第112話
「ノーヴェ・・おかしくないか?」
私は隣のノーヴェに服がおかしくないかと尋ねると、ノーヴェは溜め息を吐きながら
「チンク姉・・それ10回目・・何回も言うけど・・どこもおかしくないから安心しろよ」
そう言うノーヴェに頷きながら鏡を見る・・いつも違い白のふわりとした印象の服を着てみた・・いつもと違う所為か・・どうも不安なのだ・・私は基本的に黒とか紺色の暗めの服を着ているからだ・・私がそんな事を考えてるとセッテが
「龍也様からデートのお誘い・・ああ・・なんて嬉しいのでしょうか・・」
八神に作って貰った服を着ながらうっとりしているセッテを見ながら
(もう手遅れか・・)
もう私も理解してしまった・・あれがセッテの通常なのだと・・なら何を言っても無駄だろうと考えてると
「いやー龍也兄と遊びに行くなんて随分久しぶりっすね~楽しみで楽しみでしょうがないっすよ~」
にこにこと笑うウェンディが部屋から出てくる、これで八神と遊びに行く面子は揃った・・私は椅子に腰掛け本を読んでるクアットロに
「本当にお前は良いのか?」
行かないと言っているクアットロに尋ねると、クアットロはいつもと同じ微笑を浮かべ
「はい、私は留守番してますから~八神兄様と楽しんできて下さいね~」
にこにこと笑うクアットロに頷き、私達は自分達の部屋を後にした・・
「・・うん?・・来たか」
私は歩いてくるチンク達を見ながら微笑んだ・・するとセッテが
「龍也様・・どうでしょうか?龍也様に作って貰った服を着たのですが・・似合っていますか?」
もじもじと言うセッテの頭を撫でながら
「良く似合ってるよ、セッテ」
そう言うとセッテは満面の笑みを浮かべながら
「ありがとうございます!!龍也様」
私がセッテと話してるとウェンディが私の手を引きながら
「龍也兄~早く行くっすよ~時間が惜しいっすから」
そう笑うウェンディに頷き、私達は六課を後にした・・街中を歩きながら
「・・チンク・・睨まれてる気がするのだが?」
何か鋭い視線を感じて隣を歩くチンクに尋ねると
「気にするな・・直ぐにそれも無くなる」
そう言うチンクに頷くと、徐々にだが睨まれてる様な気配が減っていった・・私はそれに安心しゆっくりと歩き出した・・さて龍也が感じた睨まれてる様な気配は当然街中に居る男からの嫉妬の眼差しであった、それは当然であろう美女、美少女を4人も引き連れて歩いている龍也に嫉妬をするのは当然である、では何故嫉妬の眼差しが消えたかというと
「ギロッ・・」
龍也を睨んでいる者を殺すぞと言いたげな目で睨むセッテの所為であったりする・・
「今日はどうするんだ?」
特に予定も考えて無かったのでウェンディに尋ねると
「買い物っす~所で龍也兄・・服とか・・買ってくれたりするっすか?「ウェンディ!!」・・無理なら良いっすよ?」
服を買ってくれと言ったと同時にチンクに怒鳴られ萎縮する、ウェンディに苦笑しながら
「別に良いぞ?・・好きな奴を買ってやろう」
そう言うとウェンディは嬉しいそうに
「それなら早く行くっすよ!」
私の手を握り歩き出すウェンディに苦笑してると
「ウェンディだけではなく・・私も見てください・・」
そう呟き左手を握り締めるセッテを見ていると
(こうして見ると普通の女の子だな・・)
チンク達は戦闘機人であり、純粋な人間ではない・・でもこうして笑っているチンク達を見ていると本当に普通の女の子に見えてくる・・私はそんな事を考えながら、セッテとウェンディの2人に手を引かれデパートの中に入って行った・・
「うーん・・私がこんなん着ても似合わないよな・・」
私は目の前のスカートとそれとセットのブラウスを見ながら呟いた・・これがディードとかセッテとかなら似合うのだろうが・・私が着ても似合わないだろう・・私の様な性格では・・そう思い溜め息を吐きながらその服の前から離れようとすると
「ノーヴェ、服は決まったのか?」
龍也が後ろから声を掛けてくる、私は
「いや・・まだだ・・ちょっと良いかな?と思った服はあるけど・・似合わないと思うから止めた」
そう言うと龍也は私が見ていた服を見ながら
「これか?・・似合うんじゃないか?・・試着してみたらどうだ?」
そう言ってその服を私に差し出してくる龍也に
「いいよ・・こんな男みたいな性格の奴が着ても似合わねぇよ・・」
そう言うと龍也は私の頭を撫でながら
「そんな事無いと思うぞ?・・ノーヴェは可愛いからきっと似合うさ」
!?可愛い?・・私が・・不意打ちの様に可愛いと言われ私が赤面してると、セッテが
「龍也様・・服・・ありがとうございました・・その服は・・ノーヴェにですか・・流石龍也様・・良い趣味をしてますね」
そう笑うセッテは私の背を押して
「ノーヴェ・・龍也様が選んでくださったのです・・これにすると良いですよ」
そう言って試着室に押し込む私が慌てて
「待てって!こんなの私が着ても似合わない!!」
そう言うとセッテは私の目を見て
「ノーヴェ・・少しは自分の容姿に自信を持つと良いですよ・・そんな男の物の服ではなく可愛いこういう服を着るんです」
そう言って試着室のカーテンを閉めるセッテ・・私は服を試着室の壁に掛け
「似合うのかな・・私なんかが着ても・・」
私が着てるのはジーンズとシャツだ・・色気も何も無い・・私は控えめな胸を見ながら
「スバルと私は似てんのにな・・胸はスバルの方が大きいんだよな~」
溜め息を吐きながら鏡を見る、髪の色と目付きは違うが私とスバルは良く似てる・・双子とまでは言わないが私とスバルは良く似てる・・私はスバルと比べて小さい胸を見ながら
「まぁ良いか・・胸が全部じゃないんだから・・」
龍也はそういうピンポイントで人を好きになる様な男ではない・・もしそうならシグナムとかフェイトと既に付き合ってるはずだ・・だがそうではないという事は、龍也はそう言う点を彼女にする点として重要視してないと判る
「やっぱあれだよ・・性格とかそう言うのが大事なんだよ・・うん」
自分に言い聞かせるように呟き服を着替え、姿見を見る
「・・似合ってるのかな・・」
膝より少し長いスカートに白のふわりとしたブラウスを着た自分を見ながら、首を傾げ
「龍也とセッテに聞けば良いか・・」
試着室の外で待ってる龍也とセッテに聞けば良いと思い試着室のカーテンを開けた
「龍也、セッテどうだ?」
2人に尋ねると龍也は
「良いじゃないか・・良く似合ってるぞ」
「・・良いですね・・並の男ならメロメロでしょう・・並の男なら・・ね」
素直に褒めてくれる龍也と、似合ってると言ってから隣の龍也を横目で見るセッテ・・セッテ・・そう言う風に行っても龍也は気付かないと思うぞ・・私達が落とそうとしてる男は難攻不落所の話ではないのだから・・私はそんな事を考えながら
「龍也・・私これにするよ・・着て帰れるよなここ」
確かここは買った服をそのまま着て帰れる筈だったと思い尋ねると
「ああ、帰れる筈だ・・そんなに気に入ったのか?」
笑いながら尋ねて来る龍也に頷いてると
「八神・・ノーヴェの服は決まったのか・・良いじゃないか・・ノーヴェ良く似合ってるぞ」
「良いっすね~普段からもっとお洒落すると良いっすよ」
笑いながら褒めてくれるチンク姉とウェンディに
「そうかな?・・うん・・判った・・今度からもうちょっとお洒落な服を探すようにするよ」
私が2人と話してるとセッテが
「龍也様、下の階でスイーツフェアをやってるそうです・・行きましょう」
そう言って龍也の手を引き歩いて行くセッテの後を追って私達も下の階に向かった・・
「美味しいっすね~」
私はイチゴのタルトを頬張りながら呟いた、甘さとサクサク感が実に良くマッチしていて美味しい・・ただ我侭を言えば龍也兄の作るタルトの方が美味しいが・・向かい側を見ると
「ふむ・・良い葉を使っている・・」
甘い物が苦手な龍也兄は紅茶とサンドイッチを摘んでいた、龍也兄の隣では
「うむ・・悪くないな」
イチゴのケーキを食べて微笑んでるチンク姉がいる、ジャンケンで席順を決めた為、龍也兄の隣はチンク姉とセッテ、向かい側は私とノーヴェになっている、一応皆軽く昼食を食べてからスイーツを食べている・・後で体重計が怖いが折角龍也兄と来ているんだ、そんな事を考えるのは無粋という物だろう・・私がそんな事を考えてるとノーヴェが
「えっと・・イチゴのロールケーキとイチゴのムースにイチゴタルト・・後は・・」
ウェイターに次々注文してるノーヴェに
「そんなに食べると太るっすよ?」
そう言うとノーヴェは私を見て
「大丈夫だ、これくらい太らねぇよ」
自信満々に言うノーヴェ、ノーヴェは元々太りにくい・・羨ましい限りだ・・私はそんな事を考えならタルトを口に運ぼうとして、それを止めた、私はフォークに刺さったタルトを龍也兄に向けて
「龍也兄・・あーんっす」
そう言うと龍也兄は少し困ったような表情をして
「ウェンディ・・私は甘い物が苦手なのだが?」
そう言う龍也兄に
「あーんっす・・」
無視してフォークを突きつけると龍也兄は観念したようで、私のフォークの先に刺さってるタルトを食べた
「えへへ~美味しいっすか?」
そう尋ねると龍也兄は
「甘い・・」
そう呟き紅茶を飲んでる龍也兄を見ながらタルトを自分の口に運ぶ
(えへへ~間接キスの成立っす~)
私がそう考え笑ってるとセッテが
「龍也様・・私のもどうぞ」
ロールケーキを差し出すセッテに
「嫌もういい・・「くすん・・私のは駄目なんですね・・」判った!食べる!食べるから!!」
涙目で言うセッテに負けてセッテのフォークからロールケーキを食べる、龍也兄を見ながら
(甘いっすね~セッテもやったらチンク姉とノーヴェもやるって言うに決まってるっす)
私がそんな事を考えてると案の定チンク姉とノーヴェが、自分の選んだデザートをフォークに刺してスタンバイしていた・・私はその光景を見ながら、デザートを再び口に運んだ・・間接キスをしたフォークを見ながら赤面した物の
(えへへ・・嬉しいから良いっすね~)
間接キスでもキスには間違いないと思い微笑みながらタルトを食べていた
今日はなんと素晴らしい一日だったのでしょう・・龍也様の腕を抱き抱えながら私はそんな事を考えていた・・服を買って貰い、尚且つ間接キスも出来た・・それが嬉しいと思っていると、道端の露天商が
「よう!兄ちゃん!!またまた別嬪さん引き連れて・・羨ましいね・・この」
笑いながら露天商が声を掛ける、龍也様はその露天商に
「貴方ですか・・それよりそう言う言い方は止めてくれません?」
そう言う龍也様に露天商はガハハと笑いながら
「気にすんなよ!!兄ちゃんみたいな良い男はそう言うもんさ!・・所で・・どうだい?・・何か買っていかないか?」
シルバーアクセサリーを指差しながら言う露天商に龍也様は
「そうですね・・折角だから買って行きますよ、ほら・・好きなのを選ぶといい・・どれでも買って上げるよ」
そう言う龍也様に頷き、私はシルバーアクセサリーを見る為にしゃがみ込んだ・・どれも感じが良く、あれもこれもと目移りしてしまう・・私は楽しく悩みながら1つのアクセサリーを手に取った
「龍也様・・私はこれが良いです」
太陽を模した様な形のペンダントを龍也様に手渡した、チンク姉様とウェンディとノーヴェもそれぞれブレスレットやペンダントを選び、龍也様に手渡す、龍也様はそれを受け取り露天商に
「それじゃあこれを貰います」
そう言うと露天商は
「はいはい■■■■■円ね」
高い・・私がその金額に驚いてると龍也様は財布からお札を2枚手渡し
「お釣りは良いですから・・それじゃあ行こうか?」
お釣りは良いと行って歩き出す龍也様の隣を歩るいてるとチンク姉様が
「八神・・良かったのか・・かなり値が張ったが?」
そう言われた龍也様はチンク姉様の頭を撫でながら
「気にしてるのか?・・はははそんな事気にしなくて良いさ」
そう笑う龍也様にノーヴェが
「でもよ・・服も買って貰ったし・・なんか悪いぜ・・」
龍也様はノーヴェの頭をわしゃわしゃと撫でながら
「気にするなと言っただろう?・・こういう時は男が払う物なんだからな」
そう笑う龍也様と六課の隊舎の前で別れ、自分達の部屋に戻った
「宝物が増えました・・」
私は自分の部屋・・龍也様の写真で元の壁が見えない壁を見ながら
「うふふ・・」
龍也様に作って貰った服にソルエッジとペンダントを枕元に置きながら、寝転び笑っていた・・
「今日は間接キスですが・・キスも出来ましたし・・最高の一日でした・・」
本当ならフォークごしで無く口移しでも良かったのだが・・そんな事をしたら嫌われるので止めて置いた・・私だけだったら多分そうしていたかもしれない・・そんな事を考えながら
「龍也様・・私は心から貴方を愛しています・・」
そう呟きながら眠りに落ちた・・夢でも龍也様に出会えると良いなと思いながら・・
第113に続く