夜天の守護者   作:混沌の魔法使い

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第135話

 

 

第135話

 

「ほっほ・・中々に粘り居るわい・・あの小僧」

 

長い髭に指を絡めながら我が神と小僧の戦いを見る

 

「くっ・・」

 

剣で神の一撃を防いでいる・・いや・・防がせて貰っておる

 

「人形にしては中々だが・・所詮は人形か・・」

 

ドゴンッ!!!

 

神の拳が小僧の腹を完全に捉える

 

「ごふっ!!!」

 

鈍い音と主に腹の甲冑が砕ける小僧・・ワシはそれを見ながら隣のカオスに

 

「懐かしいかのう?過去に神に逆らった事がある貴様には?」

 

カオスは遠い昔神に逆らい、敗北後にネクロ化し、自意識を封じられ戦うだけの存在となった者だ・・ワシがそう尋ねるとかオスは

 

「・・・・」

 

何も答えず神と小僧の戦いを見ている、ワシは溜め息を吐きながら

 

「やれやれ、こいつに聞いたワシが馬鹿だったのう・・」

 

洗脳され意思のないこやつに聞いても返事があるわけが無い・・なんと愚かな事をしたものか・・そんな事を考えながら街の方に視線を向ける、バロンが遊んでいる頃だろう・・

 

「ワシも行っても良いが・・ここは動かないのが得策じゃろう」

 

カオスが何を考えてるか判らんし、もしかすると小僧が神に勝つやもしれん・・まぁかなり確率は低いが・・用心に越した事は無い・・

 

「さてと・・これからどうなるか見物じゃのう・・」

 

ワシはそう呟き、戦いに視線を戻した・・

 

 

 

「くっくっ!!護りながら戦うか!何処まで持つかな!!」

 

上下左右から迫る拳と蹴りをバンチョーブレイドで弾く、自分から攻めて行きたいが、今ここを動くわけには行かない、はやて君達を護らなくてはいけないからだ・・それに戦えというのも酷な話だ・・魔力は精神状態に大きく影響される、1年で磨耗した精神状態でここまで戦って来れただけでも奇跡に近い、これ以上は恐らく戦えない、仮に戦えたとしても足手纏いにしかならない・・なら戦えるメンバーは限られてくる、私とハーティーン、それにゼストの3名だが・・ゼストは今はクラナガンに居ないし、ハーティーンは何処にいるのか判らない・・

 

(やれやれ・・これは中々にきついね)

 

目の前のネクロ・・バロンは中々の強敵で、長い手足にマント、放たれる高熱の熱線・・戦闘スタイルはヴェノムに酷似しているが、ヴェノム以上に完成度が高い、こうして捌くのが精一杯だ、私は放たれた回し蹴りをバンチョーブレイドで弾きながら

 

(もう少し鍛えておくべきだったかねぇ?・・これが終ったら少しばかりスバル君達の訓練に参加した方が良いかもなぁ・・)

 

研究と龍也の捜索ばかりしていたこの1年、運動など碌にしていない・・これが終ったら少しばかり鍛えようかと思っていると

 

「中々やるが・・これはどうだ?ゲヘナフレイムッ!!」

 

今までと明らかに火力の違う黒い炎が迫る

 

「くっ!!覇王両断剣ッ!!!」

 

魔力刃で迎撃しようとするが・・

 

「くっ・・お・・押さえ切れ・・ぐあああああッ!!!」

 

弾き飛ばされはやて君達を護っている結界の所まで弾き飛ばされ、そのまま背中から結界に追突する、このことに気付いたチンクが

 

「父さん!?」

 

「スカリエッティさん!」

 

結界越しに心配そうに声を掛けてくるチンク達に

 

「問題ないさ・・なに直ぐに済む」

 

心配掛けまいとそう言うが

 

(これは中々にきついね)

 

直撃ではなかったとは言えダメージはかなり大きい・・私はバンチョーブレイドを構え直し

 

(やれやれ・・護ると言うのは楽だが・・実際やるとなると大変だな・・)

 

そんな事を考えているとバロンが歩いて来て

 

「中々に良い暇つぶしだった・・その礼だお前の後ろの連中ごと焼き尽くしてやろう・・」

 

さっきよりも更に強大な魔力が収束していく・・

 

「くっ・・」

 

防げるかどうかぎりぎりのラインだ・・ならば・・

 

「カートリッジロードッ!!」

 

全力の攻撃で迎撃するのみ!!私の考えが判ったのかバロンは楽しそうに笑い

 

「良いぞ、勇敢な男は嫌いじゃない・・名を聞いておこうか」

 

術式を作りながら言うバロンに

 

「ジェイル・・ジェイル・スカリエッティだ」

 

名乗るとバロンはにやりと微笑み

 

「そうか、覚えておこうスカリエッティ・・少なくともこの瞬間はな・・」

 

そう言うと同時に私達はほぼ同時に

 

「覇王両断剣ッ!!」

 

「ゲヘナフレイムッ!!」

 

最大の一撃を繰り出した・・

 

(くっ・・なんという威力だ・・)

 

龍也のガイアフォースに近いその威力に徐々に後退させられる・・だが何とか踏ん張り結界の前で立ち止まるとバロンは片手を挙げ

 

「ではな、スカリエッティ・・中々に楽しかったぞ」

 

そう言うと同時に押さえていた炎の威力が増大し、押えられなくなって来る・・

 

(くっ・・こうなったら・・はやて君達でも・・)

 

弾くのも防ぐのも不可能・・ならば身体を使って防ぐしかない・・そう判断した直後、脳裏にある男の声が響いた・・

 

(諦めるのはまだ早いですよ・・兄弟・・)

 

確かにそれは私と一体化したはずのヴェノムの声、その声を聞いた直後

 

「ナイトレイドッ!!!」

 

横から放たれた黒い魔力波が炎を弾くそして

 

「同胞か・・何故私の邪魔をする?」

 

バロンの不機嫌そうな声に続いて

 

「同胞ではなく・・元・同胞ですよ・・私は貴方達を裏切って此方側に着きましたからね」

 

楽しげな口調のマントの男・・間違いなくヴェノムだ・・唯一違うのはマスクをしてない点だけだ・・ヴェノムはバロンの方を向いたまま

 

「何時まで呆けてるんです?・・私だけでは勝てないんですから協力してください」

 

そう言われ立ち上がりヴェノムの隣に行くと、ヴェノムは

 

「貴方と協力するなんて今まで考えても見なかったですね・・いえ・・人間と協力するということ時点がですか・・まぁ良いでしょう・・何事も経験ですから」

 

楽しげに呟くヴェノムに

 

「それもそうだな・・ではここは」

 

バンチョーブレイドの切っ先とヴェノムの拳がバロンの方を向く

 

「「共同戦線と行きますか!!」」

 

2人同時にバロンへと向かって行った・・何故生きているのか?・・どうして協力してくれるのか?・・判らない事は沢山あるが・・今はこの頼もしい味方の到着に感謝するとしよう・・

 

 

 

「何時まで持つかな?人形よ!!」

 

兄ちゃんと異形・・ヴェルガディオスとの戦いをみていると、繰り返しヴェルガディオスが言うのは人形と言う単語だ・・兄ちゃんが人形?・・どういう意味だろう?・・スカリエッティさんと何故か協力してくれているヴェノムはバロンというネクロと戦いながらクラナガンの上空に行ってしまったのでどうなったのか判らず、かと言って私達は戦えるほど魔力が残ってないのでこうして結界内にいるしか出来ない・・私がそんな事を考えているとなのはちゃんが

 

「見て、あそこ・・空中にも見たいのが出てるよ」

 

ベルカの自治区の方角、かなり遠いがモニターの様な物が展開され兄ちゃんの戦いが映し出されている

 

「何か考えてるのかな?・・あのネクロ」

 

そう呟くフェイトちゃんに

 

「どうせお前達の希望を消す瞬間を見せてやる!・・って所やろ?」

 

兄ちゃんが身に纏う虹色の魔力はベルカの王の証・・それだけで皆何とかなるかもしれないと思う・・其れほどまでに虹色の魔力・・つまりは聖王の魔力は凄い物なのだ・・ただ気になるのは・・

 

(何で兄ちゃんが聖王を使えるんや・・?兄ちゃんは地球人のはずやろ?)

 

地球に移住したという聖王の末裔の記録はない・・では何故兄ちゃんが聖王の魔力を?・・私が疑問に感じているとヴェルガディオスがその疑問に答えてくれた・・

 

「良く粘るな・・理想も信念もただ植えつけられただけの人形が・・そうか・・知らないのだな?貴様の生まれを・・滑稽!!実に滑稽だ!!ならば教えてやろう!!!貴様は我を倒す事の出来なかった神王が我を倒すために未来に送った、奴の息子!!本来居ないはずの存在・・誰からも必要とされない憐れな人形!!それが貴様だ!!八神龍也!!」

 

ヴェルガディオスの嘲笑う口調に私達は絶句した・・過去から未来に送られた・・?・・本当は居ないはずの人間・・?・・自分達が信じていた八神龍也という人間の事が次々と崩れていく中、兄ちゃんはボロボロの騎士甲冑のまま

 

「知っている・・私が如何してここにいるのか・・何故この力を使えるのか・・その理由も全て知っている・・態々貴様に言われなくてもな・・」

 

吐き捨てるようにいう兄ちゃんにヴェルガディオスは楽しげに

 

「ほう・・知っていたのか?・・では何故戦う?・・本来貴様には関係の無い世界だぞ?・・血縁関係もない家族!本来会わないはずだった人間達!!そんな物を何故貴様が護る必要がある!!貴様だけでも逃げたらどうだ?見逃してやっても良いんだぞ?」

 

兄ちゃんは何も答えない・・私は兄ちゃんが逃げてくれても良いと思った・・兄ちゃんが生きていてくれるならと・・多分私達の中でも何人かはそう思ったはずだ・・兄ちゃんが私達を命懸けで護る必要なんてないのだから・・本当なら私達と兄ちゃんが出会うことなどなかったのだから・・そんな私達の為に兄ちゃんが命を懸ける理由なんて何処にもないのだから・・私がそんな事を考えていると兄ちゃんは

 

「ふざけるなよ・・私だけ逃げる?・・そんな事は決してない・・私は皆を護ると決めたんだ!!!」

 

剣を構え突っ込む兄ちゃん・・だがその一撃は片手で止められていた・・異形は兄ちゃんの攻撃を受け止めながら

 

「愚かな・・お前はただの人形・・我を倒すためだけに神王によって、この時代に送られた・・奴の息子・・貴様の理想も・・願いも・・全て仮初の物だと何故判らん?・・貴様は唯のブリキ人形・・いや壊れたロボットだ・・そんな物に生きる価値があると思うか」

 

蔑む様なヴェルガディオスに

 

「・・黙れ・・貴様の御託は聞き飽きた・・」

 

兄ちゃんは掴まれた剣をヴェルガディオスの腕から強引に引き抜くと

 

「私は・・はやて達を護ると決めた!貴様に・・いや・・誰に言われようがっ!!・・はやて達を傷つけさせはしない!!」

 

剣を振り翳し突撃していく兄ちゃんをヴェルガディオスはつまらないという素振りを見せながら

 

「哀れな・・自分の価値さえ知らぬ壊れた人形ごときが・・神に歯向かうとは」

 

ヴェルガディオスは無造作に兄ちゃんを片手で掴み、ビルへと投げつけた・・ビルを4つほど貫いて吹っ飛んで行く兄ちゃん・・私達には見ていることしか出来ないのか?・・私達の為に命懸けで戦ってる兄ちゃんを見ていることしか・・

 

「いや・・違う!・・私達にも出来る事がある!!皆ちょっとこっち来て!!」

 

自分達にも出来る事がある・・私はそう考え結界の中にいる皆を自分の傍へと呼び寄せた・・兄ちゃん・・兄ちゃんは1人じゃないんやで・・

 

 

 

「駄目なのか・・私は何も護れないのか・・?」

 

瓦礫の中で私はそう呟いた・・力の差がありすぎる・・デバイスでも魔力でも・・ヴェルガディオスには遠く及ばない・・このままでは皆を護ることなんて・・私が諦めかけた直後・・僅かに声が聞こえた

 

「・・ば・・・・・い・・で!」

 

小さな声だった・・だが何かを言っているのは判った・・集中するとその声が確りと聞こえた

 

「「「がんばれっ!!負けないで!!」」」

 

はやてやクラナガンの・・ミッドチルダの大勢の人の声が聞こえた・・ヴェルガディオスが更なる絶望を与えようと私と自分の戦いをミッド全体に写していたのは知っていた・・だがヴェルガディオスの思惑に反して誰も諦めては居なかった・・私はその声を聞きながら

 

「はやて達が諦めてないのに・・そうそうに私が諦めるとは情けない事だ・・」

 

剣を杖代わりに立ち上がった・・それと同時に私は神王の声を聞を聞いた

 

「お前の武器は魔力ではない・・デバイスでもない・・お前を信じてくれている者達との絆・・それこそが・・お前の最後にして最初の力だ」

 

幻聴だったのかもしれない・・だが確かに私にははっきりと聞こえた・・自分が砕いてきたビルの壁から空を見ると

 

「皆の魔力・・?」

 

空にはやてたちの魔力が光の輪を成し、一つの道を作りだす・・それは一つの道になっていた・・

 

「あの中に行けと言うのか・・?」

 

あれが何を意味するか判らない・・でもあそこに行けと言っている様な気がした・・私は周りの魔力をその身に集めながら、上空に向かって飛び立った・・輪に向かっている途中、私は再び神王の声を聞いた

 

「龍也・・お前だけが辿り着ける究極の場所・・絆を結び、全てを繋ぐ者・・それがお前だ・・辿り着け・・お前だけの究極なる1へ!」

 

私はその声を聞きながら輪の中へと飛び込んだ・・

 

龍也さん・・

 

龍也・・

 

龍也兄様

 

兄様・・

 

龍也兄・・

 

八神・・

 

スバル、ティアナ、オットー、ディード、ノーヴェ、ウェンディ、チンクの魔力光を潜ると同時に騎士甲冑の胴や肩周りが再構築されていく・・より重厚で神々しいまでの力を感じさせる姿へと・・そして次に

 

龍也さん・・

 

龍也・・

 

兄貴・・

 

兄上・・

 

龍也様・・

 

なのは、フェイト、ヴィータ、シグナム、セッテの魔力光を潜る、先程のスバル達同様今度は篭手や腰回りの甲冑が再構築される・・そして最後に

 

兄ちゃん・・

 

はやての魔力光を潜ると同時に目の前に剣が現れる・・何故だか判らなかったが・・その剣の名前が判った・・

 

「偉大なる希望・・グランド・・ホープ」

 

その剣を握り締めると刃にうっすらとはやての魔力光が灯る、其れと同時に肩や胸部の装甲がスライドし・・そこから銀色の内部装甲が見え、徐々に騎士甲冑が黄金色に輝き始め、背中に翼が現れる・・背中なので見えないはずだが、私にははっきりと判った・・その翼1枚、1枚がスバル達の魔力光と同じ色をしていると・・私はそのまま猛スピードで降下して行った・・大切な家族を仲間を護る為に2度と失わない為に・・私が降下して行くと

 

「馬鹿な・・人間の身でありながら・・我と同じ場所に立つ者がいる訳が・・」

 

困惑するヴェルガディオスの隙を付いて斬り付け、少し距離を取り

 

「ヴェルガディオス!!いや・・偽りの神よ!!我が名、神王の名の元に貴様に断罪を下す!」

 

剣を構え、私はヴェルガディオスへと向かって行った・・そう・・私は1人じゃない・・私を信じてくれてる皆がいる・・皆がいる限り・・私は孤独になどなりはしないのだから・・

 

第136話に続く

 

 


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