第123
「くっく・・良いです・・予定通りですよ」
私はモニターを見ながら呟いた、モニターには
「獣王拳ッ!!」
科学者がこちらに向かって来ている・・私は笑みを浮かべながら
「ああ・・良いですね・・私の願いが叶いますね・・くっく・・早くここに来なさい・・ジェイル・スカリエッティ!!」
私はそう言うと外していたマスクを身に付けた・・くっく・・貴方は果たして自分の罪に耐えられますか・・?
「全く・・こいつらはいったい何なんだ?」
私は向かって来ていたネクロでもデクスでも無い、異形を切り裂きながら呟いた・・このエリアに着てから断続的に襲ってくるこの異形・・ネクロでもデクスでも無いこいつは一体?・・暫くその場で考え込むが
「・・考えるのは後だ・・今は私の成すべき事をするか・・」
私はそう呟き目の前の悪趣味な宮殿の中に足を踏み入れた・・
「ようこそ、ジェイル・スカリエッティ・・待っていましたよ」
赤いマントにマスク・・ヴェノムが大袈裟に頭を下げながら言う、私は腰の鞘に締まっていた男魂を抜き放ちながら
「話は良い、早く貴様を倒して娘を助けに行きたいのだよ」
私がそう言うとヴェノムは笑いながら
「くく・・ですが話は聞くべきですよ?・・ねぇ?・・魔道師さん」
ヴェノムが指を鳴らすと、1人の魔道師が姿を見せる・・怯える魔道師の首をヴェノムが掴み
「貴方に素晴らしい力を・・」
「やめ・・ああああッ!!!」
ヴェノムが魔道師の首筋に噛み付き、血を吸う
「なっ!」
私が驚いているとヴェノムは無造作に魔道師を投げ捨てる・・
「貴様・・何がしたい?」
血を吸って殺したヴェノムを睨むと、ヴェノムは
「直ぐにわかりますよ・・直ぐにね・・」
そう笑うヴェノムに
「悪いが・・そんな時間は無い!!」
踏み込んでヴェノムを切り裂こうとした時
「ガアアアアッ!!」
倒れていた魔道師が立ち上がり私の拳を掴む
「な・・何?・・」
死んだ筈の魔道師が動いた事に驚いていると・・魔道師は血の涙を流しながら
「こ・・殺して・・ガアア・・やだ・・やだ・・化け物・・に・・グウゥゥゥ・・成りたくない・・!!・・早くッ!!」
魔道師の腕が異形の物に変わっていた・・それは先程まで私を襲ってきていた異形の腕と同じ物だった・・
「早くゥ!!ワタシが・・ワタシじゃ・・ナクナル前にいいいいいッ!!!」
血の涙を流す魔道師に
「すまない・・」
謝ってからその心臓に男魂を突き刺す・・それと同時に魔道師に起きていた変化は収まった・・魔道師はゆっくりと倒れこみながら消滅した・・私が俯いてるとパチパチと手の叩く音がする・・
「良い茶番でした、中々楽しめましたよ」
にやにやと笑うヴェノムに
「お前達は・・一体何処まで!!命を弄べば気が済むんだ!!!」
私が怒鳴るとヴェノムは
「弄ぶ?・・違いますよ・・これは神に近づくための実験・・「黙れぇッ!!獅子羅王漸ッ!!」・・ぐっ・・!!」
これ以上こいつの声を聞きたくなかった・・だから一気に踏み込んでヴェノムを両断する・・
「はぁ・・はぁっ!!・・こんなに気分が悪いのは久しぶりだ・・」
私がそう言って振り返ると後ろから
「突然とは酷いですねぇ・・」
その声に驚き振り返る、馬鹿な・・ヴェノムは私が両断した筈・・私は振り返り目を見開いた・・
「くっく・・この程度で私は死にませんよ・・兄弟・・」
ゆっくりと再生していくヴェノムの顔のマスクは無く素顔が曝け出されていた・・私はよろよろと後退しながら
「ば・・馬鹿な・・」
私が震える声で呟くとヴェノムは
「良いですね・・良い反応ですね・・そんなに信じられませんか?・・私の顔が?」
馬鹿にするようなヴェノムの顔は私と同じ顔だった・・
ヴェノム・・それは極めて特殊な生まれをしたネクロ・・ネクロと最高評議会によって造られた、最初の改造ネクロだった・・勿論最初からではない・・後天的に改造された・・失敗作のジェイルのクローン・・それがヴェノムだった・・
「くく・・私は貴方・・貴方は私・・貴方だってプロジェクトFを作ったではないですか?・・貴方も同じですよ・・命を弄んだ者としてね」
自身の身体を再生しながら言うと
「違う!私とお前は違う!!私は好きでやったんじゃない!!」
否定するスカリエッティに
「否定しますか・・良いですよ別に・・貴方が認めようが否定しようが・・変わりませんから・・私が貴方を殺すという事に!!」
そう・・これで良い・・私はスカリエッティを殺す・・自信の真の姿で!!
「う・・ウオオオッ!!!」
身体が作り変えられていく・・自身の本来の姿へと・・
「な・・くっ・・・カオス!」
私が進化している間にスカリエッティの身体を覆う騎士甲冑が変化していく・・白と黒の混合の騎士甲冑へと私はそれを見ながら
(例え・・お前がどれほどの力を得ようが・・私には勝てないですよ・・スカリエッティ・・)
私は心の中で蔑むように呟いた・・それと同時に進化が終わった・・醜い獣の下半身と硬い外殻の上半身を持つ・・異形の姿へと・・
「くふふふ・・醜いでしょう?・・これが貴方の正体ですよ・・醜く・・そして心の奥底では破壊を望んでいる貴方の心の現われですよ」
ネクロの姿は心が影響する・・つまりこの醜い姿こそがスカリエッティの真の姿なのだ・・私がそう言うと
「何度も言うようだが・・私とお前は違う・・その事を証明してやろう・・」
剣を構えるスカリエッティに
「違う?・・私とお前が・・?・・良い加減しろよ・・認めろ!!この姿こそガアア・・キサマのココロだと!!」
私が消えていく・・破壊の衝動に飲まれていく・・
(それでも良いですね・・いっそ・・理性も知性も失って・・ただの化け物になってもね・・)
それが私が呟いた、最後の理性のある言葉だった・・
「ガアアッ!!!」
出鱈目に拳を叩きつける、目の前でちょこちょこと動くこの物体を叩き潰したい・・これを叩き潰せばさぞ気分がいいだろう・・
「タイラントサベージッ!!!」
右腕を振り回す
「うぐっ!!」
私の右腕はスカリエッティを捕らえ吹っ飛ばす・・追撃に
「ハウリング・・ブラッドオオオオッ!!!」
腹部の顔が開き赤い衝撃波を打ち出す
「くっ・・喰らえダークロアッ!!!」
その攻撃を避けたスカリエッティはそのまま黒い砲撃を打ち込んでくる
「ムダダアッ!!!」
その砲撃を左腕で弾き飛ばし、そのまま殴りつける
「グオッ!!」
人間がアリを踏み潰すように・・私の拳はスカリエッティを捕らえ宮殿の床にめり込ませる、それでも
「まだだッ!!まだ・・終わらんぞ!!」
血を流しながら立ち上がるスカリエッティに
「イイカゲンニクタバレッ!!!」
無性に腹が立ち出鱈目に拳を叩きつけようとするが・・私の拳は届かない・・考えれば判る事だが、鈍重な攻撃では素早いスカリエッティを捉える事は出来ない・・だが今のヴェノムはそんな簡単な事でさえ判らなくなっていた・・
「ガアアッ!!シネ!!シネ!!!シネエエエッ!!!!ワタシノマエカラキエロ!!キエロ!!キエロオオッ!!!!」
もう何が何だか判らない・・私は出鱈目に攻撃を繰り出しながら、考える事をやめた・・
悲しい力だ・・私はヴェノムの攻撃を捌きながらそう感じていた・・醜い異形の姿のヴェノムはこう言った
「醜く・・そして心の奥底では破壊を望んでいる貴方の心の現われ」
だと・・私はバンチョーブレイドでヴェノムの腕を切り飛ばしながら
(そうかもしれない・・もし・・ウーノや・・龍也と出会わなければ・・私はこいつのようになっていたかもしれない・・)
私を変えてくれたウーノ、私を理解して共感してくれた龍也・・彼らが居なければ私はきっとジオガディスに協力していたかもしれない・・だが
「私とお前は違う!!私には私を支えてくれた者がいる!私は過去を完全に乗り越えるッ!!」
消せない罪・・逃げるつもりは無い・・いずれ私にも裁きが来るだろう・・それでいいと私は思っているのだから、私がそう言うとヴェノムは
「ダマレ!ダマレ!!ダマレエエエッ!!!ウルサイ!!ウルサイ!!!シネ!!シネ!!!シネエエエッ!!!!」
出鱈目に拳を振り回すヴェノム、私はその攻撃を避けながら徐々にヴェノムの懐に近づいていく・・
「クオオオオッ!!ブラッドレインッ!!!」
下半身の毛が鋭い針の様になり降り注ぐ
「ウオオオッ!!!」
致命傷になる物だけ弾き進んでいく・・近づかなければ何も出来ないのだから・・
「クルナ!クルナ!!クルナアアアッ!!!カオスフレイムッ!!!」
獣の口から吐き出された炎に
「はああああッ!!!」
バンチョーブレイドで両断し進む・・あと少し・・あと少しで私の間合いだ・・そう思った直後
「ガアアッ!!ヴェノムインフューズッ!!!」
獣の口から紫色の煙が吐き出された・・それは宮殿の床を溶かしながら迫ってくる・・
「腐食ガスか!!」
腐食ガスだと判断し・・一瞬避けるかと考えたが・・私は一歩踏み出し自ら腐食ガスの中に飛び込んだ・・
「クハハハ!!シンダ!!シンダ!!シンダアアッ!!!コレデ!!ワタシハワタシニイイィッ!!!」
狂ったように笑うヴェノム・・いや・・もう狂っているのかもしれない・・私はそんな事を考えながら煙の中から飛び出した・・
「ば・・バカナアアッ!!!」
驚くヴェノム・・私は横目でカオスを見る・・所々溶けているが・・それでもまだデバイスとして動いてくれていた・・私は
(ありがとう・・カオス・・もう少しだけ・・頑張ってくれ・・)
機能停止までもう時間の問題だろう・・融合型デバイスには致命的な欠点がある・・2つのデバイスコアを1つにしている為、極端にエネルギーを消耗してしまうのだ・・だが・・
「後一太刀で良い!!私に力を貸してくれ!!カートリッジロード!!」
両方の篭手から空の薬莢が飛び出し私の魔力を強化する、それと同時に跳躍し
「覇王両断剣ッ!!!」
私の全魔力をつぎ込んだ魔力刃を振り下ろした・・
「ガアア・・・ガアアアアアアッ!!!!」
ズル・・ズルルルルッ・・・
ヴェノムの身体がずれる・・覇王両断剣はヴェノムを両断していた・・
「グオオ・・スカリエッティィィッ!!!」
ヴェノムの身体が爆発するように消える・・これで終わりかと思ったが・・まだ魔力反応を感じる・・私がヴェノムが倒れた所に向かうとそこには
「ヒュゥ・・ヒュゥ・・」
掠れた呼吸を繰り返すヴェノムが倒れていた・・辛うじて生きているが・・下半身が無く・・今にも消滅しそうなヴェノムに近づくと
「泣いて・・いるのか?」
黒い涙がヴェノムの瞳から溢れていた・・ヴェノムは泣きながら
「どうして・・お前だけが全てを手に入れたんだ・・友も・・家族も・・安らぎも・・同じ・・私なのに・・どうして・・?お前だけが・・」
泣きながらヴェノムは虚空へと手を伸ばし
「私も欲しかった・・理解してくれる・・守護者の様な友が・・だから・・ハーティーンを作った・・」
独白を続けるヴェノムの横に方膝をついて座る・・もうヴェノムは何も出来ない・・なら最期くらい看取ってやるのが当然だろう・・
「私も家族が欲しかった・・だから・・魔道師を襲った・・でも・・あれは・・違った・・」
ヴェノムはゆっくりと消えていきながら呟く・・
「あそこは暗かった・・あそこは寂しかった・・永遠の闇・・日毎に・・消えていく・・私と同じ顔の者が・・それでも・・いつかは助けが来ると思っていた・・」
ヴェノムは実験施設の事を言っているのだと思った・・そう思った直後ヴェノムが私の腕を掴んで身体を起こす
「どうして!?・・どうしてお前だけが全てを手にしたんだ!!友も家族も!!同じ私なのに!!どうして!!どうしてだ!!答えろスカリエッティ!!!」
泣きながら叫ぶヴェノムに
「ついてなかったんだ・・お前は・・」
私がそう言うとヴェノムは狂ったように笑いながら
「ついてなかった?・・たったそれだけ・・?・・くく・・ははは!!そうか・・そうか・・私は・・結局・・安らぎも・・家族も得れないのだな・・ううう・・」
声を押し殺して泣くヴェノムに
「そう決め付けるのは早い・・私と一緒に来い・・」
自分の胸を指差しながら言うと、何が言いたいのか理解したヴェノムは
「くく・・はははッ!!馬鹿ですか!!!私がお前を乗っ取るとは考えないのですか!!」
そう言うヴェノムに
「そうなったらそうなった時だ・・だが・・お前には屈しない自信がある・・そして・・私の中で見ろ・・安らぎと家族の温もりを」
ヴェノムの目を見て言うとヴェノムは呆れたように溜息を吐き
「全く・・同じ私なのに・・こうも違うとは・・ですが・・その提案・・受けさせて貰いますよ・・」
そう言って目を閉じるヴェノムは弾ける様に粒子になる・・それをダークドラアームで吸収する
「くっ・・くううう・・」
胸を押さえて蹲る・・自分が消えてしまいそうな感覚に囚われるが・・それは直ぐに消える・・
「魔力が・・体の痛みも無くなってる・・」
全快とは言わないが尽きていた魔力も身体の痛みもある程度回復している・・どうやらヴェノムを吸収した時に回復したようだ・・わたしはゆっくりと立ち上がりながら
「ヴェノム・・お前が得たかった安らぎと家族の温もりをお前にも与えてやる・・だから・・少しだけ私に力を貸してくれ・・」
そう呟くと脳裏に
(やれやれ・・人使いが荒い私ですね・・まぁ・・良いですがね・・)
一瞬馬鹿にしたような、ヴェノムに声を聞いた気がした・・それと同時に背中から黒い魔力で出来た翼が現れる・・
「ありがとう・・もう1人の私・・行くか・・大切な家族を助けに・・」
市街で戦っているチンク達を助ける為に私は空を舞う・・私に道を教えてくれた者を決して失わないために・・
第124話に続く
生前情報
ヴェノム
スカリエッティのクローンの1人、ネクロの実験により生きたままネクロへと変化した、深い知性と理性はスカリエッティと同じだがネクロ化した事で歪み歪な方向へと進んだ。研究所の中で見た、スカリエッティの家族や龍也の存在を知り、自分も家族と親友を欲した・・それ故にデクスや魔道師の強制ネクロ化実験をしたが、それはヴェノムの望んだ形ではなかった・・それ故により狂気への道を進んだ、スカリエッティを倒し自分だけがスカリエッティに成ろうとしたが、スカリエッティに敗北、消えていく中スカリエッティの提案でスカリエッティと融合した・・自意識を失っているが、家族の温もりそして親友を得れたヴェノムの魂は長い間求め続けた安らぎを得る事が出来た、また全く関係ないが、スカリエッティはヴェノムとの融合で魔力と打たれ強さが桁違いに上昇した・・