めるために力を貸してもらえませんか!?」

 

 「え?」

 

 一体どういうことなのか分からず聞き返す。しかしフェレットは別の意味でとったようでさらに必死に頼み込む。

 

 「お願いします! お礼は必ずしますから!」

 

 その言葉に私は「そういうことじゃない」と言い返す。

 

 「力って言われても、いったいどうやって?」

 

 その問いに、フェレットは腕から飛び出し、私の前に降り立つ。

 

 「今の僕の魔力じゃあれを止められない。でもあなたの魔力ならそれができる!」

 

 「ま、魔力?」

 

 またもフェレットの言葉に頭が付いてこない。しかし、

 

 「グオオオォォォォ!!」

 

 「!」

 

 自分が走ってきた向こうからあの黒い塊の叫び声が轟く。もう、迷っている時間はない。

 

 私は意を決して、「どうすればいいの?」と聞く。

 

 「これを」

 

 フェレットは首に下げられていた赤い宝石を口でとって差し出してきた。私は屈んでそれを受け取る。

 

 「それを手に、心を静めて」

 

 言われたとおりに、宝石を胸の前で握りしめ、心から雑念を消す。すると、手の中で何かが変わった。

 

 「……!」

 

 優しく、それでいてとても強い暖かさ。

 

 それを確認し、フェレットは指示を出す。

 

 「続けて。……風は空に、星は天に」

 

 「か、風は空に、星は天に」

 

 少し慌てるが、落ち着いて言葉を発することができた。宝石の温かさが、心を静めてくれる。

 

 「不屈の心はこの胸に」

 

 「不屈の心はこの胸に」

 

 少しずつ、自然に口が動くようになっていく。

 

 (今自分がやらなくちゃいけないことが、分かるようになっていく…!)

 

 「この手に魔法を!」

 

 「この手に魔法を!」

 

 立ち上がり、宝石を天に掲げ、最後のワードを叫ぶ。

 

 「「レイジングハート、セーット、アーップ!」」

 

 その声に、宝石―――レイジングハートは応えた。

 

 『standby ready』

 

 

 

 

 

 結界の中に桜色の柱が見えた。

 

 「俺と同等……、いや、それ以上の魔力だな」

 

 『魔法文化のない子の地球でこれだけの魔力保持者がいると言うのは、驚くべきことですね』

 

 話しをしながら、飛ぶ方向を修正し、速度を上げた。

 

 俺の飛行魔法は普通とは異なる。俺の足の下に両足の下にちょうど足の裏が収まる程度の魔法陣を展開され、それと足を固定。そしてその魔法陣をシューターの要領で動かすことで、飛ぶのだ。

 

 これは俺が独自に編み出した飛び方で、「フォール・エア」と呼んでいる。

 

 アニメでは皆普通に飛んでいたような気がするのだが、アイギスには飛翔の術式が入っていなかった。そこで自分なりに飛翔の手段を考え、魔法陣を足場とすることを思い付いたのだが、それだけでは結局空中を走っているだけ。それでは空中での動きが制限されるし、そこまでの速度も出せない。

 

 そこで考えたのがこの飛び方だ。

 

 実際簡単な術式だし、消費魔力もほとんどない。多少慣れるまで時間がかかったが、今ではかなりのところまで使いこなしていた。最近になって普通の飛行魔法の術式も完成したのだが、むしろ今のやり方の方が飛びやすくなってしまったほどだ。

 

 (もっとも、まだ改良の余地はあるのだが……、と)

 

 結界に侵入する前に俺は地上に降り魔法を発動させる。

 

 「術式構成、ステルス」

 

 すると、俺を黒い魔力が一瞬覆い、すぐに消えた。

 

 『マスター? ステルスは登録しているのですから、わざわざ自分で術式を構築する必要はないのでは?』

 

 「なに、これも特訓だ。魔力制御技術は自分で魔法を使うほうが上達するだろうからな」

 

 アイギスの言った登録してあると言うのは、デバイス全般にある機能の一つだ。さっきも「飛行魔法が入ってなかった」と言ったが、それもこの機能にある。どういうものかと言えば単純に、魔導師がその魔法を習得していなくとも、魔力を流し込んで発動したい魔法をデバイスに指示すればその魔法を発動してくれるというものだ。インテリジェントデバイスではAIが搭載されていることでデバイス自身の判断でこれを発動することもあるし、使用者の魔力適正に合わせて術式を調整したりまでしてくれる。

 

 もっとも俺のデバイスの機能はそれとは少し異なる。基本的なことは同じだが、さらに魔法を高速で発動できるよう、全ての処理をデバイス内で行っているのだ。

 

 普通のデバイスはたとえ登録されている魔法でも、デバイス内での処理は「魔法を発動」という1ステップのみだ。その後、術式の制御や、発動した魔法の処理(砲撃なら撃ち出すことや魔力の収束、結界なら覆いこむ範囲や出力など)は全て魔導師が行うのだ。先ほどと同じでインテリジェントデバイスの場合はこの部分もデバイスが補助してくれるがあくまで補助、基本的にはその使い手である魔導師が全て行う。

 

 しかし俺のデバイスは違う。その処理まですべてデバイス内で行われるのだ。魔法の出力の調整なども、あらかじめいくつかの処理パターンを作っておき、発動の時に適切なものを選択することで発動する。

 

 これなら魔法の発動にタイムラグはほとんど生まれないし、魔法陣の展開すら必要ない。この感覚は、例えるならゲームでプレイヤーが自分の操作するキャラの技を発動する時のそれと似ている。発動したい技を選んで発動とか、コマンド一つ、ボタン一つで技が発動するあれだ。

 

 俺がこのシステムをデバイスに組み込んだのには理由がある。

 

 俺はもともとあらゆる状況に対処できるようにと魔法を覚えていった。しかし、そこで一つの問題があることに気付いたのだ。それは自分がそれに特化していないことによっておこる発動と処理のタイムラグ。使い慣れていない以上、どうしても術式処理に時間がかかってしまう。

 

 このシステムはその問題は解消するために作ったのだ。このシステムに登録した魔法を「スペル」という。また、たとえこれだけのシステムであっても、魔法の使用にはどうしたって体に負荷がかかる。そのレベルを俺はS~Eで区別し、「レベルCスペル~」などと呼んでいる。

 

 だが、このシステムによって新たな問題が生まれた。それを説明するにはまずデバイスそれぞれの特徴を理解してもらわなければならない。

 

 まず一般的なストレージデバイスだが、特徴は余計なシステムを入れていないことでそのスペックのほとんどを術式処理に持って行けることだ。つまり、処理速度が速い。

 

 次にインテリジェントデバイスだが、特徴はAIが搭載されていることだ。このAIが使用者を大きく補助してくれる。しかし今の技術ではAIのデータはやはり大きく、デバイスのスペックのほとんどをAIに食われてしまう。よって、魔法の処理速度が若干遅いのだ。

 

 細かく言えば他にもあるが、とりあえず大きくこの二つに分けられる。さて、俺の持つデバイス、アイギスはインテリジェントデバイスだ。つまりもともと若干ながら処理速度に難がある。そこに先ほどのシステムを組み込めばどうなるか、言うまでもない。

 

 つまり問題とは、術式処理にかけるほどスペックに余裕がなくなってしまうので、アイギスのデータ容量が普通よりかなり大きいということを入れたとしても、あまり多くの魔法を登録はできないということだ。

 

 これではせっかくタイムラグなく発動できるシステムなのに意味がない。そこで俺は力技でこれを解決することにした。それは「一つのデバイスにちょっとしか登録できないなら、デバイスたくさん用意すればいいじゃん」ということだ。

 

 結果、もう一つシステムが必要となった。それはデバイス同士のリンクだ。今俺はアイギスを含め4つのデバイスを持っている。遠・中距離射撃用のライフル型ストレージデバイス「ペネトレイ・ライフル」。近距離格闘用の片手剣型アームドデバイス「デルタリーフ」。術式補助特化の宝石型ストレージデバイス「アイリス」。そして相棒、盾型インテリジェントデバイス「アイギス」だ。アイギス以外の3つ「ペネトレイ・ライフル」「デルタリーフ」「アイリス」はデバイス種類から分かる通りAIは搭載されていない。その分データ容量に余裕があるのでここに多くのスペルデータを入れている。これらとリンクし、統括するのがアイギス。単純な話、コンピュータを4つ用意し、それをケーブルでつないで1つの処理を4台のコンピュータで並列処理するということだ。

 

 これらのシステムを全て入れることとなったアイギスは、さらに1つスペルを登録したことでいっぱいになってしまっている。

 

 さて、アイリスとアイギスだけはバリアジャケットを展開した時常に装備されており、アイリスは首の後ろに、アイギスは左腕に装備される。今使っているフォール・エアやステルスもアイリスに登録してあり、共に負担レベルはEだ。もっともステルスの方はアイリスを使わずに発動させているが。

 

 ステルスの効果はその名の通り魔力反応と気配の遮断により、隠密行動を可能にするものだ。しかし、これ以外の魔法を一つでも発動すればステルスでは隠しきれないので、発動中は飛ぶことすらできないのが難点だ。そのため、結界内へ入った後、俺は走って目的地へ向かう。

 

 「魔力反応は……こっちか!」

 

 『近いです!』

 

 いくつかの角を抜けたあたりで、ようやく戦闘が行われているところにたどり着いた。見ると、黒い塊の突進を一人の少女がバリア系の魔法プロテクションで防いでいた。

 

 (あれは………なのはか!)

 

 俺がそう判断する中、なのはは右手を前に突出し、そこから魔力弾を放って黒い塊を吹き飛ばしてしまった。

 

 「……!」

 

 デバイスの補助があるとはいえ、集束時間からは想像もできないほど高い威力が出ていた。

 

 『今のは特別魔法を発動したわけではないと思われます。おそらくただ魔力を集束し、撃ち出した』

 

 それだけであの威力。つまり、想像以上の集束速度だったというわけだ。

 

 しかし、それだけではあの塊を倒すまでは行かなかったようだ。吹き飛ばされた塊は三つに分かれ、さらになのはたちとは反対方向に向かって動き出す。

 

 「逃げた!」

 

 なのはの後ろにいたフェレットがすぐにその意図に気付き、なのはもすぐに飛翔してその後を追いだした。俺もすぐにその後を追う。

 

 ………まずいな。飛行しているなのはでもどんどん距離を離されている。このままでは結界の外にまで逃げられ一般人にまで被害が出るかもしれない。

 

 「そうなる前に、俺が行くしかないか」

 

 『……! 待ってください! あの魔導師が動きます!』

 

 アイギスの制止の声に従い、俺は発動しようとしていた魔法を止めてなのはを見る。

 

 すると、ビルの上に立ち、デバイスを構えていた。よく見ればデバイス形状も先ほどの杖の形から、槍のような形へと変化していた。さらにその先端にどんどん魔力が集束されていく。

 

 「あれは、砲撃魔法か!?」

 

 『かなりの集束速度です…! あれがマスターの言っていた方だというのなら、おそらく魔力集束のレアスキルを持っているのではないでしょうか』

 

 俺の言っていた、というのはアイギスには事前にこの世界で事件が起こることと、その時、高町なのはと言う一人の少女が魔導師になるであろうことを話していたのだ。

 

 「あの集束率なら十分やれる。あとは当てられるかどうかだが……」

 

 集束される魔力量から推測し、もしもを想定して走り出す。しかしそんな心配は杞憂に終わった。

 

 ついに放たれた魔力砲は逃げ回る3体の塊を正確に打ち抜いたのだ。

 

 「………すごいな」

 

 『はい。照準などはデバイスがやったのでしょうが、あの威力と集束率。そしてそれを成せるだけの判断力と立ち向かえる勇気。魔導師としては凄まじい才能とセンスを持っていますね』

 

 俺だって魔導師の才能を持って生まれたはずなんだが、もしかしてなのはの方が才能あるんじゃないか?

 

 今回の彼女の戦闘には、俺が3年かけて積み上げてきたものと同等のものがいくつかあった。これから彼女が努力を重ねればすぐに俺なんか追い越すんじゃないだろうか。

 

 少し呆然としたままその場に立ちすくんでいると、なのはのもとへ3つの宝石が集まっているのに気付いた。

 

 「あれは………」

 

 『魔力結晶体ですね。おそらくさっきの砲撃には封印魔法が施されていて、それであの塊を打ち抜いたことで封印したということでしょう。それと、あの結晶体は3日前に降り注いだものと同じものでしょう。同時に公園のボート乗り場を破壊したのもあれで間違いありません』

 

 確かに感じる魔力反応の波長はあの時のものと同じだし、公園に残っていたものとも一致する。

 

 そうして分析しているうちに、なのはと彼女の傍にいたフェレットはあの宝石をデバイス内に収納しバリアジャケットや結界を解いたようだ。

 

 「………俺たちも帰ろう」

 

 『え? 彼女たちに接触しないんですか?』

 

 アイギスの疑問はもっともだ。俺があの宝石のことを気にするのも、全ては自分の大切なものを護るため。良くしてくれる商店街の人達や、学校の子供や先生たち。俺は、一度でも自分がかかわったすべての人たちを、その笑顔を悲しみや苦しみに染めたくなかった。誰にも自分と同じような思いをしてほしくなかった。

 

 だというのに、その重要な情報を持っている可能性の高いあのフェレットに接触しようとしない。この行動に矛盾を感じるのは当然だった。

 

 「……なのはは、優しいからな。だから駄目だ」

 

 『?』

 

 「関われば、なのははきっと俺と話そうとする。親しくなろうとするだろう。だけど俺に、その資格はない」

 

 『………』

 

 俺の言葉をアイギスは黙って聞く。

 

 「学校と一緒さ。俺は必要が生じない限り、あいつらとは関わらない」

 

 『もし、彼女たちが危険な状態に陥ったら、どうするのですか?』

 

 アイギスの問いに、俺は迷いなく答える。

 

 「それは、俺にとって"必要が生じた"ってことだ。だけどその時も、できれば顔を知られたくはない。俺はあくまで、神出鬼没なよくわからない第3勢力という立場で、一人で戦うさ」

 

 『……そう、ですか』

 

 アイギスは、それ以上何も言うことはなかった。そんな相棒に感謝し、俺はバリアジャケットを解いて帰路についた。

 

 (そうさ。俺は一人で戦う。誰も殺させず、誰も殺さず、全てを護り抜く。たとえこの身がどれだけ傷つき、死ぬことになろうと。それが俺の罰になるのならそれでいい。それが俺の選んだ、俺の第2の人生だ)

 

 

 

 

 家に着いた後、俺は自宅に用意していたデバイス作成用の作業場に入った。接触した場合に顔を見られなくするための装備を作成するため。簡単に言えば、仮面を作るためだ。

 

 (正面は当然のこと、髪や声もできれば隠したいな)

 

 となれば仮面はかぶるタイプとなる。声に関してはそもそも声が籠るだろうし、魔法でもどうにかなるだろう。

 

 となると……

 

 

 

 速いに越したことはない、というわけで、そのまま徹夜覚悟で作成を開始し、深夜3時ころには完成にまで至ることができた。

 

 全体的に黒く白いラインは入っているものの、ほとんどのっぺらぼうのような仮面で、かぶると固定するために後ろの部分が下りてきてバリアジャケットに装着される。……なんだか昔パチンコの宣伝か何かで見た某アニメの奇跡を起こす仮面男の仮面に印象が似ているような気がする。仮面の装着のしかたも同じような感じだし。

 

 ……まあ、実用的なら何でもいいか。はやく学校に備えて寝よう。

 

 

 

 翌日。いつもと同じ時間に目が覚めてしまったので、いつもと同じようにランニングをし、スフィアを操作して朝練を済ませ、朝食と弁当をつくり、朝食を済ませて学校へ向かう。その日の授業はいつも以上に眠気にとらわれ、危うく寝てしまう所だった。寝た時間が短いので、少し寝不足気味なのだ。

 

 (駄目だな。もともと健康にも悪いし、これからはもう少し気を付けるか)

 

 放課後になり、そんなことをぼんやりと考えながら帰路についていたその時、

 

 「………!」

 

 魔力反応、それも大きい。

 

 「アイギス、これは」

 

 『はい。波長も一致しています。間違いありません』

 

 俺は人目を避けるため一旦裏路地に入りバリアジャケットを身に纏う。フォール・エアを発動させ反応のあった方へ向かった。できるだけ高度を上げてスピードを出し、人目につかないようにする。

 

 するとすぐに先ほどのものとは別の大きな魔力を感じた。

 

 (なのはか? ……いや、違う。だとしたらあのフェレットか? それとも………)

 

 いくつか予想を立てながらさらにスピードを上げる。すると神社が見えてきた。

 

 (あれはいつも魔法を練習しているあたりだな。なら周囲は森出し、人目を気にする必要はないか)

 

 そう考えていると、まさにその場所でなのはの魔力も感じることができた。

 

 遅れてなのはの反応がでた。ということはさっきから感じるもう一方はおそらく………

 

 これはもう片付いているかもしれないな。出遅れたか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どこかで誰かが、ため息をついたような、そんな気がした。

 




関わりたくないと言っていながら、人が傷つくのを黙ってみていることができず介入していく矛盾だらけの主人公。しかしその矛盾も一応意味があるので気にしないで下さい。

そして次はあの子が登場します。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

改めましてお久しぶりです。待ってくれている方には大変ご迷惑をおかけしました。

さてさて、今回の修正はなのはandユーノSideを入れたことと、デバイスシステムの説明をもう少しわかりやすくしたこと。最後にジュエルシードという名前は優雨は知らないということです。

ジュエルシードなんて名前を憶えているなら、もっとなのはの詳しい内容も覚えていておかしくないだろう、と思ったので変更しました。

ではまだまだ修正作業が残っているので新話の更新はまだありませんが、今後ともお付き合いください。

なお、更新速度はだいぶ遅くなってしまうと思われます。できるだけ早く修正を終わらせて新話を更新したいのですが、リアルが一番忙しい時期になってしまっているので、どうかご了承ください。申し訳ありません。

では、またノシ
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