魔法少女リリカルなのはEX・S 過去にとらわれた転生者   作:レイレナード

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今回はフェイトがヒロインな話です。

可愛く書けていればいいんですがね。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

恥らいながら慌ててるフェイトは可愛い。まあ、それを表現できているかどうかは私の腕次第なわけですが。

ではどうぞ


Episode5 決着の後(改)

 「ママ! 今日はいっぱい遊ぼうね!」

 

 「ええ。久しぶりにとれた休みだもの。いっぱい遊びましょうね。――――」

 

 「うん!」

 

 暖かな日差し。心地良い柔らかな風。あたりいっぱいに広がる草原の中を、一人の女の子とその母親が歩いている。都会の喧騒から離れたその場所は、暖かな自然に囲まれた広い広い自然公園。天気は快晴。これ以上ないくらいのピクニック日和だ。

 

 母親と手をつないで歩く女の子は、その最高の天気も合わせて、これ以上ないと言うくらいにご機嫌で、にっこりと笑っている。

 

 母親の言う通り、仕事から解放され、二人で一緒に遊ぶのは本当に久しぶりだった。家にはお手伝いさんもいるし、ペットの山猫もいるけど、まだ幼いその子にとって母親がいないというのは、やはりさびしいもの。

 

 女の子にとって、このピクニックはずっと待ち望んでいたものだった。

 

 「………違う」

 

 しかし、そんな楽しげな雰囲気は、一瞬にして変わり果てた。

 

 「あなたは、――――じゃない」

 

 「……え?」

 

 自分を見下ろす母親を見て、女の子は固まる。

 

 それは、まるで親の仇でも見るような、憎しみの顔。いつの間にか空は曇り、風は冷たく、徐々に激しくなっていく。

 

 「あなたは、いらない」

 

 母親はつないでいた手を放し、踵を返す。

 

 「こんなことしてる場合じゃない。待っていて、――――」

 

 女の子は訳が分からなかった。どうしてこうなったのか、何も理解できない。だけど、一つだけ分かった。

 

 このままでは、おいて行かれる。

 

 やっと、望んでいた時間が来たのに。やっと二人で笑っていられるのに。

 

 「ママ! 待って! ママ!!」

 

 何度呼びかけても母親は振り返らない。追いかけても、距離はどんどん離れていく。風はどんどん強く、鋭く、激しくなり、女の子の行く手を阻む。

 

 「ママ! おいて行かないで! 母さん!!」

 

 いつしか、女の子は成長していた。それは今の私。必死に走って、必死に呼びかけて。それでもやはり母親は振り返らない。

 

 「お願い……、待って、一人にしないで……っ!

 

 

 

 

 「母さん!!」

 

 気付けば、そこには知らない天井があった。

 

 「………え?」

 

 あの空も、風も、母親もそこにはいなかった。どこかの一室。ベッドと机とタンスくらいしかない、そっけない部屋。そのベッドに、自分は寝ている。

 

 全身から汗が吹き出し、動悸も激しい。

 

 (……あれは、夢? ………あれ、私、どうしたんだっけ?)

 

 寝ぼけているのか頭がはっきりしない。

 

 鼓動が納まるのを待ってから体を起こすと、体がこわばっていたせいか少し痛む。

 

 「っ、………」

 

 改めて部屋を見渡してみるがやはり見覚えはない。どうして自分がここにいるのか、何もわからなかった。

 

 ガチャッ

 

 突然ドアが開いた。

 

 「っ!」

 

 驚きドアのほうを見る。

 

 そこには同い年くらいの無表情な男の子がいた。その左手にお盆を持っている。

 

 彼はこの家の住人だろうか。

 

 だけど、彼を見たその時、私は不思議な感覚にとらわれていた。

 

 (どうしてこんなにも、儚く見えるの……?)

 

 その無表情も、今にも崩れしまいそうなほど弱い自分、そんな姿を隠すための虚勢のように思えてくる。だけど、どうしてそんな風に思うのか、どうしてそう見えるのか、今の私にはさっぱりわからなかった。

 

 そんな彼は、私を見て少しだけ目を開く。

 

 「ああ、起きたか」

 

 彼の言葉が自分に向けられて発せられたのだと気付くのに少しかかった。それだけ考えにのめりこんでいたのか、それとも単にまだ寝ぼけているだけか、あるいはその両方かもしれない。

 

 そんなことを、また、ぼ~っと考えていると、彼は私の傍まで来て、真剣な顔で私の顔を覗き込んだ。

 

 「……?」

 

 そんな彼を不思議に思って見ると、彼は表情を和らげた。

 

 「よかった。顔色は良いな。……ん?」

 

 しかし、今度は少し驚いたように呟く。

 

 「……泣いてたのか?」

 

 「…え?」

 

 彼の言葉に、自分の目元が熱くなっていたことにようやく気付いた。もう涙は止まっているようだが、目元にはきっと涙の跡があるだろう。

 

 「よく見ればなんだが元気もないな。汗もすごいし、熱でもあるのか?」

 

 そう言うと、彼は持っていたお盆を机に置き、突然右手で私の前髪をかき上げた。さらに左手で自分の前髪をかき上げる。そしてそうしてあらわになった互いの額を当てた。

 

 「……え? え!?」

 

 状況にようやく頭が追い付いて理解する。私のすぐ目の前に、異性の顔があった。間違えばキスでもしてしまうかのような距離。まだそういったことには疎いとはいえ、さすがにこの状況は恥ずかしく顔が熱くなるのが分かった。鼓動が激しくなり、時間がやけにゆっくりに感じる。

 

 ……でも、どうしてだろう。

 

 (………温かい)

 

 

 「………やっぱり少し熱があるな」

 

 そう彼がつぶやくのが聞こえた。同時に額の感触が消えてしまう。それが、少し残念。

 

 「待ってろ。今冷たい水とタオルをとってくる」

 

 「え!? あ、ま、待って!」

 

 ようやく冴えてきた頭で、彼が勘違いしていることに気付き、慌てて止める。

 

 「これは、その、そういう熱じゃないから、大丈夫、です…」

 

 (……言えない。ただドキドキしただけなんて言えない………)

 

 言いながら恥ずかしくなって、俯いてしまう。でもそんな私の態度から何か感じたのか、彼は「……そうか」とだけ言って、また私の傍まで来てその場に座った。

 

 って、え、ちょ、私は今ベッドの上だからそこに座られたら彼は私を見上げるようになってつまり真っ赤になっているだろう私の顔がしっかり見えるわけで………

 

 「~~~~っ」

 

 慌てて顔を逸らしてあさっての方向を向く。そんな私を彼は不思議そうに見ていた。

 

 「……まあいい。それよりも腹減ってないか?」

 

 そう言いながら、彼はおいていたお盆をとって私に差し出す。その上にはシチューがのっていて、ほのかに食欲をそそる良い匂いがした。

 

 「え? あ、大丈夫ですっ。別にお腹空いてn…」

 

 クゥー………

 

 「………」

 

 (わあああっ!! な、なんでなっちゃうの!?)

 

 ものすごく顔が熱い。たぶん私は今耳まで赤くなっているだろう。恥ずかしすぎて、思わず布団を頭からかぶって彼に背を向ける。

 

 「………まあ、食いたくなったら食えばいいさ」

 

 彼がそう言うと、一緒に物を置いた音がした。たぶんお盆をどこかに置いたんだと思う。彼の声には特にあきれた様子もなく、少しだけほっとした。

 

 「さて、先に謝っておこうと思う。すまない」

 

 「え?」

 

 一瞬何を言っているのかわからなかった。なんで謝られているんだろう。不思議に思って彼を見ると、彼もまた首をかしげた。

 

 「………気付いてないのか?」

 

 「え、……はい」

 

 考えても答えが出ないので、正直に頷く。すると彼は少し気まずそうにしながら目を逸らした。

 

 「………自分の格好を見てみろ」

 

 「?」

 

 彼の言葉に従って自分の服を見てみる。それは普段自分が着ている服ではなく、青いチェック柄のパジャマだった。

 

 「………え?」

 

 こんな服を着た覚えはない。つまり気を失っている間に誰かに着せ替えられたということ。そして目の前の彼が謝っているということは………

 

 「悪いが、勝手に着せ替えた」

 

 「ええええええええ!?」

 

 つまり私は彼にもともと着ていた服を脱がされ、そのあと彼のパジャマに着替えさせられたということ!?

 

 ということは………い、いろいろと見られた!?

 

 「言い訳すると、落ちたお前を回収したら血の臭いがしたからだ。いくら否殺傷設定にしていたとはいえ、俺がお前に使った魔法は、爆発するものと貫通性の高いもの。何かの間違いで怪我させてしまったのかと思ったんだ。だから治療のためにな」

 

 一応筋は通ってる。でもそれでもやはり簡単に納得できるものじゃない。しかし結局は私の治療のためで、でも見られたことには変わりなくて………うう。

 

 文句を言いたいけど、治療してくれたことへの感謝の気持ちもあって何も言えない。そんな悶々とする気持ちを押さえられなくて恨めしそうに彼を見ると、彼はもう一度「すまん」と頭を下げた。

 

 ………あれ? 落ちた私を回収したら? え、ということは。

 

 「え? あなたってあの仮面の人!?」

 

 「ああ。気付いてなかったのか?」

 

 「だ、だって魔力なんか全然感じないし、雰囲気も違うから………」

 

 慌てつつ、あの戦いが頭の中を駆け巡る。

 

 ジュエルシードの反応を感知し、急いでそこに向かって発動寸前のジュエルシードを封印。回収しようと近づこうとしたら、突然あの仮面の魔導師が転送されてきたのだ。

 

 それからは、見たことも無い魔法に翻弄されっぱなしだった。

 

 知っているのとは全然違う飛行魔法。私のシールドをいともたやすく貫通する魔力弾や砲撃。斬撃を防御した瞬間に跳んでくる爆発する魔力刀。細かく見れば私が使っている魔法と似ているところもあるし、術式を理解できるところもあるけど、分からないこともたくさんあった。

 

 特に驚いたのは、複数のデバイスを使用すること。左腕に着いている盾が彼のデバイスだと思っていたら、いつの間にかライフル型や短剣型のデバイスを持っていたり、ずっと動揺させられっぱなしでいつもの動きができなかった。

 

 彼の魔法は初めて見るものばかりだし、どれも対処が難しいものばかりだ。受けに回ったらすぐにやられてしまう。かといって、攻めたとしても遠距離ではあの魔法を拡散させるシールドを突破できないし、接近戦でもあの剣のせいで不意を衝くぐらいしかできない。

 

 だけど、私のスピードにぎりぎりでついてこられるくらいだったから、いつものようにスピードで翻弄すれば勝てない相手じゃなかったはずなのだ。それでも最後まで主導権を取られ続けたのは、それだけ彼が"上手い"ということ。

 

 そしてその彼が今、目の前にいる。

 

 「っ!」

 

 思わず息を飲む。警戒をあらわにして、少しでも距離をとろうと下がった。すると彼が口を開いた。思わず身構えるが、

 

 「……治療のために仕方なかったんだ。すまない。そんなに引かないでくれ」

 

 と、彼はそんなことを言った。……なにか勘違いしてる?

 

 私が疑問を顔に出すと、彼もさらにわからないというように首を傾げた。

 

 「………?」

 

 「……?」

 

 「………」

 

 「………」

 

 微妙な空気が私たちを包む。

 

 「………ああ、なんだ。話を戻そう」

 

 いい加減そんな空気に耐えられなくなったのか、彼がそう提案する。私も居心地の悪い空気だったので、その提案に感謝した。

 

 「で、だ。そういうわけで、治療のために服を脱がせたわけだが」

 

 しかしそれもつかの間。その言葉でさっきの恥ずかしさを思い出して、また顔が熱くなる。

 

 「………すまん」

 

 そんな私に気を使ってか、彼がまた謝る。そんな彼に強く出ることもできず、私は「……いえ」と言って、顔を布団に埋めることしかできなかった。

 

 「続けるぞ?」という彼の言葉にそのまま頷く。

 

 「……確かに傷はあった。だがあの傷は俺の攻撃によるものじゃない」

 

 しかし、たったそれだけの言葉で恥ずかしさなんて消えてしまった。

 

 「あれは、鞭か何かで叩かれてできた傷だ」

 

 彼の指摘に、体がこわばる。

 

 知られたくないことを知られた気がした。言われたくないことを言われる気がする。布団に顔を埋めたままだから彼の表情を見ることはできないけど、でも、彼が私の態度から確信を得たように思えた。

 

 「お前、母親に頼まれてジュエルシードを集めているだろ。お前、もしかして――」

 

 「やめてっ!!」

 

 いつの間にか叫んでいた。

 

 「それ以上言わないで! 悪いのはちゃんとできない私! 母さんの事悪く言わないで!!」

 

 一度あふれた感情は流れる水のように出てきて簡単には止まらない。

 

 「ジュエルシードを全部集めれば、母さんの願いが叶う! きっと母さんを幸せにできる! そうすればきっと、あの頃に戻れる!!」

 

 夢で見た、幸せな時間を思い出す。

 

 そうだ。私が頑張って母さんを助けるんだ。そうすればあの頃に戻れる。きっと、幸せなあの頃に。

 

 「だから! だから……」

 

 感情に任せて叫ぶ私を、彼はずっと見ていたような気がする。すごく真剣に聞いてくれていたような気がする。

 

 その儚くも強く、そして優しい感じは、確かにあの仮面の人と同じ雰囲気だったように思えた。

 

 

 

 「落ち着いたか?」

 

 「……うん」

 

 あれからどれくらい時間がったのかわからない。だけどその間、ずっと彼が私の言葉を聞いてくれていたのは確かだったと思う。

 

 場の空気は重く、感情を抑えきれない自分の心が苦しくなる。

 

 「………俺は、お前のことやお前の家族のことをちゃんと知ってるわけじゃない。だから今は、お前の言葉を信じよう」

 

 その言葉に驚いて私が顔を上げると、彼はまっすぐに私を見ていた。

 

 「自己紹介がまだだったな。俺は、億夜 優雨。好きに呼んでくれ。君の名前は?」

 

 彼は全く笑っていない。ほとんど無表情だ。

 

 (なのに、なんでだろう)

 

 どうしてこんなにも彼の瞳は、優しく見えるのだろう。

 

 「フェイト・テスタロッサ…です。」

 

 気が付けば、私は自分の名を告げていた。そんな自分に少し驚く。いつの間にかあの苦しさも和らいでいた。

 

 「よろしく、テスタロッサ」

 

 そう言って、彼は手を差し出す。私はその手を取るかどうか迷った。

 

 彼はとても優しい。まだほんの少ししか話していないのに、それが分かった。だけど、彼がどういうつもりで私に優しくしてくれているのか、わからなかったから。

 

 そのまま迷って手をさまよわせていると、彼から私の手を取ってきた。

 

 驚いて彼を見る。彼は相変わらず無表情に、だけどただ優しく私を見ていた。

 

 

 

 「さて、そろそろ洗濯物も乾いただろう。俺はそっちを取り込んでくる。デバイスは机の上にあるから、お前もここで今やれることをやっておけよ」

 

 そこで、私はようやく我に返った。いつの間にか彼に見とれていたのだ。

 

 そんな私に気付かず、彼はそのまま部屋を出て行く。

 

 (うう、顔が熱い)

 

 おそらく私の顔は今真っ赤だ。正直頭が混乱してうまく思考できない。

 

 「と、とりあえずアルフに相談しよう」

 

 そう決めると私はバルディッシュを手に取ってアルフに通信を送った。

 

 

 

 

 (ああああっもう! フェイトはどこにいるんだよ!)

 

 雲よりも少し高い場所をゆっくりと飛行しながら地上に目を走らせる。フェイトを探すためだ。

 

 フェイトと連絡が取れなくなってからもう半日以上過ぎている。拠点にも帰っていなかったし、もう何かあったとしか思えない。

 

 考えられる可能性は、管理局が関わってきたか、もしくはあの仮面野郎と何かあったか。前者はあまり考えられない。管理局が来なければならないような事態にはまだなっていないはずだ。となると考えられるのは後者。

 

 (まさかやられたなんてこと………ううん。フェイトに限ってそんなことあるわけない………と思う)

 

 だけどあの仮面野郎が使っていた魔法は見たことも聞いたこともないような魔法だ。

 

 それにあいつからは強者の感じもした。

 

 もしかしたら本当に………

 

 思考がだんだんと悪い方ばかりに流れるようになってきた。そのとき、

 

 「っ!」

 

 通信が入ってきた。慌てて確認するとそれはフェイトからのものだった。

 

 「よ、良かった~」

 

 あたしは急いで通信を開く。

 

 「フェイト!! もう、心配したんだからね!!」

 

 『あ、ご、ごめんね。アルフ』

 

 フェイトは少し慌てながら言葉を返す。

 

 ふとフェイトに違和感を覚えた。それが何かを少し考えながら通信に出ているフェイトをよく見てみる。

 

 すると、答えは簡単に出た。

 

 「フェイト? 何その服? それになんだか顔が赤いように見えるけど」

 

 『あ、ええとね! 順を追って話すよ! えっとまずジュエルシードの反応を見つけたところからね!』

 

 目に見えてフェイトが慌てはじめたが、とりあえず話してくれるというなら黙って聞くことにする。

 

 

 

 『………それでね! 優雨ったらいきなり私の手を取って、よろしく、って優しく言ってくれてね! それで気が付いたらその顔に見とれちゃってて!もうなんか恥ずかしくて訳が分からなくなっちゃって! それでとりあえずアルフに連絡しようと思ったんだよ!』

 

 ………

 

 え、ぇぇぇぇえええええ!!?

 

 なんか戦ってるところまではまじめに語ってたのに目を覚ましてからの話が途中から惚気話みたいにしか聞こえないんだけど!?

 

 なに? あたしが知らない間に何があったの!? いやたった今何があったかは説明されたけどさ!!

 

 「と、とりあえず落ち着こうフェイト。私もそっちに行くから待ってて」

 

 『う、うん。わかった』

 

 そう言うと通信を切る。今の通信のおかげでフェイトの位置はわかったわけだけど………たぶん敵本陣だよね。そこって。

 

 「はあ~」

 

 思わずため息が出る。

 

 とにかく今はフェイトのところに向かおう。

 

 あたしはそう決めて特定した位置に急いだ。

 

 

 

 

 なんか騒がしかったが、誰かに通信でもしてたのか?

 

 もしかして母親か?それとも別の協力者か………。いずれにしても、ここに来る可能性が高いな。まあ、来ていきなり戦闘になるなんてことは………ありそうだな。

 

 少し警戒しておくか。

 

 ………ついでに飯の用意もしておこう。フェイトはどう見ても栄養不足な体調だったし、その協力者が来るんだとしたらそっちも食生活が信用ならんからな。

 

 そう思いながら俺はシチューを温めなおす。

 

 そういえば、テスタロッサはちゃんとシチュー食べたかな。いい加減冷めてしまった気がする。これを温めたら確かめに行ってみるか。

 

 ………

 

 それにしても、知るためとはいえ思い切ったことをしたものだ。

 

 まあ、収穫はあった。

 

 レアスキルの制御がうまくなってきたのかテスタロッサの記憶は何とか見ずに済んだし、ちゃんと話をしたおかげか、なんとなくテスタロッサの事情も知れた。

 

 テスタロッサにはああ言ったが、やはり母親のことが気になる。あの様子じゃまず間違いなく虐待まがいのことはされているだろう。

 

 できればそれは何とかしたい。でもそのためにはその母親にも会わなければならないということだ。となれば、必然的にテスタロッサと行動を共にすることになる。

 

 でもそれはなのはと敵対する関係になるということだ。できればそれは避けたい。

 

 いっそのこと知ったことを全部なのはに言うか? ……いや、それはテスタロッサが許可したらだ。そしておそらく、そうはならないだろう。

 

 となると、今まで通り第三者として二人の戦いを見守りつつ、テスタロッサの行動を意識していくしかないか。

 

 「……はあ」

 

 答えが出たなら後は実行するだけだ。だけど、

 

 (だけど、なんで俺はこんなに必死なんだ?)

 

 本来なら俺なんかが関わるべき問題じゃない。放っておこうと思えばできたこと。なのに、結局俺は自分から関わって行く。

 

 巻き込まれた、知ってしまった、何て言うのはただの言い訳だ。そこから考えて行動したのは俺自身なのだから。

 

 あの時と、なのはの時と同じだ。

 

 テスタロッサも、なのはと同じ。苦しんでいるのに、それを必死に我慢して無理をしている。悲しみを押しこめて、何でもないように振舞って、だれにも頼らないで。

 

 ………まるで、あの人に似ているようで。

 

 (ああ、だからか)

 

 俺たちのためにすべてを捨てて、苦しんで、無理をして、でもそれを悟らせまいと、ずっと笑っていた、あの人。

 

 何もできなかった。何の支えにもなってあげられなかった。その結果は最悪なもので。だから、俺は二人に同じようになってほしくないんだ。

 

 いつの間にか、あの人に重ねていたんだ。

 

 願いも、祈りも、全部。

 

 なら、俺はあの人に求めたことを、二人にも求めているのだろうか。

 

 この気持ちは、その裏返し?

 

 つまり、俺は――

 

 

 ピンポーン

 

 チャイムが鳴り、思考の海に溺れていた意識が戻ってくる。

 

 誰だ?

 

 まさかとは思うがテスタロッサの仲間か? いや、それなら律儀に玄関からくるなんてこと……、ありそうだな。テスタロッサの奴、意外と抜けているところが多いような気がするし。

 

 俺はため息をひとつ吐き、客を迎えるために玄関へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 どこかで誰かが、安心しているような、そんな気がした。

 




ユーノ
 優雨の家に到着し、フェイトと合流するアルフ。
 優雨の優しさに触れ二人は徐々に心を許し始める。
 
 次回 「一時の休息」


作者「………実はこの回だけでフェイトの話を終わす予定だったんだよね」

ユーノ「何やってるんだよ………」

作者「気が付いたら長くなってた」

ユーノ「はあ。まあ、仕方がないかもしれないけどさ」

作者「おかげでまた来週のなのはの出番がなくなった」

ユーノ「………」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ユーノ「人に有言実行とか言ってたくせに」

作者「前も誰かに言われた気がする。誠に申し訳ありません」

優雨「今回は流れを含めて大幅に修正されたな。だいたいの展開は一緒ではあるが」

作者「アルフのところはほとんど変わってないですが、それ以外はもっとよくできる気がしたので」

ユーノ「優雨の心情とかは前よりもしっかり書けてる気がするね」

優雨「俺の前で俺の心情とか言うな」

作者「では、次回も早めに投稿できよう頑張ります! また会いましょう!」ノシ
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