夜天の守護者   作:混沌の魔法使い

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第132話

第132話

 

時間は少し遡る、髪を切り終え本局に向かって歩いていると隣のヴィータが

 

「なぁはやて、本当に辞めちまうのか?管理局」

 

私は少し考えてから頷き

 

「うん、辞める・・兄ちゃんも居らんし・・なんかクラナガンに居るのも辛い・・海鳴でのんびり暮らそうかなって思ってる」

 

自分の考えを話すとヴィータは

 

「そっか・・それなら仕方無いな・・でも兄貴を見つけたらすぐに連れてくからな!」

 

笑いながら言うヴィータと話をしながら歩いていると

 

「くっく・・見つけたぞ・・夜天、鉄槌!」

 

どんよりとした闇が広がりそこから漆黒の甲冑と翼を持った男が姿を見せる・・その男は間違いなく

 

「「ジオガディス・・」」

 

1年前に兄ちゃんと相打ちになり死んだ筈のネクロの王だった・・ジオガディスは楽しくてしょうがないと言う表情を浮かべながら

 

「くく、俺が死んだと思ったか?残念だったな・・忌々しい守護者の一撃で傷は負った物のあの程度で俺は死なん、まぁ・・人間である守護者はくたばったようだがな」

 

嘲笑うような口調のジオガディスを睨むと、ジオガディスは

 

「俺が憎いか?・・ならどうする?俺を殺すか?2人掛りでも構わんぞ?所詮人間俺には勝てん」

 

漆黒の魔力がジオガディスを包み込む、凄まじいまでの威圧感だ兄ちゃんと同等かそれ以上・・私は冷や汗を流しながら

 

「行くでヴィータ?」

 

「おう」

 

2人同時に騎士甲冑を展開しジオガディスへと向かっていった・・はやて、ヴィータがジオガディスとの戦闘を始めた頃クラナガンの市街では

 

「くっ!!どうなっているんだ!このネクロの数は!!」

 

「「「キキーッ!!!」」」

 

無数のネクロに囲まれ動きを封じられたシグナムが怒鳴ると

 

「落ち着け、ここは各個撃破だ!」

 

チンクが蹴りを放ちネクロを吹き飛ばすと同時に

 

シャッ!!シャッ!!

 

3本のブーメランが飛んできてネクロをばらばらに切り刻むと同時に

 

「殺す・・殺す!!」

 

セッテが凄まじい殺気を身に纏い、シグナムとチンクを飛び越えネクロへと襲い掛かった・・それを見たシグナムは

 

「チンク、セッテの援護に回るぞ!このままでは危険だ」

 

「判っている!!」

 

我武者羅に暴れまわるセッテの援護に回った・・その頃六課に居たなのは達も

 

「行くよ皆!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

スバル達を連れてシグナム達の所に向かっていた・・そしてクラナガンの外れでは

 

「・・始まっている・・急がねば・・」

 

赤いフード付きの外套を身に纏った男がそう呟くと同時に、炎、氷、風が巻き起こり、肩膝立ちの3人の女性が現れる、男は3人に

 

「お前達はシグナム達を頼む、俺は・・俺の成すべき事をする」

 

「「「了解いたしました!!」」」

 

現れたときと同じ様に消える3人の女性を見ながら男は黒煙を見ながら

 

「今助けに行くからな・・」

 

首から提げた剣十字を握り締め風と共にその場から消えさった・・

 

 

 

「クリスタルビローッ!!!」

 

「ラケーテンブレイカーッ!!」

 

はやてと同時に魔法を発動させるが

 

「くっく・・無駄無駄!!」

 

ジオガディスの纏う魔力に阻まれ、届く事が無い・・

 

「弱い弱すぎる!!所詮は人間暇つぶしにもならんな!!」

 

ジオガディスが剣を振るうとそこから漆黒の魔力刃が放たれ、私とはやてに迫る

 

「「プロテクションッ!!!」」

 

2人でプロテクションを発動させるが一瞬で砕け弾き飛ばされる

 

「くっ・・無茶苦茶だ・・どんだけ強いんだよあいつ」

 

悪態をつきながら身体を起こすとジオガディスが

 

「ほう、まだ立つか・・中々に頑丈だな・・まぁ良い、貴様らを殺してリンカーコアを頂こうか」

 

正眼に剣を構えるジオガディスからは凄まじい殺気が放たれ始めていた・・どうやら本気らしい・・私は背中に冷たい物が流れるのを感じながらグラーフアイゼンを握り締め

 

「うっせぇッ!!私達がお前をぼこぼこにしてやんよ!!行くぞはやて!!」

 

「うん!!」

 

2人で同時に攻撃を仕掛けるが

 

ピタッ!!

 

「「なっ!?」」

 

アイゼンとゼロアームズを片手で止めたジオガディスはにやりと笑い

 

「遊びは終わりだ、そうそうに片付けさせて貰うぞ!!」

 

そこから漆黒の砲撃を放つ、ゼロ距離で砲撃を食らった私とはやては

 

「「きゃあああああッ!!!」」

 

悲鳴と共に凄まじい勢いで弾き飛ばされた・・

 

「げほっ・・げほっ・・なんて威力や・・騎士甲冑がボロボロや」

 

ひび割れ崩壊している騎士甲冑を見ながら言うはやての上空にジオガディスが立ち

 

「まずは夜天と鉄槌のリンカーコアか・・悪くない・・守護者の次に上質なリンカーコアだからな・・喜べ貴様らの愛しい愛しい守護者の元に送ってやるぞ・・カオス・・ライトブレイカーッ!!!」

 

巨大なベルカ式の魔方陣から凄まじい砲撃が放たれた・・私はそれを見ながらどこか冷静に

 

(避けるのは無理か・・ここで終わりか・・)

 

ダメージのせいで避けるのは無理、かといって防ぐのも無理・・私は自分でも驚くくらいあっさりと諦めた・・

 

(これで良いのかも・・死んだら・・兄貴に会えるかも・・それなら悪くないかな・・)

 

兄貴はもう死んでいるのかもしれない・・そう言う考えが私の中にはあった・・だからこれで良いのかも知れないと目を閉じた直後、背後から

 

「クォ・ヴァディス!!!」

 

どこかで聞いた様な男の声と轟音が響く、驚きながら振り返るとそこには

 

「・・・」

 

赤い外套を身に纏った男が立っていた・・私は思わず

 

「あ・・兄貴?・・」

 

全く違う雰囲気なのに兄貴の姿にダブって見えた・・男は虹色の魔力を剣の形に変化させ、ジオガディスへと向かって駆け出した・・その時私は確かに感じた・・柔らかい包み込むような風を・・

 

 

 

 

「くそっ!!きりが無い!!!」

 

高町達と合流し、ネクロと戦闘をしているが数が減る気配はまるで無い、倒しても倒しても影から出てくるのだ

 

「早く、はやてちゃんに合流しないといけないのに・・あっちにはジオガディスが居るんでしょう?」

 

そう尋ねてくる高町に頷きながら

 

「ああ、この魔力反応は間違いなくジオガディスだ、主はやてとヴィータだけでは勝てん!!早く加勢しなければ!!」

 

近寄ってきたネクロを両断しながら言うと上空から

 

「そうは行かん、ここから先は通行止めだ」

 

恐らくLV4であろう、ネクロが姿を見せ、背中に背負った斧を抜き放ちながら

 

「守護者と共に居ただけの事はある・・だが所詮雑魚は雑魚、俺たちの敵ではないな」

 

LV4が指を鳴らすと無数の闇が広がりそこからLV2、3が続々と姿を見せる

 

「俺達の数は1000体、幾ら貴様らの魔力が多くても1000体は無理だろうな・・じっくりとなぶり殺しにしてやる」

 

私はネクロを睨みながら

 

(流石にこれは無理かもしれん・・2手に別れるか?・・いや駄目だ・・全員でなければ・・)

 

私がどうしようか考え始めた直後、私達の後方から女の怒声が響く

 

「しゃがめ!!シグナムッ!!」

 

私がその怒声に反応し、しゃがむと同時に

 

「炎の断罪!!」

 

「クレセントハーケンッ!!」

 

「アブソリュートストームッ!!」

 

炎を纏った剣の大群、三日月形の魔力刃、吹雪がネクロ達を呑み込み消滅させる、それと同時に私の前に3人の女が着地する、各々がデバイスを油断無く構えている・・私はその1人に見覚えがあった・・

 

「アイギナ・・?」

 

天雷の騎士の1人のアイギナだった・・では後の2人は私の知らない騎士になるのだろう・・アイギナは街の中心に向かって剣を向け

 

「行け、お前達は見届け無くてはならない、我らの偉大なる王の目覚めを・・ここは私達が引き受ける、だから行け」

 

そう言うと駆け出しネクロを切り裂き始めるアイギナに困惑していると

 

「私達には私達のすべき事があります、貴女達は貴方達のやるべき事をしてください」

 

影から飛び出したネクロを両刃の斧で切り裂く少女に高町が

 

「そんな、3人じゃ無理ですよ、私も・・「力無い者は目障り、協力するのも面倒・・私達は3人で十分・・ここに他の人間が入ればコンビネーションが崩れる・・だから行けば良い邪魔だから」

 

シャマルに似ているが雰囲気の全然違う女にそう言われ肩を落としながら走り出す高町を見ながら

 

「すまない、ここは頼む」

 

「ふん、たかが1000くらいどうという事は無い、それよりちゃんとその目で見届けるんだな・・王の目覚めをな・・」

 

私はその言葉の意味を尋ねようと思ったが、もう話す気が無い言う表情のアイギナを見て高町達の後を追って走り出した・・

 

 

 

男とジオガディスの戦闘力はほぼ互角だったが徐々に押され始める・・当然だ魔力で作った剣とデバイスでは差がありすぎる、何合目かの打ち合いで音を立てて男の剣がくだけ散る

 

「くっ・・」

 

赤い外套の男が手に持っていた剣が砕け散る・・それを見ながらジオガディスが

 

「幾ら神王とはいえ・・デバイスも無しで俺に勝てると思ったかっ!!」

 

男はゆっくりと顔を上げる・・フード越しでも判るその男の闘士が全く揺らいでいない事が・・そしてその瞳が私にある男の事を思い出させる

 

(兄ちゃんの目にそっくりや・・)

 

私がそんな事を考えていると

 

「はやてちゃん!!」

 

「部隊長!!」

 

「主はやて!!」

 

なのはちゃんやシグナム達が合流してくる、それと同時に膝を付いていた男が起き上がりながら

 

「俺の・・いや・・私の武器はここにあるっ!!」

 

白銀の閃光が走り、ジオガディスの鎧を深く傷つける、それと同時に私は目を見開いたその男が持っていたデバイス・・それは・・

 

「オメガ・・ブレード・・」

 

もうこの世に存在しないはずのデバイス・・1年前に死んだ兄ちゃんのデバイスだったからだ・・私が目を見開いていると

 

「馬鹿なっ!!!貴様は死んだはずだ!!何故貴様が生きている!!夜天の守護者っ!!!」

 

その怒声と共に男の顔を隠していたフードが弾け、燃えるような赤髪と美しい銀眼が姿を見せる・・それを見た私の瞳から涙が零れ始める・・私は無意識に

 

「あ・・ああ・・」

 

もう会えないと思っていた・・だが目の前にいる確かに存在しているのだ・・それが嬉しくて・・夢のようで・・私がそんな事を考えていると兄ちゃんは

 

「・・何故?・・簡単だ・・私は護るべき物がある限り!!消して死ぬ事は無い!!」

 

その力強い言葉と共に騎士甲冑が展開されるが・・それは黄金色に染まり・・その背には炎の翼が現れていた・・兄ちゃんはその炎の翼を羽ばたかせ宙に浮かびながら

 

「ジオガディス!!貴様の穢れた魂・・八神龍也が浄化するっ!!!

 

剣を構える兄ちゃんにジオガディスは

 

「抜かせッ!!今度こそ確実に貴様を殺してやる!!」

 

黄金色の閃光とそれを飲み込まんとする漆黒の閃光が交差した・・ここからが本当の戦いの始まりの合図であった・・

 

第133話に続く

 


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