ハイスクールD×D  オッドアイの銀猫   作:takubon

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 いや~、前回は思った以上に感想が来てビックリしました。

 今回はタイトルのまんまです。こんな感じにしてみました。次回からはちゃんとフェニックス編始めます!


再会と誓い

 どうしてこうなった・・・

 

 

 

 

 

 

 今の僕の心情を一言で表すなら、その一言です。

 

 僕の目の前には藍華がいます。直接会うのは約10年振りですね。10年前と比べて、藍華は大きくなって、そして美人になったと思います。髪型に眼鏡、少し垂れ気味の目などは大きくなっても変わっていませんでした。

 

 本来なら、感動の再開。という感じなんですが・・・

 

 

「・・・・・」

 

 

「・・・・・」

 

 

 今の僕達がいるオカルト研究部の部室の空気はピリピリとした感じになっています。その空気の発生源は、僕の目の前にいる藍華からです。これだけのプレッシャーは久方ぶりだなぁ。以前、アリスと戦った時以来、いや、もしかしたらその時以上かもしれない・・・

 

 部室には藍華と僕の二人だけ。他の皆は外で待ってもらっています。というか藍華に言われて強制的に二人きりになったんですけどね。リアス・グレモリー達も二つ返事でまるで逃げるように外に出て行った。気持ちはわかるよ。

 

 

「・・・・・」

 

 

「・・・・・」

 

 

 

 というかこの空気・・・どうしたらいいんだ!藍華は何も言わず瞼を閉じて机を挟んで僕の向かい側のソファーに座ったままプレッシャーを送って来るし・・・こ、これは僕から話しかけるべきだよね。でも、口を開こうにも何故か金縛りにあったみたいに口はおろか、指一本動かす事が出来ないんだけど・・・

 

 どうしてこうなったのは、今日のお昼過ぎくらいに僕とティアが家でのんびりとしていた時、黒歌から魔法で通信が入った。まだ学校の時間なのに何だろうと思ったその内容は、『桐生藍華が私達の正体やオカルト研究部の部員が悪魔って事知っていて、オッドアイの銀色の猫、つまりシルの事を聞いてきた』というとんでもない内容だった。その知らせに僕は思わず大声を出して飛び上がってしまい、膝枕をしていたティアを床に落としてしまった。本当に信じれないくらい驚いて、心臓が止まるかと思ったよ。

 で、学校の授業が終わり、放課後に皆が集まっているオカルト研究部の部室に来たら、藍華が僕と藍華以外の全員を追い出して、今の状態に至る、という訳です。

 

 

 

「・・・シル、よね」

 

 沈黙を破ったのは藍華だった。藍華は瞼を開けて真っ直ぐにこちらを見てそう問いかけた。

 

「・・・・・・・・・・うん」

 

 長い沈黙の後、僕は正直に答えた。すると、藍華は立ち上がってゆっくりと僕のすぐ傍までやって来ました。そして手を振り上げる動作をしたのを見て、僕は叩かれる!と思い、咄嗟に目を閉じました。

 

「え?・・・」

 

 しかし、そんな僕を待っていたのは叩かれる衝撃ではなくて、何かに包まれる柔らかい感触でした。そして僕のすぐ横からは藍華の泣き声が聞こえてきたのです。

 

「シルっ!・・・やっと、やっと会えたっ!」

 

 肩や僕の頬に水滴がボロボロと落ちてきました。僕は突然の事にまた動きが固まってしまいました。

 

「あい、か・・・?」

 

「バカッ!」

 

「ひぅっ!?」

 

 急に耳元で大声を出された僕は驚いてしまいました。藍華は一旦僕から離れ、お互いの顔が見えるようになった。僕は椅子に座ったままの姿勢で、藍華は僕の膝の上に座っている状態なので、僕は少し見上げる形になっています。藍華の顔は涙で濡れ、眼鏡奥の瞳からはボロボロと絶え間なく涙が溢れてきていて、今も膝に頬を伝って涙がボロボロと落ちてきた。

 

「ずっと、ずっと心配してたんだからね!!あんたが家から突然いなくなってから私、ずっとずっとあんたの帰りを待ってたんだから!!」

 

 藍華は僕に向かって叫ぶように言います。防音の結界を張っているので声は外には一切漏れません。

 

「10年もどこほっつき歩いてたのよ!何で私に黙って出て行っちゃったのよっ!!何で近くにいたのに返って来なかったのよ!!!」

 

「・・・ゴメン」

 

 藍華の叫びに、僕はそれ以外の言葉が出てこなかった。

 

「バカッ!」

 

 そう言って藍華は再び僕に抱き付いて来た。

 

「バカッ!バカッ!」

 

 ギュッと、さっきよりも強く僕を抱きしめる藍華。

 

「ゴメンね、藍華」

 

 僕も藍華を抱き返して、再び謝罪の言葉を述べた。

 

「バカバカッ!・・・シルの、バカァ・・・」

 

 ギュウッと、まるでもう離さないとばかりに僕を抱きしめながら、僕の事を泣きながら怒る藍華。

 

 それからしばらくの間、僕は藍華に怒られながら、そして泣きながら抱きしめられた。だけど僕はそれがとても懐かしく感じた。それは10年振りに、藍華に抱きしめられたからなのかな

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

「あらら、どうしよう?」

 

 あれからしばらく経って日が落ちた頃、藍華は叫ぶのと、泣き疲れたのとで僕を抱きしめたまま眠ってしまった。しかも、眠っていてもその腕は僕を離さないという感じで動かす事も難しそうだ。

 

「取り敢えず藍華を送って帰らないと、藍華のお母さんが心配するだろうからなぁ。」

 

 そう思った僕は、黒歌に魔法で連絡を取り、詳しい話はまた後日改めてみんなに話すって事と、今日は帰れないという事を伝えた。黒歌は特に何も聞いて来ずにそれを了承してくれた。ただし、明日は必ずちゃんと話す事と、明日のご飯は豪勢にする事になった。

 

 僕は藍華を抱え、部室に置いてあった藍華のカバンと一緒に転移魔法を発動させた。

 

 

 

「ふぅ、ここに来るのも十年振りだなぁ」

 

 転移したのは林の中だった。少し歩いて林を出て道に出ると、少し離れた所に目的地が見えた。道には人がおらず丁度良かった。藍華を抱えたまま少し歩けば、見覚えのある家の前に着いた。明かりはついているので、人はいるようだ。

 

『桐生』

 

 家の前の表札にはそう書かれていた。腕が塞がってしまっている僕は尻尾を出して呼び鈴を押した。

 

 ピーンポーン!

 

『は~い!』

 

 家の中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。そして玄関に明かりが灯り、扉が開いてある人が出てきた。

 

 ガチャッ

 

「は~い。どちら・・・様」

 

 扉を開けて出てきたのは十年前、玄関で僕達を見送ってくれた藍華のお母さんだった。エプロンを着ている所から、丁度夕食の支度でもしていたのかな?

 

「こんばんわ、藍華のお母さん。お久しぶりです」

 

 僕は藍華を抱えたまま、お母さんに挨拶をする。お母さんは暫し固まっていたけど、ハッ!とした後、笑顔になった。

 

「まぁまぁ!・・・お帰りなさい、シルちゃん!さっ、入って入って!」

 

「・・・ただいま、です」

 

 そして、僕は藍華を抱えたまま10年ぶりに桐生家の玄関をくぐった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

 僕は今、桐生家のリビングで藍華のお母さんが淹れてくれたお茶を頂いています。リビングはいくつか家具が変わっている以外は僕がいた10年前とあまり変わった所はないね

 

「美味しいです」

 

「あら、ありがとう」

 

 藍華のお母さんは僕の隣に座りました。ちなみに藍華は今は自分の部屋のベットで寝ています。藍華のお母さんは離れなかった藍華をいとも簡単に僕から引き剥がしてそのままベットまで僕と一緒に連れて行きました。

 

「本当に久しぶりねシルちゃん。どれくらい振りかしら?」

 

「多分、10年振りくらいですね」

 

「あら、もうそんなに経っちゃったのねぇ。シルちゃんも最後に会った時より大きくなったわねぇ。あの時はあんなに小っちゃかったのに~」

 

「まぁ、流石に僕だって大きくなりますよ」

 

 ちなみに、僕の今の身長は多分160くらいはあるはずだよ。もうちょっと背が欲しいなぁ~

 

「なんだか大きくなったシルちゃんを見てると、私も年を取ったなぁと思っちゃうわね」

 

「そんな事ないですよ。10年ぶりに会いましたけど、あの頃と全然変わってませんよ」

 

「あら、お世辞を言ってもお茶菓子くらいしか出せませんよ♪ちょっと待っててね、今お茶菓子取って来るから」

 

 そう言って藍華のお母さんは立ち上がってキッチンの方に向かって行った。スキップで

 

 あと、さっき僕が言ったのはお世辞でもなんでもなくて、本当に『10年前と変わっていない』のだ!

 皺やシミなんか一切なくて、肌はとっても若々しく張りがあり、見た目や言動から藍華と同じ10代に見える。制服を着て並んで歩いたら多分100人中100人が姉妹と答えると思うよ。藍華のお母さんって確かちょっと感が鋭い位の普通の人間のはずなんだけど・・・

 

「はい、こんな物しかなかったけど、良かったら食べてね」

 

 そう言って藍華のお母さんが持ってきたのは、中々高級そうな箱に入ったクッキーだった。箱の端には有名なお店の名前が書いてあった。確か、このお店のお菓子はとても人気で中々買えないと評判のお店だったはず

 

 結構すごいものが出てきたよ!

 

「あ、ありがとうございます」

 

「うふふっ、それにしても・・・」

 

 藍華のお母さんは再び僕の隣に座って、僕の事を上から下までまじまじと見つめてくる

 

「ど、どうかしました?そんなに見つめられると、結構恥ずかしいんですけど・・・」

 

「あら、ごめんなさいね。シルちゃんがあまりにも可愛くなっちゃったから、思わず見入っちゃったわ」

 

「あの時も言いましたけど、男の僕が可愛いと言われても、微妙なんですけど・・・」

 

「まぁまぁ、いいじゃない。可愛いは正義よ!」

 

 藍華のお母さんは、グッっと握り拳を作って決め顔でそう言う。そんなお母さんを見て、僕は苦笑を浮かべた。

 

「そうだ、僕聞きたい事があるんです。どうして藍華は・・・」

 

「おっと、それは私の口からは答えられませ~ん」

 

 藍華のお母さんは口の前に指でバッテンを作るポーズを取った。相変わらずそういう事が似合うなぁ

 

「その事についてはちゃんと藍華の口から聞いてね。あっ、ちなみに、私は何も喋ってないからね」

 

「・・・そうですよね。分かりました、今日は藍華がもう寝てしまったので明日改めてちゃんと話をしますね。勿論、ちゃんとお母さんにも話しますから」

 

「うん、それで良し!あっ、そうだ・・・」

 

「な、何ですか・・・?」

 

 藍華のお母さんは満足そうに笑った後、今度は何か悪戯っぽい笑みになった。僕はその笑みを見て何か嫌な予感がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃぁ、ごゆっくり~」

 

 パタンッ

 

 藍華のお母さんはいい笑顔で扉を閉めた。もう一度言います。いい笑顔で

 

「どうしてこうなった・・・」

 

 僕は今、藍華の部屋にいます。今日はここで寝る事になりました。何を言ってるか分からないって?僕だって分からないよ。藍華のお母さんが悪戯っぽい笑みを浮かべたと思ったら、あれよあれよという間にここまで連れてこられてここで寝るように言われたんですよ。

 

 ベットの方を見てみれば、藍華が規則正しい寝息を立てて眠っていた。僕は藍華のベット傍に座って、その寝顔を眺めた。

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

 藍華の頬にはあの時、10年前にお別れを言いに来た時と同じように涙の痕があった。

 

「また、泣かせちゃったな・・・」

 

 僕は水で濡らしたハンカチで、その痕を綺麗に拭いた。

 

「んっ・・・シル・・・」

 

「大丈夫、僕はここにいるよ」

 

 僕は藍華の手を握ると、藍華も握り返してくれた。その顔は、少しだけど笑みが浮かんだ。

 

「もう、どこにも行かないよ。何があっても、僕が藍華を守るからね。だって・・・」

 

 僕は空いている手で藍華の頭を優しく撫でた。その時丁度窓から、雲の裂け目から出た月の明かりが僕らを照らした。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 チュンチュン!

 

 

 

「・・・・んっ」

 

 朝になり藍華は目を覚ました。今日は土曜日で学校は休みなのだが、起きるのは早かった。

 

「昨日のは・・・ん?」

 

 藍華は自分の右手に違和感を覚え、そちらを向いた。

 

「あっ・・・」

 

 そこにいたのは藍華のベットの傍に座ったまま藍華の右手を握って眠っている。一見すると銀髪の美少女だった

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

「夢じゃ、無かったんだ・・・やっと、帰ってきたんだ」

 

 藍華は上半身だけベットから起こした。その時、座って眠っていた銀髪の美少女に見える者の瞼が、ゆっくりと開いて藍華と目が合った。二人は目が合い、暫し見つめ合った後、同時にニッコリと笑みを浮かべた。

 

「おはよう藍華。それと、ただいま」

 

「おはようシル。それとお帰り」

 

 

 

 

 

 

 パシャ!

 

 その時、聞こえるはずのないシャッター音が聞こえた。二人は同時にそちらを向くと、藍華のお母さんが随分とまぁ、可愛らしいパジャマ姿でカメラのスコープ越しに二人の事を見ていた。

 

「あっ、私の事は気にしないで。どうぞそのままいい雰囲気のまま続けて続けて」

 

「「~~~っ!!」」

 

 藍華のお母さんは楽しそうに笑いながら言った。二人は途端に恥ずかしくなり、揃って顔を真っ赤にした

 

 パシャ!

 

 再び鳴るシャッター音。

 

「良いわ良いわ!二人ともとっても可愛いわよ!朝早くからスタンバイしたかいがあったわ♪ほら、二人とも、もうちょっと引っ付いて引っ付いて」

 

「お、お母さん!いい加減にしてよ!てゆうかその撮った画像今すぐ消して!」

 

「えぇ!?そんなのダメよ!これはちゃんと現像して大切に保存するんだもん」

 

「あぁもう!なら私が消す!」

 

 藍華はベットから飛び出して、お母さんのカメラを奪おうとするが、お母さんは見事にそれを躱す

 

「そうはさせないわよ!お母さんはなんとしてもこの写真を死守して見せるの!」

 

「いい度胸ね!絶対に消す!」

 

「いや~!こっち来ないでぇ~」

 

「待ちなさい!」

 

 ドタドタドタ・・・!

 

 藍華達母娘はそのまま部屋を飛び出して行ってしまった。

 

「あはは・・・」

 

 部屋に取り残されたシルは、そんな二人に苦笑を浮かべたのだった。しかし、その顔は、とても楽しそうに見えた。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 あれから二人の追いかけっこは、藍華がお母さんからカメラを奪い取り、メモリーカードを破壊する事で決着がついた。

 

「うぅ~、せっかく撮ったのに~」

 

 リビングに座るお母さんの顔は悲しみに包まれていた。

 

「はぁ、はぁ、朝っぱらから何でこんなに走らなきゃいけないのよ・・・」

 

 その隣には藍華が息を切らした状態で座っていた。

 

「あははは、藍華達は相変わらずみたいだね」

 

 僕はそんな二人を見て苦笑を浮かべていた

 

 

 

 そして、藍華の息が整った頃、話を始めた。

 

「えっと、藍華とはこの姿では初めまして、だよね?」

 

「えぇ、そうね。私も初めて見た時は結構びっくりしたわよ。初めて会った時から不思議な猫だとは思ったけど、まさか人型に、しかもこんなに可愛い姿になれるなんてねぇ」

 

 藍華は僕の事をまじまじと見てくる。

 

「ほらねほらね!やっぱり可愛いんだよシルちゃん!」

 

 藍華のお母さんはさっきまでの悲しみに包まれた表情とは打って変わって、満面の笑みになった。

 

「あははは・・・藍華のお母さんにも言ったけど、男の僕が可愛いって言われても微妙なんだけどなぁ」

 

「まぁ、その話はこの辺にしてあんたに聞きたい事があるの・・・何で突然、私達の所からいなくなったの」

 

 直球で聞いて来る藍華。まぁ、まずはそれだろうね

 

「わかった、全部話すよ。実は・・・」

 

 僕は藍華達に全部話した。流石に僕が転生者って事は伏せて話したけどね。僕が生まれつき不思議な力を持ってる事と、あの日、偶然藍華に出会った時の事、名前の無かった僕に藍華が名前をつけてくれて、藍華の所で暮らし始めて少しして、黒歌と白音という猫魈の姉妹の世話をする事になった事や、その二人が悪魔に攫われてその悪魔をぶっ飛ばしたら、その悪魔が僕を危険生物認定にして、藍華達の所にいたら迷惑がかかると思い、あの日藍華達の元から去った事などを話した。

 

「・・・という訳で僕は藍華達の所から去ったんだ。下手したら一緒に居るっていうだけで藍華達にも僕を狙った悪魔達の手が及ぶと思ったからなんだ。でも、何も言わずに出て行ってゴメンなさい!」

 

 僕はすべてを話し終えた後、二人に向かって頭を下げた。

 

「・・・頭を上げてシル」

 

 藍華の言葉に従い、僕はゆっくりと頭を上げた。藍華の顔は、少し怒った感じになっていた。

 

「まぁ、事情は分かった。シルが私達の事を考えての行動だったって事もね」

 

 でも、と付け加えて藍華は机から身を乗り出して僕の頬を思いっきり抓った。

 

 ぎゅうぅぅぅぅ!

 

「い、いはいほあひは!(い、痛いよ藍華)」

 

「うるさい。これは今まで私に話さなかった分のお仕置きな・ん・だ・か・ら!」

 

 最後に一段と強く抓った後、ようやく藍華は手を放してくれた

 

「あぅ!うぅ~、ヒリヒリするよ~」

 

「それくらいは当然のお仕置きよ。これで勝手にいなくなった事はチャラにしてあげるんだからありがたく思いなさい」

 

 藍華はそっぽを向いて僕にそう言う。あれ?これで許してくれるの

 

「あらあら、藍華ったらツンデレさんねぇ~ってにゃにすりゅの~!」

 

「あんたはちょっと黙ってなさい!」

 

 今度はお母さんの頬を抓る藍華。その頬は少し赤くなっていた。

 

 そして一頻りお母さんを抓った(僕の時よりも断然長かった)藍華は少しだけ満足げな表情を浮かべていて反対に、お母さんの方は、涙目で抓られた頬を抑えていた。その姿を見て不謹慎にも、可愛いと思ってしまった。

 

「うぅ~、藍華ちゃん容赦ないよぉ~。ほっぺたヒリヒリするぅ~」

 

「それで、シルも何か聞きたい事があるんじゃないの?」

 

 お母さんの事を完全無視した藍華が僕にそう聞いて来る

 

「う、うん。それじゃぁ・・・藍華は何で黒歌達の正体や、オカルト研究部の皆が悪魔って事を知ってるの」

 

「え?」

 

 そう聞くと、藍華はポカンとした表情になった。あ、あれ?想像してた反応と違う

 

「何でって・・・シルのお蔭でしょ?」

 

「え?」

 

 今度は僕がポカンとなった。僕のお蔭って?

 

「ほら、シルがいなくなった時に私の枕元にビー玉置いて行ったでしょ?あれを持ってると色々と『見える』のよ」

 

「み、見える?」

 

 僕が聞き返した事を、藍華は更に詳しく説明してくれた。

 

「例えばその人の名前、年齢、性別、身長や体重、が文字や数値として見えるのよ。あとは種族なんかも見えるわね」

 

 え?何それ。僕、そんな能力つけた覚えないんだけど。あれには確か強力なお守り的な能力しかついていないはずなんだけど・・・?

 

「で、黒歌先輩達の事はその力を使って分かったの。相手の種族とかも見れるようになってたから、突然オカルト部に入る事になった兵藤が悪魔になってたのには驚いたわ」

 

 なるほどね、だから藍華は悪魔って事なんかを知っていたのか。というか本当にそんなの着けたっけな?

 

「あれ?なら何で藍華はこの悪魔達がいる駒王学園に入ろうと思ったの?悪魔って、普通ならあまりいいイメージがないはずなんだけど」

 

「あぁ、それねぇ。それは単なる興味本位って奴よ」

 

「きょ、興味本位?」

 

「悪魔が学校に通ってるなんてどんな感じなのか気になったんだけど、特に何か悪さをしてるって訳でもなくて、普通に学生としているのにはある意味で驚いたわ」

 

 あ、相変わらずだね藍華は・・・そんな理由で入ろうとしたなんて

 

「あらあら、嘘を言っちゃダメでしょ藍華ちゃん」

 

 復活した藍華のお母さんがそんな事を言う

 

「え?嘘、ですか?」

 

「えぇ、そうよ。本当はそんな理由で入ろうとしたんじゃなくって・・・」

 

「ちょっと黙ってなさ、熱っっっ!!?」

 

 藍華のお母さんは目にも留まらない速さで藍華の口に熱々のおでんの卵を放り込んだ。一体どこから?そして何でおでん?

 

「藍華はね、シルちゃんの事を調べようとして今の学校に入ったのよ。悪魔なら不思議な力を持った猫のシルちゃんの事を知ってるかもって思ったからなのよ~」

 

「え?僕を探すために・・・」

 

「そうよ、藍華はずっとずっとシルちゃんの事を探して、帰って来るのを待っていたの。十年間ずっとね」

 

 藍華・・・

 

「ちょ、ちょっと!何でお母さんがそれを知ってるのよ!」

 

「それは~藍華の日記をコッソリ覗いて・・・は、母親の感よ!」

 

「今思いっきり覗いてって言ったわっ!!何勝手に人の日記覗いてんのよあんたは!!」

 

「わ~ん!許して藍華ぁ~」

 

「逃げんな!今日という今日はしっかりO☆HA☆NA☆SHIするわ!!」

 

 そう言って二人はまた追いかけっこを始めた。僕はさっきの事を聞いて、胸があったかくなった。

 

『ずっと、ずっと心配してたんだからね!!あんたが家から突然いなくなってから私、ずっとずっとあんたの帰りを待ってたんだから!!』

 

 

 部室で藍華が言っていた言葉を思い出した。

 

 

 そっか、藍華はずっと僕の事を待っていてくれたんだね・・・

 

「はぁ、はぁ、何で家で追いかけてて見失うのよ・・・」

 

 息を切らした藍華が、再びリビングに戻って来た。

 

「藍華」

 

 僕は立ち上がって藍華の傍まで歩み寄る。

 

「あぁ、シル。あのバカこっち来なかった?今日という今日はとっちめてやらないとこっちの気が済まないわ・・・!シル、あんたもあれを捕まえるの手っっ!!?」

 

 藍華の言葉は途中で遮られた。なぜならシルが正面から藍華の事を抱きしめたからだ

 

「なっ、ちょ、何でいきなり抱きつくのよ!」

 

「藍華」

 

「っ!?」

 

 恥ずかしいのでジタバタと暴れようとした藍華は、耳元でシルにかけられた声に、その動きを止めた。 

 

「僕はもうどこにもいかない。ずっと藍華と一緒にいるからね」

 

 シルは藍華を優しく抱きしめながら、そう誓う

 

「あ、・・・当たり前でしょ!そんな事!あんたは私達の家族なんだから!そ、それよりも早くあのバカを探すわよ!あんたも手伝いなさい!」

 

「クスッ、わかったよ」

 

「ほ、ほらとっとと探すわよ!」

 

「はいはい」

 

 シルが離すと藍華は即座にリビングから出て行った。その顔はまるでリンゴの様に真っ赤になっていた。シルも笑いながら藍華の後を追ってリビングを出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うふふ、いいもの見れちゃった♪」

 

 リビングの机の下に隠れていた藍華のお母さんはカメラを持って楽しそうに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕は、僕は一体なんてものを渡してしまったんだ・・・!」

 

 その数時間後、僕は過去の自分のした事にこれ以上ない位に後悔した。

 

 

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