夜天の守護者   作:混沌の魔法使い

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第121話

 

 

第121話

 

くく・・予定通りだ・・俺はモニターを見ながらそう呟いた・・俺の所に向かって来ている魔道師・・エースと死神・・俺の魔力反応で2人掛りで来たのだろうが・・好都合だ・・俺の能力を十分に扱う事が出来る・・だが

 

「敵を弱らせるのは戦いの基本・・ここまで来るまで魔力が持つかな?」

 

モニターにはデクス、LV3と戦う2人の姿がある・・2人とも既に報告にあった姿に変化している、俺はそれを見ながら

 

「凄まじいな・・だが・・魔力の減った状態で俺に勝てるかな?くく・・ははははっ!!!」

 

俺はモニターを見ながら魔道師が来るのを待っていた・・

 

 

 

「も・・もう居ない?」

 

隣で尋ねてくるなのはに

 

「うん・・大丈夫みたい・・もうネクロもデクスも居ないよ・・」

 

私はそう返事を返した、このエリアに足を踏み入れてからずっと私達を追い回して来ていたネクロ、デクスの集団はさっきのなのはののスターライトで完全に消滅したようで姿は無い・・私は瓦礫に背中を預けながら

 

「だいぶ・・消耗した?」

 

隣のなのはにそう尋ねると、なのはは笑いながら

 

「全然・・そりゃ少しは疲れたけど・・これくらいなら問題無いよ、エクストリームジハードだって1発しか撃ってないしね」

 

なのはの最強の切り札エクストリームジハードはなのはの魔力でも3発が限界という正真正銘の切り札・・私達の作戦では私がある程度ダークマスターズを弱らせ、なのはが倒すという感じだ、上手くいけば魔力を大分温存できる・・いざって言う時皆の援護に回れる・・私となのはで話し合って決めた事だ、敵はダークマスターズだけではないのだから・・

 

「なのは・・もう行ける?」

 

座り込んでいるなのはに尋ねると、なのはは直ぐに立ち上がり

 

「大丈夫、行けるよ」

 

私はその言葉に頷き、宮殿の中に足を踏み入れた・・長い通路の先には大きなフロアがあり、その中心に赤黒いクリスタルがある・・あれを壊せれば私達の勝ちなのだが・・そんな簡単な話ではない・・何故なら

 

「待っていたぞ・・魔道師・・俺はここの宮の支配者・・憤怒のバラガルト・・貴様らに死を与える者だ」

 

赤いローブに身を隠したネクロ、バラガルトが私達の前に立ち塞がった・・こいつは確か六課を襲ったネクロの1人で、ヴィヴィオを傷つけた奴だ、私となのはが睨みつけると、バラガルトは

 

「ふははは!!良いぞ!!!その憎悪、その殺気・・良い!!実に良い!!!なんと心地良い事か!!・・だが足りん・・もっとだ!!もっと憎しみの炎を燃やせ!!俺を殺して見せろ!!」

 

狂ったように笑うバラガルトは右腕を私となのはに向け

 

「燃え尽きろ!!ケイオスフレアッ!!!」

 

赤黒い炎を打ち出してきた、それは凄まじい勢いで私達に迫るが

 

「ウィンド・・ガーディアン!!」

 

マントを振るい風の防壁でその炎を弾き飛ばす、それと同時になのはが

 

「アクセル・・シューターッ!!!」

 

バラガルトの腕と目を狙ってアクセルシューターを放つ

 

「ふん・・こんな物・・」

 

サイドステップで回避したバラガルトの一瞬の隙を突いて

 

「はああッ!!」

 

フラッシュムーブで懐を取り切り掛る

 

ズバッ!!

 

私の魔力刃はバラガルトの体に深く傷をつける

 

「う・・うぐっ・・」

 

一瞬動きの鈍るバラガルトになのはが

 

「ディバイン・・・バスターッ!!!!」

 

砲撃を放ちバラガルトを吹っ飛ばす・・これが私となのはの新しい戦闘スタイル・・私がスピードで敵を翻弄してその隙になのはが砲撃の準備をする・・最も基本だが・・最も強力なスタイルだ・・私は目の前で動きの鈍るバラガルト目掛けて魔力刃を再び振り下ろした・・

 

 

 

強い・・本当に強いな・・俺は魔力弾を喰らいながらそんな事を考えていた・・死神とエースのコンビは本当に強い・・だが・・予想以上ではない・・俺の予測の範囲内だ

 

「エルン・・ストンウェルッ!!!」

 

凄まじい速さで迫ってくる魔力刃を左腕で受け止めるが

 

「う・・うぐっ・・」

 

完全に威力を殺しきれず後方に向かって弾き飛ばされる・・それと同時に

 

「アクセル・・シューターッ!!!」

 

クリスタルからマシンガンのような魔力弾が放たれ、俺を宙に打ち上げる

 

「こ・・この!!」

 

体勢を立て直そうとした直後背中に何かが当たる感触がする・・振り返るとそこには左腕に電気の球を持った死神の姿が、死神はそのまま左腕を俺に押し当て

 

「ライトニング・・フォース!!!」

 

魔法を発動させた

 

「う・・ウグオオオッ!!!」

 

俺は悲鳴と共に宮殿の床に叩きつけられた・・まだか・・まだ・・あの攻撃をしてこないのか・・?俺が床から体を起こした直後、眩いまでの魔力光が俺の視界に飛び込んでくる

 

「これでとどめ・・エクストリーム・・ジハードッ!!!」

 

凄まじい砲撃を俺に迫る・・俺はそれを見て笑いながら

 

「それを・・待っていたぞッ!!!・・っギャアアッ!!!」

 

直撃を喰らい吹っ飛ばされるが完全にその砲撃に呑まれる前に宙に逃れ、回避する・・俺はエースと死神を見ながら

 

「くっくっくっ・・漸くだ・・ようやく下準備が整った・・」

 

俺が笑いながら言うと死神が

 

「負け惜しみ?・・そんな体で何が出来ると言うの?」

 

そう言う死神に俺は

 

「こんな体じゃないと使えないんでね・・喰らえ・・これが俺が受けた痛みだ!!!インフェルノ・ペイン・フレイムッ!!!!」

 

俺は両腕を掲げ黒炎の球体を作り出し、死神とエース目掛けて投げつけた

 

「「プロテクション!!!」」

 

2人が同時にプロテクションを発動させ防ごうとするが

 

「そんな物で・・俺の憎悪が止められるかああッ!!!」

 

インフェルノ・ペイン・フレイムは敵への憎悪・・そして自分が受けたダメージは全て凝縮した、言わば怨みの炎・・防ぎきれる物ではない・・

 

「「ッ・・・きゃあああッ!!」」

 

インフェルノ・ペイン・フレイムを喰らい吹っ飛んでいく2人を見ながら、来ていたローブを脱ぐ・・ローブの下から異形の左腕が姿を見せる・・それだけではない・・獣そのものの醜い姿・・自分の本来の姿に戻り

 

「このまま・・捻りつぶしてくれる!!」

 

地面を蹴り吹っ飛んでいる2人に追いつき

 

「スラッシュネイルッ!!!」

 

異形の左腕で死神を切り裂き、そのままの勢いでエースの腹に

 

「ハンマーナックル!!」

 

右腕を叩きつける

 

「「ごほっ!!」」

 

地面に叩きつけられ体が跳ね上がるエースと死神に

 

「ふんっ!!!」

 

回し蹴りを叩き込み壁目掛けて蹴り飛ばす

 

「「か・・かはっ・・」」

 

背中から壁に突っ込み苦しむエースと死神に左腕を向け

 

「骨も残さず燃え尽きるが良い・・フレイムインフェルノッ!!!!」

 

鉄さえも燃やし尽くす俺の最強の炎を打ち込んだ・・

 

「「ッ!!!」」

 

回避も防御も間に合わず炎に呑まれるエースと死神・・炎から出てこないエースと死神・・どうやら死んだようだ・・俺はその炎を見ながら

 

「これで終わりだ・・人間如きが俺に勝てるなどと思い上がるからだ・・」

 

そう言い放ち王座に再び腰掛けようとした時

 

「スターライト・・ブレイカーッ!!!」

 

凄まじい桜色の砲撃が俺の背中を抉った・・俺は振り返り目を見開いた

 

「馬鹿な・・俺の炎に耐えれる訳が・・」

 

無傷とは言わないがまだちゃんと立っている2人にそう言うと死神は焼け焦げた自分のマントを見ながら

 

「忘れたの?・・風は私の味方なんだよ」

 

そうか・・風で俺の炎の威力を弱めたようだ・・だが・・

 

「風が味方だろうと・・誰が味方だろうと!貴様らは俺には勝てない!!絶望の中で死んでゆけ!!!」

 

俺は左腕を振りかざし、エースと死神に向かって行った・・

 

 

 

 

不味いね・・私はレイジングハートを杖代わりにして立ちながら向かってくるバラガルトを睨んだ・・さっきの炎・・あれは本当に危なかった・・ぎりぎりでプロテクションで私とフェイトちゃんを包み込んで、プロテクションの中にウィンドガーディアンを発生させて炎を防いだが・・実際の所ダメージは凄い・・立ってるのがやっとだ・・

 

「私の方がダメージが低いから・・私が行くよ」

 

ふらつきながら向かっていくフェイトちゃんだが

 

「遅いわ!!!」

 

バラガルトの豪腕がフェイトちゃんを捕らえる

 

「げ・・げほっ!!」

 

咳き込みながら吹っ飛んでいくフェイトちゃんを見たバラガルトが残虐そうな笑みを浮かべ

 

「なるほど・・立ってるがやっとだった訳か・・ふん・・面白い事を思いついたぞ」

 

両腕を掲げ頭上に炎の球体を作り出したバラガルトは

 

「スピットフレイム!!」

 

球体から小さな炎を打ち出し、私とフェイトちゃんを追い回す・・このまま行けばいずれ力尽き、最後にあの頭上の炎を投げつけられ私とフェイトちゃんは死んでしまうだろう・・私がどうすればこの状況を打破できるか考えていると、フェイトちゃんが念話で

 

(なのは!エクストリームジハードまだ撃てる?)

 

そう尋ねてくるフェイトちゃんに

 

(後一発なら・・ぎりぎり・・でも本来の威力は出ないよ?)

 

受けたダメージのせいで本来の威力は出ないと言うとフェイトちゃんは

 

(それで良いよ・・エクストリームジハードを私に撃ってくれる?)

 

その信じられない言葉に私が絶句してると

 

(エクストリームジハードの魔力を自分に上乗せして体当たりする・・それならバラガルトを倒せる)

 

その説明を聞いた私は慌てて

 

(無茶だよ!!そんなことしたら死んじゃうよ!!)

 

私が無茶だと言うとフェイトちゃんは

 

(死ぬ?・・私が・・?はは・・大丈夫だよ・・私は死なない・・龍也に無事に帰って来いって言われてるんだもん・・だから・・私は死なない!!!)

 

その言葉に私は

 

(判ったよ・・でも・・私も無茶するからね・・フェイトちゃんだけに負担は掛けさせないんだから)

 

そう言って笑うとフェイトちゃんは

 

(私は止めないよ・・言っても無駄だからね・・それじゃあ・・行くよ!!)

 

フェイトちゃんが地面を蹴ってバラガルトの上空に浮かぶ、私はフェイトちゃんの背中目掛け

 

「エクストリーム・・ジハードッ!!!」

 

残り少ない魔力をかき集めて砲撃を放った・・私の放った砲撃はフェイトちゃんの背中に当たる、それを見たバラガルトは

 

「ふはは!!仲間割れか・・愚かだな!!」

 

狂ったように笑うバラガルトだったが・・フェイトちゃんを見て

 

「ば・・馬鹿な・・何が起きてると言うのだ!!」

 

悲鳴にも似た声を出す、私の放った砲撃はフェイトちゃんの全身を包み込んでいた・・それはまるで龍の様な形になっていた・・私も驚いているとフェイトちゃんが

 

「アルフォースモードの最後の力・・他人の魔力を自分に上乗せして発動する・・オーバーライト・・これが・・私となのはの力だ!!」

 

魔力で出来た龍が羽ばたくそれと同時にフェイトちゃんは魔力刃をバラガルトに向け

 

「ドラゴン・・インパルスッ!!!」

 

凄まじい勢いでバラガルトに体当たりを仕掛けた

 

「ぬうう・・そんな物・・俺には無力だ!!インフェルノ・・「スターライトブレイカーッ!!!」・・ぬうう・・エース!!!」

 

バラガルトが炎を打ち出そうとした直後私が最後の力を振り絞ってはなった砲撃が、バラガルトの姿勢を崩す・・私はその場に倒れこみながら

 

「さ・・最後のスターライト・・フェイトちゃん後は任せたよ!!」

 

フォトンモードが解除され普通のバリアジャケットになる・・その直後

 

「ウグオオオオッ!!!!」

 

バラガルトの断末魔の声が宮殿の中に響き渡る・・それと同時にクリスタルに皹が走り砕け散る・・

 

「はぁ・・はぁ・・も・・もう限界・・」

 

私の前に倒れこむ、フェイトちゃん・・アルフォースモードは解除され私と同じようにバリアジャケット姿になっている・・私はフェイトちゃんに

 

「終わったね・・はぁ・・疲れたね・・」

 

そう言うとフェイトちゃんは

 

「そうだね・・魔力が残ってたら助けに行こうと思ったんだけど・・無理だね・・」

 

くすくすと笑うフェイトちゃんに

 

「フェイちゃん・・髪・・焦げちゃってるね・・」

 

フェイトちゃんの長い金髪が焦げてしまっていてそう言うと

 

「うーん・・また伸ばすよ・・龍也が可愛いって言ってくれた髪形だし・・」

 

フェイトちゃんが髪を伸ばしてる理由・・それは昔龍也さんに褒められたからで絶対に髪を短くしないとフェイトちゃんは決めているのだ・・私がそんな事を考えてるとフェイトちゃんが

 

「でも・・なのはの髪も焦げてるよ?・・それに髪留めが・・」

 

自分の髪を見る・・確かに焦げてしまっている・・まてよ・・こっちの髪は・・私は自分の髪を持ち上げ

 

「にゃああああ!!龍也さんに貰った髪留めがああああ!!!燃えてなくなってる!!!!」

 

昔龍也さんに貰った髪留めが燃えてなくなっている・・よく見るとほんの僅かだけ残っている髪留めになりの果てを見て絶叫すると、フェイトちゃんが

 

「また・・龍也に作って貰えば?」

 

「うう・・そうする・・」

 

ううう・・もっと早く気がつけば・・もう2、3発無理してでもスターライト打ち込んどけば良かった・・私がそんな事を考えてるとフェイトちゃんが

 

「ボロボロだけど・・死んでない・・龍也との約束は護れたね」

 

にっこりと微笑みながら言うフェイトちゃんに

 

「そうだね・・約束破ると龍也さんきっと怒るからね、良かったよ約束を護れて」

 

笑いながら返事を返し、そのまま昔話をしてると急におかしくなってきて、我慢できなくって2人で大声で笑いながら

 

「あはは・・よく考えれば・・私達って龍也の事ばかり考えてるよね」

 

「うん・・そうだね・・どうすれば好きになって貰えるとかね?」

 

あははと笑いながら空の上に見える、パンデモ二ウムを見ながら2人同時に

 

「「龍也さん(龍也)絶対に勝って帰ってきてくださいね!!!」」

 

ここからでは届かないだろうが、大声でそう言うと私とフェイトちゃんはパンデモ二ウムを見上げながら、救援要請を出し・・意識を失った・・

 

 

 

「何だここは?」

 

俺は何も無いくらい空間に立っていた・・昔の事を思い出そうとするが思い出せずそこに立っていると

 

ドスッ!!!

 

「が・・がはっ!!」

 

突然背後から剣が飛んできて俺を貫く・・俺が驚きながら振り返るとそこには黒い門のような物があり、そこから剣が伸びていた、門についた顔が淡々と

 

「汝・・大罪を犯した者・・汝に魂の休息など無い・・永遠に苦しみ・・懺悔せよ・・」

 

ずるずると門の中に引きずり込まれながら

 

「嫌だ!放せ!!俺は・・俺はアアアアアアッ!!!」

 

ゴーン・・

 

バラガルトを飲み込んだ門はゆっくりと閉じ・・音も無く消滅した・・

 

第122話に続く

 

生前情報

 

バラガルト

 

ジオガディスの居た時代の人間ではなく、クロノの父・・クライドが生きていた時代の人間で、広域次元犯罪者として管理局に追われていた魔道師、極めてレアな自分の受けた痛みを敵に反射するというネクロの時と同じ能力を持っており、それを利用して殺人を繰り返していたが、不意打ちで捕まり収監される前に、舌を噛み切り自殺した・・こういった犯罪者は強力なネクロになる事が多く、ヘルズによってネクロ化、生前の能力を持ったネクロへと変化し、その能力で魔道師を殺し続けてLV4まで進化した、フェイトに倒された後は生前に罪を犯していたネクロが落ちる世界に落ち、永遠の苦しみを受け続けている・・

 

 

 


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