夜天の守護者   作:混沌の魔法使い

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第134話

 

 

第134話

 

 

「はぁ・・はぁ・・皆無事か?」

 

ネクロの群れを突っ切り漸くはやて君達にやっと思いで合流したが様子がおかしい・・膝を付き祈るように手を組んでるなのは君や、泣いているセッテ・・何が起きたのか判らない、暫く考えるとある可能性が頭に浮かぶ

 

「精神操作系の魔法?・・」

 

精神に異常をきたす類の魔法をジオガディスに使われてしまったのか・・そう思い私は唇を噛んだ

 

「なんという様だ・・龍也が戻るまで私が皆を護ると誓ったのに・・」

 

龍也は生きている絶対にはやて君達の所に戻ってくる、だからそれまではと思っていたのに・・私が後悔していると

 

「ブラックレイン!!!」

 

無数の黒い槍が上空から降り注いでくる、恐らくはジオガディスの攻撃だろう、私が皆を護らねばと慌ててプロテクションを発動させようとした直後

 

キンッ!!キンッ!!!

 

金属音と弾き飛ばされる黒い槍、そして神々しいまでの黄金の鎧と炎の翼を持った男が黒い槍をその手に持った剣で弾き飛ばす、私はその姿を見て思わず私はこう呟いた・・

 

「龍也・・?」

 

私がそう呟くと男はゆっくり振り返り、私を見て

 

「ジェイルか、悪いが・・はやて達を頼めるか?」

 

油断無く剣を構える龍也の背後から漆黒の魔力で出来た剣が飛んでくる、龍也はそれを回し蹴りで迎撃し、そのまま空中目掛け魔力刃を飛ばしながら

 

「はやて達を護りながらでは全力で戦えん・・だからはやて達を連れて下がってくれるか?」

 

そう尋ねてくる龍也に私は

 

「任せろ、はやて君達くらい護りきってみせる」

 

私がそう言うと龍也は穏やかな微笑を浮かべ

 

「そうか・・では・・頼むッ!!」

 

炎の翼を羽ばたかせ急上昇していく龍也の後ろ背を見ながら

 

「全く・・心配させたことに付いては何も言わないか・・まぁ良いがね・・さてと・・私は私のするべき事をするか」

 

動かす事が出来ないので、そのまま地面に魔法陣を展開し、強固なプロテクションを発生させる、プロテクションを張り終えると同時に

 

「キキ・・」

 

「見つけたア・・魔道師・・」

 

「くっくっく・・」

 

LV1、2、3がそれぞれ現れる、狙いは当然はやて君達だろう・・私はバンチョーブレイドを構え

 

「はやて君達には指1本触れさせんぞ、なにせ親友に頼まれたからな」

 

私はそう言うと地面を蹴りネクロ達へと向かって行った・・龍也・・お前の家族は今は私が護ろう・・だから負けるなよ・・親友よ・・

 

 

 

キン・・

 

グレイダルファーを両腰の鞘に仕舞う・・そしてそのまま出て行こうとすると

 

「何処に行くの?」

 

背後からラグナに声を掛けられ、俺は振り返らず

 

「俺は行かねばならない・・決着を付ける時が来たんだ・・」

 

あいつはあの場所で待っているはず・・今こそ決着をつけるときなのだ・・俺がそう言うとラグナは

 

「ヘルズと戦うの?」

 

俺が戦わなければならぬ相手・・ヘルズ・・街にジオガディスが居るのは判っている・・そして守護者も・・あっちは任せても大丈夫だ・・なら俺は俺のすべき事をする・・俺が頷くとラグナは

 

「そう・・気をつけてね」

 

そう言うラグナに頷き、俺はバイクに跨り走り出した・・ベルカ自治区の外れ・・立ち入り禁止エリア・・いや・・幼い頃兄と共に剣の修行をした場所・・俺は空を見上げ

 

「ヘルズッ!!俺は来たぞ!!姿を見せろッ!!!」

 

俺がそう叫ぶと

 

「そんなに大声を出さなくても聞こえてますよ、ルシルファー」

 

虚空から滲み出るようにヘルズが姿を見せる、ヘルズは辺りを見回しながら

 

「ここは変わってないですね、あの時のままです・・懐かしい」

 

本当に懐かしそうに言うヘルズ・・一瞬兄の姿にダブるが

 

(ちがう、あいつは兄ではない・・兄はあの時に死んだんだ・・迷う必要はない・・ただ屠るのみ)

 

両腰の鞘からグレイダルファーを抜き放ち

 

「話は終わりだ、今日こそ決着を付けてやる・・俺の勝利と言う形でな」

 

俺がそう言うとヘルズは背中の鞘から剣を抜き放ち

 

「弟が兄に勝てると思いますか?・・勝つのは私ですよ」

 

にやりと笑うヘルズ・・それと同時に俺とヘルズの姿が交差した・・今日こそ決着を付ける兄の誇り高い魂を救うために・・

 

 

 

キンッ!!キンッ!!!

 

私の剣とグレイダルファーが交差して火花を散らす・・お互いの獲物を弾くと同時に拳と蹴りがぶつかり、また距離を取る・・さっきからこのやり取りの繰り返しだ、私は手に持った剣を見ながら

 

(強くなった・・貴方は本当に強くなりましたよ・・ルシルファー)

 

記憶の中のルシルファーをより今目の前に居るルシルファーは更に強い・・いや今やルシルファーの方が私より強い・・剣の腕、体裁き・・その全てが私を上回っている・・

 

(これが生者と死者の違いですか・・)

 

私はネクロとなっている、魔力量と身体能力は上昇しているがそれだけだ・・死者は成長しない・・ネクロには限界がある・・その者の魂のキャパシティ・・その分までしか強くなれないのだ・・私は既に限界まで強くなっている・・だが生者であるルシルファーにそんな物は無い、どこまでも無限に強くなれる・・

 

(それが人ですか・・人を辞めた私には無い力ですね・・)

 

王国が滅んだ時・・全てを捨てた私には手にする事の無い力・・私がそんな事を考えていると

 

「考え事か!!余裕だな!!」

 

神速の踏み込みと共に繰り出された横薙ぎの一撃が私の胴を狙ってくる

 

「!!」

 

反射的に半歩下がり直撃を回避するが、完全に回避は出来なかった・・浅くだが騎士甲冑を切り裂かれる・・私はそのまま背中の鞘に手を伸ばし、両手に剣を取り

 

「トランプソードッ!!!!」

 

両手に5本、計10本の剣を投げつけるが

 

「無駄だぁッ!!!」

 

剣を弾きながら接近してくるルシルファーに再度剣を投げつけ、それと同時に上空に舞い上がり、魔法陣を展開する・・私の持てる最高の威力を持つ重力魔法・・複数生成する度に行動が出来なくなる・・それほどまでに術式維持が難しい魔法であり、私が父から受け継いだ魔法・・

 

「マジリス・オブ・ルイン・・発動」

 

全てを飲み込み消滅させる、最強の重力魔法・・私の展開できる最大数15個全て展開し

 

「重力の闇に飲まれて果てなさいッ!!!」

 

その全てをルシルファーに向かって打ち出した・・

 

「!!!」

 

トランプソードを弾き終えたルシルファーの顔が驚愕に染まる、このタイミングではもう回避できない・・私の勝ちだ・・

 

ズドーンッ!!!!!

 

私が放った重力球は森を飲み込み、大地を飲み込み、そしてルシルファーも飲み込んだ・・私は仮面を外し

 

「出来れば、貴方は手に掛けたくなかったですよ・・ルシルファー・・」

 

何も残っていない荒野を見ながら呟く、血を分けた最愛の弟・・それをこの手で殺す・・こんな事はしたくなかった・・

 

「さよならです・・ルシルファー・・我が最愛の弟よ・・」

 

その場を離れようとすると下から

 

「まだ決着はついていないぞ!!!」

 

黄金色の風が駆け抜ける・・

 

「馬鹿な・・回避出来るタイミングではなかった筈・・」

 

絶対命中を確信していただけに驚きそう呟くと

 

「俺がこの1年何もしてなかったと思うか?」

 

王龍剣を背中に担ぎながらいうルシルファーの回りにはマジリスオブルインと同じ術式が浮かんでいた・・

 

「まさか・・独学で!?」

 

独学でマジリスオブルインを!?最も扱いが難しい魔法を独学で完成させたというのか・・私が驚いているとルシルファーは

 

「まだ未完成だからな・・放つ事は出来んが・・相殺する事は出来る・・これで貴様の有利性はなくなったわけだ」

 

防ぐ事だけに集中し、私の攻撃を防いだ・・ありとあらゆる物を飲み込むマジリスオブルインは最強の攻撃魔法だが、この様に使えば最強の防御になる・・私にはそんな発想は無かった・・私が驚いているとルシルファーは王龍剣を正眼に構え

 

「決着は剣だ・・正々堂々真っ向勝負だ」

 

王龍剣に魔力を纏わせながら言うルシルファー・・私も背中の鞘から剣を抜き魔力を纏わせ、王龍剣と同じ大きさの魔力刃を作り上げる

 

「行くぞ・・ヘルズゥゥゥツ!!」

 

「ルシルファーッ!!!!!」

 

漆黒の魔力刃同士がぶつかり凄まじい爆発音と共に2人の姿を覆い隠した・・

 

 

 

 

ルシルファーとヘルズのが戦っている頃クラナガンの上空では

 

「守護者ああッ!!!」

 

「ジオガディスゥゥッ!!!」

 

龍也とジオガディスの激しい剣劇戦が繰り広げられていた・・突き、薙ぎ、袈裟、逆袈裟・・ダインスレイフとオメガブレードがぶつかり火花を散らす、距離が空くと2人とも魔法を放つが、威力は全くの互角お互いに相殺し合い消し飛ぶだけ、その度に突っ込みお互いに剣をぶつけ合う、何度目かの鍔迫り合いの時にジオガディスが

 

「貴様に俺の何が判る!!愛する者を失い、国を失い、友を失った・・俺の何が判る!!!」

 

渾身の力でダインスレイフを叩きつけて来る、ジオガディスに

 

「判るさ!!私も失った事がある!!だが私は世界を憎みはしなかった!!!」

 

オメガブレードでダインスレイフを弾くとジオガディスは

 

「それは貴様の失った物が軽いからだ!!!」

 

ノーモーションで砲撃を放ってくるジオガディス、相殺の為に砲撃を撃ち、それと同時に間合いを詰めオメガブレードを振るいながら

 

「違う!!!残された者は死んだ者の分も生きなくてはならない!!!どれ程悲しくても、どれ程辛くても!!前を向いて生きなくてはいけない!!!」

 

そう、私は両親に生かされ、セレスに生かされ、こうして生きている・・また私の手から護りたい者が滑り落ちていった・・それでも私は生きなくてはいけない、生かされたのだから・・その者の分まで生きなくてはいけない・・

 

「黙れぇッ!!!俺はどんな事をしようがもう1度エリナを・・国を取り戻すんだ!!!そして今度こそ幸せに生きるんだ!!!」

 

私を弾き飛ばしながらそう絶叫するジオガディスに

 

「では聞こうッ!!!そんな血に濡れた手でお前は何を掴めると言うんだ!!」

 

「!!」

 

ジオガディスが明らかに動揺の色を見せる、畳み掛けるなら今だ

 

「もう1度聞く!!その血に濡れた手でお前はエリナを幸せを本当に掴めると思っているのか!!お前がそこまで逢いたいと望む人はそんなお前の姿を見たいと思うのか!?」

 

もしここまで想われる様な女性なら、こんな事をして欲しいとは思わない筈・・私がそう言うとジオガディスは

 

「黙れ!!黙れ!!黙れええッ!!!貴様の話など聞くか!!俺は・・俺は・・今度こそ全てを取り戻して幸せに生きるんだ!!!」

 

首を振り絶叫するジオガディスを確りと見据え

 

「ジオガディス・・貴様を縛る呪われし鎖・・この私が断ち切る!!!」

 

オメガブレードを鞘に仕舞い、鞘の内部と外部に魔力を収束する、外部に収束する魔力は長く剣型にする

 

「はああああああッ!!!!」

 

裂帛の気合と魔力刃を振り下ろす

 

「ちぃッ!!!」

 

ジオガディスが舌打ちと共にダインスレイフを掲げ、魔力刃を防ぐ・・だがこれで終わりではない、魔力刃を即座に解除し

 

「天断彩光刃(てんだんさいこうは)ッ!!!」

 

左手で神速の抜刀と共にジオガディスの身体を切り裂く

 

「ぐ・・オオオオオオッ!!!」

 

ジオガディスが切り裂かれた箇所を押さえ、獣の様な雄たけびを上げる

 

「来るか・・真の黒幕が」

 

オメガブレードを握り直しジオガディスの身体を覆う黒い魔力を睨んでいると、徐々に黒い魔力が別の形を成していく・・白い身体に強固そうな鎧・・蝙蝠のような翼に顔を追う仮面・・そして胴体に浮かぶ髑髏の文様・・映像で見たとおりの姿だ

 

「我が名はヴェルガディオス・・絶対にして最古の神・・今ここに終焉と言う名の裁きを下す」

 

ヴェルガディオスが現れると同時に苦しんでいた、ジオガディスは頭から落下して行く・・意識は失ってないようなので大丈夫だろう・・それより今は目の前にいるこいつを何とかしなければ、私が睨むと同時にヴェルガディオスの回りに稲妻が走り3体の異形が姿を見せる

 

「ほっほ・・漸くワシ等の出番かね?」

 

長い髭に翼を持ち、その手に持った杖をクルクルとまわす老人のような姿のネクロ

 

「くふふ・・面白そうな獲物がいるな・・どれ・・狩に行くとするか」

 

両肩に黄色の鷲の頭を模した鎧を身に付けたネクロがジェイルのいる方向に降下していく・・

 

「待て!!「ジャキ・・」くっ・・」

 

そのネクロを止めようとした直後、喉に剣を突きたてられる・・灰色の身体を持った龍人という感じのネクロだ・・私が立ち止まるとそのネクロは腰の鞘に剣を戻し、老人の隣に移動する・・それと同時にヴェルガディオスが私を見て

 

「ほう・・人形がいるではないか・・少しばかり遊んでやるとするか・・ダンテ、カオス下がっていろ」

 

恐らく老人の方がダンテ、龍人の方がカオスというのだろう、言われたとおり下がっていく2体を見ながら、私が剣を構えると

 

「見せてやろう、偽りの神と真の神の絶対なる力の差という奴をな!!」

 

そう言うと同時に襲ってくるヴェルガディオス・・ここからが本当の戦いの始まりだ・・

 

第135話に続く

 

 


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