夜天の守護者   作:混沌の魔法使い

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第100話

 

 

第100話

 

シグナムとアイギナの戦いが終った数日後・・私は珍しく演習場に居た

 

「・・はぁぁぁ・・・」

 

ゆっくりと息を吐きながら魔力を収束させる・・それは徐々に眩いばかりの輝きを放ち全身を包み込む・・私はそれを確認してから身体を動かし始める、突き、蹴り、基本的な体裁きを重点的に行う・・その理由は

 

「思ったより・・スバルとエリオの成長がが早いからな・・」

 

私でもかなりのスパルタだと思う・・だが2人は私の訓練だけでなく、自主練もやっているせいか、恐らく近いうちにインペリアルと極光での戦闘も無理なくこなせるようになるだろう・・そうなれば後は実践訓練をやらねばならない・・その為には対等な敵が必要だ・・エリオは問題無い・・パラディンにオメガ・・どちらでも良いからだ・・だが問題はスバルだ・・スバルは極光を使う・・すなわち極光を使える相手で無いと意味が無いのだ・・だからこうして極光を扱う為に自主練をしている訳だ・・2時間ほど身体を動かした所で休憩する・・私は額の汗を拭いながら

 

「ふー流石に疲れるか・・」

 

極光は体力と魔力を同時に消費する・・その分性能はピカイチなのだがやはり短期決戦向きの技だ

 

「だが・・スバルの場合・・私とは違うからな・・」

 

嫌な言い方だがスバルは戦闘機人だ・・私とは身体の作りが違う・・恐らくスバル・・いやチンク達もだが極光をマスター出来れば・・恐らく私以上に使いこなせるだろう・・

 

「追い抜かれるのも時間の問題か・・」

 

私はそんな事を考えながら笑みを零した・・若い世代が育つと言うのは良い事だ・・私がそんな事を考え持ってきていたスポーツ飲料を飲んでいると

 

「・・守護者・・丁度良い所に・・」

 

獰猛な笑みを浮かべたハーティーンが演習場に姿を見せる・・私は嫌な予感がした・・そしてそれは的中した

 

「守護者!!今日こそ貴様との戦いに決着をつけてやる!!俺と戦え!!」

 

ハーティーンは私との決着が付いてない事に拘っており、私の顔を見れば直ぐに戦え、戦えと言う・・私がどうしようかと困っている時・・救世主は来た・・

 

ブンッ!!

 

何かを投げた音が聞こえたと思った瞬間

 

「ぐはぁっ!!・・誰・・だ・・ラ・・グナ・・」

 

ハーティーンの頭に分厚い辞書が追突し、ハーティーンはその辞書を握り締めながら振り返り停止した・・その視線の先にはあからさまに怒っていますという表情を浮かべたラグナが腕を組んで立っていた・・ラグナは速足でハーティーンの前に立ち

 

「ハーティーン!!何度言えば判るの!!八神さんに迷惑掛けたら駄目だって!!」

 

ラグナがハーティーンを怒鳴りつける・・怒鳴られたハーティーンは

 

「うっ・・いや・・・その・・」

 

何か言い訳しようとするハーティーンにラグナは

 

「言い訳なんか聞きたく無い!!私は喧嘩しないで何時も言ってるでしょ!!仲良くしてよ!!それの今日は私の買い物に付き合ってくれるって言ってたよね!!如何してこんな所に居るの!私待ってたんだよ!!」

 

はーはーっと肩で息をするラグナにハーティーンは

 

「うっ・・その・・すまない・・待ってる間暇だったんだ・・だからウロチョロしてたら・・守護者を見つけたからつい・・」

 

謝るハーティーンにラグナは

 

「だから言い訳は聞きたく無いの!!態度で見せてよ!!」

 

そう言うラグナにハーティーンは

 

「ああ、判った・・今すぐ出かけよう!!ほら行くぞ」

 

ハーティーンはラグナを抱き抱える様に演習場を後にした・・私はその後姿を見ながら

 

「・・・最凶はラグナか・・」

 

最凶とも言われるハーティーンだが、彼が頭が上がらない存在・・ラグナの方がよっぽど強くないだろうか・・?私はそんな事を考えながら演習場を後にした・・

 

「さてと・・何を作るかな・・」

 

セッテにチーズケーキを作ると言った以上作る必要がある・・だが折角だから他にも何か作ろうと思い考えていると

 

「兄~」

 

「お兄様~」

 

リィンとアギトがエプロンを持って来る、折角だから2人にも教えてやろうと思い、声を掛けておいたのだ・・

 

「思ったより早かったな・・2人とも・・そうだ!2人は何を食べたい?」

 

私ではなく食べる側の人・・リィンとアギトに何を食べたいと尋ねるとアギトは

 

「私は前食べた兄のえっと・・大福だっけ・・あれが食べたいけど・・でも食べるだけじゃなくて作り方も知りたい!」

 

大福か・・確か前に作ってやった事が・・中々好評だったが・・チーズケーキと合うだろうか?・・まぁ良いか・・アギトが作りたいと言ってるのだし・・

 

「判った、じゃあチーズケーキと大福の作り方を教えようか」

 

2人に尋ねると、2人は笑顔で頷いた・・私もエプロンを身に付けキッチンに向かった・・

 

「まずな・・ボウルにクリームチーズを入れるんだ」

 

大き目のボウルにクリームチーズを入れ、泡立て器を手に取り

 

「これを混ぜるのだが・・2人だと無理だから私がやろう」

 

このクリームチーズを柔らかくするのは思ったより重労働なのだ・・私は中身が零れないように泡立て器でクリームチーズを柔らかくする・・

 

「ここに生クリームと砂糖を入れて・・ゆっくりと混ざるんだ」

 

柔らかくしたとは言え、固形物であるチーズに液体である生クリームを混ぜるのはコツがいるのだ・・アギトに泡立て器を手渡し

 

「ゆっくりだぞ・・ゆっくり混ぜないと生クリームが零れるからな・・」

 

注意しながらアギトの様子を見る

 

「えっと・・うわ・・うー混ぜにくな・・」

 

零れそうになる生クリームに苦戦しながら、ぎこちない手付きで混ぜているアギトを見ながら

 

「よし・・じゃあリィンは卵を割って、薄力粉の用意をしようか?」

 

リィンに卵を手渡す、リィンは慣れた手つきで卵を割る、その様子を見ながら薄力粉とふるいを用意する

 

「それじゃあ、薄力粉をふるいに掛けて・・それが終ったらアギトのボウルに薄力粉と卵を入れるんだ」

 

リィンがアギトのボウルに薄力粉と卵入れている間に、ヘラを用意して

 

「リィン、これで混ざるんだ」

 

「判ったです!!アギトちゃんちゃんと押さえてて下さいね・・」

 

ゆっくりと材料を混ぜ合わせ始めたリィンとアギトを横目に、レモンを用意し果汁を絞っておく・・風味付けにはレモンが丁度良いのだ・2人が混ぜた材料にレモンの絞り汁を加え、ケーキの型にバターを塗り、そこに材料を全部入れてオーブンに入れる

 

「良し、これでチーズケーキの方は大丈夫だな・・それじゃあ次は大福を作ろうか?」

 

そう声を掛けてから材料を用意する・・材料と言っても漉し餡と白玉粉だ・・白玉粉で大福?と思うかもしれないが・・これで簡単に大福を作ることが出来るのだ

 

「えっと・・お兄様・・これで本当にお餅が出来るですか?」

 

リィンが首を傾げながら尋ねて来る私は

 

「そうだよ・・これで美味しい大福が出来るんだ」

 

そう笑いながら耐熱のボウルに白玉粉を入れ、そこに水を加えて軽く混ぜ合わせ

 

「これをレンジに入れてっと・・」

 

レンジに入れて加熱する・・この際途中で加熱を止めてボウルを取り出し

 

「うん・・良い具合だ・・」

 

菜箸で軽く混ぜ、再び加熱する、今度は自動で止まるまで待ち、タイマーが鳴った所でボウルを取り出し、中身を確認する・・白くお餅の様になった、白玉粉を見ながら

 

「アギト、大き目のお皿に米粉を入れてくれ」

 

「うん・・判った・・」

 

アギトがお皿に米粉を入れてくれたのを確認してから、そこにボウルの中身を出して、米粉をまぶしながら細長く丸める・・これで生地が完成する

 

「おおー本当に餅みたいだ」

 

「凄いですね・・こんな作り方があったんですね・・」

 

そのお餅の生地を指で突きながら笑う2人に、パンの生地を切る道具を渡し

 

「これで1口だいに切るんだ・・こうやってな、やってごらん」

 

2人が私と同じ様に生地を切った所で

 

「それでこれを広げて・・」

 

餃子の皮の様に丸く広げて

 

「ここに餡子を乗せて・・丸める・・これで完成だ」

 

見本の大福を一個お皿の上に乗せる

 

「良ーし・・兄みたいに上手に作るぞ」

 

「リィンも頑張るですよ~」

 

作り始めた2人の様子を見る

 

「ありっ?・・中身が出ちまった?」

 

「上手く丸まらないです・・」

 

上手く出来なくて頭を抱えている2人に

 

「アギトは餡子が多いんだ、それでリィンは生地の伸ばしが甘いから上手く伸びないんだよ」

 

何処が駄目なのか指摘すると2人は

 

「えっと・・これで多いなら・・これくらいかな?」

 

「もうちょっと伸ばして・・これなら上手く出来そうです!」

 

2人であーだこーだと呟きながら大福を作り・・それから30分後・・

 

「「出来た(です)!!」」

 

お皿の上には形は歪だが、リィンとアギトが作った大福が沢山並べられていた・・ちょうど大福を作り終えた所でレンジのタイマーが鳴る

 

「どうやら、チーズケーキも出来たみたいだな・・それじゃあ、冷やして持って行こうか?」

 

チーズケーキをフリーザーに入れて、急速に冷やす・・本当は自然に粗熱を取るのが良いのだが・・それをやっていては3時のおやつに間に合わない・・なので今回だけフリーザーを使う事にした

 

「さてと・・飲み物も出来たし・・食堂に持って行こうか?」

 

チーズケーキを載せたトレーを持ち、私達は食堂に向かった・・食堂でははやて達が既に待っていた・・リィン達がメールで呼んでおいたのだ

 

「おー兄ちゃん来たか~待ってたで」

 

にこにこと笑うはやてに

 

「ああ・・龍也様が私の為に・・ふふ・・」

 

何か不気味な笑い声を出しているセッテ・・何はともかく楽しみに待っていてくれたようだ、私とリィンとアギトで皆の前にチーズケーキを置いて行く、そして机の真ん中に大福を乗せたお皿を置き

 

「今日のおやつは、私とアギト達で作ったチーズケーキと大福だ」

 

そう言うとスバル・・と言うかミッド側の人間が首を傾げ

 

「えっと・・龍也さん・・大福って何ですか?」

 

代表としてかティアナが尋ねて来る、私は簡単に説明する事にした

 

「これはな、地球の代表的なお菓子でな・・和菓子という奴で上品な甘さと食感が特徴だな・・もぐっ・・うん・・美味い」

 

説明しながら大福を1つ取り齧る・・その様子にスバル達は

 

「龍也さんが甘い物を食べた!?」

 

と言いたげな顔で私の顔を見ていた、私は軽く微笑みながら

 

「まぁ・・甘い物が苦手な私でも食べれる物だと思ってくれれば良いさ・・さてとさっそく食べてくれ」

 

そう言うと早速セッテがチーズケーキを食べ、嬉しそうに微笑む・・セッテだけではなく皆もチーズケーキや大福を食べて嬉しそうに笑っている・・私がその様子を見ていると、リィンとアギトが

 

「皆、美味しい、美味しいって食べてくれてるぜ・・兄に料理を教えて貰って良かったぜ」

 

「リィンもです!皆が美味しいって言って食べてくれるのは凄く嬉しいです!!もっと・・もっと料理を覚えて皆に喜んで欲しいです」

 

にこにこと笑いながら言うリィンとアギトの頭を撫でながら

 

「そうか・・それじゃあまた何か料理の作り方を教えてやるからな」

 

と言うと2人は嬉しそうに笑いながら抱きついて来た

 

「んふふ・・兄は本当に優しいな・・私は兄が大好きだ」

 

「リィンもです~お兄様が大好きですよ~」

 

と言いながら頭を擦り付けてくる2人を見ながら

 

(今日も機動六課は平和だな・・)

 

そんな事を考えていた・・平和な一時・・それは何物にも変えがたい宝の時間でもある・・

 

第101話に続く

 

 


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