遅くなりました。
仕事が落ち着かず忙しくて、書くのがとてもツライんです。
追記:サブタイ少し変えました。
賊の討伐から三日後。
囚われていた女性達はイザナの洋館にて、侍女達の手伝いをしながらゆっくりと療養している。
そんな女性達を保護した当人であるイザナはというと、彼の仲間であるサヨと一緒にとある場所へとやってきていた。
彼らの目の前には、帝都の片隅で目立たないように佇む、こぢんまりとした一軒家があり、その入り口には『占い屋 アパッチ』という古ぼけた看板が掛けられている。どうやらその名前の通りに占いを扱う店であるらしい。
「……ここの占いで、タツミの居場所が分かるんですか?」
「はい。ここならまず間違いは無いですよ」
こんな場所に二人が来た理由は、エスデスに連れられてきたタツミに関係していた。
サヨは元々二人の仲間と共に帝都を目指しており、その途中ではぐれた仲間の一人がタツミであった。道中で行方不明となった彼の事を彼女はいつも気にかけていて、そこでつい先日、その本人と会ったイザナから話を聞き、早速彼に会いに行く事となったのだ。
しかし、いざエスデスの所を訪ねてみると、なんとタツミはイェーガーズから逃げ出し、再び行方をくらませた後であった。そして、気を落とすサヨを見かねたイザナによって、この占い屋へと足を運んだのだった。
ちなみに、もう一人の仲間である少年、イエヤスについては命に別状は無い。サヨと共に貴族に囚われていたところをイザナに救われ、現在は病気の後遺症を癒す為に貴族御用達の病院にて安静に入院中である。
「あの、ここの占い師はそんなに凄い人なんですか? とてもそんな風には見えませんけど……」
そんな彼女に、イザナは笑顔で自信のある声で答える。
「はい。何せ帝具を用いた占いですから、その的中率は100%ですよ」
「……え、帝具を使っているんですか!?」
「ただし、その分依頼料はかなり高いですけどね。さて、行きましょうか」
イザナの放った予想外の言葉に驚くサヨ。そんな彼女を
「――久しぶりデスネ、イザナ。今日はどんな事を知りたいのデスカ?」
中に入ると、突如として一人の女性がイザナとサヨの前に姿を現した。
赤みがかった褐色の肌に、こちらを睨むかのような三白眼。艶やかな黒髪を真っ白な羽飾りで後ろにまとめ、まるで異民族のような衣装をその女性は身に纏っていた。
「お久しぶりです、ローゼンさん。今日は自分ではなくて、彼女のお願いを聞いて欲しいんですよ」
「ふぅん。そちらの女性デスカ?」
「は、はい! 私の探している知り合いの居場所を、占ってもらいたいんです!」
ローゼンという女性に顔を向けられ、ややこわばりながらも身を乗り出して頼み込むサヨ。そんな彼女の必死な姿に、一瞬だけ面食らったらしいローゼは真剣な眼差しを向けてきた。
「……他ならぬイザナの頼みデスシ、貴女のその熱意にもしっかりと答えてあげマスヨ」
そう言うと、ローゼンは静かに右腕を前へとかざし、その握っていた手を下に向けて開く。すると、シャラリ、という音と共に、純白の鎖と半透明の宝玉で構成された振り子が現れた。
「私の帝具、吉凶占断「ペンデュラム」は、対象となる者の吉となる方角、凶となる方角を示しマス。……早速、結果が出たみたいデスネ」
帝具に目を向けてみると、彼女の手から吊り下がっていた「ペンデュラム」の宝玉が深い青色に輝き、重力を無視しながらとある方角を指し示していた。
「青色は吉の色。深い色なので距離はやや離れているみたいデスガ、この方角が貴女にとっての吉となりマス。探している人は、きっとこの方角の先にいるデショウ」
「ほ、本当ですか!? ありがとうございますっ!!」
当初抱えていた疑いは綺麗さっぱりと無くなり、喜色満面の表情を見せるサヨ。そんな彼女を見て、イザナは苦笑を浮かべていたが、ローゼンはまだ真剣な表情を崩してはいない。
「……ただ、少し用心が必要デスネ」
「えっ?」
「……仕事柄、依頼人達の素性は明かせマセン。ただ、以前さっきと同じ方角と距離にて凶と出た依頼人がいマシタ。おそらく、その探している人もその不幸に巻き込まれているデショウ」
冷徹な程に真剣な彼女の言葉と眼差しに、サヨは思わず静かに息をのむ。
しかし、イザナは素早く思考を巡らせ、今行うべき事をいち早く組み上げた。
「サヨさん。至急家に戻り旅支度を始めて下さい。それから、ウーミンさんとトレハさんにも同じ事を伝えておいて下さい」
「は、はい!」
「ローゼンさん。占いの代金の倍の額を支払いますので、どうか貴女も一緒に来て下さい。貴女の力が必要となるかもしれません」
「……ふむ。ま、いいデショウ」
「スズカさんとメズさんも、準備の方をよろしくお願いしますね?」
『ああ、分かった』
『りょーかい!』
イザナの指示の下、素早く動き出す女性達。
そして、イザナ自身も限られた時間で情報を集める為に率先して動き出すのであった。
――ナイトレイドの隠れ潜むアジト。
そのすぐ近くの森の中に、イェーガーズの一員であるスタイリッシュと、彼自慢の強化兵達の姿があった。
強化兵達の並外れた感覚により、ナイトレイドの一人であるラバックの張った警戒網を全てくぐり抜け、遂にはこのアジトの場所を発見する事に成功したのである。
「――さて、と。トローマは既に潜入成功。カクサンとトビーもナイトレイド達の下へと向かった事だし、私達は此処を一望出来る場所に移動するわよ」
「はい、スタイリッシュ様!」
「近くに人の気配はありません。すぐにでも移動出来ます」
「それでは、まだ周囲には糸が張り巡らされているので、私と同じ動きできて下さい」
スタイリッシュの指示に従い、強化兵の鼻、耳、目の三人はそれぞれの優れた感覚を活かして行動し始める。
(……全強化兵を総動員させた奇襲作戦。成功する確率は良くて五分五分、と言ったところかしらね)
先導する三人に付いていきながら、スタイリッシュは冷静にこれからの事を考えていた。
何せ、今回の奇襲の事は上司であるエスデスには報告せず、独断のみで彼はこのナイトレイドのアジトへとやってきたのだ。もし作戦に成功したとしても、スタイリッシュ自身にはそれ相応の罰が下ることだろう。
なので、スタイリッシュとしては最低でもタツミの身柄を確保し、ナイトレイドの戦力を一人でも削る事が望ましいのだが、現状の戦力ではかなり難しいと言えるだろう。
そして、スタイリッシュの不安は実際のものとなった。
瞬く間に最大の手駒であるカクサンとトビーは撃破され、ナイトレイドの一人を葬ったと思われたトローマは反撃にあい、強化兵達には効かない毒を散布しても、何故か粘り強い抵抗により段々と数を減らし始めていた。
「……っ!? スタイリッシュ様、空から別の新手がやってきます!」
「何ですって!?」
更には、周囲の音に気を配っていた耳からも悪い知らせが入り、全員が視線を空へと向ける。するとそこには、超級危険種であるエアマンタの背中に乗り、ナイトレイドのアジトの周りを旋回する者達の姿があった。
しかも、その中の一人は人間型の帝具であるらしく、尋常ならざる力で残りの強化兵達をも簡単に無力化していく。
もはや、スタイリッシュのこの場での手駒は感覚に特化した目、鼻、耳の三人のみであった。
「……こうなったら、最後の手段――」
残る三人がどうにかしてスタイリッシュを守ろうとする中、当の彼は懐から注射器を一本取り出した。
その中身はスタイリッシュが発明した薬であり、自身を巨大な危険種に変異させ、強大な力を発揮するというものである。
そんな危険な薬を自らの腕へと打ち込もうとした、その瞬間――。
「――こんばんは、スタイリッシュさん。どうやら間に合ったようですね」
――彼の目の前に、数名の女性を連れたイザナが姿を現した。