夜天の守護者   作:混沌の魔法使い

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第8話

第8話

 

「ああ~また逃げられたぁ~」

 

飛び去る黒騎士を見ながらスバルが嘆く。彼女達は現在黒騎士のバインドで拘束されており動くことが出来ない

 

「また、駄目だったか・・・」

 

シグナムがスバル達の方に歩いてくるが彼女の騎士甲冑も破損しており、黒騎士と対峙した事がわかる、最初に黒騎士と遭遇してからこれで7回目の捕獲失敗である、ヴィータが降りてきた所で黒騎士のバインドが砕ける

 

「悪いな、計画通りこっちに来たと思ったんだけどな、幻術だった」

 

ヴィータが申し訳なさそうに言う、だがこれでもう一つ判ったことがる

 

「これで黒騎士の手は全部出させることが出来たんでしょうか?」

 

今回いや今までの捕獲作戦は黒騎士に手を出させることが目的だった、黒騎士はネクロには容赦の無い攻撃を繰り出すが何故か六課の面々には凍結魔法により動きの束縛やバインド、幻術を用いた行動ばかり取っている、どうやら黒騎士はネクロ以外は興味が無いようだ

 

「それにしても何で本気で攻撃してこないんでしょう?」

 

スバルと同じくフロントアタッカーのエリオが疑問を言う、今回は彼がもっとも黒騎士に攻撃をしたが防ぐか受け流すと言う防御行動しかとって居ない。黒騎士に疑問を感じたのだ、今まで何度か黒騎士とネクロの戦いは見ているが黒騎士のランクは軽く見積もってもSS+エリオ達なら行動不能にすること事など容易い筈なのに、それをやらない黒騎士には疑問が募るばかりだ

 

「考えることは、後でも出来る今は体を休めるようにしよう」

 

ヘリに乗り込み、この場から離れながらシグナムは

 

(あの時の技・・あれは龍刃衝だった・・やはり黒騎士は兄上なのか?)

 

黒騎士と対峙しそれでも飛び去ろうとする黒騎士に痺れ切らし、シュツルムファルケンを放ったが黒騎士もまた鞘と剣を一体化させ矢を放ってきた。それは間違いなく兄の技・・龍刃衝だった。威力はあちらが上だったのだろう、自分の矢はあっけなく砕かれ、逆に黒騎士の矢が直撃すると言う所で黒騎士は自分の矢を砕いた。まるで自分に怪我をさせないようにするための行動だった。

 

(もう少しだな・・)

 

その手にある箱には黒騎士の魔力を発散させるプログラムが組み込まれている。

 

(今回ので全ての黒騎士の情報が集まった、今度こそ正体を・・・・)

 

シグナムは内に闘志を燃やしながら六課へ向かって行った、次の日

 

 

「大変です!!またネクロの反応が出たです」

 

「またか・・」

 

最近連続してネクロが出現している、その度に黒騎士もまた姿を見せる為、遭遇する回数は多い

 

「よっしゃ!!機動六課出撃や!!」

 

空元気で主はやてが言う、黒騎士が現れるたびに自分から交渉しようとしているが。口を開かず姿を消す黒騎士の事でだいぶ参っているのだ

 

「よし、では行くぞ」

 

シグナムを先頭にヘリに乗り込んでいく、今回はなのはとフェイトも参加している

 

「いいか?いつも通り逃げ遅れた民間人の保護を最優先だ。ネクロに遭遇しても出来るだけ戦闘は避けろ。いいな」

 

現場上空でシグナムに念を押されてから降下する。確かに実力は上がってきているがネクロと戦うにはまだ力不足なのだ

 

「「「「了解」」」」

 

元気よく返事をして降下していく新人達を見ながら、なのは達も現場に向かった

 

 

「今回はネクロはあっちかな?」

 

逃げ遅れた民間人の誘導をしながらスバルが呟く

 

「どうでしょう?ガジェットとネクロは協力体制にありますからね。よく判りませんね」

 

「きゅく!!」

 

頭の上に小さな竜をのせたキャロがスバルに答える、ネクロが出ればガジェットがガジェットが出ればネクロが出る。つまりなのは達の方にネクロが出ればこちらは必然的にガジェットと戦うことになるが

 

「残念みたいね、どうやらこっちがネクロ見たいね」

 

辺りを見回していたティアナから連絡が入る、そしてそれと同時にコンクリートから染み出るようにネクロが現れるその数およそ20

 

「ちょっと、これはきついかもね・・・」

 

クロスミラージュを構えながらそう呟いた

 

 

 

「いい?これだけの数じゃ戦闘回避は無理だわ、私とキャロは援護するからスバルとエリオは前衛良いわね?」

 

指揮を出しながらなのは達に連絡を取ろうとするが

 

「やっぱり、通信は無理ね」

 

ノイズが走り連絡が取れない

 

「あんまり接近しないように気をつけて。じゃあ戦況開始!!」

 

この言葉と共にスバルとエリオが駆け出す。

 

「行くよ。相棒」

 

『了解しました相棒、ウィングロード展開します』

 

完成した道を駆けながらスバルがネクロに接近し攻撃を繰り出す。それに続きエリオも

 

「ストラーダ、行くよ」

 

『了解』

 

槍型のデバイスを携えネクロに攻撃を当てていく

 

「キャロ!援護射撃行くわよ」

 

攻撃して隙が出来た所に飛び掛ってくるネクロを射撃魔法で飛ばしていく。なかなかに連携が取れているが

 

「くっ!また増えたわ。」

 

倒しても倒してもそれを上回る量で再び姿を現すネクロに舌打ちをしながら再び援護を続けるティアナとキャロを見ている。一つの影・・黒騎士だ、姿を隠しながら戦況を見ている

 

「このままでは不利だな・・なのは達は何をしている?」

 

目を閉じ一瞬エリアサーチを行う

 

「成る程、成長具合を見極めるつもりか・・」

 

自分とは逆方向に姿を隠しているなのは達の魔力の波長を感じ取る

 

「それとも、私が姿を見せるのを待っているのか・・うん?成る程あれをやるつもりか、いいだろう見せてもらうとするかお前の答えを」

 

そう呟いた黒騎士が再び下を見ると其処には一度離れて魔力を収束しているスバルの姿があった

 

 

「このままじゃ不味いわ」

 

最初のほうこそ、その数を減らしたがいまは倒した量を遥かに上回る速さで増えており、スバルとエリオも下がって来ている

 

「ねぇ、まだ連絡取れないの?」

 

スバルが近づくネクロに蹴りを放ちながら確認を取るが

 

「まだ、無理みたい。・・・スバル危ない!!」

 

横からネクロが鋭い爪で襲ってくるが

 

「それには当たらない!!」

 

一瞬溜めの呼吸をして、ネクロの懐に飛び込み三連続で拳を放つ、直撃を受けたネクロは苦しみながら消滅していく

 

「凄いですね、スバルさん、僕から見ても動きが鋭いですよ」

 

ストラーダでネクロに攻撃しながらエリオが賞賛の言葉を送る

 

「そんな事ないよ。ちょっと知り合いに教えて貰っただけだから」

 

拳を再び構えながら言う、

 

「でもちょっと・・・いやかなりヤバイよね」

 

ネクロは今もその数を増やしており、今は40近い数になっている。後ろから援護していたティアナが遂に痺れを切らしたのか

 

「スバル!!このままじゃ不味いわ、あれ出来る?」

 

「えっ!あれってあれだよね。出来るけど時間掛かるよ?」

 

訓練で何とか本来の威力まで上げることが出来たが。その代わり溜めの時間が増えてしまったのだ

 

「大丈夫!少しくらいなら私達が時間を稼ぐわ。エリオ。キャロ。今からスバルがこの状況を打破できる大技を使うわ。でもこれにはチャージの時間が要るの。今から一分スバル無しで持ち堪えるわよ!!!」

 

「「了解!!」」

 

ティアナ達から離れ意識を集中させる、カートリッジ無しでは何回か出来たが今回は全力で遣らなければならない

 

「ふっ!!行くよマッハキャリバー!!カートリッジロード!!」

 

『カートリッジロード』

 

三発の薬莢が飛び出し魔力を増加させる。それを何とか纏めようとするが

 

(ぐっ!!やっぱカートリッジ有りじゃまだ早かったか・・)

 

暴走するだけで全く纏まらない

 

(このままじゃ、ティア達が・・・)

 

自分を信じて時間稼ぎをしているティア達だが今の状況ではまだ溜めの時間が掛かる

 

(やっぱり・・私じゃダークネスさんみたいに成れないのか?)

 

一瞬気持ちが揺らいだとき

 

(何を言っている!!お前が私に護る盾が欲しいと言ったのはその程度の気持ちだったのか!!)

 

(!?ダークネスさん?」

 

此処に居る筈のない男の声が聞こえた気がした

 

(そうだ・・私は決めたんだ、ダークネスさんの様に護れるようになるって決めたんだ!!)

 

消えかけた闘志に再び火がつく、

 

「はああああっ!!」

 

無理やり魔力を纏め上げ術式を完成させる

 

「皆退いて!!」

 

腰を深く落とす。そして背中に溜めた魔力を一気に開放し、ネクロ目掛けて加速し、右手に溜めた魔力を開放する

 

「ヘブンズ・・・

   ナックル!!!!」

 

ゴウッ!!!!

 

限界まで溜めた魔力は凄まじい轟音を立てながら。ネクロを呑み込み消滅させた

 

 

 

「スバル、何時の間にあんな技を?」

 

ビルの上からスバル達を見ていたなのはが呟く、さっきの技はどう見てもSSいやSSSランクは合っただろう

 

「なのは、お前あいつにあんな技教えたか?どう見てもあれは砲撃系だぞ」

 

同じく姿を隠していたヴィータが確認を取る、

 

「ううん、私は特に何も教えてないよ、ヴィータちゃんじゃないの?」

 

「馬鹿いうな、あたしは砲撃系と言うかミッド式は使えねえよ」

 

呆れ半分と言った様子でヴィータが言う

 

「まぁ、それは帰ってから聞けばいいよ。取り合えずスバル達の合流しよう

 

「そうだね」

 

スバル達の方に行こうと飛行魔法を構築しようとしていると、スバルの背後からネクロが飛び出しその爪で引き裂こうとする

 

「危ない!!」

 

飛行魔法の構築を止め、即座に速射魔法を放とうとした時

 

ザンッ!!

 

「キィ・・・」

 

スバルを救ったのはなのは達ではなく全身黒の鎧を身に纏った騎士・・黒騎士だった

 

 

私が気付いたときは既にネクロはスバルに襲いかかる直前だった。私が警告をだそうとする前に黒騎士が現れた

 

「助けてくれた?」

 

スバルも信じられないといった様子で自分の前に立つ黒騎士を見ている

 

「気をつけろ、勝ったと思い気を抜いたその瞬間が一番危険だ」

 

それだけ言い残し去ろうとする黒騎士に

 

「待ってください、私達は時空管理局の者です。少しでいいので話を聞かせてもらえませんか?」

 

「私はお前たちに話すことなど・・」

 

ジャラララララ!!!

 

音を立ててバインドが四方から襲い掛かり黒騎士を拘束した

 

「えっ!?」

 

目の目で起きた事に驚くと同時に私の前に4人の人影が降りてきた。六課の隊長陣の登場だ

 

 

「外れん」

 

バインドを破壊しようとするが逆に力が抜けていく

 

(グラム、一体これはどういう事だ?)

 

(主、これは私の魔力の波長を分解する物質で出来ています。申し訳ありませんが私では振りほどくことが出来ません」

 

グラムと念話で話していると

 

「ようやく捕まえました。いい加減、話を聞いてくれたらどうですか?」

 

フェイトが話しかけてくるが

 

「・・・・・・」

 

無言で返事を返し、バインドを振り解こうとするがビクともしない

 

「無理だぜ、それはあんたの魔力を分解するように出来てる。いくら黒騎士といえどそれは破壊できねえよ」

 

グラーフアイゼンを担ぎながら近づいてくるヴィータ

 

「それとも仮面を外さないと話すつもりは無いっていうつもりですか?黒騎士・・・いえ龍也さん」

 

「・・・・!?」

 

内心同様する、だがここで仮面を外されたら終わりだ。横目でスバル達を見るこの展開に付いていけないのかぼんやりしている

 

(バレルかもしれんが、ここは此処から離れるのが先だな・・ベレンセットアップの準備だ)

 

(了解。でもすこし時間掛かるぜ、その間どうするつもりだ)

 

(何とか、時間を稼いで見る。お前は甲冑の再構築を頼む)

 

ベレンに指示を出し私は賭けに出た

 

「龍也?それは一体何方の方かな?」

 

「冗談は止めてください、私達は今まで貴方の技を解析してきたが・・どれも兄上の物だ。それでも白を切るつもりですか?兄上」

 

・・まぁ・・ばれるよな・・基本的なスタイルは変えてないんだし・・それに近くに居たシグナム達なら直ぐに気づくことだよな・・

 

「ちょっと待ってください。隊長達は黒騎士の正体に見当が付いてるって言うんですか?」

 

さっきまでフリーズしていた、ティアナが再起動してなのはに詰め寄る

 

「うん、言ってなかったけど、最初に遭遇してからもしかしたらって思ってたんだけど。黒騎士は八神龍也。はやてちゃんのお兄さんの可能性がある」

 

「えっ?どういう意味ですか?部隊長にお兄さんが居るなんて聞いてないですよ」

 

スバルが聞いたことの無い事の確認をしようとなのはに近寄り、私から視線が外れる。今だ!!

 

「ベレン、セットアップ!!」

 

騎士甲冑が一瞬で解除され、変わりに黒のライダースーツと爬虫類を思わす仮面が現れる、だがこれではバインドから脱することは出来ない更に

 

「ベレン、モードフォールダウン」

 

背中に一対の翼と巨大な銃が現れる。これがベレンの持つ最強形態で魔力を大幅に増加させ更にSランク以下の魔法は無効化する能力を持つが体に掛かる負担が大きく約10分ほどしかこの形態を維持できないという欠点を持つ。現れた翼でバインドを引きちぎり飛び上がるが

 

「「えっ?今ベレンって?」」

 

スバルとティアナの顔が驚愕に染まる。どうやら正体に気付いてしまったようだ。だがここは逃げるのが先決だ・・私には・・もう守護者たる資格は無いのだから・・

 

呆然としている内に逃げるとしよう、背中に生えた翼で飛び去ろうとするが

 

「!?」

 

見てしまう。呆然としているフェイトの影からネクロが飛び出すのを・・私は考えるより先にフラッシュムーブを使い

 

「邪魔だぁ。そこを退けフェイト!!」

 

「えっ!?」

 

まだ呆然としていたフェイトを突き飛ばし変わりに自分がネクロの攻撃を受ける

 

ピキ!!

 

静かだが確かに仮面に皹が入った音がするがそれを無視し、ネクロに銃口を向け

 

「ヘルズブリンガー!!!」

 

連続で魔力弾を打ち込む。そして声を挙げる間もなくネクロは消滅した・・だが

 

ピキピキッ!!ガチャン!!!

 

ネクロの攻撃により罅割れてしまった仮面が、私の動きに耐え切れず音を立てて砕け・・素顔が明かされてしまう

 

「兄貴・・」

 

運悪く私の正面にはヴィータが居た。ヴィータの顔は驚きと驚愕に染まっていた・・なんという失態だ・・全てが終るまで・・いや・・これから先ずっと姿を見せるつもりは無かったのに・・

 

「クッ!!」

 

右手で顔を隠し飛び去ろうとする

 

「待てよ!!待ってくれよ!!!」

 

ヴィータが追ってくるが速さでは此方が上だ追いつくことは出来ない

 

「兄貴、兄貴なんだろ?何で!何で!!逃げるんだよ!!!」

 

悲痛な声だ。思わず立ち止まりそうになるがそれを押さえ飛び去る

 

「何で逃げるんだよ。兄貴ィィィィッ!!!!」

 

ヴィータの嗚咽交じりの叫びを聞きながら私はこの場から消えた。

 

 

「ううっ、兄貴何で!?何で逃げるんだよ」

 

膝から崩れ落ち涙を流す。さっきのは間違いないあれは兄貴だ。右目の傷はにあの優しい瞳は間違いない

 

「ヴィータちゃん。顔を見たの?」

 

なのはがハンカチを此方に向けながら尋ねる

 

「ああ。間違いねぇ黒騎士は兄貴だ。8年前の傷が合った」

 

あの傷は間違い無いあの時の物だ・・あたし達を庇って出来た傷・・見間違える訳が無い・・

 

「ヴィータ、間違いないのだな?」

 

シグナムも確認に来る

 

「あたしが兄貴を見違えるわけはねぇ。間違いねぇ100%断言できる。黒騎士はあたし達の兄貴八神龍也だ」

 

「えっと。状況が今一掴めないんですが」

 

スバルが遠慮がちに尋ねてくる。もうこれ以上隠すことは出来ないと判断して

 

「帰ったら全てを話す、帰還したらブリーフィングルームに集まってくれ」

 

今までに無い暗い雰囲気で六課に向かう、空からは雨が降り始めていた・・

 

第9話に続く

 




さて今日の更新はここまでにしておこうと思います!
あまり一気に投稿すると迷惑になるので

それとリクエストはまだまだ募集中なので感想か、活動報告の方にくれると嬉しいです!!それでは次回の更新の時にまた会いましょう


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