夜天の守護者   作:混沌の魔法使い

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第101話

 

 

第101話

 

 

リィンとアギトにお菓子を振舞って貰った日の次の日

 

「・・ヴェノムが管理局のロストギア保管庫に侵入・・中に保管してあったレリックが全部消滅か・・ヨルムンガンドは陽動だったか・・」

 

私はレジアスから送られて来た被害報告書を見て顔を顰めた・・レリックはネクロとデクスの食料と言っても良い・・それが全部奪われた・・恐らく戦いの為の準備といった所だろう・・私が考え事をしていると

 

コンコン

 

「入りますよ?」

 

ノックの後からなのはが入ってくる、なのはの手には書類が見えた、

 

「書類か?・・今判子を押す」

 

持って来た書類に判子を押していると、なのはが私の隣に座り

 

「どうしたんですか?そんなに難しい顔して?」

 

心配そうに尋ねて来るなのはに

 

「ヴェノムがロストギア保管庫のレリックを全て強奪したらしい」

 

そう言うとなのは、神妙な表情になり

 

「最終決戦が近いという事ですか?」

 

そう言うなのはに

 

「かもな・・だが大丈夫だよ、なのは・・!!」

 

不安そうな表情のなのはを安心させる為にそう言うと、無言でなのはは私の腕を取り胸の間に抱き抱える様にする・・私が腕に感じる柔らかい感触に私が困惑し停止する・・私が停止しているとなのはは微笑みながら

 

「例え・・どんな強力なネクロ達が出て来ても大丈夫です・・貴方が私を護ってくれたように・・今度は私が貴方を護る・・その為の力は手にしたつもりです・・だから私を頼ってください」

 

穏やかに微笑むなのはの顔はとても美しく・・一瞬呼吸する事を忘れた・・なのはは私のその様子に気付いたのか悪戯っぽく微笑みながら

 

「どうしたんですか?顔が真っ赤ですよ・・」

 

くすくすと笑うなのはに私は慌てて腕を引き抜き

 

「なのは・・お前も仕事があるだろう?早く戻ると良い・・」

 

このままでは不味い・・何か判らないが・・間違いを犯してしまうかも知れない・・だからその前になのはを部屋から追い出し、椅子に深く腰掛け

 

「ふう・・危うくなのはの信頼を裏切る所だった・・」

 

私はそう呟き、送られて来た書類に目を通す・・殆どはネクロに対する報告書だった・・だが最後の1枚だけは違い

 

「ん?合同演習について・・なるほどゲンヤさんの所から、ギンガと何人かの魔道師が来るのか・・」

 

その書類に判子を押し、そのままはやてのPCに転送し、私は息を大きく吐き出しながら、紅茶を口に含んだ・・

 

 

 

「んふふ・・やっぱり少しは意識してくれてるのかな?」

 

私は龍也さんの部屋の前から離れながらそう呟いていた・・さっきの龍也さんは明らかに私を意識していた・・それだけでも少しは収穫があった・・以前ならポーカーフェイスを貫いていた龍也さんだが、最近はアプローチを掛けると多少は反応が返って来る・・告白したのが良かったのかもしれない・・

 

「この反応で判ったね・・龍也さんは私も意識してくれてる・・はやてちゃんやヴィータちゃんだけじゃない・・これが判れば・・」

 

今日私がやった事には意味がある・・龍也さんが私を女として意識してくれているのか?それを確認する為だったのだ・・

 

「これを教えに行ってあげないとね」

 

私は口笛を吹きながらフェイトちゃんの部屋に向け、歩き出した

 

「・・ん・・なのは?・・どうしたの?」

 

フェイトちゃんは昨日夜勤だったから・・この時間では寝ていただろう・・だが一刻も早く教える必要があったのだ・・

 

「ごめんね、フェイトちゃん・・寝てた所悪いけど・・ちょっと部屋に入れてくれる?」

 

そう尋ねるとフェイトちゃんは目を擦りながら、私を部屋に招きいれてくれた

 

「・・はふう・・それで何のよう?」

 

眠そうなフェイトちゃんに

 

「さっきね・・ちょっと龍也さんにアプローチを掛けてみたの・・と言ってもそんなに過激なのじゃなくて・・腕を抱き抱えた位なんだけどね・・」

 

そう言うと眠そうなフェイトちゃんは一気に覚醒したのか・・

 

「私を挑発しに来たの?」

 

嫉妬の色を目に浮かべるフェイトちゃんに

 

「違うよ・・私がここに来たのは・・龍也さんが少なからず私の事を、女として意識してくれたって事を教える為・・きっとこれは私だけじゃなくて・・フェイトちゃんも同じ・・言いたい事・・判るでしょう?」

 

そう尋ねるとフェイトちゃんは

 

「前に話した同盟の事だね・・でもあの時はなのは嫌だって言わなかったっけ?」

 

そうあの時は嫌だった・・でも今は違う

 

「うん・・あの時は嫌だった・・でもそんなこと言ってる余裕が無くなったの・・このままじゃ・・私達は失恋するだけ・・ならそうなる前に手を打つのが大事」

 

ライバルはかなり増え・・このままでは出遅れるばかり・・こうなったら子供じみた独占欲は捨てて・・どんな手を使っても龍也さんを物にする方が重要だと思ったのだ・・私が言いたい事を理解したのかフェイトちゃんは

 

「私は協力しても良い・・私は龍也の恋人に成りたい・・1人で無理なら2人で良い・・例えそれが2番目であっても・・私は構わない・・それはなのはも同じ?」

 

そう言って手を差し出してくる・・私は微笑みながら

 

「勿論・・私はそれでも構わないよ・・でもそれは私とフェイトちゃんだけに限っての事・・スバルやティアナ・・チンクさん達に・・はやてちゃん達じゃ嫌だ・・」

 

そう言って手を握り返すとフェイトちゃんは

 

「ふふ・・そうだね・・私もそう思うよ・・良いよ・・これから2人で頑張ろう・・龍也を私達の物にする為に」

 

ここに私とフェイトちゃんの協力体制が完成した・・その頃龍也は

 

「ブルッ!!・・なんだ風邪か・・?」

 

強烈な悪寒を感じ頭を抱えるとヴィヴィオが

 

「パパ・・調子悪いの?・・大丈夫?」

 

小首を傾げるヴィヴィオの頭を撫でながら

 

「大丈夫だよ、ヴィヴィオ」

 

全然大丈夫ではないのに、大丈夫と言いながら微笑んでいたりする

 

 

 

龍也の包囲網が狭まった頃・・天雷の遺跡の外に広がる無数のテントの中では・・

 

「ふむ・・結合率89.8パーセント・・ギガスティックランスとライオンハートの調整も大分済んだな・・」

 

私はテントの中でギガスティックランスとライオンハートの調整を行っていた・・近いうちジオガディス達との決戦が起こるであろう・・その為には戦力は多い方が良い

 

「ふーしかしカオスが完成してもな・・プロテクトが解けないしな・・」

 

遺跡の最深部のプロテクトはまだ解除出来ていない・・複雑すぎて時間が掛かるのだ・・

 

「解析を始めてもう一週間になる・・予想ではそろそろ解除出来る筈なんだがな・・」

 

私がブツブツと呟きながらコーヒーを啜っていると、テントに

 

「ドクターッ!!」

 

ウーノが慌てて飛び込んでくる、私は飲んでいたコーヒーを吐き出しそうになったが、ギリギリで我慢する事が出来たが・・その代り咽こんでしまった

 

「ごほっ!ごほっ!!・・どうしたんだウーノ・・そんなに慌てて」

 

咳き込みながら尋ねるとウーノは

 

「はぁ・・はぁ・・遺跡の最深部のプロテクトが解除できました・・早く・・遺跡へ」

 

ウーノのその言葉を聞き、直ぐに準備を整え

 

「良し・・行くぞ・・」

 

護身用のギガスティックランスを指に嵌め、私とウーノは遺跡の奥へと潜っていった・・私達が向かうのは魔獣についての伝承が刻まれていた場所から更に奥・・地底深くの1室だ・・その部屋の前には2体の石像がありそれが強固なプロテクトを発生させているのだ・・私は速足で遺跡の中を歩きながら

 

「しかしウーノがプロテクトを解除するとはな・・大分腕を上げたんじゃないのか?」

 

笑いながら言うとウーノは首を横に振り

 

「いえ、私が解除したのではなく何時もの様に解除しようとしていた時、突然石像の目が光ってプロテクトが解除されたんです」

 

私はウーノの話を聞きながら1つの仮説を立てた、この部屋のプロテクトは時間と共に解除される仕掛けだったのではと・・それなら強固なプロテクトにも納得が行く・・様はタイムカプセルの様な物だったと思えば良いのだ・・そんな事を考えてる内に私とウーノは遺跡の最深部へと到達していた・・私はその部屋の前に立ちゆっくりと扉に手を掛けた

 

ギギギッ・・

 

古めかしい音を立てて開く扉の中に私は足を踏み入れた

 

「・・ここは・・何だ?」

 

その部屋は不思議な感じのする部屋だった・・他の部屋とは明らかに違う雰囲気だった・・無数の古代文字に・・青いクリスタルが部屋の真ん中に安置されていた・・私は一番近くの石碑を見て

 

「これは・・やはり魔獣の伝承・・」

 

その石碑には案の定、魔獣の伝承が刻まれていた・・

 

「・・魔獣の身体はある王の体内に封印され・・精神は書物の中に封印された・・彼は・・体内に魔獣を封印した影響か・・体組織が人間と魔獣の中間の地点に変化してしまった・・彼はその事を知り・・1人・・聖王の元を去った・・こんな人間が居たのか・・まるで龍也の様だ・・」

 

私はその古代文字を解析しながらそう呟いた・・自分の体に魔獣を封印するなど並みの精神力で出来る事ではない・・私はその王に龍也に似た印象を受けながら、別の石碑の解析を始めた・・そこには

 

「私は争いを止める為・・禁忌の丘に安置されていた・・生物の遺伝子を使い・・合成獣を作り上げた・・こいつはあらゆる魔力を吸収し、自分の物にする能力を持っていた・・」

 

それは前に見た科学者の手記だった・・私はそれの解読を夢中で始めた・・この人物の手記こそが全ての謎を解く・・手掛かりになると確信したからだった・・

 

「魔獣・・何時までも魔獣というのはおかしいな・・私は魔獣にヴェルガディオスと言う名をつけた・・ジオガディスに似た名だな・・何か関連性があるのだろうか・・」

 

私はヴェルガディオスとジオガディスの関係について考えながら・・解析を始めたが・・その石碑の古代文字は大きく破損しており・・解読にはとても時間が掛かると思った・・だが私は解読する事を諦めず・・解読を続けた

 

「ドクター・・そろそろ夕食の時間です・・1回戻りましょう?」

 

1回外に戻ろうと言うウーノに

 

「ウーノ・・すまないが・・暫くこの古代文字の解読を進めたい・・悪いが・・おにぎりかサンドイッチを持って来てくれないか?」

 

そう言うとウーノは眉を顰めながらも頷き・・1回遺跡の外へと向かって行った・・

 

「ふー中々上手く行かないな・・」

 

破損が酷く中々解読が進まず・・私が天井を見上げると

 

キラリッ!!

 

部屋の真ん中のクリスタルが淡い光を放つ・・私は

 

「何だ?」

 

どうしてもそのクリスタルが放つ光が気になり、それに触れた瞬間

 

「う・・うわあああああっ!!!」

 

凄まじい光の本流に呑まれ・・私の意識は深い闇へと沈んでいった・・

 

 

第102話に続く

 


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