第126話
管理局本局の近くの市街は、酷い有様だった、何一つ無事なビルが無い、倒れたビルの瓦礫の上から
「イヒヒッ!!ナニナニ?もう終わり!!詰まらないなぁ~抵抗して見せてよ!!!」
イヒヒと笑いながら馬鹿にするように跳躍するディアボリック、そしてその回りに居る、蟻や蛹型のネクロの群れ・・倒しても倒してもきりが無い
「このっ!!」
セッテが手に持ったソルエッジをディアボリックに投げつけるが
「無駄無駄!!そんなの僕には届かないよ~」
蟻型が2体盾になり、自信らが消滅しつつもディアボリックを守る、そして
「お返しだよ~やっちゃえっ!」
周りの蟻型が口を開き
「「「「ヘルズグレネードッ!!!」
触れたら爆発する魔力弾を放ってくる
「ヘブンズサンクチュアリッ!!!」
直撃の前にオットーが強力なプロテクションで防いでくれるが
「うっ・・うう・・」
魔力がもう限界に近いのか苦しそうなオットーにディードが近寄って
「だ・・大丈夫オットー?」
オットーは汗を流しながら
「ま・・まだ平気・・だよ・・僕は・・」
平気と言っているが限界は近そうだ、私はそう判断して念話で
(ディード、蟻型を抜いてディアボリックを狙う・・お前はまだ大丈夫か?)
そう尋ねるとディードは笑いながら
(はい、平気です)
妹の笑みに頼もしいと思いながら、更にセッテに
(ソルエッジを自分とオットーの周りに展開しろ、オットーの魔力はもう限界だ、お前が守れ・・セッテ)
頷くセッテを見てから、左手に挟んでいたルナエッジをディアボリックを囲っている蟻型目掛け投げつける
「・・・」
無反応ながら素早い動きで回避する、私はそれを確認してから
「甘いッ!!」
左手を動かす、それと同時に飛んでいたルナエッジが反転して蟻型の身体に絡みつく
「!!!」
驚く蟻型、ルナエッジは魔力の糸で繋いである、つまりある程度は誘導出来るのだ・・と言っても今の自分では投げた内4本操作出来れば良い方だ、魔力糸を操るのは凄く難しいのだ・・
「終わりだッ!!」
指を鳴らすと同時に蟻型の身体に刺さっていたルナエッジが爆発する、それはビルの壁や弾かれ落ちていたルナエッジを巻き込み大爆発を起こす
「!!壁が・・」
ディアボリックの驚いた声が聞こえた、無理も無い自分を守るらせる為に居た蟻型が全て居なくなり、自分を守るものが無くなったのだから当然だ、それと同時に
「はあああッ!」
ディードのベルゼルガが風を纏う
「奥義!風刃閃!」
ベルゼルガを振るう、それと同時にベルゼルガが纏っていた風がディアボリックを拘束する
「くっ・・」
もがいてその拘束から脱出しようとしているが。そう簡単に抜け出れる訳は無い、この技は八神が生み出した技・・そう簡単に破られる技ではないのだから
「音速を超えて切り込みます!ベルゼルガ!カートリッジロード!!」
ベルゼルガから計4発の薬莢が飛び出す、それと同時にディードの姿が掻き消える
「はああああっ!」
ザンッ!ザンッ!
ディードの声と振るわれるベルゼルガの音、それに
「く、ぐうっ!!」
姿の見えない程のスピードのディードの攻撃で傷つけられるディアボリックの声だけが響く
「これで・・決まりです!!」
ディアボリックの前に現れたディードがベルゼルガを袈裟切りに振り下ろす
「が・・がああああああッ!!!」
絶叫と共に吹っ飛んでいくディアボリックは背中からビルに突っ込み姿が見えなくなる
「・・はぁ・・はぁ・・き・・決まりましたか?」
ディードがそう呟くと同時にディアボリックが姿を見せる・・ゆっくりと歩くディアボリックは数歩歩いた所で
ズシャッ!!
音を立てて倒れこみ消滅し始める
「お・・終わった・・勝ったぞ」
これでここは大丈夫・・本局地下に逃げている民間人も無事だ・・作戦成功だ・・私がそう思った直後
「終わった?・・勝った?・・イヒヒッ!!何言ってるの?僕はまだピンピンしてるよ!!!」
嘲笑う様なディアボリックの声が頭上から聞こえる、慌ててそちらを見ると言葉通り無傷のディアボリックの姿が、それを見たディードは
「そ・・そんな・・て・・手応えはあったのに・・」
信じられないという表情のディードにディアボリックは
「イヒヒ!!僕は自分の進化前の姿のコピーを生み出せる・・でもそれはLV2、LV3だけじゃないよ~」
そう笑うディアボリックの背後から、全く同じ姿のディアボリックが30体姿を見せる
「「「「お前達が壊したのは僕の複製~オリジナルは元気だよ~」」」」
コピー体がディアボリックと同じ声で笑う、コピー体とディアボリックはイヒヒと笑いながら
「さてさて・・ゲームの始まりだよ!!僕を倒させないと・・アルカンシェルだっけ?・・それがここを撃ちます~」
!!!馬鹿な・・そんな事出来る訳が・・管理局のプロテクトは完璧の筈・・私がそう思っているとディアボリックは
「イヒヒッ!!僕はハッキングとか得意なの!!大好きなゲームの1つ・・ほら!」
私達の頭上にタイマーが現れる60、59、58・・と時間が過ぎていく
「これは僕がプロテクトを抜くまでの時間~制限時間は1時間・・僕を殺さないと全てが終わるよ~・・それじゃあ・・ゲームスタートッ!!」
30体のディアボリック達が私達の前に着地して
「「「「本物は僕だよ!!イヒヒッ!!!」」」」
自分を指差して本物は自分だと言う、私はそれを見ながら
「・・不味い・・状況だな・・」
1時間でアルカンシェルが発射される、本物は1体だけで偽者が30体・・本物の目星なんて付かないが・・全て倒すしかないと判断し、私は地面を蹴ってディアボリックに向かっていった・・
イヒヒ・・馬鹿な人間だよ・・僕は声を押し殺して笑いながらそう呟いた、あの魔道師が戦ってるところに僕は居ない、ビルの影に姿を隠して管理局へのハッキングを仕掛けていた
「逃げた人間がいるから出来るんだよね~」
魔王様が宣戦布告した時に真っ先に逃げ出した者達が居た、それが居るからアルカンシェルが使える
「皆殺しも楽しかったしね~」
宇宙に逃げた魔道師達は僕が自ら乗り込んで皆殺しにした、コピーを作るには膨大な魔力が居るから、魔道師を殺す必要があったのだ
「ふっふーん~うーんと・・78965716980・・っと・・はい、最終防衛ライン突破~楽勝~楽勝」
イヒヒと笑いながらアルカンシェルの発射システムへのハッキングを始める
「うーん・・流石に難しいね~でも楽しいよ~」
10層のプロテクトを解除しながら、横目で戦況を見て驚いた
「へぇ、やるもんだね。僕のコピーを半分も倒してるよ」
ハッキングを始めて30分、本当はもっと早く出来るんだけどゲームだから楽しまないと・・それにしても強いね、コピーだから僕より弱いけど・・そこそこ強いはずなんだけどな~
「まぁ良いけど~30分で半分って事はどうせ間に合わないんだし~・・うーんと・・ほいほいほいっ!と・・イヒヒ~残り5個~」
10層の内半分を抜いた、人間の作ったプログラムなんて楽勝~僕は優秀なんだから~鼻歌交じりにコンソールを叩く、時折背後から
「このっ!!鬱陶しい!!」
「二連地斬疾空刀ッ!!」
「ランブルデトネイターッ!!」
魔道師達の声と
「「「「カタスロフィーカノンッ!!!」」」」
砲撃が放たれる音が聞こえる
「ふふーん・・中々やるね~本当・・残り7体か~時間は・・20分・・うーん・・仕方ない・・出るか」
コピーの数が激減している気配を感じ僕は嫌だけどビルの影から姿を見せ
「イヒヒッ!!!ゲームも終盤そろそろ、僕も参戦するよ!!行けッ!!!」
両腕を伸ばし、1番近くに居たピンク色のバリアジャケットの女の子を捕まえ
「えーいッ!!!」
そのまま上空に腕を振り上げ叩き付けようとすると
「させない!!烈火刃ッ!!」
僕のコピーを最初に倒した女の子が僕の腕に炎を纏った一撃を放つ
「あちち!!酷いな~それじゃあ・・最初は君だ!!」
捕まえていた女の子を放してしまったので、代わりにその女の子の腹に拳を叩き込む
「げ・・ごほっ!!!」
咳き込んで吹っ飛んでいく女の子から
「このおっ!!!」
ブーメランを投げつけてくる女の子に視線を移す
「イヒヒ・・当たらないッ!!当たらない~」
跳躍してブーメランを回避して、腕を伸ばしてその女の子を絡めとり
「ばいばい~」
身体を反転させその女の子を壁に叩きつける
「がっ!!!げほっ!げほっ!!」
蹲り咳き込む女の子の声を聞いて
「良い声だね~もっと聞きたいな~」
追撃の為に腕を伸ばそうとする
「させんっ!!」
爆発するダガーを投げる女の子が突っ込んでくる
「次は君?良いよ~じゃあ君を痛めつけようか?」
ダガーを弾きそのまま膝蹴りを叩き込み、身体を反転させビルに向かって蹴りつけ
「ばいばい~カタスロフィーカノンッ!!!」
胸部から紅い砲撃を撃つが
「くっ!!うわあああッ!!!」
直撃は回避したようだが余波で吹っ飛ばされ転がっていく女の子を見ながら
「「「最後のプロテクト解除~ふっふーん、アルカンシェル準備オッケー」」」
残っていたコピーを呼び寄せその中に紛れ込む
「「「さーラストゲームッ!!!本物はどれでしょう~」」」
イヒヒと笑いながら両手を広げ
「「「ほらほら~逃げも隠れもしないよ~攻撃しておいでよ・・防御しないからさ~一撃で消滅させれるよ~」」」
イヒヒ・・引っ掛かれ、僕は影の中・・それは全部偽者・・偽者を攻撃したらそこで終わりだよ・・ゲームは終わり僕の勝ちでね・・ぎりぎりまで追い込まれた精神状況では僕が隠れてる可能性なんて考えられない筈~精久悩みなよ・・愚かな魔道師さん~
ど・・どうする・・1体だけ・・本物・・倒せばそれで良いが・・倒せなかったら・・アルカンシェルでクラナガンは壊滅する・・そう思うと手が震える・・まともにダガーなんて投げれない・・
(こ・・怖い・・わ・・私に・・全部が掛かってる・・)
ディード達はもう攻撃する余力なんて残ってない・・自分しかないのだ・・私は覚悟を決めダガーを真ん中のディアボリックに投げつけるが当たる瞬間にその姿は消える・・コピーだ・・
「はずれッ!!はずれ!!ゲームオーバー~イヒヒヒヒッ!!!!!」
言われなくても判る・・私のせいだ・・私のせいで・・クラナガンは・・私が膝から崩れ落ちると同時に
「発射5秒前!4・・3・・2・・「させるかあああああッ!!!!」・・な・・この・・僕の方が早い!!!」
上空から父さんの声がする、慌てて上を見ると漆黒の翼を背中に生やして凄まじい勢いで突っ込んでくる姿が見える、ディアボリックが指でコンソールを叩こうとする
「させるかああッ!!」
最後のダガーを投げつけ腕を弾く
「なっ!!!「覇王両断剣ッ!!!」
ドンッ!!!
漆黒の魔力刃がディアボリックの間の影を貫く、それと同時に
「ぎゃああああああッ!!!何で!!何でッ!!!判ったんだアアアアッ!!!!」
絶叫と共にディアボリックが姿を見せる、父さんは何も応えず
「消えろッ!!!」
更に魔力を送り込む
「ッギャアアッ!!!!!」
凄まじい断末魔の悲鳴をあげディアボリックの姿は消えていった、父さんはそのままディアボリックが展開していたコンソールを叩き始め
「プロテクト再構築完了っと・・もう大丈夫だ」
そう笑う父さんは
「もう・・限界か・・ありがとう・・カオス・・」
父さんの身体を覆っていた騎士甲冑が消滅する、融合デバイスの限界が来たのだろう・・私がそんな事を考えながら父さんに
「どうして影に隠れてるって判ったんですか?」
「それは僕も聞きたいな~」
「私もです」
「私も凄く興味がありますね」
私達がそう尋ねると父さんは頭を掻きながら
「いや・・その・・手元が滑ったんだな・・これが・・あはははっ!!つまり唯の偶然だ!!」
あははと笑う父さんに力が抜けその場にしゃがみ込むと、父さんは私達の頭を撫でながら
「それにしても良く頑張った・・ごめんな・・助けに来るのが遅れて・・空になLV3が山ほど居たんだ」
そう言う父さんの身体は良く見るとボロボロで肌が見えてる部分もある、かなり痛い筈なのにそんな素振りを微塵も見せない父さんに
「ううん・・助けに来てくれて嬉しかったよ」
「僕も!お父さんの格好良い所見れて嬉しかったよ!」
「はい!私もそう思います!!」
「龍也様の次に格好良かったです!!!」
皆がそう言うと父さんは恥ずかしいのか少し顔を背けながら
「ん・・まぁ・・その・・あれだ・・自分の娘の前で・・情けない真似は出来だろ・・うん・・」
そういった父さんはビルの上から飛び降りて
「車を取ってくる。怪我だらけで動けないだろ?魔道師とかも連れて来るよ」
そう言って走っていく父さんを見ながら空に浮かぶ城を見る
(八神・・私達は勝った・・お前も負けるなよ・・)
心の中でそう呟いて私は仰向けに寝転がった・・
「何だよここは?」
僕は何も無いくらい空間に立っていた・・昔の事を思い出そうとするが思い出せずそこに立っていると
ドスッ!!!
「が・・がはっ!!」
突然背後から剣が飛んできて俺を貫く・・俺が驚きながら振り返るとそこには黒い門のような物があり、そこから剣が伸びていた、門についた顔が淡々と
「汝・・2度同じ過ちを犯した者・・汝に魂の休息など無い・・永遠に苦しみ・・懺悔せよ・・」
ずるずると門の中に引きずり込まれながら
「嫌だ!放せ!!僕は・・僕はアアアアアアッ!!!」
ゴーン・・
ディアボリックを飲み込んだ門はゆっくりと閉じ・・音も無く消滅した・・
第127話に続く
生前情報
ディアボリック
クライドの世代の広域次元犯罪者、レアスキル「移し身の君」と呼ばれる能力を持ち、大量殺人を行い、自分のコピーを生み出し20年に渡り管理局から逃げ続けた悪人。最後は管理局にハッキングを仕掛けアルカンシェルのコントロールを奪い、クラナガンを壊滅させようとしたが、発射直前でクライドに捕まり逮捕された、管理局に連行されてる途中に舌を噛み切り自殺した、精神異常者であり殺しをゲームと称しており、捕まった以上自分の負けであるからという理由で自殺する道を選んだ。その後、ジオガディスより早く目覚めていた、ヘルズによってネクロ化した。ネクロ化した後も殺人はゲームであり大量殺人を行い続けた、生前の記憶があったかどうかは不明だがアルカンシェルを乗っ取ろうとし、最後はスカリエッティによって倒された