第119話
「タイダル・・ウェーブッ!!」
スーガが拳を海面に叩き付ける、それと同時に轟音を立てながら津波が発生する
「くっ・・」
私は何とか最大スピードでその津波を回避したが
「∞キャノンッ!!!」
即座に砲撃を放ってくる
「プロテクションッ!!」
全力のプロテクションで防ぐ・・さっきからこのやり取りの繰り返しだ・・スーガと海・・この組み合わせは私にとって最悪の組み合わせだった・・スーガの嵐の様な攻撃を防ぎながら
「ハウリングランチャーッ!!!」
次の攻撃までの僅かな隙を突いて砲撃を放つが
「無駄ダ・・」
スーガの前に水の壁が発生してそれを防ぐ、そして
「喰らエッ!!!」
スーガが海面から突き出していた岩を砕き私目掛けて投げつけてくる、スーガの豪腕で投げられた岩はまるで砲弾の様に迫ってくる・・私はこんな攻撃をしてくるとは思っておらず
「っきゃああッ!!」
プロテクション越しにその岩の直撃を喰らい、頭から海に落ちていった・・私は海のそこに向かって沈んでいきながら
(不味い・・このままじゃ何にも出来ないで負ける・・)
スーガの防御を抜く手段を考える・・幸いな事にスーガは追撃に海の中に潜ってこない・・多分海の中では背中の∞キャノンは使えないのだろう・・かと言う私も生身である以上長時間海の中に潜ってなどいれない・・頭をフルに動かし・・どうすれば良いのかを考える・・そして
(初めて使うのが実践か・・失敗出来ないわね・・でも・・龍也さんが教えてくれた魔法・・使いこなしてみせる!!)
私は海の中で魔法の構築を始めた・・それから直ぐ私の周りに蝙蝠のようなビットが4つ浮かぶ・・本来なら12機出るのだが・・今の私では4機が限界だった・・
(行くわよ・・ここからが・・本当の勝負!!)
私は最大スピードで海の中から脱出して目の前のスーガにクロスミラージュを向ける・・それと同時に4機のビットがスーガを囲うように移動する
「何ダ?・・これハ?・・」
首を傾げるスーガにビットからの魔力弾が命中する・・私はスーガを見ながら
「行くわよ・・スーガ!!ここからが本当の勝負よ!!!」
私はそう言うとスーガに向かって行った・・
「「おおおおおッ!!!」」
お互いに雄叫びを上げながら拳を繰り出す、お互いの拳がぶつかり、その度に凄まじい轟音が辺りに響き渡る・・
「やるな・・スバル・・正直ここまでやるとは思ってなかったぞ」
好戦的な笑みを浮かべながら言うルキルメスに
「敵に褒められても・・あんまり嬉しくないよっ!!」
一瞬でルキルメスの懐を取りそのまま拳を繰り出すが・・
「ふん・・そう言うな・・俺は素直にお前の力を認めてるんだからな!」
ルキルメスは私の拳を軽く受け止めながらそう言うと、直ぐに拳を繰り出してくる
「くっ・・」
ガードした物の弾き飛ばされ嫌々距離を取らされてしまう・・私は直ぐにもう1度接近しようとするが
「喰らえッ!!プルートΣレーゲンッ!!」
ドリル回転を繰り返す漆黒の魔力弾を打ち込んでくる
「くっ!!」
極光を完全に足だけに集め駆け出す、移動先移動先に回り込むように降り注ぐ魔力弾
ズドンッ!!
宮殿の壁に螺旋状の穴が開く・・それと同時に・・私の影からルキルメスが飛び出し蹴りを放ってくる
「くっ!!」
腕で防御し反撃に拳を繰り出す・・
「ぬっ・・」
お互い超接近戦で拳を繰り出し合う・・
(前は押し負けてたのに・・今は・・私が押してる?・・)
前は押し負けていたのに・・今は私の方が深くルキルメスの懐を取っている・・その事が私に教えてくれる・・自分が強くなったという事を
「はあああっ!!」
ルキルメスが左腕の剣を振るってくる・・
(見えるっ!!)
かなりの速さのはずだったのに、ルキルメスの攻撃を私の目は確りと捉えていた・・私はルキルメスの攻撃をしゃがんで避け即座に
「極神撃・・・絶ッ!!!」
左腕に溜め込んでいた極光をゼロ距離で炸裂させる
ドォンッ!!!
砲撃を放ったような轟音が響き渡りそれと同時に
「がはぁっ・・」
ヒュンッ!!!
凄まじい勢いでルキルメスが吹っ飛んでいく・・追撃に走り出すが・・それより早くルキルメスが体制を立て直して私の後ろに着地する・・ルキルメスは私を見ながら
「良いぞ・・これでこそ・・戦う意味がある!!・・もっとだ!!見せてみろ!!お前の全力を!!」
そう言うと凄まじい速度で踏み込んでくるルキルメスの拳を捌きながら、時折隙を見て拳を繰り出す・・ルキルメスとスバルの戦いはまだ始まったばかりだ・・
「行けッ!!!ガンファミリヤ!!」
4機のビットを高速で動かしスーガの死角から魔力弾を打ち込むが
「メイル・・シュトルムッ!!!」
4本の竜巻でその魔力弾を掻き消し直ぐに
「∞キャノン!!」
背中の砲塔から砲撃を放ってくる・・即座に上空に逃げてその砲撃をかわす・・私はスーガから距離を取りながら
(下位といっても流石はLV4・・隙も何も無いわね・・)
事前のミーティングで知ったが、ライガ、ヒューガ、スーガの3将軍はLV4だが下位らしく、ダークマスターズに名を連ねていないが本来ならばルキルメスの配下ではなく自分がトップになれる存在らしい・・私がそんな事を考えながらどうするか考えているとスーガが
「戦闘中に考え事カ?・・随分と甘く見られた物ダナ!!」
スーガは背中の砲塔から出鱈目に砲撃を乱射してくる・・私は凄まじい速度で乱射される砲撃を回避しながら
(どうする?・・ハウリングランチャーじゃ・・あの防御は抜けない・・ガンファミリヤも通用しない・・どうすれば・・スーガを倒せる・・?)
必死で作戦を考える・・自分の持てる最大攻撃はハウリングランチャーかファントムブレイザーだがこの2つの威力は同じくらい・・唯違うのは、広域か一点集中化の違いだけだ・・それにファントムブレイザーの一点集中でもスーガの水のバリヤは抜けない・・それこそなのはさんか龍也さんクラスの砲撃で無ければあのバリヤは抜けない・・ではどうする?・・自分の攻撃ではあの水のバリヤは抜けない・・だがあのバリヤを抜かなければ自分に勝機は無い・・魔力も大分消費しているし・・持久戦になれば自分が負けるのは目に見えていた・・頭をフル回転させて作戦を考えている私の視界にキラリと光が差す・・それは
(龍也さんがくれたペンダント・・)
紫水晶のペンダントだった・・龍也さんにとっては唯のプレゼントだったかもしれない・・だが私にとっては長い間想い続けていた人物からのプレゼントであり・・それは特別な物だった・・私はそれを見た直後思い出した
(そうだ!・・私が龍也さんに教えて貰ったのはガンファミリヤだけじゃない・・まだ1つ残ってた・・でも・・私じゃ扱いきれないかもしれない・・)
龍也さんに教えて貰ったのはガンファミリヤともう1つ・・だがもう1つの方は制御が難しい上に・・訓練でも使った事が無かった・・ガンファミリヤと違い・・一発勝負で使えるような魔法ではない・・だが・・スーガのバリヤを抜けるのはそれしかない・・私はスーガの砲撃を回避しながら
(本当ならこんな博打みたいな事したくないけど・・やるしかないわね・・)
賭けるのは自分の命・・しかも失敗する率の方が高い・・でも私は出来ると思っていた・・龍也さんが信じてくれた・・それで良い・・失敗するわけが無い・・自分になら・・ううん・・自分とクロスミラージュなら出来ると・・
(クロスミラージュ・・最後の攻撃・・行くわよ・・)
手の中のクロスミラージュにそう言うとクロスミラージュは
『マスターになら出来ると信じています・・』
私はその返答に笑みを零しながら一気に上空に向かって飛んだ・・
「コンバットパターン・・α・・行けッ!!ガンファミリヤ!!!」
自分の周りを飛び交うガンファミリヤに指示を出す・・その直後ガンファミリヤの目が赤くり凄まじい速度でスーガに向かっていきながら魔力弾を乱射する・・私はクロスミラージュの手元のレバーを引いてモードの大出力砲モードに切り替え
「ハウリングランチャー・・シュートッ!!!」
全力で砲撃を放つ・・ガンファミリヤから打ち出される100発近い魔力弾とハウリングランチャー・・スーガはバリヤでは防ぎきれないと判断したのか
「メイル・・シュトルムッ!!!」
さっきは4本だった竜巻を2本にし自分の前に出現させ防ごうとする・・それを見た私は即座にガンファミリヤに新しい指示を出す
「コンバットパターン・・β!!」
今度はガンファミリヤの目が青く光り私の周りと言うかクロスミラージュの砲塔の上下左右に集まり、私の目の前にベルカでもミッドでもない複雑な魔法陣が展開される・・それは紛れも無く龍也さんの物・・私はそれを見て密かに笑みを零しながら詠唱に入る
「次元を破壊せし・・無限力よ・・我が手に集いて全てを撃ちぬけ・・・」
目の前の魔法陣に凄まじい魔力が収束していく・・それと同時に凄まじい脱力感が私を襲う・・
(こ・・こんなに魔力を持っていかれるなんて・・)
残っていた魔力をほぼ全て持って行かれ・・一瞬集中が途切れそうになるが・・必死で意識を集中させ
「アキシオン・・スマッシャー・・」
魔法陣全体が光り輝くと同時に私はクロスミラージュのトリガーを引きながら
「デッドエンドシュートッ!!!」
私の全ての魔力をつぎ込んだ砲撃を放った・・クロスミラージュと4機のガンファミリヤから放たれた砲撃は螺旋を描きながらスーガに迫る・・
「ナッ・・くっ・・∞キャノンッ!!!」
ハウリングランチャーと魔力弾を防ぐ為に発生させていたスーガが驚愕の声を上げる、私の攻撃を防ぐ為に竜巻を発生させた事がスーガにとっては-であり、私にとっては+になっていた・・慌てて背中の砲塔から砲撃を放つスーガだが直ぐに苦悶の声を上げる
「ウ・・ウグ・・押し負けル・・ッギャアアアアアッ!!!!」
アキシオンスマッシャーはスーガの∞キャノンを貫きそのままスーガの身体おも貫いた・・身体に風穴を開けられ断末魔の雄叫びを上げながら海に沈んでいくスーガを見ながら僅かに見える岩山に着地する・・それと同時に倒れこむ・・もう限界だった・・体力も魔力も・・私は空を見上げながら
「スバル・・私は勝ったわよ・・あんたも負けるんじゃ無いわよ・・」
もう後は私に出来る事は唯1つ・・自分の相棒であるスバルの勝利を信じるだけだった・・
「「おおおおおッ!!!」」
ズドドドドッ!!!
私とルキルメスの拳が何度も何度もぶつかり凄まじい音を立てる・・何度目かの力比べの後・・お互いに地面を蹴り距離を取る・・私は額の汗を拭いながらルキルメスを見る・・右腕の甲冑は罅割れ、左の甲冑はまだ原型を留めているがもうじき砕けるだろう・・だがそれは私も同じで、私の右腕の甲冑は細かい皹だらけでもう2、3撃も放てば使い物にならなくなるだろう・・左腕はもう使い物にならないだろう・・プロテクターは既に拳に残った僅かな物だけでほぼ生身に近い・・生身でルキルメスの強固な甲冑に打撃をするのは正気の沙汰ではない・・私がそんな事を考えているとルキルメスが
「はぁ・・はぁ・・お互い・・そう何度も拳を交える事は出来ないだろう・・この一撃で・・決めてくれる!!」
そう言うと凄まじい魔力を身に纏うルキルメス・・あの技は見覚えがあった・・それを見て私が構えを取るとルキルメスは獰猛な笑みを浮かべ
「行くぞ!!スバル!!ブルート・・ストライクッ!!!」
ルキルメスが漆黒の魔力を纏い突撃してくる
「ふっ!!!」
ルキルメスの拳を辛うじて受け流す・・それと同時に左腕の甲冑は粉々に砕けた・・砕け散る甲冑を見ながら
「おりゃああッ!!」
がら空きのルキルメスの腹に膝蹴りを叩き込む
「があッ!!」
身体がくの字に曲がったルキルメスから僅かに距離を取り
「これで・・決める!!」
極光を完全に足だけに集め、高速で移動してルキルメスの視界を撹乱しながら
「はああッ!!」
ヒットアンドアウェイで的確にルキルメスに蹴りを当て、ルキルメスの体力を削る・・だが
「こんな・・物で!!」
反撃に拳を繰り出してくる、それを紙一重で避け、一瞬の隙を突いてルキルメスの正面に立った、
「ぬっ・・があッ!!!」
驚いたルキルメスの顎を蹴りあげ、宙に浮かせる
「これで止めだッ!!!極神撃・・凶ッ!!」
残りの魔力全てを込めた絶を打ち込もうとした時
「そんな物が通用するかぁッ!!」
ルキルメスが雄叫びと共に体勢を立て直し、私の拳を素手で弾くとそのままの勢いで、ルキルメスの蹴りが腹にめり込む、それと同時に強制的に私の肺から酸素が吐き出される
「が・・かはッ・・」
私は凄まじい勢いで壁に向かって蹴り飛ばされ、そのままの勢いで背中から壁にぶつかった・・そのまま蹲り
「げほっ!!げほっ!!!」
咳き込むと同時に血が飛び出す・・内臓が幾つかやられたかもしれない・・私がそんな事を考えているとルキルメスが大分離れた所に着地し・・そのまま膝を付き
「はぁ・・はぁッ!!・・代償なき勝利は無いというが・・ここまで痛めつけられると思ってなかったぞ・・」
荒い呼吸を整えながら立ち上がったルキルメスの身体は皹だらけで今に消滅しそうだった・・それを見た私は
(こ・・こんな所で・・死ぬ訳には・・)
震える足に力を込め右腕を深く落し構えを取ると
「・・まだ戦うというのか・・その闘志・・見事・・せめてもの情けだ・・戦士として屠ってやろう」
同じ様に構えを取る、ルキルメス・・私はそれを見ながら
(どうする?・・魔力は殆ど限界・・多分もう真覇猛撃烈破は使えない・・どうする・・どうすれば勝てる)
自分の手持ちの技で最強なのは真覇猛撃烈破・・これは間違いが無い・・だが今の自分の魔力では使えない・・ではどうする?・・このままでは負ける・・そうれなれば・・仲間の・・いや・・龍也さんの所に帰れなくなる・・そんなのは嫌だ・・
(・・龍也さんに怒られるかもしれないけど・・これしかない・・)
身体を覆っていた魔力を完全に右腕だけに集める・・この状態でルキルメスの攻撃を受ければその時点でアウト・・私の負けだ
(捨て身・・じゃないけど・・もうこれしかない・・私には・・)
私はそんな事を考えながらルキルメスを見据えた、それを合図だと感じたのか
「行くぞ・・これで・・この戦いに決着をつける!!ブルートストライク!!」
全身に魔力を身に纏い突撃してくる・・私も自身に残る力をすべて振り絞り走り出した
「「おおおおっ!!!」」
ルキルメスの方がまだ体力余裕があったのか、私より早くルキルメスの神速の拳が私の顔目掛けて振るわれる
「くっ!!」
ブシュッ!!!
首を傾けその拳を避けるが・・ルキルメスの拳の風圧で頬が裂け、血が飛び散る・・だが
「ゼロ距離・・取った!!!」
ルキルメスと私の距離は限りなくゼロだ・・私はそのまま右拳を突き出し
「極神撃・・極ッ!!」
自分に残された魔力を全て衝撃に変え打ち込んだ・・
「が・・がああああああッ!!!」
ルキルメスの甲冑を完全に砕き私の拳をルキルメスの身体を貫いた・・
「はぁ・・はぁ・・勝った・・」
荒い呼吸を整えながら、ルキルメスの胴体から拳を引き抜くと同時に
ピキ・・ピキ・・ガッシャアアアアンンン!!!
クリスタルが砕け散る・・それと同時に3色の魔法陣が展開され、ティア達とルキルメス同様身体が消え始めている3将軍が姿を見せる、私が慌ててノーヴェ達に駆け寄ると、ノーヴェは胡坐をかきながら
「遅せえよ・・スバル・・何分またせんだよ」
憎まれ口を叩くノーヴェが私同様ボロボロで激戦だったのが一目で判った・・
「勝ったのね・・信じてたわよ・・スバル・・」
にっこりと微笑むティアを見ながら
「皆も勝ったんだ・・良かった・・」
私がそう呟くと同時に
「「「「キキ・・コロス・・コロス・・」」」」
無数のネクロ達が姿を見せる・・不味い・・今の状況ではあれだけの数のネクロを倒すのは無理だ・・自分が負けた時の為にルキルメスが用意していたのだろうか・・だが・・私の考えは間違っていた
「エレクーゲル!!」
「∞キャノン!!」
「コバルトサイクロン!!」
「ガイストアーベントッ!!」
ルキルメスと3将軍がボロボロの状態で立ち上がり、ネクロ達を吹き飛ばす
「はぁ・・はぁ・・何をしている!!早くここから逃げろ!!まだ来るぞ!!!」
そう怒鳴るルキルメス、ルキルメスの言葉は本当で次々とLV2、3が姿を見せる
「行くぞ・・ヒューガ・・」
「む・・無論だ・・」
ライガとヒューガが駆け出しネクロ達を押させる・・それを見たティアが
「どうして・・私達を助けるの?・・あれは貴方達を助けに来たんじゃ?」
ルキルメスは鼻を鳴らし
「助け?・・違う・・あれは俺達共々貴様らを殺す為にリベンジャーが送って来た奴らだろうよ・・だが・・あ・・安心しろ・・俺達が貴様をここから逃がして・・や・・る・・スーガッ!!」
「グオオ・・む・・∞キャノン!!」
スーガが壁を打ち抜き外まで続く道を作る
「行ケ・・もう・・長くは持たン・・急ゲ!!!」
そう言うとスーガはヒューガとライガの元に向かった・・ルキルメスは私を見て
「お前との勝負・・楽しかったぞ・・スバル・・出来れば・・こんな形で戦いたくは・・無かった・・行けッ!!!俺達がここを押さえてる間に!!!」
そう怒鳴るルキルメスに私は
「ど・・どうして・・助けてくれるの?」
スーガが空けた穴に向かいながら尋ねるとルキルメスは
「敗者が・・勝者に道を作るのは当然の事だ・・それに・・リベンジャー達のような者に・・お前達を殺させる訳にはいかん・・それだけだ・・」
そう言うとルキルメスは私達に背を向けて走り出した・・私がそれを見てるとゼストさんが
「行くぞ・・スバル・・」
行くぞと声を掛けて来る・・私はそれに頷き・・スーガの空けた穴から外に向かって走り出した・・スバル達が消えた後残されたルキルメス達は
「すまない・・俺は・・あいつに・・スバルに勝てなかった・・」
近付いてくるネクロを見ながら言うと、ライガ達は
「気にするな・・俺達も勝てなかった・・いや・・そもそも・・俺達が勝てる訳が無かった・・死者である俺達と・・今を生きる者・・戦う前から勝敗は決していたのかもしれない・・」
そう言うライガ達を見ながら
「そう・・かもな・・なら・・俺達がする事は・・俺達に勝ったスバル達を護る事だ!」
残り少ない魔力を全身に纏う・・ライガ達も同様だ・・俺達はネクロ達に向かって走り出し
「「「「ウォオオオオッ!!!」」」」」
全ての魔力を暴発させた・・それは300程いたLV3を全て消滅させた・・俺は薄れていく意識の中・・ある光景を見ていた・・それは・・俺だろうか・・人間の姿をした俺とライガ達が、青い鎧の騎士・・何処と無くヘルズに似ている者の下で戦っている光景だった・・俺はそれを見て即座に理解した
「俺の生きていた頃の記憶か・・死の狭間で見るとは・・くく・・面白い・・」
俺とライガ達はずっと・・一緒だった・・戦ってる時も・・生きてる時も・・そして・・死んだ後も・・俺は笑いながら
「俺達は・・これからも・・ずっと・・一緒だな?・・」
「ああ・・永遠にな・・」
「そうですね・・私達は・・魂で結ばれた・・兄弟・・ですから・・」
「俺も・・だ・・ずっと・・お前達と共に・・」
鎧が消え・・完全な人の姿で言うライガ達を見ながら
「そう・・だな・・ずっと・・共に・・い・・よ・・う・・な・・」
俺はそう言うと同時にこの世界から完全に消え去った・・
私達が外に出た直後・・
ズドーンッ!!!
宮殿の奥から何かが爆発する音が響き
カラン・・カラン・・
宮殿の奥からルキルメスの肩の甲冑の破片が飛んでくる・・それは私達の前で音も無く消え去った・・それを見たぜストさんは
「自爆する・・つもりだったのか・・」
そう呟くぜストさんを見ながら私とノーヴェとティアは仰向けで倒れこんだ・・限界だった・・魔力も体力も・・私は上空のパンデモ二ウムを見上げながら
(龍也さん・・私達は勝ちました・・龍也さんも負けないで下さい・・)
声にしたかったが・・もう声も出すことさえ辛く・・心の中で呟くのが限界だった・・私達が空を見上げてるとゼストさんが
「今、ゲンヤに連絡を取った・・もうじき迎えが来るだろう・・俺は行くウェンディ達が心配だからな・・」
そう言って走っていくぜストさんを見ながら私は隣のティアを見て
「ねぇ・・ティア・・龍也さんは勝てるよね?」
そう尋ねるとティアは笑いながら
「勝つに決まってるわよ・・あの人は・・最強の魔道師なんだから」
私はその言葉を聞きながらもう1度パンデモニウムを見上げ・・
(龍也さん・・勝ってくださいね・・信じてますから・・)
心の中でそう呟いた・・
第120話に続く
ルキルメス&3将軍の生前情報
ルキルメス
正体はカイエルの元で戦っていた騎士の1人、騎士でありながら剣ではなく拳で戦う点から「拳聖」と呼ばれる程の武人、高潔で正々堂々とした戦いを好んだ、襲撃事件の時に不意打ちで命を落し、魔王となったジオガディス、ヘルズによってネクロ化したが、生前の記憶が濃く残っており、直ぐに活動することが出来ず、パンデモニウム内で眠りについていた、ライガ、ヒューガ、スーガの3将軍は義兄弟の契りを交わした古くからの仲間であり、それはネクロ化した後も変わる事無く共にあり続けた・・そして最後に生前の記憶を思い出し安らかな表情で死に絶えた・・
ライガ、ヒューガ、スーガ
生前はルキルメスの義兄弟として共に生き、死後もそれは決して変わらず共にあり続けた・・生前の名は不明だが、現在同様、迅雷将などの呼び名で通っていた事から生前は名のある戦士だったのかもしれないが詳しいことは不明