ハイスクールD×D  オッドアイの銀猫   作:takubon

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 どうも!一週間ぶりです!

 昨日テストも何とか終わりましたので、早速書き上げました!

 曲を聞きながら勢いで書きました。曲は勿論HSDDの曲です

 それではどうぞ!


*今回の話で不快に思った方々、すみませんでした


決闘と逆鱗

SIDEイッセー

 

 

 

 ・・・レーティングゲームから数日経ち、俺達グレモリー眷属は一部を除いて冥界にあるパーティー会場に来ていた。パーティー会場は、かなり広く、大きなシャンデリアが高い天井にいくつもある絢爛豪華な内装をされており、俺達の他にも名立たる貴族の悪魔の人達が多く集まっている。そして、今日の主役達が登場するのを、今か今かと待ち望んで、それぞれ笑顔で談笑していた。会場には何台もカメラも入っており、冥界全土に放送されるそうだ。でも、俺達はそれとは真逆の気持ちだった。俺を含めたみんなの表情は、暗かった。

 

 俺達は、勝てなかった。いや、あのまま行けば勝てた。しかし、ゲーム終盤に俺達の誰しもが予想しなかった事が起き、負けを認めざるほかなかった。あの時の俺達の内を占めていたのは、ライザーに対する激しい怒りと悔しさだった。そしてゲームが終わると部長はすぐに今回の準備の為に冥界に連れていかれた

 

 そんな俺達の元へ、複数の者達が近づいて来た。その先頭に立つ、見覚えのある金髪のツインテールのお嬢様風の子が、俺達に向かって軽くお辞儀をする

 

「グレモリー眷属の皆さん、こうしてあなた方とお話をするのは初めてですわね。まずは自己紹介をさせていただきます。私の名はレイヴェル・フェニックス・・・ライザー・フェニックスの妹ですわ」

 

 ライザー、という名を聞いて、俺達の怒りが一気に膨れ上がる!が、そんな俺達に向かって、目の前のレイヴェルさんは先程よりも深く頭を下げた。突然の行為に、俺だけじゃなくて他の皆も驚く。レイヴェルさんは、頭を下げたまま、言葉を続ける

 

「兄の、ライザーの所業について、あなた方に謝罪致します。本当に申し訳ございませんでした!あなた方のお怒りは御尤もです。ですので許してくれ、とは申しません。ただ、フェニックス家の者として、どうしてもあなた方に謝りたかったのです」

 

 レイヴェルさん達の後ろに従っていた他の人達も同様に頭を下げた。よく見れば、レイヴェルさんの手は固く握られ、震えていた。それを見て、俺達の怒りは変わらないが、少なくとも今のこの子の前では抑える事にした

 

「頭を御上げ下さい、レイヴェル様、眷属の皆さん」

 

 朱乃さんのその言葉に、恐る恐る、といった様子で顔を上げるレイヴェルさん。その顔からは本当に申し訳ない、という思いが伝わってくる。着物姿の朱乃さんが、先ほどまでの表情を変え、いつものニコニコ笑顔で言う

 

「あなた方が謝罪する必要はありませんわ。ですが、身内の者がしでかした事をあなた自らが代わりに謝罪する、というのは、その歳で出来る事ではありません。きっと、あなたは将来素晴らしい人になるでしょうね」

 

 その言葉に、レイヴェルさん達は僅かに安堵した様子を見せ、再び頭を下げた。あいつとは違って、この子はとてもいい子の様だ

 

「と、ところで、『あの方』のご容態はいかがですか?」

 

 心配そうに聞いて来るレイヴェルさんに、朱乃さんが答える

 

「心配しなくても大丈夫ですわ。今は治療も終えて、容体は安定しています。ですが、大事を取って今日は自宅で休んでいます。私共の仲間も付き添っているので、ご心配せずとも大丈夫ですわ」

 

 それを聞いて、レイヴェルさんは大きく安堵の息を漏らす。レイヴェルさんが言っていた『あの方』は、シルさんやアーシア達のお蔭で傷も完治したけど、体力や精神的な消費が激しかった様で、今はシルさんの家で安静にしている。夕麻ちゃん達はその付き添いで、今ここにはいない

 

 そんな時、会場の前の方に赤い魔法陣が現れ、そこから大きく派手な炎が上がる。それと同時に姿を現したのは、忘れもしない、あいつだった!

 

「冥界に名立たる貴族の皆様!御参集下さり、フェニックス家を代表して御礼申し上げます!」

 

 両手を広げ、会場全体に響き渡るように大きな声でライザーはそう挨拶する。それに対し、会場に集まった貴族の人達は、盛大な拍手を送った

 

「ライザー・・・っ!」

 

 俺は奴の姿を見て、さっきまで抑えていた怒りが抑えられないくらいに沸き起こり、無意識のうちに奴に向かって足を進めていた。が、それは肩を掴まれることで止められた

 

「我慢するんだイッセー君。その気持ちはよくわかる、僕達も同じ気持ちだから。でも『今は』我慢するんだ」

 

 今、という言葉を強調する木場の言葉に、俺は力を抜いた。というか木場、お前肩を強く掴み過ぎだよ、全く

 

「すまねぇ、サンキュ」

 

 俺がそう言うと、木場は肩から手を離してくれた。

 

「本日皆様に御出で願ったのは、この私、ライザー・フェニックスと名門グレモリー家の次期当主、リアス・グレモリーの婚約という、歴史的な瞬間を共有して頂きたく願ったからであります」

 

 芝居かかった口調のまま焼き鳥野郎は続ける。何が歴史的瞬間だよ、黒歴史の間違いだろうが

 

「それでは、ご紹介いたします!我が妻、リアス・グレモリーです!」

 

 お前の妻じゃねぇよ!と怒鳴りたい気持ちを必死に抑える。我慢だ、今はまだ我慢するんだ!後で思いっきりそれを爆発させるんだ!

 

 そして、ライザーの隣に魔法陣が出現し、そこから新たな人が現れる

 

 魔法陣から現れたのは、純白のまるでウェディングドレスの様な格好をした部長だった。部長の登場に、会場から歓声や、拍手が舞い起きる

 

 その部長は、俺達を見つけると笑みを向けて来た。しかし、それは何時もの様なものではなく、悲しみの中で無理やりに作ったものだった

 

 ギリッ!!

 

 壊れそうな程奥歯を噛みしめ、手も皮膚が切れそうなくらいに力が入る。耐え、ろ!耐えろ!耐えろ!耐えろ!!もうすぐだ!『あの人』が言っていたんだ!

 

『兵藤君、君や君達の怒りや、悔しい気持ちはよくわかる。でもそれは「その時」が来るまで抑えて。君のその思いは、「その時」に思う存分にあいつに向かって解放するんだ。君がそれを出来る様に、君を邪魔する者は僕が払おう。約束する。だからそれまで耐えてほしい』

 

 ゲームが終わって、治療を終えた俺にその人はそう言った。だから今は耐えるんだ!「その時」が来るまで!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、俺が待っていたその時はやって来た

 

『グォォォォォォォ!!!』

 

 突然、体の芯まで響くような咆哮が聞こえて来た

 

「な、なんだ今のは!?」

 

「一体何事ですの!?」

 

「まさか、今の咆哮は・・・!」

 

 その咆哮に、集まっていた貴族の方達は騒ぎ出す。そんな中、今度は天井が綺麗さっぱり無くなり、冥界の紫の空が露わになった。そしてそこには、冥界の空だけではなく、大きな影が見えた

 

「あれは、間違いない!【天魔の業龍】!ティアマットだ!」

 

「何故龍王が!?」

 

 貴族の方達は更に騒ぎ出す。そんな中、取り乱していないのは俺達くらいだった。そして蒼きドラゴンはこちらにゆっくりと降下していき、その途中でその背から、1人の人影が落ちて来た。その人影は、まるで羽の様にふわりと会場のど真ん中に舞い降りた。それは、俺が、俺達が待っていた人だった

 

 天井が無くなり、遮る物が無くなった影響で風が会場に入り込み、その人の白銀の髪と口元を隠すマフラーを揺らす

 

「な、なんだ貴様は!」

 

 ライザーが突然現れたその人物ーーーシルさんに向かって叫ぶ。しかし、それを無視するようにしてシルさんは部長の方に顔を向け、軽くお辞儀をする

 

「これはこれは、どうも『初めまして』リアス・グレモリー嬢。あなたのお噂はかねがね。噂通り本当にお美しい方ですね」

 

「え、あ・・・」

 

 突然自分に向かって声をかけられた部長は、言葉を上手く発する事が出来ないようだ。でも、何で『初めまして』なんだ?

 

「き、貴様ぁ!無視するとはいい度胸だな!衛兵、奴を始末しろ!!」

 

 ライザーは激高してそう命令すると、槍を持った甲冑姿の衛兵の人達が現れ、シルさんを取り囲んで襲い掛かろうとする、が

 

「・・・誰に向かって刃を向けているのだ、お前達は」

 

『っ!?』

 

 シルさんの隣に舞い降りた蒼い髪の女性、人型になったティアマットさんが低い声を出して衛兵を睨みつける。それによって、衛兵は尻込みし、後ずさる。俺達まで震えてきそうな程の殺気だ

 

「これはこれは、一体何事かね?」

 

 そこへ一番奥にいた紅髪の男性が歩み寄って来た。

 

「サーゼクス様!」

 

 そう、その人こそ部長のお兄さんにして四大魔王の一人である【紅髪の魔王】サーゼクス・ルシファー様だった。その後ろには、メイドのグレイフィアさんもいる。魔王様の登場に、会場にいた貴族の方達は幾分か落ち着きを取り戻したようだ

 

「何故君がこんな所にいるのかな、ティアマット?」

 

「何、私はただの付き添いだサーゼクス」

 

 サーゼクス様の問いかけに、ティアマットさんは特に表情も変えずにそう答える。そういえばティアマットさんって魔王クラスって言われてるんだったな

 

「それで君は、何をしにこんな所に来たのかな?」

 

 今度はシルさんに向かって魔王様はそう尋ねる

 

「僕はただ、噂に名高いリアス・グレモリーの婚約パーティーが開かれるというので、見に来たのと・・・少し私的な事ですね」

 

「私的な事、とは何かな?」

 

 魔王様の質問に、シルさん続きを話す

 

「実は僕、先日行われたそこにいるリアス・グレモリー嬢とライザー・フェニックスのレーティングゲームを拝見させてもらったんです。あのリアス嬢との婚約を賭けたゲームというのと、リアス・グレモリー嬢の眷属にいるあの二天竜、【赤い龍】ウェルシュドラゴンの宿主がいると聞いて興味を持って見ていたんですよ。途中までは楽しめたんですが、最後のあれはねぇ」

 

 と、言いながら焼き鳥野郎にチラリ、と視線を向けるシルさん。

 

「確かに勝利に貪欲であるというのは大切ですが・・・・その手段、そして婚約を賭けたゲームで『人質』を取り、盾に使う。ここにいらっしゃる方達であのゲームをご覧になった方々もそう思ったのではないでしょうか?」

 

 シルさんがそう言うと、会場にいた貴族の人達がザワザワと騒ぎ出した。あぁ、そうだ。奴は、あの糞野郎はーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーミッテルトちゃんを人質に取ったんだ

 

 ゲームで俺達が奴を囲んだ時、奴の隣の魔法陣から出て来たのは、体のあちこちに火傷を負い、血を流しているミッテルトちゃんだった。奴は、降参しなければミッテルトちゃんを殺すと脅して来た

 

 作戦では、俺達が敵と交戦している間に、夕麻ちゃん、カラワーナさん、ミッテルトちゃん達は、各自が姿を隠しながらバラバラになって敵の『本陣』である新校舎に向かい、プロモーションを行い、合流する、というものだった。ミッテルトちゃんは、隠密行動が得意で、今回の作戦でも一番に昇格して見せると張り切っていた

 

 しかし、ミッテルトちゃんは張り切りすぎたのか、部長が新校舎にいるライザーを屋上に誘い出すよりも大分早く本陣に着いてしまった。そして運悪くライザーに隠れている所を見つかってしまった。元々ミッテルトちゃんはアウトレンジからの攻撃は得意だけど、近距離は苦手。修行はしたけれど、一週間では限界がある。更に相手は上級悪魔のライザー。悪魔の苦手とする光の槍での攻撃も、すぐに回復するライザーには効かなかった

 

 そして、ミッテルトちゃんの奮戦も虚しく、ライザーに敗れた。そして、一定以上のダメージを負い、戦闘不能になったミッテルトちゃんはリタイアとみなされ、転移されそうになった時、ライザーがありえない行動をとった

 

 なんと、自身が持っていた回復アイテムであるフェニックスの涙をミッテルトに使ったのだ。フェニックスの涙の効果で、リタイアするほどだったミッテルトの傷は癒えた。そして、ライザーは更にありえない行動を取る

 

 フェニックスの涙で傷が癒えたミッテルトを再び攻撃しだしたのだ。それも、ワザと威力を落として、まるで甚振るようにッ!ミッテルトは逃げようとしたが、

 

 そして部長が新校舎にやって来てライザーは部長の挑発に乗って屋上で戦った。その際、ミッテルトはライザーが異空間に閉じ込めていたそうだ。本当は後でボロボロになったミッテルトを俺達に見せて嗤ってやろうとしてたらしい。どこまでもゲスな野郎だ・・・っ!

 

「確かに、私もあれについては少しどうかと思っていたんだ。リアス達は初心者ながらも素晴らしい立ち回りをして正々堂々と戦い、良い勝負を見せていたというのに、最後のあれは、ね」

 

 魔王様は含みのある笑みを焼き鳥に向ける

 

「ま、魔王様はゲームの結果を否定なさるのですか!」

 

 焼き鳥が狼狽した様子を見せる。こいつ、あんなことをしておいてよくそんな事が言えるな・・・!怒りが殺意に代わって体がどうにかなりそうになるのを抑える。まだだ、まだ溜めるんだ!

 

「いやいや私が口を挟めば、レーティングゲーム自体が存在意義を失う。それに事情が事情だ。旧家の顔も立たないだろう?」

 

 と、相変わらず笑顔で話す魔王様。でも、やっぱり魔王様もあのゲームには不満っぽいな

 

「おっと、話が逸れてしまったね。それで君の私用とは何なんだい?」

 

「実は最近、酷く退屈をしておりまして。何か面白い事を求めていたんですよ。どうでしょう、魔王サーゼクス・ルシファー殿・・・僕と賭けをしませんか?」

 

『っ!?』

 

 再びざわつく会場。そんな中、シルさんに向かって貴族の一人が叫ぶ

 

「貴様!魔王様に賭けを持ちかけるなど、一体何様のつも・・・」

 

「黙れ」

 

 しかし、ティアマットさんの殺気のこもった言葉と睨みに、言葉を詰まらて、顔を青くした。他も皆さんも同様で一様に黙り込んだ。今のティアマットさんは、修行の時よりも怖いな

 

「賭け、とは一体どんな事をするのかな?」

 

「それはそこにいるライザー・フェニックスと・・・あそこにいるリアス嬢の眷属であり、今代の赤龍帝であのゲームで見られなかった直接対決、一騎打ちをしてもらい、どちらが勝つかを賭けるというものです」

 

 シルさんが俺に目を向ける。これがシルさんが言っていた「その時」か!!

 

 それを聞いて魔王様は顎に手を当てる

 

「ふむ、確かにそれはいいかもしれないね。ドラゴン対フェニックス、可愛い妹の婚約パーティーの最高の催しになるだろう。皆さんはどうですか?私は見てみたい、ゲームでは見られなかった伝説の者同士の戦いを」

 

 その言葉に、否定の声は上がらなかった。魔王様は再びシルさんに目を向ける

 

「それで、賭けというのだから何かを賭けるのだろう?君は何を賭けるというのだい?」

 

 魔王様の質問に、シルさんは驚くべき答えを返した

 

「そうですね。では、僕は自分の・・・『オッドアイの銀猫』の首を賭けましょう」

 

『っ!?!?!?』

 

 シルさんの言葉は会場にいるほぼ全員を驚愕させた!

 

「『オッドアイの銀猫』だと!?」

 

「あれが魔王や神クラスと称されるあのシルバーキャット・・・!」

 

「しかも本当に人間だったのか!」

 

 他の皆さんはシルさんの正体が『オッドアイの銀猫』という事に驚いているが、俺達は自らの首、つまり命を賭けるという事に驚いていた

 

 それはシルさんの隣にいたティアマットさんも同様だった

 

「お、おい!聞いてないぞそんな事はシりゅ!?モガモガモガッ!!!」

 

「少し黙っててねティア・・・それでしょうか、魔王殿?伝説の者同士の一騎打ちに、自分で言うのもなんですが、魔王や神クラスと名高いこの僕の首を賭けての大勝負。これ以上ない程の催しになるのではないかな?」

 

 シルさんは騒ぐティアマットさんの口を塞いだままそう尋ねる

 

「・・・良いだろう。その賭けに乗ろうじゃないか」

 

 魔王様は笑顔でOKした。会場は今までで一番ざわつく

 

「ふむ、では私は何を賭ければいいかな?賭けなのだから『オッドアイの銀猫』の首に釣り合うような対価が必要だろう?それと、君はどちらに賭けるのだい?」

 

「僕はそこにいる赤龍帝君にですよ。連れもドラゴンですし、何と言っても、あの伝説の二天竜の片割れ何ですから。それと、賭けの対価ですが、そうですね・・・では、僕が賭けに勝った場合は僕が賭けた赤龍帝君の願いをあなたが叶えてもらえますか?」

 

「それで良いのかい?君の方が損をしているのでは?」

 

「いえいえ、伝説の者同士の対決を見られるのですから、僕の方はそれで満足です。それに今回の話はこちらからお願いしているのですし。ですので、頑張った赤龍帝君にご褒美をあげた方が良いでしょう」

 

 っ!し、シルさん!あなたは・・・!

 

「・・・分かった、ならば私の賭けるのもはそれにしよう。そして私はライザー君の方に賭けさせてもらうよ。そういう訳でライザー君、私達の前でその力、今一度見せてもらえるだろうか?」

 

 魔王様の願いを聞き、焼き鳥は気持ちが悪い不敵に笑う

 

「いいでしょう。魔王サーゼクス様に頼まれたら断る必要はありません。魔王様に勝利を捧げます!そしてこのライザー、身を固める前の最後の炎をお見せしましょう!」

 

 奴は俺の事を見下した目で見て鼻で笑う。でも、そんな事は今はどうでもいい。それよりも俺はシルさんに向けて感謝の言葉を述べたかった。俺達の為に修行をつけてくれただけでなく、俺達の屈辱を晴らす為に自らの命まで賭けてここまでしてくれたんだ。いや、いくら感謝の言葉を告げても足りない。だから、せめて俺はーーー

 

 

 

 

「さて、赤龍帝君。君の力、そしてその身に宿る伝説のドラゴンの力を『存分に』見せて、僕達を楽しませてね」

 

 シルさんは俺に向かって笑顔でそう言う。えぇ、見せてやりますよ、シルさん。あなたにも、部長にも、朱乃さん達にも、ここにいる全ての人達に!

 

 

 ---全力で、必ず勝って来ます!!

 

 

 俺は心の中でそう誓った

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 会場に急遽作られた空間。その周囲を会場にいる多くの悪魔の人達が好奇の視線で見守っている。しかし、ここにいるほとんどの人は、俺じゃなく焼き鳥の方が勝つと思ってるようだ。部員メンバーは部長と共に席に座っていた。部長の隣には魔王様もいらっしゃる。シルさんは、そこから少し離れた所にティアマットさんと座っていた。二人が座っている周りは人がおらず、他の人達は離れた所から二人の事を見ている

 

 そして俺と焼き鳥は作られたバトルフィールドの中央で対峙していた。俺は既に【赤龍帝の籠手】を出している。ライザーは、その顔に嘲笑を張り付けていた

 

「開始してください」

 

 バトル開始の合図が告げられる。もう引き返す事は出来ないし、これで誰も邪魔は無い。ははっ、シルさんの言う通りになったな

 

 炎の翼を広げ、俺を見下す様な目をした焼き鳥は、俺の籠手を指さした

 

「お前の能力は既に割れている。自分の能力を倍にしていく【神器】セイクリッド・ギア、【赤龍帝の籠手】。極めれば神や魔王に匹敵する力を持っている十三種の【神滅具】の一つ。だが、お前には宝の持ち腐れだ。倍加する前にさっさと倒せばいい」

 

 焼き鳥が何かほざいてるが、よく聞こえない。というか聞きたくない。皆、もういいんだよな?もう我慢しなくていいんだよな?

 

 部長達の方へ顔を向ければ、俺の思ってる事が伝わったのかしっかりと頷いてくれた

 

「とんだ所でパーティーの邪魔をされたが、まぁいい。俺が勝てば魔王様に勝利をもたらすという栄誉が・・・」

 

 焼き鳥がベラベラとしゃべり続ける。俺はそれを無視してシルさんに目を向ける

 

 顔を向ける俺に、真っ直ぐ目を向けたシルさんのその口が動いた

 

 

 

 

ーーーあとは君に任せたよ、兵藤君

 

 

 

 ドクンッ!

 

 

 

 それを受けた俺は体の芯から震えてくる。な、何だ、この震えは?

 

「ん?どうした震えているのか?ははははっ!怖気づいたのか!まぁ、仕方がないな。俺は上級悪魔で不死鳥と称えられるフェニックス!貴様の様な虫けらが、絶対なる力を持つこの俺を前にして恐怖を抱くのは仕方のない事だ」

 

 恐怖?・・・・・・・・いや、違う。これが恐怖から来る震えじゃない。この震えは一体ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

『それは武者震いだ、相棒』

 

 震える手を見つめている時、ドライグの声が頭に響き渡る

 

 武者、震い?

 

『あぁ、相棒はシルという者に言われてから、その怒りをずっと溜め込んで来た。そして、今その怒りをぶつける相手が目の前に現れた事で、歓喜に体が打ち震えているという訳だ』

 

 歓喜・・・あぁ、そうだな。言われて分かったぜ。俺は今、怒りだけじゃなくて嬉しいんだ。あいつをぶっ飛ばせる事に!それに、体がすごく軽い。あと、力がドンドン溢れてくるみたいな感じがする

 

『相棒が奴に向ける怒りが、相棒の力を引き出しているんだ。純粋な怒りは、ドラゴンの力を引き出す真理の一つだ。そして、その強い思いはセイクリッド・ギアの力の糧となる』

 

 なるほどな・・・じゃあ、そろそろあのベラベラクッチャべってる野郎をぶっ飛ばすか。なぁ、ドライグ!!!!

 

『応!俺もティアマットにさっきから色々と言われているからな!』

 

 そうかよ!じゃぁ行こうぜ相棒!!

 

「プロモーション【女王】!!そして・・・!」

 

【Explosion!!】

 

 さっき部長から昇格の許可をもらった俺は、最強の駒である【女王】に昇格し、バトルフィールドの準備をしている五分間の間と、奴がベラベラ喋っている間にしておいた四十回の倍加の力を開放する!俺の全ての能力が膨れ上がった!

 

「行くぜ焼き鳥野郎ぉぉぉ!!」

 

 俺は全力で目の前の焼き鳥野郎に向かって突進した。その速度は、修行の時なんかよりも遥かに速かった。焼き鳥は、そんな俺の速度に反応できず、その場に立ち尽くしたままだった。そしてその勢いのまま俺は奴の顔面を殴りつけた

 

 ゴキッ!!

 

「う、おぉぉぉぉぉぉらぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 籠手越しに、何かが砕ける感触が伝わるが、そんな事お構いなしに千切れるくらいに腕を全力で振りかぶる!

 

 ドォンッ!!

 

 奴はそのまま吹き飛んでいき、フィールドの端までぶっ飛んで行き、大きなチェスの石像にぶつかってそれを破壊した!こんなもんじゃ終わらせねえ!!

 

「グッ、よくもやってくれたグァッ!?」

 

 瓦礫の中から立ち上がって来た焼き鳥に今度は飛び蹴りをかます!そして再び吹っ飛んだあいつに向かって、手のひらに集めた魔力の塊を殴り飛ばす!!

 

「ドラゴン・ショットォォォォ!!」

 

 ギュオォォォン、ドカァァァァンッッ!!

 

 打ち出した魔力弾は巨大な帯となって奴に襲い掛かり、着弾するとバトルフィールド全体を震わせるほどの凄まじい爆発が起きた!衝撃波と爆風が俺の所まで来る

 

 やった、とは思わないし、終わらせない。こんなもんじゃ全然足りない!!

 

 そして、爆発で起こった煙が晴れると、バトルフィールドの三分の一がボロボロになっていた。そして、奴は・・・

 

 ボワゥッ!

 

 奴を探していた時、崩れた瓦礫の山が吹っ飛び、大きな炎柱が上がった。そして、その炎の中から奴が姿を現す

 

「この糞ガキィィィ!!!よくもやってくれたなぁぁぁ!!!」

 

 その顔を憤怒に染め、俺を睨む焼き鳥。流石にあれじゃぁ、まだ倒れないか・・・なら、今度はあの時使えなかったもう一つの力を使う!

 

 俺はゲームの時にもポケットに入れていた、物を取り出す。それは、中に透明な液体が入った小瓶だった

 

「死ねぇぇぇぇ!!」

 

 奴は怒りのままに俺に向かってその体にやばい位の炎を纏わせて突進してくる。速い、けど!

 

「木場の方が全然速いんだよ!」

 

 俺は奴の突進をその場から上に飛び退く事で躱す。そして空中で小瓶の蓋を開け、その中身を奴に振りかけるのと同時に、修行で身に付けた新たな力を開放する!

 

「【赤龍帝の籠手】第二の能力!【赤龍帝からの贈り物・ブーステット ギア ギフト】!!」

 

『Transfer!!』

 

 宙に浮いた液体に向かってその力を発動する!液体は輝き、奴の全身に降りかかった

 

 ジュワァァァァァァ!!

 

 水が高温の熱で蒸発した時に出る音を最大にしたような音が響き渡る。だがそれは、焼き鳥の炎で先程の液体が蒸発した音ではない

 

「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!?!?!?!?」

 

 奴は全身から煙を立ち昇らせながら地面をのた打ち回る。焼き鳥の全身は、まるで焼け爛れた様になっており、体から炎が上がるが、それはぐにゃぐにゃとうねり、傷は中々回復しない。周りで見ていた悪魔の人達はそんな奴を見て悲鳴をあげる

 

 何故奴がこうなったのか、それは俺がさっきかけた小瓶の中身が原因だ。その中身は聖水。悪魔が触れると火傷を負った様になるが、上級悪魔にはあまり効果が無いとされてる物だ。なら何故奴はあそこまであんな事になっているかは、修行で新しく解放された左腕の【赤龍帝の籠手】の力のお蔭だ

 

 【赤龍帝からの贈り物】その力は、倍加した力を他の者、もしくは物に譲渡することが出来るというものだ。俺はそれを奴に振りかけた聖水に使い、その効果を倍増させた。上級悪魔でも無視できないほどにな!

 

『相棒、効果を高められた聖水が、奴の体力と精神力を著しく消耗させた。いくら灰の中から復活出来るフェニックスでも、一度に大量の体力と精神を失えば・・・精神だけはそう簡単には回復出来ない』

 

 精神、心までは不死身じゃないって事だ。修行の時、シルさん達に教えてもらったな

 

『不死鳥と言われるフェニックスを倒すためには、神や魔王クラスの圧倒的な力で倒すか精神の限界まで倒し続けるか』

 

 あぁ、だから俺達は奴を倒す為の秘策として、新しい力と聖水を使って奴を倒そうとしたんだ。ようやく使う事が出来たぜ。聖水はアーシアが作ってくれた。帰ったらお礼を言わなくちゃな

 

 シュゥゥゥゥゥ・・・

 

 焼き鳥の体から上がる煙が徐々に弱まっていた。そして、後に残ったのは服も体もボロボロの奴のみ。さっきの状態より幾分かマシになったが、奴はちゃんと回復が出来ていなかった

 

 奴はボロボロのまま立ち上がり、俺に向かって殺気を放ちながら睨みつける

 

「このっ、糞餓鬼がぁぁぁぁぁ!!!」

 

 そう言って奴は体から勢いよく炎を噴き上げる。まだこんな力が残ってるのか。クソッ、腐っても上級悪魔って事かよ

 

 

『相棒』

 

 どうしたドライグ?

 

『お前が油断をしなければ奴に勝てるだろう。だが・・・』

 

 何なんだよ・・・まさか、もしかしたら俺が負けるかもって言うのか?

 

『いや、そうじゃない。相棒、さっき言っていたフェニックスをを倒すもう一つの方法だ』

 

 魔王か神クラスの力か?でも、俺じゃそんなのは・・・

 

『出来る』

 

 っ!!

 

『今の相棒ならば・・・短い時間だが、一度だけ使う事が出来る。だが、それを使えば魔王や神と同等の力を出せる。が、その力を使わずとも、勝つ事は出来る・・・どうする、相棒』

 

 んなもん決まってるじゃねぇか!俺はさっき誓った、『全力で、絶対に勝つ』と!!俺は、俺の全てを出して奴を倒す!!だから力を貸してくれ、相棒!!

 

 ドライグの問いかけに、俺は即答した。俺の言葉に、ドライグは嬉しそうな声色を発する

 

『はははっ!よく言った!ならばここにいる全ての者達に見せつけてやれ。お前と俺の、「ドラゴン」って奴の力をな!』

 

 応ッ!!

 

「行くぜ!輝きやがれ、オーバー・ブーストォォォ!!!」

 

 俺は【赤龍帝の籠手】を天高く掲げた

 

『Welsh Dragon over booster!!!』

 

 掲げられた籠手の宝玉が赤く輝き、俺は真紅のオーラに包み込まれた。そして、俺の体は籠手と同じ真っ赤なドラゴンを模した全身鎧に覆われていた

 

 お前の力が流れ込んでくるぜドライグ!

 

『あぁ、ただし十秒だ。それ以上はお前の体が持たない』

 

 あぁ、それだけあれば十分だ!

 

「鎧!?何なんだそれはっガッ!?」

 

 驚愕している奴が全てを言い終える前に、俺は背中についているブースターを吹かし、奴に一瞬で近づいて殴りつける。十秒しかないんだ。一秒も無駄には出来ない!

 

『Ⅹ』

 

 制限時間のカウントが鳴る。俺は殴りつけた奴の胸倉をつかんで地面に叩き付ける。

 

「カハッ!?」

 

 奴は口から血を吐き出すが、お構いなしに顔面を殴りつける

 

『Ⅸ』

 

「うぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 俺はとにかく殴って、殴って殴りまくった。一切の容赦なく殴りつけた。みんなが受けた怒りの分も俺が奴を殴りまくった

 

「ち、調子にのるなぁぁぁぁぁ!!」

 

 焼き鳥は殴られながらも俺に向かって特大の炎を放ってくる。俺は腕をクロスする事でそれをガードする、が少し吹き飛ばされてしまった

 

『Ⅷ』

 

 鎧のお蔭か、あれだけの炎を喰らってもダメージは無く、鎧にも傷一つ付いていなかった。反対に奴はさっきの攻撃でボロボロ、顔なんて酷い事になっていた

 

「お、俺の攻撃をあれだけ至近距離で喰らったのに、傷一つないだと!?一体何なんだ!その鎧は!!」

 

「答える義理はねぇが、特別に答えてやる。これは龍帝の力!『禁手・バランスブレイカー』【赤龍帝の鎧 ブーステット・ギア・スケイルメイル】!!お前をぶっ飛ばすための力だ!!止めたきゃ魔王様にでも頼むんだな!!」

 

『Ⅶ』

 

 そう言いながら、奴に向かって再び突進する。

 

「くっ、嘗めるな!!」

 

 奴はいくつもの炎を打ち出してくるが、俺はそれに構わず突っ込む!

 

『Ⅵ』

 

「そんなチンケな炎で俺がやられる訳ねぇだろうがァァァァァ!!!」

 

 背中のブースターを限界まで吹かし、奴の体のど真ん中を深く殴りつける

 

「ゴハッ!?」

 

 体をくの字に折り曲げ、さっきより多くの血を吐く

 

『Ⅴ』

 

「白音ちゃんが言っていた、、打撃は体の中心線を狙って、的確かつ抉り込むように打つんだと!」

 

 今度は反対の手で顔面を殴り飛ばす

 

「糞餓鬼がぁぁぁ!!」

 

 鼻血を吹き出し、吹き飛ばされながらも俺に向かって炎を飛ばしてくる焼き鳥

 

『Ⅳ』

 

「木場が言っていた!視野を広げて、相手と周囲を見ろと!」

 

 俺は最短距離で奴に向かって再び突進する

 

「朱乃さんが言っていた!魔力は体全体を覆うオーラから流れるように集めて、意思を集中させて、魔力の波動を感じればいいと!こんな俺でも感じられましたよ朱乃さん!」

 

 至近距離で体から集めた魔力を奴にぶつける。

 

 ドォォォン!!

 

 奴はそれをもろに喰らって地面に叩き付けられ、作られたフィールド全体に壊れるくらいに大きく罅が入る

 

『Ⅲ』

 

 気が付けば、カウントは残りあと少しまでになっていた。修行でみんなに習った事を奴にぶつけた。でも、まだ全部じゃない

 

 俺はゆっくりと地面に降下し、奴を見る。先ほど出来たクレーターの真ん中にもう立っているのがやっとの焼き鳥がいた。もう炎も上がらず、傷も治っていなかった

 

 俺は構えを取り、最後の一撃を与える為に力を溜める。俺が奴への照準を定めると、焼き鳥は慌てふためく

 

「ま、待て!わ、分かっているのか!?この婚約は悪魔の未来の為に必要・・・」

 

「うるせぇ」

 

 俺が低い声で奴の言葉を遮り、そのまま続ける

 

「お前は・・・卑怯な手を使って仲間を傷つけ、悲しませた」

 

 

『うちの事は・・・いいっす、から。こいつを・・・倒し、て・・・』

 

 

 ボロボロになりながらも、自分に構わずライザーをうてと言う。その時のミッテルトちゃんの顔、涙が脳裏に焼き付いている。夕麻ちゃん達から聞いた話では、ゲームが終わり目が覚めた後も、ミッテルトちゃんは自分の事を責め続けているそうだ。そんな事はない!ミッテルトちゃんは、修行で何だかんだと文句を言いながらも、キチンとメニューをこなしていたし、今回のゲームでも、勝つ為に張り切っていた。その頑張りを台無しにしたのは、全部目の前の屑のせいだ!

 

「そしてお前は部長も泣かせた!泣いていたんだよ!!あの時も、そしてさっきも!!俺は、俺達はあの人を泣かせ、仲間を傷付けたお前を絶対に許さない!!俺がてめぇを殴る理由はそれで十分すぎるんだよォォォォ!!!!」

 

 ドコンッ!!

 

 俺の渾身の一撃を奴の顔面に叩きこむと、焼き鳥は吹っ飛んで壁に叩きつけられた。それと同時に、俺が纏っていた鎧は赤い粒子となって消えた

 

 奴はメリ込んだ壁から崩れ落ち、ピクリとも動かなくなった

 

 

『そこまで、勝者、兵藤一誠!』

 

 

 俺は皆に向かって腕を高く掲げた

 

 

 やりましたよ、部長、皆、シルさん。俺、やりました!

 

 

 




 安心してください、次回はシル視点です(`・ω・´)キリッ

 次回、にゃんこVS焼き鳥。シル、膝をつく!?の二本の予定です

 
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