夜天の守護者   作:混沌の魔法使い

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第111話

 

 

111話

 

「・・最近八神の奴・・私を蔑ろにしてないか?」

 

私は八神とスバル達の訓練を見ながらそう呟いた・・私達は確かに八神に昔から訓練を受けていたから、スバル達よりかは能力は高いだろう・・だが

 

「構って貰えないのは・・寂しいな・・」

 

自分でも上手く説明できないが・・酷く寂しい・・子供じみた感情だが・・自分でもどうしようもない・・いやこれは八神の所為だけではなく

 

「ノーヴェとか・・セッテみたいに・・普通に話を出来れば良いんだがなぁ・・」

 

私は上がり性で八神と2人きりで恥かしいのと緊張して禄に話せない・・それもきっと原因の1つだ・・だが・・

 

「私も悪いと思うが・・八神の方が悪い・・そうに決まっている・・」

 

自分の部隊に呼んでおいて構ってくれない八神が悪い・・そう考えてると

 

「チンク・・?頭を抱えてどうした?気分でも悪いのか?」

 

訓練が終ったのだろう・・私を見つけてそう尋ねてくる八神に

 

「ああ・・気分など悪くない!!・・」

 

私はそう言うと八神に背を向けて走り出し・・自分の部屋に戻ったが・・私は直ぐに自己嫌悪に陥ってしまった

 

「うう・・どうして・・私はこうなんだ・・自分が嫌になる・・」

 

戦闘中とかなら平気なのだが・・日常生活ではまるで駄目で・・八神の目を見て話すことも出来ないし・・さっきのような行動に出てしまう私が嫌だ・・私が自分のベッドの上で膝を抱えていると

 

「うー痛たたた・・ティアナはもう少し手加減と言うのを覚えて欲しいっす・・」

 

リビングの方から、ウェンディのぼやく声が聞こえる・・

 

「また・・ティアナとの模擬戦で怪我をしたのか・・見てやるか・・」

 

私はそう呟き自分の部屋を後にした・・リビングでは案の定ウェンディが救急箱から、傷テープや消毒液を出して、自分の怪我の応急処置をしていた・・私が近付くとウェンディは

 

「あれ?チンク姉っすか?・・どうしたんすか?」

 

首を傾げながら尋ねて来るウェンディに

 

「何・・お前が怪我をしているようだから、姉が見てやろうと思ったのだ」

 

・・身長や胸では圧倒的に負けているが・・一応姉としてのプライドもある・・だからそう言うと

 

「いやー嬉しいっす・・クア姉は見てくれないっすからね~チンク姉が居て良かったすよ~」

 

嬉しそうに笑うウェンディの右腕を見る・・深い傷とかは無いが・・擦り傷が大分ある・・私が傷に消毒液を掛けてから傷テープを張ってやると

 

「えへへ・・ありがとうっす・・」

 

にこにこと嬉しそうに笑うウェンディだったが・・私の目を見て

 

「チンク姉・・龍也兄の事で悩んでたっすか?」

 

そう言うウェンディに

 

「・・うむ・・まぁ・・そうだな・・」

 

赤面しながら頷くとウェンディは

 

「また目を見て話せなかった・・とか・心配してくれてるのに逃げちゃった・・「うっ・・」・・図星っすか・・」

 

私の行動を言い当てるウェンディに私が言葉に詰まってると、ウェンディは大きく伸びをしながら

 

「チンク姉は上がり性っすからね~それを言えば・・私も子供っぽいっすけど・・」

 

そう苦笑するウェンディ・・私はウェンディの悩みを知っている・・ウェンディは1番早く八神の本質に気付き・・黒騎士の時から・・良く懐いていた・・八神に直ぐに抱きついたりするのは、好きであるのと同時に本当の兄の様にウェンディが八神を慕っているからだ・・しかし甘えん坊と言う性格の所為で、子ども扱いされている・・その事が悩みなのだ

 

「うむ・・そうだな・・姉とお前には決定的な欠点がある・・だがお前の悩みは考えようによってはプラスじゃないか」

 

八神は子供好きだし・・考えようによってはプラスだろう?と訪ねると、ウェンディは頬を膨らませ

 

「うー確かにプラスっすけど・・子ども扱いはいやっす・・」

 

そう言うウェンディは思い出したように

 

「そうっす!お父さんが困った時に飲みなさいって言って渡してくれた、薬があるッす!!」

 

そう言うと部屋に戻って行ったウェンディは、直ぐに水色の瓶に入った液体を持って来た

 

「これを飲めば・・悩みが何とかなるって・・お父さんが言ってたっす・・チンク姉・・飲んでみるっすか?・・」

 

そう言うウェンディに

 

「父さんの事だから・・何か裏があるかもしれない・・でも・・飲んでみるか・・」

 

何か裏があるかもしれないが・・悩みが解決すると言うなら・・飲んでみようと思い・・ウェンディが持って来た薬を半分に別け飲んだ・・

 

「「特に変化は無いが・・・!!うぐっ・・・」」

 

特に変化が無いと呟いた瞬間・・強烈な胸の痛みを感じ蹲り・・私達は意識を失った・・

 

「ううん・・あれ・・私は・・・!!」

 

私が目を覚ますと同時に驚いた・・それと同時に立ち上がり鏡を見る

 

「・・これが・・私か・・」

 

私が気にしていた、背や胸が大きくなっていた・・フェイトほどではないが・・なのはよりかは良いプロモーションだ・・私が鏡を見ながら自身の変化に驚いてると

 

「チンク姉・・私はどこか変わりましたか?」

 

そう尋ねて来る、ウェンディに違和感を感じた、容姿は特に変化してないが・・何か違和感が・・私が首を傾げてると

 

「うう・・私はどこも変化してないんですね・・お父さんの薬は私には効果が無かったんですね・・」

 

違和感の正体が判った・・私はウェンディに

 

「ウェンディ・・喋り方が変わってるぞ・・何か・・ディード見たいな感じだ」

 

そう言うとウェンディは驚いた表情で

 

「変化ってこれだけですか・・?・・これで龍也兄に子ども扱いされなくなりますか?」

 

そう尋ねて来るウェンディに違和感を感じながら

 

「知らん・・確かめに行って見るか?」

 

どれくらい変化してるのかも判らないし・・八神の所に行くか?と尋ねると

 

「えっ!?・・・うー・・うん・・行ってみます・・」

 

・・・これは本当にウェンディか?・・まるで私の様ではないか・・私はそんな事を考えながら八神の部屋に向かった

 

 

 

「ふむ・・やはり皆上達してるな・・」

 

私は皆の能力を纏めたグラフを見ながらそう呟いた・・スバルとかエリオ・・それにティアナは私がここに入った頃と比べると大幅に能力が上昇しているし・・なのはやフェイト、シグナムにヴィータも凄まじく強くなっている・・今試験を受ければSS+に楽に合格できるだろう・・だが私はある一点で頭を抱えた

 

「はやてがオーバーS・・しかも私と同じSSS+・・何があったんだ・・一体・・」

 

はやての能力が大幅に上昇しすぎている・・やはりフォールダウンモードの影響なのだろうか・・そもそも堕天を意味するフォールダウンの名を冠するはやての新形態は、精神的にも肉体的にも何か影響があるのかもしれない・・

 

「まぁ・・大丈夫だろう・・凶暴化するとかじゃないし・・」

 

龍也は知らない・・フォールダウンの影響ではやてのヤンデレ度が凄まじく上昇している事に・・私が書類を片付けると同時に

 

コンコン・・

 

ノックの音がする・・私は首を傾げながら

 

「はて・・?誰だろうか・・訓練が終ったばかりだから・・なのはとかじゃないよな・・?」

 

訓練が終ったばかりだから、皆書類整理をしているはず・・では誰だろう?・・私はそんな事を考えながら扉を開き停止した

 

「八神・・今良いか?」

 

「・・少し・・話を・・したいのですが・・駄目でしょうか・・」

 

目の前に居る美女は・・私の事を八神と呼ぶ点からチンクだろう・・だがその容姿は先程あった姿と全く違っていた・・背が大分伸び・・それに合わせて胸や腰回りがより女性らしくなっていた・・更にその後ろに居るのはウェンディだろうが・・何か何時もと違う・・赤面し自分のスカートを握り締めながらもじもじしている姿はディードの物に良く似ていた・・私が2人の変化に驚き停止していると・・チンクが

 

「今・・忙しいのか?・・それとも私達と話すのに割く時間が惜しいか?・・それならそうと言ってくれ」

 

何時もと違い私の目を見て言うチンクに正気に戻り

 

「ああ・・すまない・・いや別に暇だから・・話しくらい聞くさ・・入ってくれ」

 

私は2人を部屋に招きいれた・・私は2人に紅茶を入れたカップを渡しながら

 

「あーまず聞きたいんだが・・チンクは何故大きくなってる?・・成長期か?・・それとウェンディは・・何故性格が180度変わってる?・・教えてくれないか?」

 

そう尋ねるとチンクは紅茶を飲みながら

 

「父さんが作っておいてくれた薬を飲んだ、そしたら身体が大きくなった・・ウェンディは性格が変わった」

 

そう言うチンクを見ながら、その隣の腰掛けているウェンディを見ると

 

「///そんなにじっと見ないで下さい・・恥かしいです///」

 

赤面しながら言うウェンディに

 

「そ・・そうか・・すまない・・」

 

何か調子が狂う・・ウェンディは元気で甘えん坊という印象なのだが・・今目の前に居るウェンディは小動物の様でとても可愛らしかった・・私がそんな事を考えているとチンクが

 

「ウェンディとばかり話をしてないで、私の話も聞いてくれ」

 

少し不機嫌そうなチンクに

 

「判った」

 

そう言ってチンクの方を見ると、チンクは真剣な表情で

 

「八神・・私は教導官になれると思うか?」

 

そう尋ねて来るチンクに

 

「教導官?・・急にどうしたんだ」

 

教導官の事など一言も言ってなかったチンクが急にそう尋ねてきたので尋ね返すと

 

「前に言っていただろう?・・八神は教導官としても活動するのだろう?」

 

そう前にレジアスから教導官として働いてくれないか?と頼まれたのだ・・何でも私の訓練を希望する新人の魔道師が多いそうなのだ・・だから教導官として働いてくれと言われ・・了承したが・・どうしてチンクが知ってるんだろうか・・私がそんな事を考えてると

 

「なのはが嬉しそうに言っていた、八神が私と同じ教導官になると・・それでどうなんだ・・私は教導官になれるのか?・・」

 

そう尋ねて来るチンクに

 

「私は大丈夫だと思うぞ?・・チンクは市街戦とか得意だし・・隠密行動も得意だろ・・それに指揮官としての能力も高いし・・教導官になるなら試験にさえ合格すれば良いと思うぞ?」

 

そう言うとチンクは嬉しそうに微笑み

 

「そうか・・では明日にでも本局に行って資料を取ってこよう」

 

そう笑うチンクを見てるとウェンディが

 

「龍也兄・・龍也兄は・・私達の事が嫌いなの?」

 

若干涙目で尋ねて来るウェンディに

 

「いや・・嫌いではないが・・どうして急にそんな事を言うんだ?」

 

そう尋ねるとウェンディは下を向きながら

 

「龍也兄は・・スバルとかティアナばっかり・・訓練を見て・・なのは達ばっかりと遊びに行く・・私達とはあんまり訓練してくれないし・・遊びにも行ってくれない・・だからそう思ったんです・・」

 

そう言われて私は言葉に詰まった・・確かにウェンディの言うとおりだと思った・・私は知らず知らずの内にウェンディ達を傷つけていたのかもしれない・・私が言葉に詰まってるとチンクが

 

「そうだ・・それは私も感じていた・・どうなんだ・・やはり八神は私達の事は嫌いなのか・・だから訓練も見てくれないし遊びにも連れてってくれないのか?」

 

詰め寄りながら言うチンクとウェンディに

 

「すまない・・私は知らない内にチンク達を傷つけてたんだな・・本当にすまない・・言い訳かもしれんが・・私はお前達が嫌いじゃない・・それだけは判って欲しい」

 

私がそう言うとウェンディは

 

「じゃあ・・龍也兄は私達が嫌いじゃないんですね?」

 

そう尋ねて来るウェンディに頷くとチンクは

 

「・・判った・・だが言葉だけでは信用出来ない・・行動で見せて欲しいのだが?」

 

真剣な表情で言うチンクに

 

「明日・・休暇だろう・・その時・・チンク達と遊びに行く・・それだけでは駄目か?」

 

明日は休暇になっている、だから明日遊びに行こうというとチンクは

 

「・・そうだな・・ふむ・・妥当な所か・・良いだろうでは約束だ、明日本当に私達を遊び連れてってくれるんだな?」

 

確認と言いたげに再度尋ねて来るチンクに

 

「約束する・・絶対だ」

 

チンクの目を見て言うと、チンクはゆっくりと頷き

 

「良いだろう・・八神は嘘は言わないからな」

 

そう言って座り込むチンクに一安心してると、ウェンディが

 

「龍也兄が私達を嫌いじゃないと判って安心しました」

 

にっこりと微笑むウェンディを見て居るとチンクが眠そうに欠伸をする

 

「眠いのか?」

 

そう尋ねるとチンクは目を擦りながら

 

「判らん・・急に・・眠く・・なっ・・」

 

最後まで言い終える事無くチンクはソファーに倒れこみ、眠りに落ちた・・その隣では同じ様にウェンディも眠っていた・・私は2人の髪を撫でながら

 

「すまないな・・本当に・・」

 

今思えば、私はチンク達を呼んでおいて・・訓練も見てやらなかったし・・遊びに行く事もなかった・・それがどれほどチンク達を傷つけていたのだろう・・今日2人に言われなかったら私は何時まで経っても気付かなかっただろう・・

 

「悪かったな・・チンク、ウェンディ・・」

 

寝ている2人が風邪をひいてはいけないと思い、自分が使っている毛布を持って来て2人に掛けてから

 

「良い夢を・・」

 

寝ている2人の額に軽く触れるだけのキスをして、私は椅子に座り込み本を開いたのだが・・

 

「昨日のティアナにしても、チンクとウェンディにしても・・もう少し危機感を持って欲しいな・・男の部屋で無防備に寝るか・・普通・・」

 

ソファーの上で寝ているチンク達を見て、私は大きく溜め息を吐いた・・結局寝ている2人が気になり本の内容は殆ど頭には入ってこなかった事をここに記す

 

 

 

 

 

「う・・うん・・?ここは・・」

 

私が目覚めると八神の姿は居間には無かった・・どこに居るのだろう?と考えていると気付く

 

「元に戻ってる・・」

 

元の姿に戻ってる事に落胆してると、ウェンディが起き出し

 

「あ・・チンク姉・・おはようっす」

 

にこ~と笑いながら言うウェンディに

 

「どうやらあの薬の効果はあんまり長くないようだな・・」

 

そう言うとウェンディは

 

「何でも試作品の薬だそうっすから・・あんまり持続力がなかったみたいっすね・・」

 

2人でそんな事を話してると

 

「起きたのか・・丁度良かった」

 

八神がお盆に料理を載せてやって来る、八神はそれを机の上に並べながら

 

「夕食を作ったんだ良かったら一緒に食べないか?」

 

そう笑いながら言う八神にウェンディが

 

「食べるッす!!龍也兄のご飯美味しいっすから!」

 

笑顔でソファーから起き上がり言うウェンディを見ながら八神は

 

「今日は和風でな・・ぶりの煮付けにしじみの味噌汁に茶碗蒸しを作ったんだ・・ウェンディは茶碗蒸しが好きだったろ?」

 

そう笑う八神を見ながら椅子に座り

 

「ぶりの煮付け・・私の好きな料理だ・・」

 

八神はちゃんと自分達の好きな料理を覚えていてくれた・・それに少し感動していると八神とウェンディが椅子に座った

 

「「「頂きます」」」

 

手を合わせてから食事を始めた・・煮付けはちゃんと中まで味が染みてて美味しかったし・・茶碗蒸しも中に具が沢山入っていて美味しかった・・ウェンディは嬉しそうに食事を進め

 

「お代わりっす!」

 

茶碗を八神に向けて笑いながら言うと

 

「はいはい・・今よそって来るよ」

 

そう言って立ち上がる八神を見ていると、昔を思い出した・・姉妹全員と父さんと一緒に隠れて暮らしていた頃の事を・・あんまり出掛けたり出来なかったが、家族全員でいる時間はとても楽しかった・・そんな事を考えながら私は食事を進めた・・

 

「「「ご馳走様でした・・」」」

 

夕食を食べ終え、休憩していると八神が

 

「ノーヴェ達にはチンクとウェンディがここで夕食を食べる事を伝えておいたが・・あんまり遅いと心配すると思うから・・もう戻ると良い」

 

そう言う八神に頷き部屋から出て行こうとすると、八神が

 

「明日、遊びに行く事をノーヴェ達に伝えておけよ・・それじゃあお休み」

 

八神にお休みと言い返し私達は自分の部屋に戻った・・ベッドに横になりながら

 

「明日が楽しみだな・・ふわ・・あんなに寝たのにもう眠い・・」

 

明日天気だと良いなと考えながら、私は眠りに落ちた・・

 

 

第112話に続く

 

 


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