ご都合、結構無理やりです。あとで直す可能性があります
顔に吹き付ける冷たい風が、心地良い
人間界の夜頃、僕は冥界の空を飛んでいた。いや、それは少し間違いかな
『シル、あと十分ほどで着く。丁度パーティーが始まる頃には着けそうだぞ』
「そっか。でも態々ついて来なくても良かったのに、ティア」
そう、僕は今ドラゴンの姿になったティアの背中に乗っている。僕が一人で行こうとしたところに、ティアが強引に自分も一緒に行く、と言って聞かなかったからこうなりました
『今のシルを一人で行かせたらいけない気がしてな』
そんなに心配しなくても大丈夫だよ・・・・多分、きっと
『ゲームが終わった時は怒りがあるというのは分かったが、抑えていた。だが今日、シルが少し出かけて帰って来た時、怖い顔をしていた。今も殺気が少し漏れているし・・・なぁ、一体何があったのだ?』
何があった、か。そうだなぁ・・・
「・・・一言、言わせてもらうとしたら・・・彼には報いを受けてもらう、って事かな」
ブルリッ!?
シルから発せられた冷たい声と強大な殺気で、ティアマットはその大きな体を震わせた。冥界の空に向けるシルの瞳の色は、怒りに燃え、凍てつくような色だった
『む、見えて来たぞシル。あそこがパーティー会場だ』
それから少しして、ティアが下の方を指さす。その先には大きな建物が見えた
『さてと、まずは派手にかますぞ』
ティアはそう言って、大きく息を吸う。僕はそれを見て慌てて耳を塞ぐ
『グォォォォォォォ!!!』
大気がビリビリと震えるほどの咆哮。せめて予告はして欲しかったよぉ・・・まぁ、気を取り直して、と
パチンッ
僕が指を鳴らすと、パーティー会場の屋根が綺麗さっぱり無くなった。見れば、ティアの姿を確認したパーティー会場の人達が慌てふためいている。それを見て、ティアは嬉しそうに笑った。全くティアは・・・
ティアがゆっくりと天井が無くなった会場へとゆっくりと降下していく。そしてある程度の高さまで来た時、僕はティアの背から飛び降りる
地面に着く前に、風を操ってゆっくりとパーティー会場の丁度ど真ん中に降り立った。それにしても、凄い人だなぁ。まぁ、上級悪魔同士の婚約パーティーでしかも、花嫁(一応)の方は魔王の妹だから、貴族達が来るのは当然か。あ、カメラまで来てる。何気に僕ってテレビに映るのってこれが初めてだったりするんだよねー
「な、なんだ貴様は!」
ライザー・フェニックスが僕に指を指してそう叫ぶ。が、僕はそれを無視してその隣にいるリアスさんに挨拶する。リアスさんは純白のまるでウェディングドレスの様な格好をしており、一見するととても綺麗だったーーーその顔に憂いの色が無ければ
「これはこれは、どうも『初めまして』リアス・グレモリー嬢。あなたのお噂はかねがね。噂通り本当にお美しい方ですね」
「え、あ・・・」
突然の事に、リアスさんは理解が追い付いていないのか、上手く言葉を発せていなかった。まぁ、丁度良かったかな・・・というか、今の発言をしてから何か上からどこぞのドラゴンさんの言いようもない視線を感じるんだけど
「き、貴様ぁ!!無視するとはいい度胸だな!!衛兵!奴を始末しろ!!」
っと、囲まれてしまった。取り敢えず、気絶させよう・・・としたら僕の隣に人型のティアが舞い降りた
「・・・誰に向かって刃を向けているのだ、お前達は」
ティアの殺気を受けて、衛兵の人達は尻込みをする。というかティア、少し殺気を抑えて。近くに兵藤君達がいるんだからさ
「これはこれは、一体何事かね?」
と、そこへリアスさんと同じ紅髪を持った魔王サーゼクス・ルシファーが僕達の元へ歩み寄って来た
魔王の登場に、会場にいた貴族の者達は幾分か落ち着きを取り戻し、事の成り行きを見守る事にしたようだ
「何故君がこんな所にいるのかな、ティアマット?」
「何、私はただの付き添いだサーゼクス」
ティアは魔王の問い落ち着いた様子で答える。って逆の気もするけどね
「それで君は、何をしにこんな所に来たのかな?」
今度は僕に向かってそう尋ねてくる魔王様。今日来たのは僕の『私情』だ
それから僕は先日のゲームの事をここにいる者達に聞こえるように話していく。やはりあのゲームでライザー・フェニックスが行った事にはここに集まった者達も不満だったようで、口々に話しだした
そして魔王サーゼクスも、不満そうにとれる発言をしたところで、いよいよ本題に入る
「おっと、話が逸れてしまったね。それで君の私用とは何なんだい?」
さぁて、いっちょ驚かせてみようか
「実は最近、酷く退屈をしておりまして。何か面白い事を求めていたんです。どうでしょう、魔王サーゼクス・ルシファー殿・・・僕と賭けをしませんか?」
『っ!?』
僕の発言に、周りの者達が騒がしくなる。まぁ、それはティアが殺気+睨みを効かせる事で静かになったけど
「賭け、とは一体どんな事をするのかな?」
興味深そうに聞いて来る魔王に、僕は2人の人物に視線を向けながら説明する
「それはそこにいるライザー・フェニックスと・・・あそこにいるリアス嬢の眷属であり、今代の赤龍帝であのゲームで見られなかった直接対決、一騎打ちをしてもらい、どちらが勝つかを賭けるというものです」
その内の一人、兵藤君に視線を向ける。彼の瞳はヤル気に満ちていた
そして魔王もそれに対して肯定的な言葉を漏らし、会場にいる者達の興味をそそるような発言をする。それに異を唱える者はいなかった。それに満足したように、魔王は僕に視線を向ける
「それで、賭けというのだから何かを賭けるのだろう?君は何を賭けるというのだい?」
「そうですね。では、僕は自分の・・・『オッドアイの銀猫』の首を賭けましょう」
『っ!?!?!?』
僕の発言に、会場にいる僕を除いた全ての者達が驚愕する。それは目の前にいる魔王も同じようで、少しばかり目を見開いていた
殆ども者達は僕の正体が『オッドアイの銀猫』という事に驚いており、対して一部の人は首を賭けるという発言に驚いているようだ。そして、それは隣にいる僕の連れも同様だったようで・・・
「お、おい!私はそんな事聞いてないぞシりゅ!?モガ、モガモガッ!!!」
騒がしくなったティアの口を塞ぐ。そう、ティアや皆には賭け等の事は告げていない。こうなるから一人で行こうとしたんだけどねー
「少し黙っててねティア・・・それでしょうか、魔王サーゼクス・ルシファー?伝説の者同士の一騎打ちに、自分で言うのもなんですが、魔王や神クラスと名高いこの僕の首を賭けての大勝負。これ以上ない程の催しになるのではないかな?」
こう言えば、娯楽に飢えている悪魔達は否定するなんて選択肢は無くなるだろう。それどころか、逆に乗り気になる。現に、集まっている貴族達の多くの目はそんな感じだった。まぁ、もし反対する者が出てきても手はあるけどね・・・あいつの逃げ道をドンドン塞いでいく
「・・・良いだろう。その賭けに乗ろうじゃないか」
少し考えてから魔王は僕との賭けを承諾する。そしてそれを聞き一層沸き立つ会場
そして僕は兵藤君が勝つ方に賭け、僕が賭けに勝った場合は魔王が兵藤君の願いを叶える、という物にしてもらうようにした。それからすぐに、魔王の指示で両者が戦うフィールドの準備が進められた
そして五分程して作られたバトルフィールドの中央で、ライザー・フェニックスと兵藤君は対峙していた。僕達はフィールドの外からこれから起こる戦いを見守る。先程からチラチラと離れた所にいるリアスさん達や悪魔の貴族の視線が僕達に向けられる。カメラもフィールドを映す物を除いた数台はこちらに向けられていた
「むぅ」
ティアが頬を膨らませ、怒った様子で横目に僕の事を少し睨む。さっきの僕の発言からずっとこんな調子だ。まぁ、後でちゃんと謝ろう
『開始してください』
そして数多くの視線を浴びる中、いよいよ勝負の幕が切って落とされた
しかし、いきなり両者が激突する訳ではなく、ライザー・フェニックスが一方的にペラペラと喋りだした。その様子や言葉から、完全に兵藤君の事を嘗めきっているのか、フェニックスの力を過信しているのか。それとも両方かな
「やはりこの勝負はライザー殿の勝ちでしょうな」
「左様、いくらあの伝説のドラゴンの力を宿していると言っても、どうやらあのリアス殿の【兵士】はついこの間転生したばかりと聞きましたぞ」
「しかも、あの【兵士】はゲームでは殆ど囮しかしておらんかった」
「それならば勝負は決まったも同然ですな」
と、観客の貴族達は口々にそんな事を言い合う
だが、彼らは知らない。彼がどれほどの怒りを買ったかという事を。そして、彼はこの戦いで身を持って知るだろう。決して触れてはいけない、逆鱗に触れた代償がどれほどのものかを
さぁ、役者も舞台も共に整った。もう君を邪魔するものは何もない
その時、兵藤君が僕の方に顔を向けて来た
「あとは君に任せたよ、兵藤君」
呟くような僕のその言葉が届いたのか、いよいよ兵藤君が動き出した
始まった戦いは、この会場にいる全ての者達を震撼させた
一方的、蹂躙、ワンサイドゲーム。そんな言葉がピッタリの展開だった
誰もが予想しなかった展開に、多くの者達は言葉を失っていた。僕もかなり驚いている。兵藤君は、限界を超えた力で彼を終始圧倒し続けた
さらに、まだ未完成のようだけど、禁手化に近い力を見せ、最後に一瞬だけど最上級クラスの一撃で不死と謳われるフェニックスを沈めた。その前に喰らった聖水の攻撃などで疲弊していた所にあんな攻撃をもらえば、立つ事は不可能だろう。現に彼は、最後の一撃をもらって地に伏せたまま気絶しているようだ
流石主人公。見せてくれるね。もう一つの方も十分見させてもらったし
「ま、まぁ奴にしてはよくやったものだな。私の特訓のおかげだが、す、少しは褒めてやろう」
腕を組んで観戦していたティアがそう言葉を漏らす。ツンデレですか?まぁいっか
「さて、それじゃぁとっととこのパーティーを終わらせようか」
僕は席を立ち、魔王の元へと向かった
「という訳で、賭けは僕の勝ちですね魔王サーゼクス・ルシファー?」
「あぁ、そのようだね」
勝負が付き、僕はティアと共に魔王の元へ来ていた。そこへ、バトルフィールドから戻って来た兵藤君もやって来た。意識のないライザー・フェニックスは、そのまま担架で医療室へと運ばれて行った。ーーーその時、誰にも気がつかれない様にある事をしておいて
「赤龍帝君、先の勝負は本当に素晴らしかった。僕もとても楽しめたよ。さて、勝った君には魔王に好きな物を要求できるよ。ですよね、魔王殿?」
僕はそう言うと、サーゼクス・ルシファーは頷いて兵藤君へ目を向けた
「では、賭けの清算をしなければいけないね。さて、ドラゴン使い君。君は何を望むんだい?爵位、それとも絶世の美女かい?さぁ、言ってみたまえ」
会場中の全ての視線が集まる中、兵頭君は真っ直ぐに魔王に目を向けた
「俺の願いは部長を、いえ・・・リアス・グレモリー様を返してください」
魔王を前にしての迷いのない兵藤君の願い。だが、それを聞いて周りが騒がしくなる
そんな中、二人の人物が人ごみの中から前に出て来た。一人はリアスさんや魔王と同じ紅髪の男性。もう一人は金髪の男性だった
「その願いは聞き入れられない。この婚約は、我がグレモリー家とフェニックス家の間で正式に取り決められたものだ。パーティーの余興のゲームの賞品で我々貴族同士の契約を白紙にする訳にはいかない」
紅髪の男性、現グレモリー家当主で、リアスさん達の父親であるグレモリー卿がそう言葉を発すると、兵頭君達の顔が曇る。さて、それじゃぁそろそろ最後の締め括りに入ろうかね
「先日行われたレーティング・ゲームで、リアスが勝った場合は婚約を破棄、ライザー君がゲームで勝った場合、婚約という事にリアスも承認しているのだ。それを覆すなど・・・」
「へぇ、それじゃぁ可笑しいですねー」
ワザとらしく声をあげてグレモリー卿の言葉を遮る。それに対して、グレモリー卿は眉を顰め、こちらに顔を向けた
「おっと、失礼。つい思った事が口に出てしまいました」
「一体何が可笑しいというのだ、シルバーキャット」
そう聞いて来るグレモリー卿だけでなく、全員に聞こえるように僕は少し声を張って言う
「今、貴方はこう仰いましたよね?リアス・グレモリー嬢とライザー・フェニックス殿の両者でレーティング・ゲームを行い、リアス・グレモリー嬢が勝った場合は婚約を破棄、ライザー・フェニックス殿がゲームで勝った場合は婚約、と」
「あぁ、それの何処が可笑しいというんだ」
グレモリー卿だけでなく、会場にいる者達の殆どが、僕が何を言いたいのか分からずに怪訝な表情になる。そんな中で、兵頭君達は何かを期待するような表情になっていた
「もうじき分かりますよ。ここにいる全ての人達に、ね」
さて、そろそろなんだけど・・・・
そう思いながら、僕は会場の扉へと視線を向けた
ドォォン!
『っ!?』
シルがそんな事を思っていたその直後、突然会場にある一つの大きな扉が吹っ飛んだ。そしてそこから出てきたのは・・・
「クソガキィィィィィ!!!!」
全身から炎を滾らせ、これ以上ない程の憤怒の表情を浮かべたライザー・フェニックスだった。
「お兄様!?」「ライザー!?」
会場にいたレイヴェルさんと金髪の男性、フェニックス卿がその姿を見て驚きの声を上げる。ライザーの眷属の者達も、声は上げていないが、同じく驚いていた
ライザー・フェニックスはシル達の方、正確にはイッセーの姿をその瞳に捉えると、憤怒の表情のまま全身に炎を纏い、歩みを進める。そんなライザー・フェニックスを見て、周りにいた貴族の者達は距離を取る中、一人彼の前に立ち塞がる者がいた。両手を広げ、ライザー・フェニックスの前に立ったのは、その実の妹レイヴェル・フェニックスだった
「お兄様!先程あれだけダメージを受けたのですから、すぐに動かれては・・・」
「邪魔だ、どけ!」
「キャッ!?」
「おっと」
ライザー・フェニックスは心配する妹を無理やり退かす。それによってレイヴェルはバランスを崩し、倒れようとした所をシルが優しく支えた
「大丈夫?」
「あっ・・・え、は、はい!」
顔を覗き込んで、そう問いかけられたレイヴェルは、何とか声を絞り出す事が出来た。シルはそれを確認すると、レイヴェルをちゃんと立たせ、イッセーに向かって行っていたライザーの前に移動する
「全く、女の子に対してさっきみたいな仕打ちはどうかと思うよ?それと、一応聞いておくけど一体何をするつもりなのかな?」
立ち塞がるシルに対し、ライザーは眼光を鋭くし、体に纏う炎の勢いを増した
「どけ、お前に用はない!俺はあのクソガキをぶっ殺してやる!邪魔するならお前から消し炭にしてやるぞ!!」
殺気を出して威嚇するライザーに、シルは笑顔のまま口を開く
「へぇ、それは面白そうだ。じゃぁ、やって見せてよ・・・もっとも、『君ごとき』の炎で火傷を負う事が出来るかどうかも怪しいけどねぇ」
ピキピキピキッ!
ライザー・フェニックスは、笑顔で言うシルの言葉に額に青筋を浮かべる
「ならば、貴様から死ねぇぇぇぇ!!!」
「止めろライザー!」
そう言ってフェニックス卿の制止の声を無視してシルに殴りかかるライザー
炎を纏ったライザーの拳が構えも何も取っていないシルに直撃し、大きな火柱がシルを包み込む。周りにいる者達は、即座に防御魔法陣でその火柱から生じる熱風から身を守る。
「ははははっ!何が『オッドアイの銀猫』だ。所詮は人間、この業火では骨も残っていないだろう!」
火柱を見て高笑いを上げるライザー。周りにいる殆どの者達もライザーと同じ様な事を思っていた。フェニックスの業火は、全てを燃やし尽くす程強力だ。それをもろに喰らえばただでは済まない。いくらあの魔王クラスと言われている『オッドアイの銀猫』といえど、人間では生きてはいないだろう、と。それとは反対に、イッセー達はジッと黙ったまま、いまだに上がり続ける火柱に目を向けていたそんな時、
ゴクンッ
まるで水を飲むような音が会場にいる者達の耳に聞こえてきた
ゴクン、ゴックン
さらに鳴る音。誰もが何の音かと思い始めていた時、異変に気が付いた
「お、俺の炎が小さくなっていっているだと・・・!」
ライザーの言う通り、音が鳴る度に激しく上がり続けていた火柱が一回り、また一回りと小さくなっていった。そして、とうとう人型程の大きさまで火柱、とは言えないほどになった炎。その炎が、何かに吸い寄せられるように少し上に向かって集まっていき、それによって炎に包まれていたものが見えるようになる。順に、足、膝、腹、胸と見えていった。そして、炎はマフラーに隠れている口元へと消えていき、その人物の姿が露わになる
ゴックン
「ふぅ、ごちそうさま」
そう言ったシルの体には、火傷どころか服に焦げ目すらなかった。
「無傷だと!?馬鹿な!?しかも俺の業火を食べただと!」
「フェニックスの炎を食べたのは初めてだけど、あんまり美味しくないね。やっぱり食べるなら、ティアの業火が一番かな?」
驚愕の声色を発するライザーに対して、シルはずれた事を言う。それを聞いたティアが、頬に手を当てて照れていた事には、視線がシルの方に向いており、誰も気が付かなかったのは余談です
「さて、それではグレモリー卿。先ほどの答えですが、その答えは僕の、そしてあなた達の目の前にありますよ」
「ど、どういうことだね」
いきなり話を振られたせいで、少し言葉に詰まりながらもそう尋ねるグレモリー卿。シルはライザーに視線を向けて続きを話す
「そうだよね、ライザー・フェニックス。いや・・・・・・はぐれ悪魔グロミー」
「っ!!?」
その名前に、ライザー・フェニックスの顔が目を見開くが、すぐに大きな声をあげて言い返す
「な、何を馬鹿な事を!俺はライザー・フェニックスだ!」
と、そこへフェニックス卿がライザーの隣に立ち、シルに顔を向ける
「はぐれ悪魔グロミーは1月前にライザーが討伐している。変な言いがかりはよしてもらおうか、シルバーキャット」
フェニックス卿もそう述べる通り、はぐれ悪魔グロミーは二か月前に主の元から逃げ出してはぐれ認定され、とある冥界の廃墟に潜伏していたところを一月前にグロミーの主の家と懇意にしているフェニックス家のライザーが討伐しているという報告がライザー自身から上がっていた
「それに、ここにいるのは間違いなくライザーだ。親である私が見間違えるはずがない」
フェニックス卿のその言葉に、ライザーはどうだ、とばかりにふんっ、と鼻を鳴らした。対してシルはというと・・・
「そうですね。確かにそこにいるのはライザー・フェニックスですよ」
と、笑顔を崩さずに言ってのけた
「・・・ふざけているのか」
そう言うのも仕方がない事だろう。つい先ほどライザーの事をはぐれ悪魔と言っていたのに、今度はまるで手の平を返す様に自分の言った事を否定したのだ。誰もがシルが何をしたいか理解できなかった・・・シルの次の一言を聞くまでは
「体はね」
『っ!』「っ!?!?」
本日何度目かの驚愕を会場の者達は感じる。皆の視線がその人物、ライザーに集中すれば、先ほどは何とか取り繕っていたが、今のシルの発言に大量の汗を流していた
「ま、まさか・・・!」
そんなライザーを見て、隣にいたフェニックス卿は信じられないようなものを見る顔になる
「ち、違う!出鱈目だ!奴は俺を陥れようとしてるんだ!俺は正真正銘ライザー・フェニックスです!それとも、俺の言葉より犯罪者の言葉を信じるというのですか!?」
「犯罪者っていう点なら、君もだと思うけど?はぐれ悪魔だし」
「黙れ!そもそも証拠もないのに貴様は何を言って・・・」
「証拠ならあるよ?」
ライザーの言葉を遮ってシルは当たり前の様に言う。その時、ライザーの体が大きく脈打った
「ぐぅ!?な、なんだこれは!?な、何をした銀猫!!」
自身の体の変化に、ライザーは狼狽した声を上げ、シルに向かって叫んだ
「あれ?気が付いてなかったの?赤龍帝君に負けて気絶した君が運ばれて行ってる時に、君の術式を解いたんだよ」
説明を続けている間もライザーの体は脈打ち続け、それはドンドン大きくなっていく。周りの者達は、シルを除いてライザーから距離を取る
『ば、馬鹿な、あれを解いたっ!?こ、声が・・・!』
「お・・・・俺の・・・・」
ライザーの口からライザーとは違ったくぐもった様な声と、小さなライザーの声が聞こえてくる。そしてライザーの体から炎が上がり始める
『ク、クソッ!出て来るな!この体は既に俺の・・・』
「だ、まれ・・・この、体は・・・・・俺のだぁぁぁぁぁ!!」
頭を抱えて唸る中、ライザーの力強い声と共に、激しくその体から炎が上がった
「俺の体から出て行けぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
『グォォォォォ!?!?』
ライザーの咆哮と共に、その体から何か黒い物が勢いよく飛び出す。すると、ライザーは力尽いたようにその場に膝をついて肩を上下させていた
「わぁ、術を解いたとはいえ自力で追い出すとはやるねぇ」
ライザーの近くにいたシルが、少し感心したような声で言う。それに対し、ライザーは呼吸を整えながら不敵に笑って答える
「はぁ、はぁ、あ、当たり前だ。俺を誰だと思ってる。俺はフェニックス家のライザー・フェニックスだぞ・・・まぁ、あの術が解けていなかったら俺はあのままだったがな」
術が解けたお蔭と言うライザーに対して、シルはニコリと笑った後、視線を別の者に移す。その先には、先ほどライザーから飛び出して行った黒い霧の塊があった。そして、その黒い霧は段々と薄くなっていき、そこには気味の悪い恰好をした男がいた
「お前は!はぐれ悪魔グロミー!」
グロミーの姿を知る者が叫ぶ。この男こそ、まさしく討伐されたと思っていたはぐれ悪魔グロミーだった
「・・・俺は一月前、ある森の中の小屋にグロミーが潜伏しているという情報を得て、その場所へ向かった。そこでグロミーの罠にまんまと嵌り、術で体を乗っ取られていたんだ」
ライザーは苦虫を食い潰したような表情でそう語る。ライザーの元へレイヴェルを含めた眷属の者やフェニックス卿が駆け寄り、そこからそっと離れたシルはグロミーの前に立つ
グロミーは、それに気が付かずにその場で頭を抱えて叫んでいた
「何故だ、何故だ何故だ何故だ!?俺の術式は完ぺきだったはずだ!あれは一度発動すれば解除は不可能の忘れ去られた古の禁術なんだぞ!?あの術を知っているのは俺だけだ、解ける訳がない!!」
「でも、実際にここに解いた者がいるんだけど?」
ようやくシルに気が付いたグロミーは、キッとシルを睨み上げる
「どうしてあの術を解けたと思う?それは君が赤龍帝君と戦っている時に、術を解読させてもらったんだよ。確かに強力なものだったけど、あの術には一つ弱点があったんだ」
「弱点だと!?そんなものは文献のどこにも記されていなかった!!」
「そこは知らないけど。まぁ、簡単に言えば術者の精神状態。乗り移った者の精神状態が疲弊していると、その術は脆い物になる。赤龍帝君と戦ってる最中にそれを確認したんだ。そして、脆くなった所に、僕が力を加えて解いた、という訳さ」
シルの説明にグロミーは心底悔しそうな表情になる
「クソッ!お前さえ、お前さえいなければ!!全て上手く行っていたんだ!!」
「それは残念だったねー」
全くそう思っていない口調のシルに青筋を立てるグロミー。が、突如その顔に笑みが浮かんだ
「ならば、今度はお前の体を乗っ取ってやる!」
そう言って両手を目の前のシルに突き出して魔法陣を展開しようとするグロミー。だが、それは叶わなかった
「は・・・?」
呆けた様な声を上げたのはグロミー自身。一体何故か、それは・・・
「お、俺の手がぁぁぁぁぁ!?!?」
叫び声を上げるグロミー。彼の言った通りグロミーの肘から先が無くなっていた。一瞬、シルがやったものだと思ったが、よく見ればグロミーの腕だけでなく、体のあちらこちらから粒子が舞い、その体が消えて行っていた
「ど、どういうことだ!?今度は何をしたシルバーキャット!!」
「それは僕じゃないよ。恐らくあの術の影響。禁術に手を出した代償じゃないかな。君という存在が消滅していっている。ちなみにもう手遅れ、君は消えゆくのをただ待つだけだ」
狼狽した声を上げるグロミーに、シルは淡々と答えると、グロミーは絶望した表情になり俯く
「・・・だけど、そうはさせない」
シルの言葉に、その顔を上げるグロミー。だが、すぐにその事に後悔する。シルの顔は何時ものものと違い、酷く冷たいものだった。既に手足が消滅していたグロミーの胸倉を掴み上げ、グロミーにしか聞こえない声量で告げる
「お前は先日、殺し屋を雇って僕の家族を殺そうとした。その報い、受けてもらう」
殺気を込めながら言われたグロミーは顔面蒼白になる。そんなグロミーをシルは空に向かって投げ上げた。天井が無くなった冥界の空にグロミーが舞う
「モード雷炎龍・・・」
ボォッ! バチバチッ!
静かにシルが呟くと、シルの体に激しい炎と雷が纏った。シルは上空のグロミーを睨みつけ、その場から天井があった高さまで飛び上がる。そして、
「雷炎龍の・・・・咆哮!!!」
瞬間、とてつもない雷炎の柱がシルから発せられた。そんなものを直に喰らったグロミーは、既に半分程消滅していたが、一瞬でその全てが消滅した。グロミーが消滅しても、その雷炎の柱は少しの間冥界の空に上がり続け、たっぷり三十秒ほどしてようやく消えた
そして、モード雷炎龍を解除したシルは、再び会場に着地した。会場にいる者達は体中にびっしょりと冷や汗をかいていた。それは先程のシルの放ったものの威力が原因だろう。そんな事を特に気にした様子も見せないシルは、
「ふぅ・・・ちょっとやりすぎた、かな?」
「ちょっとじゃなくて普通にやりすぎだ!!オーバーキル過ぎるぞ!?次元に穴を空ける気か!!」
小首を傾げそう言ったシルにティアが思いっきりツッコンだ。それに対しても特に気にした様子を見せないシルはグレモリー卿に顔を向ける
「グレモリー卿。まぁ、先ほど見ての通りで、あのゲームに参加したのは体はライザー・フェニックスであって中身は別人。これではライザー・フェニックスが勝ったとは言えないのではないでしょうか?」
「グレモリー卿」
と、そこへフェニックス卿とレイヴェル達に肩を貸してもらいながらライザーがやって来た。ライザーは目配せをし、自分の足で真っ直ぐに立った
「俺は、あのゲームを微かですが覚えています。あの時、俺が感じていたのは憤りです。俺の体を使い、あんな無様なゲームを行った事を。俺もあんなゲームで勝ったと思いたくありません。俺は、俺自身の力で、フェニックス家のライザー・フェニックスとして勝利したいのです。それに・・・」
ライザーは視線をイッセーに向けた。視線を向けられたイッセーは真っ直ぐにライザーを見返す。それに対し、ライザーは不敵な笑みを見せる
「そこにいる赤龍帝、兵藤一誠を倒さない限り、俺にリアス・グレモリーの夫となる資格はありません。どうか」
そう言ってライザーは頭を下げる。ライザーだけでなく、レイヴェルを含めた眷属も者達も同様に頭を下げていた
「・・・」
グレモリー卿はフェニックス卿に目を向けると目だけで何かを伝えあったのか、数秒瞑目し嘆息した
「・・・ライザー君はグロミーによって精神や体力を消耗している。一度治療の為に時間が必要だ。ゲームはそれからとする」
その宣言に、また騒がしくなる会場。そんな中、シルとティアの姿が見えなくなっているのに気が付いたのは少し経ってからだった
会場からいなくなったシルとティアは、再び冥界の空を飛んでいた
「あー、ティア。えっと、その今日の事は皆には・・・」
「もう遅い。少し前に伝えた。『帰ってきたら話がある』だそうだぞ。勿論、私もだ」
「oh・・・ち、ちなみに皆って」
「白音、黒歌、夕麻、ミッテルト、カラワーナ、アーシア、藍華だ」
「オワタ・・・きょ、拒否権は」
「あると思ってるのか?」
「デスヨネー」
そして家に着いたシルが玄関を開けると、そこには修羅がいました。その後、シルは朝まで正座させられた状態で御説教をもらいました。ちなみにアーシアは全く怖くなかったそうです
『ライザー様、リタイアです。よってこのゲーム、リアス様の勝利です』
そして、一週間後再び行われたゲームで見事、リアス達は勝利した