第127話
激しい戦闘があったのだろうか、瓦礫の山と化した街の中で、1体の異形「ホーネット」が蹲っていた、それを見下ろす男・・ゼストだ・・ホーネットはその瞳に憎悪の色を浮かべながら
「ギッギギ・・オノレ・・人間如きガ・・」
目の前でボロボロの昆虫の様なネクロを見下ろしながら
「言いたい事はそれだけか?・・ではとどめだ」
俺がアンブロジウスを振り下ろそうとした瞬間
「「キキーッ!!!」」
瓦礫の影からLV1が飛び出してくる
「!!」
完全な不意打ちに一瞬反応が遅れる、だがネクロの攻撃は俺には届いていなかった・・
「ストライクザンバーッ!!」
「ふんっ!!」
ウェンディとトーレが割り込んで来て、それぞれネクロを消滅させる、それと同時に
カッ!
一瞬光ったと思うと同時に
「ッギャアアアアッ!!!!」
ビルの影に隠れていたLV2が纏めて消滅する、恐らくディエチだろう、俺がそんな事を考えてるとトーレが
「油断しすぎじゃないのか?」
俺は苦笑しながら
「そうかもな・・少し油断していたかもな・・だがもう終わりだ・・」
ホーネットに改めてとどめを刺そうとし振り返った瞬間、俺は目を見開いた先ほどまでホーネットが居た場所にはまるで繭の様な物が居た・・それを見たウェンディは慌てながら
「そうはさせないっすよ!!」
踏み込んで蹴りを繰り出したがそれより早く繭から腕が飛び出し、ウェンディの足を掴んで投げ飛ばす
「くっ!!」
瓦礫の山に突っ込む前にトーレが抱き止める、それに安心しながら繭を見ていると
「くっくっくっ・・漸くだ・・漸くここまで来た」
繭が爆発しそれを同時に漆黒の鎧が視界に飛び込んでくる
「俺をデクスだと思っていただろう?・・残念だったな」
漆黒の竜の翼を持ち・・
「俺は力を制限されていた・・バラガルトによって」
禍々しいまでの色の剣を振り回しながらホーネットだった者が俺を見て
「俺の名はLV4デュラン!漆黒の龍帝!デュランだッ!!・・さぁ・・始めようか・・一方的な殺戮を!!」
そう言うと同時にデュランは腕を無事なビルの方に向ける・・その方向はディエチが居る方向だった、トーレが通信を開く前に
「邪魔な小娘から消えて貰おうか・・B・ポジトロンレーザーッ!!」
螺旋状の砲撃を打ち込む、ビルが粉々になって散っていく・・顔を青ざめさせるトーレとウェンディに
「こいつは俺が抑える!ディエチの所に向かえ!!」
そう言うとトーレとウェンディは崩れたビルの方に駆け出していく、俺はデュランの前に立ち塞がり
「貴様の相手は俺だ」
睨みながら言うとデュランは
「ふんっ・・では貴様から血祭りに上げてやろう!!!」
そう言うと同時にアンブロジウスとデュランの剣が交差して火花を散らした・・・
クラナガンの外れ、最後の宮殿の中で烈火の将「シグナム」と4本の足に胴体に口を持った異形「タナトス」が戦闘を繰り広げていた
「どうしたのです?まさかこの程度とは言わないですよね?」
くっくと笑いながら言うネクロに返答代わりに
「昇竜斬破ッ!!!」
龍型の魔力波を飛ばすが・・
「まだ元気ですね・・そうこなくては面白くありません」
手に持った杖でそれを弾き飛ばし、4本足で殴りつけてくるタナトスの攻撃をレヴァンティンで弾くが
(長くは持たん・・速攻で片付けなければ勝機はない)
私はそんな事を考えていた、獣の様な姿をしているがこいつは恐ろしく知性が高い、更には遠距離、近距離も強い・・普通に戦っていては埒が明かない・・私はそう判断して、斬り合っていた足を弾き飛ばし、跳躍しタナトスの頭目掛けて
「はああああッ!!天竜斬破ッ!!!」
気合と共に身体を回転させながら打ち込むが
「甘いですよ、デッドスクリームッ!!!」
ミッギャアアアアアアアッ!!!!
「う・・うわあああああッ!!!」
タナトスの胴体の口からこの世の物とは思えない悲鳴がして、私は大きく弾き飛ばされた
「くっ・・まだ・・!・・馬鹿な・・」
ダメージはそんなに大きくないのですぐに反撃しようとしたが、手に持ったレヴァンティンを見て、目を見開いた・・私の手の中でレヴァンティンは腐食し始めていたのだ・・良く見るとレヴァンティンだけではない騎士甲冑も腐食し始めていたのだ・・私が驚いているとタナトスが
「死者の叫び、デッドスクリームはありとあらゆる物を破壊し侵食する・・判るか?その侵食が貴様の身体に達した時・・貴様はネクロと化す」
!!私がネクロに・・騎士甲冑を見る・・まだ表面が溶け始めてるだけだが・・徐々に溶ける範囲が増え始めている
「くっ!!!このおっ!!」
踏み込んで斬撃を繰り出す
ガキーンッ!!!
杖で受け止めたタナトスはにやりと笑いながら
「焦るか?自分が自分で無くなるのが?」
くっくっと笑うタナトスは足で私を蹴り飛ばし
「このまま貴様がネクロと化すのを待つとしよう・・貴様と仲間同士の殺し合い・・実に楽しみだ」
にやにやと笑うタナトスを見ながら拘束から逃れようともがくが
(なんと言う強度だ・・びくともしないぞ)
それでもその拘束から逃れようともがいていると背後から
(そんなに暴れんな、今助けてやるから)
その声に驚き目だけで後ろを見るとそこにはアギトが居た、良く考えればここは市民の避難所の近く、アギトが六課に誰かに着いて来ていてもおかしくないのだ・・私が驚いているとアギトは
(くそ・・硬いぜ・・私の力じゃ無理か・・こうなったら・・シグナム!ユニゾンするぞッ!!)
その言葉に私は慌てて
(何を言っている!!あいつの話を聞いてなかったのか!!私は今あいつの攻撃で侵食されてるんだぞ!!そんな状態でユニゾンしたら・・判らない訳が無いだろう!!)
融合騎である、アギトと今ユニゾンすればアギトにも侵食の影響が出てしまう・・だからそう怒鳴るとアギトは
(判ってる!!シグナムは兄の家族だ!!だから・・私にとっても大切な家族だ・・私は家族を守るために・・命を懸ける!!昔・・兄がしてくれたみたいに!!)
アギトの目には揺るがない強い光が宿っていた・・それはどことなく兄上の目の色に似ていた・・私は何を言っても無駄だと判断し
(判った・・なら侵食される前にあいつを倒す・・良いな)
(おう・・行くぞ・・)
「「ユニゾンインッ!!!」」
ユニゾンを行い自分を押さえていた拘束を弾き飛ばす、自分の身体を見下ろす、真紅の鎧は青紫色に染まり、燃え盛る炎の色は赤ではなくオレンジ色・・レヴァンティンが纏っている炎の量も大幅に増えている・・私がレヴァンティンを正眼に構えると
「な・・くっ・・融合騎か・・だがもうじき侵食が終わる・・そうなれば貴様の負けだ!!」
勝ち誇った笑みのタナトスに
「そうなる前に貴様を倒す!!」
地面を蹴り一気にタナトスへと向かって行った・・
「ディエチ~どこっすか~」
あちこちの瓦礫の陰を覗きながら声を掛けて回るが、ディエチの姿は見当たらない、最悪の予想が頭を過ぎった時、背後から
「ウェンディ!!居たぞこっちだ!!!」
トーレ姉の呼ぶ声が聞こえ、私はその方向に向かって走り出した
「ウ・・ウェンディ・・わ・・私は大丈夫だから・・心配しなくても良いよ?・・」
ディエチは頭から血を流しながらもそう微笑んだ、良く見ると腕が青紫色になっている・・間違いなく骨折してるだろう
「全然大丈夫じゃっないっす!!後は私達に任せるっす」
慌てて言うとディエチは
「そ・・そんな事言ってられない・・もうじき・・来る」
そう言うディエチ・・何が来るのか尋ねようとした時
「グオオオオッ!!!」
ズドンッ!!
凄まじい叫び声と同時に轟音が辺りに響く、それと同時にドシャッ!!という生々しい音が聞こえそっちの方を見ると
「くっ・・な・・なんと言う・・力だ」
傷だらけのゼストが居た、私が慌てて近寄ろうとすると
「来るな!!お前達ではあいつに勝てん!!」
そう言って槍を構えるぜストの前にデュランが着地し
「まだ戦う気力があるか・・良いぞ・・このまま嬲り殺しにしてやる」
デュランが凄まじい勢いで剣を振り下ろす、ゼストも何とか防いでいるが長くは持ちそうはない
「援護しないと・・でも何をつかうっすか・・」
バニシングバードに搭載されている、射撃弾は3種類・・バースト弾、スパイラルバレット、拘束弾・・だがどれも効果は無さそうだ・・ではどうする・・?・・私が慌ててバニシングバードの弾を確認していると
「これは・・」
一発だけ色が違う弾が目に留まる・・それは
(ブラックホール弾っす・・これなら・・あいつを・・でも・・)
龍也兄のブラックホールクラスターを解析し、お父さんが作った最強の弾丸・・だが
(私の魔力じゃ起動出来ない・・無理に使えば・・暴発して・・辺りを全部吸い込む・・)
怖い・・自分に全てが掛かってしまう・・近くに居る人の命も・・大切な姉妹の命も・・手が震える・・だが・・もうこれしか手が無いのも事実・・私がブラックホール弾を見ていると
「ウェンディなら・・出来るよ・・」
「信じるぞ・・お前なら出来る」
「ディエチ・・トーレ姉・・」
私の腕を掴んで言う2人・・信じてくれているなら・・その信頼に応えなければならない・・そう思うと私の手の震えは止まっていた・・
(何考えがあるんだな・・時間稼ぎは任せてもらおう)
念話で言うゼスト・・私は自分の頬を叩き
(うっしゃ!!気合入れて行くっす!!)
バニシングバードを特殊砲撃モードに切り替え
(座標・・X・・199・・Y・・360・・空間圧縮範囲・・1m・・)
打ち込む場所圧縮範囲を設定し、スコープを覗き込む・・
(幸いこっちには気付いてないっす・・一撃で決める・・)
狙撃はそこそこ出来る・・なら一撃で決めるまで・・ゆっくりと息を吐き・・呼吸を整える・・
(信じろ・・自分なら出来る・・出来るに決まってる)
自己暗示ににも似た呟きを何度も繰り返し、閉じていた目を見開くと同時に
(ゼスト!!一気に離脱!!こっちまで来るッス!!)
そう念話を飛ばす、ゼストは斬り合っていた槍を手放し、フラッシュムーブでトーレ姉の隣に移動する、それと同時に
「行けぇッ!!!!」
トリガーを引いた
ドウッ!!
凄まじい反動と同時にブラックホール弾が射出される、それはゼストの姿を見失っていたデュランの脇腹を捉える・・だが
「ふん・・こんな物で・・」
鼻で笑うデュランに
「残念ッスけど・・ゲームオーバーっすよ・・空間圧縮開始!!!」
ブラックホール弾が光り輝き漆黒の穴となる・・どうやら・・成功のようだ
「ぐっ・・な・・吸い込まれる・・くっ・・この・・」
翼を羽ばたかせ逃げようとするが不可能だ、ブラックホールはデュランの身体に発生しているし、光さえ吸い込むブラックホールからどうやってやって逃れるというのだ・・デュランの身体は見る見る間に吸い込まれて行き
「くっ・・オノレエエエエエエッ!!!!」
そう叫ぶと同時にデュランの姿は完全に消えた・・
「お・・終わったっす・・」
私がへたり込んで言うとトーレ姉は
「何を言って居る・・まだ終わってないぞ・・」
トーレ姉が空を見上げる・・そこにはパンデモニウムが浮かんでいた・・そこではまだ龍也兄が戦っている筈だ・・私はディエチの横に寝転びながら
「へへ・・心配する事はないっす・・龍也・・兄が・・負ける筈・・ないっすか・・ら・・」
魔力の消費のし過ぎで急速に薄れていく意識の中、私はそう呟いた・・
「ビフロストッ!!!」
強化された炎の矢がタナトスの身体に突き刺さり爆発する
「グオオオオッ!!己ぇッ!!プログラム如きが!!!」
激昂し殴りかかってくるタナトスの腕を弾き
「プログラムなどと・・呼ばないで貰おうか!!!咬竜斬刃ッ!!!」
シュランゲフォルムに変化させたレヴァンティンをタナトスに巻きつけ、一気に引く
「ッギャアアアアアッ!!!!」
身体が抉り取られ絶叫するタナトスの胴体にムスペルへイムを押し付け
「ビフロストッ!!」
全力でビフロストを打ち込み吹っ飛ばす、私はタナトスが体勢を立て直す間に
(アギト!大丈夫か?)
アギトに尋ねる・・侵食されている私とユニゾンしてるアギトに影響が出てないかと思い慌てながら尋ねると
(まだ、大丈夫だぜ・・でも・・長くは持たないな・・そろそろ決めてくれよ)
少し苦しそうに言うアギトに
(ああ・・すぐに決める)
これ以上アギトに負担をかけるわけには行かない・・私はそう判断し
「カートリッジロード・・」
ズガンッ!!
薬莢が飛び出し魔力が増大する、それと同時にレヴァンティンを覆っていた炎が蒼色に染まる・・それは兄上と同じ色の炎だった・・私は少しだけ微笑む
「行くぞ・・アギト」
(おう!)
そう言うと同時にタナトス目掛けて走り出した・・
「ぬううう!!図に乗るなあああッ!!!!」
杖に黒い魔力を集め殴りかかってくる、だが私はそれを再度ステップで回避し、そのまま身体を捻りながら跳躍し
「天竜斬破ぁッ!!!!!」
回転する事によって加速したレヴァンティンを全力で振り下ろした
「くっ・・がっ・・」
杖で受け止めようとしたが、その杖は一瞬で切り裂かれそのままタナトスを唐竹切りに切り裂いた・・
「ば・・馬鹿な・・申し・・訳・・あり・・ません・・」
タナトスはそう呟くと同時に倒れこみ消滅した・・それと同時に私の身体についていた黒い物体は消えていた・・
「勝った・・な・・」
グラリ・・ドサッ!!
剣を振り下ろした体勢のままゆっくりと倒れこむ、それと同時に騎士甲冑とユニゾンが解除される
「はぁ・・はぁ・・つ・・疲れた・・」
そう呟くアギトに
「ああ・・私もだ・・」
横目でクリスタルが砕けているのを確認し
「任務完了・・後は迎えが来るのを待つだけだな・・」
救助を頼む連絡はした・・後はそれを待つだけだ・・私がそう呟くとアギトが
「なぁ・・迎えが来るまで、兄の昔話を聞かせてくれよ」
そう呟くアギトに
「ああ・・良いぞ・・その代わり・・お前がどうやって兄上と出会ったのかを教えてくれ」
アギトは少し頬を赤らめながら
「う・・うん・・良いよ・・でも・・兄の話が先だかんな!」
そう言うアギトに
「ああ・・では・・話し始めようか・・まずはな・・」
私とアギトは迎えが来るまでの時間、お互いの昔話をしていた・・自分が知らない兄上の話に、アギトと兄上の出会い・・それをゆっくりと語り続けていた・・ちなみにその光景を見た迎えの局員達は口を揃えてこう言った
「「「まるで本当の姉妹のようだったと・・」」」
第128話に続く
生前情報
ホーネット→デュラン
ジオガディスと敵対していた国の将軍で、血塗りの魔神と呼ばれる騎士だったが、ジオガディスに殺された後、利用できると判断しヘルズによってネクロ化し、バラガルトの配下になった・・だがその凄まじい闘争本能は凄まじい力を持つデュランへの進化を可能にしたが、自分の地位が危ないと判断したバルガルトによって力を制限され、長い間ホーネットの姿で居た、だがバラガルトの死で元の姿に戻る事が出来、圧倒的な戦力でゼスト達を圧倒したが、ブラックホール弾に飲み込まれ消滅した・・
ジオガディスの幼年期に魔法を教えていた老人、高い呪術の才能と戦略に長け、ジオガディスの戦の師匠でもあった、ネクロ化後も高い呪術は健在で敵を侵食し、自分の手駒とする魔法や戦法を得意とした、ユニゾンしたシグナムによって撃破された・・
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